男「どうしたどうした?」ニヤニヤ
子供A「くっ……≪ヘルガーゴイル≫を場に出す!」バッ
男「そんなカードで、この私のデッキに勝てると思ってるのかね?」
子供A「なにっ!?」
男「そろそろこいつを出そう……銅の竜≪ブロンズドラゴン≫!」
子供A「ゲッ!?」
子供B「超がつくレアカードじゃん! 初めて見た!」
子供C「たしかネット上だと数万円単位で取引されてるって……」
元スレ
子供「あのおじさん、子供のカードゲーム場で無双して恥ずかしくないのかな……」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1622977047/
男「まだ終わらないぞ……≪シルバードラゴン≫!」サッ
男「さらに≪ゴールドドラゴン≫!」サッ
子供A「マジかよ……」
男「そして、こいつら金銀銅三体が揃った時のみ場に出せる合体ドラゴン――」
男「≪ポディウム(表彰台)ドラゴン≫! 攻撃力10000!」
男「当然……攻撃ッ!」
子供A「うわあああっ! 負けだぁぁぁぁぁ!」
子供B「≪ポディウムドラゴン≫って、世界に数枚しかないやつだろ!?」
子供C「なんでそんなの持ってんだよ、このおじさん……」
男「レアカード≪完全無敵バリア≫を発動!」
子供B「僕のデッキにあれを崩せるカードはない……!」
男「死人の皇帝≪ゾンビエンペラー≫を出す!」
子供C「ダメだ……倒しても倒しても復活する……!」
子供A「ちくしょう、誰も勝てない……」
子供B「大人はずるいぜ! 金でレアカード集めてさ!」
子供C「あのおじさん、子供のカードゲーム場で無双して恥ずかしくないのかな……」
男(快感~! これだよ、俺が味わいたかったのはこれなんだよ!)
少年「お前ら、どうした?」
子供A「あ、チャンプ! 今日このゲーム場にあのおじさんがやってきてさ……」
子供B「強いカードばかり持ってて、誰も勝てないんだ……」
子供C「なんとかやっつけてよ!」
少年「ふうん……俺に任せな」
少年「おい、おじさん」
男「なんだね?」
少年「俺はここらで一番『モン戦(モンスター戦争)』が強いんだ」
少年「みんなからは“チャンプ”って呼ばれてる」
男「ほう……」
少年「俺と勝負しろ!」
男「いいだろう、かかってきたまえ。返り討ちにあっても泣くんじゃないぞ」
少年「≪爆裂ラビット≫を出す」
男「私のターン。おっと、いいカードを引いたよ」
男「悪魔の戦車≪デビルタンク≫だ」ニヤッ
子供A「あんなカード見たことねえ!」
子供B「あれもかなりのレアカードだ」
男「砲撃開始! 君のモンスターは破壊される!」
少年「……」
男「どうやらチャンプとやらも大したことないねえ~!」
子供C「ダメだ……完全に押されてる!」
少年「俺のデッキを舐めるなよ」
男「ん?」
少年「≪悪魔除去≫」サッ
男「なっ……!」
少年「これで≪デビルタンク≫は消滅する」
男(そんな……こんなあっさり≪デビルタンク≫が無力化されてしまうなんて!)
男(だが、私にはまだ切り札がある!)
男「≪ブロンズドラゴン≫!」
男「さらに≪シルバードラゴン≫≪ゴールドドラゴン≫も場に出す!」
子供A「あっ、僕がやられた流れだ……」
男「さぁ、出てきたまえ。最強の≪ポディウムドラゴン≫!」
男「攻撃力10000! 君のデッキを一発で消し飛ばせる! 喰らえッ!」
少年「≪リフレクト鏡≫発動」ペラッ
男「え?」
少年「これでその攻撃はそっくりそのまま跳ね返る」
男「うわっ……!」
少年「さらに≪攻撃力倍加≫も追加発動」サッ
男「コンボだと!?」
少年「反射攻撃――おじさんの負けだ」
男「ああああああっ……!」
男(この少年……罠カードである≪リフレクト鏡≫を発動する機会は何度かあったのに)
男(私が最強攻撃を仕掛けるのを読んで、≪リフレクト鏡≫を温存していたということか……!)
男(しかも、コンボ攻撃まで決められた……!)
少年「おじさん」
男「……な、なんだ」
少年「ずいぶん強いカードばかり持ってるようだけど……」
少年「『モン戦』はレアカードで固めただけのデッキで勝てるほど、甘いゲームじゃねえんだよ」
男「ぐ……」
男「ぐううううう……ッ!」
子供A「やったな!」
子供B「あのおじさん、がっくり肩を落として帰っていったよ! ざまあみろ!」
子供C「さすがチャンプ!」
少年「へへへ……。俺ああいう大人嫌いだから、ついムキになっちゃったよ」
子供A「そういや、今度全国大会に出るんだろ? 絶対優勝してくれよ!」
子供B「みんなで応援行くからさ!」
少年「うん、任せてくれよ!」
カードゲーム『モンスター戦争』全国大会――
司会者「厳しい地方予選を勝ち抜き、全国から集まった64人の猛者たち!」
司会者「準備はいいかーっ!?」
オーッ!
