1 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:32:01.998 sfq6vkfD0 1/30

「やっぱり! これでたっぷり慰謝料を……」

医者「残念ながら、奥さんの子でもありません」

「は?」

「どういうこと!?」

医者「こんなに可愛らしい女の子を見るのは初めてです。今日からこの子は私の子にします」ガシッ

「いやっ! 助けてっ!」

医者「それじゃ我が家に行こうか、ナース君。君が母親になってくれ」

ナース「はい」

バババッ

「さらわれた……」

「ウソでしょ……!?」

元スレ
医者「残念ながら……娘さんは旦那さんの子ではありません」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1629891121/

3 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:35:45.496 sfq6vkfD0 2/30

「くっ、まさか医者が誘拐をするなんて……」

「どうしましょう、警察に知らせる?」

「いや、警察は当てにならない」

「なにしろ相手はお医者だものね。すごい権力を持ってそうだし」

「ああ、きっと警視総監あたりとも繋がりがある……気がする」

「万引きから外患誘致まで、どんな悪事でも握り潰しちゃうでしょうね」

「というわけで、俺たちだけで救出に行くぞ!」

「分かったわ!」

「お前と二人で行動するなんて……いつぶりかな」

「うん……ホントね」

4 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:38:16.663 sfq6vkfD0 3/30

「ここが医者の家か」シュザッ

「大きい家ね。医者って儲かるのね~」シュザッ

「あの医者は大勢の患者を抱えてるからな」

「“信者”と書いて儲かるとはよくいったものね」

「だが……俺たちの子供を手に入れることはできない」

「私たちを敵に回したこと後悔させてやりましょう!」

7 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:40:16.393 sfq6vkfD0 4/30

ナース「ドクター」

医者「どうした」

ナース「あの夫婦が、この邸宅の周辺に現れたようです」

医者「ふふ、今のところシナリオ通りだ……。才能が恐ろしい……」

ナース「はい」

医者「さて、あの夫婦……まずはこの家に入れるかな?」

10 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:43:06.134 sfq6vkfD0 5/30

「門番がいる……」

「どっちも強そうね。眼光が鋭いし、よく鍛えられてる」



門番A「……」

門番B「……」



「どうする?」

「俺が行く!」

13 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:46:16.131 sfq6vkfD0 6/30

「……」ザッ

門番A「む、怪しい奴! 始末する!」

門番A「せやぁっ!」シュバッ

「遅いぜ」シャッ

門番A「む!?」

「タイムカードを押すように……脳天に手刀!」シュッ

ズガァッ!

門番A「が、は……っ! なんて……はや、さ……」

「無遅刻はサラリーマンの基本だからな」

14 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:49:03.428 sfq6vkfD0 7/30

門番B「おのれ……!」

門番B「バットをもヘシ折るローキックを喰らえッ!」ベキッ!

「フッ……」

門番B「な!?」

「毎日井戸端会議で数時間立ちっぱなしの足に……その程度の蹴りは通用しないわ」

「ハイッ!」

メキィッ!

門番B「なんて……ハイキックだ……」ドサッ…

「そういえば近頃、お野菜の値段がHighで困るわぁ~」

15 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:52:07.657 sfq6vkfD0 8/30

ナース「門番が二人ともやられたそうです」

医者「ほう、あの二人を倒すか……」

医者「ならば、医師会に連絡して集めた≪四天王≫を出撃させろ」

ナース「かしこまりました」

医者「四天王もウズウズしてるだろう。久しぶりの戦いだからな」

ナース「ええ、激しい戦いになることは間違いないでしょう」

17 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:55:22.303 sfq6vkfD0 9/30

タタタッ…

「誰かいるぞ!」

「お医者さんだわ!」

眼科医「これはこれは、なかなかいい目をしている夫婦が来たね」

「何者だ!?」

眼科医「私は医師会四天王の一人、≪眼科医≫」

「眼科医……!」

「目医者さんね」

18 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 20:58:48.213 sfq6vkfD0 10/30

眼科医「私は長年考えた。なぜ人の目は病気になるのかを……」

「それはお疲れ様です」

眼科医「そして……ようやくその答えにたどり着いた! 分かるかね?」

「え、と……テレビゲームとか?」

「それともスマホ?」

眼科医「違う。……目があるから目の病気になるのだ!」

「!?」

眼科医「よって今から……貴様たちの目をくり抜かせてもらう」サッ

「視力検査の時使うアレを取り出した!」

「下がってろ。ここは俺がやる」

20 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:01:16.425 sfq6vkfD0 11/30

眼科医「ハッ!」ギロッ

「うっ!?(ものすごい目力だ!)」ビクッ

眼科医「動きが止まったな。今だッ!」ギュオオッ

「あなたぁっ!」

眼科医「貴様の目、もらったァ!」グリッ

「……」

眼科医「!? ……く、くり抜けない!?」

22 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:04:16.794 sfq6vkfD0 12/30

