関連
男「明日、いっしょに海月を見にいこう」幼馴染「う、うん」【前編】


210 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:21:48 T6kPUrQg 172/394




幼馴染「男はさ」

「うん」

幼馴染「くらげのどういうところが好き?」

「うーん……」

「神秘的というか、幻想的なところかなあ」

幼馴染「なるほど……」

「……」

幼馴染「わ、わたしも幻想的じゃない?」

「それはちょっと無理があるんじゃないかなあ」

211 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:22:24 T6kPUrQg 173/394


幼馴染「ほ、ほかは?」

「ほか。ううーん……」

「……透明で、ふわふわしてて、ぷにぷにしてそうなところ?」

幼馴染「わ、わたしって」

「うん。ふわふわしてて、ぷにぷにしてると思う」

幼馴染「でも透明じゃない……」

「透明感はあるんじゃないかな、よく分かんないけど」

幼馴染「よろこんでいいの?」

「よろこんでほしい」

幼馴染「やったー」ピョンピョン

「子どもか」

幼馴染「わたしは子どもだよ」

「今の発言は子どもっぽくないな。へんな感じだ」

212 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:23:39 T6kPUrQg 174/394


幼馴染「わたしって、ぷにぷにしてる?」

「してる」

幼馴染「どのあたりが?」

「手とか」プニプニ

幼馴染「うん」

「ほっぺたとか」ツンツン

幼馴染「むう」

「あと……」

幼馴染「あと?」

「おっぱ……」

幼馴染「え?」

「いや、なんでもない。なにかあったような気がしたけど、なにもなかったわ、うん」

213 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:24:42 T6kPUrQg 175/394


「海月を見てるとさ」

幼馴染「うん」

「落ち着くんだけど、感傷的な気分になる」

「なんかいいなあって、うらやましいなあって思う」

幼馴染「わかんない」

「儚い感じが好きなのかも。俺にもよく分からないや」

幼馴染「儚いのが、うらやましいの?」

「それはたぶん違うと思う」

「ほら、くらげってさ、ゆったりとぷかぷかと浮かんでるだろ」

幼馴染「うん」

「そういうところがうらやましいなあって思う」

214 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:25:22 T6kPUrQg 176/394


幼馴染「くらげみたいに、ゆったりとぷかぷかしたい?」

「海月みたいに、身体の力を抜いて、水の中でぷかぷかと浮かんでいたい。ずっと」

「なにも考えずに、ふたりで、時間を気にしないで、ゆっくりと」

幼馴染「うん」

「死ぬ時はひっそりと死にたい」

幼馴染「まだ二十歳にもなってないのに、死ぬ時のことなんて考えてる場合じゃないよ」

「海月を見てると、そういう事を考えちゃうんだよ」

幼馴染「くらげ、だめ」

215 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:26:17 T6kPUrQg 177/394


「最近さ」

幼馴染「ん」

「『夢を見る時間は終わった』って言葉が頭から離れないんだ」

幼馴染「それは何?」

「わからないけど、とにかく離れないんだ」

「すごくもやもやするし、不安になる」

幼馴染「男が見てた夢って、どんな夢?」

「夢」

幼馴染「そう」

216 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:27:00 T6kPUrQg 178/394


「夢……こうやって、お前といっしょにいること?」

幼馴染「……それだと、いつもとあんまり変わらないんじゃないの?」

「……今は、特別な時間なんだよ。そんな気がする」

幼馴染「どういうこと?」

「今は、夢を見てるみたいな気分だってことじゃないかな」

「信じられないくらい幸せな夢を見てる」

幼馴染「そっか……」

幼馴染「わたしも今、すごく幸せだよ」

「うん……ありがとう」

217 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:28:35 T6kPUrQg 179/394


幼馴染「男はさ、儚いのが好きなの?」

「場合によるかな」

「海月みたいな儚さは好きだけど、俺たちが儚い終わりを迎えるのは嫌だ」

幼馴染「まだはじまってない、とわたしは思うよ」

「どうやったらはじまるんだろう」

幼馴染「……」

「……」

幼馴染「……」

幼馴染「……すき」

「……」

幼馴染「……わたし、男の事がすき。だいすき」

幼馴染「ずっといっしょにいたい」

「……」

幼馴染「……男は? わたしのこと、どう思ってる?」

218 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:29:16 T6kPUrQg 180/394


「どうって……」

幼馴染「……」

「……好き。すごい好き。ずっといっしょにいたい」

「気持ち悪いかもしれないけど、抱きしめてそのまま眠りたいって、ときどき思う」

「いっしょにいろんなところに行きたいし……」

幼馴染「……」

「あー……はずかしい。顔が焼けそう」

幼馴染「うん……」

幼馴染「夢を見る時間は終わったんだよ」

「……そんな気がする」

219 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:29:48 T6kPUrQg 181/394


幼馴染「手、つないでいい?」

「うん」

幼馴染「……」ギュ

「……」

「……」ギュ

「……」

幼馴染「……」

「……ずっとこうしていたい」

幼馴染「ずっといっしょにいるよ」

「ずっと」

幼馴染「死ぬまで」

「俺たちは永遠に死なないような気がする」

幼馴染「むふふふふ」

220 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:30:45 T6kPUrQg 182/394




男友「海月の何がいいんだろう」

幼友「海月のよさはちょっと理解できないなあ」

男友「でもふたりともうれしそうな背中してる」

幼友「わかる。手の繋ぎ方が完全にあれだ」

男友「見てるこっちがこっ恥ずかしいわ」

幼友「見る側からすればあんまり健康にいいもんではないね」

男友「さっさと出よう」

幼友「見つからないようにね」

男友「見つかるわけないだろ」

幼友「だよね」

221 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:33:07 T6kPUrQg 183/394




幼友「ああー……」ノビー

男友「ううーん……」ノビー

幼友「久しぶりの外だ……」

男友「開放感があっていい」

幼友「ああいう暗くて狭いところはちょっと苦手かも。息苦しい」

幼友「やっぱり外がいちばんだ」

男友「寒いけどな」

幼友「そうかな?」

男友「寒くないか?」

幼友「おかげさまで」

男友「どういうこっちゃ」

222 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:34:19 T6kPUrQg 184/394


男友「それで」

幼友「ほい」

男友「どうする?」

幼友「どうするって?」

男友「これから」

幼友「どうしようか?」

男友「解散?」

幼友「えー。もうちょっとだらだらしようよ」

男友「どこで?」

幼友「歩きながら考える。はい、とりあえず出発」

男友「足いたい。座りたい」

幼友「じゃあベンチに座って考える」

223 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:35:10 T6kPUrQg 185/394


男友「なあ」

幼友「なに」

男友「近くない?」

幼友「なにが」

男友「俺と幼友さんの距離」

幼友「それはどういう意味?」

男友「いや、心がどうとかそういう事じゃないんだよ?」

男友「俺と幼友さんがベンチに並んで座ってるって、すごい事じゃないかな」

幼友「そうかな」

男友「あと5センチくらいで手が触れ合っちゃいそうなんだけど。近いよ」

224 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:35:51 T6kPUrQg 186/394


幼友「いっしょに水族館に行っておいて、今更ベンチの両端に座るのもおかしい話じゃない?」

男友「一理ある。でも近すぎない?」

幼友「不満?」

男友「とんでもない」

幼友「よかった」

男友「それって」

幼友「深い意味はない」

男友「ですよね」

225 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:38:07 T6kPUrQg 187/394


幼友「見てよ、あれ。でっかい観覧車」

男友「そうだな」

幼友「……」

男友「……」

幼友「あむじゃすしってぃひあうぉっちんざうぃーうずごらんだらーあうん」

男友「うん」

幼友「……回るものを見るのが好きなんだよね」

男友「つぎは『もう長い間、メリーゴーラウンドには乗ってない』って言うのかな。ジョン・レノン的な」

幼友「バレたか」

226 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:39:33 T6kPUrQg 188/394


幼友「あのさ」

男友「うん」

幼友「わたし今、すごく良いことを思いついたんだけど」

男友「聞くだけ聞いてみるよ」

幼友「いっしょに観覧車乗ろうよ」

男友「あー」

幼友「なに」

男友「いや、今のやつ録音しとけばよかったなあって」

幼友「もう一回言うから、さっさと準備してよ」

男友「冗談だって」

227 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:41:07 T6kPUrQg 189/394


幼友「さあ行こう」

男友「いや、ちょっとストップ。よく考えてみようぜ」

幼友「なにを」

男友「観覧車ってあれだろ、密室だろ」

幼友「うん」

男友「あの観覧車はでかいから、けっこう長い間乗ることになると思うわけ」

幼友「そうだね」

男友「俺は男で、幼友さんは女であるわけですよ」

幼友「うん」

228 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:42:16 T6kPUrQg 190/394


男友「ほんとうに乗るの?」

幼友「なに、そういうことをしようと目論んでるわけ?」

男友「とんでもない」

幼友「だったらなにも問題はないよね」

男友「そうだけど、そうだけど……ううん」

幼友「わたしじゃ不満?」

男友「そういうことじゃない。ただ、個人的な問題なんだ」

幼友「なにそれ」

男友「俺にもよく分からないけど、『ほんとうに乗っていいのか?』って思うんだ」

幼友「ふうん」

男友「なんか、もやもやするんだ。今のままがいいというか……」

幼友「ごちゃごちゃ考えてないで」グイッ

男友「え」

幼友「もうちょっとだけシンプルに行こうぜ、男友くん」

229 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:43:39 T6kPUrQg 191/394


幼友「行こう」スタスタ

男友「……」スタスタ

幼友「……」

男友「……」

幼友「なにか喋ってよ」

男友「幼友さんの指、ほそい」

幼友「男友くんの手首は思ってたよりも太いね」

男友「女の子に手首掴まれて引っ張られるのってはじめてなんだけど」

幼友「男の子の手首を掴んで引っ張るのははじめてだよ」

男友「いつも通りではない?」

幼友「とくべつだよ」

男友「とくべつ、ねえ」

230 : 以下、名... - 2014/01/29(水) 21:44:43 T6kPUrQg 192/394


幼友「たとえば、たとえばの話だよ?」

幼友「わたしが今、ずっと好きだったんだぜって言ったら、どうする?」

男友「相変わらず綺麗だなって言えばいいの?」

幼友「わりと真面目に言ったら? 昔から好きでしたって、ずっと見てましたって言ったら、どうする?」

男友「どうするって……よろこぶ」

幼友「ふうん?」

男友「もしかして今の」

幼友「冗談だよ」

男友「ですよね」

幼友「っていうのも冗談で、これも嘘。ほんとうは好き」

幼友「それも嘘。ほんとうはぜんぶ嘘。でもほんとうかもしれない」

男友「わかんねえ」

幼友「観覧車でゆっくり話したい」

男友「そういうふうに言われると期待してしまうのが男友くんだよ」

幼友「できるだけ期待に答えられるように頑張ってみるよ」

236 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:42:14 ATZ245lY 193/394




幼友「観覧車に乗るのなんて何年ぶりだろ」

男友「ちっちゃい頃以来だ」

幼友「うわ、思ってたよりも揺れるね。こわい」

男友「そうだな」

幼友「あれ、超冷静じゃん。もっとどぎまぎしてくれてもいいんだよ」

男友「幼友さんだってあっけらかんとしてるし、俺だけテンション上げるのもなんだかなあと思って」

幼友「こう見えてもドキドキしてるんだよって言ったらどうする?」

男友「また冗談?」

幼友「違うよ。これはほんと。ドキドキしてる」

237 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:42:50 ATZ245lY 194/394


幼友「男友くんはドキドキしてない?」

男友「してるに決まってるじゃないですか」

幼友「なぜに敬語」

男友「だって、女の子といっしょに観覧車に乗ってるんですよ?」

幼友「あらためてそう言われるとすっごいはずかしいかも」

男友「そりゃあ誰だって敬語になりますですよ」

幼友「変わった体質だね」

238 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:43:22 ATZ245lY 195/394


幼友「……」

男友「……」

幼友「……」

男友「……」

幼友「……なんか喋ってよ」

男友「……なんかって、何」

幼友「なんでもいいよ。好きなことをどうぞ」

男友「なにそれ。むずかしい」

239 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:44:10 ATZ245lY 196/394


男友「えー……」

幼友「……」

男友「……観覧車って、どういう事をするための乗り物なの?」

幼友「景色を見て楽しむための乗り物じゃないの?」

男友「景色を見て楽しむって、俺には似合わないよな」

幼友「そうだね。メリーゴーラウンドと観覧車は男友くんには似合わないね」

男友「個人的な意見だけど、幼友さんにもあんまり似合わない気がする」

幼友「観覧車が?」

男友「うん。あとメリーゴーラウンドも」

幼友「当たってると思う」

240 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:46:14 ATZ245lY 197/394


幼友「個人的な意見だけど、観覧車って乗り物そのものには大した魅力はないと思うんだよね」

幼友「でも誰かといっしょに乗った時には、まったくべつのものになると思うわけ」

男友「誰か、ねえ」

幼友「そう、誰か。わたしの場合は男友くんだけど」

男友「俺の場合は幼友さんだけど」

幼友「当たり前でしょ」

男友「おっしゃるとおりです」

幼友「とにかく、誰かだよ。でもその誰かってさ、誰でもいいってわけではないんだよね」

幼友「わたしはそう思ってるんだよ。そういうところは分かっててほしいな」

男友「な、なにそれ」

241 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:48:02 ATZ245lY 198/394


幼友「いやさ、わたしが男友くんとまともに会話をしたのは昨日が初めてでしょ」

男友「そう考えると、今こうやってふたりで観覧車に乗ってるのってすげえ不自然だ」

幼友「でしょ。それで、誰とでもこうやって観覧車に乗ったりする尻の軽い女だって思われたくないわけ」

男友「ふうん。誰とでも観覧車に乗るの?」

幼友「乗らない」

男友「知ってる」

幼友「なぜ」

男友「観覧車に乗るのなんて何年ぶりだろって言ってたじゃん」

幼友「言ってたね」

242 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:48:53 ATZ245lY 199/394


男友「誰とでも乗るわけじゃないってのは分かったけど、俺はいいの?」

幼友「いい」

男友「なぜ」

幼友「わかんない」

男友「はあ」

幼友「たのしいね」

男友「そうだな」

幼友「そういうところがいいと思うよ」

男友「なにが?」

幼友「そういうところが男友くんのいいところだと思う」

男友「わからん」

243 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:53:16 ATZ245lY 200/394


幼友「話しやすいんだよね、男友くんって」

男友「そうかな」

幼友「個人的な意見ね。気が合うっていうのかな、なんか仲良くなれそうな気がしたんだよね」

男友「立場が似てたからじゃないの」

