ガルパンSS
元スレ
まほ「なに? ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドとは」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1622382492/
黒森峰女学園艦
まほ「なに? ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドは80年代辺りを軸に活動した音楽グループではなかったのか?」
エリカ「違います」
まほ「じゃあ彼らは何者だ」
エリカ「彼らではなく、ひとりです」
まほ「……」
まほ「そうか…」
エリカ「はい」
まほ「……」
エリカ「……」
まほ「TM Revolutionみたいなことか…」
エリカ「違います」
まほ「じゃあなんだ。彼は何者なんだ」
エリカ「水泳の選手です」
まほ「…なに?」
エリカ「オランダの、水泳選手です」
まほ「……」
エリカ「……」
まほ「それは本当か」
エリカ「はい」
まほ「俄かには信じられないな」
エリカ「こちらが証拠映像です」
まほ「……」
エリカ「……」
まほ「……ほお~」
エリカ「納得いただけましたか」
まほ「うん。ありがとう、エリカ」
エリカ「とんでもございません」
まほ「早速みほにこのことを伝えなければ」
エリカ「そうですか」
まほ「みほの番号は、と」
大洗女学園艦
♪~♪
みほ「お姉ちゃんから電話だ」
沙織「お姉さんから? 珍しいね」
みほ「出てもいい?」
沙織「もちろんいいよ」
みほ「もしもし、お姉ちゃん?」
まほ『ああ、みほか。今いいか?』
みほ「もちろんいいよ」
まほ『実は前に話していたピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドのことなんだが…』
みほ「ああ、お姉ちゃんがこの間言ってたあのバンドね。」
まほ『ああ、そのことなんだけど…』
みほ「曲聴いたよ! いい歌出してるね。あの人たち」
まほ『お? そうか? って、いやいや違うだろう。聴いてないだろう』
みほ「聴いたよ。もう、なんで疑うの?」
まほ『なんでもなにも…。彼は歌なんか出していないからだ』
みほ「え? だってお姉ちゃんが前によく話してくれたじゃん。ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドがすごくいいんだって」
まほ『確かに彼はすごくいいな。すごくいいが…』
みほ「すごいいいよ。疾走感があって…」
まほ『確かに疾走感はあるな。しかしそれは彼の実際のところの疾走感であってだな』
みほ「さっきから何言ってるのかわからないよ」
まほ『とにかく、彼は』
みほ「彼、彼っていうけど彼らでしょ? あれだけ重厚な演奏を一人じゃできないでしょ?」
まほ『いや、彼なんだ』
みほ「プリンスみたいなこと?」
まほ『いやそうではなくて…』
みほ「はっきりしないなあ」
まほ『みほ。みほの近くに誰かいないか。話の通じる誰かが』
みほ「沙織さんがいるよ」
まほ「沙織さんというのがいるのか。じゃあその沙織さんに代わってくれ」
みほ「もちろんいいよ。ちょっと待っててね」
まほ『ありがとう』
みほ「ねえ沙織さん。お姉ちゃんが代わってほしいって」
沙織「私に? なんだろう」
みほ「わかんない」
沙織「ふーん。……もしもし。武部です」
まほ『沙織さんか』
沙織「はい。そうです」
まほ『いつもみほがお世話になっているな』
沙織「いえいえ! こちらのほうがお世話になりっぱなしで…」
まほ『あなたは、一般常識には富んでいるほうだと思うか?』
沙織「私がですか?」
まほ『そうだ』
沙織「まあ…常識は押さえているほうだと思いますけど…」
まほ『じゃあ訊くが…』
沙織「はい」
まほ『ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドを知っているか』
沙織「ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドですか?」
まほ『そうだ』
沙織「はい。知ってますよ」
まほ『そうか! それはよかった。話が速くなる』
沙織「そうですか」
まほ『実はみほがピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドを勘違いして認識しているようでな』
沙織「はい」
まほ『それを正してほしんだ』
沙織「…そうですか。こんなに改まってすることでもないような気がしますが」
まほ『よろしく頼む』
沙織「でも、みほさんもちゃんと知ってるような気がしますよ」
まほ『そうなのか?』
沙織「はい」
まほ『しかしさっきは思いっきり勘違いしていたぞ』
沙織「そうなんですか?」
まほ『みほはちゃんと知っているのか』
沙織「と、思いますけど」
まほ『そうか……』
沙織「だって、昨日も二人で聴いてましたもん」
