1 : VIPに... - 2013/05/09 11:52:52.52 Hdm/oquGo 1/154

佐久間まゆ「はい」

「? どうして急に、そんな話…」シャリシャリ

まゆ「深い意味はありませんけど…読んだ本にそんな話があったので、聞いてみたんです」

「……うーん。そうだな」

「いや、別に変えたい過去があるとか…っていうこともないしな。たぶん使わないと思うけど」シャリシャリ

まゆ「そうですかぁ?」

「あ、なんだったら子どものころのまゆを見に行ってみたいな。それくらいなら、怖いことも起きないだろうし」

まゆ「ふふ? ひょっとすると、まゆは幼いころにPさんに出会っていたのかもしれませんねぇ…?」

(やっぱ怖いこと起きそうだった!)ゾク

元スレ
モバP「タイムマシンがあったら?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368067972/

3 : VIPに... - 2013/05/09 11:57:48.11 Hdm/oquGo 2/154

「ひょっとして」

まゆ「?」

「この前持って来た本は、もう全部読んじゃったのか」

まゆ「ええ。一人きりでいると、退屈ですから、けっこうすいすい読んじゃいますねぇ」

「そっか。じゃあまた明日にでも新しいのを持って来るな」

まゆ「はい」ニコ

「ちなみに、どんな本がいい?」

まゆ「…えっとぉ…お料理とか、編み物の本がいいですかねぇ…」

4 : >>2 そのまゆ好き。ありがとうです。 - 2013/05/09 11:59:39.91 Hdm/oquGo 3/154

「そっか。まゆはやっぱり、料理とか好きなんだな」

まゆ「はい♪ いつだってPさんにご馳走できるように、ちゃんと勉強しておかないといけませんから」

「お、おう。楽しみにしておくよ」

まゆ「あ、でも…別にPさんがまゆのために選んで持って来てくれるのなら、どんな本でも構いませんよぉ…?」ニコ

「そ、そうか…」ハハ…

まゆ「はい。ふふ…」
まゆ「あ、そうだ」ポン

「ん?」

まゆ「その…今はお料理はさすがに無理ですけど、編み物ならできるので…」ガサ
まゆ「これ、Pさんのために編んだんですよぉ」

(…この時期にセーターかよ…)

5 : VIPに... - 2013/05/09 12:01:45.05 Hdm/oquGo 4/154

「あ、ありがとう」ハハ…

まゆ「まだ少し肌寒いですからねぇ。それに」

「ん?」パサ

まゆ「それを着て感じる暑さは、私の愛情のしるしですからねぇ…? たっぷり感じてくださいね…ふふ」

「…うん。ありがとな」ガサ

まゆ「はい♪」

6 : VIPに... - 2013/05/09 12:03:45.79 Hdm/oquGo 5/154

コンコン


「ん」

まゆ「? この時間だと、もしかするとー…アイドルの子かもしれませんね」

ガラ

神谷奈緒「お、元気そうだなー」

北条加蓮「ほんとだ。おはよう、まゆ」

まゆ「はい。おはようございます」

奈緒「ついででごめんな。プロデューサーを拾いがてらなんだ」

まゆ「全然いいですよぉ。こうして来てもらえるだけで、嬉しいですから」

(まゆはいい子や…)

7 : VIPに... - 2013/05/09 12:06:54.40 Hdm/oquGo 6/154

加蓮「今朝は顔色もよさそうだね」

まゆ「はい♪ ご飯もちゃんと食べましたし…なによりPさんが来てくれましたから」ニコ

「…ごめんな、本当はずっと一緒にいてやりたいくらいなんだが…」ナデナデ

まゆ「ふふ。仕方ないですよぉ。Pサンは、みんなのプロデューサーですもんねぇ」ナデナデ

「…お前も俺を撫でるのか…」

まゆ「ふふ♪ いつもお疲れさまです」ナデナデ

奈緒「なんか情けない絵面だなー」

「うるさい。自分も撫でて欲しいからって突っかかって来るんじゃない」ナデナデ

奈緒「ばっ// そ、そんなこと思ってねぇよ!」//

まゆ「♪」

9 : VIPに... - 2013/05/09 12:09:31.48 Hdm/oquGo 7/154

「よし。じゃあまた明日来るからな。仕事、行って来るよ」

まゆ「はい。気をつけて行ってくださいねぇ」

加蓮「夫婦みたいな会話だね」ハハ

奈緒(…ち、ちょっとだけ羨ましかったり、しないからなー)

「っと。リンゴ、切ったからな。よかったら食べてくれ」コト

まゆ「はい、大事に食べますねぇ」

奈緒「でこぼこじゃねえかよ」

「う、うるさいな!」

まゆ「いいんですよぉ。Pさんが、私のために頑張ってくれたって、伝わって来ますから」

「…そっか」

加蓮(まゆはいい子だね…)

10 : VIPに... - 2013/05/09 12:12:03.46 Hdm/oquGo 8/154

ガラ

看護師「佐久間さーん。検温、いいですかー」

まゆ「はい」

「じゃあな」

まゆ「はい♪」

11 : VIPに... - 2013/05/09 12:14:32.44 Hdm/oquGo 9/154

「よし。じゃー今日も仕事、頑張るか!」

奈緒「現場に行ったら頑張るのはあたしらだけどな」

加蓮「プロデューサーも、アイドルする?」

「しねえよ!」



「……」

「…タイムマシン、か…」

加蓮「? なにか言った?」

「あ、いや…なんでもないよ」

14 : VIPに... - 2013/05/09 20:46:07.55 oQNjISBp0 10/154

奈緒「タイムマシンがあったら?」

「うん」

奈緒「…いや…別にどうもしねえけどさ…」

「そうか?」

奈緒「あ、でもこう…戻れるんだったら、ちょっと過去に戻ってみてえかな、…昔のアニメを、リアルタイムで見たい」

「はは、健全でかわいい使い方だな、奈緒らしいよ」

奈緒「あぁ? な、なにが可愛いんだよ!」//

「普通、タイムマシンときたら、過去を変えようとか…いろいろ思いつくもんじゃないか?」

15 : VIPに... - 2013/05/09 20:56:22.14 oQNjISBp0 11/154

「加蓮はどうだ?」

加蓮「私? 私も別に… 」ギュ

加蓮「変えたい過去なんて、ないかな」

「…そうか」

加蓮「うん。過去を変えようなんて…プロデューサーと、奈緒と、…凛に支えられて頑張って来た今の私に、失礼だと思う」

「…そっか」

奈緒「ほ、ほら見ろ。あたしなんかよりよっぽど加蓮の方が、真面目だし可愛いじゃねえか」

加蓮「ありがと。でも奈緒も十分可愛いよ」

「うむ」

奈緒「な、二人してなんだよぉ…」

16 : VIPに... - 2013/05/09 21:02:12.51 oQNjISBp0 12/154

「…まあ…そうだよな…」


ふつう、タイムマシンなんてものを使う機会が与えられたとして――自分の過去をどうかしよう! なんて方がおかしいよな。

まして、二人に限らずうちの子たちはみんなまじめだし。


…そうだよな。


だから、「タイムマシンがあったら」なんて質問自体、思いつくってことは――それは、つまり……


加蓮「プロデューサー?」

「…ん?」

加蓮「どうかしたの? なんだか、青い顔して…考え込んでる風だけど」

奈緒「はっ。さては…なにかタイムマシンが欲しくなるような失敗でもしちゃったか」

「…してねぇよ」ハア

「何でもない。心配させて悪かったな。さ、今日も元気に行くぞー!」

加蓮「さっきも同じようなこと言ってたよ?」

奈緒「いつもに増して今日は変だな」

「いつも変だと思われてるのか、俺…」

17 : VIPに... - 2013/05/09 21:08:43.50 oQNjISBp0 13/154

つまり、


まゆにはなにか、変えたい過去があるのだろうか。


俺と出会わなければよかった?

