兄「どうした、何か用か?」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「ちゃんと聞こえてるから少し落ち着け。で、何の用だ?」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「だから聞こえていると言っただろう。深呼吸でもして落ち着け」
妹「スゥゥハァァ…スゥゥハァァ……お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「…いいから落ち着け。な?」
妹「お兄ちゃん!」
兄「無理しないでいいから落ち着け。そして口を閉じろ」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」(コクコク
兄「何を話すのかゆっくり考えてから話すんだ。いいな?」
妹「お兄ちゃん!」コクコク
妹「…………」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「何を言っているのかさっぱりわからん。お前はそれ以外話せないのか?」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「おい、そろそろやめてくれ。面白くとも何ともないぞ」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「頼むからやめてくれ。ジョークだとしても笑えない」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」シクシク
兄「いったいどうしたってんだ?何があったのかだけでも教えてくれよ」
妹「お兄ちゃん!」シクシク
兄「お兄ちゃん!としか喋れないってことか?まさかな」
妹「お兄ちゃん!」
兄「……冗談だろ?」
妹「お兄ちゃん!」ガッ
兄「わかったわかった!わかったから殴るのはよせ!」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」ギュッ
兄「…落ち着いたか?」
妹「お兄ちゃん!」コクコク
兄「よし、あくまでも仮定の話だが、お前が本当にお兄ちゃんとしか喋れないならいくつか質問をしなきゃならん。Yesなら頷け、Noなら首を横に振れ。いいな?」
妹「お兄ちゃん!」コクコク
妹「……お兄ちゃん!お兄ちゃん!」チラッチラッ
兄「ん?ああ、紙に書くことはできるんだよな。すまんな気が利かなくて」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」カキカキ
兄「おお、書けたか。どれどれ
『お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!』
……泣けるぜ」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」ナデナデ
兄「ま、まあジェスチャーとか手話があるし大丈夫だろ!」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」ブンブン
兄「ええと、『馬鹿でもわかる手話入門』によると……
『お兄ちゃん!お兄ちゃん!』
Oh…」
妹「お兄ちゃん!」コクコクフルフル
兄「とりあえず頷くとか首を振るのはできるみたいだな」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」コク コクコクコク コク
兄「何か嫌な予感がする。『ソマリア海賊でもわかるモールス信号入門』によると…
『お兄ちゃん!お兄ちゃん!』
……なんでこんな単語があるんだよ…」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」ギュッ
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」カタカタ ッターン
兄「見なくてもわかるさ。いつものアレだろ?
……『brother!brother!』
…インターナショナル過ぎるだろ…」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「何か意思の疎通の手段は無いものか…」ナデナデ
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「ううむ…そうだ!試しにお兄ちゃんって二回言ってみてくれ!」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「よくやった。いい子いい子してやるぞ」ナデナデ
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「これをモールス信号に応用すれば……」
兄「この本を参考にしてお兄ちゃん信号を送ってみてくれ」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「いいぞいいぞ」
妹「お兄ちゃん!」
兄「次」
妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
兄「苦節三十分、これで妹が何をいいたがっているのかはっきりするな
さて、『ソマリア海賊でもわかる手話入門』によると…
『だ い わ は う す』
…なんでダイワハウスなんだ……」
妹「お兄ちゃん!」
終劇