憂「るんるん~♪」パタパタ
憂「今日は天気もいいし、お布団もふかふかになるかなぁ」
憂「そしたらお姉ちゃんと一緒にお昼寝したいなー。えへへ」
コソコソ…コソコソ…
唯「かんちょー!」ズブリ
憂「きゃん!?」
唯「ほほ~! 大成功ぉ~!」
憂「 」ゴロンゴロン!ゴロンゴロン!ジタバタ…
元スレ
唯「カンチョーするよ!」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1297181498/
ガミガミ…
唯「ぶー」ムスッ
憂「いくらお姉ちゃんでもいきなりやっていいことと悪いことがあるよっ」
唯「でも憂。カンチョーっていきなりやるからカンチョーだよ」
憂「そういう問題じゃない!」
憂「……ほら、見て。私のおしり」ヌギッ
唯「あ、可愛いおしり」
憂「その可愛いおしりがこの様だよ……お姉ちゃん変な所に力いっぱいカンチョーしたから」
憂「いてて……っ」
唯「うっわ、真っ赤だねぇ。痛そうな色……」
憂「そう思ってるならまず謝ってよぉ……」
憂「お姉ちゃん、小学校のころにカンチョー禁止令をお父さんに出されたの覚えてる?」
唯「うん」
憂「なんで今さらになって約束破っちゃうの」
唯「だって今お父さんたちウチにいないでしょ? やるなら今さ。明日って今さ」
憂「そういう問題じゃありません。めっ!」
唯「む~」
憂「お姉ちゃん。小学校のころカンチョーしてとんでもない事件を起こしたこと、覚えてるでしょ?」
唯「うっ……うん、まぁ」
憂「反省してなかったんだ」
唯「いや、さっきのはちょっとした出来心だから……ね」チラ、チラ
憂「ちょっとした出来心が私を悶絶させたことを忘れないで」
平沢唯ちゃん 小学校編
男子A「カンチョー!」ズブリ
男子B「うっ……! や、やったな~」
男子A「へっへっへー! 隙を見せたお前が悪いんだぜ」
ズブリ
男子A「あ……う……!?」
唯「えへへ、はい! かんちょーだよ!」
男子A「お、お前~! カンチョーするときはカンチョーって言わなきゃルール違反だろうが!」
唯「へ、そうだったんだ!? ご、ごめんね……」
男子B「っしゃ~! 平沢さんに罰ゲームだぁ~!」
男子C「カンチョー100連発の刑! カンチョー100連発の刑!」
男子A「決まりだ! 押さえろ押さえろ! げへへ!」
唯「そんなにされたらおしりが持たないよぉー」キャッキャッ
男子C「前と後ろの穴、どっちにカンチョーがいいかなぁ?」
先生「……」ゴクリ
唯「え?」
和「こらー!」
男子A「げっ、委員長の真鍋さんだ! 逃げろー!」
男子B「わー」
先生「oh……」
タタタ…
和「何もされなかった? 唯」
唯「無事だよー」
和「まったく……あんなくだらないことでアナルバージンを失っちゃダメよ?」
唯「ばーじん?」
和「ともかく、唯。唯のカンチョーはヌルい! ヌルすぎる!」
和「よければ私が鍛えてあげる!」
唯「えーほんとにー!」
数ヵ月の時が経った。
和によって鍛え上げられた唯に、カンチョーで敵う者は師である和を除けば誰一人として存在しなかった。
校内では常に゛背後に気をつけろ。奴が来る゛と唯は男女共に恐れられた。
そんな彼女がある日、その強大すぎる力のせいでとんでもない事件を起こしてしまうのであった。
それはある日のお掃除タイム。
唯「お掃除面倒だねー」
女子A「そ、そうだねっ」
唯(ちぇー、バックを中々取らせてくれないよ)
唯「ん?」
男子A「……」ギュッギュッ
唯(Aくん、雑巾絞りに夢中になってて私に気づいてない……これはチャンス!)
コソコソ…コソコソ…
男子A「ふんぬぬぬ……」ギュッギュッ
唯「獲ったっ! かんちょー!」
ズブリ
男子A「!」
唯「大成功だー! あははは」
女子A「ま、またやられた……」
男子A「 」プルプル…
唯「はははは……Aくん?」
男子A「 」
唯「え、Aくん? どうしちゃったの? おーい……」
バタリ
男子A「 」
唯「わー! Aくんが白目剥いて気失ってるよー!?」
女子A「きゃー! きゃー!」
突然の肛門への会心の一撃。
油断しきっていたAは唯のカンチョーによって失神を起こし、病院へ運ばれていったのであった。
後にこの事件はAくん失神事件と名付けられ、名珍事件として今でも長く語り継がれている。
憂「あの後お父さんにおしりペンペンされたの覚えてる?」
唯「そのせいで2、3日はおしりがヒリヒリしてた」
憂「ね、カンチョーはなにも生み出さないんだよ」
唯「だからするなって? それは違うよ。憂」
憂「……」
唯「あの指が肛門を貫く感覚、忘れることはできない……」ジュルリ
憂「だからって……!」
唯「カンチョーを否定するの?」
憂「だってされた人が苦しむだけなんだよ!?」
憂「現に私今すごくズキズキするもん」
唯「じゃあ今度から痛ませないように気をつけるね!」
憂「あーもうっ」プンプン
唯「よかったら憂にも私の技を伝授してあげようか?」
憂「お断りですっ」
憂「ていうかお姉ちゃん、技って……」
唯「和ちゃんから教わった技を私なりにアレンジしてみたんだよ」
唯「必殺、唯式……」
憂「だからいいってば!」
唯「むーっ。なんか今日の憂はノリが悪い!」
憂「……私怒ってるんだよ? わかってる?」
唯「おしり抑えながら怒ってもおっかなくないもーん」
憂「め……めっ!!」グッ
唯「へへーん」
憂「うー……っ」
次の日 学校
紬「唯ちゃんは昨日なにしてたの?」
唯「んー、ずっとウチでゴロゴロしてたかなぁ」
澪「あいかわらずというか」
律「唯らしいなぁ」
唯「そいつは聞き捨てならねぇ!」ビシッ
澪「でも実際そうだったんだろ?」
唯「むむむ、ち、違うもん!」
唯「昨日は久しぶりに私の技が炸裂したんだよ!」
律「技?」
紬「なぁにそれ?」
唯「気になるならみんなにもしてあげるよ~」
律「ほー……じゃあ澪で頼む」
澪「な、なんで私だよ!?」
唯「澪ちゃんに? おっけー」
澪「いい! いい! しなくていいよ!」
律「遠慮すんなよぅ!」ガシッ
紬「澪ちゃん、がんばって!」ガシッ
澪「お前らぁっ!」
唯「……」
律「どうした唯? 抑えてるうちにはやく」
唯「だめだよ。これはフェアじゃない」
紬「え?」
唯(和ちゃんが言ってた。カンチョーってのは一対一のタイマン勝負)
唯(刺すか刺されるかのバックの取り合い……こんなの)
唯「間違ってる!」
澪「よくわからないけど助かった……?」
律「なんだよー興ざめだなぁ」
律「本当は技なんてないんじゃないの~」
紬「そうなの唯ちゃん?」
唯「いや、技はあるよ」
唯「でも今はその時じゃない」
律・紬「?」
唯「ふふっ、みんな後ろに気をつけた方がいいよ……!」
澪「後ろ?」
澪「……まさか」
律「澪、心当たりあるのか?」
澪「いやぁ……ふふっ」
律(唯も澪も変……)
紬「たのしみ~」
・・・
「それでは会長。また放課後に」
和「ええ、それじゃあ私はこれで――!」
唯「かんちょー!」
和「ふんっ!」キュッ
和「……久しぶりね、唯。私に仕掛けてくるなんて」
唯「あいかわらず隙がないね。和ちゃん……!」
唯の鋭い一撃は和の肛門を貫けなかった。
穴に、突き立てた4本の指が到達する寸前で和は尻の肉で指を挟んだのだ。
挟まれた指はピクリとも動かすことができない……なんて力だ。
あの頃から和の力は衰えることを知らない。
和「ふふっ」ス
唯「あれ、もう離しちゃうの? もしかしたらもう一撃私が打ちこむかもしれないのに」ヌポッ
和「唯、あんたに私を貫くことはできないわ。決して」
唯「言ってくれるね!」
和「さ、教室に戻りましょう。次の授業が始まるわ」
昼休み
律「おっひるだー! つまり昼飯だー!」
紬「お腹空いたね」
律「まったくだよ」
唯「かんちょー!」
ズブリ
律「ひゃあぁぅっ!?」
紬「ゆ、唯ちゃん!」
唯「これが……私の技だよ」
唯「必殺・唯式……」
律「いきなりなにしてくれるんだよっ!!?」
唯「うわわ……」
紬「りっちゃん、すごい声でてた……」
律「もぉ! 唯のせいだかんなぁっ」
律「ったく、何が技だよ。ただのカンチョーだろ」
唯「ただの? 違うね」
律「見栄張んなって」
唯「もぉー」
紬「そういえば澪ちゃんはどこかしら? さっきからどこにも……」
律「トイレじゃな……お、唯ー。ほら、あそこ」
唯「ん?」
律「澪が後ろ向いて油断してるぜ。さっきのカンチョーやってやれよ」
唯「望むところだよ。澪ちゃん、隙を見せた澪ちゃんがいけないんだからね……思いっきりいかせてもらうよ!」
紬「唯ちゃんがんばれー」
唯「……」ソローリソローリ…
澪「……」
澪「……ふっ」
ニヤリ
唯「かんちょー!」
唯の一撃が澪の穴に突き刺さろうとした、とそのとき!
不思議なことが起きた。
唯の゛獲物゛は既に唯の後を取っていた。
唯「!」
澪(残念だったな、唯。獲物はお前だったというわけだ)
澪は即座に慣れた手つきで指を組み、シンプルな二本差しを作って唯の穴へ向ける。
澪の瞳はギラギラと禍々しい光を放つ、まさに狩る者の目。
澪(こうしていれば絶対に食いついてくると思っていたよ。予想通りだ)
澪(目の前の私が突然視界から消えたことによって呆気を取られた唯は隙だらけ。もはや私の手の中も同然)
唯(――と、澪ちゃんは考えているはず。残念だったね澪ちゃん)
唯「私は常に、一歩先を歩んでいるんだよ!」
澪「なにをバカな……」
澪「!?」
澪(いない!)
