……
ヴィーネ「ちょっとガヴ!!今何時だと思ってるのよ!!」
ガヴリール「んん、なんだよ朝っぱらからうるせえなぁ……」ムクッ
ガヴリール「……ってあれ、ヴィーネ?」
ヴィーネ「駅前で待ち合わせの約束を忘れたのかしら?予定では二時間程前だった気がするんだけど……?」イライラ
ガヴリール「あ、あれー、おっかしいなぁ、目覚まし掛けてたはずなんだけど……」
ガヴリール「……」チラッ
ヴィーネ「……」
ガヴリール「あー、その、えっと……」
ガヴリール「ごめんなさい」ペコッ
元スレ
ガヴリール「別に恋愛とか興味ないし」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1501158141/
……
ヴィーネ「まったく、今日で何度目よ、いつもいつも待ち合わせの時間に遅れてきて」
ヴィーネ「どうせ、ガヴの事だし、休日前だからって調子に乗って夜更かししてたんでしょ?」
ガヴリール「いやぁ、流石ヴィーネさん、私の事をよくわかってらっしゃる」
ヴィーネ「少しは反省しろ」
ガヴリール「わ、悪かったって、私も反省してるからさ」
ヴィーネ「……」
ガヴリール「ほ、ほら、まだ昼過ぎだしさ、今から一緒に出掛けないか?」
ヴィーネ「……はぁ、まぁ、今回はそれで手をうってあげるわ」
ヴィーネ「丁度いい頃合いだし、一緒にお昼でも食べにいきましょ、どーせ何も食べてないんでしょ?」
ガヴリール「お、もしかしてヴィーネの奢り?」
ヴィーネ「本気で怒るわよ?」
……
ガヴリール「と、いうわけで背伸びしたいお年頃のヴィーネとちょっと大人っぽいお洒落なカフェに来たわけだ」
ヴィーネ「まぁ、たまにはいいじゃない、ガヴと二人で外出するのもひさしぶりなんだし」
ヴィーネ「無事夏休みを迎えたんだから、少しは息抜きしなきゃね」
ガヴリール「私は別にチェーン店とかでよかったんだけどな、ガッツリいきたいし」
ヴィーネ「……ほんっとあんたって女子力ないわよね、そんなんじゃモテないわよ?」
ガヴリール「いいんだよ、別に私は恋愛とか興味ないし」モグモグ
ヴィーネ「ふーん……」
ガヴリール「……なんだよその目は」
ヴィーネ「……ねぇ、折角二人きりなんだしさ、ちょっと女子高生らしく、その……」
ヴィーネ「恋バナでもしない?」
ガヴリール「……お前、私の話聞いてたか?恋愛とかそういうのには興味ないって……」
ヴィーネ「またまた、そんな事言ってもガヴにもあるんでしょ?好きな人のタイプとか」
ヴィーネ「誰にも言わないから、私にだけ聞かせてよ」ズイッ
ガヴリール「いや、だから……」
ヴィーネ「ガヴが教えてくれたら私も教えるわ、だから、ね?」キラキラ
ガヴリール「うげぇ、変なスイッチ入っちゃなぁ……」
ヴィーネ「……」ジーッ
ガヴリール「……はぁ」
ガヴリール「まぁ教えてやるよ、別に減るもんでもないし」
ヴィーネ「ふふっ、やっぱりガヴも女の子なのね」ニコッ
ガヴリール「ちゃかすなよ、別に、ヴィーネが思ってるほどロマンチックなものでもないぞ?」
ヴィーネ「いいのよ、ガヴの口からこういう話が聞けるってだけでも新鮮なんだから」
ガヴリール「まぁ、タイプとかそういうのじゃないんだけどさ、強いていうなら」
ガヴリール「私が働かなくても養ってくれて私が一日中ゲームしてても文句ひとつ言わない人かなぁ」
ヴィーネ「うん、それから?」
ガヴリール「……えーと」
ガヴリール「や、優しい人……かな」
ヴィーネ「……」ニヤニヤ
ガヴリール「その顔やめろ」
……【夕方】
ヴィーネ「そっかぁ、優しい人かぁ……」ニコニコ
ガヴリール「……すっかり機嫌も元通りだな?ヴィーネ」
ガヴリール「今日一日恋バナネタで私を弄り倒して満足か?」ムスッ
ヴィーネ「ああもう、悪かったわガヴ、私もちょっと調子に乗りすぎたわ」
ガヴリール「……ふん、どーせそんな奴この世のどこにもいないから、ただの冗談だっての」
ガヴリール「初めに言った通り、私は恋愛だとかそういうチャラついたものに興味無いんだよ、これでも一応天使だからな」
ガヴリール「てかもう疲れたし帰る、家でネトゲしたいし」
