2 : ◇UpH... - 18/09/10 12:26:15 Hte 1/119

過去作

Pとキュートな女の子たちシリーズ

モバP「未来のお嫁さん?」響子「はい!」
https://ayame2nd.blog.jp/archives/25740999.html

誤字修正版
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10061484

元スレ
モバP「懐かしのお隣さん」美穂「お、お兄さん!?」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1536549370/

3 : ◇UpH... - 18/09/10 12:28:31 Hte 2/119

人生は驚きの連続です。誰が言い始めたのかわからないけど、“事実は小説より奇なり”
という言葉があります。私はそれを今、身をもって体験しています。

P「もしかして…美穂ちゃん?」

美穂「お、お兄さん!?ど、どどどどうしてここに!?」

これは、私とお兄さん。二人の出会いと別れ、そして再会のお話です。

4 : ◇UpH... - 18/09/10 12:30:55 Hte 3/119

~10年前 熊本~
ピンポーン

美穂母「は~い、今でま~す」

お母さんと二人でお家にいたある日、玄関のチャイムが鳴りました。
誰が来たのか少し気になった私はお母さんの背中に身を隠しながら、とてとてと付いていきました。
玄関のドアを開けると、そこには私よりもずっと年上の男の人が立っていました。

5 : ◇UpH... - 18/09/10 12:32:13 Hte 4/119

お兄さん「どうもはじめまして!先日こちらのほうに引っ越ししてきた――です。ご挨拶に伺いました。こちら、つまらないものですが…」

美穂母「あらっ、わざわざご丁寧にありがとうございます。こちらのほうこそよろしくお願いしますね。ほら、美穂、新しいお隣さんよ。ちゃ~んと挨拶するのよ」

みほ「…………」

6 : ◇UpH... - 18/09/10 12:32:49 Hte 5/119

美穂母「あらあら、この子ったら…ごめんなさいね、うちの子、すごい人見知りで」

お兄さん「いえいえ、え~と美穂ちゃん…だったかな?はじめまして、僕の名前はPだよ。これからよろしくね」

みほ「……はじめまして」

これが、私とお兄さんの初めての出会いでした。

7 : ◇UpH... - 18/09/10 12:34:08 Hte 6/119

今以上に人見知りで、引っ込み思案だった当時の私には、友達がいませんでした。
ですから、よく一人で近所の空き地に遊びに来ていました。
この空き地にはたくさんのお花が綺麗に咲いていて、お気に入りの場所でした。
人があまり来ないのも居心地がよかったのかもしれません。
この日も私はひとりで公園に来ていたのですが…

8 : ◇UpH... - 18/09/10 12:35:13 Hte 7/119

~空き地~
みほ「どうしよう…みつからないよう」

公園に来たときには間違いなく付けていたクマの顔がデザインされたヘアピン。
お母さんにもらった大切な宝物でした。それが、気づいたときには外れてなくなっていたのです。

9 : ◇UpH... - 18/09/10 12:36:32 Hte 8/119

みほ「うう、どこにいっちゃったのぉ」

広い空き地に落とし物、簡単に見つかるはずもなく、ひとりでべそをかいていました。
そんな時、彼がやってきたのです。

お兄さん「あれっ、美穂ちゃん。こんなところで何してるの」

振り返ると、そこには学校帰りらしき姿のお隣さんがいました。制服を着ていたので中学校でしょうか。

10 : ◇UpH... - 18/09/10 12:37:11 Hte 9/119

お兄さん「早く帰らないとお母さん心配するよ?」

みほ「え…あ…その……うう」ぽろぽろ

突然話しかけられた驚きと宝物を無くした悲しみで、私はとうとう泣き始めてしまいました。

11 : ◇UpH... - 18/09/10 12:37:59 Hte 10/119

お兄さん「えっ、だ、大丈夫?どこか怪我でもしたの?」

みほ「グスッ、なくなっちゃったの…ひっく…くまさん」

お兄さん「くまさん?人形かなにか?」

みほ「あ、あたまに、つける、グスッ、やつ」

お兄さん「頭に付けるやつ…もしかしてヘアピンか」

12 : ◇UpH... - 18/09/10 12:38:31 Hte 11/119

みほ「わた、わたしのたからものなの…だから、だから…」

お兄さん「よ~し、わかった!お兄さんが見つけてあげようっ」

みほ「グスッ、ほんと?」

お兄さん「うん!だからもう泣かなくても大丈夫さ」なでなで

みほ「う、うん…」

13 : ◇UpH... - 18/09/10 12:40:00 Hte 12/119

そういって、お兄さんも一緒に空き地で探してくれることになりました。
そして…

お兄さん「あ、あったぞおお!美穂ちゃん!あったよー!!」

みほ「ほ、ほんとっ!」

太陽が沈み始めた頃、お兄さんがヘアピンを見つけ出してくれました。
私は急いでお兄さんの元に駆け寄ります。

お兄さん「ほらっ、これだろ?」

みほ「う、うん」

14 : ◇UpH... - 18/09/10 12:41:05 Hte 13/119

お兄さんから受け取ったそれはまさしく私のヘアピンでした。

お兄さん「しっかし、遅くなっちゃったなあ。もう少しで日が暮れるぞ…」

お兄さん「美穂ちゃんも一緒に帰ろう。きっと家でお母さんが夕食作って待ってるぞ」

15 : ◇UpH... - 18/09/10 12:41:32 Hte 14/119

みほ「うん…あ、あの」

お兄さん「ん?」

みほ「あ、ありがとう」

お兄さん「! どういたしまして!」ニコッ

それから二人で一緒にお家まで帰りました。綺麗な夕焼け空でした。

17 : ◇UpH... - 18/09/10 17:30:14 Hte 15/119

この出来事をきっかけに、私はお兄さんと仲良くなることができました。
私のお母さんとお兄さんのお母さんも馬が合ったらしく、いつしか家族ぐるみな関係となり、お互いの家を行き来するようになりました。
私が遊びに行くとお兄さんはいつも笑顔で出迎えてくれました。またある時はお兄さんの方から私の家に遊びに来てくれました。
お兄さんと一緒に遊んでいくうちに私自身、明るく、前向きになっていったと思います。その甲斐もあってか、学校のクラスの子とも仲良くできるようになりました。
男の子はまだ少し苦手でしたけど…
そして、歳月が流れ…