幼友「かもね」

男友「ヤマダ電機とコジマみたいに」

幼友「うん……うん? うーん……」

244 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:53:53 ATZ245lY 201/394


幼友「……」

男友「……」

幼友「……」

男友「……」

幼友「……だまってないで、なにか喋ってよ」

男友「なにか、ねえ」

幼友「観覧車、まだ半分も回ってないよ」

男友「でも、もうすぐてっぺんだし、外の景色でも見るとかどうかな」

幼友「わたし達には似合わないと思うんだよね、そういうの」

男友「四の五の言わずに見る」

幼友「ぶー」

245 : 以下、名... - 2014/02/01(土) 21:55:05 ATZ245lY 202/394


男友「どれどれ……」ジィー

男友「あー、はいはい、なるほどね」

幼友「うーん。微妙だね、景色」ジィー

男友「俺もそう思う」

幼友「夜だったらもっと綺麗だったかもしれないのにね」

男友「かもしれないな」

幼友「なんかロマンチックさの欠片も感じない景色だ」

男友「ロマンチックさを感じたいわけ?」

幼友「女はみんなロマンチックが好きなんだよ」

男友「そういうもんかな」

幼友「女はみんなロマンチックが好きで、ほんとうにロマンチックなのは男のほうだって、誰かが言ってた」

男友「ふうん」

250 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:00:35 5k6qJt52 203/394


幼友「……」

男友「……」

幼友「……」

男友「……」

幼友「……どうぞ? 喋ってよ?」

男友「いや、待ってくれよ」

幼友「分かった。待つ」

男友「そうじゃなくて」

男友「『観覧車でゆっくり話したい』って言ったのは幼友さんだよね?」

幼友「よく覚えてるね」

251 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:01:45 5k6qJt52 204/394


男友「俺、言うよ? 言っちゃうよ?」

幼友「なにを」

男友「言いたいこと」

幼友「言っちゃいなよ」

男友「観覧車に乗る前にさ、ごまかしてたけど、なんかとんでもないことを言ったじゃないですか」

幼友「なんのことかな」

男友「好きだとか、嘘だとか、ほんとうかもしれないとか」

幼友「あー、それ言っちゃう?」

男友「あれ、もしかしてまずかった?」

幼友「かなりまずいね。やばいよ」

男友「そうだったか。ごめんなさい」

252 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:03:51 5k6qJt52 205/394


幼友「あれは、あれだよ」

男友「あれって、どれ」

幼友「どれって……」

男友「……」

幼友「……」

男友「……」

幼友「あー……」

幼友「やっぱり、あれは無かったことにしよう」

男友「え」

幼友「あれは幻聴だよ、男友くん」

男友「なにその雑なごまかし方」

253 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:05:23 5k6qJt52 206/394


男友「幼友さんってすげえ雑なところがあるよね」

幼友「失敬な」

幼友「……あれは、あれだよ。半分ほんとうで、もう半分は嘘みたいな」

幼友「深い意味はないってことにしておいて。若気の至り」

男友「雑だ」

幼友「うるさい。だまれ」

男友「雑な言い方だ」

幼友「好きです! ずっと見てました! はい、嘘です! ばーか!」

男友「雑だ」

254 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:06:33 5k6qJt52 207/394


幼友「はあ……」

男友「……」

幼友「つかれた……」グッテリ

男友「いきなりだな」

幼友「ねむい」

男友「寝ればいいと思う」

幼友「やだ、もったいない」

男友「なにが」

幼友「時間が」

男友「よく分からん」

255 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:08:08 5k6qJt52 208/394


幼友「わたしが寝ちゃわないようになにか喋っててよ」

男友「べつに眠たかったら寝ればいいじゃん」

男友「それに、降りるまで無言ってのも悪くないんじゃないかな」

幼友「なに、わたしに眠ってほしいわけ?」

男友「まあ、寝顔とか見れたらおいしいし」

幼友「べつに見てもいいけど、放って行かないでね」

男友「俺がそんな薄情な男に見えると」

幼友「見えないよ。わたしには」

男友「そうですかい」

256 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:09:26 5k6qJt52 209/394


幼友「いや、でもさ、いくらなんでもこんなところで、しかも男の子の前でとか寝れるわけないじゃん」

男友「まあ、そうかもな」

幼友「わたしが自意識過剰なだけかもしれないけど」

男友「それくらいがちょうどいいんじゃないかな」

幼友「そうかな」

男友「幼友さんはそれくらいでちょうどいいと思う」

幼友「どういう意味?」

男友「そのままの方がいいと思うという個人的な意見」

幼友「ふうん」

257 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:11:15 5k6qJt52 210/394


男友「さあ、観覧車から降りたらどうしようか」

幼友「観覧車に乗ってる最中にそういうこと考えるのはだめだと思うんだよね」

幼友「降りてからゆっくり考えようよ。どうせまだまだ時間はあるんだし」

男友「そうだなあ」

幼友「だから、もうちょっとだけこうしていようよ」

男友「そうするか」

幼友「……」

男友「……」

幼友「たのしいね」

男友「たのしいな」

258 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:12:12 5k6qJt52 211/394


男友「なにかしゃべってよ」

幼友「えー」

男友「じゃあ唄ってよ」

幼友「うーん……」

幼友「……」

幼友「えーびでーいあうぇいかあっぱんでぃつさんでーい」

幼友「わればーじんまいへーえうぉんとごーおうぇーい」

幼友「……」

男友「あれ、終わり?」

幼友「知ってる?」

男友「なにが?」

幼友「今の曲」

男友「知らない」

幼友「よかった」

259 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:13:43 5k6qJt52 212/394


幼友「もう終わりだ」

男友「もう終わっちゃったか」

幼友「早いね」

男友「こんなもんじゃないかな。もう一回乗る?」

幼友「なに、もう一回乗りたいの?」

男友「いや、今はいいかな」

幼友「今は」

男友「そう。今はいいや」

幼友「はい、だったらすばやく降りる」

男友「押すなって」

260 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:15:10 5k6qJt52 213/394


男友「あー、外だ……」ノビー

幼友「あー、さむい」ノビー

「え?」

男友「え?」

幼馴染「あれ?」

幼友「あら」

「……」

男友「……」

「……なにしてんの?」

男友「なにって……」チラッ

幼友「なにしてるように見える?」

「デート……なわけないよな」

「男友に限ってそれはないわ」

男友「お前なんなん? 俺をなんだと思ってるの?」

261 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:17:26 5k6qJt52 214/394


男友「それに、お前らこそこんなところで何してんだよ」

男友「くらげ見に行くんじゃなかったのかよ」

「くらげ見て満足したし、今度は観覧車に乗ろうと思って」

幼友「ふうん。たのしかった?」

「それはもう」

幼友「あんたは?」

幼馴染「たのしい」

幼友「よかったね」

幼馴染「うん」

262 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:18:19 5k6qJt52 215/394


幼馴染「幼友ちゃんはなにしてるの? こんなところで」

幼友「なにって……」チラッ

男友「……」

幼友「説明するには時間がかかりすぎると思うから、とりあえず観覧車に乗っておいで」

「なんか複雑な事情があるわけ?」

幼友「まあね」

「脅されたとか?」

男友「お前ほんとなんなん? 俺のことをなんだと思ってるの?」

幼友「そう、脅されたの」

男友「しれっと嘘言うな」

263 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:19:30 5k6qJt52 216/394


幼馴染「じゃあ乗ってくる。行こ」グイッ

「あー、男友」

男友「なんだよ」

「踊りたきゃ踊ればいい」

男友「は?」

「兄弟よ、チャンスを掴みとってくれ」

男友「はあ」

幼馴染「早く行こうよ」グイグイ

「がんばれよ」

男友「おう」

264 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:20:32 5k6qJt52 217/394


幼友「……」

男友「……」

幼友「結局、見つかっちゃったね」

男友「観覧車なんかに乗るから」

幼友「ごめん」

男友「俺はべつにいいんだけどさ」

幼友「わたしだって構わないよ」

男友「そっか」

幼友「さあ、どうしよっか」

男友「ベンチに座りたい」

幼友「じゃあそうしよう」

265 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:21:44 5k6qJt52 218/394


男友「観覧車は眺めてるほうがいい」

幼友「わたしもそう思う」

男友「なんかいいよな、こういうの」

幼友「うん」

男友「お湯入れてから10分経ったカップラーメンみたいで」

幼友「もうちょっとわかりやすくおねがい」

男友「煮過ぎたお餅みたいな」

幼友「うーん……」

男友「雨が降ったあとの、ダンボール製の秘密基地みたいな」

幼友「海月みたいな?」

男友「そんな感じ」

266 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:23:07 5k6qJt52 219/394


幼友「……」

男友「……」

幼友「……」

男友「……」

男友「あー……ええと……」

幼友「無理してしゃべらなくてもいい」

男友「……」

幼友「居心地の良い沈黙もある」

男友「そっか」

267 : 以下、名... - 2014/02/02(日) 23:24:08 5k6qJt52 220/394


十数分後

男友「……」

幼友「……あ、出てきたよ、あのふたり」

男友「いったい観覧車の中でなにしてたんだろうな」

幼友「そんなの決まってるじゃないの」

男友「決まってるんだ?」

幼友「あれだよ、『口にするのも憚られるような淫らな行為』だよ」

男友「俺のパクリじゃん」

幼友「オマージュだよ」

男友「パクリとオマージュってなにが違うわけ?」

幼友「愛の有無じゃないかな、知らないけど」

272 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:48:46 Z60svVBc 221/394




妹友「妹ちゃん」

「なんでしょう」

妹友「お兄さんカップルと仲よさげなあのカップルはどちら様?」

「にいちゃんの友だちの男友くん。女の人の方は知らない」

妹友「ふうん。あっちも仲睦まじいオーラ出てるね。雑巾絞ってる時の水なみに出てる」

「そうかな」

妹友「わたしには分かるのさ」ドヤァ

「ふうん」

273 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:49:55 Z60svVBc 222/394


妹友「ところで、観覧車に乗ってなにしてたんだろね、お兄さんと彼女さん」

「景色見てたんじゃないの。あるいは」

妹友「あるいは?」

「そういうことをしていた」

妹友「なるほど、そういうこと」

「……」

妹友「お兄さん、すごいたのしそうだよ」

「うん……それはいいことだよ……うん……すごくいいこと」

妹友「みんなたのしそう」

「うん……」

妹友「……」

「はあ……」

274 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:51:04 Z60svVBc 223/394


妹友「あの輪の中に入りたい?」

「それはちょっと違うかも」

妹友「お兄さんとふたりきりがいい?」

「今は妹友ちゃんとふたりがいい」

妹友「今は。むずかしい年頃だ」

「自分でもよく分かんないよ」

妹友「もうちょっとだけシンプルに、正直に行こう」

「うん……」

妹友「はい、深呼吸して」

「」スーハー

妹友「さあ、今、どうしたい?」

「今すぐここから逃げ出して家に帰って布団に包まって泣きわめいてグーパンで壁に穴開けてそこに向かって大声で意味のない言葉を叫んで部屋の中を転げ回って何かの角に足の薬指ぶつけて痛みのあまり悶絶しながら自分の惨めさを噛み締めたあとに本棚ひっくり返してテレビとPCの液晶とCD叩き割って吐いてちょっとすっきりしてからもう一回布団に包まって自己嫌悪に陥りながらいつのまにか寝落ちしてそのまま一日中寝てにいちゃんとそういうことをする夢が見たいよお……」グズグズ

妹友「あー、なんかごめんね? 大丈夫?」

275 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:52:22 Z60svVBc 224/394


妹友「今のままじゃ嫌かー?」

「やだ」

妹友「お兄さんともっともっと仲良くなりたいかー?」

「なりたい」

妹友「だったら今することはひとつしかないよ! たったひとつの冴えたやりかただよ!」

「なに」

妹友「おーい! 妹ちゃんのお兄さーん!」

「え」

妹友「へーい! わたしだよー! つぶあんよりもこしあんが好きな妹友ちゃんだよー!」

「ちょ、ちょっと待って……」

276 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:53:12 Z60svVBc 225/394




男友「誰だあれ。男、呼ばれてるぞ。こしあん派のかわいい子に」

幼友「男くんの彼女第二号とか?」

幼馴染「え? そうなの?」

「ちがう。うちの妹の友だち」

幼馴染「妹ちゃんの友だちは彼女第二号なの?」

「だからちがうって」

男友「やることはきっちりやってんだな」

幼友「まあ遊びたい気持ちも分かるけど、ほどほどにね」

幼馴染「信じてたのに……」

「なんなん? その一体感なんなん? ちがうって言ってるやん?」

277 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:54:27 Z60svVBc 226/394


男友「あれ? こしあん派ちゃんの隣のあれって」

幼馴染「男のところの妹ちゃんだ」

男友「そういや電車で見かけたな」

「なにしてんだあいつ」

幼友「デートとか?」

「女同士で?」

幼友「なにもおかしいことはない」

「そうか?」

男友「そういうところには寛容なんだ? 幼友さん」

幼友「同姓でもきょうだいでも、好きになったらしかたないじゃん」

幼友「他人の恋愛の価値観にねちねち言う人は嫌い」

男友「ふうん」

278 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:55:18 Z60svVBc 227/394


妹友「お久しぶりです、お兄さん。こしあん派の妹友です」

「いや、知らんがな。初めて聞いたわ」

「でもまあ、久しぶり。こんなところでなにしてんの?」

妹友「かくかくしかじかです」

「いや、ふつうに説明してくれない? 分からん」

妹友「なにって、ストーカーです」

「はあ」

妹友「妹ちゃんといっしょにお兄さんをストーキングしてました」

「なぜ?」

妹友「かくかくしかじかです」

「いや、だから分からないって」

279 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:56:27 Z60svVBc 228/394


妹友「実はですね、妹ちゃんはお兄さんのことが」

「俺のことが?」

「ストップ」ガツン

妹友「ひっ、いたい!」

「なんでそういうこと言うの」

妹友「ごめん、つい勢いで」

「ぜったいにやめてよね」

妹友「分かってるって」

280 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:58:26 Z60svVBc 229/394


妹友「お兄さん、これからどっか行くんですか?」

「まあ、たぶん。ふらふらする予定ではあるけど、たぶん」

妹友「わたし達も付いて行っていいですか?」

「え」

「え? 俺はべつにいいけど……」チラッ

幼馴染「わたしもいいよ。人数多いほうがたのしいこともある」

妹友「ありがとうございます」

「べつにおもしろいことはないと思うぞ」

妹友「いいんですよ、ね?」

「……うん」

281 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 22:59:27 Z60svVBc 230/394


