あかり「最近ずっと引き込もってばかりだよぉ」
あかり「外に出るのも億劫なんだぁ」
あかり「ふぃーやっぱりおうちは快適だよぉ」
あかり「どれくらい引きこもってたかなぁ」
あかり「3ヶ月くらいだったよぉ」
元スレ
あかり「おうちが快適だよぉ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1498997574/
あかり「ここまで来ると引きこもるのが我が人生の目的に思えてくるよねぇ」
あかり「まったくもって人生の目的とは千差万別だよぉ」
あかり「あかりに人生を教示してくれるとは引きこもりも捨てたものじゃないよぉ」
あかり「あかりってば幸せだなぁ」
ドンドンドンドン
あかり「ひえっ!」
ドンドンドンドン
あかり「誰かドアを叩いてるよぉ…」
結衣「いるか!あかり!」
あかり「結衣ちゃんかよぉ」
結衣「引きこもってないで出てこい!あかり!」
あかり「何を言い出すかと思えば笑止だよぉ」
結衣「このままじゃ2chに入り浸るような駄目人間になっちゃうぞ!」
あかり「うるせぇよぉあかりがどうなろうと勝手だよぉ」
結衣「出てこい!あかり!」
あかり「あああああああ!!!!!!!!!!」
あかり「うるせぇよぉ!!!!」
結衣「!!!!!!」
あかり「あかりがなにしようとあかりの勝手だよぉ!」
結衣「あかり…」
あかり「貴様ら自由主義者の奴隷が今更あかりに強制してるんじゃねぇよぉわ!」
結衣「あかり…私はそんなつもりじゃ…!」
あかり「社会主義勢力が最多議席を取ってから出直してこいよぉ」
ドゴォ!
結衣「あかり…」
あかり「まったくあかりの自由を侵害するとは何事だよぉ
あかり「だからあかりは都合の悪いときだけ社会正義ぶるリベラリストが嫌いなんだよぉ」
あかり「あかりの引きこもりは誰にも止められないよぉ」
あかり「うすしおでも食べてストレス解消するよぉ」
あかり「ぱくりんぱくりん」
あかり「うすしお美味しいなぁ」
あかり「もうなくなっちゃったよぉ」
あかり「買いに行かなきゃだよぉ」
あかり「……」
あかり「暗くなってから買いに行くよぉ」
あかり「べつに…」
あかり「べつに社会にたいして後ろめたい訳じゃないよぉ」
あかり「日が高いうちだとあかりの姿が他の人に見られて嫌だとか」
あかり「正常な社会生活を営んでる人を見るのが嫌だとか」
あかり「そんなことはないよぉ」
あかり「あかりと同い年の子が陽向で楽しそうにお話しながら歩いてるのが」
あかり「悔しいわけじゃないよぉ」
あかり「そんなことは一切考えたことないよぉ」
あかり「あかりの愉快なる人生はこの瞬間にありだよぉ」
あかり「楽しいなぁ楽しいなぁ」
京子「おーい!あかりーいるかー!」
あかり「!!!!!」
京子「きょっぴーだよぉ」
あかり「ワキガ……」
京子「まだ引きこもってるのかーあかりー」
あかり「うるさいよぉ!!!」
京子「結衣が『アカの豚め』ってプリプリ怒りながら歩いてたぞ」
あかり「今度会ったらファックしてやるよぉ」
京子「もーそろそろ出てきたらどうだー引きこもりも飽きただろ」
あかり「そんなこたぁねぇよぉあかりは快適だよぉ」
京子「子宮以来の引きこもりしちゃってまぁ幼児退行ですかー」
あかり「うるせぇよぉあかりは崇高なる思索に耽るために敢えて社会から断絶したんだよぉ」
京子「引きこもりはいっつもそう言う」
あかり「あかり凡百のナメクジ糞野郎な引きこもりとは一線を画してるよぉ」
京子「うんうん。目くそ鼻くそのクソなこって。きょっぴーは満足したから帰るよ」
あかり「え?…もう帰っちゃうのぉ?」
京子「もち帰りますよー」
あかり「もっとあかりを説得しないの?」
京子「なんで?」
あかり「あかりの心情に訴えかける為に感情的な言葉であかりを説得しないの?」
あかり「あかりのことを心配してどうにかあかりを説き伏せようと努力しないの?」
京子「めんどうじゃん?」
あかり「……!」
京子「ほなね」
あかり「クソがよぉ!!!」
ドゴォ
あかり「もっとあかりのこと心配しろよぉ!」
あかり「あかりがなんで引きこもっちゃったのかとか」
あかり「どうしたらあかりが外に出られるようになるかとか」
あかり「もっとあかりのこと気にかけろよぉ」
あかり「この世には糞野郎しかいねぇのかよぉ」
あかりちゃんは引きこもっていた
海王星大気圏より1000kmの下の広大な海の底に
あかりちゃんは引きこもっていた
直径49,528kmの惑星
ただ耳が痛いほどの静寂と
膨大な水圧だけがそこにあった