18 : ◇UpH... - 18/09/10 17:30:52 Hte 16/119

~小日向家~
『僕は、君のことが好きだ!』
『私も、あなたのことがっ』

お母さんと一緒にドラマを見ていた時、テレビ画面には男女が愛を囁き合い、キスをするシーンが映し出されていました。

みほ「ねえ、お母さん。どうしてこの人たちはお口とお口を合わせているの?」

美穂母「ふふっ、それはね、この男の人と女の人はお互いのことが大好きだからよ」

19 : ◇UpH... - 18/09/10 17:31:36 Hte 17/119

みほ「え~?でもわたし、お父さんとしたことないよ」

美穂母「キスをするのは恋をしてる相手にだからよ」

みほ「こい?お魚?」

美穂母「そっちじゃなくて…近くにいると胸の鼓動が激しくなったり、心があったかくなったり、ずっと一緒にいたい、離れたくないって思ったりすることよ。美穂にはいないの?クラスにそんな男の子」

20 : ◇UpH... - 18/09/10 17:32:01 Hte 18/119

みほ「いないよぉ、クラスの男の子、みんなイジワルだもん!」

美穂母「あらら、じゃあ…Pくんは?」

みほ「お兄さん?う~んと…」

21 : ◇UpH... - 18/09/10 17:32:37 Hte 19/119

ふと、お兄さんのことを考えた。
クラスの男の子みたいに意地悪はしないし、いつも優しくしてくれる。
胸の鼓動…はわからないけど、仲良くしたいし、これからもお話したいと思っている。
そういった意味では好きなんだろうけど…

22 : ◇UpH... - 18/09/10 17:33:11 Hte 20/119

みほ「…わかんない」

美穂母「ふふふ まだ美穂には早いかもね」

みほ「むー」

なんてことがあり、私は“恋”について考えるようになりました。

23 : ◇UpH... - 18/09/10 17:34:11 Hte 21/119

~小学校~
バレンタインシーズンに入り、学校では男女問わず、浮足立っていました。
何年何組の誰々がチョコをあげる予定だとかなんとか。そういった話ばかりが聞こえてきました。
もちろん私のクラスも例外ではありません。

友達A「みなさんはチョコレート、お渡しするのですか~?」

友達B「アタシはB組の××くんにあげるよー!」

友達C「美穂は誰かにあげるの?」

みほ「わ、わたし?」

24 : ◇UpH... - 18/09/10 17:34:37 Hte 22/119

友達B「そうだよ!美穂ちゃんだって気になる人の一人や二人いるでしょっ」

みほ「え、ええっと」

友達C「美穂にチョコ渡されたら、男子なんてイチコロよね~こんなにかわいいんだし」なでなで

みほ「Cちゃんっ、は、はずかしいよ//」

友達B「それは困るわっ!美穂ちゃんっ、××くんはダメよ!」

25 : ◇UpH... - 18/09/10 17:34:55 Hte 23/119

みほ「…やっぱり、男の人ってバレンタインにチョコをもらえたら嬉しいのかな?」

友達B「もっちろん!このクラスの男子なんてみんなそわそわしてるじゃないっ」

男子共「」ギクッ

みほ「お兄さんも…そうなのかな」ボソッ

友達C(ん!?)ピクッ

26 : ◇UpH... - 18/09/10 17:35:35 Hte 24/119

友達A「せっかくですし、わたくし達でチョコレート、作りましょうよ~」

友達B「賛成っ」

みほ「わ、わたしも一緒に作っていいかな?」

友達A「かまいませんわ~みんなで作った方が楽しいですわよね~」

27 : ◇UpH... - 18/09/10 17:36:21 Hte 25/119

友達C「ねえねえ、美穂」

みほ「え?なに?」

友達C「お兄さんって、誰かな~」ニヤニヤ

みほ「へ?あっ//」

28 : ◇UpH... - 18/09/10 17:36:50 Hte 26/119

友達B「え!なになに!?美穂ちゃんって好きな人いるの!?」

男子共「!?」ガタッ

みほ「ち、違うよ!お兄さんはお隣さんで、いつも私に優しくしてくれて、一緒にいると楽しいだけでっ」あせあせ

友達A「年上の殿方を狙うなんて…やりますねぇ!」

友達C「もう少し詳しく聴かせてもらいましょうか…♪」

友達B「へっへっへ」

みほ「ひ~ん」

29 : ◇UpH... - 18/09/10 17:37:17 Hte 27/119

Cちゃんたちからの質問責めは休み時間が終わって、先生が教室に来るまで続きました。
そして、放課後、Aちゃんのお家で集まり、みんなでチョコレートを作りました。

30 : ◇UpH... - 18/09/10 17:39:09 Hte 28/119

~バレンタイン当日 Pの自宅前~
かわいくラッピングされた包みを持ち、私はお兄さんの家の前でうろうろしていました。
今までお菓子作りなんてしたこともなかった私ですが、みんなが協力してくれたおかげで、なかなか良いものができたと思います。
普段ならすぐにでもお兄さんに会いにいくのですが、今回は何だか気恥ずかしくて、インターホンを押すことすらためらっていました。

