1 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 18:46:18.35 vKptIOvN0 1/66


「つーんつん」

「やですってば。」

 唯先輩は私のおち○ちんで遊ぶのがすきだ。

 ベッドに入るとすぐ、やわらかなペニスの先端を指先で弾くようにしていじることからはじめる。

 正直、あまりきもちくはない。だけど。

「おお、おっきくなってきた。」

 こうして自分のいちぶがしっかり反応してしまうことがみょうに悔しい。

「じゅーんちゃん。おっきくなったよ?」

「……」



元スレ
唯「ちんちんつんつん」 純「やめてくださいよぅ…」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1297071978/

3 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 18:47:54.36 vKptIOvN0 2/66

「つつつー……」

「っ!」

 乾いた亀頭の周囲を、指の腹でなぞられる。痛くて無意識に体がぴくりと撥ねてしまう。

「えへへ。今びくってしたね。」

 嬉しそうな声で先輩は言う。

 その悪気のない顔をみると、抗議の声をあげることもできない。

 唯先輩はそれからベッドに肘をついた姿勢で寝っ転がる。

 ちょうど、私の股間あたりに先輩の顔がくる位置関係だ。

 恥ずかしくて脚を閉じてしまいたいのに、先輩はそれをゆるさない。

 閉じようとすると、彼女はいつも力づくで私の脚を開いてくるのだ。

 私と先輩の体格にさしたる差はないのに、どうしてあんなに強い力がでるのだろうかと不思議に思う。

 最近では、はなから脚を閉じようとする気すら起きなくなった。

 ただ、この恥ずかしい時間がすぐに過ぎればいいと考える。


5 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 18:52:54.93 vKptIOvN0 3/66

 先輩はそんなこちらの気も知らないで熱心にペニスを見つめる。

 顔を近づけているので、やわらかい息がかかってくすぐったい。

 ずっと空気にさらされていた亀頭は本格的に乾燥して、表面にしわがよっていた。

「純ちゃんは女の子なのにどうしておち○ちんが生えてるんだろうね。」

 先輩がぽつりとこぼす。

 これもいつものことだ。

「わかんないです。」

 だから私もいつも通りの言葉をかえす。

 このやり取りも、その前の「お遊び」もなにもかも同じように繰り返す。



 二人が合う日は、都合のよい時に先輩からメールが来るきまりだった。

 べつにどちらかが言いだして決めたことではないのだけど、いつの間にかそういうことになっていた。


10 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 18:57:26.30 vKptIOvN0 4/66

 メールはかならず先輩からで、文面はその日だれかから聴いた面白い話とか、

 お昼ごはんがなんだったとか、今日の占いは当たらなかっただとかどうでもいい話題が続いた最後に

 決まって一言、『今日会いたい。』で締めくくられている。

 私はメールを読み終えたあと、短い返信をおくる。まだ、一度も誘いを断ったことはない。

 学校から出て少しした先に、秘密の集合場所がある。

 そこは用途の分からないバラックがいくつか並んだ陰で、他人が来ることはあまりない。

 先に約束の場所へ着いた私がコンクリートの塊に腰掛けて髪を直していると、

 すこし駆け気味で息の上がった唯先輩がやってくる。

 先輩は私を見つけると呼吸を整えることもせず、私の身体をぎゅっと長く抱きしめてくれる。

 先輩の腕の中で私は全身の部品がほどけてしまいそうになる。

 私は、その瞬間がいちばん幸せで、好きだ。


11 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 18:58:51.69 vKptIOvN0 5/66