妹友「はい、ふぁいとー」

幼馴染「しゅっぱーつ」

「なんかちがうぞ。まあなんでもいいけど」

「そんで、妹さんや」

「なに」

「ほんとうはなにしてたんだ?」

「ストーカー」

「俺の?」

「うん」

282 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 23:00:45 Z60svVBc 231/394


「誰が?」

「わたしが」

「なんで?」

「心配だったから」

「そうか」

「うん」

「俺は大丈夫だって」

「わたしは大丈夫じゃない」

「お前はしっかりしてるから大丈夫だって」

「ぜんぜん大丈夫じゃないんだよ。知らない?」

「そうなんだ?」

「そうなんだよ」

283 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 23:02:25 Z60svVBc 232/394


「さあ、どこに行くか」

幼馴染「どこに行くって言っても、もう16時だね」

妹友「もうそんな時間に」

「あ」

「どうした」

「晩御飯のうどん買いに行かなきゃ」

幼友「ほう、妹ちゃんがご飯作るの?」

「今日はお父さんとお母さんがいないから」

「え? そうなの? なんで?」

「結婚記念日。夫婦水入らず」

「あー、なるほど。昨日の晩飯がカレーだったのはそういうことなのか?」

「どうかな」

284 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 23:04:02 Z60svVBc 233/394


幼友「男くんとこの晩御飯はうどんか」

「カレーうどん」

幼友「ご飯作るとか女子力高い。すぐにいい人が見つかるよ、妹ちゃん」

「そうかな」

男友「先生、質問です。女子力って具体的にいうとなんなんですか?」

幼友「女子が女子だと思ったらそれは女子力だよ」

男友「ぜんぜん分からん」

幼友「じゃあ訊くけれど、男らしさって具体的になんなの」

「あー、そういう感じですか」

幼友「そう。そういう感じ」

285 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 23:05:04 Z60svVBc 234/394


「うーん、16時かあ……。じゃあどうしようか」

妹友「帰ります?」

「いや……うーん。……あー、良いことを思いついた」

幼友「良いことを思いついたってのはね、思いついた本人にとってはいいことかもしれないけど」

幼友「周りから言わせてもらえば大抵の場合、それは良いことではないんだよね」

男友「また俺のパクリかよ」

幼友「オマージュね。愛がある方だよ。そこは分かっててほしいな」

男友「なんだそりゃ」

286 : 以下、名... - 2014/02/05(水) 23:05:55 Z60svVBc 235/394


幼馴染「それで、いいことってなに?」

「みんなで俺の家に行こう」

男友「みんなって、この六人でか?」

「そう。どうかな」

男友「俺に訊いてないで嫁に訊けよ」

「誰もお前に訊いてねえよ、うどん野郎」

男友「なんでうどん野郎なんだよ」

「お前しこしこしてるだろ」

男友「お前それうどんに謝れよ。俺のそれとうどんのそれをいっしょにしたらまずいだろ」

294 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 22:48:13 O40DaMXY 236/394


男友「それで、お前んちに行って俺達はどうすりゃいいんだよ」

妹友「まあ、いいじゃないですか。行ってから考えましょうよ」

幼馴染「そうそう、べつにこたつで寝転がるだけでいいんだよ」

男友「そういうもんかね」

「そういうもんさ」

男友「はあ」

「行くんなら早く行こうよ」

妹友「じゃあ行きましょう」

幼馴染「のりこめー」

幼友「わぁい」

295 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 22:49:26 O40DaMXY 237/394


男友「あー、妹友ちゃん? で名前あってる?」

妹友「はい」

男友「俺たちって、きょう会うのがはじめてだよね?」

妹友「そうですね」

妹友「ちなみに言っておくと、ここにいるみんなの中だと、妹ちゃんのお兄さん以外は初対面です」

男友「素晴らしい順応性だ」

妹友「わたしは熱いコーヒーにぶちこまれたスティックシュガーみたいに周りに溶け込めますよ」

男友「ぶちこまれたとか言わない」

妹友「いまのはツッコミを誘うためにわざと汚い言葉遣いにしたんですよ」

男友「ダウト」

妹友「バレましたか。以後気をつけます」

296 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 22:52:02 O40DaMXY 238/394


「おーい」

「早く行こうよー、妹友ちゃん、男友くん」

妹友「すぐ行く。走って行く」

男友「どっかで聞いたような台詞だな」

妹友「気のせいですよ」

男友「なんだったかなあ……どっかで見たんだったか……」

妹友「先に行きますよ。未来で待ってますよ」

男友「あー、すぐ行く。走って行く」スタスタ

297 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 22:53:34 O40DaMXY 239/394


「」ペチャクチャ

幼馴染「」ペチャクチャ

妹友「」ペチャクチャ

「」ペチャクチャ

幼友「……」チラッ

男友「……」

幼友「……」チラッ

男友「……なに?」

幼友「いや、なんで距離あけて歩いてるのかなと思って」

男友「たまにはちょっと離れたところから微笑ましい景色を見守るのもいいかなと思って」

幼友「なにそれ。わたしもそっち行く」

298 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 22:55:51 O40DaMXY 240/394


男友「べつに俺なんかに気を遣わなくてもいいんですよ」

幼友「そういう事じゃない。個人的な気分の問題なの」

男友「といいますと」

幼友「ほら、あの4人」

男友「うん」

幼友「あれで完成してる感じがするでしょ」

男友「俺にはよく分からない」

幼友「じゃあ喩え話にする」

男友「わかりやすい喩えにしてくれよ」

幼友「まかせなさい」

299 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 22:58:36 O40DaMXY 241/394


幼友「じゃあ、あの4人を同じ長さの線であるとしよう」

男友「うん」

幼友「いま、その4本の線はつながり合って、正方形になってるわけよ。完璧な正方形ね」

幼友「しかも周りにはなにもないわけだ。真っ白な紙の上の完璧な正方形」

男友「うん」

幼友「そこへもう一本の線、つまりわたしが行くと、その調和が乱れるわけだよ」

男友「調和ってなんか大げさだな」

幼友「わたしが線だとしても、たぶんあの4人とは長さが違うんだよね。波長が違うってやつ?」

幼友「だから完璧な五角形にはならない」

幼友「歪な五角形が完成する、というか、なにも完成しない、みたいな感じ」

男友「わかりやすいようでわかりにくいような微妙なたとえだ」

幼友「けっこう頑張ってるんだけどなあ」

300 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 23:00:24 O40DaMXY 242/394


男友「べつにつながらなくても、周りにいればいいんじゃないかな」

幼友「真っ白な紙の上に、落書きみたいに?」

男友「たぶんそんな感じ」

幼友「それだよ、それなんだよ、男友くん」

男友「なにが」

幼友「わたしはそれが耐えられないんだよ」

男友「といいますと」

幼友「音楽だってそうじゃん。音を詰め込みまくればいいってわけじゃないじゃん」

男友「なにが言いたいわけ?」

301 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 23:04:12 O40DaMXY 243/394