「毎日のようにデスクワークをして、俺の目は極度のドライアイ……」

「コンドルが飛ぶ荒涼とした乾いた大地のような俺の眼球に、そんな技は通用しない」

眼科医「ううっ……!」

「喰らえッ! タイピングで鍛えた……俺の指さばきを!」

カタカタカタカタカタカタッ

眼科医「ぐばっ……! 指で全身の急所を……!」ガクッ

「人の目を抉る前に、相手の力量を見抜く眼力も身につけておくことだ。未熟者め」

(といっても、俺も未だにブラインドタッチできないけど……)

23 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:07:25.449 sfq6vkfD0 13/30

「あれは……二人目だな」

「彼も医者かしら?」

耳鼻科医「医師会四天王の一人≪耳鼻科医≫!」

耳鼻科医「耳や鼻などがあるから、人々は難聴や鼻炎に苦しめられる。よって耳も鼻もそぎ落とす!」

「医者ってのは極めると、こういう結論に達しがちなのかな」

「次は私が戦うわ」

耳鼻科医「まずは耳……そぎ落としてやる!」シュバッ

「きゃあっ!」

「大丈夫か!?」

24 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:10:23.142 sfq6vkfD0 14/30

耳鼻科医「フフフ、いい耳をゲットできた……む!?」

耳鼻科医「これは……パンの耳!?」

「しかも、カラッと揚げて砂糖をまぶしてあるわ」

耳鼻科医「う、美味い!」カリッ

「トドメは……赤ちゃん抱っこして鍛えた腕力による、ウーマンスープレックス!」グオンッ

耳鼻科医「う、うわっ……!」

ゴッ!

「耳と鼻から血が出てるけど大丈夫かな」

「医者なんだし自分で治すでしょ」

26 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:13:18.003 sfq6vkfD0 15/30

外科医「ようやく来たか」

内科医「待ちくたびれましたよ」

「お次はコンビか」

「2vs2……分かりやすくていいわね」

外科医「メスで切り裂いてやろう」ジャキッ

内科医「内臓破裂させてあげましょう」

「さて……どうする?」

「私がメス持ってる方とやるわ」

「んじゃ、内科の方は俺がやる!」

29 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:17:20.613 sfq6vkfD0 16/30

外科医「切り裂いてくれるわ!」シュバシュバッ

「……!」ビシュッ

外科医「何人もの人間を切り裂いたこのメス……たかが主婦如きに見切れはしない!」

「舐めないでくれる?」

外科医「なに?」

「私はこの包丁で……何体もの死体を切り刻んでるのよッ!」ギュオッ

外科医「は、はやっ――」

ドシュッ……!

外科医「なんという……切れ味……。まさに剣豪……」

「魚や動物の死体をね」

30 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:19:21.392 sfq6vkfD0 17/30

ドゴォッ!

「ぐっ!?」

内科医「幾人もの内臓を診てきた私にとって、蹴りで内臓を破裂させるなど造作もないことです」

「……」ニヤッ

内科医「えっ!?」

「ストレスによる胃潰瘍を幾度も乗り越え、俺の胃袋は大きな変質を遂げている」

「そんな蹴りじゃビクともしないさ」

内科医「なんですって……」

「そしてこれが上司や取引先に何度も頭を下げ続けたサラリーマンのみ会得できる――」

「お辞儀頭突き!」

ガツンッ!

内科医「これほどの頭突き……いったい何千回頭を……」ガクッ

「いいや……万だ」

31 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:23:13.248 sfq6vkfD0 18/30

「四天王を倒した……そろそろあの医者が出てきていい頃だが……」

「あなた、あれを見て!」

ナース「ようこそいらっしゃいました」

「医者の側近である看護婦……!」

「いよいよ大詰めってところね」

ナース「採血して差し上げます」サッ

(注射器!? どんな攻撃を――)

チクッ

「うっ!」

「あなた!」

34 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:26:16.080 sfq6vkfD0 19/30

「……」ゲッソリ

「え」

「どうなってんだ……これ……」ヨロヨロ…

ナース「今の一瞬で、あなたの血液を5リットル抜きました」

「5リットル!?」

ナース「ちなみに成人男性の血液量はおよそ5リットルといわれてます」

「ほぼ全部じゃない! 採血しすぎよ!」

「血が……足りない……」ドサッ

「あなたぁぁぁぁぁ!!!」

35 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:29:41.635 sfq6vkfD0 20/30

「そうだわ、輸血すれば!」

ナース「無駄ですよ。あなた方の血液型では輸血は不可能と検査で分かってます」

「たしかにね……」

「だけど、愛さえあればッ!」ザクッ

ボトボトボトッ

ナース(自分に傷をつけて夫に輸血を……)

「あなた蘇って!」ボトボト…

「……」

ナース(蘇るわけがない……こんな方法で)

36 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:32:16.084 sfq6vkfD0 21/30