それとも――……



「心配いりませんよぉ、Pさん」
「私は……なにも後悔なんてしてませんから」



やはり、あのときの笑顔は嘘だったのか?

20 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/09 23:34:21.97 uduWLCIDO 14/154

「お」

渋谷凛「遅い」

「悪い悪い。でもまだ時間には間に合ってるだろ?」

「そういう問題じゃない。早め早めの行動は社会人の常識でしょ?」

「…すまん」

奈緒「プロデューサー怒られてやんの」ププ

「奈緒も同罪」

奈緒「あ、はい」

21 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/09 23:41:09.82 pSd+kuheo 15/154

加蓮「凛。なにも怒ることはないんじゃないかな」

「…」

加蓮「…ねえ、何とか言ってよ…」

奈緒(…朝から嫌な雰囲気だな、おい)

「お、おいおい。アイドルが現場でする顔じゃないぞ、三人とも」

「俺が悪かった。まゆのところでのんびりしすぎたんだ、すまん」

「…」

「…プロデューサーは悪くないよ」プイ

スタスタ

加蓮「…凛」

奈緒「……最近、凛のやつ、いらいらしてんなー…」ショボン

「…そうだな」

「凛のこと、頼んだぞ。お前たちで支えてやってくれ」

奈緒「おう」

加蓮「もちろん。言われるまでもないよ」

「そっか」

22 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/09 23:50:44.23 uduWLCIDO 16/154

ガチャ

「戻りましたー」

千川ちひろ「あ、プロデューサーさん。送迎お疲れさまです」

ちひろ「…まゆちゃんの様子、どうでしたか?」

「…」ギシ

「元気そうでしたよ。ただ、やっぱり退屈みたいですね…見て下さいよ、ほら」ガサ

ちひろ「…わ、手編みのセーター…これ、プロデューサーさんに?」

「ええ。嬉しいような、恥ずかしいようなって感じですが」ポリポリ

23 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/09 23:55:07.48 pSd+kuheo 17/154

ちひろ「……まゆちゃんにしては…拙いセーターですね…」

「…ですね…」パサ

「…けど、こんな風に編み物ができるようになっただけ…奇跡的だと、言ってましたね。担当医の方は」

ちひろ「…そうですか」

「……」

(…アイドルに復帰できるかと聞くと、…なにも答えてはくれなかったですけど)

24 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/09 23:58:43.28 uduWLCIDO 18/154

「…そうだ。ねえちひろさん」

「もし、タイムマシンがあったら、どうします?」

ちひろ「……タイムマシン――…ですか」

「ええ。…まあ、「宝くじが当たったら」と同じレベルの…戯言ですけど」

ちひろ「…そうですねぇ」

ちひろ「ふふ、事務所のみんなが上手く行くように…なんて思いますけど、野暮ですよね。きっとなにもしないと思いますよ?」

「…そう、ですよね」

ちひろ「はい」

ちひろ「…まさかプロデューサーさん、タイムマシンでなにかやましいことでもしちゃったんですか?」

「ま、まさか。そもそもタイムマシンなんてあるはずないじゃないですか」ブンブン

ちひろ「そうですね」フフ

(…そうだ)

25 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 00:00:04.54 B5t6BhTMo 19/154



タイムマシンなんてない。


この世には取り返しのきくことはあっても取り消しのきく現実はない。


……あほなこと言ってないで、仕事、するか。まゆのためにも。

29 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:10:18.86 HM/fgzlro 20/154

コンコン

まゆ「どうぞぉ」

ガラ

「おはよう。体調はどうだ?」

まゆ「あっ…Pさん、そろそろ来てくれる頃だと思いましたよぉ」ニコ
まゆ「Pさんのお顔が見れたので、まゆは今日もとっても元気です」

「そっか」ハハ

30 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:18:00.98 pPub33+DO 21/154

ガサ

「いろいろ持って来たぞ」

まゆ「わあ…ありがとうございます」
まゆ「? …なんだか、色褪せた本も、いくつかありますねぇ」

「あ、ああ。ごめんな。新品の本は料理本くらいで…」ハハ…
「時間がなくてさ。家にあるのをいくつか引っ張り出して来たんだ。まゆは、古本とか読めないタイプだったか?」

まゆ「…。ふふ」

31 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:23:47.16 HM/fgzlro 22/154

ギュ

「…まゆ?」

まゆ「…そんなことないですよぉ」
まゆ「ありがとうございます。まゆ嬉しいです。この本には…Pさんを感じることができますから…」

「…そっか。喜んでくれたなら、なによりだ」

まゆ「はい♪」

32 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:32:00.21 pPub33+DO 23/154

「ちなみに、…いくつか、SF系の小説も混ぜてあるぞ」

まゆ「SF…ですか」

「ああ。タイムマシンの話、しただろ? ひょっとしてなにか興味があるんじゃないかって」

まゆ「…Pさん、まゆのために気を遣ってくださったんですねぇ…嬉しいです」

「そんな大げさなもんじゃないけどな」

まゆ「そんなことないですよぉ」フルフル

33 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:36:57.27 HM/fgzlro 24/154

「よしっと。じゃ、そろそろ行くな」

まゆ「はい。いつもありがとうございます」
まゆ「…あの、Pさん…」

「ん?」

まゆ「……ぁ…」
まゆ「…ふふ。何でも、ないです」

「…そうか?」

まゆ「はい。また来てくださいねぇ」

「おう。じゃあな」

パタン

まゆ「…」フリフリ

まゆ「……Pさん、まゆは、」

まゆ「…どうすれば…どうしたら、よかったんですかねぇ……」

34 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:41:28.16 pPub33+DO 25/154

ガチャ

「戻りましたー」

「あ」

「あ?」

「…」

「…」



事務所に戻ると、いたのは凛一人で――

なぜか彼女はきぐるみを着ていた。

35 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:44:38.62 HM/fgzlro 26/154

「…」

「…」
「にっ」

「?」

「にゃー!」

「!?」

36 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:48:33.53 pPub33+DO 27/154

「…にゃ、にゃー…」

「…凛……それって、ペンギンかなんかじゃないの…?」

「…だと思う」

「だよな」

「…」

「くっ、くぁー!」バサッ

「…もう遅いぞ…」

「…うん」パタ

37 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:54:19.11 HM/fgzlro 28/154

「…」

「…」


「…えっと」

「…どうして、ペンギンのきぐるみを着てるんだ?」

「いろいろあって」

「気になるなぁ」ニヤニヤ

「にやにやしないで」ガシガシ

「いてっ、こら、くちばしで叩くんじゃない」ガスガス

38 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:57:54.25 pPub33+DO 29/154

「も、もう。このことはこれ以上聞くの禁止」

「はい」イテテ

「じゃ」ピッ

「羽を掲げても決まってないぞ、可愛いだけだぞ」

「ありがと」ヨチヨチ

(ぺんぎんりん、これは売れる)カワイイ…

39 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 08:59:38.15 HM/fgzlro 30/154

「きぐるみ系アイドルか…うむ…」ブツブツ

「なに言ってるの」

「今の姿のお前に言われたくはないな」

「…何でもいいけど」
「と、とにかく。この格好のことは誰にも言わないで。いい?」

「お、おう。それは別に構わないが…」

「それじゃ」ヨチヨチ

「なぜ頑なにその姿で帰ろうとする」

40 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 09:00:31.44 pPub33+DO 31/154

「ちょっと安心したよ」

「ん?」

「…なんだか、こんな風に…凛と他愛もなく喋れたの、久し振りな気がして」

「……。そうだね」
「ねえ」

「どうした?」

「…今朝も、まゆのところへ行ってたの?」

「…ああ」

「…そっか」

41 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 09:01:17.56 HM/fgzlro 32/154

「…じゃあね、プロデューサー」
「“またね”」

「おう」

「…」ヨチヨチ

(やっぱりそのまま帰るのか…)

42 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 09:03:50.30 pPub33+DO 33/154

パタン

「…あ」

「そうだ、なあ凛、奈緒と加蓮の二人は――」ガチャ

「…あれ…いない」

奈緒「お? プロデューサー、どうかしたか?」ヒョコ

「おっと奈緒か。お疲れさま。…えっと、…ペンギンを見なかったか?」

奈緒「はあ??」

「悪い、なんでもない…」
(あんな身動きの取り辛い格好で…いつの間に?)