澪の目の前にあった形のいい唯のそそる尻は既に、なかった。
いや、消えたとでも言えばいいのだろうか。
澪「まさかっ」
澪「ざんぞ――ひぐぅんっ!?」
――ズブリ。
肛門を貫く鈍い音がした。
唯は既に、澪からバックを奪っていたのだ。
律「き、決まった……!」
紬「なんて鮮麗された動き!」
澪「っあ……はぁ!」
――ヌポッ。
穴から引き抜かれる指。
唯といえば西部劇のガンマンのように組んだ手を銃に見立て、銃口から出た硝煙を吹くマネをしている。
まるで余裕と言わんばかりの表情をしているじゃあないか。
唯「ばーん!」
澪「畜生ッ……!」
澪「お、教えてくれ唯。お前はなにを……」
唯「澪ちゃんが負けた理由はただ一つ。とっても簡単でシンプルなこと」
唯「私が強すぎた! それだけ」
澪「……」
澪「ふ」
澪「あははははっ!」
唯「?」
澪「面白い! 面白いよ唯! 最高だ!」
唯「そうかな、私は手ごたえが無さ過ぎて正直がっかりだよ。澪ちゃん」
澪「言ってくれるじゃないか。だけどこんなところに一流のカンチョニストが潜んでいただなんて……ふふっ」
律「あいつらさっきから何話してんの」
紬「さぁ」
澪「私がカンチョーに目覚めたのは中学のとき」
唯・紬「なにか始まった」
澪「律が私にカンチョーしてきたときだ」
律「え、私そんなことしたっけ?」
澪「……覚えてないの?」
澪「まぁいいさ。とにかく、それから私は目覚めたんだよ」
澪「最強のカンチョニストとして」
律「お前唯にさっき負けたじゃんか」
澪「あれは不覚だったよ……私が唯を甘く見ていたのが敗因さ」
律「言ってろ」
澪「そういうわけだから唯!」
唯「はい?」
澪「次は、私が勝つ……!」
唯「いつでもかかって来てよ。いくらでも相手してあげる!」
紬「見て、りっちゃん。二人の後ろに龍と虎の姿が……」
律「いやいやいや」
律「にしても、いい歳してカンチョーはどうだよ?」
唯「えー、りっちゃん好きそうなのに」
律「おい!」
澪「ま、律が私たちに仕掛けたところで返り打ちにあうのは見えてるけど」
律「……かっちーん」
律「おー! そこまで言うならやってやろうじゃん!? やってやりますよー!」
紬「り、りっちゃん……」
唯「面白いね! それじゃあ今日からこの5日間で誰が最強なのか決めようよ」
カンチョーバトルロワイヤル開催!
ルールは簡単だ。
一人につき、2回カンチョーされればアウト。
誰にカンチョーしようが、どれだけカンチョーしようが関係はない。
敵を撃ち滅ぼし、最後の一人になった者……それが最強のカンチョニストの称号を手にすることができるッ!
唯「って感じで」
律「いや、勝手に開催とか言われても」
澪「カンチョーバトルロワイヤル……面白いな」
澪「私は乗るよ、唯。お前を倒すためにもな」
唯「それでこそ澪ちゃんだよ!」
紬「じゃあ私も~」
律「む、ムギ!?」
澪「どうした律。逃げるのか?」ニヤリ
律「……や、やってやるって言ったんだからやるに決まってんだろ!」
唯「それじゃあ残りのメンツは私が適当に揃えるよー」
カンチョーバトルロワイヤル!参加メンバー!
平沢唯、秋山澪、田井中律、琴吹紬、若王子いちご、立花姫子、瀧エリ、中野梓、平沢憂、鈴木純、そして……
和「面白いじゃない。唯にしては中々の提案だわ……出るわ、私も」
真鍋和! 参戦!
律「まてまて! いちごとか何なんだ!?」
唯「やろうって言ったら快くOKって言ってくれたよ」
律「んなバカな……」
さわ子「私がこの戦い、見届けるわ」
唯「そしてさわちゃんが審判です!」
律「どいつもこいつもバカばっかだよ!」
放課後
梓「んあぁあっ! 律先輩覚悟ぉぉぉ!」
律「な、なんだ!?」
律が部室に入るやいなや、突然襲い掛かってきた中野。
律はその突進を身を翻して華麗に回避。
突然の奇襲にこうも上手く対処できる人間はそうそういない。
突進を避けられた中野はバランスを崩して、こけたッ!
これはチャンスだ!
律「なにがチャンスだよ! 大丈夫か、梓」
梓「て、敵を心配するだなんて……余裕ですね……!」ニヤリ
妖しく微笑む中野に嫌な予感を感じる律。
すぐに差し伸ばした手を引っ込めて距離を置く。
律「お前、なんでそんなやる気なんだよ。ていうかなんだ!」
梓「決まっているでしょう。これは最強の称号を賭けた戦いなんですよ」
律「梓……お前までカンチョーかよ……」
梓「戦わなければ、生き残れない……!」
律「やかましいわっ!!」
律「ところでみんなはまだ来てないの?」
梓「知りませんよ。みんなどこかで坦々と尻穴狙ってるんじゃないですか?」
律「そんな下品な言葉使うんじゃありません……!」
律(みんなどうかしてるぜ……カンチョなんたら最強の称号なんてもらったところで恥ずかしいだけだろうに)
律「梓だけはマトモだと信じてたのに」
梓「マトモ! マトモってなんですか、カンチョーをしない人間ですか?」
梓「律先輩。人は皆、カンチョニストなんですよ。律先輩だってそうです!」
律「私を勝手に変態集団の仲間にすんなっ!」
梓「……気に食わないですねぇ」
律「は?」
梓「律先輩! あなたは早めに潰させてもらいます」
律「なんでだよ!?」
梓「気に食わないから!」
律「このっ、中野ぉっ」
律「……やっぱりこんなの間違ってる。私たちが争い合う意味なんてないよ!」
梓「ふっ、バカですね……いえ、甘いと言うべきですか」
律「なんだと!」
梓「だから、こんなに簡単に後ろを取られるんですよ……!」
律「は!?」
中野がいない!
後ろだ、背後から彼女の声が聞こえる。
中野はいつのまにか律のバックを奪っていたのだッ!
律「そんな……いつのまに……」
梓「巫門遁甲、なんちゃって」
梓「今のでわかったでしょう? 敵を前にして油断していたらこうなるって」
中野は組んだ手を律に突きつける。
不敵な笑みを浮かべる中野は律がよく知るただの生意気な後輩ではなかった。
梓「今ので一回死んでますよ。この調子で大丈夫ですか~」
律「こ、のっ……」
梓「律先輩はこのままやられちゃう程度の人間なんですか?」
梓「律先輩は勝つ気がないただの意気地なしの弱虫ですか?」
梓「くくくっ……」
律「……」
梓「言われっぱなしで悔しいですか? そうなんですか? はっはっはー」
律「……なぁに」
律「ようはこの5日間生き残りゃいいって話なんだろ」
律「やってやろうじゃん!」
律(そうだ! やってやるよ! それにカンチョーをよくないと思っている参加者だって少なからずはいるはずだ。なら私は……)
律「アンチ・カンチョー同盟を作るぜ……!」
梓「は?」
律「内側から否定してやるってんだよ。この歪んだカンチョー遊びを!」
梓「……ここまで来るとあきれちゃいますよ」
梓「興冷めです。あなたの相手はまた後日……それでは」スタスタスタ…
律「……ふん、言ってろ阿呆め」
――ドオオォォン。
――ズババババッッッ。
衝撃と衝撃のぶつかり合い。
荒々しく激しい音を立て、今カンチョー合戦が繰り広げられている。
戦いの舞台は屋上。
闘っているのは……!
紬「とおー!」
姫子「くっ……!」
姫子(カンチョニスト初心者かと思いきや、中々やるねっ)
姫子「でも!」
紬「え!?」
姫子「意気がいいのは、嫌いじゃない!」
紬「!」
ぶつかり合いの末、防戦一方に回っていた姫子は、
紬の制服の胸倉と左袖を掴み、地に叩きつけるッ!
決まったァ! 姫子の大外刈りだァッ!
姫子「……よっこいしょっと」
紬「あいたたた……」
姫子「はい、隙だらけ! カンチョー」
姫子は技をかけた後、即座にしゃがみ込み、
紬の穴へ向けて一撃をお見舞いするッ!
紬「あああぁぁぁあああああああああッッッッッ」
ビクンビクンビクン、全身を襲う鋭い痛み。
紬はカンチョーを甘く見ていたのだ。
……しかし、この一撃は紬の心をとても熱くさせた!
紬「イイ……」
姫子「え?」
紬「とっても、イイのぉ……」
紬(こんなに私を夢中にさせてくれるものだったのね)
紬(もっと、もっと……)
紬「゛エクスタシー゛をッ!!」
姫子「えっ!?」
紬「あなたとの戦いは私を絶頂まで高めてくれる……」
姫子(ムギ、一体何を)
紬「だからこの気持ち……お裾分けしてあげるッ!」
姫子「!」
姫子(なにあの目は!? 嫌な予感が……)
今の紬の瞳の輝きにいつものおっとりぽわぽわが感じられない。
そこにあるのはただ悦楽を求めし亡者の輝き。
闘いという欲を求めしバーサーカーへ、紬は――
紬「うふふ……」
姫子「うっ!」
姫子(動けないっ、足が竦んで……ううん! 足に力が、ふ、震えるっ)
次第にその場に立っていることすらできなくなり、崩れる姫子。
目に前の紬の姿が視界に映るだけで涙が溢れる。
恐怖ッ!
今の姫子にとって紬は恐怖そのもの!
紬「さあぁ、アレの続きをしましょう……?」
姫子(ダメ……ヤられる……)
そのときだった。
姫子にとっての゛騎士゛が現れたのは。
?「カンチョー! えいっ」
――ズブリ。
紬「ああぁぁぁんっ!」
決まった! 紬に本日二撃目のカンチョーが決まったァッ!
絶頂の声をあげた紬は気を失い、倒れる。
が、それは後ろから受け止められる。
紬「 」ビクンビクン
?「ふぅ」
姫子「あ、あなたは……」
そう、その人物は――
憂「危険な芽は早めに摘んだほうがいい」
憂「あなたもそう思いませんか?」
姫子(唯の……妹!)
憂「ごめんなさい、紬さん。でもこうするしかなかったの」
姫子「……」
姫子「たすけて、くれたの?」
憂「えへへ」
姫子(あぁ、笑顔が唯そっくり。見てるだけでこっちまであったかくなるような――)
憂「カンチョー!」
ズブリ
姫子「きゃひぃん!?」
姫子に憂のカンチョー炸裂ッ!
予想斜めをいった憂のこの行動!