幼友「余白を含めて、その紙の上の正方形は完璧なんだってこと」

幼友「大事なのは隙間、なにもない場所だよ」

男友「はあ」

幼友「素人目で見れば気にならないかもしれないけど」

幼友「目の肥えたお偉いさんから見れば、そういう小さな落書きは非常に不愉快なわけ」

幼友「素人目で見ればあれだよ、いてもいなくても変わらない、だよ」

幼友「わたしはそれに耐えられないって話。分かってくれた?」

男友「なんとなく」

幼友「ありがと」

302 : 以下、名... - 2014/02/09(日) 23:07:19 O40DaMXY 244/394


男友「じゃあ、いまの俺たちは完璧なわけ?」

幼友「完璧ではないと思うよ。たぶんわたし達って、波長はかなり近いけど、長さが違うんだよ」

幼友「それに、今のところはずっと平行のまま」

男友「つながってない」

幼友「たぶんね」

男友「そうかな」

幼友「むずかしいところ」

男友「でも、いま誰かがここに入ってきたら、こういう空気は崩れちゃうわけだろ」

幼友「うん」

男友「だったら完璧じゃなくてもいい」

幼友「そうだね。ありがと」

307 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:13:22 LletpRZM 245/394




「あー、うどん買うんだったっけ」

「うん。二玉」

「どこにうどん買いに行こうか」

「うどん売ってるところならどこでもいいよ」

妹友「じゃあ丸亀製麺に行こうって言ったら」

「却下」

「そりゃそうだ」

308 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:14:32 LletpRZM 246/394


「あ」

「どしたの」

「いいことを思いついた」

幼馴染「それってほんとうにいいことなの?」

「たぶん」

妹友「言ってみてくださいよ」

「みんなで俺の家でうどん食べる」

幼馴染「みんなって?」

「この6人で」

309 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:15:27 LletpRZM 247/394


「どうかな?」

幼馴染「いいと思う、すごく」

妹友「そうですかね」

幼馴染「あれ? いいと思わない?」

妹友「いやあ、家族団欒の時間を邪魔しちゃ悪いかなあと思って」

幼馴染「あー、そっかあ」

「いいよ」

妹友「え?」

「いい。みんなで家でうどん食べよう」

310 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:16:13 LletpRZM 248/394


妹友「いいの? きょうの夜はお兄さんとふたりっきりになるチャンスだったんじゃないの」コショコショ

「いいんだよ、これで。こうしたほうがにいちゃんはたのしいんだって」コショコショ

妹友「またそういうこと言う」

「これがわたしだからね」

妹友「そういうところが妹ちゃんの悪いところだよ」

「いいところではなくて」

妹友「いいところでもある」

「妹友ちゃんも、気を遣ってくれてありがと」

「わたしは妹友ちゃんのそういうところが好き」

妹友「ありがとね」

311 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:17:03 LletpRZM 249/394


「で」

「で?」

「うどん食べるのはいいけど、誰が作るの?」

「あー、それは女性の皆様におねがいいたします」

妹友「めんどくさいです!」キッパリ

「じゃあ俺と男友と妹友ちゃんはこたつで寝てるから」

妹友「わーい」

幼馴染「ずるい」

「失望したよ、妹友ちゃん」

妹友「そこまで言わなくても」

312 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:17:58 LletpRZM 250/394


「まあ、とりあえずうどんを買うのは電車で向こうに帰ってからだな」

幼馴染「電車に乗って向こうに着くころにはちょうどいい時間になってるね」

妹友「また電車かあ」

「いやなの?」

妹友「電車内の空気って好きじゃないんだよね。エレベーターに通ずるものがあるよ」

「分かんない」

妹友「こう、もあっとしてて、閉鎖的な感じ? 逃げ場がないみたいな」

「分かりそうで分かんない」

妹友「あー、そっかあ」

313 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:19:29 LletpRZM 251/394


幼馴染「だからって電車に乗らないわけにはいかないよねえ」

妹友「そうなんですよ。そこがエレベーターとは違うところです」

「どういうこと」

妹友「エレベーターと甘いお菓子は同じってこと」

「わかんない」

妹友「あってもなくても困るわけではないけれど、どちらかというとあったほうがいい」

「じゃあ電車は」

妹友「必要不可欠」

「そうかな。べつに電車に乗らなくても歩けばいいんじゃないの、時間はかかるけど」

妹友「電車で一時間の距離を歩けと。妹ちゃんは鬼か? 鬼なのか?」

「いや、流氷の天使だ」

妹友「クリオネなの?」

「そうだよ、妹友ちゃんなんかバッカルコーンで一撃だよ」

妹友「そうなの?」

「そうだよ」

314 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:21:22 LletpRZM 252/394




ガタンゴトン ガタンゴトン

「なあ」

男友「なに」

「女の子ってさ、すげえいいにおいがするよな」

男友「おう」

「幼友ってどんなにおいがするわけ」

男友「わたあめみたいなにおい」

「なるほど」

男友「幼馴染ちゃんは」

「チョコレートみたいなにおい」

男友「なるほど」

315 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:22:44 LletpRZM 253/394



男友「妹ちゃんは」

「洗剤と柔軟剤と石鹸のにおい」

男友「あわあわじゃん」

「清潔なんだろ、たぶん」

男友「なるほど」

男友「妹友ちゃんは」

「ここからじゃ嗅げない」スンスン

男友「なるほど」

「お前のほうが近いからお前が嗅げよ」

男友「しゃあねえな」スンスン

「どう?」

男友「花みたいなにおい?」

「なるほど」

316 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:23:54 LletpRZM 254/394


「疲れたらころっと寝ちゃう女の子っていいよな」

男友「そうだな」

「俺たちの周りにはそんな女の子が四人もいるんだよな」

男友「すばらしいな」

「しかも頭を肩に乗っけてきてるんだよな」

男友「両肩に」

「すごいよな」

男友「生きててもいいって言われたような気分だ」

「受け入れられている的な」

男友「そう。ある意味ではほっとする」

「たしかに」

317 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:25:49 LletpRZM 255/394


「ところで、幼友のおっぱいさわらないのか」

男友「ところで、じゃねえだろ。なに世間話のノリでおっぱいとか言ってんだよ」

男友「ふつうさわらないだろ。ばかじゃねえの。ただの痴漢じゃねえか」

「ここはさわるところだろ」

男友「ここってどこだよ」

「どこって今だよ」

男友「ここは電車だろ」

「だからなんだよ」

男友「いや、だめだろ、常識的に考えて」

男友「それに」チラッ

幼友「」zzz

「それに?」

男友「ちっちゃい」

「ばかやろう」

318 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:27:42 LletpRZM 256/394


「おっぱいはちっちゃいとかおっきいとかそういう問題じゃないんだ」

男友「はあ」

「大事なのはかたちだ」

男友「一理ある、かもしれない」

「だからさわっとけって」

男友「その理屈はおかしい」

「さわってかたちを確認しとけって」

男友「それはさわるどころか揉みしだくとかそういうレベルだろ」

「たしかに」

319 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:31:46 LletpRZM 257/394


「ああー……」

男友「おっさんくさいな、いまの声」

「あー、いや……なんかくたびれたわ」

男友「くらげ見ただけだろ」

「そうじゃなくて、緊張したから」

男友「幼馴染ちゃんとのデートが」

「そう」

男友「でも、いつも通りだったろ」

「いや、かなり距離が近かった気がする」

男友「そんなの周りから言わせてもらえばいつも通りだ」

「俺たちってどんなふうに見られてるの?」

320 : 以下、名... - 2014/02/11(火) 22:32:45 LletpRZM 258/394


男友「どんなふうにって、夫婦みたいに」

「俺たちってそんなに仲睦まじく見える?」

男友「見える」

「そうか」

「まあ、それはいいことだよな」

男友「険悪に見えるよりはな」

「お前と幼友もけっこう仲良くしてるように見えたけど、どうなんだ?」

男友「どうなんだろうな」

「なんだそりゃ」

327 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:30:42 Gem.qKuU 259/394


男友「だってさ、俺たち、まともに会話をしたのは昨日がはじめてなんだぜ」

「おう」

男友「わからないことばっかりだ」

「たとえばなにが分からないんだ?」

男友「距離感」

「幼友との?」

男友「そうじゃなくて、幼友さんが他人に接するときの距離感」

「わからん」

328 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:31:32 Gem.qKuU 260/394


男友「近すぎる気がするんだ」

「距離が?」

男友「そう」

男友「そんで、それが幼友さんが誰かと接するときの、普段通りの距離なのか」

「それとも何か特別な意味を含んだ距離なのか、それがわからない?」

男友「そう、普段通りにしては近すぎる気がするんだよな。あるいは俺が自意識過剰なのか」

「ふうん」

男友「どうなんだろうな」

「俺が知るかよ」

男友「そりゃそうだ」

329 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:32:43 Gem.qKuU 261/394


「どっちでもいいと思うよ、俺は」

男友「あんまり気にすることじゃないんかな」

「どっちにしろ、嫌われてるわけではないんだろ」

男友「まあ、そうだな。たぶん」

「肩に頭乗っけてくるくらいだもんな。信用されてるんだって」

男友「幼友さんが無防備すぎるんじゃないのか、これって」

「かもしれない」

男友「もうちょっと危機感覚えたほうがいいよな」

「いや、お前がいるから安心してるとか」

男友「それはポジティブシンキングすぎないか」

330 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:33:52 Gem.qKuU 262/394


「まあ、実際に訊いてみるのがいちばんだ」

男友「たぶん華麗にスルーされそう。幼友さんってそういうところあると思う」

「ふうん」

男友「雑なんだよな」

「なにが」

男友「幼友さん」

「ふうん」

男友「華麗で、尚且つすごく雑なスルーを見せてくれると思う」

「意味わからん」

331 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:34:44 Gem.qKuU 263/394


「お前はどうなんだよ」

男友「なにが」

「幼友のこと」

男友「どう思ってるのかって?」

「そう」

男友「わざわざ言わせるのかよ」

「それはつまり」

男友「言わない」

「ふうん? そうなんだ?」

男友「なにも言ってない」

「でもそれってそういうことなんじゃないの」

男友「いや、だってさ、かわいいじゃん」

「お?」

332 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:35:25 Gem.qKuU 264/394


「かわいい。なにが」

男友「幼友さん」

「おっぱいはちっちゃいけど」

男友「それは関係ない」

「でもさっき」

男友「俺はちっちゃいほうがいいの」

「ああ、そうなんだ? ふうん」

男友「そんで、居心地がいい」

「へえ」

男友「受け入れられてると思える……錯覚できる?」

「どういうことだよ」

333 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:37:00 Gem.qKuU 265/394


男友「実際に受け入れられてるわけではなくても」

男友「俺は受け入れられていると感じることができる」

「もっとかんたんに考えろよ。ようするに」

男友「いっしょにいてたのしい、おもしろい。たぶん、そういうことだと思う」

「うん、それでいいじゃん」

男友「なんか恥ずかしいんだけど」

「幼友が寝ててよかったと思えばそんなもん」

男友「たしかにそうかもしれない」

334 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:38:26 Gem.qKuU 266/394


「いま、どう?」

男友「どうって、なにが」

「いま、どんな気分?」

男友「どんなって……」チラッ

幼友「」zzz

男友「たぶん、しあわせなんじゃないかな」

「なにがたぶんだよ、ニヤニヤしやがって。顔も赤いし」

男友「うっせえばーか。バーカバーカ」

「子どもか」

335 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:39:02 Gem.qKuU 267/394


「実は狸寝入りしてるとかだったらおもしろいよな」

男友「なにが」

「幼友が狸寝入りしてて、いまの話はぜんぶ聞かれてた」

「そういう展開がのぞましい」

男友「のぞましくない」

男友「いや、でも幼友さんだとありえそうでこわい」

「たしかめてみよう」

男友「どうやって」

「つんつんしてみ?」

男友「どこを?」

「どこって、決まってるだろ」

男友「だよな」

336 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:40:24 Gem.qKuU 268/394


「……」

男友「……」

「はやく」

男友「いや、心の準備が」

「そんなもんいらん。勢いだ」

男友「……」

幼友「」zzz

男友「失礼しまーす……」ツンツン

男友「……」ツンツン

男友「おお、やわらかい」プニプニ

「ばかやろう、ほっぺたじゃなくておっぱいだろ」

男友「お前がばかやろうだ、ばかやろう」

337 : 以下、名... - 2014/02/14(金) 21:42:14 Gem.qKuU 269/394


幼友「」zzz

男友「うん、寝てる」

「いや、まだわからないぞ」

男友「そうか、そうだよな」

「もっとこうさ、くすぐってみるとかさ、揉んでみるとかさ」

男友「いや、もういいわ」

「もういいのか」

男友「へんな汗出てきたわ」

「そうか。風邪ひくなよ」

男友「おう」

348 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:49:59 ZbgVUjyU 270/394


男友「あー……なんかしんどいわ」

「もう風邪ひいたのかよ。病弱とかそんなレベルじゃねえぞ」

男友「いや、そういうしんどさではなくて、疲労から来るしんどさ」

「ああ、そっちか」

男友「なんかつかれたわ」

「お前も歳なんだから無理するなよ」

男友「まだ二十歳にもなってねえよ」

349 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:50:34 ZbgVUjyU 271/394


「眠たかったら寝ればいい」

男友「そうさせてもらおうかな」

「どうなっても知らないぞ」

男友「どういうことだよ」

「俺がお前のことをほったらかしにしても知らないぞ」

男友「お前はそんなやつじゃないと思う」

「よくわかってるじゃないか」

男友「それに、みんなもいるし大丈夫だろ」

「みんな寝たらみんなおしまいだけどな」

男友「俺は寝るからお前は起きててくれ」

「しかたねえな」

350 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:51:39 ZbgVUjyU 272/394


男友「」zzz

(こいつほんとうに寝てるじゃねえか)

(寝付きよすぎだろ)

(……)

(……)

(なんだこれ。なんかさみしいぞ)

「……」チラッ

男友「」zzz

幼友「」zzz

(なんだこいつら。もたれ合ってるやん)

(写真撮ってメールで男友に送ってやろう)パシャパシャ

351 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:52:58 ZbgVUjyU 273/394




ガタンゴトン ガタンゴトン

妹友「んん……」

「お」

妹友「あれ……ここどこ?」

「電車。あと二駅くらいで着くぞ」

妹友「早いですね……超音速です。スーパーソニックトレインです」

「そうだな」

妹友「実はわたしの名前はエルサで、アルカセッツァーを吸ってるんです」

「ふうん」

妹友「これはあれですね。伝わってないパターンのやつですね」

「伝わっててもリアクションに困る時ってあるだろ」

妹友「ありますね」

「それが今だ」

妹友「なるほど」

352 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:53:52 ZbgVUjyU 274/394


「なんでもいいけどさ、みんなを起こしてやってくれよ」

妹友「みんなといいますと?」

「俺たち以外の4人」

妹友「あれ、みんな寝てたんですね?」

「俺以外はな。超さみしかった」

妹友「ごめんなさい」

「べつに謝らなくてもいいよ」

妹友「でもわたしが起きたから安心ですね!」

「そうだな。うん、そうだね」

妹友「なんですかその雑な返事は」

353 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:54:40 ZbgVUjyU 275/394


「なんでもいいから、早めにおねがい」

妹友「わたしじゃ不満ですか」

「誰もそんな話はしてないだろ」

妹友「たしかにそうですね」

「そっちの夫婦みたいなやつらはほっといてもいいから」

妹友「いいんですか」

「ゆるす」

354 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:56:21 ZbgVUjyU 276/394


妹友「じゃあお兄さんが妹ちゃんと彼女さんを起こしてあげてください」

「なんで俺。結局俺かよ」

妹友「その方がいろいろと都合がいいんですよ」

「はあ」

妹友「それに、目を開けた瞬間にわたしの顔が見えたら疲れると思うんですよね」

妹友「ほら、わたしって月曜日の朝日みたいじゃないですか」

「たしかに」

妹友「そこは否定してほしかったですね」

355 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:57:34 ZbgVUjyU 277/394


「しかたない」

「起きろー」ユッサユッサ

「お……」ガクガク

幼馴染「んん……」ガクガク

「もうすぐ着くぞー」

「ねむい……」

幼馴染「すごくねむい……」

妹友「お兄さん、がんばって。あとちょっとですよ」

「起きろー」

356 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 21:58:52 ZbgVUjyU 278/394




幼馴染「起きたよ」

「起きてくれて俺はうれしいよ」

「わたしも起きた」

「うれしい。あいむそーはっぴー」

「でも起こし方が雑」

「ごめん」

幼馴染「ひとりずつ起こそうよ」

「はい。猛省しています」

「うそだ」

「ばれた」

「次からは気を付けてよね」

「そうする」

357 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 22:00:11 ZbgVUjyU 279/394


幼馴染「ふたりは起こさなくていいの?」

男友「」zzz

幼友「」zzz

「いいんじゃないのかな」

幼馴染「男友くんと幼友ちゃんって仲良かったんだね」

「みたいだな」

幼馴染「知らなかった」

「まあ、まともに会話をしたのは昨日がはじめてらしいからなあ」

358 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 22:01:19 ZbgVUjyU 280/394


妹友「それなのにあんな調子なんですか?」

「よっぽど馬が合ったのかもよ」

妹友「それにしてもじゃないですかね?」

「そういうのもあるんじゃないの」

「ていうか妹友ちゃんもさっき男友に凭れて寝てたけど」

妹友「ほんとうですか?」

「ほんとう。まじ」

妹友「それはまじやばいですね」

359 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 22:02:50 ZbgVUjyU 281/394


妹友「じゃあ、あのふたりは付き合っていない」

「たぶん」

妹友「ふうん」

「このまま終点までほっとくとかどうだろう」

妹友「悪くないかもしれません」

幼馴染「いや、さすがにそれは悪いと思うな」

「あんまりやり過ぎちゃだめだよ、にいちゃん」

「冗談だって。俺がそんなことするわけないだろ」

「それもそうだね」

「だろ?」

360 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 22:03:56 ZbgVUjyU 282/394


幼友「む……」

「お? 起きちゃったか?」

幼友「んんむ……」

「めっちゃ眉間にしわ寄ってるぞ、大丈夫なのかこれ」

幼馴染「幼友ちゃんは寝覚めがよろしくないんだよ」

「なんかちょっとこわいんだけど」

幼友「……」パッチリ

「起きた」

幼馴染「おはよう」

幼友「おはよう……」ジロリ

「目つき悪い。こわいぞ」

361 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 22:05:23 ZbgVUjyU 283/394


「まあでも、ちょうどいいや。男友を起こしてやってくれよ」

幼友「……なんでこの男はわたしに寄りかかって寝てるわけ」

妹友「まじやばいですね」

幼友「まじやばいよ。恥ずかしいんだけど」

幼友「おーい」ツンツン

男友「」zzz

幼友「へーい?」プニプニ

男友「」zzz

幼友「うわ、男友くんのほっぺたガサガサじゃん」ガサガサ

妹友「どれどれ」ツンツン

妹友「ほんとだ、ガサガサですね。サハラ砂漠です」

「意味わからん」

362 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 22:06:34 ZbgVUjyU 284/394


妹友「その点トッポってすげえよな」ツンツン

「わたしは最後までチョコたっぷりじゃない」

妹友「妹ちゃんのほっぺたはグレート・バリア・リーフだよ」プニプニ

幼友「どれどれ」ツンツン

幼友「おお、ほんとだ」プニプニ

「むう」

幼馴染「わたしもさわっていい?」ツンツン

「もうさわってるよ」プニプニ

363 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 22:07:51 ZbgVUjyU 285/394