みほ「うう…みんながあんなこと言うからぁ」

31 : ◇UpH... - 18/09/10 17:39:57 Hte 29/119

~回想~
友達B「いい!?美穂ちゃんっ!オトコを墜とすのに一番重要なのはLOVEよ!LOVE!ありったけのLOVEを相手にぶつけるのよ!」

みほ「あ、あの。お兄さんとはそういう関係zy」

友達A「い~え、違いますわ!小日向さんの想い人は年上の殿方ですのよっ。力押しは通用しません!向こうから寄ってくるようにするための“誘惑”が重要ではなくて!?」

友達B「ええ~、絶対LOVEだよー!」

友達A「いーえ!誘惑です。世の中の殿方は皆、年下の少女に対してリビトーを抑えきれない生き物だとお姉さまが常日頃から言っていました!間違いないですっ」

32 : ◇UpH... - 18/09/10 17:40:24 Hte 30/119

友達B「りびとー?なにそれ?」

友達A「リビトーというものはですね…」

友達C「二人とも、ストップストップ!そんなんじゃ、美穂がついていけないって」

AちゃんとBちゃんの熱い議論をCちゃんが止めていました。

33 : ◇UpH... - 18/09/10 17:40:49 Hte 31/119

友達C「美穂にとって、その人は大切なひとなんだよね?」

みほ「う、うん」

友達C「だったら、変に取り繕ったりせず、自分の正直な気持ちを伝えればいいと思うな。そのほうがきっとお兄さんも喜んでくれるよ」

みほ「そ、そうかな?喜んでくれるかな?」

友達C「うん!」

友達B「LOVEだよ~」

友達A「誘惑ですわ~」

友達C「まだ言うかこやつら」

34 : ◇UpH... - 18/09/10 17:41:19 Hte 32/119

~回想終わり~
みほ「自分の正直な気持ち…かあ」

AちゃんとBちゃんの言っていたことはよくわからなかったけど、Cちゃんの言っていたことは分かる。
“ありがとう”はお互いが嬉しくなる魔法の言葉だ。

35 : ◇UpH... - 18/09/10 17:41:40 Hte 33/119

みほ「…よしっ」

ピンポ~ン

みほ「…」どきどき

P母『は~い、どちらさまですか~』

みほ「こ、小日向です!」

P母『あ!美穂ちゃんね!今開けるからちょっと待っててね!』

みほ「は、はい!」

36 : ◇UpH... - 18/09/10 17:41:59 Hte 34/119

タッタッタ ガチャ

P母「いらっしゃ~い!ささ、入って入って!」

みほ「お、おじゃまします。」

P母「Pに用事よね?今呼んでくるから!」

みほ「お、お願いします」

37 : ◇UpH... - 18/09/10 17:42:23 Hte 35/119

しばらくすると、お兄さんがやってきました。

お兄さん「あれっ、美穂ちゃん?どうしたの」

みほ「えっと、その…」もじもじ

みほ(勇気をだせっ、わたしっ)

みほ「お兄さん!こ、これ!受け取ってください!!」ズイッ

38 : ◇UpH... - 18/09/10 17:42:42 Hte 36/119

お兄さん「へ?う、うん。もしかして、これ…」

みほ「あのっ、いつもわたしと仲良くしてくれて…優しくしてくれて、ありがとうございます!そのっ、たくさん想いを込めて…一生懸命作ったんです。だ、だから…」

お兄さん「美穂ちゃん…」

みほ「は、はい…」

お兄さん「ありがとうっ!!!」

みほ「わっ」

39 : ◇UpH... - 18/09/10 17:43:07 Hte 37/119

お兄さん「うわー!嬉しいなあ!!女の子からチョコ貰ったの、生まれて初めてだよっ!!さっそく食べていいかなっ」ワクワク

みほ「ど、どうぞ」

お兄さん「よーし、チョコ♪チョコ♪女の子からのチョコレート♪」ごそごそ

お兄さん「おお…いろんな形のチョコだ。ハート型に星型、これは…クマ型かな?いや~なかなか凝ってるね~」

みほ「と、友達と一緒に作ったんです、放課後にみんなで集まって…」

40 : ◇UpH... - 18/09/10 17:43:39 Hte 38/119

お兄さん「なるほどね~ではさっそく」ア~ン

みほ「」どきどき

お兄さん「うまいっ、うまいぞお!口の中に濃厚な生チョコレートとトッピングの粒の味が絡み合い…美味しいです…」

みほ(よ、喜んでくれた!)

41 : ◇UpH... - 18/09/10 17:43:54 Hte 39/119

お兄さん「こんなに美味しいチョコレートをくれて、ありがとうっ」ニッコリ

みほ「ど、どういたしまして。えへへ//」

私の作ったチョコレートを受け取ったお兄さんはとても喜んでくれました。彼の満面の笑顔を見ていると、私の心がだんだんとあったかくなっていくのを感じました。

42 : ◇UpH... - 18/09/10 20:06:35 Hte 40/119

~学校~
先生「と、いうわけで、皆さんには将来の夢について書いてきてもらいます」

授業の終わりに先生から宿題を出されました。テーマは“将来の夢”。

先生「提出日は明日だから、忘れないようにね!」

43 : ◇UpH... - 18/09/10 20:07:11 Hte 41/119

~帰り道~
みほ「将来の夢…かあ」

学校の帰り道、友達と別れた私は宿題で出された“将来の夢”について考えていました。そんなこと、今まで考えたこともなかったからです。

みほ「…お兄さんはどうなのかな」

お兄さん「僕がどうかしたって?」

みほ「うひゃあっ」

お兄さん「わわっ、ごめん。驚かせちゃったか」

振り向くと同じく学校帰りらしき、お兄さんがいました。

44 : ◇UpH... - 18/09/10 20:07:37 Hte 42/119

お兄さん「なんだか、考え込んでいたみたいだったからさ。悩みごとか?」

みほ「お兄さん、その、実は…」

45 : ◇UpH... - 18/09/10 20:08:06 Hte 43/119

~空き地~
お兄さん「なるほど…将来の夢か~」

落ち着いて話せる場所に行きたいと思い、私とお兄さんは、久々に空き地に来ていました。

みほ「わたし、将来の夢なんて考えたこともなくて…何を書いていいか分からないんです」

みほ「お兄さんは“夢”、あるんですか?」

46 : ◇UpH... - 18/09/10 20:08:29 Hte 44/119

お兄さん「あるよ」

みほ「! そうなんですか?」

お兄さん「僕はね、プロデューサーになるのが夢なんだ」

みほ「ぷろでゅーさー?」

お兄さん「プロデューサーっていうのはね、アイドルを夢見る人たちのお世話をして、誰よりも輝かせる仕事なんだよ」

47 : ◇UpH... - 18/09/10 20:08:58 Hte 45/119

みほ「アイドル…どうして、お兄さんはプロデューサーになりたいんですか?」

お兄さん「そうだね…誰かのために一生懸命な人、自分に自信がない人、夢に向かって頑張ろうとする人、そんな人達の支えになりたいからかな。あ、あと、かわいい女の子が歌う姿を間近で見たいってのも理由の一つだなぁ」

お兄さんはそうやって、照れ臭そうに自分の夢を話してくれた。

48 : ◇UpH... - 18/09/10 20:10:01 Hte 46/119

みほ「それって何だか…すてきな夢ですね!」

お兄さん「ははっ、ありがと」

みほ(かわいい女の子が歌う姿を間近で見たい…かぁ)