ヴィーネ「今日は楽しかったわ、また近い内に遊びましょう、今度はラフィとサターニャも誘って」
ガヴリール「ん、気が向いたらな」
……
ボスッ
ガヴリール「んー……」ゴロンッ
ガヴリール(……家に帰っては来たものの、ひさしぶりの外出のせいか想像以上に疲れてしまったな)
ガヴリール(それに、今日のヴィーネのテンションには振り回されてばかりだったし、さらに疲労がどっしりと……)
ガヴリール(今日は本当に散々だった、徹夜でイベントを周回するつもりだったのにその分の体力も残っちゃいない……)
ガヴリール「……今日はもう寝るか」
……
「ふふ、寝顔も可愛い……」
ガヴリール「あぁ悪い、つい寝ちゃってたな」
「いいんですよガヴリール、日々のゲームで疲れていると思うので、今日はゆっくり休んでいてください」
「起きる頃にはご飯も用意しておきますので楽しみにしていてくださいね、今日はガヴリールの大好きな……」
ガヴリール「いつもありがとうな、仕事から家事まで全部任せっきりで」
ガヴリール「働きもせずに一日中ゲームをしてるだけの私にここまでしてくれるのはお前くらいだよ」
「ふふ、そんな事気にしなくてもいいんですよ、初めにプロボーズしたのは私の方なんですから」
「それに、私はガヴリールと一緒にいられるだけで幸せですし……」
ガヴリール「……あぁ、私も…………」
ガバッ
…………
……
ガバッ
ガヴリール「…………っ」
「おはようございます、今日は早起きですね」クスッ
ガヴリール「い、今なんか凄く恥ずかしい夢を見ていた気がする、あんまり思い出せないけど……」
「一体どんな夢ですか?」
ガヴリール「え、えっとだな、もう結構薄れてきてるんだけどさ」
ガヴリール「なんかこう、私が恥ずかしい事言ってたり言われてたり……」
ガヴリール「……うん?」
「……?」
ガヴリール「…………寝ぼけてんのかな、私の前にもう一人私が……」
……
ガヴリール「さて、何が狙いだ?悪魔め」
ガヴリール「天使である私の家の結界を破り、許可もなく侵入するとはいい度胸だ」
聖ガヴリール「ご、誤解です!私は正真正銘天使ですよ!」
ガヴリール「ちっ、よりにもよってそんな姿に化けるなんて、かなり悪質な手口だな……」
ガヴリール「よし決めた、天界に連行する前に、まずは少し痛めつけてやろう」ガサゴソ
ガヴリール「聖水に十字架、じゃがいもとにんじん……」
聖ガヴリール「ちょ、ちょっと!話を聞いてください!私は悪魔じゃないんですってば!」
ガヴリール「……例えお前が悪魔じゃなかったとしても、だ、私はお前の存在を認める訳にはいかない」
ガヴリール「自分と同じ姿をした奴が私の家に侵入してきたんだ、警戒するなってほうが難しい話だろ?」
聖ガヴリール「……まずはこの縄を解いて、少し私とお話しませんか?」
聖ガヴリール「……これだけは天に誓って言えます、私はあなたに敵意を抱いているわけではありません」
ガヴリール「……」
……
ガヴリール「……お前の話をまとめるとつまり」
ガヴリール「私の深層心理が望んだ理想の恋人象に、天使力がなんやかんや作用して」
ガヴリール「それが新しい命として形を持ち、私の前に現れたって事か?」
聖ガヴリール「……信じてくれるんですか?」
ガヴリール「……信じるも何も、こうして目の前にいるわけだしなぁ」
ガヴリール「……少し納得はできないが、理解はした、少なくとも悪魔では無いって事はな」
ガヴリール「……まぁ、それはそれとしてだ」
聖ガヴリール「はい」
ガヴリール「お前は何しに来たんだよ、結局のところお前は私の何なんだ」
聖ガヴリール「恋人です」
ガヴリール「……は?」
聖ガヴリール「恋人です」
ガヴリール「」
聖ガヴリール「理想の恋人として具現化された存在が私ですから、私があなたの恋人になるのは当然の事です」
ガヴリール「……いや、理想の恋人象が自分自身ってのは流石に……」
聖ガヴリール「と、言われましても、あなたが私を望んだから私が生まれた訳ですので……」
ガヴリール「………」
聖ガヴリール「それよりも、これからはお互いに暮らすわけですから、呼び方を決めることも大事ですよね」
