<第一話>
男「いやー、なんだか妙な雰囲気の薬局だからつい立ち寄っちゃった」
男「こう見えて俺は漫画家でね。厳しい業界だけど一定の地位は築けたって自負してる」
薬剤師「はぁ」
男「今新連載に向けたネタを考えてんだけど、なかなかネタが浮かばないんだよね」
男「それでついこの薬局にふらりと寄っちゃったわけなんだけど」
男「なにかさ、ネタが思い浮かぶクスリなんてない? もちろん危なくないやつで」
薬剤師「ジェ……」
男「あー知ってる知ってる、ジェネリック医薬品でしょ」
男「俺、医療漫画も描いたことあるから、そういうの詳しいんだ」
元スレ
薬剤師「ジェ……」男「あー知ってる知ってる、ジェネリック医薬品でしょ」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1617793228/
男「ジェネリック医薬品ってのは、ある医薬品の特許が切れてから販売される後発医薬品で」
男「成分はオリジナルと同じで、しかも安い」
男「だから薬剤師さんも勧めてくるんだけど、中には『効きがよくない』なんて声もあったりして……」
薬剤師「大変申し訳ないんですが、私はジェネリック医薬品の話なんてしてませんよ」
男「え」
薬剤師「私があなたに勧めたいのはこれです。≪ジェラシー医薬品≫」
男「ジェラシー医薬品……?」
男「ジェラシーって……あれだよね。“嫉妬”」
薬剤師「そうです。これを飲めば嫉妬心が芽生えます」
男「あんなの芽生えちゃダメでしょ。なにしろ、かの有名な“七つの大罪”の一つでもあるんだから」
男「嫉妬で殺人事件を起こすなんて話もあるしさ。俺はブタ箱行くのは嫌だよ」
薬剤師「でしたら、いりませんか? 決して押し売りはしません」
男「む……」
男「……買うよ。あんたは只者じゃなさそうだし」
薬剤師「ありがとうございます。では、おくすり手帳があれば出して下さい」
男「一応それ聞くんだ!」
男「どれ、飲んでみるか」パクッ
男「…………」
男「…………?」
男「特に嫉妬なんか感じないけど」
薬剤師「そのうち効果が出てきますよ」
男「ふうん……」
男(ちょっとコンビニ寄るか)ウイーン…
男(漫画を立ち読み……)ペラ…
男「…………」ペラ…
男「…………」
男(この漫画……なんて面白いんだ!)
男(こっちのも! 今まで気にも留めてなかったけど、すごいアイディア……!)
男(くそっ、他のも読まなきゃ!)ペラペラペラ
店員「お客様、立ち読みは……」
男「すみません、買います買います!」
公園に寄る。
男「この漫画……おもしれえ!」
男「こっちも……台詞回しのセンスが独特だ!」
男「この作者、なんでこんな展開思いつくんだ!?」
男(俺は漫画で安定して食えるようになって、今のポジションに満足してしまっていた)
男(だが久しぶりに……他の漫画家への嫉妬心が燃え上がってきた!)
男(悔しい! 負けたくない! こいつらに負けない作品を描きたい!)