みほ「ねえ、お兄さん」

お兄さん「ん~?」

49 : ◇UpH... - 18/09/10 20:10:24 Hte 47/119

みほ「もし、もしもですよ?わたしがアイドルになって歌うことになったら…そばで見てみたい…ですか…?」もじもじ

お兄さん「」ポカーン

みほ「な、な~んちゃって// やっぱり今の聞かなかったことn」

お兄さん「見たいっ!」キラキラ

みほ「えっ」

50 : ◇UpH... - 18/09/10 20:10:57 Hte 48/119

お兄さん「美穂ちゃんがアイドルになって歌うなんて…絶対に可愛いに決まっている!!トップアイドル間違いなしだよ!!!うん!!」

みほ「そ、そうかなあ//」

お兄さん「そうだっ、ね、ちょっとここで歌ってみてよ。はい、マイク」スッ

みほ「ど、どうしてマイク持ってるんですか!?」

お兄さん「まあまあ、細かいこと気にしなくていいから」

51 : ◇UpH... - 18/09/10 20:12:06 Hte 49/119

みほ「え~と、う~んと」

お兄さん「さあっ!」

みほ「ま、まだダメっ」

52 : ◇UpH... - 18/09/10 20:12:43 Hte 50/119

お兄さんとの会話はいつも楽しくて、こんな日々が何時までも続けばいいなあと思っていました。
でも、別れはある日突然やってきたのです。

53 : ◇UpH... - 18/09/10 20:59:39 Hte 51/119

~小日向家~
みほ「ひ、引っ越し…?」

美穂母「ええ、お隣さんの旦那さん…Pくんのお父さんの仕事の関係で、16日に引っ越しするみたいよ」

12月9日、1週間後に誕生日を控えた私に伝えられたのは、誕生日当日、お兄さんとお別れになるという残酷な事実でした。

54 : ◇UpH... - 18/09/10 20:59:59 Hte 52/119

美穂母「だから、美穂の誕生日を兼ねて、前日の15日にお別れ会をしようと思うの。PくんとP母ちゃんにはたくさんお世話になったからね」

みほ「お兄さんと…お別れ…?」

美穂母「美穂?寂しいのは分かるけど、これは仕方がないことなのよ。せめて笑顔で見送ってあげないと」

みほ「そ、そんな…嘘、嘘だよ、そんなの信じない!信じたくないっ!」ダッ

美穂母「美穂っ!?」

みほ(嘘だ嘘だ嘘だ、お母さんがわたしに意地悪しているだけなんだ!!お兄さんなら絶対に否定してくれる!いつもの優しい笑顔で、そんなことないよって言ってくれる!お兄さん…お兄さんっ!!)

55 : ◇UpH... - 18/09/10 21:00:32 Hte 53/119

~通学路~
家を飛び出した私はお兄さんの通う中学校の通学路で、自分よりも年上の学生がちらほら帰宅して来るのを横目に、お兄さんの帰りをじっと待っていました。
しばらくすると、数人と同級生たちと談笑しながら歩いてくるお兄さんの姿が見えてきました。

56 : ◇UpH... - 18/09/10 21:00:52 Hte 54/119

美穂「お兄さん!」

お兄さん「へ?美穂ちゃん!?ど、どうしたんだ、そんな血相を変えて」

友人A「え?誰?Pに妹っていたっけ?」

友人B「か、かわいい…」

友人C「この前言ってた近所に住んでいる子でしょ。ほら、Pくんがお隣にとても可愛い子がいるって惚気ていたじゃない?」

57 : ◇UpH... - 18/09/10 21:01:35 Hte 55/119

お兄さん「悪い!美穂ちゃんと話してくるから、先に帰っててくれ」

友人A「おう、また明日な~」

友人B「かわいい…」

友人C「何時まで言ってんの!Pくん、またね」

お兄さん「ああ、またな」

お兄さんと一緒にいた人達はそういって帰っていきました。

お兄さん「とりあえず、空き地へ行こうか。ここじゃ、落ち着かないしさ」

58 : ◇UpH... - 18/09/10 21:01:59 Hte 56/119

~空き地~
お兄さん「それで…どうしたの?何かあったの?」

みほ「お、お兄さんっ。引っ越しするなんて…熊本を離れるなんて嘘ですよねっ!」

お兄さん「え、誰に聞いたんだ?それ」

みほ「お母さんです。16日にお兄さんが行ってしまうって…」

59 : ◇UpH... - 18/09/10 21:02:20 Hte 57/119

お兄さん「………」

みほ「…どうして、何も言ってくれないんですか…?」

お兄さん「…ごめん。嘘じゃないんだ」

みほ「!」

お兄さん「僕は来週、東京に行く」

60 : ◇UpH... - 18/09/10 21:02:41 Hte 58/119

~小日向家~
美穂父「美穂の様子はどうだ?」

美穂母「ダメね、完全に塞ぎ込んじゃってる。Pくんの口から直接引っ越しの話を聞いて、余程ショックだったんでしょうね。さっき、Pくんが事情を話しに来てくれたわ」

美穂父「美穂にとって、そんなに大切な人なのか、Pくんは」

美穂母「当たり前じゃない。人見知りだった美穂が、友達を作れるほど明るく、前向きになれたのはPくんのおかげだもの」

美穂父「…そうか、辛い思いをさせてしまうな。美穂には」

美穂母「…美穂…」

61 : ◇UpH... - 18/09/10 21:05:13 Hte 59/119



みほ「グスッ、お兄さんのバカっ、ずっと一緒にいてくれるって思ってたのに…」

家に帰ってきた私はご飯も食べずにベッドに入り、ふて寝していました。
本当は分かっていたんです。お母さんは嘘をついていなかったこと、お兄さんが引っ越しするのは仕方のないことだということ、そして、残された僅かな時間を一秒たりとも無駄にしてはいけないということも。

みほ「明日からは…いつものわたしに戻るから…だから、今日だけは…許して…」



62 : ◇UpH... - 18/09/10 21:05:43 Hte 60/119

~翌日~
みほ「おはよう!お父さん!お母さん!」

美穂父「あ、ああ、おはよう」

美穂母「え、ええ…おはよう美穂」

みほ「き、昨日はゴメンね!せっかく作ってくれたご飯も食べずに寝ちゃって!」

63 : ◇UpH... - 18/09/10 21:06:09 Hte 61/119

美穂母「大丈夫よ…ねえ美穂、疲れてるなら学校休んでもいいのよ」

美穂父「そうだぞ、お父さんから学校に連絡しておこうか」

みほ「もー!何言ってるの二人とも~!こんなに元気なのに学校をサボるわけにはいかないでしょー!!それに、来週にはお兄さんもいなくなるんだよ!だから…だからっ、少しでも元気なところを見せないと!!」

美穂父「……」

美穂母「……」

みほ(大丈夫、大丈夫、いつものわたしだ、ちゃんと…ちゃんと、しないと…!)   

