戸愚呂弟「おに……」
戸愚呂兄「?」
戸愚呂弟「おに……おに……」
戸愚呂兄「?」
戸愚呂弟「おに……おに……おに……」
戸愚呂兄「?」
戸愚呂弟「……兄者」
戸愚呂兄「なんだ? オレに用か?」
戸愚呂弟「いや……何でもない。すまないねェ」
戸愚呂兄「???」
元スレ
戸愚呂弟「おに……おに……おに……兄者」戸愚呂兄「?」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1571396600/
戸愚呂兄「……?」
戸愚呂兄(なんだったんだ、さっきのは)
戸愚呂兄(オレを見つめながら、おに……って呟いてやがった)
戸愚呂兄(“おに”ってなんだ?)
戸愚呂兄「まさか……鬼!?」
戸愚呂兄「アイツはオレに“鬼”と言いたかったのかァ!?」
戸愚呂兄「つまり、鬼畜と……!」
戸愚呂兄「バカなッ! このオレの一体どこが鬼畜だってんだァ!?」
戸愚呂兄(ちょっと振り返ってみるか……)
戸愚呂兄『ヒヒヒ、動けないヤツにトドメを刺す瞬間がたまらねェ!』
戸愚呂兄『特別サービスでお前の仲間の死に様を人形劇で再現してやるよォ!』
戸愚呂兄『ククク、オレを倒したと思ったか? 残念ながら分身みたいなもんだァ!』
戸愚呂兄「……」
戸愚呂兄「鬼畜だわ」
戸愚呂兄「つまりアイツはこう言いたかったのか!?」
戸愚呂弟『兄者……アンタは鬼だ』
戸愚呂弟『品性もないし、小さいし、悪趣味だし、気持ち悪いし、小さいし、もうついていけないねェ』
戸愚呂兄「ううう……なんてことだ」
戸愚呂兄「たった一人の弟に……見放されたくない!」
戸愚呂兄「弟に……見直されたいッ!」
戸愚呂兄「……」サッサッ
戸愚呂兄「……」サッサッ
通行人「おや、缶拾いですかな?」
戸愚呂兄「ええ、この辺は汚れてますから」
通行人「精が出ますねえ」
戸愚呂兄「これも弟に見直されるためですよ」サッサッ
戸愚呂兄「はい、赤信号ー!」ピッピーッ
戸愚呂兄「はい、青信号! みんな渡ってーっ!」ピーッ
小学生A「おはようございまーす!」
小学生B「おはようございます」
小学生C「いつもありがとうございまーす!」
戸愚呂兄「しっかり勉強するんだぞー!」
老婆「あいたたた……」
戸愚呂兄「大丈夫ですか、おばあさん」
老婆「あ、これはどうも」
戸愚呂兄「よかったら荷物をお持ちしましょうか?」
老婆「だけどあんた持てるかい?」
戸愚呂兄「これでも妖怪なんで、お安いご用ですよ」ヒョイッ
老婆「まぁっ、手が縄みたいになって」
戸愚呂兄「……」
戸愚呂兄「数々のボランティアで“心”は鍛えることができた……」
戸愚呂兄「だが、まだ強さの面では不安が残る」
戸愚呂兄「オレを鍛えてくれそうなヤツとなると……アイツしかいねェか」
幻海「なんの用だい」
戸愚呂兄「オレを……鍛えてくれ」
幻海「なんであたしがアンタにそんなことしなくちゃならない?」
戸愚呂兄「弟が……オレを見捨てようとしている」
戸愚呂兄「お前はオレの下心を知ってたろう……内心オレを相当軽蔑してたはずだ」
戸愚呂兄「いや、おそらく眼中にすらなかったかもしれねェ」
幻海「……」
戸愚呂兄「こんなオレだが……弟にだけは見直されてェんだ! 実の兄として!」
戸愚呂兄「だから頼む、オレを鍛え直してくれッ!」
幻海「どうやら本気みたいだね」
幻海「ただし、やるからには容赦しないよ」
戸愚呂兄「ありがとう……!」
戸愚呂兄「キエエエエエッ!」
幻海「甘いッ!」
ドゴォッ!
戸愚呂兄「うぐっ……」
幻海「その変幻自在の体に頼りきりじゃ一流にはなれないよ。技と肉体を磨かなきゃね」
戸愚呂兄「くっ……まだまだァ!」
幻海「だいぶ根性はついてきたじゃないか」
妖怪「なっ、なんの用だ! 戸愚呂!」
妖怪「オレはかつてお前と戦って、遊び半分でこんな体にされちまった……トドメでも刺しにきたか!?」
戸愚呂兄「その節は本当にすまなかった」
妖怪「!?」
戸愚呂兄「これは……せめてもの詫びの品だ」
戸愚呂兄「それとオレにできることがあったら何でもいってくれ」
妖怪(どういう風の吹き回しだ……!?)
戸愚呂兄(他にオレができることといったら……)
グニュグニュグニュ…
戸愚呂兄「……」
戸愚呂兄(オレは体を極限まで細くできるし、どこにでも目を生やすこともできる)
戸愚呂兄(これを応用すれば……!)
戸愚呂兄「では、お尻から入れますねー」ズボッ
患者「うっ!」
ズリュリュ…
戸愚呂兄「ポリープがありましたので、このまま切っちゃいまーす」
チョキンッ
患者「ありがとうございます……」
戸愚呂兄「さてと、新聞配達に行くか。その後は川のゴミ拾い……」
戸愚呂弟「兄者……」
戸愚呂兄「おお弟よ、どうした?」
戸愚呂弟「どうしたはこっちのセリフだ」
戸愚呂弟「体を鍛え直し、ボランティアや健全な仕事に精を出し、最近の兄者はまるで人が変わったようだ」
戸愚呂弟「一体何があったというんだ? まさか誰かに乗っ取られてるんじゃないだろうねェ」
戸愚呂兄「そんなんじゃねェ……全てはお前のためだ」
戸愚呂弟「どういうことだ?」
戸愚呂兄「いつだったかお前はオレに“鬼”だといったろう?」
戸愚呂兄「あれでオレは目覚めたんだ、このままじゃいけない……ってな」
戸愚呂弟「いや、そんなこといった覚えは……」
戸愚呂弟「あ」
戸愚呂弟「あれは違う! あれは違うのだ!」
戸愚呂兄「違う? どういうことだ?」
戸愚呂弟「あれは……あれは……」
戸愚呂弟「一度でいい……たった一度でいいから……」
戸愚呂兄「?」
戸愚呂弟「兄者のことを……おに……おに……」
戸愚呂兄「どうした、はっきり言え!」
戸愚呂弟「“お兄ちゃん”……って呼びたかったのだ」
戸愚呂兄「!!!」
戸愚呂兄「呼んでみろ……」
戸愚呂弟「いいのか?」
戸愚呂兄「一度だけといわず……好きなだけ呼べ!」
戸愚呂弟「兄者……!」
戸愚呂兄「兄者じゃないだろ?」
戸愚呂弟「お、お兄ちゃん……」ボソッ
戸愚呂兄「もう一回!」
戸愚呂弟「お兄ちゃん!」
戸愚呂兄「弟よ!」
戸愚呂弟「お兄ちゃん!!!」
戸愚呂兄「弟よ!!!」
戸愚呂弟「お兄ちゃあああああん!!!」
戸愚呂兄「弟よォォォォォ!!!」
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
たまたま通りがかった妖駄「し、信じられん……! 二人とも妖力値10万Pを越えておる……!」ピピピ
おわり