1 : 以下、名... - 2015/08/23 02:51:30.17 3K8/Ac9P0 1/19



「うう、焦っていたとはいえ、やってしまったなぁ」

ざわざわ ぼそぼそ

「視線が痛い……早く別の車両に」



元スレ
モバP「アイドル専用車両に乗ってしまった……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440265889/

2 : 以下、名... - 2015/08/23 02:51:51.95 3K8/Ac9P0 2/19



渋谷凛「あれ、プロデューサー。同じ電車だったんだ」

「凛! こ、これは間違えて乗っただけで」

「……別に焦らなくていいよ」

「専用車両って言っても、アイドルの乗車が優先されるだけなんだから」

「それはそうだが……やっぱり、車両は移動しないと」

「もう電車は動いてるんだから、今移動したら危ないよ」

「けど」

「危ないよ」

「はい」


3 : 以下、名... - 2015/08/23 02:52:20.01 3K8/Ac9P0 3/19



(結局、車両に残ってしまった。せめて、隅の方に行っておかないと)

「……プロデューサー、やましいことをしてるんじゃないだから、堂々としなよ」

「いや、みんなも気にするだろうし。それに、まかり間違って痴漢を疑われたら」

「みんなはそんなに、自意識過剰じゃないから。ほら、こっちに来て」

ぐいっ

「お、おい、凛……!」


4 : 以下、名... - 2015/08/23 02:52:55.06 3K8/Ac9P0 4/19



(な、なんだってこんな混んでる場所に引っ張るんだ!)

「凛、やっぱりまずいよ」

「いいから」

「いいからって――ひっ」

(尻を撫でられてる!? いや、なにか荷物が当たってるだけだ。とりあえず、手を回して)

がしっ

「ぬわぁ! り、凛、俺の手が誰かに!?」

「……プロデューサー、ここにはアイドルしかいないんだよ」

「そんな痴漢まがいなこと、する人がいると思う?」

「そ、それもそうだ。……すまん、取り乱した」

「ん、いいよ」


5 : 以下、名... - 2015/08/23 02:53:24.27 3K8/Ac9P0 5/19



(凛の言う通りだ。手を掴まれてるのも、なにか勘違いがあるに違いない)

(ちょっと振り向けば、相手もわかってくれるはず)

サッ

佐久間まゆ「うふっ」

サッ

「なんで笑ってるんだよぉ!」


6 : 以下、名... - 2015/08/23 02:53:51.87 3K8/Ac9P0 6/19



「もう、プロデューサー! ここは公共の場だよ?」

「だって、後でまゆが笑いながら手を」

「そうなの、まゆ?」

まゆ「ごめんなさい、Pさんが何を言ってるのか、まゆもちょっと……」

「え、でも……いや、すまない。俺がどうかしてたみたいだ」

まゆ「いいんですよぉ……Pさんがまゆを想ってくれただけで、嬉しいですから」


7 : 以下、名... - 2015/08/23 02:54:53.46 3K8/Ac9P0 7/19



(ちょっと意識し過ぎなのかもしれない。落ち着こう)

(――あ、あれ? 今度は尻と同時に、両腕も触られてる!?)

「ま、まさかな……」

サッ

「……ん」

まゆ「うふっ」

緒方智絵里「えへへ」

サッ

「増えてるし、お前まで触るなよ!」

タッタッタ

「あ、プロデューサー、電車内で走ったら危ない――行っちゃった」


8 : 以下、名... - 2015/08/23 02:55:20.18 3K8/Ac9P0 8/19



「ふぅ、思わず別の車両に来てしまった」

(しかし、ここもアイドル専用車両のようだ)

「けど、なんだか雰囲気が緩いな……」

(アイドルしかいないから、みんな気が緩んでいる? よく見ると、ちょっとした化粧直しをしている人も)

十時愛梨「あー、なんだか暑いかも……脱いじゃお」

「緩み過ぎだろ」


9 : 以下、名... - 2015/08/23 02:55:59.69 3K8/Ac9P0 9/19



愛梨「え、Pさん!? あ、でも、Pさんなら別に見られても」

「よくないわ」

愛梨「でも、ここ、暑いですし……」

「車内は弱冷房だ」

イヴ・サンタクロース「そうですね。ちょっと寒いくらいです~」

「お前はなんで脱いでんの!?」


10 : 以下、名... - 2015/08/23 02:56:30.02 3K8/Ac9P0 10/19



(目のやり場に困って、また車両を移動してしまった)

(ここも専用車両のようだが……)

ざわざわ 

(他の車両の比じゃないくらいに混んでるぞ!?)