 それから、二人のうちどちらかの家へ行く。

 といっても唯先輩の家には憂がいることが多いので、行き先はだいたい私の家。

 両親は共働きで、昼間は留守。私の部屋なら、誰にも見られる心配はない。




 先輩のタイミングはまだつかめない。

 いつ「あれ」が始まるのか、わかったものじゃなかった。

 部屋では二人で音楽を聴いたり、漫画を読んだり……

「仲のいい友達同士」の会話をするだけで、「恋人」のような雰囲気はあまりない。

 でも、なにかのタイミングで、先輩が私の手を掴んだら、スタートだ。

 その瞬間、びくりと体がふるえる。

 それが来るまで、自分でもこの時間を期待しているのか、恐れているのか、はっきりとはいえない。

 抵抗することはできなかった。もし、そこで私が何かをいえば、この関係はすぐにでもおわってしまいそうに思えた。


12 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:00:09.74 vKptIOvN0 6/66

 私は手を取られ、誘われるままにベッドに腰掛ける。

 私自身がなにかをする必要はほとんどない。

 先輩の指が私の服を脱がし、先輩の手が私を押し倒し、その目が私の身体を見つめる。

「つんつん。」

 冷たい手が私のペニスをいじる。

 いくら唯先輩でも、これを単なるスキンシップとは思っていないだろう。

 だけど、私たちがセッ○スをしているのかと問われれば、それもまた疑わしかった。

 この人は、私のそれで遊んでいるだけ。

 そう考えて、こころが暗くなる。

「どうしたの、純ちゃん。」

「どうって?」

「悲しい顔してたよ。」

「なんでもないです。」


13 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:01:29.98 vKptIOvN0 7/66

「もしかして、気持ちよくなかった?」

 私が答えずにいると、先輩は勝手に納得したのか「くふふ」と笑い、

 私のペニスをぎゅっと強く握りしめた。

「あっ……」

「純ちゃんのおち○ちん暖かいね。」

 その言葉に答える余裕もない。

「お遊び」がどういうところまで続くかは、先輩の気分次第だった。

 射精まで導かれることもあるが、お互いにやんわりと体を触ってなんとなく終えることが多い。

 今日は、どうやら先輩は乗り気な日のようだ。

 掴んだ手を優しく弛めると、毎分90くらいのテンポで上下にしごき始める。

 先輩の動作は早すぎも強すぎもしない、ぎりぎりのラインでとどめるように調節されている。

 ときどきもう片方の手で、痛いほどに腫れあがった亀頭にじかに触れる。


14 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:03:25.99 vKptIOvN0 8/66

 先から溢れた粘り気のある液体を指に纏わせ、全体に塗りこむように指を回されると、

 神経をとおって小指の先にまで電気が走ったようにつらくて涙が出る。

「先輩っ……。」

 爪を噛んでその感覚をこらえる。

 ペニスの全体がどくりと脈を打った。

 先輩は私の射精が近いことを見てとると、わざと手の速度を遅くする。

 ほとんど動かさずに、圧力を感じられるか否か、

 けれど常に快感からは逃れられない悪魔みたいな手技。

 ベッドの上では、彼女がおそろしい悪魔にも見える。

 先輩はそのまま握り続けた。

 たぶん、実際は数分間に過ぎなかったのだろうけど、それが一時間も続いたように思えた。


15 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:08:26.62 vKptIOvN0 9/66

「もうべちゃべちゃだよ、純ちゃんの。」

「それ、いやですぅ……もうやめてよぉ……。」

 とうとう耐えがたくなって私は訴えた。

 普段なら最後まで黙りとおす自信もあったのだけど、この日の責めは過酷過ぎた。

「最後までしてほしい?」

「なんでも、……いいから、終わらせてください……ひっく」

「よーし。」

「ひあっ!」

 先輩が手をこまかく震わすようにして刺激すると、あっというまに私のそれは射精した。

「はっ……ふ、うん…はぁ、はぁ……」

 空しく宙に吐きだされた精液はベッドや私のお腹にかかって汚物となる。

 じらされたせいか、今日はいつもより長く放出が続いている。

 あとでシーツを拭かなくちゃ……。


16 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:13:27.11 vKptIOvN0 10/66

 先輩は自分の手が汚れても気にしないみたいだけど、シーツが染みになって恥ずかしい思いをするのは私なのだ。

 射精がやみ、ペニスがじょじょに小さくしぼみつつあるのを満足げに見届けると、

 先輩は私の頭をやさしくなでてくれる。

 それがどういう意味なのかは想像したけれど分からなかった。

 よくがんばったで賞?

 いっぱい出しました大賞かな……


 言い忘れたが、これらすべての行為の間、唯先輩は服を着たままだ。

 服を脱いで肌を見せるのは私だけ。

 それが付き合い始めた三週間前からずっと続いていた。


17 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:18:27.60 vKptIOvN0 11/66


    1

 先輩がこうなった原因は私にあるのかもしれない。

 三週間前。私と先輩が付き合いはじめたきっかけについて。

 それは梓との二人での会話からだった。

「私は、唯先輩が好きかな。」

 なんで言ってしまったのか自分でもわからなかった。

「好きな人いる?」って自分から作った話題だったのに、みごと雰囲気に流されてしまったとしか言えない。

 先輩の妹である憂がいなかったせいもあるだろう。


18 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:23:28.37 vKptIOvN0 12/66

 梓は私のセリフをまるで予想していなかったようで目を丸くしてこちらを見ていた。

 私はおそらく「しまったー」という顔をしていたことだろう。

「唯先輩って、あの唯先輩だよね。」

「うん……。」

「女の人が好きなの? いつから好きなの? どうして好きなったの?」

「いっぺんに聞かないで、そんなの分かんないよ!」


19 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:28:28.87 vKptIOvN0 13/66

 あの時私の目的は梓をからかって笑うことだったはずで、どうして私の方が質問攻めに遭っているのか。

 よっぽど「なーんて、冗談だよ」と言ってしまいたかった。

「あ、ごめん。それにしても、純が唯先輩をねぇ……。」

「なによー、悪い?」

「意外というか、澪先輩だったらまだわかるんだけど。純はカッコいい人が好きって前も言ってたよね。」

「ゆ、唯先輩だってかっこいいもん!」

 また墓穴を掘った。梓がにやにやしている。

「いや、これはちが……」

「ふうん。かっこいいかあ。」

 ちくしょう、私が元気玉を使えたらおまえなんか一撃なのに。

「顔赤いよ、純。」

「もうこの話やめる。」


21 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:33:29.40 vKptIOvN0 14/66

「もっと続けようよ、純をからかえる機会なんてあんまりないもん。」

「梓って意外とひどいやつだよね。軽音部の先輩の前でもそうなの?」

「それに、そういうことって誰かに話したいでしょ。」

「……。」

 たしかに、今までそんな気持ちを誰かに打ち明けることなんてなかった。

 もっとも、そんなことを言う必要がないと思っていたからでもあるけど。

「ね、なんで好きになったの? 先輩とあんまり話したこととかない、よね。」

 くそう。楽しそうだなあ、この子……。

「去年のライブで……」

「うんうん。」

「最後の曲で、ギター弾きながら歌ってた先輩が、かっこいいなあ、と思って。」

「結局ミーハー……。」


22 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:38:29.91 vKptIOvN0 15/66

「いいじゃん、別に! それから毎日憂が唯先輩のこと話すたびに気になって『普段はとろい人なんだなあ』とか、」

「ほうほう。」

「それで一つずつ先輩の好きなもの覚えていったりああ! 何言ってんの私っ!?」

「熱いね。」

「もう忘れて!」

「純は、告白とかしないの?」

「告白? なんで?」

「なんでって、先輩のこと好きなんでしょ。付き合いたいとか思わない?」

「いいよ、そんなの。私が唯先輩と付き合えるわけないじゃん。」

 告白なんて、そんなつもり少しもないとは言わないけど、ほとんどなかった。


23 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:43:30.43 vKptIOvN0 16/66

