女上司「ちょっと来なさい!」
男「は、はい……」
女上司「またこんなミスして! 最近ミスが多いよ!」
男「す、すみませぇん!」
女上司「……あ、そうだ」
女上司「今度から、君がミスするたびにキス一回しちゃおっかな」
男「え……」
元スレ
女上司「君がミスするたびにキス一回しちゃおっかな」
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女上司「さっそくだけど、この見積もり頼むわ」
男「はい」
女上司「ちょっと量が多いけど、くれぐれもミスがないようにね」
男「分かりました」
女上司「それとさっきいったこと、私は本気のつもりだから」
男「……」スタスタ
女上司(ふふっ、ちょっと脅かしすぎたかな)
男「できました」
女上司「ご苦労様」
女上司「だけどミスがあったら、なんの意味もないからね」
男「分かってます」
女上司「どれどれ……」
女上司(え、ウソ……!)
女上司「完璧だわ……!」
男「ありがとうございます」
女上司「男君、頼みがあるんだけど」
男「なんでしょう」
女上司「今度の会議で使う資料を作って欲しいの」
男「分かりました」
女上司「乱雑な資料だったら、ミス扱いにするからね」
男「最善を尽くします」
男「資料、完成しました」
女上司「ずいぶん早いじゃない。えーと……」
女上司「!」
女上司「なんて分かりやすい資料なの……。文章、レイアウト、グラフ、なにもかも素晴らしい!」
男「ありがとうございます」
女上司「……」
女上司「ちょっと待って」
男「はい?」
女上司「せっかくだから、会議の進行役も任せちゃおうかな」
男「俺でいいんですか?」
女上司「ええ、しっかり進行しないともちろんミスと見なすからね」
男「気をつけます」
女上司(これは無理でしょ。会議の進行って慣れてないと難しいんだから)
男「では会議を始めます」
男「本日は私が進行させて頂きます。よろしくお願いします」
男「まず、最初の議題ですが……」
女上司(うむむ……重要な会議なのに堂々としていてなかなかやるじゃない)
男「ここまでの意見をまとめると、こうなります」
男「他になにか意見のある方は?」
女上司(うぐぐ……ミスらしいミスは一切ない……!)
ワイワイ…
同僚「お前、このところすげーな!」
男「なにが?」
同僚「前までミスの総合商社だったのに、このところ全然ミスがないじゃん!」
男「たまたまだよ、たまたま」
女上司(彼がミスをしなくなったのは、私が“あれ”を言ってから……)
女上司(これってどういうことなの!?)
女上司「今度の飲み会、君にセッティング任せていい?」
男「かまいませんよ」
新人「え、それって僕の仕事じゃ……」
女上司「いいのいいの」
男「やらせて下さい」
女上司「じゃ、よろしくね」
女上司(今の時期、いい店を見つけるのは難しい……悪いけどミスってもらうからね)
同僚「カンパーイッ!」
同僚「お前こんないい店よく見つけたなー」
新人「ええ、安いしおいしいし……穴場ですよ!」
男「情報誌を必死になって探したからね」
アハハハハ…
女上司「……」
女上司(“必死”ってどういうことなのよ!)
女上司(……もう間違いない)
女上司(彼は私にキスされまいと、ミスしないよう頑張っている!)
女上司(こうなったら……)
女上司(意地でもキスしてやろうじゃないの! どんな手を使ってもね!)
女上司(さっそく今日彼が向かう得意先に電話を……)ピッポッパッ
中年『なんだね?』
女上司「今日そちらに部下が伺うんですけど」
中年『ああ、聞いてるよ。午後の一時からだったかな』
女上司「その時……彼を怒って欲しいんです」
中年『え、どういうこと?』
女上司「彼がなにをいっても、怒って、怒鳴って……打ち合わせを失敗にして欲しいんです」
中年『なるほど、調子に乗ってる部下にお灸をすえたいってところかな? いいだろう!』
女上司「ありがとうございます」
女上司(これで……彼は確実にミスをする!)
女上司(はっきりいって反則技だけど……悪く思わないでね)
男「それじゃ、今日打ち合わせあるんで出かけてきます」
女上司「うん、あの人怒ると怖いから、くれぐれも怒らせないようにね」
男「はい、気をつけます」
スタスタ…
バタン…
女上司(ふふっ、密約ができているとも知らないで……)
男「戻りました!」
女上司「打ち合わせはどうだった?」ワクワク
男「はい、バッチリでしたよ!」
女上司「え!?」
男「先方もノリノリで、いい話がいくつも決まっちゃいました!」
女上司「……ウソついてないよね?」
男「ウソの報告してどうするんです。すぐバレるじゃないですか」
女上司(なんで!? どういうこと!?)
女上司「もしもしィ!」
中年『ああ、君かね』
女上司「約束が違うじゃないですか! どういうことですか!?」
中年『あ、いや、彼の口調、たたずまい、話す内容、お茶の飲み方、全てにおいて完璧だったから……』
中年『怒るスキがなかったんだよ……』
女上司「……!」
中年『いやー、すまんね。しかし、素晴らしい部下を持ててよかったじゃないか』
女上司「ったく、使えねェ!!!」
中年『ご、ごめんなさいっ!』
女上司「ハァ……」
女上司(すっかりミスの常連から、ミスター・パーフェクトになっちゃって……)
女上司(なにこれ? そんなに私にキスされたくないわけ?)
女上司(ショックすぎる……)ハァ…
男「課長、どうしました?」
女上司「えっ……いえ、あの……」
男「悩みがあるなら聞きますよ。今夜、バーにでも行きません?」
女上司(悔しいけど、悩める女への対応も完璧だわ)
男「どうぞ、俺のオススメカクテルです」
女上司「ありがとう」
女上司(甘くておいしい。カクテルのチョイスもミスってない……)
男「で、悩みがあるなら聞かせて下さいよ」
女上司「……どうして?」
男「え」
女上司「どうしてそんな完璧な部下になっちゃったの?」
女上司「どうしてミスしてくれないのぉ!!!」
男「なにいってるんです。ミスをしないことのどこが悪いんですか?」
女上司「なにも悪くない。でも……でも!」
女上司「おかげで私は君に未だにキスできないでいる!」
男「!」
女上司「君がミスをしなくなったのは、私がミスするたびにキスするねっていった時からだった」
女上司「これって私にキスされたくないから、必死に頑張ってるってことだよね?」
女上司「ねえ、そんなに私にキスされるのは嫌? 嫌ならはっきりといって!」
男「……」
男「やだなぁ、逆ですよ」
女上司「逆?」
男「あなたからのキス……俺にとっては願ってもない話です。喉から手が出るほど欲しい」
男「だからこそ……それを“ミスをしたから”なんて形で受け取りたくはなかった」
男「だから俺は……必死で努力したんです」
男「絶対ミスをしないようにと……ミスしない部下になろうと……」
女上司「ホント……?」
男「ええ、ホントです」
女上司「よかったぁ……」グスッ
女上司「私、てっきり君がそんなに私のことを嫌いなのかと……」
男「そんなわけないじゃないですか!」
男「あなたのことは、入社した時から憧れてましたよ!」
女上司「ありがとう。褒め言葉までミスがないんだから」
男「あ、だけど……どうやら俺は一回キスをしてもらわなきゃならないみたいですね」
女上司「へ? なんで?」
男「だって……“課長の女心を読み取れなかった”というミスを犯してしまったのですから……」
女上司「……」
女上司「いや……キスは二回ね」
男「二回? どうしてです?」
女上司「だって……今の台詞は流石にくさすぎるもん」
男「す、すみませぇん!」
おわり