姫子はてっきり自分を助けてくれたのだと信用しきっていた友人の妹の顔を、
痛みを堪えて、覗きこむ。
憂「ごめんなさい」
とても切なげな表情をしていた。
儚くて、壊れてしまいそうな……気がしなくもない。
憂「あなたも、これで二回目ですよね。影から見てました」
姫子「くっ……」
憂「つまり、あなたと紬さん。二人は終わりです。ごめんなさい」
姫子「……あー、負けちゃった。あはは……最強の道は厳しいね……」
憂(私が勝つためにはこうするしかない!)
憂(勝ち残って、私は……)
まさにハイエナ!
平沢憂、勝利の末に何を望むッ!
・・・
憂「……」
律「憂ちゃん!」
憂「え、律さん?」
律(憂ちゃんなら……)
律「単刀直入に言わせてもらうよ」
憂「?」
律「私と組まないか」
律「いや、私と一緒にこのゲームに生き残ってカンチョーっていうバカげた行為をやめさせよう」
憂「……」
律「みんな間違ってるんだ! おかしいんだよ!」
律「アンチ・カンチョー同盟に加入してくれ、憂ちゃん。頼む!」
憂「詳しく、話を聞かせてもらえませんか?」
憂「――内側から否定する……」
律「ああ。まだ私しかメンバーはいないけど」
律「きっとカンチョーに反感を持っているやつはいると思うんだ。だから」
憂「……甘いよ」
律「え?」
憂「ううん、なんでもないです」
憂「話はわかりました。私も入れてもらえますか? アンチ・カンチョー同盟に」
律「い、いいのか!? 勿論だよ! いやー、憂ちゃんがいれば百人力だなぁっ」
憂「ふふふっ……」
・・・
唯「ムギちゃんと姫ちゃんがやられたみたいだね」
和「ムギはともかく、立花さんは相当な実力者なはず」
和「とんだダークホースが潜んでいるみたいね」
唯「ワクワクするよぉ~!」
和「そう言ってられるのも今のうちね」
和「唯、あんたには能力が一つもない。この闘いを乗り切るにはハードだと思うわ」
唯「能力?」
唯「そんなの聞いたことないよ? それに和ちゃんは今まで教えてくれなかった!」
和「なんでも私が教えてくれるだなんて思わないで。唯」
唯「ケチぃ……でも」
唯「私はそんな能力なんてものがなくても勝つよ!」
和「必殺技で押し切る気? 甘いわね……」
唯「言ってくれるね! いいよ、そこまで言うのなら……」
シャキーン
唯「そろそろ始めようよ、カンチョー合戦を!」
和「ふふっ、話にも飽きてきたことだし……いいわ。かかってきなさい」
和「さぁ、あんたの本気! 見せてみなさい!」
――ズブリ。
唯「あぁうっ!」
和「これで一撃入ったけど? ふふっ」
和「一応言っておくけど、まだ……」
唯「能力ってやつは使ってないんでしょ! ……わかってるよ!」
圧倒的ッ! 師の力を越えることはやはりできないのか。
和と唯のカンチョー合戦が始まってから5秒経過。
一瞬で決着がついた。
和「……唯、あきらめなさい」
和「あんたは私に――」
唯(――勝てない?)
和「ふっ……3日、3日間生き残ることができたらもう一度戦ってあげる」
唯「畜生ッ……!」
・・・
純「おーい、あずさー」
梓「ん?」
梓(なんだ純か。純も参加者の一人みたいだけど)
純「部活ないなら一緒に帰ろうよ」
梓(はんっ、おそるるに足らずッ!)
梓(まるで鴨がネギ背負ってやってきたみたいだね。さっさと潰してあげる)
純「梓?」
梓「うん、いいよ。一緒に帰ろう」
純「おー、じゃあ……あ、やっぱ待って」
純「帰る前に、一戦交えようよ」ニヤリ
梓(そら来た! この呑気な顔見てよ。弱者の顔だ!)
梓「しかたがないなぁ……」ニヤリ
・・・
紬「ん、んー……あれ?」
姫子「あ、気がついた?」
紬「私いったい……」
姫子「私たち二人、早くもゲーム脱落だよ」
紬「そ、そうなんだ。がっかり……」
姫子(唯の妹さんに負けたことは覚えてないのかな)
姫子「でもまぁ、今回は強敵揃いだったし……下手に勝ち進むより安全だったかもね」
紬「え?」
姫子「最悪の場合、このゲームは死人がでるよ」
紬「し、死人!?」
姫子(私に最初の一撃を与えたあのモップ頭……あいつは特にまずい)
姫子(ううん、あのイカれた性格と能力がかなりまずいんだよ……)
・・・
梓「あ……がっ……!」
傷だらけの中野。
力を振り絞り、フラフラと立ちあがるもそれがやっとといったところだ。
梓「ば、化物めっ……!」
純「へへーん! 言ってくれるね。あーずーさ」
梓(こいつ、私を痛めつけて楽しんでる!)
純「私はね、梓。ただカンチョーするだけってのには飽き飽きしてるの」
純「こうやって命一杯痛めつけて、ボロボロになったところでズブリ! か・い・か・ん!」
純「おっと、あの快感を思い出しちゃって涎が……でへへ」ジュルリ
梓「歪んでる……」
純「梓もさぁ、はやく能力を使えば? 出し惜しみなんてしたところで意味ないもん」
純「ま、もっとも私に敵う能力なんてそうそうないとは思うけど」ニタァ…
梓「そこまで言うなら……期待に応えて見せてあげるよ」
床に手をつき、片足を曲げて、腰を浮かす。
まるでクラッチングスタートの構えだ。
視界に純の姿をしっかり入れ、睨みを利かせる。
梓「その目に焼き付けろッ! 私の゛速さ゛をッ!」
つま先をトントンと鳴らすと同時、
純「あーん?」
――ビュンッッッ。
高速。いや、超音速。
中野がその場から走り出すと同時に廊下の窓ガラスが全て音を立てて割れた。
ソニックブーム、超音速が生み出した衝撃波だッ!
さすがの純も危険を察知したのか体の前で腕を交差させて防御体制を取る。
が、そこに音速で接近した中野が突っ込んでくるゥゥゥッ!
梓(と、止まらないぃぃぃ~)
中野は別に能力の出し惜しみをしていたわけではない。
この能力の使い勝手が悪すぎる為、多様は避けていたのだ。
超音速で衝突なんかした日には中野は色々もうグチャリとぶっ飛ぶ。
梓「――ん~……あれ? 止まった?」
純「違うね。私があんたを止めたんだ」
中野の体にはあちらこちらに細い線が絡みついていた。
いや、これは線ではない……髪の毛だッ。
気がつけば純のモップヘアーが解け、大量の髪の毛があり得ないほど伸びきっている。
伸びきった髪は廊下中に張り巡らされ、まるで蜘蛛の巣の様。
純「私の能力は髪の毛を自在に操ること。長さも、大きさも、固さも、ね」
純「その気になればワイヤーぐらいの強度にもできちゃう」
はたしてこれがカンチョーに関係があるのかないのか……。
そんなことは置いておいて、中野は今、純の髪の毛に絡み取られて捕獲されている。
中野を包むように形成された髪のネットはギュウギュウと肉を締め付けてくる。
梓「あいだだだだ!?」
純「梓のも大した能力だよ。でもあんな使い方じゃなってない。それにノロすぎる」
梓(私が遅い!? 私がスロウリィ!? はぁ!?)
純「どうする? まだ奥の手でもあるの? 梓」
梓(ない……ッ!)
梓(でも!)
梓「あ、あるにはあるよ……」
純「へぇ、見せてもらおうじゃん!」
梓「いや、でも今は見せられないというかね……」
純「なんじゃいそりゃ」
梓「で、でも! 本当にあるの! 信じて? ね!?」
純(なんだこいつ)
梓「その力を見せるにはもう3日経たなきゃ見せられないっていうか……!」
純「ほぅほぅ、だったら3日後にもう一度やり合おうか」
シュルシュルシュル…
梓(拘束が解けた!)
純「だから今日は見逃してあげる。せいぜい生き延びてよ、梓」スタスタスタ…
梓「た、助かった……」ホッ
・・・
澪「ん?」
律「げっ」
澪「律じゃないか。それに憂ちゃんまで……まさか」
律「そ、そうだ。手を組んだ! カンチョーを認めない同士でな!」
憂「……」
澪「ふっ、バカなことを。さすがは律だな」
律「なにッ……」
憂「律さん、抑えて」
澪(見たところ、律も憂ちゃんも大した実力はなさそうだ。ここで今、私とやり合っても勝負は見えてるな)
澪「どう料理してやろうかな……ははは」
律「み、澪……」
澪「まぁ、今日のところは親友の好で見逃してあげる」
律(なめやがって……)
憂「澪さんも私たちと一緒に……」
澪「お断りだよ。私はお前たちみたいにぬるくない!」
律「そんなこと言っておいて、もし私らに負けたらなんて言い訳するつもりだよ」
澪「なに……?」ピクッ
憂「……」
澪「言うじゃないか、律。その減らず口、今ここで叩いてやってもいいんだぞ?」
律「や、やれるもんならやってみろよ……!」
律(怖がるな! 所詮は澪だ。なんとかなる……倒してから改心させたって……)
澪「……ふん、生憎だけど今日は私は戦えない」
律「え?」
澪「能力を鍛えているからな」
憂「え?」
律「は? 能力?」
澪「ああ!」
律(こいつ……ついにメルヘン思考を拗らせたか……)
澪「な、なんだよその目は……」
律「いやぁ、別に」
憂(能力ってなんだろう?)
律「で? ぼーっと何もしないでいるのが鍛えてるっていえんのか」
澪「この゛何もしない゛がすごくいいんだよ」
澪(唯を倒すためにも能力は必要不可欠だ。私のあの力が覚醒すれば唯なんて……)
澪「ふふ、ふふふふふ……」
憂「ど、どうしたんですか?」
律「あー、気にしなくていいよ。さ、今日は私たちも帰ろうぜー」
憂「え、えぇ?」
澪「私は勝つぞー! おー!」
こうして各地で始まりと終わりの鐘が鳴り響いた。
脱落者2名! 琴吹紬、立花姫子。
ここでリーチがかかった唯は一体どうなる!?
絶対にして頂点と呼ばれる和の真の実力とは!?
注目のダークホース憂、純の活躍は!?
そしてまだ明かされぬ能力を持つ戦士たちッ!!
そう、戦いはまだ始まったばかりだ……
強さの果てに待つものは!? 最強か! 支配か!
1日目終了。
2日目
憂「で、どうするんですか?」
律「そこなんだよ」
律「正直生き残る以外にすることがよくわからん」
憂「そ、それで内側から否定するとか言ってたんだ……」
憂、しばし沈黙。そして考える。
隙を突かずとも律を撃破することは容易い。
こうして近づいたのは確実に一人を潰すためだ。
しかし、律のカンチョー否定派としての意見にはとても同意できる。
なぜなら憂も……
憂(いざとなったら切り捨てます。律さん……!)