奈緒「ついに頭やっちゃったか…」

「やってねえよ」

47 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 11:59:33.48 V9vDk8peo 34/154

「それでは、お疲れさまでした」

ちひろ「はい。お気をつけて」

「…」ペラ

「凛はまだ残るのか?」

「…」

(…無視か)
(昼間あんなことがあったから、無愛想にされるにしてもなにか変化があるかと思ったが…これは普通に触れてはならないタイプの無愛想だな)ウン

「ねえ、プロデューサー」

「ん?」

「…今日、いつもより早い気がするけど。なにか用でもあるの?」

48 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 12:00:52.57 V9vDk8peo 35/154

「ああ。本屋に寄って帰るつもりだから」
「なにかまゆが興味のある本はないかなと思ってな」

「…っ、そう」ズキ

「おう」

「…プロデューサー、…最近まゆに気、遣いすぎだと思う」ハア

「そうか?」

「仕事はちゃんとやってる?」

「やってるよ。はは、アイドルに心配されるなんて…情けないな、俺」

「そんなことないよ」

「そっか。ありがとう」

「…」プイ

49 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 12:01:40.81 V9vDk8peo 36/154

「じゃあな。また明日」パタン

「…うん」

加蓮(…凛…)







(…お、タイムマシンが本当に可能かどうか、なんて本もあるのか…)
「…こういう本も、案外ありかな。小説ばかりでもつまんないだろうし…」パラパラ

??「おや。こんなところで会うとは奇遇ですね」

「ん?」

50 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 12:03:16.11 V9vDk8peo 37/154

「なんだ幸子か」

輿水幸子「なんだとはなんです。というかですね、プロデューサーさん」

「なんだ」

幸子「ボクが声をかけるまで気づかないなんて、どうかしているんじゃないですか?」
幸子「もっとボクの可愛いオーラにちゃんと気を張ってください! 本来、そんなことしなくても感じ取れるくらいボクは可愛いはずです」

「…悪い悪い」
「あ、なんか可愛い感じがするなーとは思ったんだけどな」

幸子「あ、そうですか?」

「ちっちゃいから気づけなかった」

幸子「なー!?」

51 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 12:03:54.70 V9vDk8peo 38/154

幸子「もう! プロデューサーさんなんて知りません!」プイ
幸子「…ところで、なんの本ですか? それ」ヒョコ

「発言と行動が一致してないぞ…」

幸子「……タイムマシンは本当に可能か…」
幸子「へえ。プロデューサーさんは、なかなかロマンチストだったんですね。悪くないと思いますよ」

「そうか?」

幸子「ええ。誰にだって変えたい過去くらいあるでしょうしね。それに想いを馳せることは普通のことです」

52 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 12:05:59.39 V9vDk8peo 39/154

「…」
「なあ、幸子」

幸子「はい?」

「…お前にも、なにか、変えたい過去はあるか?」

幸子「…。ええ。ありますよ」
幸子「でもそんなことはできないですし、すべきでもないでしょう」

「…うん」

幸子「だからと言って、そこから逃げるべきでもないと思いますが」

「逃げる?」

幸子「はい。「どうせ変えられないから」ではなく、「例え変えられるとしても」が、人には必要な心構えだとボクは思いますね」

「…そうだな」

53 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 12:06:54.36 V9vDk8peo 40/154

幸子「…なので、アリのようにせっせと努力するプロデューサーさんは、この可愛いボクが応援してあげます」

「アリて」

幸子「頑張ってください」

「お、おう。…なんだかよく分からないが…」

幸子「まったく、こんなことも分からないなんて…プロデューサーさんはだめだめですね、ふふっ」

「すまん」

54 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/10 12:07:28.52 V9vDk8peo 41/154

幸子「では、ボクはこれで」

「ああ。…幸子」

幸子「はい?」

「ありがとうな」

幸子「…いえ。ボクはカワイイですからね! このくらい当然です!」フンス

「そっか」

幸子「…」
幸子(…最近のプロデューサーさんの顔を見て…気を遣わない子なんて、うちにはいないですって)

「また明日」

幸子「はい」

55 : VIPに... - 2013/05/10 12:07:56.40 V9vDk8peo 42/154

パラパラパラ…

「むう…なかなか、どれも面白いじゃないか…」
「…何冊かに絞らないとな。きりがないし」パラ

ヒュ

「…っと、しおりが…」

ヒラ、ヒラ…

「よっと」パシ

56 : VIPに... - 2013/05/10 12:08:40.92 V9vDk8peo 43/154

「…」
「…なんだこれ。きぐるみの宣伝か? “…タイムマシン、あります”…」
「……」







店員「ありがとうございましたー」

ガサ

「…結局、なんだか気になって…最後に手に取ったやつも買ってしまった」
「内容は普通の本のようだが…このしおり…」ピラ

57 : VIPに... - 2013/05/10 12:09:26.90 V9vDk8peo 44/154

“タイムマシン、あります”

きぐるみの山がプリントされたしおりに、ただ一言、地味なフォントでそう書かれていた。



そんなわけない。

…と思いつつ――期待してしまう自分がいる。


タイムマシンがあったら。


…最近、こんなことばかり考えてるな、俺…。
もうあれから、ずいぶん時間が経ったのに――


??「もふもふ」

58 : VIPに... - 2013/05/10 12:09:59.78 V9vDk8peo 45/154

「そこのおにーさん」
「そこのおにーさん♪」


奥の見えない、暗い路地裏から声がした。
そんな場所には似合わない明るい声が、二つした。


「?」

??「タイムマシンが、ごいりよーでごぜーますか?」

「……は?」

63 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 00:09:01.03 9EdC2tcFo 46/154

「…きみは?」

??「名乗るほどの者ではごぜーません」
??「安心してください。なので、おにーさんの名前を聞こうというつもりも、ないでごぜーます」

「…はあ」

??「タイムマシンがごいりようでやがりますか?」

「……」
「押し売りかなにかかい?」

??「まっさかー♪ こんな女の子二人が、そんなことしてるってホントに思う?」キャハ

「…そういう、油断させるやり口かもしれない」

??「おにーさんは用心深いですね」

??「うーん。そんなに眉に、こう、うーって皺寄せてると、疲れちゃわない? おにーさん、ちゃんと運動してる?」

「運動がなにか関係あるのか?」

??「うんっ。ちゃんと運動している人は、もっとさっぱりした顔になるよっ」

(…一理あるかも)

64 : VIPに... - 2013/05/11 00:12:52.81 9EdC2tcFo 47/154

「…べつに…運動不足だから、こんな顔になってるわけじゃないよ」

??「なにかお悩みでやがりますか」

「ああ。夜道で女の子二人に話しかけられて、なにか偉い人に怒られやしないかとびくびくしているところだよ」

??「わー。それは大変だねー♪」

「…」ハア
「もういいかい?」

??「いえ。おにーさんは、まだ質問に答えやがってません」

「…」
「タイムマシンなんていらない」

??「…………」
??「そうでごぜーますか」

65 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 00:16:40.32 9EdC2tcFo 48/154