「諦めるの早いよ、純。告白もしてないのに。」

「だって」

 私にはおち○ちんが生えていたから。

 おち○ちんの生えた女の子が、誰かを好きになっていいはずがない。

 こんな私のことを好きになってくれる人なんているはずがなかった。

「女同士だからためらってるの?」

 本当の理由は言いにくかったので、そういうことにして頷いた。

「気にすることないよ。今時、普通だし、うちの学校でも多いって聞くよ?」

「でもやっぱり、いいよ。そこまでのつもりじゃないっていうか。」

「だめだよ、そんなの。気持ちはちゃんと伝えないと。私、その気持ち応援するよ。」

「あんた面白がってるだけでしょ……。」

「今度告白の機会セッティングするから。」

「いいってばー!」


24 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:48:30.94 vKptIOvN0 17/66


「――唯先輩、私とつきあってください!」

 結局のところ先輩はOKをくれた。それは梓のおせっかいのお陰。

 先輩が「はい」と言ってくれたとき、本当にうれしかった。

 あまり舞い上がっていたので、そのあとどうなったのかよく覚えていない。

 気が付いたら私は一人で部屋に居て、携帯の画面に表示された教えてもらったばかりの先輩のアドレスを見ながらにやにやとしていた。

 恋人同士ってどんなメールをするんだろう。

 一日何通も送ったら、うるさがられるかな。

 電話はどのくらいかけていいんだろう。

 お風呂入ってる時に着信があったらどうしよう。

 先輩の恋人になれて嬉しいな。


25 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:53:31.45 vKptIOvN0 18/66

「……。」

 しばらくして私はようやく我に返り、冷静に状況を捉えることが出来た。

「私が、先輩の恋人に……」

 鏡を見ないでも、自分の顔が青ざめていくのがわかった。

 私はまだ、先輩にあれを話してはいないのに。

 ズボンのファスナーを下ろして、下着の中に手を挿し入れる。

 そこには、普通の女の子にはついていないはずのものがあった。

 触っただけでも、充分に判断できたが、念のため下着をずらして目で確認する。

 小さな陰茎が普段から比すると主張を強め、むきだしになった先端からにおいを放っている。

 きもちがわるい。

 何より、こんなことを隠して先輩と付き合おうとした卑怯な自分がいやだった。

 ……やっぱり、ちゃんと言わないとだめだよね。


26 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 19:58:32.00 vKptIOvN0 19/66

 翌日、私は先輩を家に呼び出した。

 先輩に家まで来てもらうのは悪いし、ずうずうしいかとも思ったが、話の内容が内容だけに、他のところではまずい。

 振られることを覚悟して打ち明けたが、先輩ははじめ信じなかった。

「何言ってるのー、純ちゃん」

「こんな嘘つかないです。」

「じゃあ、それ見せてみてよ。」

 ぐ、と私は息がつまるような思いがした。

 先輩に、私のきたないものを見せる。

「それは……。」

 いやだけど、方法はそれしかないのかもしれない。

「……はい、わかりました。」


27 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:03:32.69 vKptIOvN0 20/66

「え、冗談だよ!」

 短いスカートの中に手を入れた私を見て、唯先輩はあわてて押しとどめようとする。

 構わずに私は下着を脱いで、それをさらけ出した。

 先輩は私に向かって手を伸ばそうとしたその恰好のままで硬直した。

 おち○ちんは、やわらかな形状をたもっている。

 私は先輩の目がじっとそれに注がれていることに気づき、自分からやったこととはいえ、恥ずかしくなった。

 手でそれを隠そうとしたとき、

「あ……」

 と先輩が小さな声をあげた。

 私のそれが、ぴくりと撥ねあがるように大きくなる。

「……!」

「かわいい。」


28 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:08:33.26 vKptIOvN0 21/66

 かわいい?

 そんなのウソだ。

 こんなきもちわるいものが、かわいいはずなんてない。

 なのに先輩は目を一点に向けたまま、私の方に近づいてきた。

 ほほが赤く染まっている。

 心臓が、どくりと脈を打った。

「ねえ、触ってもいい?」

 ふわりとした声。その声はいつもの先輩の声のはずなのになぜか恐ろしく聴こえた。

 先輩の手が伸びる。私のそれが、ふたたび撥ねた。


29 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:13:33.74 vKptIOvN0 22/66


    2

「もう、キスくらいはした?」

 いきなりの質問に口に含んだカフェ・オ・レをふきだしそうになり、すんでのところでこらえる。

「うぐっ、けほけほ。いきなりなにいってんの?」

 私のむせる音に、教室内の何人かのクラスメートがこちらを見ていた。

「一カ月くらい経つから、そのくらいは進んだのかな、って。」

「ちょっと、声抑えてよ。誰かに聞かれたら困る。」


30 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:18:34.26 vKptIOvN0 23/66

「……付き合ってること、まだ憂に言ってないの?」

「うん。それに、私と唯先輩はそういう関係じゃないもん。」

「付き合ってるのに?」

 付き合った翌日から先輩に性器を触られているなんて言えるはずがない。

「でも手くらいはつないだんでしょ。」

「それは……つないでくれたけど。」

「なんとなく唯先輩って、手が早そうな気がする。」

 手が早いというかテクニックがあるというか。

 変なことを考えていることに気づき、顔が赤くなる。

「なんでそんなに聞きたがるのさ。いいでしょ、私の勝手じゃん。」

「私だって女の子だもん、気になるよ恋の話は。あー、いいなあ恋人。」


31 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:23:34.76 vKptIOvN0 24/66