中心温度約5,000kの熱が生み出す僅かな惑星生命の鼓動
海の上では時速2,000kmの風が吹き荒れている
ここに訪ねてくるものもいなかった
すべてはあかりちゃんが見た幻でしかなかった
膨大と言って良いほどの海
巨大な惑星
あかりちゃんはその底に沈んで
世界が終わるのを待っていた
幻覚はあまりに長い孤独のせいなのか
お薬の副作用なのかはわからない
ただたまにドラッグストアに出向いて
海王星人から薬剤を買うのだけど
それが人間にとって良いものかは判然としないから
それのせいかもしれなかった
むしゃくしゃするときは
帰り道に会う海王星人を一人残らずしばき倒しながら帰った
あかりちゃんは海王星人に恨みはなかったけど
海王星人があかりちゃんのイライラしてるときに通りかかるのが悪かった
必然海王星人はしばき倒されてお金を巻き上げられ
泣きながら逃げることになるのだ
あかりちゃんは暴力で海王星人を畏怖させていた
太陽系の端っこで一人
あかりちゃんは孤独に耐えていた
それは純粋に耐える為の孤独だった
他のすべての孤独にかかる要素は一切取り払われ
純然たる耐える孤独の孤独がそこにあった
あかりちゃんは一ヶ月か数万年か何億年かはわからない時間を耐えていた
ちなつ「おーい!あかりちゃーん!」
あかり「むにゃむにゃ寝てたよぉ」
ちなつ「あかりちゃーん!」
あかり「うるせぇよぉ!海の中にいる愉快な夢を見てたのに起こすんじゃねぇよぉ」
ちなつ「あかりちゃーん!ちーなが来たよぉ!」
あかり「……ちなつちゃん?」
あかり「ちなつちゃんかよぉ」
ちなつ「そーよ。ちーなが来てあげたわよぉ」
あかり「随分偉そうだよぉ。頼んでねぇよぉ」
ちなつ「いーえ。あかりちゃんに呼ばれて来たんだから」
あかり「え?あかり呼んだかよぉ?」
ちなつ「しっかりちーなを呼んでたわよ」
あかり「でもここには外部と連絡とれるものはないよぉ」
ちなつ「第六感で呼ばれたのよ」
あかり「ふざけんじゃねぇよぉ」
ちなつ「あかりちゃんいつまで引きこもってるのよ」
あかり「あかりは外に出たくないんだよぉ」
ちなつ「誰も外に出ろなんて言ってないよ」
あかり「どういうことだよぉ」
あかり「あかりを外に連れ出そうとしてるんじゃないのかよぉ」
ちなつ「いいえ。外に出る意味がないなら出なくても良いじゃない」
あかり「え?」
ちなつ「私が言いたいのは、いつまでちなつに会わないつもりなのってことよ」
あかり「……」
ちなつ「あかりちゃんは私に会いたいくせに」
あかり「……!」
あかり「ふざけん……」
ちなつ「ふざけてないつもりよ」
あかり「……」
ちなつ「あかりちゃんはちーなに会いたくないの?」
あかり「……」
ちなつ「どうなの」
あかり「……」
あかり「あかりは……」
あかり「あかりは……」
ちなつ「ええい!10分も待たせてイライラするわね!」
ちなつ「しかも答え出てないじゃないの!」
ちなつ「二重にイライラするわ!」
ちなつ「今日は帰るから!」
あかり「え……?」
ちなつ「また明日来るわね!じゃ!」
あかり「まっ……て」
あかり「……」
あかり「……」
天王星人との惑星間戦争は熾烈を極めるばかりだった
今はあかりちゃんは天王星とは反対側の半球にいるために
その戦争の余波は届いてはいなかったけど
近々天王星人による大規模な上陸作戦が展開されるのだと
戦場とは反対の海でも話題がもちきりだった
天王星人による上陸作戦は惑星の場所問わず行われるとの噂だった
あかりちゃんは引きこもっていたけど無理矢理徴兵され
適性検査もパスをして
気付けば銃を握らされていた
赴任した場所は運悪く翌日の早朝には 天王星人による
海王星への歴史上初となる上陸作戦の戦場となった
装備充実し士気高い天王星人は一気呵成に海王星への侵攻を開始した
「天王星人は橋頭堡を確保。戦果拡大戦闘に移行」
「各師団は敵の侵攻に反撃し敵本陣へ突発への道を切り開け」
劣勢の海王星軍は前衛の兵士を死なせながら
敵の侵攻を遅滞させるのが精一杯だった
あかりちゃんも死んだ僚兵から銃や弾を奪って戦い続けるも
次第に少なくなる友軍に孤立を感じて戦争的死期が近いことを悟っていた
「いずれ銃弾に撃たれるのだろう」
砲弾と銃弾が降り注ぐ火と鉄の世界であかりちゃんは一人
引き金を絞るときに感じるサブマシンガンの鼓動を頼りに
次々と天王星人を撃ち殺していった
教練で嫌というほど叩き込まれた銃撃姿勢を崩さず
この神をも冒涜するような殺戮の世界で研ぎ澄まされた感覚を遺憾無く発揮し
恐ろしいほどの精確さで天王星人を撃ち抜いていく