ペコ

??「もし必要になったらいつでも」

??「ご来店お待ちしてますー♪」フリフリ

「…いよいよなにかに引っ掛かりそうな発言だな、それ…」
「…気をつけて帰るんだよ」

??「ありがとっ優しいおにーさん♪」

??「どうもでごぜーます。では、また」

????「「もふもふ♪」」

66 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 00:43:31.32 9EdC2tcFo 49/154

「…――さん…」

まゆ「プロデューサーさん?」

「ん」

まゆ「どうかしましたかぁ?」

「……。俺…」
「いま……っ」

まゆ「…大丈夫ですかぁ? なんだか…顔色がよくありませんよ…」ナデナデ

「…ん」フラ
「悪い…はは、まゆのお見舞いに来たはずなのにな、俺…」

まゆ「いいんですよぉ」
まゆ「…お疲れみたいですね。…無理は、しないでくださいねぇ」

「…うん…ありがとう」

68 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:05:50.40 kcw7nKhGo 50/154

「…――さん…」

まゆ「Pさん?」

「ん」

まゆ「どうかしましたかぁ?」

「……。俺…」
「いま……っ」

まゆ「…大丈夫ですかぁ? なんだか…顔色がよくありませんよ…」ナデナデ

「…ん」フラ
「悪い…はは、まゆのお見舞いに来たはずなのにな、俺…」

まゆ「いいんですよぉ」
まゆ「…お疲れみたいですね。…無理は、しないでくださいねぇ」

「…うん…ありがとう」

69 : 連投失敬。 ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:07:41.44 Td5Ms2WDO 51/154

まゆ「…」

「…どうかしたか?」

まゆ「…いえ…Pさんは、…優しいなって」

「そんなことないよ」
「…まゆは大切な、俺のアイドルだから」

まゆ「…」ニコ


「ありがとう。プロデューサー」


―――グラッ…


「ぐっ」

70 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:11:32.60 kcw7nKhGo 52/154

「…――サー…」
「プロデューサー?」

「…んっ…」ハア

「…大丈夫? また、眩暈がするの?」

「…ああ、悪い…はは、見舞いに来ているのは俺の方なのに…心配されるなんて、情けないな」

「…ううん。そんなことないよ」
「ありがとう。…ごめんね、いつも、私のために…」

71 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:12:44.37 Td5Ms2WDO 53/154

「…そんなことないよ」


「――凛は、俺の大切なアイドルだからな」

72 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:18:24.76 kcw7nKhGo 54/154

まゆ「……え?」

「……」
「……いま、俺なんて…」

まゆ「…ふふ」
まゆ「Pさんってば、本当に疲れているみたいですねぇ」

ポス

「ちょ…まゆ」

まゆ「まゆの胸で、ゆーっくり、休んでください」

「……ありがとう」
「さすがに、ちょっと恥ずかしいが…」ハハ

まゆ「ふふ♪」

73 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:22:42.02 Td5Ms2WDO 55/154

「じゃあ…な、なんかごめんな。逆に慰めてもらっちゃって」ナサケナイ…

まゆ「いいんですよぉ。まゆは、いつだってPさんの味方ですから」

「…うん」

まゆ「…」
まゆ「…あの、Pさん」

「ん?」

まゆ「…凛ちゃんは、どうしていますか?」

「凛か?」
「…いつも通り、クールな顔して仕事こなしてるよ。さすがって感じだ」

まゆ「…そう…ですか」

「ああ。だからまゆも、早く元気になって、またアイドルしような」

まゆ「…はい」ニコ

74 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:26:18.09 kcw7nKhGo 56/154

ガチャ

「戻りましたー」

「…」

「…って、おい」
(ぺんぎんりん、再び)

「…」

「…お前、ひょっとして…その格好、はまってんのか?」

「…」

「? …凛?」

75 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:30:52.79 Td5Ms2WDO 57/154

ガバッ

「うえ!?」

「…ぷ、…プロデューサー…会いたかったよ」ギュウ

「は? な、どうして急に。なにかあったのか?」

「…」ギュー

「…おーい。凛ってば」

「……お願い」
「…もう少しだけ…こうして、いさせて…」

「……あ、ああ」

76 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:36:05.55 kcw7nKhGo 58/154

「ごめんね。ありがとう」パッ

「…どうかしたのか? なにか、悲しいことでもあったか」

「……うん」
「とっても、悲しいことがあったんだ」

「…そっか」

77 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:40:30.74 Td5Ms2WDO 59/154

「…ありがと。じゃあ、もう行くね」

「あ、ああ」
「…えっと…なあ、凛」

「ん?」

「…なにがあったか、無理には聞かないけど…」
「頑張ってな。俺、凛のこと、信じてるから」

「…」クス
「うん。ありがと、プロデューサー」


「じゃ、“またね”」

78 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:43:01.56 kcw7nKhGo 60/154






ガチャ

加蓮「…」

「お、加蓮か。お疲れさま」カタカタ…

加蓮「…」

「…加蓮?」

加蓮「…ねえ、プロデューサー」
加蓮「話があるんだけど」

79 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:48:54.68 Td5Ms2WDO 61/154

「…凛が…失敗?」

加蓮「うん。けっこう派手にやっちゃって…まあ、収録はなんとかなったんだけど」

「……そうか」
(さっき泣いてたのは…そういうことだったのか)

加蓮「プロデューサー」

「うん?」

加蓮「凛が失敗したのは、どうしてだと思う?」

「……どうしてだ?」

加蓮「…」ハア

80 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:53:00.87 kcw7nKhGo 62/154

加蓮「プロデューサーのせい」

「…え?」

加蓮「…あのさ、私だってこんなこと――言いたくないけど…」
加蓮「もう、まゆのところに行くのはやめて」

「…どうして」

加蓮「どうしても」
加蓮「…その理由くらい…分かってよ…」ギュ

「……」

81 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:56:39.64 Td5Ms2WDO 63/154

加蓮「私はまだいいけど。凛がどんな気持ちか、プロデューサーには分かる?」

「…それは、…」

加蓮「…私だって、まゆのこと…嫌いになりたくない」
加蓮「お願いだよ、プロデューサー…」

「…」

82 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:57:37.11 kcw7nKhGo 64/154

分からない。


俺は、なにか間違っていたんだろうか。


そんなことを漠然と考えながら、ふらふらと歩いていると、見覚えのある交差点に足は向いていたようだった。

83 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:58:14.84 Td5Ms2WDO 65/154

鼻先を轟音とともにトラックがかすめて行く。



俺は間違っていたんだろうか。
タイムマシンがあったら。あるなら。
俺はやり直すべきなのだろうか。



「タイムマシンがあったら」
「Pさんは、どうしたいですかぁ?」




まゆは。
ここで俺を庇ったことを、後悔しているのだろうか。
それは彼女の変えたい過去なのだろうか。

84 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 02:59:03.99 kcw7nKhGo 66/154

「…ん?」


呆然と立ち尽くしていると、車椅子を必死に手こぎで進める少女に気がついた。
見覚えのある後ろ姿だが、思えば、もうしばらく彼女の後姿を目にしていなかった。


「…まゆ…?」

まゆ「…んっ」


信号が点滅する。
まゆは構わず懸命に手を滑らせる。

信号の点滅が終わる。
まゆは構わず、横断歩道の真ん中で手をとめる。


「…おい、…おい!」

85 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 03:00:20.08 Td5Ms2WDO 67/154

まゆっ!