64 : ◇UpH... - 18/09/10 21:06:44 Hte 62/119

~通学路~
みほ「おはようございますっ!お兄さん!!」

お兄さん「み、美穂ちゃん?お、おはよう」

みほ「もー!元気がないですよっ!朝はもっと元気でいかないとっ!!」

お兄さん「あ、ああ。そうだよな。うん」

65 : ◇UpH... - 18/09/10 21:07:19 Hte 63/119

みほ「今から学校ですよね!!途中まで一緒に行きましょうっ!!」

みほ(お兄さんに…心配なんて掛けられない…、もっと…明るく振る舞わないと…!)

お兄さん「…美穂ちゃん…」

お兄さんが引っ越しすることを知った次の日から、私は必要以上に明るく振る舞うようになりました。
お父さんやお母さん、そして、何より、お兄さんに心配を掛けたくなかったからです。

66 : ◇UpH... - 18/09/10 21:07:57 Hte 64/119

~Pの自宅~
美穂母「最近の美穂、何だかひどく無理をしているみたいで…私も旦那もすごく心配しているんです」

P「やはりそうですか…僕と話すときも、必要以上に明るく振る舞っているようにみえます」

P母「きっと、家族やPに心配を掛けさせまいと思っているのね…」

美穂母「はい…何度話しかけても、大丈夫、平気の一点張りで。何もしてあげられないのが歯痒くて」

P「…あの僕に考えがあるんですが」

P母「P?」

P「15日のお別れ会の日なんですけど…」

67 : ◇UpH... - 18/09/10 21:08:16 Hte 65/119

~お別れ会 当日~
みほ「もうっ、お父さんもお母さんもまだ帰ってこないのっ」

お兄さん「まあまあ、僕の母さんも来てないってことはきっと、渋滞にでも巻き込まれているのかもしれない」

みほ「で、でも…最後のお別れ会なのに…」

みほ(今日で終わりなのに…このままじゃ、お兄さんに楽しんでもらえないっ!)

68 : ◇UpH... - 18/09/10 21:08:37 Hte 66/119

お兄さん「…美穂ちゃん、折角だし、少し話そうか」

みほ「お兄さん?」

お兄さん「ここ最近の美穂ちゃんは、なんだか必要以上に明るく振る舞っているようにみえたんだ」

みほ「! そ、そんなこと…ないです…」

69 : ◇UpH... - 18/09/10 21:08:59 Hte 67/119

お兄さん「美穂ちゃんのお父さんやお母さんも心配していたよ、もちろん僕もさ」

みほ「…」

お兄さん「どうしてそんなことしていたの?」

みほ「…お兄さんは明日、東京へ行ってしまいますよね?」

お兄さん「うん…」

70 : ◇UpH... - 18/09/10 21:09:24 Hte 68/119

みほ「お兄さんが熊本にいる残り僅かな最後の時間、すこしでも明るくて、元気な姿を見せたかったんです。お兄さんがいなくなっても平気だよ、心配しなくても大丈夫だよって」

みほ「で、でも…ダメでした…少しでも気が緩むと、すぐに弱いわたしが出てきそうになるんです。お兄さんに出会う前の弱いわたし…」

みほ「お、お兄さんと仲良くなったおかげで、明るくなれた、前向きになれた、少しは強くなれたと思ってたのに!!全部、全部っ、勘違いだった!わたしは昔の、弱虫で、臆病で、意気地なしなままだった!!」

みほ「こんなんじゃ…お兄さんに呆れられちゃう…アイドルになんてなれるわけないよっ」

みほ「嫌だ…ずっと一緒にいたい、離れたくないよ…」ポロポロ

71 : ◇UpH... - 18/09/10 21:09:46 Hte 69/119

お兄さん「…」

お兄さん「別に、弱くたっていいじゃないか」

みほ「え?」

72 : ◇UpH... - 18/09/10 21:10:05 Hte 70/119

お兄さん「悲しい時や辛い時は泣いたっていいんだ。たくさん泣いた後にまた頑張ろうって気持ちになれば」

お兄さん「それに、人と人の繋がりというものは、そう簡単に途切れるものじゃない。この先、絶対にまた会えるさ」

お兄さん「無理をした顔でお別れなんて嫌だ。僕は、美穂ちゃんの心から笑った顔が好きだ」

みほ「!」ドキッ

73 : ◇UpH... - 18/09/10 21:10:47 Hte 71/119

お兄さん「今日は、美穂ちゃんに渡したいものがあるんだ」ゴソゴソ

みほ「渡したい…もの?」

お兄さん「これさ」スッ

お兄さんから包みを受け取る、中を開けると、そこには白いクマのぬいぐるみが入っていました。

74 : ◇UpH... - 18/09/10 21:11:05 Hte 72/119

みほ「かわいい…くまさんのぬいぐるみ」

お兄さん「名付けて!プロデューサーくんだっ」

お兄さん「もし、美穂ちゃんが落ち込んだ時、へこんでしまった時、プロデューサーくんを抱きしめるとあら不思議、心がドンドン癒されていきますっ」

みほ「!?」

75 : ◇UpH... - 18/09/10 21:11:40 Hte 73/119

お兄さん「美穂ちゃん、一日早いけど、この言葉を送るよ」

みほ「え…?」

お兄さん「お誕生日、おめでとう。生まれてきてくれて、僕と出会ってくれて、ありがとう」

みほ「!」ドクンっ

76 : ◇UpH... - 18/09/10 21:11:57 Hte 74/119

みほ(おかしい…胸の鼓動がおかしいくらい激しくなってる)ドクン ドクン ドクン

『近くにいると胸の鼓動が激しくなったり、心があったかくなったり、ずっと一緒にいたい、離れたくないって思ったりすることよ。美穂にはいないの?クラスにそんな男の子』

みほ(ああ、そっか。これが…)