「……。」

 いい、のかな。

 私は今の状況をすなおによろこべていなかった。

 先輩は、本当にちゃんと私を恋人として見てくれてるんだろうか。

「ごめん、なにか気に障ることでも言った?」

 梓が心配そうにこちらをのぞきこんでいた。

「え!? な、なにも!」

「そう? てっきり純のことだから、ここまで言えば自慢かのろけ話でも始めるかと思ったのに、黙ってるから。」

 言われてみれば、黙るのは不自然だったかもしれない。

 気を取り直して軽口をたたく。

「羨ましかったら梓もはやくかっこいい彼氏でも見つけたら。」

「純みたいに彼女って手も、あるかな……」

「おいおい。私が言うことじゃないけど、それでいいの?」


33 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:28:16.90 vKptIOvN0 25/66

「だって、『かっこいい』んでしょー、唯先輩。」

「ぐぬぬ……。」

「二人ともなんの話してるの?」

 突如背後から投げかけられた声に驚き、椅子から転げ落ちてしまう。

「純ちゃん!?」

「だ、大丈夫?」

 床に腰をついた私に憂が手をのばしてくれるが、それどころじゃない。

 今の話きかれただろうか。

「いてて……。」

「さっきお姉ちゃんの話してたの?」

「ちがうよ、ジャズ研の先輩の話してたの。」

「でも……。」

 なにか口に出しそうな梓を横目でにらんで黙らせる。


34 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:29:50.73 vKptIOvN0 26/66

 たぶん、肝心なところは耳にしていないはずだ。

 内緒にする必要なんてないと言われたらそれまでだけど、なんとなく、今の私たちの関係を友達に知られたくはなかった。

 ましてや先輩の実の妹になんて。

 それに、私はいつか振られた時のダメージを最小にする算段をしていたのかもしれない。

 誰にも知られていなかったら、はじめからなかったことと同じだから。

 最初から存在しない関係なら、それがなくなって傷つくこともない。

 ……私はずっとおびえていた。先輩に飽きて捨てられることに。

「そういえば、お姉ちゃんと言えばね。最近新しい友達が出来たみたいなんだ。」

「そうなんだ。」

「うん。部活のない日でも帰りが遅くなったり、でも律さんや澪さんとは違うみたいで。」

「……。」


35 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:31:39.29 vKptIOvN0 27/66

「どんな人って聞いても、教えてくれないんだけど。」

「ふうん。」

 あんまり聞きたくない話だ。私はどうやって憂のこの話を終わらせるか考えていた。

「梓ちゃん、何か知ってる?」

「私? えっと……。」

「?」

 ちらっ、と梓が視線をよこす。私はふたたび梓をにらまなければならなかった。




36 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:34:18.08 vKptIOvN0 28/66


    3

 いつもの待ち合わせ場所。

「あ、純ちゃん!」

 今日も先輩は私を見つけると、駆け寄って抱きしめてくれた。

 暗いバラックの陰で、私は先輩の肩に顔をうずめる。ふわりといいにおいがした。

「今日は私の家に行こっか。」

 先輩がそのままの姿勢で言う。

「ワンピースの最新刊読みたいって言ってたよね。私もう買ったんだー。」

「それはいいですけど、憂は大丈夫ですか?」


37 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:35:34.04 vKptIOvN0 29/66

「今日はホームセンターに買い物に行くって言ってたから、大丈夫だよ。おそらく!」

「おそらくって……。」

「それにぃ、もう知られてもいいでしょ? 私たちのこと。」

 先輩は、あれがばれてもいいと思っているんだろうか。

 それとも今日はしないのかなあ。



 ――そんなことはなかった。

「純ちゃんかわいいね。」

「かわいくなんてないです。」

「かわいいよ、純ちゃんのここ。」

 先輩のベッドで、私は下だけ脱いだ格好で座らされていた。


38 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:39:09.00 vKptIOvN0 30/66

 上にシャツと、靴下は履いているのでよけいにみっともない。

 本当に、どうしてこんなことが好きなんだろ。

 こんなこと、はずかしいだけなのに。

 ふと、梓との会話を思い出していた。

『もうキスくらいはした?』

「……。」

 キスは、まだしたことがない。

 先輩はペニスにキスはしても、私にはキスをしてくれない。

 悲しくなった。

 やっぱり私は先輩の恋人ではないのかも。

「ねえ、純ちゃん。」

「はい。」

「おしっこってどこから出るの。」


39 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:44:09.57 vKptIOvN0 31/66

「……そこからです。」

「いつも純ちゃんのが出てくるこの穴から?」

 尿道口を指で突くようなそぶりを見せたので、思わず体を固くしてしまう。

 それこそしなかったが、かわりにとんでもないことを言い出した。

「純ちゃんのおしっこ、見たいな。」

「む、無理ですよ!」

「どうしてだめなの?」

 顔の表面がボッと厚ぼったく感じられる。

「その、……大きくなってるから、です。」

「じゃあ、小さくなるまで待つから、してよお。」

「だ、だめですよ、ここ部屋ですし!」


41 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:46:55.16 vKptIOvN0 32/66

「私の部屋だからいいよお。それに、うーん、ほら! この袋にしてもらえば平気っ。」

「なんで……そんなの、見たいんですか?」

「だって、おち○ちんからおしっこがどんな風にでるのかわかんないし。純ちゃんのおしっこ見てみたいもん。」

「へんだよ、そんなの……。」

 いまさら言うことではないかもだけど。

「ね、見たいな、純ちゃんのおしっこ。」

 ふわりとした声。まただ。この声を聞くと、どうしても逆らうことができない。

 先輩の声がこわいから? 振られるのがこわいから?