男「うおおおおおおーっ!!!」
しばらくして――
男「薬剤師さん!」
薬剤師「おや? あなたはたしか漫画家の……」
男「ジェラシー医薬品のおかげでメラメラ嫉妬心が燃え上がって、ネタが閃いて、新連載も決まったよ!」
薬剤師「それはよかったですね」
男「いやー、まさかここまで効果があるとは!」
薬剤師「適量でさえあれば、嫉妬心というものはむしろプラスに働くものなのですよ」
男「身に染みて分かったよ」
薬剤師「で、どんな漫画を描いたんです?」
男「それは秘密! 今度、雑誌が販売したら載るからぜひ読んでくれよ!」
薬剤師「ええ、読ませてもらいますよ」
……
薬剤師(漫画雑誌を買うなんて、久しぶりだな)
薬剤師「巻頭カラーの……これだな」
薬剤師(これは……ふむふむ……さすがプロだ、面白い)
薬剤師「それにしても、天才餅つき少年が餅を焼いて世界を救うストーリーとは……」
薬剤師「漫画のテーマも『ヤキモチ』になったというわけか」
おわり
<第二話>
上司「君、この仕事頼まれてくれないかね?」
部下「すいません、今忙しいんで!」
上司「(暇そうだが……)分かったよ。自分でやるよ……」
上司「今日ちょっと残業してもらえないかね?」
若手「サッカーの試合見たいんで勘弁してくださーい!」
上司「職場で堂々と化粧するのは……」
女社員「固いこといわないで下さいよぉ~」ヌリヌリ
とぼとぼと町を歩く。
上司「……ハァ」
上司(私は部下にナメられてるなぁ……)
上司(管理職になったんだし、もっとしっかりしなきゃいけないんだけど)
上司(こればかりは生まれ持った性格というやつだからなぁ……)
上司「……ん」
上司「なんだ、この薬局。普通の薬局と雰囲気が違う……入ってみるか」
薬剤師「……なるほど、もっと威厳が欲しいと」
上司「はい、なにかそういうお薬ってないかなぁと思いまして」
薬剤師「ありますよ」
上司「ホントですか!?」
薬剤師「これです。≪ジェネラル医薬品≫」
上司「ジェネラル……?」
薬剤師「“将軍”という意味ですね。これを飲めばまさに将軍のような威厳と貫禄を身に付けることができます」
上司「まさに私が求めていたものだ! 買います!」
上司「みんな、おはよう」
部下「……おはようございまーす」ボソッ
上司「声が小さいッ!」
部下「!?」ビクッ
上司「朝の挨拶はビシッとせんかァ!」
部下「お、おはようございます!」
若手「おはようございます!」
女社員「おはようございます!」
上司「うむ、よろしい」
部下「す、すみません。ミスしちゃって……」
上司「ミスだとォ!? 作戦を遂行できなかったというのに、なんだその態度は!?」
上司「もっと反省しろ、反省を!」
部下「は、はいっ!」
上司「いいか、よく覚えておけ。今までのようにはいかんぞ!」
部下「も、申し訳ありませんっ!」
上司「若手君、今日は残業してもらおうか」
若手「あの……今日はちょっと……見たいドラマ……」
上司「ん?」ギロッ
若手「ひっ!」
上司「君は上官の命令に逆らうのかね?」
若手「いえ、そんな……」
上司(今までいえなかったことを堂々といえる! まるで生まれ変わったようだ!)
上司「いいか、みんな! これからの私は決して容赦しない!」
上司「ビシビシいくからな! 覚悟しておけ!」
上司「これやって!」
部下「はいっ!」
上司「これ頼む!」
若手「分かりました!」
上司「おしゃべりするなァ! 職場は戦場だぞ!」
女社員「申し訳ありません!」
上司「…………」ギロッ
ピリッ…
ビクビク…
上司(おかげで職場は引き締まった……)
上司(部下達は私の命令に絶対服従。睨みつければすぐ黙る。まるで軍隊のようだ)
上司(だが、なぜだろう)
上司(まったく嬉しくないのは……)
上司「みんな……」
部下「は、はいっ!」
上司「やはり、こういうのはもうやめよう」
上司「どんなに甘く見られてしまっても、やはり私には昔のやり方が性にあってるようだ」
上司「すまなかった。私のことをパワハラ上司と訴えたくば止めはしない」
部下「課長……」
若手「いえ、そんな……」
女社員「私たちの方こそ……」
……
上司「というわけです。元の私に戻ってしまいました」
上司「せっかくいいお薬を紹介して下さったのに……」
薬剤師「いえいえ、それでよかったんです」
薬剤師「あなたは素晴らしい将軍ですよ」
おわり
<第三話>
妻「このままでは離婚待ったなしです!」
妻「いえ、離婚の前に精神が参ってしまいます!」