「うおおおおおおおおおっ!!!」シャキーンッ

「あなた!」

ナース「バ、バカな……! 血液型が合わないのに……そもそも血が足りないはずなのに……」

「ただの輸血ならな……だが、愛ある輸血に不可能はないッ!」

ナース「!」

「白衣の天使よ、赤く染まるがいい」

「ブラッディビーム!」ブシュゥゥゥゥゥゥゥ…

ナース「あああああっ……!」

ドサッ…

「あ、また血が足りなくなった……」フラフラ…

「なにやってんの」

37 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:35:22.551 sfq6vkfD0 22/30

医者「ついにここまでたどり着いたか」

「娘はどこだ!?」

医者「あの可愛らしい娘さんならあっちだ」

「お父さん! お母さん!」

「無事だったか!」

「よかった……」

医者「しかし、大したものだ。四天王だけじゃなくナース君まで撃破するとは」

「俺一人じゃとても無理だった……夫婦の力だ! 実際死にかけたし」

「そうよ! 私一人でもここまではたどり着けなかったわ……」

医者「夫婦の力、私は少々見くびっていたようだ」

医者「だが、今から君たちは“最強の力”にひれ伏すことになる」

「なに……!?」

医者「いくぞ――」

38 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:38:10.322 sfq6vkfD0 23/30

ドザッ…

「なにこれ……?」

「お金だわ……」

医者「医者だけに慰謝料を渡そう」

医者「10億ある。これを持って君たちは帰る。娘さんは私の物。これで手を打たないか?」

「……」

「……」

40 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:41:19.760 sfq6vkfD0 24/30

「打つわけ……」

バキッ!

医者「ぐほっ!」

「ないでしょうが!」

ドゴッ!

医者「がはぁっ!」

医者「な、なぜ……!? 金は最強のはず……」ピクピク

「金が最強? 笑わせるな! 何億……いや、何兆、何京積まれようが、娘は渡さん!」

「よくいったわ! その通りよ! あの子は私たちの子だもの!」

医者「う、うぐぐ……ぐぐ……」

41 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:44:15.451 sfq6vkfD0 25/30

医者「つまり……お二人は離婚しないと?」

「当たり前だ!」

「当然でしょ!」

医者「うふ、うふふ……ハハハハハッ!」

「な、なんだ。急に笑い出して……」

医者「いやぁ、芝居を打ったかいがありました。お二人を仲直りさせることができた」

「仲直りだと……そういえば……」

「あっ、まさか……!」

「あんた、俺たちが離婚寸前なのを知って……!?」

医者「ええ、全てシナリオ通りです」

42 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:47:34.820 sfq6vkfD0 26/30

医者「DNA鑑定に来た時点で、あなた方夫婦が不仲なのは察することができた」

医者「だから、私は娘さんを誘拐したのです。夫婦を仲直りさせるためにね」

「そうだったのか……」

門番AB「仲直り、おめでとうございます」

眼科医「ただし、勝負自体は本気でやりましたよ」

耳鼻科医「パンの耳、おいしかったです」

外科医「私もまだまだ修行が足りぬ」

内科医「まだ頭が痛いですよ、ハハ」

「皆さん……」

ナース「お二人が仲直りできてよかったです」ニコッ

「笑うと可愛いですね」

「あなた!」ジロッ

43 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:49:41.732 sfq6vkfD0 27/30

「おとうさーん! おかあさーん!」ダッ

「おお、よしよし。お帰り」

「私たち、離婚なんかしないからね。安心してね」

「うん!」

医者「ちなみにここにDNA鑑定書があります。どうしますか? 鑑定結果を見ますか?」

「……」

44 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:52:12.099 sfq6vkfD0 28/30

「破り捨ててくれ」

医者「よろしいんですか?」

「ええ、俺たちにはもう必要ない。この子は俺たちの子なんだから!」

「あなた……」

医者「分かりました。では」ビリビリッ

「さ、帰ろう。お腹すいたしどこかで食べてこうか」

「ええ」

「うん!」

医者「どうぞ、お幸せに!」

45 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:55:22.962 sfq6vkfD0 29/30

……

……

ナース「よかったですね」

医者「ああ、全てシナリオ通りだ」

医者「“彼女”の描いたシナリオのね」

ナース「まさか、こうまであの子のシナリオ通りになるとは思いませんでした」

医者「この数時間、巨大な何かに操られるような感覚を味わったよ」

47 : 以下、5... - 2021/08/25(水) 21:58:18.585 sfq6vkfD0 30/30

『お医者さん、お願いがあるの』

『私のお父さんとお母さん、離婚しそうで、なんとか止めたいの』

『近い将来、ここにDNA鑑定に来ると思うから、私の言うとおりに動いて欲しいの』

『報酬は、私が仮想通貨やらFXで儲けた10億円あげるから。大きい家に住んではいるけど、病院経営も大変でしょ?』

医者『分かったよ……やってみよう』



ナース「末恐ろしい子ですね」

医者「あの子は間違いなく、あの二人の子供だよ……」







― 完 ―

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