幼友「ああっと。男友くんを忘れるところだった」ハッ

「ひどいな」

幼友「起きろー」ユッサユッサ

男友「んああ」ガクガク

幼友「起きた?」ユッサユッサ

男友「起きた、起きた。起きたから揺らすのやめて……」ガクガク

364 : 以下、名... - 2014/02/17(月) 22:09:36 ZbgVUjyU 286/394


幼友「おはよう」

男友「おはよう……」

幼友「気分はどう?」

男友「いい」

幼友「わたしの肩の寝心地はどうだった?」

男友「よかった」

幼友「それはよかった」

男友「おかげですごい夢を見れた」

幼友「どんな夢?」

男友「やばいやつ」

幼友「もうちょっと具体的に」

男友「いやらしいやつ」

幼友「男友くんって変態なの?」

男友「まあ、15パーセントくらいは変態なんじゃないかな。よく分かんないけど」

幼友「ふうん」

369 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:05:41 JyFechKs 287/394




幼友「はあー、やっぱし外は寒いね」

男友「しかも暗い」

幼友「冬のこういう時間にひとりで歩いてると、とんでもなく寂しくなる時があるよね」

男友「そうかな」

幼友「あれ、わからない?」

男友「いまいちピコーンと来ない」

幼友「うーん……なんでわたしはここにいるんだろう、みたいな気分になったりしない?」

男友「ならないな。幼友さんはそんな気分になるんだ?」

幼友「たまにね」

男友「大変そうだな」

370 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:06:39 JyFechKs 288/394


幼友「そういう日はものすごく早く眠れるよ」

男友「ますますわからん」

幼友「クリープを聞きながらさ」

男友「ふうん」

幼友「あったかい泥の中で寝転んでるみたいな気分になってさ」

男友「うーん」

「なあ、さっさとうどん買って家に帰ろうぜ」

「だね。駅前でじっとしてても寒いだけだよ」

371 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:07:53 JyFechKs 289/394


妹友「じゃあしゅっぱーつ」

幼馴染「おー」

妹友「しゃんぜりーぜー」

幼馴染「おー」

妹友「しゃんぜりーぜー」

「なにしてんだ」

幼馴染「あれってなんて曲なんだろね?」

「オー・シャンゼリゼ」

「そのまんまだ」

「おー」

妹友「しゃんぜりーぜー」

372 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:08:50 JyFechKs 290/394


幼友「シャンゼリゼは分かったから、どこにうどんを買いに行くの」

「シャンゼリゼには欲しいものはぜんぶあるんだよ」

幼友「だからってシャンゼリゼに行くわけにも行かないでしょうに」

「そのとおり」

幼友「シャンゼリゼだけに」

「うん?」

幼友「なんでもないよ。妹ちゃんの肌は海月じゃー」ツンツン

「ごまかし方が雑」プニプニ

幼友「雑って言わないの、ちょっと気にし始めてるんだから」ツンツン

373 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:11:11 JyFechKs 291/394


「うどんは家の近所のスーパーで買う」

幼友「無難だね」

「ふつうがいちばん」

幼友「そのとおり」

「でも今日はふつうとはちょっと違う」

幼友「こういうのもいいと思うけどなあ」

「わたしもそう思う」

374 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:12:26 JyFechKs 292/394


幼友「ねえ、お兄ちゃんのこと好き?」

「うん」

幼友「ほほう、どれくらい」

「すごく。でもそれは兄妹としてだよ」

幼友「わかってるって、そんなおかしな勘違いはしないよ」

「うん」

幼友「でも、べつに男女の仲になりたいと思っててもわたしはいいと思うよ」

「ありえないよ」

幼友「ほんとうに?」

「ほんとうに」

幼友「いやあ、わたしにはなんとなく分かるよ。なんとなくね」

「……」

375 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:13:14 JyFechKs 293/394


幼友「微妙な立ち位置だね。どこでもない場所の真ん中みたいで」

「うん」

幼友「目の前にいるのにね。檻の中と外みたいでやだよね」

「もう慣れた」

幼友「慣れたか、そっか」

「でも、檻の戸が開く時がある」

幼友「でも、妹ちゃんはその時にお兄ちゃんを檻の内側に引きずり込まない」

「それは駄目なことだから」

幼友「そうだね、駄目なことだ」

376 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:13:58 JyFechKs 294/394


「なんの話してんだ」

幼友「叶わない恋と檻の関係性についての考察」

男友「意味わからん」

幼友「たとえば、たとえばの話」

男友「また喩え話?」

幼友「比喩が好きなの。察してよ」

男友「はいはい」

377 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:15:07 JyFechKs 295/394


幼友「男友くんが、どっかの国のお姫様に好意を抱いているとする」

男友「おう」

幼友「男友くんはどうにかしてお姫様を振り向かせようとしてやらかしてしまい」

幼友「なんやかんやで牢屋行きになってしまいます」

男友「なんやかんやって、もうちょっと具体的に」

幼友「そこは大した問題じゃない。とにかく男友くんには牢屋に入ってもらわないと、話が進まないの」

男友「だったら仕方ない」

378 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:16:33 JyFechKs 296/394


幼友「ある日、男友くんが檻の中で寝ていると、檻の前にお姫様がやって来ます」

男友「うん」

幼友「まあ、男友くんとお姫様はなんやかんやでそこそこ良好な関係を築くわけ」

幼友「それでまたある日、男友くんとお姫様が話をしている時に、鍵が壊れて檻の戸が開いたとする」

男友「ほう」

幼友「そんで、男友くんはお姫様に一方的な好意を抱いているとする」

幼友「お姫様といっしょにいたいと思ってるわけね」

幼友「でもふたりの間には壁があるわけだよ。この場合は身分の壁」

「……」

379 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:17:50 JyFechKs 297/394


幼友「男友くんはなんとしてでもお姫様といっしょにいたいから」

幼友「お姫様を檻に引きずり込むなり、いっしょに逃げ出すなりするだろうけど」

男友「その言い方だと俺がすげえ野蛮なやつみたいに聞こえるんだけど」

幼友「ちょっと黙ってて」

男友「はい」

幼友「まあ、ふたりには身分の壁があるわけ」

幼友「それを乗り越えたとしても、その先の壁を乗り越えられるかって話」

幼友「この話の中の男友くんならガンガン行けるんだろうけど」

幼友「お姫様は国を捨てて、牢屋にぶちこまれてたごみみたいなやつとくっついたって言われるわけだよ」

男友「それはつまり俺がごみみたいだって」

幼友「ちょっとだまれ」

男友「あ、はい、すみません」

380 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:19:22 JyFechKs 298/394


幼友「話の中の男友くんはそういう後先のことを考えない人だけど」

幼友「そうじゃない人もいる」

幼友「自分は壁を越えられるけど、パートナーになる人が壁を越えられないかもしれない」

幼友「そもそもそれ以前に、檻に引きずり込む時に抵抗されるかもしれない」

幼友「そういうことを思う子がいるわけだよ」

男友「ふうん」

幼友「壁を越えられないから諦める。叶わない恋とかもっともらしい言葉で飾り付けして」

幼友「そういうのは良いことではないと思うんだよね」

幼友「わたしが言いたいのはそういうこと」

男友「なんか熱くなってないですか、幼友さん」

幼友「男友くんのせいじゃないかな、たぶん」

男友「え? 俺?」

幼友「冗談だよ」

381 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:20:08 JyFechKs 299/394


「よくわかんないわ」

幼友「男くんはお姫様だからね」

「どういうこっちゃ」

幼友「男くんと男友くんはお似合いってことじゃないかな」

「いや、それはないわ」

幼友「相思相愛とかじゃなくて、良好な友人関係みたいな意味だよ」

「ああ、そういうこと」

「でもまあ、わりといい関係だよな、俺たち」

男友「それはどうだろう?」

「どういう意味だよ」

男友「深い意味はない」

382 : 以下、名... - 2014/02/20(木) 22:20:53 JyFechKs 300/394


「」ギャーギャー

男友「」ワーワー

「幼友さん」

幼友「ん」

「ありがと」

幼友「なぜ?」

「なんとなく」

幼友「妹ちゃんはおもしろいね」

「そうかな」

388 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:41:30 RQ0rs2qc 301/394


妹友「妹ちゃんはいい子ですよ、無愛想だけど」

幼友「うん、見たところそんな感じ」ツンツン

「むう」プニプニ

幼友「妹ちゃんのほっぺたはやわらかいねえ」ツンツン

「……」プニプニ

幼友「あれ、ほっぺたツンツンされるの嫌い?」

「きらいじゃない」

幼友「じゃあなんで黙っちゃったの?」

妹友「照れてるんですよ」

幼友「そうなの?」

「そう。照れてる」

389 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:42:22 RQ0rs2qc 302/394


* スーパー

「ふと思ったんだけどさ」

男友「おう」

「肉まんと豚まんって、なにが違うんだろう」

男友「関西が豚まんで、関東が肉まん」

「そうなの? じゃあどっちも同じもんなの?」

男友「たぶんそうだと思うけど」

幼友「551が豚まんで、ファミマとローソンとセブンイレブンが肉まん」

「もうなんでもいいや」

390 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:43:06 RQ0rs2qc 303/394


男友「俺たちってさ、スーパーにうどんを買いに来たんだよな」

幼友「うん」

男友「なんでこんなに時間かかるんだ。もう入り口の前に突っ立って15分くらいになるぞ」

幼友「わたし以外の女子たちがお菓子買いに行ったからじゃないかな」

「なにしてんだ」

幼友「まあ、たまにはこういうのもいいんじゃないの」

幼友「それに、たかが30円だか40円だかのうどんだけ買って帰るのもなんだかなあって感じがするし」

(うどんってそんなに安いんだ?)