司会者「表彰式には『モン戦』生みの親である社長さんも来る予定になってるから」
司会者「みんな、日本一を目指して頑張ってくれ!」
ワーワー… ワーワー…
少年(ようし、絶対優勝するぞ!)
トーナメント一回戦――
審判「両者、席に座って下さい」
メガネ「よろしく」クイッ
少年「どうも」ペコッ
子供A「相手は……大学生の人だって」
子供B「勝てるかなぁ……」
子供C「大丈夫さ、こないだだっておじさんに圧勝してたし!」
ところが――
少年(なんてデッキだ! 全然つけいるスキがない……!)
メガネ「そろそろ決めようかな」
メガネ「≪キラードーナツ≫≪ブラッディレモン≫≪血に飢えた皆の衆≫」
メガネ「この三枚のカードが揃った時のみ発動できる……“ドレミコンボ”!」
少年「うわあああああっ……!」
少年「ま、負けました……」
メガネ「君もよくやったよ」
ワーワー…
少年「せっかく応援してくれたのにごめん……」
子供A「……ドンマイ!」
子供B「しょうがないよ、よくやったよ!」
子供C「またデッキ作り直して、大会出ようよ!」
少年「……うん」トボトボ
子供A「まさかチャンプがなー……」
子供B「あんなあっさり負けちゃうなんて……」
子供C「やっぱり全国大会はレベル高いね……」
少年「あーあ、せめてベスト8に入りたかったなぁ……」トボトボ
少年「……ん?」
「すまないね、本当は開会式から出たかったんだが」
秘書「いえいえ、社長はお忙しい方ですから」
少年「……あ」
少年(『モン戦』作った社長さんだ……! どんな人だろう……)
少年「……」チラッ
男「ん?」
少年「あっ!」
男「君は……」
少年「あの時のおじさん!」
少年(おじさんが『モン戦』を作った人だったなんて……!)
男「君はチャンプ君だね。ひょっとして全国大会に?」
少年「は、はい」
男「今のところ調子はどうだい? 君ならばきっと――」
少年「実は……一回戦で負けちゃって」
男「え、そうなのかい」
少年「カードの引きは悪くなかったのに、手も足も出ず惨敗でした……」
男「そうか……」
男「しかし、ゲームというのは勝ったり負けたりするものだ。くよくよするな」
少年「はい……」
男「……そうだ、君にこれをあげよう」
少年「これは……あなたが使ってた四枚のドラゴンカード!」
少年「いいんですか!?」
男「ああ、この間は楽しくゲームさせてもらったからね。そのお礼さ」
男「それじゃ、あまり落ち込まず……最後まで大会を楽しんでくれよ。試合以外にもイベントがあるから」
少年「ありがとうございますっ!」
少年(あの時は大人げないおじさんだと思ったけど……とてもいい人だ……)
……
男「……」
男「ウソだろ!?」
男「あの子なら全国大会上位間違いなしだと思ってたのに……てか優勝だと思ったのに……」
男「あの子で一回戦負け……しかも惨敗かよ!?」
男「どんだけレベル高いんだよ、この界隈はよ!」
男「これじゃあの子にいいようにやられた私の立場は一体……」
男は子供の頃から、カードゲームが大好きであった。
いくつものトレーディングカードゲームに興じており、小遣いは全てカード代に消えていた。
しかし、弱かった。
友達に連戦連敗する日々。悔しくて悔しくて男が至った結論は――
男「そうだ、俺がカードゲームを作ろう!」
男「作って、社長権限開発者権限で、強いレアカードかき集めれば……俺が最強になれる!」
これが大人気トレーディングカードゲーム『モンスター戦争』が生まれたきっかけだった。
秘書「社長、今日の全国大会……大成功でしたね!」
男「……そうだね」
秘書「これでますます『モン戦』は盛り上がりますよ。……社長?」
男「……」
秘書「なぜ落ち込んでるんです?」
男「いや、落ち込んでなんかいないさ……アハハ」
秘書「しっかりして下さいよ。このカードゲームの中核を担ってるのは社長なんですから」
秘書「社長にはカードゲームを作る才能があるんです!」
男「うん、そうだね……」
男(出来ればカードゲームを作る才能じゃなく、カードゲームをプレイする才能が欲しかった……)
END


蓋を開けてみたら小学生のデッキは数ヵ月後には禁止指定されるパワーカード山盛りでぶっちぎりの優勝、「何でみんなこれ使わないんですか?」と言ってきたんだと。
親によっちゃ子供にその時期の最強デッキを用意してやるらしい