「……わかりました。」

 なかなかおしっこは出なかった。

「小さくならないね。むしろおっきくなってきたよー。」

「ごめんなさい……。」

 そんなに簡単にコントロールなんてできない。

 小さくしようと思えば思うほど、かえってそれはふつふつと存在感を強める。

「しょうがない。一回出しちゃおうか。」


42 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:48:05.69 vKptIOvN0 33/66

 いつものようにそれをやさしく掴まれる。マイクを握るような尋常の動作だ。

 なのに、体が反応してしまう。

 私は先輩にこんなことを求めているわけじゃないのに。

「びくびくしてるね。もう出ちゃうかな。」

「やめて、やめてください……もう……。」

「だいじょうぶだよー。」

「はぅっ……。」

 白い液体が先輩のてのひらのなかにはじけた。

 やわらかい手で跳ねまわるペニスを捕まえて、精液が飛び散らないようにする。

 射精がおちつくと、先輩はべっとりと付着したそれを見せつけてきた。


43 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:50:28.58 vKptIOvN0 34/66

「純ちゃんのあったかいね。」

「はやく拭かないと……。」

「んー。」

 ティッシュを取り出そうとしたら、先輩はなにを思ったのか精液をぺろりと舐めてしまった。

「あっ、きたないです!」

「んふふ。」

 何を考えてるんだろう、この人は。

「もうおしっこでるよね。」

「えっ。」

 そういえば、それが目的だったのだ。

 一度射精を終えたおち○ちんからは滞っていた血液が抜け、常態へともどりつつある。

 この状態なら、おしっこがでないこともなさそうだ。


45 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:53:22.16 vKptIOvN0 35/66

 それに射精後のペニスはぬるぬるとしていて尿道にへんな違和感があるので、そのときはいつもおしっこの出るような予感はあった。

 だけど、本当に先輩にそんなところまで見せなくちゃいけないのだろうか。

「見せてよう。」

 先輩の期待するような表情。

 ああ、だめだ。この人は本気なのだ。

 先輩は床に落ちていた袋を拾うと、私のそれを刺激しないようにしずかにあてがう。

 ビニールのこすれるカサカサという音がした。

 私に向かって無言で縦方向に頭を振った。準備ができたという意味だろう。

「……。」

 観念して私は呼吸を整えた。


46 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 20:58:22.66 vKptIOvN0 36/66

 先輩の部屋の中だと思うと、おしっこが出そうにもなかったので、

 目を閉じて、自分は今トイレに座ってるのだとイメージする。

 何度かおなかに力を入れ、深呼吸をするが、それでもまだ出ない。

 早くしなければ、またもおち○ちんが大きくなってしまいそうに思えて、あせっていた。

 お腹にひんやりとした圧迫をかんじる。

「あうっ。」

 目を開くまでもなく先輩の冷たいお手々が私の下腹を撫でたのだ。

 私の先から放尿がはじまった。

 ばたばたばたばた……

 意外に大きい音がしていやな気持ちになる。


48 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:03:23.16 vKptIOvN0 37/66

 今自分がどうなっているか、先輩がどんな顔をしているのか見たくなくて、

 私はますます強く目をつぶった。

 おしっこがビニールをたたく騒音の中で小さく

 ほう、と先輩の息を吐くような音が聞こえた。

「……。」

 放出はじきに終わった。私はもてあまし気味の熱が、おしっことともに出て行ったことを感じた。

 目を開き、手早く床に脱ぎ散らかしたズボンと下着を拾って履きなおした。

 先輩を見ると、にごったコハク色の液体の入ったビニール袋を目の高さにまで持ち上げて眺めていた。

 どうしてか、そのきたないものに興味津々といったようすだ。

 ……私のことなんか少しも見ないのに。

 わけも分からずかなしくなって、涙がじわりと湧いてでた。

 たまらなくみじめだった。

「……先輩、私もう帰ります。」

 先輩の返事も待たずに荷物をつかんで廊下へと駆けだす。


52 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:08:23.71 vKptIOvN0 38/66

 先輩の私を呼ぶ声が聴こえたが、今立ち止ればなにかが爆発してしまいそうだった。

 きらい。きらい。きらい。

 もう唯先輩なんかだいきらい。

 玄関から飛び出すと、憂と鉢合わせした。

「純ちゃん!?」

 ちょうど買い物から帰ってきたところだったのだろう。

 自宅からいきなり飛び出てきた同級生を驚きの表情で見ている。

 私は走ってその場から逃げだした。


53 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:11:33.04 vKptIOvN0 39/66


    4

 どのくらい走っただろうか。

 気がつくと私はどこかの駐車場のフェンスにもたれかかって、荒く息を吐いていた。

 しばらく頭がぐるぐるとして何も考えることが出来なかった。

 フェンスの金具からへんにカビ臭いにおいがすると思っていたが、それは私の手から流れる血のにおいだった。

 走っているうちに何度か転んだ覚えがある。たぶん、礫にでもぶつけて手を切ったのだろう。

 切り口はじんじんとして、心臓の脈動とともに痛んだ。


55 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:12:49.82 vKptIOvN0 40/66

 血の色を見ていると徐々に気持ちが落ち着いてくる。

 もう、だめかもしれないな、と思った。

 きっと先輩にへんな子だと思われたに違いない。

「――純?」

 振り返ると、逆光の中で私服姿にバッグを提げた梓が立っていた。

「どうしたの、こんなところで。……怪我したの?」

「……うん、傷が痛くて泣いちゃったよ。涙が出るね。」

「もしかして、唯先輩となにかあったの?」

 いつもは鈍いくせに、こんなときに限って鋭い女だ。

「あずさぁ……。」

 私はたまらなくなって梓に抱きつき、わんわんと泣いた。


56 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:16:59.21 vKptIOvN0 41/66