律(私たちがするべきことは争いじゃないんだ……考えろ、私)
場面変わって軽音部部室。
ここにカンチョニスト最強を純粋に目指す一人の少女の姿が。
唯「うーん」
唯(能力なんて正直反則だよ! ありえないし!)
唯「でも……」
能力なしにしてこのゲームを生き残るには少々厳しい状況となった。
自慢の技も和には通用しない。
もしかすれば次第には和以外にも技が通じなくなるかもしれない。
皆、脅威べき早さで敵を解析し、学習しているような気がしてならない。
唯はショックを受けたッ!
師以外にも自分を越える存在が潜んでいたことに。
と、ここで中野登場ッ!
昨日律に仕掛けたように突然部室に入ると同時、唯へ襲いかかるゥッ。
梓「んあああぁぁぁあああああ~!! 覚悟ぉっ!」
唯「とあぁっ」
梓「へぶんっ!」
唯はソレに落ち着いて対処した。
自分の隣にあった椅子を掴み、中野目掛けて投げつける!
イエス! クリンヒットッ!
これは痛い! 中野ってば弁慶の打ち所を抑えて床をゴロンゴロン。
そこを唯が捕まえ、馬乗りにッ!
これは上手いぞ。 しっかり両膝で中野の両腕を抑えている。
今この瞬間、中野を支配しているのは唯だ!
唯「なに考えてるの」
梓「いや、えっと……ちょっと奇襲をと……」
唯「さて、どうされたいのかな。あずにゃん」
唯「今の私はあずにゃんにも手加減なしだよ」
梓「唯先輩、目がマジです……」
梓「だ、だけど! 私だって大マジです! 真剣ですよ!」
唯「ほぉ、じゃあこの状態からどうするつもりなのかな?」
梓「……くっくっくっ、唯先輩。私、能力を使わせてもらいます」
不敵に微笑む中野。突如、彼女のツインテールが逆立つ。
その姿、まるで……クワガタ!
唯「なにを……」
梓「くくっ、感じますか。電気の力を……ほら、いきますよ?」
梓『アズサエレキフラッシュ!!!!』
唯「!」
バリバリバリバリィィッ。梓を包む電気のバリアは唯をシビれさせるゥゥゥッ!!
どういうことだ中野! お前の能力は一つではなかったのか!?
唯「ぎゃああああぁぁあぁああああああああぁぁぁ!?」
このまま中野にくっついていればコゲコゲは免れない!
しかし、唯は中野を離さない!
なぜだ、なぜなんだ平沢唯ッ!
梓「くっくっくっ! このままだと死にますが!? 唯せんぱぁ~い?」
唯「わあああぁぁぁぁぁあああああ!?」
梓「いいことを教えてあげますよ! 私は現在能力を二つ所持しています!」
梓「唯せんぱぁい。私は逆境に追い込まれるほど強くなるんです! サイヤ人ですっ!」
梓「これも、くくっ! 純のおかげ! 奴のおかげで私はパワーアップしたぁ!」
梓「いわば私はただの中野梓じゃありません! あずにゃんですらない!」
梓「そう、私は……!」
唯「かんちょー!」ズブリ
梓「きゃひっ……!?」
つゥゥゥゥらぬいたァァァァッッッ!!!
唯が中野を貫いたァ!
しかしッ、いったいなにが!?
審判兼解説の山中さわ子! 私、今とても興奮しておりますッ!
梓「バカな! なにが……!?」
唯「ふふっ、あずにゃん。どうやら私もあずにゃんと同じみたいだよ」
唯「追い込まれるほど強くなれる……!」
梓「ちっ……!」
梓「しかし、いつのまに私のアズサエレキフラッシュから逃れてカンチョーを?」
唯「あの電撃の弱点がある!」
唯「威力が強いのは最初だけ。徐々に電気の力も弱くなっていったよ。貧弱だね」
梓「……」
梓「つまり、私のアズサエレキフラッシュに慣れてしまったと……しかしいきなり私に気づかれずにカンチョーした件は?」
唯「あずにゃんってばお話に夢中になってたから、簡単にカンチョーできたんだよ」
唯「ダメだね。自分に酔っちゃうタイプってやつは」
梓「畜生ッ……!」
中野! リーチッ! 唯と並んだ!
さぁ、戦いは加速する。
澪「お前もこのゲームに参加していたとはな、いちご」
いちご「悪い?」
澪「いやぁ、むしろ嬉しいよ。未知の実力を秘めた敵ほど面白い」
澪「いちご、お前は……私に勝てない!」
いちご「逆。あんたが私に勝てない」
澪「は……?」
いちご「断言してあげる。絶対に勝てない」
澪「ふん、私を前にしてこうも言い切れるだなんてな。見ていろ、すぐに私の恐ろしさに気づくことになる。そしてこの能力にな!」
いちご「……」
澪「じゃあな! 今日のところは見逃しておいてやる! あはははは!」
いちご(あそこまで言っておいてなんで戦わない?)
澪、相手を前にして逃走。なにを企んでいる、秋山澪。
そしていちごの絶対的勝利の自身、謎が深まる。
一方こちらはアンチ・カンチョー同盟。
実のところ私は彼女たちが一番気になるところだ。
そして今まさに、彼女たちの実力が開花するとき。
和「律、憂。くだらないマネはやめなさい」
律「くっ……和っ」
圧倒的威圧感! まるで目の前に巨大戦艦でもある様。
憂「和ちゃんには関係ないことだよ。邪魔しないで」
和「言うわね、憂。でも正直言って私にとってあなたたちの様な存在は邪魔なの」
和「早々にこのゲームを棄権するか、私にヤられたいか、選びなさい」
和「どちらか、一つの道を」
律「こ、こいつぅっ……」
憂「すごいプレッシャー……!」
憂(でも待って、ここで和ちゃんを仕留めれば)
和「無駄よ」
憂「!」
和「あなた達如きが私に敵うわけがない。そう月とスッポンの差なのよ」
憂(私の思考を読んだ? まさかこれが能力……?)
和「違う。私ぐらいの猛者になれば相手の思考を読むなんて序の口なのよ」
恐るべし、生徒会長和ちゃん。
もはや人間か疑うレベル。
律「う、うわあああああ!!」
憂「律さん!」
ここで律、和に襲いかかる!
これはあまりにも無謀すぎやしないか。
和「ノロい!」ズンッ
律「あぅ!」
律の突進を華麗にかわし、右手の人差し指を立てて律の背中を突いた。
なにやら律の様子がおかしい。和の前にひれ伏してピクリとも体を動かせずにいるッ!
律「か、体が動かない!?」
和「秘孔を突かせてもらったわ。体の自由が効かないでしょう?」
憂(っ、どうする? ここで律さんを切り捨てて逃げる!?)
憂、選択の時。
憂「逃げない!」ダッ
和「まったく愚かね」
憂「私はもう媚びぬ、退かぬ、顧みぬ!」
律「う、憂ちゃん……」
漢、平沢憂。狂敵を前にして退かないその勇気! 尊敬に値するッ!
和「ふっ、そこまで言うのなら……憂、あなたに相応しい駒をくれるわ!」
突如、憂に向けて伸びてきた髪の毛。髪の毛……!
憂はそれを冷静に手刀で叩き切る。
憂「これは……」
純「じゃじゃーん! ここは私にお任せを! ご主人様」
和「後は任せたわ」
純「ふふっ、なんてザマですか。律先輩」
律「鈴木さん!?」
律「どうしてキミが和に味方を!」
純「あの方は本当に素晴らしいお方……私を完膚なきまで打ちのめしてくれた。ああァ……!」
どうやらこことは別のところで和と純の死闘が繰り広げられていたようだ。
結果は……やはり和の圧勝。
純にもリーチがかかっているッ! これはチャンス!
純「SとMは表裏一体……」
憂「なにを言ってるの?」
純「さぁ、このまま律さんをヤられたくなければ私と戦え! 憂!」
憂「っ!」
憂VS純。
これは注目のカードの戦い!
憂「――――ううっ……」
律「う、憂ちゃん……やめてくれ、こんなこと……」
全身髪の毛によって雁字搦めに縛られ、天井から吊るされる憂。
その体はズタボロ。まるでボロ雑巾の如く。
やはり、能力とは絶対なのか。
純「うぇっへっへー……いい姿だねぇ、憂ぃ~」ツンツン
憂「あっ……ん……」グググ…
なんて厭らしい光景!
なんて素晴らしい光景!
憂は完全に純の手玉! 支配権は純の手の中にあるッ!
純「次は……こう結んであげる!」
髪の毛の拘束を解いたと思いきや、再び拘束。
おお、亀甲縛りである。
純「このまま調教してあげる」
憂「やめ……やめ、てっ……」
律「私は……無力だ」
憂、律、絶体絶命。
触手のように伸ばされるその髪の毛は憂の体を舐めるように動く。
憂(この状況を打破するには……能力)
憂(目には目を、歯には歯を。でも)
そう、まだ憂は己の能力を知らない。
それはなによりもカンチョニストとしての未熟を意味する。
憂(カンチョニストとして目覚めれば私は能力を……だけどそれはいや……)
律「憂ちゃん……私にもっと力があれば……畜生ッ!」
純「まだまだへばらないでね。もっと楽しむんだから」
憂「私は……私は……」
憂「常人を捨てるよっ!!」
純「なに?」
その時、憂の体に異変が!
憂、光る。
律「憂ちゃん……輝け、もっとだ、もっと輝けぇぇぇっっ!!」
純「えっ! なになに!?」
憂「……!」
憂「私の能力は、能力の否定」
さっきまで絡みついていた髪の毛が憂の体から静かに解かれていく。
能力の拒絶、能力の否定。いや、これは能力が憂を拒絶しているッ!
純「えぇ!? わ、私……能力解いてない! なんで!?」
憂「私に能力は無意味だよ」
そう、憂の能力は相手の能力の無効化。
対能力者用といっていいほどの絶大的効果。
どんな力だろうと彼女の前にしては無意味ッ!
そして!
憂(私の、持ち前の運動能力!)
純(私のバックをとった――――)
憂「かんちょー!」ズブリ
純「きゃっひぃ!?」
鈴木純、敗北。
純「 」ビクンビクン
律「や、やったな! 憂ちゃん!」
憂「……」
憂(これがカンチョニストの力……すごい)
憂「これで私はまたお姉ちゃんに近づいた……」
律「憂ちゃん?」
憂「あ、ごめんなさい。なんでもないです」
律「?」
唯「まずいよ、このまま和ちゃんと戦っても勝てない」
唯「なにか、なにか考えないと」
梓「まずいまずいまずい、このままだと純に……」
さわ子「純ちゃんは敗退したわ」
梓「え!? ほんとですか!」
さわ子「ええ。憂ちゃんにやられて、ね」
唯「憂……?」
唯「そうか、憂もついに覚醒したんだね。カンチョニストに」
さわ子「私が見ている限り、彼女は並みのカンチョニストでは敵わない。絶対にね」
梓「ふ、ふふっ! なんだか燃えてきましたよ。俄然やる気になりました!」
梓(次こそは、次こそは!)