77 : ◇UpH... - 18/09/10 21:12:16 Hte 75/119

恋なんだ

78 : ◇UpH... - 18/09/10 21:24:24 Hte 76/119

~翌日 お別れの日~
P母「美穂母ぢゃ゛~ん゛、ま゛た゛あ゛お゛う゛ね゛~」ビエー

美穂母「P母ぢゃ゛~ん゛、も゛ち゛ろ゛ん゛よ゛~」ウエーン

美穂父「大の大人ふたりが号泣とは…」

お兄さん「ははは…」

翌日の早朝、お兄さんの家の車の前で最後のお別れをしていました。

79 : ◇UpH... - 18/09/10 21:24:48 Hte 77/119

美穂父「Pくん、昨日は本当にありがとう。おかげで元の美穂が帰ってきてくれた」

お兄さん「いえ、僕はそんな大したことはしていませんよ。美穂は強い子ですから」

美穂父「それでもさ…本当に感謝している。まあ、美穂と付き合うのを認めたわけではないがね」

お兄さん「な、なにを言っているんですか!!そんなわけないでしょうっ!第一、美穂ちゃんはまだ小学生ですよ!?」

美穂父「なんだとっ!美穂では不満だというのか!世界一、いや、宇宙一可愛い女の子だぞっ!」

お兄さん「な、なんという親バカ…」

外では私以外のみんなが既に揃っていました。

80 : ◇UpH... - 18/09/10 21:25:13 Hte 78/119

お兄さん「あれ、そういえば美穂ちゃんは?」キョロキョロ

美穂父「ん?ああ、美穂なら…」

みほ「お待たせしました!」

お兄さん「美穂ちゃん?遅かったけど何をしていt」クルッ

みほ「えへへ、に、似合いますか///」

お兄さんを見送る際、一番可愛い姿を見せたいと思い、お母さんと相談して決めた、リボンをあしらった、とびっきりのコーディネート。

81 : ◇UpH... - 18/09/10 21:25:33 Hte 79/119

お兄さん「」

みほ「お兄さん?」

お兄さん「…っは! う、うん。すごい似合ってる。可愛いよ」ドキドキ

みほ「本当ですかっ!嬉しいですっ」にへら~

お兄さん「ヤバいですね」

美穂父「当たり前だ。自慢の娘だぞ」

まだ終わりじゃありませんっ、ここからが本番です!

82 : ◇UpH... - 18/09/10 21:26:17 Hte 80/119

みほ「お兄さん、少ししゃがんでもらっていいですか?」

お兄さん「あ、ああ。わかったよ」

みほ「よ、よ~し」ボソッ

お兄さん「?」

みほ「」チュッ?

83 : ◇UpH... - 18/09/10 21:26:55 Hte 81/119

お兄さん「!?」

美穂父「」

美穂母「あら^~」

P母「あら^~」

みほ「お兄さん!大好きですっ。また、ぜったい、ぜっーたい!会いましょうね//」

P「あ、ああ」ドキドキ

みほ「えへへ///頬にキス…しちゃいました。唇は…恥ずかしいから、まだダメっ、ですっ」

84 : ◇UpH... - 18/09/10 21:27:20 Hte 82/119

それから、お兄さんとお別れした後も私は熊本で長い月日を過ごしました。
時々落ち込んじゃうこともあったけど、私は元気ですっ。
そして…

85 : ◇UpH... - 18/09/10 21:27:56 Hte 83/119

~小日向家~
美穂「私、東京に行きたいです」

高校生になった私は、家族に自分の夢を打ち明けていました。東京へ行き、アイドル養成所へ入るため、小さい頃、お兄さんと別れてから今まで、おこづかいをコツコツ貯めてきました。高校1年の長期休みにはアルバイトに精を出しました。そして、遂に目標金額まで貯めることができたのです。

86 : ◇UpH... - 18/09/10 21:30:00 Hte 84/119

美穂父「…とうとう決心したんだな」

美穂母「小さい頃からずっと憧れていたものね、アイドルに」

87 : ◇UpH... - 18/09/10 21:31:24 Hte 85/119

美穂父「…芸能界は甘いところじゃない、アイドルとして花開くことが出来ず、悔しい思いをしながら諦めていく人も数多くいるだろう。もちろんそれだけじゃない、養成所へ通いながら、学校生活や家事の両立をしなければならない。当然、大変な日々になるだろう」

88 : ◇UpH... - 18/09/10 21:32:06 Hte 86/119

美穂父「それでも、夢を貫き通す“覚悟”はあるのか?」

89 : ◇UpH... - 18/09/10 21:32:23 Hte 87/119

美穂「…アイドルは、弱虫で、臆病で、意気地なしだった私にとって、初めて見つけることができたかけがえのない“夢”なの」

今でも、胸に焼き付く日々を思い出す。お兄さんとの思い出は、ずっと私の力になってくれていた。

美穂「覚悟なんて、とうの昔にできています」

90 : ◇UpH... - 18/09/10 21:32:42 Hte 88/119

美穂父「…そうか、なら、父さんから言うことは、もう何もない」

美穂父「東京で、でっかい花を咲かせてみせろ!」

美穂「お父さん…!」

美穂母「美穂、あなたに渡すものがあるの」スッ

美穂「これは…通帳?」

恐る恐る中身をみると、目が飛び出しそうになる金額が書かれていた。

91 : ◇UpH... - 18/09/10 21:33:35 Hte 89/119

美穂母「あなたのために私とお父さんが用意してきた貯金よ、いつか必要になると思って口座を作っておいたの」

美穂「こ、こんなに受け取れないよ!わ、私っ」

美穂父「何かと必要になるかもしれないだろ?それに、娘が小さい頃から抱き続けた夢なんだ。それを応援するのが親の役目ってもんだろう」

美穂母「そうよ、気にせず受け取っちゃいなさい。あ、でも、無駄遣いはダメよ~東京の物価は高いんだから」

92 : ◇UpH... - 18/09/10 21:33:56 Hte 90/119

美穂「お父さん…お母さん…」

美穂父「東京で、“夢”叶えてこい」

美穂母「私達はいつでもあなたのこと想っているわ」

93 : ◇UpH... - 18/09/10 21:34:23 Hte 91/119

~空港~
美穂父「…行ったな。東京行きの飛行機」

美穂母「ええ」

美穂父「寂しくなるな」

美穂母「あら、もう娘が恋しくなった?」

美穂父「当たり前だ。何年あの子の傍で父親をやってきたと思ってる」

美穂母「大切な人との別れ…美穂は今よりずっと小さかった頃に、それを乗り越えたのよね」

美穂父「ああ、本当に強い子だよ、美穂は」

美穂母「ふふっ、ひょっとしたら向こうで運命の再会をしちゃうかもね♪」

美穂父「何?どういうことだ?」

美穂母「夢を叶えるために努力してきたのは美穂だけじゃないってことよ」

94 : ◇UpH... - 18/09/10 21:34:47 Hte 92/119



美穂(お兄さん、私、頑張りますから…!)