まほ『……』
沙織「……お姉さん?」
まほ『君もか……』
沙織「君も、とは……?」
まほ『いや、なんでもない。こっちの話だ』
沙織「そうですか」
まほ『まあ、いい。沙織さんのほうが話が速く進みそうだから、このまま沙織さんに話すが…』
沙織「はい」
まほ『君たちは一体誰の曲を聴いているんだ?』
沙織「……と、いいますと?」
まほ『だから誰の曲を聴いているんだ、最近』
沙織「最近ですか?」
まほ『そうだ大洗での流行りはなんだ』
沙織「まあ、そうですね……。例えばあゆとか、嵐とか……」
まほ『あゆとか嵐とか…』
沙織「ももくろとか、AKBとか…」
まほ『ももくろとかAKBとか…』
沙織「ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドとか……」
まほ『おかしいと思わないか』
沙織「はい?」
まほ『やっぱりおかしいとかは思わないか』
沙織「なにがですか……?」
まほ『私も昨年紅白を見たよ。音楽業界には疎い私だけれど、大晦日は毎年うちでは紅白と決まっているんだ』
沙織「わたしもです」
まほ『でだ、思い返しても嵐やももクロはそういえば出ていたなと記憶にあるよ』
沙織「はい」
まほ『そうだろう。だがピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドはどうだ』
沙織「はい?」
まほ『出ていたか?』
沙織「出て……ませんでしたっけ」
まほ『ああ、紅白には出ていないな』
沙織「そうですか…」
まほ『でだ』
まほ『もしかしたらオリンピックには出ていたかもとは思わないか?』
沙織「………」
まほ『………』
沙織「いいえ?」
まほ『……』
まほ『そうか……』
沙織「……」
まほ『……』
沙織「開会式なら、もしかしたら……」
まほ『まあ、いいや、もう……』
沙織「すいません」
まほ『ちょっとみほに代わってくれるか』
沙織「あ、はい。すみません、お役に立てないで…」
まほ『いや、いやいやいいんだ、気にしないで』
沙織「代わりますね」
まほ『ありがとう』
沙織「みぽりん、お姉さんが代わってだって」
みほ「ああ、うん。ありがとう」
沙織「お姉さんどうしたの? ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドがオリンピックに出てなかったかって訊いてきたんだけど」
みほ「え? 出てないよね」
沙織「うん……」
みほ「もしかしたら開会式とかには出てたかもしれないけど」
沙織「そうだね」
みほ「まあお姉ちゃんってたまにそういうところあるから」
沙織「そうなの?」
みほ「戦車だけじゃなくって頭にも油差さなきゃ…」
沙織「ふ」
みほ「――もしもしお姉ちゃん?」
まほ『聞こえていたぞ』
みほ「なにが?」
まほ『いや……いいや』
まほ『じゃあ単刀直入に言うぞ』
みほ「うん」
まほ『ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドは、バンドではない』
みほ「………」
まほ『………』
みほ「……お姉ちゃんの、」
まほ『?』
みほ「嘘つきっ」ガチャ
まほ『え? おい、みほ! みほ!』
まほ『みほおおおおおおおおおお!!!』
数年後
TV『オリンピックで通算3つの金メダルを獲得したオランダのスター、ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドさん。本日はその素顔に迫ります……』
まほ「ああ、見て、みほ。懐かしいな」
みほ「うん、懐かしいね」
まほ「覚えているか。ピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンド事件」
みほ「うん、もちろんだよ。あれを期に1年間お姉ちゃんを着拒にしてたからね。忘れるはずがないよ」
まほ「ごめんな。あの時は言い方が悪かった」
みほ「ううん、お姉ちゃんのせいじゃないよ」
まほ「で、結局誰とピーター・ファン・デン・ホーヘン・バンドを勘違いしていたんだっけ」
みほ「ん? オールマン・ブラザーズ・バンドだよ」
まほ「そうだったかな。気がつかないかな」
みほ「恋は盲目って言うからね」
まほ「……」
みほ「……」
まほ「…まああの事件をきっかけに姉妹の仲も強固なものになったというわけだ」
みほ「そうだね、お姉ちゃん」
まほ「どうだ、今日は久しぶりに会ったが、元気にしていたか」
みほ「もちろんだよ、お姉ちゃん」
まほ「そうか、それはよかった」
みほ「わたしもそうおもう」
まほ「最近楽しいことはあったか」
みほ「楽しいこと?」
まほ「大洗で流行しているものとか」
みほ「あるよ!」
まほ「ほう、それはなんだ」
みほ「YOASOBIだよ!」
まほ「夜遊び……?」ピキ
みほ「うん! YOASOBI」
まほ「…………」
まほ「夜遊びはやめなさあい!!」バアン
みほ「…………………」
まほ「……あ、すまん」
完