唯「私はどうしたら和ちゃんに勝てるんだろう……」
脱落者1名! 鈴木純。
2日目終了。
3日目
澪「ん? 憂ちゃんじゃないか」
憂「あ、澪さん」
澪「律はどうしたんだ? ははーん、さては嫌気がさして同盟から抜けたな」
憂「いえ、そうじゃなくて。ちょっとはぐれちゃったんです」
澪「はぐれた……? ふっ、丁度いい。憂ちゃん、私とやろう」
憂「え」
澪「私の能力は遂に覚醒しきった。試し切りのようで悪いが……いくぞ!」
憂「!」
突如として始まる戦い! そう、これがカンチョーバトルロワイヤル!
自分の周りは敵だらけ、進む先進む先、全てに自らを阻む壁が存在する!
澪「さぁ、受けてみるがいい。これが私の、完全無欠の能力だ……!」
チクタク、チクタク。
教室の時計の短針が進む音だ。
チクタク、チ――――
短針の制止。
それはすなわち……
澪「時間停止っ! 私以外の全ての時間は止まったぁっ!」
澪「どうだ? これこそ最強の名にふさわしい能力だと思わないか、憂ちゃん」
澪「と、言っても聞こえてないか。ははは……さぁ、止めていられる限界は約10秒! さっさと仕留めさせてもらうぞ」
憂「10秒なんだ……」
澪「え゛」
澪、驚愕ッ。
そこには時間停止した憂ではなく、何事もなかったかのようにその場に立つ彼女の姿があった。
憂「澪さんが能力を教えてくれたお礼に、私のも教えてあげます」
澪「や、やめろ……くるなァ!!」
憂「私のは――――」
澪「ううぅ……おしりがヒリヒリするよ……」
憂「ごめんなさい。ちょっと思いっきりやっちゃって」
澪「いや、いいよ。これで目が覚めた」
澪「何を舞い上がっていたんだ、私は……」
澪「能力が完成した程度で。そう、私が目指すのは勝利だ!」
澪「自己満足なんかで終わってたまるか! じゃあね、憂ちゃん」
憂「澪さん……」
これが澪の真の覚醒の時である。
それにしても憂は今のところ参加者の中では撃退数が一番。
これは未来のカンチョニストクイーンの誕生か!
・・・
梓「はぁ、はぁ……はっ、ははは!」
梓「ザマァないですねぇ! 唯先輩!」
唯「……」シュ~…
場面変わって校庭だが。
おっと、まさかのリベンジ戦。
なんということか、死闘の末そこに立っているのは中野。
唯といえば地面にキスしてる様な状態ッ!
梓「遂に私は手に入れたぁ! 速さと電気の力! 両方の真の力を!」
唯「っぐ……」
唯(私が……あずにゃんに倒される……!?)
梓「はっはっはー!」
完全無欠、中野ちゃん。
梓「ふふ、後は唯先輩のそそる尻の穴にカンチョーすれば勝ち……へへへ」
勝った! 私は勝利を手にした!
そんな顔をしてカンチョーの構えをしつつ、唯へ近寄る中野。
だが甘いぞッ。勝負は最後までわからないものだ。中野ォ!
唯「そこだぁっ!」
梓「!」
梓「おっと……お痛はだめです。唯先輩」
飛んできた唯の拳を寸でのところで後ろに下がり、避ける。
梓「あなたはどうして能力を使わないんですか? あ、ごめんなさい」
梓「使わないんじゃなくて使えないんですよねぇ~? 能力持ってないんですもんねぇ~?」
唯「そんなもんなくたって私は十分やってけるよ」
梓「甘い甘い! そんなんだからこんなことになってるんですよ……」
瞬間、中野のツインテールが逆立ち、放電を起こす。
そして、クラッチングスタートの構え。
梓「完膚なきまで潰してあげますよ。この最大最強の技で!」
梓「さぁ、くらいなさい! エレキとスピードのコラボレーション!」
視界に唯の姿を入れ、睨みを利かせる。
どうやら狙いはしっかり定めたらしい。
唯「お喋りは隙を生むよ、あずにゃん」
梓「ふん、減らず口を……行きますっ!!」
――ビュンッッッ。
高速。いや、超音速。いやいや超光速ッ!
もはや、その姿を確認することは不可ッ!
絶対的速さ! 彼女に速さで勝てる人間はこの世にはいないッ!
校庭に立つ木々が吹き飛ぶ、だがその中で唯はひたすら踏ん張り、耐えるゥゥッ!
唯(どこ! あずにゃんはどこにいる!?)
目視など不可! 知覚することなど不可ァ!!
梓「わたしのk――――――――」
――シュウウウゥゥゥ~。
唯「……なんだこれ、バター?」
そこにあるのは脂の塊、黄色い固体。唯の言うとおりバターである。
はたしてこれはどういうことか?
唯「そうか……!」
唯「あずにゃんは速すぎた。だから、バターになっちゃったんだ!」
なんという恐ろしい事実。
自身の能力が身を滅ぼしたのだ。
遂にこのカンチョーバトルロワイヤル内に死人が現れてしまった。
そう、彼女は誰よりも速かった。いや、速すぎたのだ。
中野よ。人には越えてはならない限界がある。
中野梓。惜しくもゲーム敗退にして死亡ッ!
強敵(とも)の死を胸に、唯はさらなるステージへ……!
一方……。
和「そろそろ姿を現したらどう?」
「お、気づいていたんだ」
和「当たり前でしょう。あなたのことだからそうだと思っていたわ」
エリ「ふふふ」
和「……私がこのゲームに参加したのはあなたが目的」
エリ「知ってるよ。私を倒したいんだよね、和」
和「ええ。エリ」
和「同じ師から学んだ弟子同士……どちらが優れているのか」
エリ「おーけー……皆まで言うな」
エリ「私もそろそろケリをつけなきゃって思ってたところなんだよねー」
バッ、シュッ
和「いくわよ」
エリ「こっちもね」
彼女らは果たして人なのだろうか。
いや、化物か。
言葉では言い表せられないカンチョー合戦がそこにはあった。
お互い、力の出し惜しみはなし。
真剣勝負。
しかし、このままでは校舎の方が持たないッ。
和「場所を変えましょう! ここでは地球を破壊しかねないっ」
エリ「しゃーねぇ、よしっ、上へいくよ!」
和とエリは高く跳躍すると教室の天井を突き破り、上へ上へと昇っていく!
わかったッ。もうこいつら人間じゃないッ!
まだまだ上昇するッ、空をも抜けるッ。
そして宇宙(そら)へ。
戦いの舞台は遂に地球を、大気圏を越え、宇宙へ移った。
エリ「さすがにここなら大丈夫でしょ。それに邪魔も入らない」
和「そうね……では」
壮絶な肉と肉のぶつかり合い!
誰がこの展開を予想にできたか。
カンチョニスト、恐るべし。
エリ「やるね……それじゃあ私の本当の本気、見せたげる!」
懐から瓶コーラを取り出すエリ。コーラがどうした?
和「ふん、なら私も!」
突然眼鏡を投げ捨てる和。コンタクトに変えたか?
エリ「やっぱりその眼鏡で能力を封印してたんだ!」
和「そう! そして今が封印を解くときよ!」
和(私の能力、魔眼ッ! 全てを見切り、全てを捕捉する!)
和「私の、勝ちよっーーーー!!」
エリ「甘ぁい」
――ブシュウウゥゥゥッ。
向かってきた和目掛けて、コーラの蓋を開ける。
するとコーラが一気に噴き出すゥゥッ!
そして和の魔眼に!
しかし、ここは宇宙空間では……?
エリ「私たちにとって宇宙などもはや庭。宇宙の法則に囚われることはないの!」
なんと意味がわからない。
和「うぐぅっ!? め、目が……!」
和(な、なぜ!! なぜ魔眼が発動しなかったの!? あんなコーラ如き……!)
エリ「ふふん、あれから自力で特訓してね。能力をもう1つ発現させたんだよ」
エリ「私の攻撃は必ず相手に命中する能力をね! 和、あんた対策を練ったかいがあったよ」
和「くっ――――」
エリ「浣腸ッ!」
――ズブリ、ズブリ。
――ヒュ~~……ドォォンッ。
和「……ぐ、あ…………っ」ピクピク
二人はどうやら地球へ戻って来たようだ。
決着がついたか?
おっと、真鍋和が惜しくも敗退!
エリ「どう? 私の二連突きの味は」
和「最っ高よ……エリ」
エリ「これでどちらが強いかよくわかったね。それじゃあ……」
危ない雰囲気を醸し出しながら果てている和のもとへ近づくエリ。
一体何をするつもりなのか。
エリ「さぁ、敗者は死をもって勝者を祝福するんだ」
手刀が和の喉元に当てられる。
まずいッ! これはまずいッ! 非常にまずいッ!
しかし、私にこれを止める術はおそらく無い!