95 : ◇UpH... - 18/09/10 21:35:54 Hte 93/119

~東京 車の中~
P「ということがあって、年下の子の面倒をみるのに慣れていたんだよ」

デビューライブから数週間、アイドル五十嵐響子は瞬く間に話題になり、たくさんの仕事の話が舞い降りてきた。
今はそのひとつを終え、事務所に向かっているところである。
車の中での空いた時間、響子がなぜ、僕が子供の扱いに慣れているのか理由を尋ねてきたので、昔、熊本に住んでいた頃、隣に住んでいた女の子の話をしていた。

96 : ◇UpH... - 18/09/10 21:36:28 Hte 94/119

響子「はー、そんなことがあったんですね」

P「いや~、僕って一人っ子だったからさ。妹ができたみたいで嬉しくって。それはもう、必要以上に可愛がっていたものさ。今年で確か17歳くらいだし、響子と二つ違いの年だろうな。今頃どうしているのかなあ、きっとすごく可愛くなっているんだろうなあ」

響子「…むー」

響子「年下の女の子にキスされて、良かったですねっ!」ふんっ

P「な、なにを言うんだ!キスっていっても頬にちょっとだけだぞ?」あせあせ

97 : ◇UpH... - 18/09/10 21:36:49 Hte 95/119

響子「ほっぺでもキスはキスですっ!女の子にとって、ファーストキスは宝石以上の価値があるんですよ!!」

P「ええ~、何年も前の出来事だからもう忘れてるだろ」

響子「女の子の初恋は、そう簡単に消えません!!!」

響子「私だって、いつもドキドキしてるのに…」ボソッ

P「へ?なんか言ったか?」

98 : ◇UpH... - 18/09/10 21:37:04 Hte 96/119

響子「なんでもありません!…でも美穂ちゃんかぁ、会ってみたいな、きっと仲良くなれると思うんです」

P「何でまた?」

響子「“好き”が同じだから、ですっ///」

P(響子もクマが好きなのかな?)

99 : ◇UpH... - 18/09/10 21:37:27 Hte 97/119

~346プロ 第1芸能課~
P響子「「ただいま戻りましたー!」」

ちひろ「あ、プロデューサーさんに響子ちゃん。おかえりなさい。今日のお仕事はどうでしたか?」

P「はいっ!それはもう、バッチリでしたよ。スタッフの皆さんからもとても好評で…な!響子」ぽんぽん

響子「も、もうっ、プロデューサーさん!頭ぽんぽんされるのは好きですけど、他の人の前じゃ、その…恥ずかしいですようっ///」

P「ははは! ごめんごめん」

ちひろ「相変わらず仲がいいですねー」ジトー

100 : ◇UpH... - 18/09/10 21:37:48 Hte 98/119

P「勿論ですよ!僕と響子は一心同体、ベストマッチですから!」

響子「一心同体…ベストマッチ…えへへ」テレテレ

ちひろ「はぁぁぁぁ、ごちそうさまでした」

社長「うむ、仲良きことは美しきかな」

P「あ、社長。お疲れ様です」

響子「お疲れ様ですっ、社長さん!」

101 : ◇UpH... - 18/09/10 21:38:12 Hte 99/119

社長「ああ、二人ともお疲れ。今日も頑張ってきたようだね」

社長「Pくんもプロデュース、慣れてきたようじゃないか」

P「はい、まだまだ未熟なところもありますが…今なら何でもできそうな気分ですよ!」

社長「よしよし、これからもその調子で頼むよ……ところで、何でもできそうな気分、だそうだね?」

P「はいっ」

102 : ◇UpH... - 18/09/10 21:38:33 Hte 100/119

社長「そうかそうか!!さすが、私の認めた男だ。それでは早速君に、新たな指令を言い渡そう!」

P「指令…ですか?」

社長「君、アイドル養成所のことは知っているかな?」

P「はい」

103 : ◇UpH... - 18/09/10 21:39:42 Hte 101/119

アイドル養成所。その名の通り、アイドルになるための人材を育成する施設のことだ。
アイドルになるパターンは、大まかに分けると二つある。
一つ目は、響子のように事務所の人間から直接スカウトされるパターン。
街中や公園だけではなく、事務所の別部門から引き抜かれることもあるそうだ。
二つ目は、養成所に通い、アイドルになるための技術を磨きながら、事務所が開催するオーディションを受け、合格することでアイドルになるパターン。
また、業界の人間がお忍びで候補生の様子を視察しに来ることも少なくなく、養成所を通してスカウトの通達がされる人もいるらしい。
もちろん、許可を貰った人以外は勝手に養成所に入ることはできない。

104 : ◇UpH... - 18/09/10 21:40:15 Hte 102/119

社長「我が事務所のアイドル部門は、まだまだ所属アイドルが少ない。第1芸能課以外の課で働くプロデューサーたちにも、シンデレラプロジェクトに相応しい人材の発掘を行って貰っている。私自身もスカウトに参加していたところさ」

社長「そして先日、養成所で見つけたのだよ。新たなトップアイドルの卵を!」

P「なるほど…つまり、僕にその子のプロデュースを任せたい…といったところですか」

社長「Exactly!その通りだよPくん!!」

105 : ◇UpH... - 18/09/10 21:40:34 Hte 103/119

社長「少々恥ずかしがりやな一面もあるが…頑張りやで努力家な子だ。きっと素晴らしいアイドルになれるはずだ」

響子「うわ~、新しいアイドルの子かあ」ワクワク

P「…」

106 : ◇UpH... - 18/09/10 21:41:07 Hte 104/119

社長の話を聞き、考える。
最近はプロデュース活動にも慣れて、少し余裕が出てきた。
それに、新しい子が入ってくることで、響子にとってもいい刺激になるだろう。
アイドルの新しい魅せ方がみえてくるかもしれない。
…よしっ!