(これは下手に進むと、痴漢冤罪の可能性だってある)

「ん?」

(よく見ると、この車両が専用車両の終わりだ。つまり、ここを抜けさえすれば、気まずい思いをしなくてすむ!)

「……いくか」


11 : 以下、名... - 2015/08/23 02:57:01.40 3K8/Ac9P0 11/19



「すみません、通してください。すみません……」

ぎゅうぎゅう

(良い匂いがするなぁ……いやいや、早く抜けないと)

「きゃ!」

がしっ

「え?」


12 : 以下、名... - 2015/08/23 02:57:27.94 3K8/Ac9P0 12/19



和久井留美「今、この人が私のお尻を……!」

「え、わ、和久井さん!? 誤解です!」

留美「とぼけないで。この掴んだ手が証拠よ」

「そんな!」

留美「P君がまさか、アイドル専用車両に乗り込んでまで、痴漢をする人だなんて……」

「違うんですよ! これは間違って乗ってしまって」

留美「言い訳は聞きたくないわ。事実を認めないなら、この書類にサインをしてもらうわよ」

「婚姻届け!? これじゃあ、既成事実を認めることに……!」


13 : 以下、名... - 2015/08/23 02:57:54.31 3K8/Ac9P0 13/19



三船美優「待ってください。Pさんは無実です」

留美「美優……どういうことかしら」

美優「私は見てました。Pさんは、留美さんを触っていません……」

「三船さん!」

美優「私を触ってたんです」

「三船さん!?」


14 : 以下、名... - 2015/08/23 02:58:20.77 3K8/Ac9P0 14/19



美優「怖くて言い出せなかったけど、留美さんが言ってくれたおかげです……」

留美「そう。そういうつもりなわけね」

美優「なんのことでしょうか。……Pさん。次の駅で一緒に降りてもらえますか」

「そんな、俺は絶対にしてませんよ!」

美優「ふふ、今後のことを、じっくり話し合いましょう」


15 : 以下、名... - 2015/08/23 02:59:16.65 3K8/Ac9P0 15/19



片桐早苗「ストップ! 目の前で痴漢冤罪をされちゃ、黙ってるわけにはいかないかなー?」

美優「冤罪……早苗さん、Pさんが痴漢をしたことを認めたくないのは分かりますが……」

早苗「それなら、美優ちゃんが触られた部位を、P君はどっちの手で触ってたの?」

美優「え、あ、それは……」

留美「あら、答えられないの? 私はもちろん分かってるわ。左手よ」

美優「わ、私も左手です!」

「あの、俺は荷物を左手で持ってたんですけど」

美優「え!? ――そう、ですか。留美さんは、私ごと……」

留美「悪いわね、美優。この勝負、引き分けにさせてもらうわ」

早苗「決まりね。次の駅で降りるのは、留美ちゃんと美優ちゃんよ」

早苗「お酒の出る場で、詳しく話を聞かせてもらうわ♪」

「いや、仕事がありますからね!?」


16 : 以下、名... - 2015/08/23 03:00:20.06 3K8/Ac9P0 16/19



「ふぅ、危なくいわれのない罪を被るところだった……」

「けど、これでアイドル専用車両は抜けたし、もう安心だな」

(見渡す限りアイドルばかりでない……こんなに落ち着くことだったのか)

(あと少しで降りるけど、一息がてら座りたいな。――お、ちょうど一席空いてるぞ!)

すとんっ


18 : 以下、名... - 2015/08/23 03:00:51.90 3K8/Ac9P0 17/19



安部菜々「あっ」

「え」

菜々「あ、あー……な、なんでもないですよ!? 菜々はJKですから、あと数駅くらい余裕」

「どうぞ」

菜々「すんなり譲らないでくださいよ~!?」



21 : 以下、名... - 2015/08/23 03:01:24.26 3K8/Ac9P0 18/19



「はぁ……あの時は大変だったなー」

「とはいえ、今日から通勤には困らないぞ」

「なんとプロデューサー専用車両ができたからな! これで間違ってもアイドルとトラブルは起きないはず……」


22 : 以下、名... - 2015/08/23 03:01:59.27 3K8/Ac9P0 19/19



ピンポンパンポーン

『ただいま、プロデューサー専用車両は、数百万人単位で大変込み合っています』

『プロデューサーの方々は別の車両もご利用になるよう、ご協力をお願いいたします』

「ええ!? でも、どこも満員だし……しかし、この電車に乗らなきゃ遅刻してしまう!」

「プロデューサー、こっちの車両は空いてるよ。乗らないの?」

「おお、本当だ。ありがとう、凛!」

「――って、この車両は」

「大丈夫だよ。みんな、気にしないから」

ざわざわ うふふ えへへ

(今日もまた、アイドル専用車両に乗ってしまった……)




                                      おしまい

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