「そこまでにしておくんだよ」
エリ「!」
「これ以上はやり過ぎさ。私の可愛い弟子よ」
和「あ、あなたは……なぜここに……」
エリ「とみ師匠」
「残念、私はとみじゃないよ」
エリ「え? でもその姿は……」
とめ「私の名はとめ。とみの双子の姉さ」
和「そ、そんな! 初耳ですっ……」
とめ「言ってなかっただけだからねぇ。私があんたたちに教えを説いたこともある」
とめ「こういうの、面白いだろう? ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ」
和・エリ「……」
とめ「とみの方は今頃、最凶のカンチョニストを目覚めさせている頃だよ」
エリ「最強? 聞き捨てならないなぁ……」
とめ「やめておきな。あんたらじゃあ到底敵いっこないさ……くくっ!」
・・・
律「ここは」
とみ「目が覚めたかい?」
律「あなたは確か……唯の知り合いのおばあさん?」
とみ「一文字とみだよ」
とみ「さぁ、話はここまで。あなたには最凶のカンチョニストになってもらうね」
律「は……? 最凶?」
とみ「詳しく言うと、あなたの中にいるもう1つの人格を目覚めさせる」
律「もう1つの人格? おばあさんさっきから何変なこと言って――」
ガチャリ
澪「ん? 律、それに……」
とみ「おやおや、飛んで火にいる夏の虫かい?」
憂「あれ、おばあちゃん? 律さん?」
とみ「あらあら、憂ちゃんまで来たのかい? わざわざヤられに来たのかい?」
律「お、おい……あんたなに企んで……」
とみ「ふふっ」ス
律「うわっ、なにすんだよ!? カチューシャ返せよ!」
とみ「このカチューシャが封印していたんだねぇ、最凶を」ニコニコ
憂「おばあちゃん……?」
澪「憂ちゃん、気をつけろ。様子がおかしい」
とみ「さぁ、解き放つんだよ。力を」
――ドクン。
律「うっ……!」
澪「律!」
律「く、来るなっ!! 来ちゃダメだ……わ、私が……」
澪「え」
律「もう1人の私が、めざめ……うぐぅっ!? に、逃げろ! 逃げてくれ!! 私が私であるうちに……っ」
とみ「うふふ」ニコニコ
澪「り――」
律「うわあああああぁぁあぁぁぁあああ!! や、奴がくる! 出てくるぅぅぅ!!」ドドドドドド…
澪「り、律……?」
憂「澪さん危ないっ!」
とっさに澪を突き飛ばす憂。
同時、「カンチョー」と禍々しい叫びと共に肛門を貫かれる。
憂「ああぁっ!」ズブリ
澪「憂ちゃん!? だ、誰だ……誰が……」
「私だよん」
そこに立つのは律。
髪を下ろしたりっちゃんの姿が。
澪「律……?」
とみ「いいや、違うね。この子こそ最凶のカンチョニスト」
膣「田井中 膣とは私のことだよん」
澪「膣……?」
澪「な、なんて卑猥なネーミングだ! 律、目を覚ませ!」
膣「でへへっ」
澪「ダメだ……目が既におかしい……」
とみ「この子は純粋なカンチョリストさ、純粋すぎるほどの」
とみ「なによりもカンチョーを好む。三度の飯よりカンチョーを好む」
とみ「まさにカンチョーをするためだけに生まれてきたカンチョーマシーン」
膣「カンチョー! カンチョー!」
澪「そんな……そうだ、憂ちゃん! 憂ちゃんしっかりしろぉ!」
憂「……」
澪(くっ、あまりにも強烈な一撃で失神を起こしてる……)
とみ「さぁ、行きなさい。膣! あなたのその手で全ての肛門をつらぬぐふうううぅぅっ!!」
――ズブリ。
とみ「ば……ば……ばかなっ」
膣「うへへ、カンチョー! カンチョー!」
――ズブリ、ズブリ。
とみ「あ゛ああぁぁぁあああっっっ!!」
膣はとみの肛門へ何度も何度も追い打ちをかける。
その様子はまるで無邪気な子供がおもちゃで遊ぶかの様。
膣「えっへっへー」
とみ「や、やめなさい。これ以上奥まで入れては……はんぐっ!?」
――ズブリ。
澪「やめろ律! これ以上はおばあさんが!!」
膣「うきゃっきゃ」
――ズブリ。ドババアアアアァァァァァァッッッ……ビチャ、ビチャ。
膣のカンチョーは天をも貫くドリルと化す。
肛門を裂いて、全身をも貫かれたとみは無残な肉塊へと変貌する。
澪「うっ……!」
膣「あはぁ……」
澪(誰だ、こいつは誰だ……こんなの、こんなの!)
澪「律じゃない!」
膣「膣だもーん。げへへ!」
坦々と距離を詰めてくる膣。
ダメだ! こいつとやり合うには澪! お前にはまだ早いッ!
澪「くっ、時よ――――」
膣「時間停止ィッ!」
制止する時間。ただ一人、膣を残して。
膣「私の能力は相手の能力を奪う能力。制限はない」
膣「残念だったな。澪」
膣「カンチョー!」
――ズブリ。
膣「これであと一回だ……ん?」
――ガシッ。
憂「っ……」
膣「もう目を覚ましたか。憂ちゃん」
憂(なんか急に雰囲気が……)
膣「そうか、キミの能力は能力の無効化だったなぁ」
膣「しっかりと、奪わせてもらうよ」
憂「だ、だからなんですか! 一体何を……」
膣「私は最強にして最凶のカンチョニストを目指……おっと、そろそろ限界か」
そして時は動き出す。
同時、澪が肛門に走る激痛に苦しみ、床を転げ回る。
澪「うわあああぁあぁああああああぁあぁああああ!?」
膣「ははは! なんて滑稽な姿だ! 澪!」
憂「み、澪さん!」
膣「覚えておけ! 私は田井中膣! 最強の座に君臨する者だー!」
憂「……あ、悪魔」
怒涛の3日目ッ!
中野梓という尊い犠牲を背負い、唯はどこへ行く。
そして遂に現れた最凶のカンチョニスト。
一文字姉妹の目的とは?
エリの力は?
来るは、戦い。
来るは、敵。
来るは、力。
脱落者3名! 中野梓。真鍋和。
3日目終了。
4日目
唯「和ちゃんが、やられた……?」
澪「ああ、エリに。詳しくはよくわからないけど」
唯「そんなバカな話ないよっ」
澪「でも事実だ。それよりも唯、私たちにはまず倒さなければならない相手がいる」
憂「律さんですね」
澪「違う! 奴は膣だ! 律なんかじゃない!」
唯「膣? りっちゃんは?」
憂「膣さんは……律さんのもう1つの人格なの」
澪「奴の能力と運動能力は凶悪だ。1人じゃ敵いっこない。だから……」
唯「嫌だよ!」
唯「手を貸せって言うんでしょ? やだ!」
澪「唯! 膣は本当に強いんだぞ!?」
唯「だったら尚更だよ。ちっちゃんは私がやる!」
澪「唯!」
憂「お姉ちゃん!」
唯「ワクワクするね」
澪・憂「え?」
唯「2日前なら私より強い人なんて……とか思ってたけど」
唯「相手が自分より強いほど、ワクワクする」プルプルプル
唯、武者震い。
胸の高まり、治まることはない。
そう、これが今の平沢唯だ。
憂「……お姉ちゃん、どうして私がこのゲームに参加したかわかる?」
唯「ん?」
憂「お姉ちゃんがもうカンチョーなんて嫌いなんて思うようになるまで」
憂「完膚なきまで叩きのめすために参加したんだよ」
澪「えー……」
唯「ふふふっ、だったらやってみなよ。憂」
憂「この為だけに今日まで生き残ってきた。お姉ちゃん」
憂「今の私を倒すことができなければお姉ちゃんは膣さんに勝つことはできない。だから!」
唯・憂「勝負ッ!」
澪(な、なんだ……この威圧感は……! 互いが互いを……これは……!)
澪「見える、見えるぞ……今の私にはあの子たちのカンチョー力が……!!」
澪、第2の能力を開花させる。
そして始まる平沢姉妹の対決。
澪「唯のカンチョー力が爆発的に上がっていくぞ……9000、いや、9566!」
唯「これが私の全力全開!」
憂「まだまだ、そんなんじゃ膣さんには勝てない!」
澪「11024!? ば、バカな……カンチョニストとして目覚めて間もないのに」
唯「大事なのは数値じゃない。それに私の力はそんなもんじゃ計り知れないよ!」
動く、唯。一歩一歩、力強く、地を踏みしめながら。
負けじと憂迫る。
彼女たちが歩みを進めるたび、大地が大気が地球が震えるッ!
憂(お姉ちゃんには能力がない。つまり力と力のぶつかり合い!)
唯(憂には小手先の手段は通用しない。恐らく、一撃でこの勝負)
唯・憂(決まるッ!)
澪「互いが互いを全く譲らない真剣勝負……見届けさせてもらうぞ、唯。憂ちゃん!」
一瞬の静寂。
そして嵐、吹き荒れる。
憂「はっ!」
静の憂、掌底を瞬時に唯の懐へ叩きこむッ!
だがしかしまだ終わらない!
怯んだ唯の頭をむんずと掴むと膝蹴りをお見舞いッ!
澪(終わった……!)
唯「ううん! まだだよ!」
恐るべし唯。重い一撃を顔面に受けようと戦意を喪失させない。
動の唯、拳を握りしめると憂の腹部目掛けて連続殴打ァッ!
だがしかしまだ終わらない!
打つべし、打つべし、殴るわ、殴るわ、止めることを知らない!
唯・憂「ぺっ……」
互いに血が混ざった痰を顔に吐きつける。
これが姉妹か、これがあの仲良き姉妹の姿か、これがッ!
不和が戦いを呼び、戦いが不和を呼ぶ。
澪「そうかわかったぞ! これが平沢姉妹の姉妹喧嘩……!」
唯「次で終わらせるよ、憂」
憂「奇遇だね、私もそう思っていたところ」
澪「カンチョー力が!! そ、そうか……これはカンチョー合戦! カンチョーしたもん勝ち! つまり!」
澪「あの殴り合いは無意味! そう、挨拶みたいなものだったんだ」
憂「やああああぁぁぁぁー!!」
突っ込む憂。突進。
彼女の心は折れない。
ただただ、ひたすら真っ直ぐのみ。
唯「必殺……!」
迎え撃つ唯。
真っ直ぐ、正面見据えてどっしり構えるその姿、まさに武士。
嗚呼、もはや何も言うまい。
この戦い、勝者は――
唯「唯式・雲丹<うんたん>ッ! かんちょー!」
――ズブリ。
・・・
エリ「たいらのさわただ?」
とめ「そうさ、平 沢唯。平安時代に活躍した超元祖のカンチョニスト」
とめ「彼奴は自分より強き者を欲し、戦そっちのけで日本中を駆け巡ったそうだよ」
とめ「平家の将の癖に、ね」
エリ「そんな話、このカンチョーバトルロワイヤルとなにが関係あるの?」
とめ「まあ、聞きな。そんな沢唯がついに見つけた宿敵、それが……」
エリ「田井中膣?」
とめ「わかってるじゃないか。妖怪・膣。沢唯はなんとか膣を倒したが、あまりにも強大すぎるその力を封印した。ある家系にね」
エリ(その家系、とんだとばっちり受けてない?)
とめ「後に沢唯は自分が編み出した奥義を書き連ねる。それがこの奥義書・京怨」
とめ「私ら姉妹はこの書物に記された秘奥義をこの目で見届ける為に再び膣を解き放ったのさ」
とめ「膣を止める者……天敵、平 沢唯の生まれ代わり、平沢唯。ふぇっふぇっふぇっ!」
とめ「さぁ、時間だ。行こうかい、我が愛弟子よ」
エリ「う、うん」
憂「いたた……」
憂「もう、お姉ちゃんってば思いっきりやるんだから」
憂「可愛いおしりがこんなに真っ赤っか」
憂「……」
憂「止められるよね、お姉ちゃんなら。膣さんを」
憂(それにしてもあの必殺技……とんでもない)
憂「あれがお姉ちゃんの必殺技……!」
平沢憂。敗退ッ!