――――

 人目も気にせず外で泣きわめく私に困惑した梓は、私をなだめながら喫茶店につれてきた。

 そこで私はこうなったいきさつを話した。

 先輩にいろいろとされていること。

 自分が本当に先輩の恋人なのかわからなくなってしまったこと。

 あんまり恥ずかしいところは抜きにして。

「それは唯先輩がひどいよ。」 

 私の話をひととおり聞き終えてから、梓は言った。

「そう、かな……。」

「そうだよ! 」

 ちん、とはなをかむ。私の前にはすでにティッシュの山が築かれていた。


58 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:21:59.69 vKptIOvN0 42/66

「ティッシュ、足りる?」

「大丈夫。ごめん、梓、迷惑かけて……。」

「そういうの純らしくない。もっとばかみたいにしてなよ。」

「なに、それ。」

「ああそうそう。そういうかんじ。」

 たぶん、励まそうとしてくれてるのだろうけど、もう少し言い方ってものがあるはずだ。

 やっぱりこいつって、ひどいやつ。

「くそう。梓のくせに。」

「私も最初に応援した手前、責任みたいなものを感じるしさ。というか、友達が悩んでるんだから、相談くらいにはのってあげたい。」

「……ありがと。」

「いいって、ここのコーヒーのお代出してもらうから。」

「ええ!?」

「ケーキも頼もうかな。」


59 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:27:00.21 vKptIOvN0 43/66

「ちょ、ちょっと私そんなにお金ないから!」

「あはは。」

 笑いごとじゃない。

「……ふへ。」

 とは思うのだけど、やっぱり私もおかしくなって笑ってしまった。

「で、純はこれからどうしたいの?」

「わからない。」

「先輩とこれからも付き合いたい?」

「……わかんないよ。」

「じゃあ、別れたいんだ。」

「う。」

「うん?」


60 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:32:00.71 vKptIOvN0 44/66

「……やだ。」

「……。」

「せんぱいと、別れたくない……。」

「それなら、ちゃんと自分の気持ちを伝えないと。」

「気持ち?」

 前も似たようなセリフを梓から聞いたけど。

「そうだよ。いやなことはいやって、言わなくちゃ先輩だって分かんないよ。」

「……うん。」


61 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:37:01.18 vKptIOvN0 45/66

 店を出ると既に日が沈み切っていた。

 会計は私が払うと言ったのだが、梓は自分の分だけ払うとさっさと先に行ってしまった。

 薄情者め。

 とぼとぼと家まで帰る途中、携帯を開くと先輩からの着信とメールでいっぱいだった。

 ほとんど数分置きに入っている。

 それを見て、また目頭が熱くなった。

 私は「あした先輩の家に会いに行きます」とだけ書いたメールを送信し、

 携帯を閉じた。


62 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:42:01.69 vKptIOvN0 46/66


    5

 昨日と同じ姿勢で、私は唯先輩のベッドの上に座っている。

 違いと言えば、今日は服をきちんと着ていること。

 家の玄関まで着くと、チャイムを押してすぐに先輩がドアを開いてくれた。

 休日だったが、他に家族の人はいないようだった。

 きっと先輩が人払いをしてくれていたのだろう。

 私が口を開かないので、室内は沈黙に包まれたままだった。

 先輩の顔も意外なほどに重い。

 彼女には私がもっとひどい顔にみえるはずだ。

 たしょうごまかす手立ては打ってきたが、

 昨日泣きはらした目元は完全には隠せていなかったから。


63 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:43:55.32 vKptIOvN0 47/66

「純ちゃん、昨日はごめんね。」

 先輩は私が喋るのを待っているようだったが、しびれを切らしたのかやがて先に口を開いた。

「私、純ちゃんにひどいことしちゃったよね。」

「いえ……。」

「年上なのに、純ちゃんを泣かせちゃうなんて、恋人失格だよね。」

 やっぱり、私が泣いていたことに気づいていた。

 居た堪れなくなって、俯いてしまう。

「あの、唯先輩。」

「うん。」

「私たち、もう終わりにしましょう。」


64 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:45:48.83 vKptIOvN0 48/66

 先輩は私の言葉が意外だったのか、短く「えっ」と言った。

 私だってびっくりしていた。

 昨日梓に言ったとおり、別れたくなんてないのに。

 まさかこんなことを言うつもりではなかったのだ。

 でも、一度紡ぎ出した言葉はもう止まらなかった。

「先輩、私のことなんか好きじゃない、ですよね。もうさよならしましょう。」

「純ちゃんのこと大好きだよ!」

「うそ。」

 膝の上で握りしめた手が、視界の中で震えている。

「本当だもん。だから恋人になったのに。純ちゃんのこと好きだから……」

「私なんか、先輩の恋人にはなれないんです。」

「恋人だよ!」

「じゃあ、どうして!」


66 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:46:38.34 vKptIOvN0 49/66

 目を上げて叫ぶ。

 椅子から立ち上がりこちらに来ようとしていた先輩がびくりと立ち止る。

 ぼろぼろと涙が出てとまらない。

 私が泣いたってみっともないだけだ。先輩の前では泣かないと決めていたのに。

「どうして、キスも、してくれないのよぅ……。」

 もう、嫌われてしまってもいい。

 泣き始めたら、なにもかもどうでもよくなってしまった。

 私は疲れてしまった。先輩になにかを期待することも、先輩を好きでいることも。

 愛してもらえないなら、嫌われた方がまし。


68 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:52:53.41 vKptIOvN0 50/66

「うう……ぐすっ、ひっく。」

 醜態をさらしているのがかえって清々しいくらい。

 はじめから、私なんかが唯先輩に釣り合うなんて考えていたのがおかしいんだ。

 良い気になって恋人気分でいる私にあなたも辟易してたんでしょう?