391 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:43:47 RQ0rs2qc 304/394


幼友「ほら、あれだよ。ちょっと高いお寿司屋に行って、一貫だけ食べて帰るみたいな」

男友「気まずい」

幼友「スーパーからの帰り道に食パンだけ買うの忘れたことに気づいて」

幼友「もう一回スーパーに行ったら、レジのおばちゃんがさっきと同じ人だった瞬間みたいな」

男友「ちょっとはずかしい」

幼友「そんな感じだよ。だからお菓子を買う」

男友「なるほど」

「いや、なるほどじゃない。俺にはわからん」

392 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:45:29 RQ0rs2qc 305/394


「なんかさ、お前らだけの世界が出来上がってるよな」

男友「なんだそりゃ」

「シュールなワンダーランドみたいな」

幼友「不思議の国のアリス(R15)みたいな」

「それな。幼友のそういうところ」

男友「おう」

「そんでお前のそういうところ」

男友「いや、でもさ、俺はシュールなワンダーランドよりもハードボイルド・ワンダーランドが好き」

「知らんがな」

幼友「個人的にはワンダーランドよりもワンダーウォールのほうが」

「もうええわ」

393 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:46:47 RQ0rs2qc 306/394


幼馴染「ただいまー」

「よくぞ戻って来てくれた」

「わたしもいるよ」

「知ってるよ」

妹友「なんとびっくり、わたしもいるんですよねえ」

「はいはい」

妹友「ああん、お兄さんちべたい。ドライアイス並みですね」

「君ら、お菓子買い過ぎじゃないか? 太るぞ?」

「大丈夫だよ、わたしは太らないから」

「そうか。だったらいいか」

妹友「いいんですか? わたしや彼女さんは太ってもいいんですか?」

「好きなようにしてくれ」

394 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:48:05 RQ0rs2qc 307/394


幼馴染「男は、太ってる子のほうが好き?」

「そんなことはないけれど」

幼馴染「今のわたしってどう?」

「完璧だと思う」

幼馴染「ほんと?」

「ほんと。そのままでいるべきだよ」

幼馴染「ありがとう、うれしい」

「それに、ちょっと痩せたり太ったりしたからって嫌いになったりなんかしないよ」

幼友「やだかっこいい」

妹友「惚れちゃう」

男友「なんだお前ら」

395 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:48:54 RQ0rs2qc 308/394


「駄弁ってないで早く行こうよ」

男友「そうだそうだー、寒いんだよ」

「男友くんもけっこうだべだべしてた」

男友「ごめん」

「ゆるす」

男友「でもそれは妹ちゃんを含めた女子3人も悪いと思う」

「ごめん」

男友「ゆるす」

396 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:50:03 RQ0rs2qc 309/394


男友「許すから俺もほっぺたさわっていい?」

「べつにいいよ」

男友「失礼します」ツンツン

「……」プニプニ

男友「この触り心地は、いちご大福を食べたくなってくるな」ツンツン

「買ってきてある」

男友「さすが。じゃあたい焼きは」

「なかった」

男友「そっか」

397 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:51:13 RQ0rs2qc 310/394


「お前うちのかわいい妹になにしてんだ」

男友「俺もほっぺたつんつんしてみたかっただけだって」

幼馴染「ロリコン?」

男友「違います」

妹友「ペドフィリア?」

男友「やめろ、違うわ」

幼友「まあ、そうでなくても男友くんは変態だからね」

男友「100じゃなくて15パーセントだからな。そこは大事なところだから省くなよ」

幼友「無駄を削ることで生まれる美しさもあるんだよ」

男友「でもそこは削ったら駄目なんだって。しかも無駄じゃないし。大事なところ」

398 : 以下、名... - 2014/02/22(土) 21:53:17 RQ0rs2qc 311/394


幼友「中途半端な変態よりは完全に変態のほうが男友くんも気持ちいいでしょ」

男友「意味わからん」

幼友「なんでもいいから早く行こうよ」

男友「なんでもいいのか……まあ、なんでもいいか……」

幼友「そうだよ。男友くんがロリコンでもペドフィリアでもゲイでもなんでもいいよ」

男友「ひどい言われようだ」

幼友「男友くんがなんであろうとわたしは味方だよ」

男友「おう」

幼友「なに、その気の抜けたコーラみたいなリアクション」

男友「なんか予想外の角度から優しい言葉が飛んできたから戸惑ってるだけ」

幼友「そう。じゃあもっと戸惑えばいいよ」

男友「ありがたく戸惑っておくよ」

404 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:12:03 lltYFDQM 312/394


* 男宅

幼友「いやさ、わたしってさ、同年代の男の子の家に上がるのってはじめてなわけよ」

男友「それがなにか?」

幼友「唇パサパサする」

男友「緊張するってこと?」

幼友「そんな感じ」

「でもここはわたしの家でもあるよ」

幼友「そうか、そういう考え方をすればいいんだね」

「でも兄ちゃんの家でもあるよ」

幼友「そう、そうなんだよ。むずかしいね」

405 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:13:01 lltYFDQM 313/394


幼馴染「おじゃましまーす」

「じゃまするなら帰れ」

「新喜劇してないで早く入ってよ、寒い」

妹友「ふたつの意味で寒いです」

「今のはハートにグサッと来た。つららが刺さったみたいだ」

妹友「じゃあわたしがハートに火をつけてあげます」

「どうやって」

妹友「チャッカマンで」

「殺す気か」

406 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:14:32 lltYFDQM 314/394


「で、お前らはなにしてんだ」

幼友「心の準備だよ」

男友「だってさ」

「はあ。まあなんでもいいけどはやく上がれよ。寒いだろ」

男友「はやくこたつでごろごろしたいわ、おじゃまします」

「じゃまするなら帰れ」

男友「はいはい、さっさとリビングに行こうぜ、幼友さん」

幼友「うん……おじゃましまーす」

「じゃまするなら」

男友「しつこい。お前は指にくっついたアロンアルファか」

「どこをどう見たら俺がアロンアルファに見えるんだよ」

男友「たとえだよ。比喩」

「へたくそが。わかりにくいんだよ」

男友「うっせえばーか」

407 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:15:24 lltYFDQM 315/394


「どうする? もう夕飯にする?」

妹友「それともお風呂? それとも人生ゲーム?」

「なんでその流れで人生ゲームなんだ」

妹友「野球盤のほうがいいですか?」

「そういう問題じゃない」

妹友「どういう問題なんですか」

「むずかしい問題だ」

妹友「そうですか。じゃあその問題について考えるのはやめておきましょう」

「そうだな」

408 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:16:14 lltYFDQM 316/394


「それで結局、夕飯はどうするの」

「俺はもうちょい後でもいいけれど」

妹友「妹ちゃんとお兄さんに任せます」

幼馴染「男と同じタイミングで食べる」

男友「俺も」

幼友「わたしも」

「わかった。だったら、もうすこししてから作る」

「じゃあ、それまでこたつでだらだらするか」

「うん」

409 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:18:04 lltYFDQM 317/394




幼馴染「……」

妹友「……」

幼友「こたつでだらだらするって言ったよね、男くん」

「うん」カチカチ

幼友「なにゆえゲームを始める?」

「続きが気になっててさ」カチカチ

幼友「だからって日本で発禁のゴアゲーをリビングで始めるのはいかがなものかと」

「いや、ホラーゲームだし」

幼友「まあ、うん、なんでもいいよ。わたしは大丈夫だけど、彼女と妹友ちゃんかドン引きだよ」

「持ち堪えてくれ」

「あ、そこにプラズマカッターの弾が」

「おう」

410 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:19:30 lltYFDQM 318/394


幼馴染「ホラー映画とかホラー小説とかお化け屋敷とか、怖いものっていろいろあるけどさ」ガタガタ

幼馴染「どうして自分から進んでそういうものを求めるのかが、わたしには理解できないよ」ガタガタ

妹友「同感です。まったくもって意味不明です」ガタガタ

「怖いもの見たさというか好奇心というか、そんな感じじゃないのかな」カチカチ

「あ、にいちゃん、あの死体っぽいの、ぜったい死んだふりしてるよ」

「撃ってみるか」カチカチ

「うわ、ほんとだ。めっちゃ活き活きしてる」カチカチ

「やっぱり」

「やべえちょっとびっくりしたわ」カチカチ

幼馴染(ぜんぜんびっくりしてないじゃん……)ビクビク

411 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:20:20 lltYFDQM 319/394


男友「妹ちゃんは平気なんだ、こういうの」

「隣で見てるだけなら」

男友「ふうん。幼友さんも?」

幼友「わたしはべつに大丈夫だけど」

男友「ほお」

「あ、死んだ。ごめんよアイザック」

「うわ、これはちょっとキツイ」

妹友(目に針が思いっきり突き刺さってるのにリアクションうっす……)ビクビク

412 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:22:02 lltYFDQM 320/394


* 数時間後

幼馴染「」

妹友「」

「ふう。そろそろ飯食うか」

「そうだね。準備してくる」

「ほら、妹友ちゃん、立って」

妹友「」スクッ

「行くよ」スタスタ

妹友「」スタスタ

幼友「ほら、あんたも」スタスタ

幼馴染「」スタスタ

413 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:22:55 lltYFDQM 321/394


「……なんか、一気に静かになったな」

男友「……うどんができあがるまでは暇だな」

「そうだな、しりとりでもするか」

男友「なんでそうなる」

「お手軽でそれなりに楽しめる遊びじゃん」

男友「まあ、そうなるか……?」

「じゃんけんとかいう運ゲーもつまらんだろ」

男友「たしかにそうだけどさ、しりとりもどうかと思うわ」

414 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:23:41 lltYFDQM 322/394


「だったらどうすんだ」

男友「まず目を閉じます」

「はあ」

男友「そしてキッチンを思い浮かべます」

「うむ」

男友「そこでパスタちゃんとスパゲッティちゃんと妹ちゃんとこしあんちゃんが絡み合っている姿を想像します」

「カオス」

「しかも妹だけふつうかよ。あいつはペンネだ」

男友「じゃあ妹ちゃんがペンネになりました」

「カオス」

415 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:24:45 lltYFDQM 323/394


「というかよくよく考えたらさ、いま家に女の子が4人もいるんだよな」

男友「そうだな」

「しかもご飯作ってもらってる」

男友「すごいよな」

男友「でも、幼友さんと妹友ちゃんって料理できんのかな」

「まあ、妹と幼馴染がいるし、特に問題はないだろ」

男友「だといいんだけど。なんか幼友さんって不器用っぽい雰囲気でてる」

「そうかな」

男友「妹友ちゃんはなんか元気がありすぎてやばそう」

「分からなくはないかもしれない」

416 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:25:37 lltYFDQM 324/394




幼馴染「あんなの見てよく平気でいられるね」

幼友「まあ、こんなもんでしょ。ね?」

「グロテスクなだけで、怖くはないよ」

幼友「どうせ血なんかこれから嫌ほど見ることになるんだし」

妹友「どういうことですか」

幼友「大人の女になるということだよ」

妹友「大人になるって悲しいことなんですね」

幼友「そう、大人になるって悲しいことなの」

417 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:26:32 lltYFDQM 325/394


「ちゃっちゃと作っちゃおう」

幼友「思ったんだけどさ、4人ここにいても仕方ないんじゃないの」

幼馴染「というと」

幼友「カレーうどん作るのに4人も必要なの?」

幼友「カレーうどんって茹で上がったうどんをカレーに入れるだけじゃないの?」

妹友「いや」

幼馴染「それは違う」

幼友「え? そうなの?」

418 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:27:39 lltYFDQM 326/394


「カレーにだし汁を入れないと」

幼友「へえ」

妹友「カレーにうどんをぶち込んでも、カレーとうどんの味がするだけなんですよね」

幼友「それでいいんじゃないの?」

妹友「いいえ、よくないです。うどんとカレーを別々に食べてるみたいな味がしますよ」

妹友「あれはカレーうどんじゃなくて、カレーとうどんです」

幼友「トライフォースと、タライとホースの違いみたいな?」

「それは違うんじゃないのかなあ」

「というか妹友ちゃんはなんでそんなに詳しいの」

妹友「まずい晩御飯の味って記憶に残るもんだよ」

「ああ、失敗したことがあるんだね。どんまい」

419 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:28:47 lltYFDQM 327/394


幼馴染「幼友ちゃんって料理ができない系女子だったんだね」

幼友「う、うるさいな」

妹友「バレンタインデイに産業廃棄物を生み出してしまう系女子ですね」

幼友「やめて」

「雑」

幼友「いまのすごいグサッと来た。やばいよ。軽いビンタ2発の後にローリングソバットみたいなコンボだよ」

妹友「ガサツ系女子」

幼友「もうそれでいいよ」

420 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 22:29:44 lltYFDQM 328/394


幼友「もういいもん。わたしここで見てるもん」ツーン

幼馴染「拗ねた」

妹友「子どもですか」

幼友「わたしまだ子どもだしー。どうせうまくいかないですよーだ」ツーン

「かわいい」

幼友「あ、ありがとう」

妹友(なにこれ)