意識せずそう叫び、走り、車椅子を押し倒すようにして乱暴に跳ねのける。


ガシッ


その瞬間には、自分の身体が、車に跳ねられたのか、ただ地面に落ちただけなのかが分からなかった。
ただ視界がチカチカ明滅し、額にぬるりとした感触が伸びる。


まゆ「…Pさん…どうして…」


どうしてもなにもあるか。
俺はお前のプロデューサーだぞ。助けるに決まってる。


そうしっかりと言葉にできたかどうかは、あまり自信がない。

86 : 寝ます。 ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 03:02:01.12 kcw7nKhGo 68/154

ガツン


車椅子が倒れた音がした。


「……凛…?」


誰かが、誰かを激しく叱責する声。


あんたのせいで。
あんたがいなければ。
…どうしてあんたが!


……。



分からない。

……俺は…間違って…。

88 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 11:15:00.01 ZdXK+1eao 69/154

「――さん…」
「プロデューサーさん!」

「はっ」

ちひろ「本当に、プロデューサーさんは病院に行かなくて大丈夫ですか?」

「……え?」

ちひろ「…たしかに、ちょっとした打撲くらいかもしれませんけど、脳の方とか、大事を取って診て頂いた方が…」

「……」ソーッ
(…あれ…頭を打って、血が出てたと…思ったんだが…)

89 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 11:19:48.41 Td5Ms2WDO 70/154

ちひろ「プロデューサーさん?」

「…あ、いえ…だ、大丈夫です。ちょっと眩暈がするくらいで…」
「そ、それよりまゆは? 無事ですか」

ちひろ「え、ええ。もう病院に戻りましたよ」

「そ…ですか」ズキズキ
「…ぐぅ」

90 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 11:22:39.43 ZdXK+1eao 71/154

(くそ…頭が、痛い)
「…そうだ…あの、凛は」

ちひろ「…奥の部屋にいると思います」
ちひろ「プロデューサーさんから、声をかけてあげてください」

「ええ」

91 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 11:24:45.07 Td5Ms2WDO 72/154

コンコン

「…凛」

「……」

「…」
「大丈夫か」

「……なんで?」

「?」

「…私、まゆにひどいことしたんだよ…?」
「なのに、どうしてそんな風に声、かけられるの?」

92 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 11:26:15.62 ZdXK+1eao 73/154

「…凛だって、俺の大切なアイドルだよ」

「ウソ」

「嘘じゃない」

「ウソ!」ガシャン!

「…」

「じゃあ…ねえプロデューサー」スス

「お、おい」

93 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 11:29:02.39 Td5Ms2WDO 74/154

「もうまゆのことは見ないで」

「……だから、二人とも…」

「プロデューサー、まゆしか見てない」

「…そんなことないって」

「…っ」ギリ
「…なんで? どうして?」ポタ

「プロデューサーを助けたのは、私なのに…」

「…え?」
「…俺を…助けた?」  ――ズキッ…

ドンッ

「っ」ドサ
「お、おい、凛――! がぁ…っ」ズキン

94 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 11:34:09.39 ZdXK+1eao 75/154

凛は、俺を突き飛ばし部屋を飛び出した。
その背中を目で追う間に、一層頭痛が激しくなる。


記憶が混濁する。

いくつもの記憶が溶ける。

なにがホントウか分からなくなる。


なあ、凛お前、もしかして。

タイムマシンを使ったのか。

96 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 17:37:53.33 3liXompYo 76/154

凛を追い、再びふらふらと街をさまよった。


今度足が向いたのは、まゆが入院している病院だ。



「プロデューサー、まゆしか見てない」



凛に言われたそんな台詞が、ぼんやりと頭の中で再生される。

…たしかに、そうなのかもしれない。

97 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 17:44:41.90 Td5Ms2WDO 77/154

まゆ「…P…さん」

「…やあ」


だからベッドに横たわるまゆが、嬉しそうじゃなく辛そうに俺を迎えることに、息が止まる。


頼むよ。
そんな顔しないでくれ。

まゆまで、凛と同じような目で俺を見ないでくれ。


「どうだ、調子は」

まゆ「……」

98 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 17:45:22.42 3liXompYo 78/154

「まゆ?」

まゆ「…あの、Pさん…」

「ん?」

まゆ「…もう、まゆのところへは来ないでください」

「…」
「どうして?」

まゆ「……私、もう…これ以上Pさんに、辛い思いをして欲しくないんです」

「…俺はまゆのところへ来ることを、辛いだなんて思ってないよ」

まゆ「…」ニコ
まゆ「Pさんは、本当に優しいですねぇ」

99 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 17:46:54.39 Td5Ms2WDO 79/154

まゆ「そんなあなたが、私は大好きでした」

「…」


やめてくれ、


まゆ「けど、もういいんです」


それ以上は、


まゆ「…だってPさんは、ただ私のことを――」

「…やめてくれ…」

まゆ「かわいそうだと思っているんですよねぇ…」

「そんな風に思ってなんかない!」


……もうなにも言わないでくれ…。

100 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 17:47:42.41 3liXompYo 80/154

まゆ「…」

「…すまん」
「…今日は、…もう帰るな」

まゆ「…はい」

「……なあ、まゆ」

まゆ「はい」

「タイムマシンがあったらさ、…まゆはどうする?」

まゆ「……どうもしません」
まゆ「まゆはただ、いつだってPさんが幸せでいてくれるなら、いいんですよぉ」

101 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 17:48:20.13 Td5Ms2WDO 81/154

事務所に戻る。


…まゆにとって、俺の存在は負担だったのだろうか。


…だったのだろう。
それこそ、自殺しようと思うくらい。



――俺は一体、…どうしたらいいんだろう。どうすべきだったんだろう。

102 : 夜にまた。 - 2013/05/11 17:49:00.93 3liXompYo 82/154

タイムマシンがあったら?


そんな下らない幻想にすがるくらいに、俺は追いつめられていた。


????「「もふもふ♪」」


だから再び彼女たちに会う。


??「また会いやがりましたね、おにーさん」

??「変えたい過去があるのカナ?」

105 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 23:24:02.96 PK3GhWXpo 83/154

「…やあ」

??「あー。おにーさん、だめだね。また辛そうな顔してるよー」
??「やっぱり運動不足かな。どう? アタシ、バドミントンが好きだから、今度一緒に――」

??「もふ」
??「??おねーさん、それではタイムマシンの売り込みができねーでごぜーます。おにーさんの弱みに付け込まないと」

「それは俺に言ってもいいのか、おい」

??「そっかー」ショボン

??「もふ」

「ところでさっきから、それは咳払いなのか?」

??「もふー♪」

106 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 23:30:41.59 Td5Ms2WDO 84/154

??「…というわけで」
??「大切な人を傷つけ、同じくらい大切な人に拒絶されてしまった、おにーさん」

「…直球だなぁ」ハハ…

??「辛いよね」

??「分かるでごぜーます」

??「変えたい過去なんて誰にだってあるよ」

??「そう思うことも、与えられた機会を利用することも、悪いことではごぜーません」

??「誰も怒らないよ♪」

??「はい」

??「だから、ね?」

「…」

107 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 23:42:56.71 PK3GhWXpo 85/154

??「使っちゃう?」

「…」
「…俺は、…」

108 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 23:43:34.46 Td5Ms2WDO 86/154

――タイムマシンがあったら?