薬剤師「はぁ……」
妻「お願いします! 薬で私たち夫婦を助けて下さい!」
薬剤師「落ちついて下さい、奥さん。とりあえず、事情をお話し下さいますか?」
妻「分かりました! お話しします!」
妻「まず……暴力がひどいんです……」
薬剤師「ほう、いわゆるDVですか」
妻「はい、殴ったり蹴ったり……時には投げ飛ばしたり……突き飛ばしたり……」
薬剤師「それはとんでもないですね」
妻「しかも暴言もよく吐いて……追い詰めるようなことを平気で……」
薬剤師「ふむふむ」
妻「何とかしたいと思ってるんですけど、私の力ではどうにもならなくて……」
薬剤師「分かりました。いい薬を用意しましょう」
薬剤師「この薬をどうぞ」
妻「これは?」
薬剤師「≪ジェントルマン医薬品≫です」
妻「ジェントルマン……」
薬剤師「これを飲んだ人は紳士のような振る舞いをするようになります」
薬剤師「飲めといって飲んでくれるとは思えないので、食事などに混ぜるといいでしょう」
薬剤師「服用させ続けていれば、そのうち薬なしでも紳士的に振る舞えるようになりますよ」
妻「ありがとうございます! これで夫婦仲は改善しますわ!」
しばらくして――
夫「へえ、たしかにちょっと変わった薬局だな」
妻「でしょ。あ、こんにちは!」
薬剤師「あ、いつだったかの奥さんですね」
夫「初めまして。素晴らしい薬を頂いてありがとうございます」
夫「おかげでほら、この通り夫婦仲は良好ですよ。もう喧嘩をすることはありません」
薬剤師「それはよかった」
薬剤師(この旦那さん、すっかり大人しくなったようだな)
夫「薬のおかげで、妻がすっかり大人しくなりましてねえ」
夫「暴力を振るわなくなり、暴言も吐かなくなり、今や誰もが羨む良妻ですよ!」
薬剤師「え」
妻「あなたったら照れてしまうではないか、ハッハッハ」
薬剤師「…………」
薬剤師(あの時の説明は自分のことだったのか……)
おわり
<第四話>
ガサガサ…
男「うおっ、ゴキブリだ!」
アシ「ひいい! 先生、早く退治して下さい!」
男「分かってる!」
ブシュゥゥゥゥゥ… ボトッ
男「ふぅ~、倒せた。この『ゴキクラッシャー』は効き目抜群だな!」
男「気分転換にちょっと出かけてくる」
アシ「なにかお菓子買ってきて下さい!」
男(普通逆じゃないか?)
男「どうも、こんにちは」
薬剤師「漫画家さん、こんにちは。例の漫画面白いですよ。毎週読んでます」
男「ありがとう! 恩人がファンになってくれて嬉しいよ」
男「そういえば、あなたはジェのつく薬をたくさん作ってるよね」
薬剤師「ええ」
男「その中で一番強力な効果なやつってなんなの?」
薬剤師「そうですね……。おそらく≪ジェノサイド医薬品≫ではないかと」
男「ジェ、ジェノサイド……!」
男(“虐殺”って意味じゃないか……)
男「それ……飲んだことある奴いるの?」
薬剤師「一人だけ……」
男「そいつはどんな奴なの?」
薬剤師「薬剤師にも守秘義務があるので、申し上げることはできません」
男「そっか……。でももし大悪人になってたら……」
薬剤師「一つだけ申し上げるなら、その人は人に迷惑をかけるようなことはしてませんよ」
薬剤師「むしろ世の中に貢献している。それだけは断言できます」
男「ならいいけど……」
薬剤師「もしかしたら……あなたもその人の作った商品を愛用してるかもしれませんよ?」
男「へ?」
薬剤師(そろそろゴキブリの出る季節だし……)
おわり
<第五話>
教授「……という過程を経て、この古墳が発掘されたわけです」
教授「では、今日のゼミはこれで終わりです。お疲れ様でした」
ワイワイ… ガヤガヤ…
学生A「このギャグ、すげーバズってる!」
学生B「この動画、超エモイ!」
女学生「今日のツイッターのトレンドさー……」
教授「…………」
教授(彼らがなにをいってるのかさっぱり分からん)
薬局にて――
教授「若い世代の話題にもついていけるようになる方法ってないでしょうか?」
薬剤師「でしたらこれを服用してみて下さい」
教授「これは……?」
薬剤師「≪ジェネレーション医薬品≫です」
薬剤師「これを飲めば、あらゆる“世代”に対応できるようになります」
教授「おおっ、ありがとうございます!」
教授(さっそく飲んでみたが……)
学生A「動画サイトでさー」
学生B「『おっせぇわ!』すげえいい曲だよな!」
女学生「私、もう20回は聴いちゃった!」
教授「!」
教授(分かる、分かるぞ! 彼らのいってる内容が!)