425 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:41:57 DbpTt0kk 329/394




幼馴染「幼友ちゃんは、男友くんのことが好きなの?」

妹友「え、ふたりは離婚寸前の熟年夫婦みたいな関係に陥ってるんですか」

幼馴染「まだ愛しているかとかそういう意味じゃなくて」

妹友「あー、そういえばふたりは彼氏彼女の関係じゃないんでしたね」

幼友「うん、ぜんぜん違う」

妹友「信じられないです」

幼友「どうしてそう思う」

妹友「だって電車のあれを見たら、誰だってそう思いますよ」

幼友「あれは男友くんが勝手に寄りかかってきてただけで」

妹友「そうじゃなくて、お互いに寄りかかって寝てたじゃないですか」

幼友「え。なにそれ」

426 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:42:42 DbpTt0kk 330/394


妹友「幼友さんが男友さんに寄りかかって、こう……ねえ?」スリスリ

「わたしに頬ずりするな」スリスリ

幼友「うそ、なにそれ。そんなことしてたの、わたし」

「ここまではやってない」

幼友「“ここまでは”って、わたしはどこまでやっちゃったわけ」

「男友くんに寄りかかって、こう……肩に頭のせて」グググ

妹友「ああっ、いたい、肩重い! 体重かけないで! 脱臼!」

427 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:43:42 DbpTt0kk 331/394


「よいしょ」

妹友「ああっ……ふう」

妹友「……ええと、とにかく未だにふたりがお付き合いしていないというのが信じられないです!」

幼友「なにそれ、すっごいはずかしいんだけど」

幼馴染「それで、どうなの?」

幼友「どうって」

幼馴染「好きなの?」

幼友「まあ、うん。好きだけどさ、うん」

「顔赤い。赤血球みたい」

幼友「やばいよ。はずかしすぎて爆発しそう」

「ほんとうに?」

幼友「ごめん、たぶん爆発はしない」

428 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:44:23 DbpTt0kk 332/394


幼馴染「いつから?」

幼友「なにが」

妹友「とぼけちゃって。はやく答えてくださいよ」

幼友「やだ」

幼馴染「却下」

幼友「はあ」

妹友「いつからなんですか? いつからなんですか?」

幼友「妹友ちゃんの目、すごいきらきらしてる。蛍光ペンで描いたみたい」

妹友「ごまかさないで、さあ、はやく」

429 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:45:41 DbpTt0kk 333/394


幼友「ところで、カレーうどんはまだできないの?」

「まだ」

幼友「ああ、そう」

妹友「まあまあ、カレーうどんができるまでゆっくり話しましょうよ。グヘヘヘ」

幼友「なんか活き活きしてるね、妹友ちゃん。エンジニアを見つけたネクロモーフみたい」

妹友「そこに山があればマロリーは登るし」

妹友「そこに人参があれば馬は走るんですよ。エポナもアグロもパトリシアもオルフェーヴルも」

「おしりを叩かれながらね」ペシペシ

妹友「あふん、いたい」

430 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:46:25 DbpTt0kk 334/394


「妹友ちゃんのおしりやわらかいね」

妹友「くすぐったいよ。それに、やわらかくないおしりなんておしりじゃないよ」

幼友「一理あるかもしれない」

幼馴染「でも幼友ちゃんのおしりはそうでもなさそう」

幼友「どうしてそう思うの」

幼馴染「なんていうか、身体の線が細いというか、引き締まってる感じがして」

「胸もちっちゃい」

幼友「妹ちゃんに言われたくはないよ」

「いや、幼友さんよりはあるよ」

431 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:47:03 DbpTt0kk 335/394


幼友「うそおっしゃいな」フニフニ

「ひっ」

幼友「ああ……ほんとだ……けっこうある……」フニフニ

「くすぐったい」

幼友「ごめんよ、妹ちゃんは着痩せするタイプなんだね」

「そう、脱いだらすごいよ」

幼友「それは盛り過ぎじゃないかな」

「うん、ごめん。かなり盛った」

432 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:48:10 DbpTt0kk 336/394


幼友「じゃあ次は妹友ちゃんだね」

妹友「な、なんでそうなるんですか」

幼友「あっちはどう見てもおっきいからね」

幼馴染「あっちって、ひどい言われようだよ」

幼友「ほら、ちょっとこっち来て。グヘヘヘ」

妹友「いやー! たすけて妹ちゃん」

「どれどれ」フニフニ

妹友「ひい! くすぐったい!」

「む……」フニフニ

妹友「あっ、あー。あー……」

幼友「どうなの」

「彼女は着痩せするタイプだ。脱いだらすごいよ」フニフニ

幼友「つまり」

「わたしよりあるかもしれない」

幼友「なんてこった」

433 : 以下、名... - 2014/02/27(木) 23:49:17 DbpTt0kk 337/394


幼友「いやさ、べつにいいじゃん。べつにさ、ちいさくたっていいじゃん」

幼馴染「そうだよ。大きくたって重いだけだよ」

幼友「一度でいいからそういう余裕な台詞を吐いてみたいよ」

「吐いてみたいって、言い方がきたない」

妹友「胸には愛と夢と希望が詰まってればいいんですよ」

幼友「うん、そうだよね。脂肪なんていらないよね、うん」

「ちっちゃいのが好きな人もいるよ」

幼友「うん、そうだよ。でもなんか悲しくなってきたよ」

幼馴染「カレーうどんできたよー」

幼友「運ぼうか」

妹友「そうですね」

439 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:05:55 Eg9zY1k. 338/394




「いただきます」

「どうぞ」

幼馴染「召し上がれ」

「」ズルズル

「カレー飛び散ってるよ」

幼馴染「ほっぺたにカレーついてるよ」

「ごめん」

「おいしい?」

「おいしいよ」

幼馴染「よかった」

「わたしも食べようっと」

440 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:07:17 Eg9zY1k. 339/394


男友「いただきまふ」

妹友「でうぞ!」

幼友「めっしゃがれ」

男友「……幼友さんってさ、料理できるの?」

幼友「な、なんでいきなりそんなこと訊くの」

男友「いや、なんとなく思ったんだよね。幼友さんって料理苦手そうだなって」

幼友「苦手だったらどうなの」

男友「べつに。まあそんな感じがしてたし、くらいにしか思わないけど」

幼友「わたしってそんなに料理苦手っぽい雰囲気出てる?」

男友「白いシャツに染み付いたカレーうどんの汁並に滲み出てる」

幼友「言い過ぎじゃない?」

男友「いやあ、そんなもんじゃないかなあ」

441 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:07:51 Eg9zY1k. 340/394


妹友「するどいですねえ、男友さん。上靴に仕込まれた画鋲並みの鋭さです」

男友「上靴に画鋲って、陰湿だな。俺は陰湿で鋭いのか」

妹友「たしかに幼友さんは料理が得意ではないですね」

男友「あー、やっぱりか」

幼友「ちょっと黙ってみるってのはどうかな、妹友ちゃん」ジロリ

妹友「きゃー、こわい」ズルズル

幼友「すごい、うどん啜りながらこわいってよく言えたね」

妹友「特技の腹話術です」ムグムグ

男友「すげえ」

442 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:09:59 Eg9zY1k. 341/394


幼友「料理で重要なものって、なんだと思う?」

「調味料?」

妹友「知識?」

「クックパッド」

幼友「ちがう。愛だよ。うん、たぶん愛だ。愛が必要なんだよ」

男友「つまり、へたくそでも愛があればどうにかなるって言いたいわけ?」

幼友「要約されると恥ずかしかったりする」

「顔赤いよ。午後の紅茶ストレートティーみたい」

幼友「もう料理下手ネタでわたしをいじるのやめようよ。たのしくないでしょ」

「わりとたのしいよ」

幼友「鬼め」

443 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:11:41 Eg9zY1k. 342/394


妹友「じゃあ、料理下手以外のネタでいじるのはいいんですか?」

幼友「よくない」

妹友「男友さん、幼友さんはこの4人の中でいちばん胸囲が小さいです」

幼友「なに言ってんの」

男友「んなもん見ればわかるよ。俺の目で見れば一発だよ」

幼友「へんたい」

「いいことを教えてやろう」

幼友「いきなりどうしたの」

「まあ、いいじゃん。とりあえず聞けって、な」

幼友「ほんとうにいいことなのかな、それは」

「たぶん」

幼友「だったらどうぞ」

444 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:13:27 Eg9zY1k. 343/394


「男友は、ちっちゃい胸のほうがいいんだってさ」

妹友「へえ……ロリコンですか……」

男友「いや、ちがうだろ。なんでロリコンになるんだよ」

妹友「アリコンですか……ルイス・キャロルですか……ドン引きです……」

男友「お前ばかやろう、なに言ってんだ。だからお前はばかやろうなんだよ」

「ばかやろうはお前だばかやろう」

男友「」ギャーギャー

「」ワーワー

妹友「……」チラッ

幼友「……」

妹友「……よかったですね?」

幼友「……まあ、結果オーライってことになるのかな」

445 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:15:46 Eg9zY1k. 344/394


* 食後

幼馴染「あのさ」

「どした」

幼馴染「提案があるんだけど」

「うん」

幼馴染「あ、あのね……来週の日曜日にね」

幼馴染「今度はいっしょに遊園地に行きたいなあ、って思って」

「うん、じゃあ行こう」

幼馴染「い、いいの?」

「行こう。ふたりで」

「もう長い間メリーゴーラウンドに乗ってないんだよなあ」

妹友「ジョン・レノンですか」

446 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:17:22 Eg9zY1k. 345/394


妹友「いいですねえ、遊園地。いいですねえ、ラブラブで」

幼馴染「むふふふふ」

妹友「わたしあれが好きなんですよ。100円入れたら動くあれ」

「どれだよ」

妹友「ほら、あれですよ。レトロな感じのあれです」

妹友「デパートの屋上とかにある、100円玉で動き回るあれです」

「ああ、あれね。あれってそんなにいいもんかな」

妹友「むかしを思い出しますよね」

「もうちょっと歳とってからそういう発言をするべきだと思うんだ」

447 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:18:24 Eg9zY1k. 346/394


妹友「遊園地かあ。遊園地なんてもう何年も行ってないなあ」

「そうだねえ」

妹友「え、妹ちゃんも遊園地とか行くんだ?」

「行くよ」

妹友「ちょっと意外かも」

「なんで」

妹友「妹ちゃんは遊園地ではしゃぐっていうよりも、水族館とかでひっそりしてる感じがして」

「わたしにも子ども時代があったんだよ」

「いまも子どもだろ。なに言ってんだ」

448 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:19:15 Eg9zY1k. 347/394


男友「流れをぶった切って悪いけど、いま何時?」

「んー、20時前くらい」

男友「妹友ちゃんはそろそろ帰らなくていいのか?」

妹友「うーん、そうですねえ。お母さんに連絡は入れてるけど、あんまり遅くなるのはまずいですよね」

男友「帰るのなら送って行くけど」

「お前なに企んでるんだ」

男友「なにも企んでねえよ。ひとりで帰ったら危ないだろ」

妹友「紳士ですね?」

男友「まあね」

妹友「見直しました」

男友「ただのロリコンじゃないのさ」

妹友「ロリコンは認めるんですね」

男友「ちがう。いまのは言葉の綾だ」

449 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:20:31 Eg9zY1k. 348/394


幼友「男友くんだけだといろいろと心配だから、わたしもいっしょに行くよ」

男友「俺ってそんなに信用ないの?」

幼友「万が一ってこともある」

男友「たとえば?」

幼友「いろいろだよ」

幼友「男友くんがなにもないところで躓いて鼻の骨を折って、妹友ちゃんを送るどころじゃなくなるかもしれないじゃん」

男友「俺がなにかしないかじゃなくて、俺の心配をしてくれてるわけ?」

幼友「そういうことになっちゃうのかな」

男友「ありがとう」

幼友「どういたしまして」

妹友「まあ、もうちょっとだけゆっくりしてから行きましょう。こたつぬくい」ヌクヌク

450 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:21:22 Eg9zY1k. 349/394


「みかん食べようっと」

「ほい」

「皮剥いて」

「へい」

「食べさせて」

「そりゃっ」ポイー

「うむ」ムグムグ

男友「お前いっつもそうやってみかん食べさせてもらってるの?」

「まあ、妹がいるときは」

幼友「駄目男だ」

「みかんうめえ。こたつ最高」モキュモキュ

451 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:23:10 Eg9zY1k. 350/394




「そんじゃ、また明日ね」

妹友「うん、また明日。お兄さんもまたいつか」

「おう。そのときはいっしょにサイレント・ヒルでもやろう」

妹友「ぜったいにいやです」

「サイレント・ヒル2の方がいいか」

妹友「そういう問題じゃないです」

幼友「いや、デッドスペースの続きをやろうよ」

妹友「もうあんなゲームはごめんです」

「アリス・イン・ナイトメアとかはどうかな。PCだけど」

妹友「タイトルの時点で嫌な予感しかしないよ」

452 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:23:52 Eg9zY1k. 351/394


「背後に気をつけて帰れよ。振り返っちゃだめだぞ」

妹友「なんですかその意味深な発言は」

「まあ、とにかく後ろには気をつけろよ」

妹友「なんなんですか、後ろになにがあるっていうんですか」

「ライト点けてない自転車とかが突っ込んでくるかもしれないしな」

妹友「それはたしかに危ないですね。気をつけます」

453 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:24:27 Eg9zY1k. 352/394


妹友「それじゃあ、失礼します」

幼馴染「またいっしょに遊ぼうねー」

妹友「はい、またいつか」

男友「そいじゃあ、また明日、学校で」

「おう。気をつけてな。変な気を起こすなよ」

男友「起こさない」

幼友「大丈夫だよ、わたしがいるし」

「だったらいいんだけどさ」

454 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:26:21 Eg9zY1k. 353/394


スタスタ

幼友「月明かりふんわり落ちてくる夜はー」

妹友「ふたりっきりじゃなくて残念でしたね?」

男友「なんの話?」

幼友「こっちの話」

妹友「でもわたしが家に着いたらそうなっちゃいますね」

幼友「そうだね」

妹友「うまいことやりましたね?」

幼友「まあね」

455 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:27:47 Eg9zY1k. 354/394


男友「20時ともなると、さすがに暗いなあ」

幼友「でも夜道ってなんかテンション上がるよね」

男友「わかるかも」

幼友「空でも飛べるような気がしてくるよ」

男友「飛んでみてよ」

幼友「ほっ、やっ」ピョンピョン

男友「飛べてない」

幼友「飛べないに決まってるじゃん」ピョンピョン

男友「そりゃそうだ」

妹友「楽しそうですね?」

幼友「夜のテンションだよ」ピョンピョン

456 : 以下、名... - 2014/03/01(土) 22:28:44 Eg9zY1k. 355/394


妹友「おぶらーでぃー、おぶらーだー、らいふごーずおーん」

男友「いきなりどうした。夜っぽくない曲だな」

妹友「たしかにそうですね。でも歩いてるって感じがしません?」

男友「うーん、そうかなあ」

幼友「オブラディ・オブラダってどういう意味なんだろね」

男友「さあ、意味なんてないんじゃないの」

幼友「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ的な?」

男友「そんな感じじゃないのかな、知らんけど」

461 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:50:48 udNQs7y2 356/394


男友「ところで、妹友ちゃんの家はどこなんだ」

妹友「あっちの方です」

男友「あっちか」

妹友「男友さんの家は?」

男友「こっち」

妹友「こっちですか。わたしの家とは真逆ですね。幼友さんは?」

幼友「こっち」

妹友「そっちですか。ふたりの家は近いんですね?」

男友「まあ、遠くはないな」

462 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:51:19 udNQs7y2 357/394


妹友「なんで逆方向なのに送ってくれるんですか?」

男友「なんでって、心配だから。女の子だし、なにか起こったらどうにもならないだろ」

妹友「それはそうですけど、わたし達って今日知り合ったばかりじゃないですか」

男友「それがどうしたんだ」

妹友「……」

妹友「……いいえ、なんでもないです!」

男友「夜なんだからあんまり大きな声を出さないほうがいいと思うんだよね、俺は」

妹友「じゃあ腹話術でしゃべります!!!」

男友「うるさい」

463 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:52:27 udNQs7y2 358/394


妹友「じゃあ男友さんは、幼友さんも送って行くんですか」

男友「まあ、そうだな。そういう予定」

妹友「ふうん? よかったですね?」

幼友「そうだね、超よかった。あいむそーはっぴー」

幼友「男友くんが送ってくれるだなんて、もう死んでもいいくらいにうれしいよ」

男友「すげえ棒読み」

妹友「風邪ひいちゃだめですよ、男友さん」

男友「はあ、どういう意味?」

妹友「そのまんまの意味です。寒いですからね、“風邪をひかないように気をつけて”」

男友「おう」

464 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:53:12 udNQs7y2 359/394


* 妹友宅

妹友「送ってくれてありがとうございます! この恩は一生忘れません!」

男友「明日の朝には忘れてたりしてな」

妹友「あり得ますね」

男友「あり得るのかよ」

妹友「もしかするとですよ。この先なにが起こるかなんて、誰にもわかりませんからね」

妹友「それでは、がんばってくださいね! 失礼します!」

がちゃ

ばたん

男友「がんばれって、なにをがんばればいいんだろう」

幼友「こっちの話だよ。さあ、わたし達も帰ろうか」

465 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:54:45 udNQs7y2 360/394


スタスタ

男友「いったいなんだったんだろう、あの子。竜巻みたいな子だった」

幼友「おもしろい子だったね」

男友「おもしろいというか、個性的というか」

幼友「ミスター・ブライトサイドって感じだよね」

男友「女の子だけどな」

男友「まあとにかく、楽しそうなんだよなあ。俺もああいう風になりたいよ」

幼友「男友くんは今のままでいいよ」

男友「うーん……変わらなきゃだめな気がするんだけどなあ」

幼友「今のままの方がいいよ」

男友「そうかな」

幼友「誰かも言ってたよ、『彼らが何と言おうと、君自身でいることだ』って」

男友「ふうん」

466 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:56:11 udNQs7y2 361/394


男友「けっきょく、風邪をひかないように気をつけてって、どういうことなんかな」

幼友「たぶん、雨のことじゃないかな」

男友「雨?」

幼友「空」

男友「ほんとうだ、曇ってる。気付かんかった」

幼友「うっかりさんめ」

男友「なにそれ、ちょっとかわいい」

幼友「こっくりさんみたいでいいよね。わたしも好きだようっかりさん」

男友「うん……うん? うーん、こっくりさんかあ……」

467 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:57:15 udNQs7y2 362/394


幼友「曇ってはいるけど、雨は降らないと思うなあ」

男友「どうしてそう思うんだ?」

幼友「わたしが晴れ女だからかな? もうちょっとがんばれるよ、たぶん」

男友「ということは、幼友さんが家に着いた瞬間に雨が降り始めたり」

幼友「男友くんが“持っていない男”なら、あり得るかもね」

幼友「その時はわたしの傘を貸してあげよう」

男友「ありがとさん」

468 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:58:26 udNQs7y2 363/394


男友「幼友さんって晴れ女だったんだな」

幼友「多少はね」

男友「ほんとうに降らないの?」

幼友「わたしが家に着くまではぜったいに降らない。賭けてもいいよ」

男友「ふうん。降ったらどうする?」

幼友「男友くんの言うことをなんでも聞くよ」

男友「“なんでも”」

幼友「そう、“なんでも”。代わりに、降らなかった場合は」

幼友「次の日曜日、わたしといっしょに遊園地へ行ってほしいな」

469 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 21:59:36 udNQs7y2 364/394