 みっともないよね、こんな私。

「純ちゃん。」

 両腕で顔を覆って泣いていると、やわらかく抱きしめられた。


69 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:53:34.04 vKptIOvN0 51/66

「純ちゃん、手をどけて。」

「や、やです! もうほっといてよ!」

「おねがい。」

「いやだ。」

「どかしなさいっ。」

「ふえ!?」

 唯先輩はぐっと腕をつかんで引き下ろすと、いきなり顔に顔を近づけてくる。

 唇に唇がくっついて、

 それから離れた。

「…………ぷはぁ。」


70 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 21:59:16.75 vKptIOvN0 52/66

 先輩が、キスしてくれた。

 なんで? どうして今になって?

 見ると、先輩は私と同様にボロボロと涙をこぼしていたので、なおさらびっくりしてしまった。

「信じてくれた?」

「……え?」

「私と純ちゃんは、ちゃんと恋人だもん!」

 もしかして私がああ言ったから、してくれたのだろうか。

「ごめんなさい。純ちゃんが、ひっく……悩んでること、気付いて、あげられなくて。」

 びっくりして涙のとまってしまった私の前で、先輩はしゃくりあげる。

 私の体を強く抱きしめたまま。

「私には、おち○ちんなんて生えてないから、私、純ちゃんにどんなことしてあげればいいかも、わからなくって。」


71 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:01:53.35 vKptIOvN0 53/66

「……ゆい、せんぱい。」

「ごめんね純ちゃん。私がばかだから、ゆるしてよお……!」

 先輩の涙を見ながら、胸が引き裂かれるような思いがした。

 先輩がキスしてくれなかったって?

 私自身が、先輩になにかをしてあげたことなんてなにか一つでもあったろうか。

 先輩は、会うといつも抱き締めてくれる。

 話していてもメールをしてても、おかしな話で私を楽しませてくれる。

 おち○ちんを見せても、気持ち悪がらずに接してくれた。

 先輩はいつも私のことを考えて行動してくれていたのに。

 ……たとえ、それがすこしへんなやり方だったりしても。

 それなのに、私は先輩がくれるものを求めるばかりで、何もしてこなかった。

 キスしてほしいなんて言ったことなかったのに、

 自分から、キスをしようともしなかったくせに。


72 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:05:59.51 vKptIOvN0 54/66

「ごめんなさい、ごめんなさい。」

 私は、先輩の小さな背に手をまわして抱きしめ返す。

「先輩、ごめんなさい。私が悪いんです。」

「きらいにならないで純ちゃん、私悪いところ、治すから、きらいにならないで。」

「私は、……」

 そうだ、私は。

 唯先輩と別れたくなんてない。

 唯先輩とずっと一緒にいたい!

「私は、唯先輩のことが大好きです!」

「ぐす……ほんとう?」

「信じさせてあげます。」

 意を決して、私は涙まみれの先輩に唇を近づける。

「……!」



 それはたぶん、私が本当の意味で先輩の恋人になることができた瞬間だった。


74 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:12:47.77 vKptIOvN0 55/66


    6

「――で、わんわん泣きながら抱きあってたらいつの間にか寝ちゃって。」

「めちゃくちゃなところを、帰ってきた憂に見つけられてしまいました…………」

「というわけですか。」

「びっくりしたよー。」

 翌週の学校。

 結局、憂にはなにもかもばれてしまった。

「帰ってきたら純ちゃんとお姉ちゃんがベッドの上で、」

「う、うわああああ!」

「ベッド!? そこ詳しく!」

「あのね、二人とも……。」

「うんうん!」

「や、やめてよおっ!」

「えへへー。」

 笑いごとじゃない!


75 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:15:15.16 vKptIOvN0 56/66

「でも、本当にびっくりしたよー。純ちゃんがお姉ちゃんと付き合ってるなんて。なんで教えてくれなかったのー?」

「私は知ってたけど、純が黙ってろって言うから。」

「だって……、憂に受け入れてもらえるか、怖かったんだもん。」

「がらじゃないなあ。」

「なによう。ばかにして、梓のくせに!」

「くせにとはなんだ、くせにとは。恩人に向かって!」

「私、二人のこと応援するからっ!」

 そうだ。

 私の色々な不安は杞憂で、最初は驚いたみたいだけど、

 憂は私たちのことを受け入れてくれた。

 応援してくれると言うのが、すなおに嬉しい。

「ありがとー、憂!」


76 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:18:53.84 vKptIOvN0 57/66

「ま、私も今までどうり応援するから。それなりに。」

「どうして『それなりに』って付け足したの?」

「――それにしても、純ちゃんがお姉ちゃんとかあ。」

「この子、顔に惚れて付き合ったんだよ。」

「ちがうもん!」

「二人が結婚したら、純ちゃんも私のお姉ちゃんってことになるのかなあ。」

「け、結婚って……話が飛躍しすぎでしょ。」

「でもお姉ちゃんは『将来は平沢純にするー!』って言ってたよ。」

「ぐ……。な、なんて勝手な。」

「先輩らしいね。」

 でも、それって唯先輩が私のこと本気で考えてくれてるってことだよね……。

「へ、へへへ……。」

「なににやにやしてるの。へんなの。」


78 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:21:49.92 vKptIOvN0 58/66