107 : ◇UpH... - 18/09/10 21:41:26 Hte 105/119

P「社長っ、その話、受けさせてください!」

社長「おっ、引き受けてくれるのかね」

P「はいっ、任せてください!」

P「早速、新たなアイドルを迎える準備をしないと…その子の資料はありますか?」

社長「そのことなんだがね…Pくん」

P「はい?」

108 : ◇UpH... - 18/09/10 21:41:49 Hte 106/119

社長「もう既に、控え室に来てもらっているのだよ」

P「……はい!?そんな急にっ!?」

ちひろ「ふふっ」

社長「はっはっは 君なら間違いなく引き受けてくれると信じていたからね!」

P「~~~っ、わかりました!とりあえず、面接してきますっ」ダッ

109 : ◇UpH... - 18/09/10 21:42:08 Hte 107/119

社長「うむ、私も同席させて貰おうかな」

響子「社長さんっ、私もご一緒していいですかっ」ワクワク ワクワク

社長「ん?そうだね、堅苦しい話は粗方済ませてあるから、顔見せも兼ねて、響子くんも会ってみるといい」

響子「ありがとうございます!

110 : ◇UpH... - 18/09/10 21:42:35 Hte 108/119

~控え室~
??「……」そわそわ そわそわ

トントン

P「失礼しますっ」ガチャ

??「あっ!」ガタッ

P「ごめんね、待たせちゃって。なにしろ急な話だったから」ハァハァ

??「い、いえ!こちらこそ、お忙しい中お時間を取っていただきありがとうございますっ」ペコリ

111 : ◇UpH... - 18/09/10 21:42:53 Hte 109/119

P「ありがとう。じゃあ、早速だけど君の名前を教えて貰えるかな?」

美穂「は、はい!自己紹介ですね。こ、小日向美穂です。す、すみません、緊張しちゃって…。ファ、ファンに愛されるアイドル目指して、が、頑張りたいです!ええっと、それから…」

P「ん?小日向美穂…?小日向美穂って言ったかい?」

美穂「は、はい」

P「もしかして…美穂ちゃん…?」

美穂「へ?」

112 : ◇UpH... - 18/09/10 21:43:08 Hte 110/119

P「僕だよ、僕、P!数年前まで熊本に住んでいた!」

美穂「お、お兄さん!?ど、どどどどうしてここに!?」

P「どうしてって…僕、この事務所のプロデューサーだし」

美穂「え、ええええええええええええええええええええ」

社長「これはどういうことかね?」

ちひろ「さ、さあ?」

響子(も、もしかして…!)

113 : ◇UpH... - 18/09/10 21:43:31 Hte 111/119



社長「なるほど…つまり、Pくんと美穂くんは既に面識があった…ということだね」

P「はい」

ちひろ「さしずめ、運命の人との再会を果たした!って感じですね」

美穂「はわわわ///」

114 : ◇UpH... - 18/09/10 21:43:54 Hte 112/119

P「いや~、それにしても、まさか新しい担当アイドルが美穂ちゃんだったとはなあ。ホントびっくりしたよ、大きくなったな」

美穂「わ、私もビックリしましたっ。自分がスカウトされたことすらまだ信じられないのに、まさか、担当プロデューサーがお兄さんだったなんて!」

響子「ねぇねぇ!」ズイッ

美穂「な、なにかな?」

115 : ◇UpH... - 18/09/10 21:44:18 Hte 113/119

響子「美穂ちゃんのファーストキスって、プロデューサーさん!ですよねっ」

ちひろ「!?」

美穂「ど、どうしてそれを///」

響子「やっぱり…!プロデューサーさんっ!美穂ちゃん、ちゃ~んとプロデューサーさんとした“キス”、覚えてましたよっ!!」

ちひろ「どういうことですかっ!プロデューサーさんっ!!!!」クワッ

116 : ◇UpH... - 18/09/10 21:44:33 Hte 114/119

P「い、いや随分昔のことだし、それに、してきたのは美穂ちゃんの方からで…」アセアセ

ちひろ「言い訳無用!!お、女の子にとって、ファーストキスは宝石以上の価値があるんですよ///」カアァ

P「ちひろさんまで!?」

美穂「も、もう許して~///」

社長「やれやれ、また騒がしくなりそうだ」

117 : ◇UpH... - 18/09/10 21:45:16 Hte 115/119

お兄さんとの再会を皮切りに、私のアイドル生活が始まりました。
新しく入居することになった女子寮には響子ちゃんの他にも個性豊かなアイドルの皆さんがいてとてもワクワクしました。
トレーナーさんが行うレッスンは養成所で今まで行ってきたものよりも更に本格的なもので、自分が本当にアイドルになったんだということを強く実感することができました。
響子ちゃんには何度も助けられちゃいました。私よりも年下なのにしっかりしているなあ。
そして、遂にステージの上に立つ日が訪れました。

118 : ◇UpH... - 18/09/10 21:45:35 Hte 116/119

~デビュー当日 舞台袖~
P「いよいよデビューだな…準備は万全か?」

美穂「はいっ、この日のためにも、たくさん練習しましたから!」

P「よし、気合は十分!って感じだな」

P「思えば、美穂ちゃんに出会ってから10年も経っているんだよなぁ。出会ったばかりの頃、引っ込み思案だった美穂ちゃんが今や、アイドルとしてステージの上に立つ…感慨深いものがあるよ」

美穂「もうっ、プロデューサーさん!私、もう高校生なんですから、ちゃんづけは恥ずかしいって言ったじゃないですか!」

119 : ◇UpH... - 18/09/10 21:45:55 Hte 117/119

P「アハハハ、ごめんごめん。つい癖で言ってしまうからさ」

P「…お互い、夢を叶えることができたな」

美穂「違いますよ。プロデューサーさん」

P「え?」

美穂「夢を叶えたんじゃありません。これから始めるんですっ!!私とプロデューサーさん、それと響子ちゃんや事務所の人たち、みんなで!」

P「!…そうか、強くなったな、美穂」

120 : ◇UpH... - 18/09/10 21:47:20 Hte 118/119

スタッフ「小日向さ~ん、スタンバイ、お願いしま~す」

P「そろそろ時間だな…」

P「よし、一発かましてこい!美穂!!」

美穂「はいっ、プロデューサーさん!私の晴れ姿、そばでしっかり、見ていてくださいね?」

P「ああっ!」

美穂「♪」ダッ

P「…頑張れよ、美穂」

弱虫で、臆病だったあの頃の少女はもういない。少女は今、夢の階段を登り始めていた

121 : ◇UpH... - 18/09/10 21:47:37 Hte 119/119

美穂「み、みなさん!はじめまして、小日向美穂です!!今日、私のデビューライブに来てくださり、ありがとうございます!!!全力で歌いますので、応援、よろしくお願いしますねっ」

終わり

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