教授「いいよね~、私もよく聴いてるんだ。『おっせぇわ!』」
学生A「え、そうなんですか?」
学生B「意外と若いんですね、教授!」
女学生「ビックリです!」
教授「ああ、特に『遅刻する奴は殴り飛ばせ!』って歌詞なんて最高だね!」
教授「世の中の“遅さ”に対する不満がよく表現された名曲だ!」
教授(聴いたことないのに対応できるなんて……素晴らしい薬だ!)
教授「うーむ、今日のゼミは大いに盛り上がった」
教授「やはり学生とコミュニケーションせねば一方的な講義になってしまうからな」
教授(しかし、この後は理事長と食事か……)
教授(あの人は私よりだいぶ年上で、頭の固い人だから楽しめないんだよな……)
教授(せいぜい上手に愛想笑いするようにしよう)
理事長「今の若い者はなっておらん!」
教授「その通り!」
理事長「どいつもこいつも楽をすることばかり考えておる!」
教授「分かります!」
理事長「もっと年長者を敬い、自分から進んで大変な仕事をすべきなんだ!」
教授「ごもっとも!」
教授(いつもは面倒なだけの理事長の話がすらすら頭に入ってくる)
教授(そうか、ジェネレーション医薬品は上の世代にも対応できるのか!)
教授(ということは――)
教授「こうして、ハックツマンは遺跡を荒らすわるーいトウクツマンをやっつけました!」
幼児A「やったーっ!」
幼児B「ハックツマンかっこいい!」
キャッキャッ…
先生「紙芝居をして下さるなんて、どうもありがとうございました」
教授「いえいえ、こちらこそ貴重な体験ができました」
教授(小さな子供にも考古学に興味を持ってもらいたいからな)
ある発掘現場にて――
教授「さあ、今日は待ちに待った発掘作業だ」
教授「この場所にも遺跡があったことをなんとしても証明しよう!」
作業員A「はいっ!」
作業員B「はいっ!」
ザクザク… ザクザク…
教授(しかし、そう簡単に見つかれば苦労はない……)
教授(今回も成果はなさそうだ……)
ザクザク…
教授「ん?」
『ここだ……』
『我々はここにいる……』
『掘り返してくれ……』
教授(これは……!)
教授「声が聞こえる!」
教授「みんな、こっちだ! この区画を発掘するんだ!」
TV『○×大学の教授が世紀の大発見……』
TV『教授はインタビューに対し、“古代人の声が聞こえた”と答え……』
薬剤師「うーむ、ここまで世代に対応できるとは思わなかった」
薬剤師「よほど、あの薬と相性がよかったんだろうな」
おわり
<第六話>
ワイワイガヤガヤ…
同級生A「体育祭、楽しみだな!」
同級生B「ああ、盛り上がろうぜ!」
同級生C「リレーのアンカーは任せとけ!」
中学生「…………」
中学生(ハァ……体育祭憂鬱だなぁ。いつも恥かいたり足手まといになったり……)
中学生(足が速くなりたいなぁ)
中学生(ふらふらと、変な薬局に入ってしまった――)
薬剤師「速くなりたい? だったらこれを飲めばいい」
中学生「これは……?」
薬剤師「≪ジェット医薬品≫だ」
薬剤師「さすがにジェット機ほどとはいえないが、間違いなく足は速くなる」
中学生「ホントですか?」
薬剤師「近くの広場で試してみるかい」
薬剤師「位置について……よーい……ドン!」
中学生「でいっ!」ダッ
スタタタタタタッ
中学生「は、速い!」キキキッ
薬剤師「だろ? これなら徒競走やリレーで活躍できること間違いなしだ」
中学生「はいっ!」
中学生「だけど……」
中学生「ドーピングして勝ってもそれはインチキですし」
中学生「しかもその後、足が速いことになっちゃうと、かえって自分の首を絞めることになりかねません」
中学生「だから……ジェット医薬品は遠慮しておきます! 自分の力で走ります!」
薬剤師「そうか……」
薬剤師(成長もジェットのように早かったな)
おわり
<第七話>
薬剤師「いらっしゃいませ」
気弱男「…………」
地味子「…………」
薬剤師「どうしました?」
気弱男「あ……あの……」
薬剤師「ご自分のペースでお話し下さい。ゆっくりで構いませんよ」
気弱男「は……い……」
気弱男「ぼくたち……カップルなんですけど……。え、と……」
薬剤師「なるほど、二人とも口下手で悩んでいると」
気弱男「そう、なんです……」
地味子「おかげで、二人での意思疎通も……捗らなくて……」
薬剤師「でしたら、無理に喋ることはありませんよ」
気弱男「え?」
薬剤師「この≪ジェスチャー医薬品≫をどうぞ」
薬剤師「これを飲めば、手は口ほどに物をいう。ジェスチャーの達人になることができます」
薬剤師「お二人とも飲みましたね。では存分に会話なさって下さい」
気弱男「…………」バッ
地味子「…………」ババッ
気弱男「…………」ババッ
地味子「…………」バッバッ
気弱男「…………」バッ
地味子「…………」ババッ
気弱男「…………」シュバババッ
地味子「…………」ババッ
気弱男「…………」ババッババッ
地味子「…………」バババババッ
気弱男「…………」バッババッ
地味子「…………」シュバッシュシュシュッ
薬剤師「…………」
気弱男「…………」ババババババババババッ
地味子「…………」シュババババッシュババッ
気弱男「…………」シュッシュッシュビッシュビビィッ
地味子「…………」ズババババッドババババッ
気弱男「…………」シュバシュバァァァッ
地味子「…………」バババッバババッバババッ
薬剤師「…………」
気弱男「…………」シュビッ!