男友「次の日曜日に遊園地って、またストーカー?」

幼友「そう」

男友「わかった。降らなかったらな」

幼友「降ったらわたしにどうしてほしい?」

男友「うーん……」

幼友「……」

男友「……うん。降ったらだな」

幼友「うん」

男友「幼友さんは次の日曜日、俺といっしょに遊園地へ行く。うん、そうしよう」

470 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:00:13 udNQs7y2 365/394


幼友「なにそれ、またあのふたりのストーカーをするの?」

男友「そう」

幼友「顔赤いよ」

男友「寒いからな、うん」

幼友「マフラー貸したげようか?」

男友「いや、大丈夫」

幼友「風邪ひいちゃやだよ」

男友「うん」

471 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:00:55 udNQs7y2 366/394


* 幼友宅

ザアアアアア

幼友「雨だね。あれだよ、バケツをひっくり返したようなってやつだね」

男友「ほんとうに幼友さんの家に着いた瞬間に降り始めた」

幼友「だから言ったんだよ」

男友「びっくりするわ」

幼友「参ったか」

男友「参ったなあ。いろんな意味で参るよ」

472 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:01:57 udNQs7y2 367/394


幼友「賭けはわたしの勝ちだね」

男友「あー、悔しいなー」

幼友「悔しいでしょう。約束通り、日曜日はわたしと遊園地ね」

男友「晴れたらな」

幼友「晴れるよ。賭けてもいい」

男友「そうだな、晴れるに違いない」

幼友「賭けないんだ?」

男友「俺って、“持ってない男”だからな」

幼友「負けたくないだけなんじゃない?」

男友「幼友さんになら負けてもいいかも、と思う」

幼友「なにそれ」

男友「なんとなくそう思っただけ。深い意味はない、たぶん」

473 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:03:09 udNQs7y2 368/394


男友「じゃあ、俺はそろそろ帰るとするよ」

幼友「……」

男友「傘、借りてもいいかな」

幼友「やだ」

男友「え」

幼友「もうちょっとだけここにいて」

男友「な、なにそれ」

幼友「そのまんまの意味。もう少しだけ、ここにいてほしい」

幼友「もしかすると、雨脚が弱まるか、止むかもしれないし」

男友「そうだな……じゃあ、もう少しだけここにいる」

幼友「ありがと」

男友「こちらこそ」

474 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:04:18 udNQs7y2 369/394


幼友「寒いね」

男友「そうだな。息も真っ白だ」ハアー

幼友「でも、雨っていいよね」

男友「そうかな」

幼友「傘とか合羽とか、水溜りとか雨上がりとか、好きなんだよね」

幼友「なんていうんだろ、子供っぽいというか、無邪気というか、純粋な感じが好き」

男友「あー、分からなくはないかも」

幼友「でしょ」

男友「長靴とかも好きそう」

幼友「そうだね、好きだよ」

475 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:05:00 udNQs7y2 370/394


幼友「雨音を聞きながら、ぼうっと雨を眺めてたいよね」

男友「そうだなあ、寒いけど」

幼友「寒いけど、ずっと眺めてたい」

男友「ずっと」

幼友「こうやって、ふたりでさ」

男友「……そうだな」

幼友「このまま寝ちゃったりしてさ」

男友「それはまずいだろ」

幼友「たぶん、すごくいい夢が見られると思うんだよね」

男友「そうかなあ」

476 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:05:39 udNQs7y2 371/394


ザアアアアア

幼友「止まないね、雨」

男友「雨脚も弱まるどころか強まってるような気がする」

幼友「引き止めちゃってごめんね」

男友「いや、俺が“持ってなかった”だけだよ」

幼友「……そろそろ行く?」

男友「そうだな、そろそろ」

幼友「ん、じゃあこれ、傘」

男友「ありがとう」

477 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:06:15 udNQs7y2 372/394


幼友「送ってくれてありがとね。それに、今日はたのしかったよ」

男友「うん、俺もたのしかった」

幼友「気を付けて帰ってね。事故なんかしたらやだよ」

男友「俺だっていやだよ」

幼友「風邪にも気を付けて」

男友「なんかお母さんみたいだ」

幼友「それ誰かにも言われた気がする」

478 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:07:24 udNQs7y2 373/394


男友「じゃあ行くわ」

幼友「寒くない?」

男友「そりゃあ寒いけど」

幼友「わたしのマフラー、貸す」クルクル

男友「いや、大丈夫だって」

幼友「いいから。長いものには巻かれろって言うでしょ」クルクル

男友「そういう意味ではないと思うんだけど」

幼友「よし、おっけー。似合ってるよ、男友くん」

男友「お、おう」

男友(なにこのマフラーめっちゃいい匂いする)クンクン

幼友「あんまりにおい嗅がないでよ。はずかしい」

男友「ごめん」

幼友「わたしがいないところで嗅ぐようにして」

男友「そうする」

479 : 以下、名... - 2014/03/07(金) 22:08:40 udNQs7y2 374/394


男友「傘とマフラーは明日の朝返しに行くよ」

幼友「ん、風邪拗らせて学校休んじゃだめだよ」

男友「大丈夫だよ、傘とマフラーがあるし」

幼友「そっか」

男友「また日曜日はよろしく」

幼友「こちらこそよろしく。今後ともよろしく」

男友「おう。そんじゃあ」

幼友「あ、ちょっと待って。最後にひとつ訊いてもいい?」

男友「なに?」

幼友「料理のできない女は、きらいだったりする?」

男友「いや、べつにそんなことはないけど。まあ、できないよりはできる方がいいけどさ」

幼友「わかった。ありがとう」

男友「じゃあ、今度こそ」

幼友「バイバイ。また明日ね」

485 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:41:29 ndDwxAek 375/394


* 翌日 学校

幼友「おはよう、風邪拗らせてない?」

男友「おかげさまで」

男友「これ、マフラー。きのうはありがとう」

幼友「あれ、傘は」

男友「ええと、まあ、なんというか、家に忘れちゃったというか」

幼友「うっかりさんめ」

男友「ごめん」

幼友「いいよ、べつに。たぶん今週はずっと晴れだから」

男友「そうなんだ?」

486 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:42:02 ndDwxAek 376/394


幼友「マフラー、におい嗅いだの?」

男友「まあ、はい、ちょっとだけ。ごめんなさい」

幼友「ちょっとだけ」

男友「そう、ちょっとだけ」

幼友「……」

男友「……」

幼友「……ほんとうに?」ジトー

男友「ごめんなさい、もう死ぬまでマフラーの匂いは嗅がなくてもいいってくらいには嗅ぎました」

幼友「正直でよろしい」

幼友「まあ、そんなことはべつにどうでもいいんだけどね」

男友「あ、どうでもいいんだ?」

487 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:42:53 ndDwxAek 377/394


幼友「きのうの約束、覚えてるよね」

男友「やくそく」

幼友「覚えてるよね」

男友「つぎの日曜日は遊園地に行くってやつ?」

幼友「そう、それ」

男友「それがなにか」

幼友「ううん、なんでもない。ただ確認したかっただけ」

男友「そうですかい」

幼友「たのしみだねえ」

男友「そうだなあ」

488 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:43:54 ndDwxAek 378/394


* 昼休み

「おっす」

男友「おっす」

幼友「おっす」

「なに、ふたりでご飯食べてんの?」

男友「まあ、そうだな、うん」

「ふうん」

幼友「今日はそういう日なんだよ」

「幼友も大変だな」

男友「どういう意味だよ」

「深い意味はない」

489 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:44:25 ndDwxAek 379/394


男友「そんで、けっきょく何なんだ。どうしたんだ」

「いや、いっしょに飯食おうかなあと思っただけ」ヨイショー

男友「愛妻弁当の自慢をしに来ただけじゃねえの」

「半分くらいはそんな感じかもしれない」

幼友「嫌なやつだ」

「俺はそういうやつだよ」

幼友「開き直っちゃって。それで、嫁は?」

「部活か委員会か、なんかそれの用事だって」

男友「そんで、お前は幼馴染ちゃんから弁当だけもらってきた」

「うん」

男友「幼馴染ちゃんも大変だ」

490 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:45:31 ndDwxAek 380/394


「なあ、もしかして、俺ここにいない方がいい?」

幼友「なぜそう思う?」

「いやあ、なんとなくね。出来上がったジグソーパズルみたいな雰囲気というかね」

男友「べつにいない方がいいとか、そんなことはないけど」

「そう? だったらいいんだけどさ」

幼友「それで、愛妻弁当はどうなの」

「どうなのって、いつもどおりじゃないの」パカッ

男友「なんかその言い方むかつくわあ」

491 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:46:35 ndDwxAek 381/394


「……」

男友「どうした」

「いや……なんだこの黒っぽいの」

幼友「なんだろうね、これ」

男友「どれどれ」

男友「……あー、はいはい、なるほど」

「なんだその意味深な反応」

男友「これはあれだろ、お前の好きな」

「俺の好きな?」

男友「キクラゲ」

「キクラゲ?」

男友「海月だけに、みたいな」

「……」

幼友「……」

男友「……なんかごめん」

492 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:47:25 ndDwxAek 382/394


「どれどれ」ムグムグ

「ああ、ほんとだ。キクラゲだわ」

幼友「なにこのリアクションに困るおかず」

男友「幼馴染ちゃんなりの愛情表現みたいなもんじゃないの」

幼友「歪んでるというか、ずれてるというか」

男友「まあ」チラッ

「キクラゲうめえな……」ムグムグ

男友「言っちゃあ悪いけれど、あいつとお似合いの女の子だしなあ」

幼友「納得出来ないようで納得できちゃう、かも」

493 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:47:59 ndDwxAek 383/394




幼馴染「男ー?」

「ん、おお」

幼馴染「おっす!」

幼友「おっす」

男友「おっす」

「用事は終わったのか」

幼馴染「うん」

「お弁当、おいしかったよ」

幼馴染「そっか、よかった。うれしい」

494 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:49:07 ndDwxAek 384/394


男友「なんか、なんなんだろうなあ」

幼友「どしたの」

男友「いやあ、平和だよなあ、と思ってさ」

幼友「いいことだよね」

男友「そうだな」

幼友「あ、そうだ。男くんのお嫁さん」

幼馴染「はい?」

幼友「あれ、もうちょっと恥じらいを含んだ返事を期待してたんだけど、まあいいや」

幼友「あんたがいっつも着てるようなひらひらふわふわした服ってあるじゃん」

幼馴染「うん」

幼友「ああいうのって、わたしが着ても似合うと思う?」

495 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:50:20 ndDwxAek 385/394


幼馴染「うーん、どうだろう。幼友ちゃんのそういう格好は想像しにくい」

幼友「そっか」

幼馴染「着るの?」

幼友「かもしれない」

幼馴染「どうしてまた急に?」

幼友「なんとなくね、なんとなく」

男友「幼友さんが、幼馴染ちゃんみたいな格好」

幼友「どうかな」

男友「いいと思う。俺は好きだよ、ああいうの」

幼友「じゃあ、ちょっとだけ頑張ってみる」フンス

幼馴染「はあ、なるほどねえ、そういうこと」

496 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:51:44 ndDwxAek 386/394


「あー、ちょっと外の空気吸いに行って来る」

男友「おう、光化学スモッグ注意報が出てるぞ」

「適当なこと言うな。久しぶりに聞いたわ、そんな単語」

幼友「さむいのに、よく外に行く気になれるね」

「たまにあるんだよ、そういう時がさ」

「なんにも考えずに、ただ散歩したい日とかあるだろ。そういうのと同じ」

男友「まあ、わからなくはないけど」

497 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:53:43 ndDwxAek 387/394


「じゃあ行ってくる」

幼馴染「あ、わたしも行く」

「お昼食べたのか?」

幼馴染「まだだよ。でも、あんまりお腹減ってない。それに」

「それに」

幼馴染「男のとなりがいい」

「そっか。じゃあ適当に散歩でもしよう」

幼馴染「うん」

「じゃあ、あとはふたりでゆっくりどうぞ」

幼馴染「どうぞー」

498 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:55:10 ndDwxAek 388/394


男友「けっきょく、なんだったんだ、あいつら」

幼友「恋人自慢しに来たんじゃなくて?」

男友「いやあ、あいつらがそんな意地の悪いことを思いつくとは思えない」

幼友「冗談だよ」

男友「さあ、じゃあ俺もどっかに行くかな」

幼友「わたしもついて行っていい?」

男友「べつにいいけど、どこに行くかは考えてないぞ」

幼友「男友くんの行くところへ連れてってくれればいいよ」

男友「なにそれ」

幼友「連れ去られたい願望があるんだよね、わたし」

男友「はあ、そうですか」

幼友「ていくみつーざぷれいすうぇあゆーごー」

499 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:55:53 ndDwxAek 389/394


男友「うーん、図書室にでも行くかなあ」

幼友「男友くんって本なんか読むの?」

男友「読まない」

幼友「やっぱり?」

男友「でも、ごんぎつねとかは好きだよ」

幼友「それってもしかして、国語の教科書が好きなんじゃないの?」

男友「かもしれない」

幼友「そんな男友くんが図書室に行ってなにをするの?」

男友「暖房が効いた部屋で寝る」

幼友「なるほどねえ。男友くんらしいというか、なんというかね」

500 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:56:54 ndDwxAek 390/394


男友「俺らしさって、なんだろう?」

幼友「優しいところとか?」

男友「それは俺に限ったことではないし、そもそも俺って優しいの?」

幼友「優しいよ」

男友「そうなんだ」

幼友「うん、すっごく」

男友「……なんか恥ずかしいぞ」

幼友「もっと恥ずかしがってもいいんだよ。わたし、男友くんの困った顔がけっこう好きだよ」

男友「……幼友さんにはサディスティックな面もあったりするのかな?」

幼友「男友くんの困った顔はいいもんだよ、うん。すごくいいよ」

男友「うーん……」

501 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:57:50 ndDwxAek 391/394


* 屋上

「冬に屋上なんかに来たって仕方ないのにな。でも、なんか変な魅力があるよな、屋上って」

幼馴染「誰もいないね」

「日が出ててもこんだけさむいからなあ」

幼馴染「手をつなげばあったかいよ」

「そうだな」ギュ

幼馴染「……」ギュ

「……」

幼馴染「……やっぱりちょっとさむいね」

「仕方ないさ」

502 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 21:59:09 ndDwxAek 392/394


「きのうは、けっきょくワンちゃんのお墓参りに行けなかったな」

幼馴染「またいつか、ちゃんと行こうね」

「うん。つぎの日曜日にでも行けるし、そのつぎの日曜日にでも行ける」

「ずうっとみんなでいられたらいいのになあ」

幼馴染「そうだねえ」

「俺たちはずっとこうしていような」

幼馴染「ずっとだよ。やくそくだよ」

「もちろん」

503 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 22:00:14 ndDwxAek 393/394


「来週の日曜日は遊園地に行って」

「そのつぎの日曜日はどうしようか?」

幼馴染「男といっしょにいられるんだったら、わたしはなんだっていいよ」

幼馴染「男の行くところに連れてってね」

「うん。じゃあ……」

幼馴染「なに?」

「再来週の日曜日は、いっしょにレッサーパンダを見にいこう」

幼馴染「うんっ」

504 : 以下、名... - 2014/03/11(火) 22:01:24 ndDwxAek 394/394

ここでおしまいということで

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