聖ガヴリール「二人ともガヴリールっていうのはちょっと変なので、私はあなたの事を別の呼び方で呼ばなくちゃ……」
聖ガヴリール「……あ、ここは親しみを込めて、ガヴちゃんなんてどうですか?ラフィの呼び方を真似してみたんですが……」
ガヴリール「……あーうん、もうそれでいいよ」
……
ガヴリール(よくよく考えるとこいつはかなり使えるかもしれない)
ガヴリール(少し納得はできないがあいつが私の理想の恋人だっていうなら)
ガヴリール(これから私の身の回りの事は全てこいつに任せればいいじゃないか)
ガヴリール(ふふふ、漫画みたいな話だけど、もしこれが上手くいけば、私の理想の生活は目の前だ)
ガヴリール(ゆくゆくは仕事をさせて、金銭面での問題も……)
聖ガヴリール「ガヴちゃん、朝ご飯まだですよね、何が食べたいですか?」
ガヴリール「んー、適当に重くないやつ」
聖ガヴリール「さて、朝食も済ませたことですし」
聖ガヴリール「私と一緒にお出掛けしませんか?」
ガヴリール「やだ、ネトゲするから」
聖ガヴリール「わかりました」
聖ガヴリール「では、私は何をすればいいですか?」
ガヴリール「ネトゲの妨げにならないように、適当にしといて」
聖ガヴリール「わかりました」
ガヴリール「……」カチカチ
聖ガヴリール「……」
聖ガヴリール「あ、あの」
ガヴリール「……」カタカタ
聖ガヴリール「これは私のワガママなんですけど」
聖ガヴリール「もしよかったら少し私とお話しませんか?」
聖ガヴリール「恋人らしく、お互いの仲を深めるというか、その……」モジモジ
ガヴリール「……あーごめん、今ちょい集中したいから」カチカチ
聖ガヴリール「あっ、ごめんなさい」
ガヴリール「……」
カチカチ……
ガヴリール「んんーっ、流石にぶっ通しは疲れるな」
ガヴリール「ていうか今何時………げ、もう日付変わってんじゃん」
ガヴリール「腹へったし、何か食べないとな」
ガヴリール「おーい、お腹減ったんだけどー」
聖ガヴリール「……」スヤスヤ
ガヴリール「……って、寝てるし」
ガヴリール「まったく、朝になる前に寝落ちするなんて根性の無い奴だな」
聖ガヴリール「……むにゃむにゃ」
ガヴリール「……まぁ、寝違えて家事に支障が出ても困るしな」
ガヴリール「ベッドに運ぶのは面倒だし、このまま……」
スッ
……
チュンチュン
聖ガヴリール「ん、朝……」
聖ガヴリール「……っ、ガヴちゃんの朝ご飯作らなきゃ」
ムニッ
聖ガヴリール「……ん?」
ガヴリール「……」スヤスヤ
聖ガヴリール「これは……腕枕?」
ガヴリール「んぐぅ……」
聖ガヴリール「……ふふっ」クスッ
プルルル、プルルル……
聖ガヴリール「ガヴちゃん、電話ですよ」
ガヴリール「あーすまん、ちょっと手が離せないから出てくれ」カタカタ
聖ガヴリール「わかりました」
スッ
聖ガヴリール「もしもし」
ヴィーネ『あ、ガヴ、今電話しても大丈夫だった?』
聖ガヴリール「はい、大丈夫ですよ」
聖ガヴリール「今日はどうしたんですか?ヴィーネさん」
ヴィーネ『ヴィーネさん……?』
聖ガヴリール「あ、え、えっと……」
聖ガヴリール「……」チラッ
ガヴリール「あー、いいよ、ヴィーネなら別に」
ガヴリール「後から説明するのも面倒だし、うちに呼ぶか」
ガヴリール「と、言うわけで、私が二人になりました」
ヴィーネ「あーうん、ごめん、ちょっと理解が追い付かない」
ガヴリール「理解なんてしなくていいんだよ、形あるものを信じろ」
ガヴリール「目を開けて、そこにあるものが事実だ、ほら」
聖ガヴリール「ど、どうも、いつもお世話になってます、ヴィーネさん……」モジモジ
ヴィーネ「……」
ヴィーネ「かわいい」
聖ガヴリール「ふぇ!?」ドキッ
ガヴリール「おいヴィーネ、一応そいつは私の恋人らしいから、あんま変なこと言うなよ」
ヴィーネ「変な意味じゃないわよ、初めて会った頃のガヴを思い出してかわいいなって思っただけ」
ガヴリール「……っ」カァァァ
ヴィーネ「ふふ、こうしてみると双子の姉妹みたいね」
ガヴリール「そりゃ、私そのものだからな、ほくろの位置からつむじまで完全一致だ」