「過去を変えようなんて、――今の私に、失礼だと思う」

「きっとなにもしないと思いますよ?」

「そんなことはできないですし、すべきでもないでしょう」
「例え変えられるとしても」



「どうもしません」
「ただ、いつだってPさんが幸せでいてくれるなら」



俺は――

109 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 23:48:45.99 PK3GhWXpo 87/154

「……」

??「…」

??「おーい。おにーさん?」

「…なあ」

??「ン?」

「…凛は…」
「…あいつは、タイムマシンを使ったのか?」

??「ああ、あの子はねー」

??「もふ」

110 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/11 23:54:39.47 Td5Ms2WDO 88/154

??「ふえ?」

??「…残念ですが、守秘義務があるんでごぜーます」

??「あ、そうだった。シュヒギムがね」アハハ

??「もう。おねーさんしっかりしてくだせー」

??「ごめんねー♪」キャハ

「…そうか」

111 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:03:18.71 2DA65Iifo 89/154

??「ええ。なので」
??「凛おねーさんが、タイムマシンを使ったのかどうか。使って、一体なにをしたのか」
??「確認するには――おにーさんも、タイムマシンを使うしかない、ということでごぜーます」ニヤ

「…………」
「…」ハア
「…そう、だな」

??「お! と、いうことは…」

「…………タイムマシンがあるなら」
「――使うよ。俺は」

??「もふ」ニコ

112 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:09:26.53 beR3/YiDO 90/154

??「よく言いやがりました、おにーさん」

??「うんうん。よかったー。これでアタシたち一年は食べていけるよー」

「えっいくら取るつもりなの?」

??「おねーさんなりの冗談でごぜーます」

(分かりにくっ)

??「…まあ、見返りは必ず頂くんでごぜーますが」

「…。お金?」

??「それでもいいですが、お任せするですよ」

「任せる?」

??「はい。おにーさんなりのせいいを見せてくれれば、けっこうでごぜーます」

(文字通りに受け取り辛い台詞だな、おい)ヤクザカヨ

113 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:15:01.72 2DA65Iifo 91/154

「…俺なりの、誠意…か」
「……」フム

??「わくわく」

??「わくわく、でごぜーます」

「……」ティン
「なあ。二人は、アイドルに興味はないか?」

??「はい?」

??「アイドル?」キョトン

「ああ。俺はアイドルのプロデュースをしているんだ」
「…よかったら、二人を俺にプロデュースさせてくれないか」

??「…」

??「…」ポカン

114 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:22:19.96 beR3/YiDO 92/154

??「えへへ」

??「くすくす」

??「このおにーさん、面白いね♪」

??「はい。??たちの目に狂いはなかったでごぜーます」

??「うんっ」

「……どうかな」

??「合格だよー♪」

??「で、ごぜーますー」パチパチ

「そっか」

115 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:28:10.18 2DA65Iifo 93/154

??「ではおにーさんがこの時間に戻って来た暁には」

??「アタシたちを、アイドルにしてくれるってことで!」

「ああ」

??「では、タイムマシンをお渡しするですよ」

モフ

「…」
「……は?」

??「? どうかした?」

「…あー…そうか…これかぁ…タイムマシンって…」


俺が渡されたのは、ペンギンのぬいぐるみだった。

116 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:36:13.43 beR3/YiDO 94/154

「…着るの? これ」

??「はい」

「……他に方法は?」

??「ないでごぜーます」

「まじか…」

??「似合うと思うよ?」

「そういう問題じゃねーよ」

117 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:42:06.38 2DA65Iifo 95/154

「…なにが楽しくて、路地裏できぐるみに着替えにゃならんのだ…」ゴソゴソ

??「えへへ。きぐるみっていいよねー」

??「はい♪」モフモフ

「……分からん…」モゾ
「…これでいいか?」

??「わー。可愛いよ、おにーさん♪」

??「よく似合ってやがりますよ!」

「…そいつはどうも…」ハア

118 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:46:44.06 beR3/YiDO 96/154

「これで過去へ行けるのか?」

??「あと一歩でごぜーます」

「どうすればいいんだ?」

??「ペンギンの気持ちになるですよ」

「…は?」

??「タイムマシンの気持ちでも可」

「なおさら知らねえよ」

??「冗談でごぜーます」

(二人揃って冗談が下手くそか!)

119 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:52:32.65 2DA65Iifo 97/154

??「戻りたいと思えば」

??「自然と過去にいるはずだよ」

??「人の想いは強いのです」

120 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:54:16.09 beR3/YiDO 98/154

「…なんだそ、…れ…?」グラ

??「もふ」

??「もふ」

??「おにーさんが、無事に帰って来ることを、祈ってるですよ」

??「またねー♪」ヒラヒラ

「…っ、お、おい…」グニャ…
「…ぐ」

121 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:55:02.32 2DA65Iifo 99/154








122 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 00:59:15.84 beR3/YiDO 100/154

まゆ「…Pさん?」

「え?」

まゆ「…えっと…」
まゆ「どうしてここに?」

「…どうしてって…」
「? こ、ここは?」キョロキョロ

まゆ「……別に、どこということもないですけど」
まゆ「ただの交差点ですよぉ」

「……交差点…」

まゆ「…?」

123 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:02:47.99 2DA65Iifo 101/154

(…携帯は…)ゴソ
「あ」

まゆ「…あの、聞いてもいいですかぁ」
まゆ「どうして街中で、ペンギンのきぐるみを?」

「……なんでだろうな」

まゆ「…さあ…」

124 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:07:17.10 beR3/YiDO 102/154

まゆ「私は気にしないので、別に構いませんけど…」

(いや、気にした方がいいんじゃないか…俺が言えたことじゃないが)

まゆ「ペンギンなPさんも可愛くて素敵です…」フフ…

(まゆはポジティブだなぁ)

まゆ「そんなことより、早く行きましょう?」

「へ?」

まゆ「Pさんから遅れるって連絡があったばかりですから、驚きましたけど…私のために急いでくれたんですねぇ。まゆは嬉しいです」

「…」
(まゆの待ち合わせ…そうか。あの日は、そうだったか)

125 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:12:34.77 2DA65Iifo 103/154

「すまん、まゆ!」パン

まゆ「? Pさん?」

「実はまだ用が片付いてなくてな。もうちょっとだけ、ここで待っててくれるか?」

まゆ「全然構いませんよぉ。まゆは、Pさんのお願いならなんだって聞いちゃいます」

「…そっか。ありがとな」
「じゃあ、またあとで!」

まゆ「はい」

「…」ヨチヨチ

126 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:19:11.46 beR3/YiDO 104/154

「…」コソ
「…とりあえず、物影から様子を見ることにしよう…時間遡行じゃ過去の自分にあってはならないってのは、常識みたいなもんだもんな」

まゆ「…」

「…大人しく待ってるな」
(こうして見ると、淑やかで家事もできるいい子なんだよな、まゆ……いや、別に喋っても十分いい子なんだが…)

まゆ「……」

127 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:24:30.75 2DA65Iifo 105/154

まゆ「!」パアアァ

(お、まゆの顔が、急に…)
「…って、ようやく俺が来たか…」
「…自分を見るってのも、変な気分だな…」

まゆ「…」//

「…」
「…まゆ、可愛いな…俺と喋ってるときって、あんな顔してんだな…」

128 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:30:33.78 beR3/YiDO 106/154

「…あ?」
「…おい、…おいって。信号赤だぞ、スピード落とせよ」


「おいってば。おい」

「…あっ」



グシャ

129 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:37:13.43 2DA65Iifo 107/154








130 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:38:06.39 beR3/YiDO 108/154

??「ン?」

??「……お帰りでごぜーますよ。ですが残念ながら」スパン

??「あっ」

「…おえ…」ビシャビシャ…

??「過去を変えることは、できなかったようでごぜーますね」

131 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:43:21.54 2DA65Iifo 109/154

??「ちょっとー! おにーさんが戻って来たタイミングでサーブ打つのってずるくない?」ブーブー

??「ふふ。おねーさんが油断しているのが悪いのでごぜーます」

??「ぶーっ」

「…げはっ…っ…」

??「…おにーさん、大丈夫?」

「…」


大丈夫なもんか。

目の前で人が――自分が潰れる瞬間を見たんだぞ…。

132 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:47:37.69 beR3/YiDO 110/154

「……なあ…」ハア、ハア…

??「はい」

「…あれは…俺が知っている、過去じゃ、ない」
「……どういうことだ…?」

133 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:52:04.68 2DA65Iifo 111/154

