童女「ひなはきょうもきました。あそんでください」
童女「ひなはかくれんぼがいいです。ひながさがすので、あにさまはかくれてください」
童女「ひとーつ、ふたーつ、みーっつ……」
元スレ
童女「あにさま、あにさま」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1345261607/
童女「ここのつ、とお」
童女「さがしますよ。あにさまはどこでしょうか」
童女「とりいのうしろでしょうか。あじさいのかげにかくれたかもしれません」
童女「あにさま、あにさま、どこですか」
童女「しょうぶのしげみも、すいしゃごやにも、あにさまはおりません」
童女「ひなはさみしくなってきました」
童女「あにさま、ひなのまけです。はやくでてきてください」
童女「あにさま、あにさま、でてきてください」
童女「のこるは、ほんでんさまだけですが」
童女「ちちうえも、ははうえも、はいってはならぬとおっしゃいます」
童女「ひなは、どうすればよいでしょう」
童女「あ、あにさま。いつからそこに」
童女「あにさまがおじょうずにかくれるので、ひなはこころぼそくなりました」
童女「こんどはいっしょにできるあそびにしましょう」
童女「あ、ははうえがよんでいます。かえらなくては」
童女「また、あしたもひなとあそんでくださいね」
童女「ひなはきょうもきました。あそんでください」
童女「あ、それはことりですか。かわいいですね」
童女「ひなでもさわれますか。さわってみてもよいですか」
童女「あ」
童女「ひなにはあにさまのまねはできぬようです」
童女「え、ことりをよんでくださるのですか」
童女「ひとさしゆびだけのばすのですか。こうですか」
童女「あ」
童女「わぁ」
童女「あにさま、みてください。ひなのゆびにことりがとまってます」
童女「わぁ」
童女「あにさまは、ことりとともだちなのですね」
童女「ひなもともだちになれますか」
童女「ともだちになれたら、ひなはとてもうれしいです」
童女「きょうはなにをしましょうか」
童女「ひなはどんぐりをひろいにいきたいです」
童女「でも、あにさまがまつぼっくりがいいとおっしゃるなら、ひなはまつぼっくりでもかまいません」
童女「どんぐりでもよいですか。あにさまはやさしいですね」
童女「あにさま、あにさま、みてください」
童女「ひな、これほどきれいなどんぐりははじめてです」
童女「あ、あにさまのどんぐりはひときわおおきいですね」
童女「あまりにおおきいので、ひなはくりとみまちがえました」
童女「きょういちばんのどんぐりは、ほんでんさまにおそなえしましょう」
童女「きっとよろこんでくれるはずです」
童女「あにさまもそうおもいますか。では、きまりですね」
童女「あにさま、あにさま、ひなはきょうもきました。あそんでください」
童女「あにさま、そのようなかっこうでさむくはないのですか」
童女「よろしければ、ひなのはんてんをきてください」
童女「よいのですか。あにさまはつよいのですね」
童女「あにさまのゆきだるまはおおきいですね」
童女「ひなはまだちいさいので、これくらいのゆきだるましかつくれません」
童女「ひなも、はやくおおきなゆきだるまをつくりたいです」
童女「でも、ならべるとひなたちみたいで、なんだかうれしいですね」
童女「はー」
童女「てがかじかんでしまいました」
童女「はー」
童女「あ、あったかい」
童女「あにさまのてはおおきくて、あったかくてだいすきです」
童女「あにさま、あにさま、ひなはきょうもきました。あそんでください」
童女「あにさま、あにさま、おひるねですか」
童女「たしかに、ちかごろあたたかくて、きょうはまさにおひるねびよりです」
童女「あにさま、ひなもとなりでねていいですか」
童女「ん」
童女「ああ、きょうもひなはねてしまいました」
童女「ちかごろ、あにさまのところにきてはおひるねばかりしているきがします」
童女「あにさま、あにさま、おきてください」
童女「きょうはもうかえりますが、あしたはきっと、ひなとあそんでくださいね」
……
少女「あにさま、あにさま、ひなは今日も来ました。遊んで下さい」
少女「あにさま、今日は一段と暑いので、川に涼みにいきませんか」
少女「もしあにさまが川より裏山がいいとおっしゃるなら、ひなは裏山でも構いませんが」
少女「川でよいのですね。早速行きましょう」
少女「あにさま、あにさま、こっちです。水が冷たくて気持ち良いですよ」
少女「足をつけただけでも、夏の暑さを忘れますね」
少女「あ、沢蟹。あにさま、沢蟹ですよ」
少女「今日は沢蟹を入れる囲いを作って遊びましょう」
少女「あにさま、あにさま、こんばんは。ひなです」
少女「夏の終わりに、あにさまと蛍が見たくて来ました」
少女「さ、父上達に気付かれる前に行きましょう」
少女「わぁ」