膣「よう、そろそろ来る頃だと思ってたぴょん」
唯「あれがちっちゃん? りっちゃんが前髪下ろしただけじゃない?」
澪「外見はそうだけど、中身は全くの別人だ……」
膣「澪も来たのかよ。なんだか観客が多いなぁ、げへへ」
澪「観客……?」
膣「さぁ、やろうぜ! カンチョー合戦を! その為に来たんだろう?」
唯「もちろんだよ!」
膣「げっひゃひゃほひー! いいねいいね! せいぜい私を楽しませてくれ!」
唯「それはこっちの台詞だよー!」
澪(一気に辺りの空気が重く……っ。どちらともとんでもないカンチョー力だ!!)
膣「何百年ものあいだ眠り続けてたんだ。しっかり楽しませてもらうさ」
膣「お前のそのそそる尻でなァー! ファーックしてやるぜ!」
唯「むむっ」
澪(膣、ふざけた奴だがあなどれない! なによりも怖いのはあの能力!)
澪「唯、気をつけろ。あいつは私の時間停止能力を使える」
唯「問題ないね! 澪ちゃんはここで黙って見てて」
唯・膣「何人たりとも、私たちの邪魔したら突き殺す」
澪(すでに戦いは始まっているんだ……! 唯、律を、律を助けてくれ! 膣なんかに負けるな!)
――ドドドドド。
今、歴史に残る戦いの火蓋が落とされる。
勝っても負けても文句なし。
それが、カンチョーバトルロワイヤルゥッ!! ファイッ!
澪「膣の能力は能力を制限なく奪う能力……今あいつが持つ能力は私のものと憂ちゃんのもの」
澪「能力を持たない唯に対して憂ちゃんの力は無意味。ということは……」
エリ「残念だけど、私たちがモタモタしてる間にもあいつは動き回っていたんだよ」
澪「エリ!? それって、どういうこと……」
エリ「他にも奪われちゃっててね。和、梓ちゃん、とみ師匠……」
エリ「つまり今のあいつは」
澪(か、勝て……勝つんだ、唯……!)
無力な彼女たちの目の前で繰り広げられる強大な力のぶつかり合い。
唯と膣、その力は同等か。
膣「違うな! 私にはお前にはないものがある!」
唯「!」
膣「時間停止ィッ!」
膣「これは澪の力だ。唯ッ!」
能力の発動ゥ!
止まる時間。止まる唯。
全ての時の流れは膣のみを残して止まるゥゥッ!
膣「さぁ、唯。お前はあと一回カンチョーされれば終わりだったな」
膣「いっひひひ、無様だなぁ? これでお前も終わりだぜ」
膣「そら、カンチョー!」
――ズブッ。
膣「……?」
膣(貫いた手ごたえがない……)
タイムオーバー! 止まった時は動きだす。
膣「ぐっ……それどころか! 手が、穴から、抜けないだとっ!?」
唯「ふっふっふっ……」
唯「これは和ちゃんの技、白刃取りを私なりにアレンジしたもの」
膣「てめぇ! 時間止める寸前で肛門を締めやがったな」
唯「そっちが能力でくるのなら、私は技で勝負だよ!」
技と能力。
肉体と精神がなす、異形の力。
澪「すごい! 時間停止宣言を予測して技の設置! 常人がなせることじゃないぞ!」
エリ(あれが唯の力か)
とめ「違うね、あの技は私が和に教えたもんさ」
膣「余計なマネを! 楽にヤってやろうかと思ってたのにさー!」
唯「それこそ余計だよ」
膣「そうかよ。それじゃあこいつを受けな!」
バリバリバリ。律の体が放電を起こす。
この力は、まさしく梓の能力。
膣「アズサなんとかフラッシュ」
唯「ふん……できそこないの力だよ。それは」
膣「そいつは使い手が悪かっただけだな!」
青い火花が散るッ!
律が放出する電撃は唯へ牙を向けるゥッ!
唯、感電。
唯「うああああぁぁああああ!?」
唯「……けほっ」
肉と髪、制服までもが焼け焦げる。
焼けつく匂いがとても鼻障りだ。
唯は顔をしかめると、膣に跳び付いた。
が、単純な動きは魔眼を持つ膣には通用しない!
膣「我武者羅は通用せんなぁ」
唯「ちっ……」
膣「ふんっ、時間て――」
唯「とりゃっ!」
唯の咄嗟の右フックが炸裂! 膣はそれを両手で受け止めるゥゥ!
膣「……やるじゃない」
唯「思った通り。能力の併用はできないみたいだね!」
澪「そうか、能力をいくら持っていようと同時に使用することは不可。状況を判断して使う能力を見極めなければならない……」
エリ「だけど、それがわかったところで」
膣「む い み ! フラァッシュ!!」
唯「ああああううううぅぅぅぅっっ!?」
唯「……ううっ」
膣「近寄れば電撃が火を吹くぜ。そしてお前の動きは魔眼の力で全て見切れる」
膣「それに加速、時間停止。あとはー……へへへっ」
唯「……?」
膣「ばばあの能力。喰らってみるか?」
澪(ばばあ……とみばあさんのことか)
エリ「師匠の能力はかなり厄介だよ。それも反則級だ」
澪「……まさか!」
澪「は、離れろ唯! その距離はまずい!!」
膣(本当はこんな力に頼りたくはなかったが……もう十分さ)
膣「お前の顔は見飽きたぞ! 唯!」
唯「なにを――――」
膣「くっ、くきぇ。くきょきききゃけかけけこきかこ……!」
唯(なにをしたの? ちっちゃんは……)
膣『私にそのそそるケツを差し出せ。唯』
唯にそう囁くと、妖しく笑う膣。
その能力の実態ははたして。
唯「……」
唯「はい。ちっちゃん」
何の抵抗もなく尻を差し出しだァァッ!
なにが、なにがどうなっている! 平沢唯!
澪「ゆ、唯ぃ!」
エリ「あれが師匠の能力。自身の一定の範囲内に侵入した相手の意識を奪い……」
膣「そう、絶対服従させる……! 問答無用でなぁ」
唯「……」
澪「唯いいぃぃぃ!!!」
唯、絶体絶命。
膣「この能力のせいでもう1人の私は簡単にあのばばあにほいほいついて行っちまったみたいだが」
膣「ありがとよォ! ばばあァ~!! この力は私が有効活用させてもらうぜ!!」
エリ「あの力がある限り、能力効果が効かない憂ちゃんでしか膣に近づくことは不可能」
澪「憂ちゃんは……いないっ!」
膣『唯、お前は犬だ。ケツを振って喜びな』
唯「わんわんっ!」
まるで飼い主にじゃれる飼いならされた子犬のように尻をフリフリ、歓喜の唯!
その光景に腹を抱えて転げ回る膣!
本当の犬かの様に手玉取られているではないか。
唯「へっ、へっ、へっ……」
膣「あひょひょひょひょ! 次はなにをさせるかなぁ~」
澪「……っ! もう我慢の限界だ! 唯、今行くからな――――」
とめ「バカなこと考えてんじゃないよ。穣ちゃん」
澪「い……っ!?」
唯の助太刀へ向かおうとした瞬間、いつのまに後ろを取られていたのか、
一人の老婆に尻を鷲掴みされていた。
澪「あなたは!」
エリ「私のもう1人の師匠。とめ」
とめ「私らばばあは双子の姉妹でねぇ……どうだい。見分けがつかんだろう?」
とめ「あんたも言われたはずさ、穣ちゃん。あの2人の邪魔はダメだ」
澪「でも! あんなのって……」
とめ「どちらにせよ、あんたじゃあの化物に敵いっこないよ」
澪「ぐっ……」
エリ(あれで終わるというのなら唯の実力もそこまでだったというわけだ)
唯「わんわんわんっ!」
膣「お~よちよちよち~。すぐにカンチョーしたげるねぇ~」
エリ(さぁ、どうする!? 唯ッ!)
唯「く~ん♪」
「ふっふっふっ……まったく、この程度ですか。唯先輩」
膣「あん? なんだ、どこから声が――」
――ツルンッ。
膣、転倒。しかし、なぜ?
答えは膣の足元にあるゥゥッ!
澪「あれは……バター?」
膣「なんだこいつはぁ!?」
なんということか、あの時バターになった中野ではないか。
彼女は死んでいなかったのだ。そう、バターになっただけだったのだ。
バター・中野は魔物スライムの如くネトネトと動き、膣の体へへばり付く!
膣「うわっ、やめっ……! 貴様ァ! 邪魔をするなァァッ」
バターアズサ「邪魔? 違いますよ。私はただの道端に落ちていたバターですから
べ、べつに唯先輩のためを思っての行動じゃありませんからねっ」
中野、しぶとく膣にくっつく。
ベタベタのバターは見る見る膣の全身に広がり、まさにバター人間。
そこに唯が四つん這いで喜んで跳びかかるッ!
唯「ぺろぺろ」
舐めたァッ!
唯が膣を舐めまくっているゥッ!
膣「や、やめっ……ひぃんっ!」
おやおやおやおや? 顔を赤くしてなにを感じてるのか膣ゥー。
行動を止めることなく、むしろ舐め速度が加速する唯! バターアズサぺろぺろ!
澪「そうか、唯は今犬! つまり唯は……!」
唯「ぺろぺろ、ぺろぺろ」
エリ「バター犬……!?」
澪「そして梓が能力攻撃を受けないのはバターだから! 運を味方につけたなっ、唯!」
とめ(そう、平 沢唯は運すらも味方につけるカンチョニストだった。そしてどうやらそれはしっかりあの子にも受け継がれているらしいねぇ)
膣「あははははっ!? やめろ、やめろ、やめろぉっ!! の、能力解除っ」
唯「ぺろぺ……必殺」
膣「なにっ!」
膣(す、すぐに魔眼を発動し――――)
――ガシッ。
膣「あがっ……!?」
魔眼発動には数秒のラグがある。この瞬間を狙われ、即座に唯の手が膣に伸びる!
膣の顔面を覆うようにがっしりと掴んだァッ!
唯「……魔眼殺し」ニヤリ
膣「うわああああちくしょおおおおっ!! ふ、フラッ――」
唯「遅いよ! 超必殺!」
とめ「おほっ! ついに来るかぁ!?」
唯「唯式・愛子<あいす>!」
膣「うおおおおお!?」
顔面を覆った手で思いっきり膣のその頭部を地に叩きつけ、脳震盪を起こさせた。
そこに追い打つように両手を使って膣の体をがっしりロック!
それはまるで赤子を包む母の姿……ではない。
唯「かんちょー!」
――ズブリ。
膣「うあっ……!」
唯は器用に両足を使って膣の穴へその槍をぶち込んだ。
カンチョーは手だけだと誰が言った! 足はダメだと誰が言った!