??「簡単に言うとパラレルワールド的な?」

??「そうですね。…まあ、難しい説明をしても、仕方ないでごぜーますから…そう端的に理解しやがるですよ」

「……つまり、」ハア
「あれも、あり得た過去なんだな…」

??「はい」
??「過去は変わります。何度でも。ですがその思考錯誤の上に今がありやがります」
??「なので、それはあり得たと同時にすでにあり得ない過去の一つでごぜーます」

??「おにーさんが死んじゃったなら、いま、おにーさんがこうしてタイムマシンを使うこともなかったはずだからね♪」

「…。うん分からん」

??「それでいいでごぜーます」

134 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:57:36.38 beR3/YiDO 112/154

「……じゃあ、俺は…どうすれば過去を変えられるんだ?」

??「何度もくり返し過去へ行くしかないです」
??「いつか、まだ“あり得たしあり得る過去”に巡り会うと思うですよ」

「…………」

??「…もう、やめやがりますか?」

「…いや、…やめないよ、やめない」
「…けど――ちょっと休憩させてくれ…」ハア

??「へへ。だからおにーさんは運動不足だって言ったじゃん♪」

「運動不足は、関係ないって…」

135 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 01:58:04.98 2DA65Iifo 113/154







136 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:04:58.78 beR3/YiDO 114/154

「…っと」

まゆ「…Pさん?」

「…やあ、まゆ」

まゆ「…えっと…」
まゆ「どうしてここに?」

「ちょっとな」
「あ、ペンギンなのは突っ込まないでくれ。仕様だからな」

まゆ「あ、はい」

137 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:10:48.63 2DA65Iifo 115/154

「またあとでな。着替えたらすぐに戻って来るよ」

まゆ「は、はい」
まゆ「まゆ、いつまでも待ってますねぇ」

「おう」ヨチヨチ

まゆ(歩き方がとっても可愛い…)キュン

138 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:11:59.19 beR3/YiDO 116/154

コソ

「…さて」
(…俺が跳ねられませんように、なんて一瞬思ったが…考えてみれば、こうしている限り俺は必ず誰かが跳ねれらるのを見ないといけないんだよな…)

「……めっちゃ辛いじゃん、これ…」

まゆ「!」パアアァ

「あ、俺だ…くっそ、まゆと楽しそうに話しやがって…爆発しろ!」
「…………。不謹慎か」

139 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:20:28.66 2DA65Iifo 117/154

(さて。今度はどうなる…)
「ん? あれは――…凛か?」



「…」

まゆ「…あれ、凛ちゃん?」

「…」

過去P「偶然だな、こんな街中で会うなんて」ハハ

「…」

まゆ「…?」

140 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:25:03.00 beR3/YiDO 118/154

過P「まあ、歩きながら話すか。まゆは仕事に行かなきゃだしな」

まゆ「そうですねぇ」トコトコ

過P「凛は、今日はもう事務所に――」

パシ

「…」

過P「…凛?」

まゆ「…? お二人とも、どうかしましたかぁ?」

過P「――おい、まゆ!」

まゆ「…へ?」

141 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:30:04.93 2DA65Iifo 119/154







142 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:31:13.13 beR3/YiDO 120/154

スパーン

「がっ!?」

??「あ」

??「あ、ごめんっおにーさん! のーてんにシャトルが!」

「…」シュゥゥ…
「…いや…おかげで、悲しむ隙がなくなったから、いいよ…」イテェ…

??「あ、ほんと? よかったー、えっへへ♪」

??「……おにーさんは、いい人でごぜーますね」

「…ありがとう」

??「??」

143 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:34:44.39 2DA65Iifo 121/154

「今度は、俺が知ってる過去と、大体同じだった」

??「ダイタイ?」

「うん。…おえ」
(まゆが…俺が知っているより、…あれだった、ってくらいだ)

??「…まあ、“実際の過去”にも多少の誤差はつきものでごぜーますから」

(…あれが、多少…か)

144 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:35:17.28 beR3/YiDO 122/154








145 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:38:02.13 2DA65Iifo 123/154

「三度目の正直だ!」

まゆ「何の話ですかぁ?」

「こっちの、話だ。じゃ、またあとでな」パタパタ…

まゆ「…」ポカン
まゆ「ふふ、Pさんもけっこうお茶目なんですねぇ…」アア、ソンナトコモスキ…

146 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:38:40.48 beR3/YiDO 124/154

「……よし、またこの物影に隠れてっと…」

「…」

「あ」
(ぺんぎんりん、三度か)

「……やあ、プロデューサー」
「さっき振り、だね」

「…? さっき?」

「……まあ、いいや」

147 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:39:12.29 2DA65Iifo 125/154

「…その格好」

(お前も同じ格好だけどな)

「プロデューサーも、過去を変えに来たんだね」

「ああ」

「ふふ」

「…どうした?」

「ううん。プロデューサーも、私も、…どうしようもないくらい、ずるい人間だなって。同じだね、私たち」ニコ

「……そうだな」

148 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:40:18.10 beR3/YiDO 126/154

「…なあ、凛」

「なに?」

「…さっきさ。凛が俺を助けてくれる過去を見たんだ」

「うん」

「代わりに、まゆが死んだよ」

「うん」

「…そこまでして…凛は、俺のことを、助けたかったのか?」

「うん」

「……そう、か」

149 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:41:23.69 2DA65Iifo 127/154

「私ね、もう何度も過去に来てるんだよ?」
「一度目はまゆが死んで。そしたらプロデューサーは、もう二度と私を見てくれなくなった」
「二度目はまゆは助かったよ。けどやっぱり、プロデューサーは私のことなんて構ってくれなかった」

(…俺が知っているのは、その世界のこと…かな)

「三度目は、私がまゆの代わりにプロデューサーを庇ったんだ。そうしたらプロデューサーは、ずっと私のことを見てくれるようになった。けどね」

「…けど?」

150 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:41:51.54 beR3/YiDO 128/154

「耐え切れなかった」
「だってプロデューサーが私に向ける目は、……死んでるみたいに抜け殻なんだもん…」ポロポロ

「…」

ギュ

「…ねえ、ねえプロデューサー」
「どうして? どうしたらいいの? 私は、どうしたらプロデューサーに見てもらえるの?」
「…いやだよ…まゆばっかり、見ないでよ…私のことも見てよ……」

「…」

「…ひっく」

151 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:42:52.87 2DA65Iifo 129/154

「……だ、からね…」グシ
「四度目は、もうなにもしないでいようって思った。プロデューサーが死ぬのをただ呆然と見て、もし耐え切れないなら私も死のうって思った」

「…」

「でも…無理だった。そんなこと、出来っこないよ…だって怖いもん」

「…うん」

「…でも、まゆは死んだよ。躊躇なく。さすがだね」

(さすがって)

「……やっぱり…私は、まゆには敵わないのかな…」

「…凛…」

152 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:43:20.58 beR3/YiDO 130/154

「どうして、こうなっちゃったんだろ」
「…タイムマシンなんて、やっぱり使っちゃだめだね」

「……そうかもな」

「…うん」
「……ねえ、プロデューサー」

「ん?」

「…プロデューサーはさ…まゆのこと、好き?」

「……ああ」

「私のことは?」

「…好きだよ」

「うそ」ニコ

153 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:44:47.22 2DA65Iifo 131/154

「……すまん」

「いいよ。分かってた」

「…でも、凛、お前とまゆの立場が違ったら、きっとまた――」

「……それが、慰めになると思わないで」

「…あ、ああ。…すまん」

「…だから、もう、いいって…」

154 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:45:13.44 beR3/YiDO 132/154

「…はあ」
「ねえプロデューサー。私、もう疲れちゃった」

「…そっか」

「うん。だからね、これは五度目の正直なんだけど」

「多いな」

「まあね」クス
「…もう、死んじゃおうかなって」

「……え…?」

155 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:45:36.58 2DA65Iifo 133/154