「うっうるさいー。……やば、もうこんな時間! 私もう行くね、憂。」

「行くって、どこへ?」

「へっへーん、今日は唯先輩と一緒にお弁当を食べるのです!」

「へえ。」

「あのね、純ちゃんがお弁当手造りしてくるってお姉ちゃんが言ってたよ。」

「それはお熱いことですなー……。」

「羨ましかったら梓も早く恋人作りなさい! べーっだ!」

「はいはい。いいなあ。」

「いいねえ。」

 友人二人の羨望の声を背後に聞きながら、

 ――羨望の声、のはずだ。にやにやと面白い子を見つめる目付きじゃなかったはず……

 ――ともかくそんな声を聞きながら、私は廊下に飛び出してあの人が待つ屋上まで走った。


79 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:24:50.61 vKptIOvN0 59/66



「唯先輩っ!」

「わっ、純ちゃん!」

「むぎゅーっ!」

 先輩を見つけて、いちばんに私はいきおいよく抱きついた。

「会いたかったです~! 抱きしめてください!」

「えへへ、もう抱いてるよお。」

 いいにおいのする先輩の首元にぐいぐいと顔を押し付ける。

 心臓がどきどきとして、幸福さに体がはじけてしまいそう。

「にへへ。じゃ、じゃあ、お弁当食べましょうか。」

「おお、待ってました! あーん。」

 先輩は私に向かって、ぽかんと大きな口を開けて見せた。

「?」

「純ちゃんに食べさせてほしいなあ、なんて。」

「はっ、はい!」


80 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:26:15.51 vKptIOvN0 60/66

 慌てて弁当のふたを開く。

 ……あ、走ったから形が崩れてる。

 でも、ええい、味は一緒だ!

「どうですか……?」

「すっっっっっっっっごく美味しいよ! 純ちゃん天才っ!」

「よかったー。」

「色もきれいだねえ。」

「すみません、ちょっと崩れちゃいました。」

「ううん、すごいよお。このカニさんなんかとっても素敵。」

「ふふ、カマボコですけど……。」

「これからはこうやって、して貰いたいことバンバン言いあうようにしようね。」

「はい!」


81 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:31:15.01 vKptIOvN0 61/66

 それが、あのあと私たちの決めたことだった。

「唯先輩。私、先輩といろんなところにデート行きたいです。服屋さんとか行って先輩の好きな服を知りたいです。」

「うんうん。」

「それから、遊園地にも行きたいです。映画も観に行きましょう。あっ、それから今度二人で楽器屋に行きませんか? 一緒に楽譜とかCDとか……。」

「そっ、そんなにいっぱい覚えられないよお。」

「じゃ、じゃあ! 今ひとつだけ。先輩にキスしてもいいですか。」

「あっ、ずるーいっ。」

「!?」

 え? ずるいって、なにが?

「私が純ちゃんにキスしたいのに、先に言われたー。」

「……ふへへ。」

 まったくもう、先輩ったら。


82 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:34:31.74 vKptIOvN0 62/66

「しよっか。」

「はい。」

 私は大好きな先輩と抱き合ってキスしてるときがいちばん幸せ。

 それから、好きな人にお弁当を食べさせてあげられて、

 それを褒めてもらえて、それからキスもして、

 デートの約束もしたし、キスもしてもらえて……

 ともかくいっぱい幸せ!

「あ、その前に私からもも一つお願い、いい?」

 先輩はもうすっかりその気持ちになっていた私にお預けをくらわせると、

 天使のような笑顔で私に言った。

「恋人なんだから、先輩じゃなくて唯って呼んでほしいんだ。」

「先輩……。」

「ノンノンノンノン! 言いにくかったら『唯ちゃん』でもいいよ。」


84 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:36:45.83 vKptIOvN0 63/66

 ああ、もうこの人は。

 ちちち、と指を振る動作がなんてかわいいんだろう。

 得意げな顔しちゃって。

「我慢できない! 唯ちゃん、もうキスするからねっ」

「わわ、ちょっと待ってよお!」

 私は真っ赤な顔の「唯ちゃん」に熱いキスをする。

 ちょっと怒ってるみたいだけど、いいよね、恋人なんだもん。

 形の崩れたお弁当でも褒めてくるやさしい恋人と、

 恋を応援してくれる親友たち。

 これからもこんなふうに日々が続けばいいなあ、

 と私は思うのでした。



お し ま い


89 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 22:42:02.21 vKptIOvN0 64/66


おまけ。
――――

「もう、純ちゃん積極的なんだから。」

「唯ちゃんの顔見てたら我慢できなかったんだもん。」

「えへへー、純ちゃあん。」

「えへへ、唯ちゃーん。」

 知らなかったけど、名前で呼び合えるってこんなに幸せなんだ。

「ところで純ちゃん、も一つだけお願い、いいかなあ?」

「もっちろん。なんでもいいですよ。」

 先輩、じゃなかった唯ちゃんは両手をあわせてなんだかもじもじとしだす。


92 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 23:00:06.42 vKptIOvN0 65/66

「あのね……、おち○ちん、見せてもらえないかなあ、なあんて。」

「えっ、なんて……。」

「おち○ちん。」

「えええええええっ!?」

「かわいいおち○ちん、見せてよお。」


 これからもこんなふうに、日々が続いて行くのかな……?

 ちょっと変態な彼女と一緒に、幸せな日々が。



こんどこそおしまい!




94 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 23:06:50.85 vKptIOvN0 66/66

支援ありがとう以上です。最後の最後でさるくらってあわてた
プール回で見た純ちゃんのおち○ちんが忘れられずこのようなものを書いてしまいました
次はもっと純情ボンバーさせたいね


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