あかりちゃんは一人この孤立戦線を支える
ちなつ「あかりちゃんきたよー」
あかり「ぶっひぇー寝てたのに起こすなよぉ」
ちなつ「朝だよあかりちゃん」
あかり「あかりは夜遅くまで一人ジェンガしてたから眠いんだよぉ」
ちなつ「楽しいのそれ」
あかり「質問は受け付けないよぉ」
ちなつ「ほら早くデートするわよ」
あかり「ていうかどうして部屋に入れてるんだよぉ!?デート!?」
ちなつ「扉の鍵部分をバールで壊したまでよ。行くわよあかりちゃん」
あかり「ぶっひぇー」
あかり「ふざけんじゃねぇよぉ器物破損だよぉ」
ちなつ「政体が嫌いなくせにいまさら現行法を頼りにしないの。ほら行くわよ」
あかり「弁護士の召喚を要求するよぉ!」
ちなつ「全員死んだわよ。ほらほら良い天気だよ」
あかり「ぐええええ日の光が痛いよぉ!!!」
ちなつ「引きこもりのクズって本当に太陽に弱いのね」
ちなつ「初めて見たから写真とろうかしら」
パシャパシャ
あかり「パパラッチは犯罪だよぉ盗撮で訴えるよぉ!」
ちなつ「……」
パシャパシャ
あかり「無言で撮り続けるなよぉ!事務所から正式な抗議文出すよぉ!」
ちなつ「まったくほら行くわよ」
あかり「グエエエ太陽痛いよぉ」
後退を継続する
周りに友軍はいない
自分のための支援射撃を行い
僅かずつ後退を繰り返す
その時に海王星人の声を聞いた
倒れているがまだ息がある
あかりちゃんは久々に会った友軍に嬉しくなった
まだあかりに以外に生き残りがいたのだ
あかりちゃんはその海王星人を引きずって後退する
早く医療が施せる場所へ行かなければ
砲弾が近接に着弾する
轟音と砂ぼこりが収まって振り向くと
海王星人の体は半分になっていた
もちろんもう息はしていなかった
それと同時にあかりちゃんの肩を銃弾が貫いた
海王星人を引きずっての後退は天王星人の接近を致命的に許していた
ちなつ「まずはショッピングでしょ。そのあとクレープを食べて、カフェでお茶ね」
あかり「ありがちだよぉ」
ちなつ「映画館に入って最後は手を繋いで散歩しておわりよ」
あかり「ヘドが出るよぉ」
ちなつ「だまらっしゃい」
あかり「そんな懐かしいようなデート内容聞かされるとあかり胸が苦しくなるよぉ」
ちなつ「懐かしい?前にもしたことあったっけ」
あかり「あれ?ないよぉ。でも確かに凄く昔にした気がするんだぁ」
ちなつ「変なあかりちゃん」
ちなつ「いつも変な頭だけど」
あかり「変な頭は余計だよぉ」
天王星人がせまる
視界が霞む
それが砂埃のせいか疲労のせいか
肩から流れる血のせいで血圧が低下していってるせいかはわからない
ただここはあまりに寒かったのだと今になって気付いた
ここは海王星だ
天も海も凍りついている
銃を持ち上げる力は残されていない
あかりちゃんの眼前に暗い銃口が下ろされた
あかりちゃんの意識は途絶えた
ちなつ「あかりちゃんまずはショッピングね」
あかり「仕方ないよぉ付き合うよぉ」
ちなつ「それじゃまずはあっちから」
そのトラックは偶然歩道へと乗り上げた
運転手が居眠りをしてしまったことも全ては偶然だった
しかし仮にそれが偶然と言う言葉の意味するものではなかったとしても
ちなつちゃんと並んで歩くあかりちゃんのみを轢き殺したのは
最早偶然と言うしかないものだった
優しく撫でるようにあかりちゃんの体のみを包み込んで
その後バラバラにした
ちなつちゃんの手には繋いでいたあかりちゃんの手の小指しか
残っていなかった
あかり「ぶっひぇー!なんていう夢だよぉ!」
海王星で引きこもり始めたあかりちゃんは起き上がって悪態をついた
あかり「あかりがトラックに轢き殺されるなんて悲惨も良いとこだよぉ」
あかり「まぁこの惑星にはトラックなんてないんだけどねぇ」
あかり「あかりもう一眠りするよぉ」
あかり「あれ?あかりの小指がないよぉ」
あかり「元からなかったんだっけかなぁ」
あかり「それとも、ちなつちゃんが持ってるのかなぁ」
あかり「……会いたいなぁ」
あかり「……今のは嘘だよぉ。あかりは孤独が好きだよぉ」
あかり「あかりは……」
運命は循環する
それはまるでダンスのように廻る
あかりちゃんはいつ抜け出せるかわからない輪のなかで
躍り続ける
いつか抜け出せる時
あかりちゃんはちなつちゃんに会いに行こうと思うだろう
だけどまだそれには気付いていない
だからあかりちゃんは穏やかな二度寝を果たしたのだった
遠い遠い惑星の広大な海の中独りぼっちで引きこもってるけど
いつか抜け出せる日が来ると心の隅で思って
おわり