ヴィーネ「……?ガヴにほくろなんてあったかしら?」
ガヴリール「背中の方にあるんだよ、服着てたら見えないけど」
ヴィーネ「……へー」
ガヴリール「……おい、今変な想像しただろ?」
ガヴリール「言っておくけど、別にやましい事をしてるわけじゃないからな」
ガヴリール「ただこの間一緒にお風呂に入ったときに気づいて……」
ヴィーネ「……一緒にお風呂に入っちゃうんだ」ニヤニヤ
ガヴリール「……」イラッ
ガヴリール「言っておくけど仕方なく、だからな」
ガヴリール「最初の方は私がずっとぐーたらしてても文句ひとつ言わなかった癖に」
ガヴリール「最近なんて『お風呂に入らない子はゲーム禁止ですー』とかさ」
ガヴリール「お前は私の母親かっての、理想の恋人象とはほど遠いわ」
聖ガヴリール「ガヴちゃんったら一人でお風呂に入ると適当に流してすぐ上がってきちゃうんです」
聖ガヴリール「折角綺麗な髪の毛なのに、手入れせずに痛んでしまったら勿体ないじゃないですか」
聖ガヴリール「だから最近は、二人でお風呂に入ってるんです」
ヴィーネ「へ、へぇ、なんていうかその、凄く仲良しなのね……」
……
聖ガヴリール「あら、ヴィーネさん、もう帰っちゃうんですか?」
ヴィーネ「ええ、これ以上二人の邪魔をしちゃうのは悪いもの」
ガヴリール「おいヴィーネ、勘違いするなよ」
ガヴリール「こいつは私の恋人がどうとか言ってるけど、私は別にこれっぽっちも……」
聖ガヴリール「……」シュン
ガヴリール「……いや、その、ま、まだ、なんだ」
ガヴリール「ほら、順序ってものがあるじゃん?」
ガヴリール「私だって恋愛とかそういうのは初めてなんだしさ、い、いきなり恋人とか、その……」アセアセ
ヴィーネ「……」クスッ
その後、私と私の奇妙な同棲生活は続いた
勿論、自分と同じ姿をした彼女に恋愛感情を向けるというのは難しくて、最初はぎこちない会話が多かった
しかし、見た目というものは時間が立てば慣れてくるものだ、長い時間を過ごす内に、私は彼女の姿に違和感を感じなくなっていった
同じ顔、同じ体、同じ声の彼女も、性格や行動が違えばまったくの別人に見えたのだ
そんな彼女を自分ではない他人として見始めた時、少しずつ、私の心が揺らぎ始める……
聖ガヴリール「ガヴちゃん、あの……」
ガヴリール「あぁ、わかってる」
聖ガヴリール「すみません、わたしのワガママで」
聖ガヴリール「ですが、どうしても聞きたいんです、ガヴちゃんの口から、その言葉を」
ガヴリール「……初めて会った時は心の底から困惑したよ」
ガヴリール「お前の存在は勿論、それを生み出したのが私の望みだったって事も、だ」
ガヴリール「でも、この数ヵ月の間、お前と二人で暮らしてわかったよ」
ガヴリール「お前は寝るときにいつもパジャマを着ているが、深夜に目覚めてはそれをこっそり脱ぎ捨てていることも」
ガヴリール「私には好き嫌いせずに食べるよう言ってくる癖に、自分の分のご飯からはいつも椎茸とコーンとグリーンピースを抜いていることも」
ガヴリール「歯ブラシを買うとき、私の使っている物とは違う固さの物を選んでることも」
ガヴリール「あげればきりがないけど、まだまだあるんだよ、私にはない、お前だけの癖や仕草、個性が」
ガヴリール「そんなところを見ているとさ、なんていうかその、私も嬉しくなったんだ」
ガヴリール「お前は私ではなく、私の事が好きな他人なんだって」
聖ガヴリール「ガヴちゃん……」
ガヴリール「だから、わ、私も……」
ガヴリール「私もお前の事が好きだ」
聖ガヴリール「ガヴちゃん……」
ガヴリール「そ、その、私はこんなだから頼りないし、ワガママだし、お前に迷惑ばかりかけてしまうと思うけど……」
ガヴリール「そ、それでも、好きでいてくれたら、嬉しい……かな、なんて……」モジモジ
聖ガヴリール「……ふふ」
聖ガヴリール「ダメなところも全部含めて、私の大好きなガヴちゃんです」
聖ガヴリール「私はあなたを愛すため、愛される為に生まれました」
聖ガヴリール「ですから、これからも一緒に、仲良く暮らしていきましょう?」ニコッ
ガヴリール「……ありがとな」
完