田井中 膣。ついにリーチッ!
エリ「流れる様なあの鮮やかな動き……師匠、あれが!」
とめ「……違う」
エリ「え?」
とめ「あれは秘奥義なんてものではないッ! たんなる技にすぎないッ!」
とめ「なぁにをしている!! 秘奥義じゃ! 秘奥義を見せろって言っているんだよおおぉぉぉ!!」
澪(秘奥義……?)
唯「……なんのことかわかんないけど、おばあちゃん。今のが私の全力全開の必殺技だよ」
とめ「そんなはずないッ! お前は最強のカンチョニスト、平 沢唯の生まれ変わり! 秘奥義だ! 秘奥義を使えェッ!」
唯「私は私だッ! 邪魔をしないで!」
とめ「ぐ、ぐううぅぅ……! 生意気を……!」
膣「あ、ぐ……ちくしょう」
膣「チクショオオオオオオオオオオ!!」
膣、咆哮。
それは全てを恐怖させ、震えさせる魔獣の雄叫び!
唯の胸の中で猛り狂う膣は我武者羅であった。
膣「ウオオオオオォォォォォ!!」
雷を体内から放出し、覆いかぶさる唯を吹き飛ばすッ!
キレた、膣は最っ高にキレたのだッ!
自分に一撃が与えられてしまったことにッ!
膣「私のアナにぶちこむやがったあああ!? ありえねえええぇ!!」
唯「……」
膣「はぁ、はぁ……私は、私は誰にも倒されないぞ……」
膣「そうだ! 私を倒せるのは私だけだ!」
唯「ちっちゃん?」
澪「あいつ、まさか!」
とめ「貴様! 死ぬ気か!? そんなことは私が許さんっ!」
膣「外野が口出しするな!!」
とめ「こうなれば……やむをえんッ!」
瞬間、澪の尻を鷲掴みしていたとめの姿が消え、膣の傍へ突然現れる。
これがとめの能力、瞬間移動。
とめ「勝手は許さないよ!」
膣「私の自由は私のものだあァァッ!!」
膣「そして私の最凶は私のもの! 最強も私のものッ!」
とめ「このっ、強欲者がぁ!」
膣「……ならばばあ。あんたの命も私のもんだ!」
途端、辺りが眩しさに包まれる!
膣の体が輝いているではないか。異常な輝き。これは!
膣「唯ィィ! こいつはもう1人の私の能力だ。最後によく目に焼き付けておけ!」
唯「ち、ちっちゃん! ううん、違う。あれは……りっちゃんだ! りっちゃん! やめてっ!」
澪「唯! 危険だ! 逃げるぞっ!!」
唯「だ、だめえええぇぇぇ!!」
律(へ、へへへ……ザマぁないな……)
膣「あっひひひひ! 私は最強――――」
とみ「ひっ――――」
バターアズサ「ちょ――――」
――ドオオオォォォンッッッ。
律、隠された能力。それは自爆。
最凶のカンチョニスト、妖怪・膣と元凶、狂いし老婆・とめを共に、自らを犠牲にして。
律は散った。
死闘繰り広げられし舞台は今、静寂に包まれる。
そこに吹くは風。
魂を運ぶ風である。
なにも、なにも残されることはない。
唯「……」
澪「律……律は膣を倒す為に身を呈して……」
エリ「師匠。愚かな人……」
唯「なにも言い残すことはないよ。私は私がやれること全部やったんだもん」
澪「唯……」
唯「でもまだ、まだカンチョーバトルロワイヤルは終わってない!」
唯「最強のカンチョニスト、決めようよ」
エリ「ふふっ、それでこそだよ。明日を楽しみにしてる」
澪「私は……私は……」
澪「唯! お前を倒すんだ、私は……!」
唯「いつでもかかってきてよ。澪ちゃん!」
澪「ああ!」
互いが互いの力を認め、互いが互いの勝利を譲らせない。
夢見るは勝利。栄光をこの手に。
勝利の果てにある最強の称号。
最強の果てにあるものは、
最強の果てに掴むものは、
最強の果てに……嗚呼。
多くの犠牲を背負い、彼女たちは行く!
決戦の地へ!
脱落者2名! 平沢憂、田井中律。
4日目終了。
5日目
唯「――はぁ、はぁ、はぁ……」
澪(唯のカンチョー力がみるみる下がっていく……)
エリ「これが全力全開? 冗談はやめてよ、唯」
澪(反対にエリのカンチョー力は上がり続けてる! 止まることを知らないのか!?)
澪「じゅっ……134500!」
エリ「まだまだ、こんなもんじゃない!」
唯VSエリ。
現状はエリが唯を圧倒ッ!
エリのもう一つの能力、その名も!
エリ(コーラ・ドーピング)
エリ(コーラを飲むたびに私の力は上がっていく! 限界は……)
エリ「ないッ」
唯「うぐっ……」
エリ(そして私の攻撃がかならず相手に命中する能力で)
エリ「とおっ!」
唯「かはっ!?」
エリ(確実に体力を削っていく。唯、もうボロボロだね)
余裕の仕種で懐から瓶コーラを取り出して口にするエリ。
カンチョー力の上昇。計り知れないこのパワー。
澪「化物だ……!」
エリ「ふふーん」
唯「まだ、まだだよ! まだ終わりじゃない!」
エリ「そうっこなくっちゃね!」
澪(唯が立て直した……カンチョー力が……)
澪「爆発的に上がっていく!!」
これは、もはや人の形をした兵器。
カンチョーという名の戦いの為に生まれた戦闘マシーンッ!
エリ「唯、いまの唯の目は……真のカンチョニストの目だよ!」
唯(そうか……これが……)
唯「これが゛私゛なんだね!!」
澪「な、なんだ!? 唯が輝いているっ!! あ、あれは……あれはまさか!」
エリ「能力の覚醒……!」
唯「むむむむっ……!!」
唯「必殺ゥゥゥ……」
大気の振動。
大地を揺るがすほどの力の溢れ。
天をも貫く、銀河をも貫く、全てを貫く武士の槍。
構えるだけでその威圧ッ!
これが、唯のッ!
澪「これが唯の……!」
唯「私の、私だけの必殺技アアアァァァッッッ!!」
唯「唯式・義射太<ぎいた>ァ――――」
エリ「浣腸!」
――ズブリ。
唯「きゃうんっ!?」
エリ「悪いね、私の勝ちだよ」
澪「そんな……っ!」
エリ会心の一撃ィッ!
それは唯のそそる尻穴の中へッッ!!
ついに平沢唯! 敗北ッ!
唯「……」
エリ「あのね、唯は隙が多すぎるんだよ」
エリ「だからこんなに簡単に近づかれる」
エリ「いいセンスしてたよ、唯。今度もっと強くなってから……」
唯「……」
エリ「唯?」
澪「……立ったまま、気絶してる」
エリ「あははっ、すごい精神力だ! 見込みあるよ、この子」
澪「ああ……! だって唯は――」
「カンチョー」
――ズブリ。
澪「ひぐぅんっ!?」
エリ「なにっ……!」
「カンチョー」
エリ「あぁんっ!」ズブリ
澪「うっ……ぐ……そんな、バカな……」
エリ「……お前は!」
いちご「……」
エリ「いつのまに! 気配は感じられなかったのにっ」
いちご「私の能力は」
いちご「勝負に絶対負けない能力。争い事だろうと、賭け事だろうと」
いちご「私が負けることはないの。絶対に」
エリ(ウソを言っている感じもしない……それにこの自身に満ち溢れた顔……)
エリ「とんでもない能力だ……ふふっ、負けたよ。……あとは、せめて優しくして……ね」
いちご「わかった。カンチョー」
――ズブリ。
決まったァ……。
勝者、若王子いちごォォッッッ!!
最強の称号を手にするは彼女だああァァァッッッ!!
さわ子「この5日間、長かったようで短かったような」
さわ子「見てるだけで手に汗握らせられたわ。こんなの初めてよ」
さわ子「だから結果はどうであろうと、私はなにも言いません」
さわ子「最強のカンチョニストはあなたよ。若王子さん」
いちご「……」
いちご「そんなの別にどうでもいいです」
さわ子「え」
いちご「このゲームに参加したのはただの気まぐれ」
いちご「暇つぶしだから」
さわ子「ちょ、ちょっとまってそry」
いちご「それじゃあ私、部活行きます。さよなら、山中先生」
さわ子「え、ええ……さようなら……」
斎藤「お嬢様、プロジェクトは滞りなく進められております」
紬「そう、よかった」
紬(私自身が最強のカンチョニストになれなかったというのなら……)
紬「私が作ればいいのよ。最強のカンチョニストを」
ゴウン、ゴウン、ゴウン…
ゴポポポポ…
紬「ああ、今手が動いたわ! 斎藤っ」
斎藤(なんと、なんとおぞましいカンチョー力だ……)
斎藤(それにしてもお嬢様は恐ろしい……人間を改造だと……?)
和「 」
純「 」
バターアズサ「 」
ゴポポポポ…
紬「ふふふ、楽しみね。斎藤」
斎藤「バターが混ざってませんか……?」
澪「律、今日はいい天気だな」
澪「……あのね、律。私、最強のカンチョニストになれなかったよ」
澪「とっても悔しいけどさ。私、まだ諦めないんだ……!」
澪「いつか誰よりも強くなってみせる。だから律」
澪「天国から私を見守っててくれ……」
「おいおい、人を勝手に殺すなよな」
澪「え!?」
律「よっ」
澪「り、律……律!?」
律「何度も言うけど私はカンチョーなんて断固否定だからな!」
澪「し、しるかっ! 私の、私の……勝手だろぉ……」グスン
律「おいおい、泣くなって。澪」
澪「律っ、律っ、律ぅぅっ!」ギュッ
律「……」ス…
膣「おひょ……」ニヤリ
平沢家
憂「今日はとってもいい天気ー♪ 洗濯物もこれならすぐ乾くね」
憂「……」
「必殺……」
唯「唯式――」
憂「返しっ!!」ドン
唯「あいたっ! 強くなったみたいだね、憂!」
憂「あぁーもうっ! もういいかげんカンチョーに飽きてよ!」
唯「やだよ~。まだまだカンチョーするよ~!」ウキウキ
憂「もぉ、いやぁ……」
こうして多くの謎を残し、物語は幕を下ろすのであった。
カンチョニストたちの明日には何が待つ。
何があろうと目指すは敵の尻穴一つッ!
さぁ、高らかに叫べッ! あの言葉をッ!
カンチョニストよ、永遠に。
さわ子「はぁ、馬鹿みたい……」
おわりッ!