「プロデューサーは優しいもんね」
「きっと、そうしたら――一生私のことを、想い続けてくれるよね」

タッ

「…は」
「おい、バカ、やめろ。…凛!」



ゴシャ

156 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:46:06.48 beR3/YiDO 134/154

「……?」
「…あ、れ、…私…」

まゆ「……だい、じょうぶですかぁ…? 凛ちゃん」

「…まゆ?」

過P「お、おい。二人とも無事か!?」タタッ

まゆ「…ふふ、もう…Pさんってば、遅いですよぉ。殿方なら…真っ先に駆けつけてくれなきゃ」

過P「あ、ああ。すまん。まゆの言う通りだ…」
過P「と、とりあえず、いま救急車を呼ぶからな。待ってろ」

まゆ「…はい」

157 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:46:30.18 2DA65Iifo 135/154

「…ねえ、まゆが私を庇ったの」

まゆ「ふ、ふ…庇ったなんて、大げさですよぉ…」

「…どうして?」

まゆ「?」

「なんで、まゆが私を、助けるの?」

まゆ「……どうしてもなにも」

158 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:46:58.56 beR3/YiDO 136/154

まゆ「凛ちゃんが怪我をしたら、Pさんが悲しみますから」

「…………」
「…そっか」
「…はー…もう、いや。まゆに、私なんかが敵うわけないじゃん…」ヘタ

まゆ「そんなことないですよぉ」
まゆ「まゆはPさんのことが大好きで、独占したいとも思ってますけど、でも、」

「…?」

まゆ「まゆと一緒にいるときより、事務所にいるときの彼の顔の方がずっと素敵ですから。少なくとも、今は」

「……」
「…そう、だね」

まゆ「はい」

159 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:47:32.76 2DA65Iifo 137/154

過P「よし」ピ
過P「すぐに来るそうだ。もうちょっとの辛抱だぞ」

まゆ「はい。…ふふ、でもそうやって、Pさんがまゆのことを心配してくれてるってだけで…まゆは元気になれそうですよぉ」フラ…

過P「ふらふらのくせになに言ってやがる。大人しく寝てろ」コツン

まゆ「はぁい♪」

160 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:49:38.97 beR3/YiDO 138/154

「…」

過P「おい。凛も大人しくしておけよ。…見たところ、なんともなさそうだけど…」

「…」スタスタ

過P「お、おいって」

「プロデューサー」

過P「ん?」

「ごめんね。また、あとでね…まゆも」

まゆ「ええ、また」ニコ

過P「…? あ、ああ…」

161 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:50:40.34 2DA65Iifo 139/154

「お帰り」

「…なにしてたの?」

「傍観してました」

「……」

「…すいません…」
「だ、だって! 過去の俺に会うわけにもいかないし…」

「……そう」

「…そんな冷たい目しないで…」

「…ふぅん、恰好だけふざけてるのになにもできなかったとか…」

「格好は仕方ないだろ!」

「冗談だよ」クスクス

162 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:51:09.72 beR3/YiDO 140/154

「…」

「……えっと…」

「帰ろっか。プロデューサー」

「…うん、そうだな」

「……もう…私は、大丈夫だから」

「…そっか」

「うん」

163 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:51:32.73 2DA65Iifo 141/154








164 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:52:14.13 beR3/YiDO 142/154

コンコン

まゆ「はぁい」

ガラ

「よ。調子はどうだー」

まゆ「Pさん。来てくれたんですねぇ」
まゆ「おかげさまで…そろそろ退院できるって、お医者様が」

「! ほんとか」

まゆ「はい」
まゆ「ふふ…これでまた、Pさんと一緒に、アイドルをやって行けますねぇ」

「ああ。…よかった」

165 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:52:58.05 2DA65Iifo 143/154

「ま、プロデューサーと二人で、じゃなくて…私たちとも、だけどね」

まゆ「あら?」

「お、凛たちもお見舞いに来たのか」

「…まあね」

まゆ「えへへ…ありがと、凛ちゃん」

「…うん」

奈緒「…相変わらずあんたたちは仲がいいなぁ」

加蓮「最近は…ときどき奈緒や私より、二人でコンビ組んだ方がいいんじゃないかと思うよね」

「…凛とまゆのコンビか…ふむ、まゆの復帰の話題作りにもなるか…?」ブツブツ

奈緒「ちょ」

加蓮「勘弁してよ。冗談だって」

「ふふ」

まゆ「…」クスクス

166 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:54:50.66 beR3/YiDO 144/154

「早く復帰してよね」
「まゆがいないと――事務所も、“いろいろと”退屈だから」チラ

まゆ「…ええ」フフ
まゆ「もう少しだけ、待っててくださいねぇ」チラ

「ん?」

「うん」

「…なんだよ、二人して俺のこと見て…」

まゆ「ふふ?」

「ふふ♪」

167 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:55:14.02 2DA65Iifo 145/154

奈緒「…それにしても…凛も意外と、ツンデレ行けるんだよなぁ…」

加蓮「奈緒が言うなら間違いないね」

「な、なに言ってるの二人とも」

「はは。顔が赤いぞ」

「プロデューサーは黙って」ガッ

「…しゅいましぇん」モガガ

168 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:55:42.78 beR3/YiDO 146/154

奈緒「つっても、また新しい子も入って来たし…最近は、けっこう想像しいけどな」

まゆ「そうなんですかぁ?」

加蓮「うん。…とりあえず、きぐるみが増えたよね」

まゆ「??」

「…まあ…その辺りは、復帰してからのお楽しみってとこかな」

まゆ「」クス
まゆ「そうですねぇ。楽しみにしておきます」

169 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:56:41.66 2DA65Iifo 147/154

「よし。じゃあ、また明日な」

奈緒「まだしっかり休むんだぞー」

加蓮「お大事に」

「…またね」

まゆ「はい」

170 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:57:10.71 beR3/YiDO 148/154

まゆ「…あ、そうだ」
まゆ「あの、Pさん」

「ん? なんだ?」

まゆ「…えっと、Pさんが持って来てくれた本の中に、タイムマシンが出て来て」
まゆ「ふと思ったんです。Pさんは、もしタイムマシンがあったら、…どうしますか?」

「……そんなの決まってる」

171 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:57:50.64 2DA65Iifo 149/154



「タイムマシンなんて使わないよ。過去を変えるとろくなことがないからな」


172 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 02:59:58.93 beR3/YiDO 150/154

終わりです。くぅどころか大変疲れました。


ままゆがやたら綺麗だったり、謎の時間理論だったり洗い設定だったり…
文章自体大変稚拙だったと思います。
途中レスをして下さった方、最後まで読んでくれた方には多謝であります。


依頼だして寝ます。お疲れさまでした。ありがとうございました。

173 : VIPに... - 2013/05/12 03:02:31.41 sotn6kivo 151/154

おつ
過去改変でタイムパラドクスとか読む分には面白いが書きたくはないな
結局キグルミ2人組の仁奈ちゃんじゃない方が最後までわからんかった

174 : VIPに... - 2013/05/12 03:20:10.71 NfMGRLBDO 152/154

>>173
バドミントンが趣味だし柚ちんだね
初出の特訓後でスノーマンの着ぐるみ着てる

176 : VIPに... - 2013/05/12 09:47:25.17 H6NfiWnQo 153/154

おつ
個人的にはきれいなままゆ結構好きよ

177 : ◆ouHhy4BX4A - 2013/05/12 11:21:06.98 KzYwdpqBo 154/154

>>173 他の方がすでに答えてくれている通り、柚のつもりで書いていました。

>>176 個人的にもそう思いますが、ヤンデレ全開も魅力なんだよなー難しいなーと思いながら書いてました。

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