地味子「…………」シュバッ!
気弱男「じゃ……行こうか……」
地味子「うん……」
薬剤師「ありがとうございましたー」
薬剤師「…………」
レンタルビデオ店に向かう。
従業員「いらっしゃいませー。あ、薬剤師さん」
薬剤師「10本ほど借ります」
従業員「カンフー映画ばっかりこんなに借りるんですか?」
薬剤師「なんか急に見たくなっちゃって……」
おわり
<第八話>
薬剤師「このお薬をお出しします。朝と夜、一回ずつ飲んで下さい」
母「ありがとうございます」
幼女「にがいのー?」
薬剤師「うん、ちょっと苦いかもね」
幼女「やだやだやだー! にがいのやだーっ!」
母「コラッ、騒がないの!」
幼女「うぇぇぇぇぇん!」
薬剤師「だったら、これもつけましょう。≪ジェラート医薬品≫」
母「ジェラート医薬品?」
薬剤師「ジェラートとは、イタリアのアイスのことです。これはそれを模した薬品なのです」
薬剤師「とても美味しいですし、いかなる薬も混ぜられるようになってるので」
薬剤師「これでお薬を飲ませれば、苦いと感じることもありませんよ」
母「こんなものまで用意して頂いて、ありがとうございます」
母「お薬の時間よ。ほら、これ」
幼女「やだー、においがいやーっ! のみたくないーっ!」
母「ちょっと待ってて。ジェラート医薬品に混ぜるから」マゼマゼ…
母「ほら、食べてみて」
幼女「おいしそう……」パクッ
幼女「おいしーっ!」
母(よかった……)
薬剤師「いらっしゃいませ。ああ、この間のお客さん」
母「こんにちは」
薬剤師「あれからお子さんの具合は?」
母「おかげさまですっかりよくなりました」
薬剤師「それはよかった」
母「ところが……ちょっと困ったことになって」
薬剤師「どうなさいました?」
幼女「もっとあのジェラートいやくひん、たべたい!」
母「すっかりあの味にハマってしまいまして……」
薬剤師「う、ううむ……どうしましょうか……」
薬剤師(味をよくしすぎるというのも考えものだったか)
おわり
……
男「どうも、お久しぶり」
薬剤師「漫画家さん、連載絶好調じゃないですか」
薬剤師「新シリーズの『月面餅つき編』も大人気で、アニメ化まで決まったとか」
男「おかげさまで」
男「ここでジェネリック医薬品の話をして、ジェラシー医薬品を紹介された日が懐かしいよ」
薬剤師「そんなこともありましたね」
男「もう薬は飲んでないけど、今でも他の作者から学ぶことは多いね」
男「ところで、あなたの薬の数々……≪ジェネリック医薬品≫はないの?」
薬剤師「私の作った薬なんて、なかなか後発品を出す人が現れませんよ」
男「たしかに……たとえ成分が同じでも同じのを作れる人はいないだろうなぁ」
薬剤師「いつか出てくれるといいんですがね」
おわり
99 : 以下、5... - 2021/04/07(水) 22:46:56.104 x5eCgg+v0 56/56これで完結となります
ありがとうございました