少女「沢にも田んぼにも、村中に蛍がたくさん」
少女「今夜ばかりはお月様に主役を譲っていただかないと」
少女「あにさま、綺麗ですね」
少女「また、来年も一緒に見ましょう」
少女「あにさま、あにさま、ひなは雨にも負けず今日も来ました」
少女「夏も終わりですね。ひなは毎年、この雨が夏の残り香を洗い流している気がします」
少女「あにさまもそう思っていたのですか。さすがはあにさま」
少女「くしゅんっ」
少女「あ、大丈夫です。少し濡れただけです」
少女「あ」
少女「いいのですか。あまり優しくされると、ひなはもっと甘えたくなってしまいます」
少女「では、雨が止むまで、このままでいて下さい」
少女「ひなは今日も来ました。遊んで下さい」
少女「境内が落ち葉だらけですね。これでは気になって遊べません」
少女「あにさま、ひなは境内の掃除をします。しばしお待ち下さい」
少女「あ、手伝って下さるのですか。ありがとうございます、あにさま」
少女「綺麗になったのは良いのですが、日が暮れてしまいましたね」
少女「ひなは、日の入りが早いので秋冬があまり好きではありません」
少女「一年中、夏くらい日が長ければ良いのに」
少女「名残惜しいですが、ひなはこれで帰ります」
少女「あにさま、また明日」
少女「ひなは今日も来ました。遊んで下さい」
少女「今日は久方ぶりに雲ひとつ無い秋晴れですね。雨続きだったので少し不安ですが、紅葉を見にいきませんか」
少女「あにさまが栗拾いがいいとおっしゃるなら、ひなは栗拾いでも構いませんが」
少女「栗拾いは明日でいいのですね。では、本殿様いってきます」
少女「よかった、まだ散りきってはいませんね」
少女「今年は無理かと思っていただけに、ひなは安心しました」
少女「裏の山道も、この季節は見違える鮮やかさですね」
少女「勿論、普段の山道は見飽きたという意味ではありませんよ」
少女「何度もあにさまと歩いているのに、ひなは毎回新鮮に感じます」
少女「わぁ」
少女「金色の海。皆の努力が今年もたわわに稔ったのですね」
少女「山頂からの景色は、秋が一番ですね」
少女「ひなは春も夏も秋も冬も、実は大好きなのです。あにさま、知ってましたか」
少女「知っていたのですか。あにさまは何でもお見通しなのですね」
少女「あ」
少女「鼻緒が切れてしまいました。歩きづらいですね」
少女「え、おんぶですか。大丈夫です。ひなは歩けます」
少女「おっと、っと」
少女「すみません、見栄をはりました」
少女「あにさま、ひなは重くないですか」
少女「いえ、わらべだった頃に比べると、ひなも随分大きくなったので」
少女「あにさまにおぶられるのは、どれくらいぶりでしょう」
少女「やっぱり、あにさまの背中は大きいですね」
少女「あにさま、あにさま、あけましておめでとうございます」
少女「新年一番にあにさまの顔が見たいので、ひなは夜中に抜け出してきました」
少女「あにさま、今年もひなと遊んで下さい」
少女「願わくば、末永く仲良くしてやって下さい」
少女「ひなは今日も来ました。遊んで下さい」
少女「あにさま、今日はささやかながらお食事を用意して来ました。一緒にお花見をしましょう」
少女「今年も境内の桜が咲きましたね。十二年前のこの桜が咲いた日に、ひなは生まれたと母上がおっしゃっていました」
少女「お味はいかがですか。一生懸命作ったのですが」
少女「美味しいですか。うれしいです。あにさまに喜んで頂きたかったので、頑張った甲斐がありました」
少女「桜が散ってしまう前に、もう一度お花見しましょう。今度はさらに美味しい料理を作ってきます」
……
女「兄様、ひなです」
女「ひなの嫁ぎ先が決まりました」
女「ひなは、ひなは、兄様以外に嫁ぎたくありません」
女「我が儘なのはわかっています。でも、兄様をお慕いしているこの気持ちには、どうしても逆らえないのです」
女「兄様、お願いです。どうかひなを連れ去って下さい」
女「それが叶わぬ願いなら、どうか一言、幸せになれと言って下さい」
女「ありがとう、兄様」
女「この十五年、ひなは幸せでした」
女「今日までありがとうございました、本殿様」
女「ひなはきっと、幸せになります」
――ひな――
女「はい」
――私のかわいい妹よ、末永く幸せにな――
………………
童女「ははうえー」
女「はーい」
童女「これ、なぁに」
女「これは本殿様のおうちよ」
童女「ほんでんさま」
女「そう。遊んで下さいって言ったら、きっと一緒に遊んでくれるわ」
童女「ほんとっ」
女「ええ、本当よ」
童女「ひなです。ほんでんさま、いっしょにあそんでください」
おしまい
87 : 以下、名... - 2012/08/18(土) 16:49:56.49 JYfx/v75O 39/39ありがとうございました
グッドエンドにしたい気もしたけど、今回はトゥルーっぽく終わります