プルルルル…
人妻「電話だわ。もしもし」
上司『私はあなたの旦那さんの上司ですが……』
人妻「は、はいっ!」
上司『旦那さんが大事な商談をポシャらせましてねえ』ニチャア
人妻「そ、そんなっ!」
上司『しかし、かげながらフォローしておいたので問題ありません。では』ピッ
人妻「え……!?」
元スレ
上司「旦那さんが大事な商談をポシャらせましてねえ」ニチャア 人妻「そ、そんなっ!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1612181060/
夫「ただいまー」
人妻「お帰りなさい」
夫「いやー、今日大事な商談を盛大にポシャらせちゃったんだけど……」
人妻「え!?」
夫「だけどなんか知らないけど、先方が許してくれて助かったよ。俺ってツイてるなぁ」
人妻「ええ、ホントね……」
プルルルル…
人妻「もしもし」
上司『私ですが……』
人妻「あっ、あなたは……」
上司『旦那さんが取引先のカツラを笑ってしまい、とても怒らせてしまいましてねえ……』ニチャア
人妻「そ、そんなっ!」
上司『しかし、私が私特製の毛生え薬でその取引先の毛を生やしたので大丈夫です』
人妻「そうですか……」
夫「いやー、今日は笑った笑った」
人妻「なにが?」
夫「だって取引先がカツラなんだもん。爆笑しちゃったよ」
人妻「笑っちゃダメでしょ」
夫「まぁな、相手怒っちゃって大変だったよ。だけどあら不思議!」
夫「なぜか毛が生えてきてさ、機嫌直って助かっちゃった! 奇跡だよ!」
夫「君に巡り生えたそれってキセキ!」
人妻(奇跡なんかじゃないわ……)
プルルルル…
人妻「もしもし」
上司『どうも』
人妻「あっ、主人の上司さん……」
上司『今日はとんでもないことになりましたよ』
人妻「えっ……」
上司『旦那さんがよりによって車を暴力団の車にぶつけて、拉致されましてねえ』ニチャア
人妻「そ、そんなっ!」
上司『今から乗り込んでくるので、まあご心配なく』
人妻「大丈夫なんですか!?」
上司『任せて下さい』
夫「いやー、今日は危なかった」
人妻「どうしたの?」
夫「今日営業で車を運転してたんだけど、ヤーさんの車と狭い道ですれ違いざま、ちょっとこすっちゃって」
夫「事務所連れてかれて、もう殺されるかと思ったけど……」
人妻「けど?」
夫「覆面つけた謎のヒーローが助けにきて、救出されたんだ。いやー、強かった」
夫「あの声、どっかで聞いたことあるんだけどなぁ……誰だろ」
人妻(わざわざ覆面してるし、正体はいわない方がいいのかしら)
プルルルル…
人妻「もしもし」
上司『私です』
人妻「いつもお世話になっております」
上司『実は……ウチの会社、今年の夏ボーナス出ないんですよ』ニチャア
人妻「そ、そんなっ! ボーナスを当てにしてた支払いもあるのに……」
上司『しかし、私のポケットマネーから旦那さんにはささやかなボーナスをお送りしましたよ』
人妻「いいんですか!?」
上司『遠慮せずもらって下さい』
夫「ただいまー」
人妻「お帰りなさい」
夫「今年さ、ウチの会社ボーナス出ないらしいんだけど」
夫「上司がなんか宝くじ当たったとかで金くれたんだ。断ったけどしつこいからさー」
人妻「いい人じゃない。もらっておきなさいよ」
人妻(宝くじが当たったってのは多分ウソのような気がする……)
夫「会社行きたくない……仕事自信なくした……」
人妻「しっかりしてよ……」
プルルルル…
人妻「もしもし」
上司『私です。旦那さんは仕事に悩み、鬱病のような状態になってしまったようですなぁ』ニチャア
人妻「そ、そんなっ!」
上司『しばらくは休職して、ゆっくり療養して下さい。仕事のことは心配いりません』
上司『それと腕のいいカウンセラーを向かわせるので、話してみて下さい』
人妻「ありがとうございます……」
カウンセラー「あなたはやればできる大人です」
夫「そうでしょうか……」
カウンセラー「出来る出来る! 絶対出来る! 出来ないことはなーいっ!」
夫「あなたと話してたらなんだか……」
カウンセラー「出来る気がしてきたでしょう!?」
夫「はいっ!」
人妻(カウンセラーの腕がいいのか、夫が単純なのか。どっちなんだろ)
夫「今夜も遅くなるよ」
人妻「えー、またぁ? 浮気でもしてるんじゃないの?」
夫「してるわけないだろ!」
人妻「だってこのところずっと深夜に帰ってくるじゃない。おかしいよ! 疑わない方が無理よ!」
夫「だから忙しいんだよ! 今大事な時なんだよ!」
人妻「私と仕事、どっちが大事なの!?」
夫「仕事だよ!」
バタンッ!
人妻「なによ!」
人妻(離婚……考えようかな)
プルルルル…
人妻「もしもし」
上司『毎度おなじみ私です』
人妻「あっ、どうも」
上司『今旦那さんは重要なプロジェクトを任されてましてねえ』ニチャア
人妻「えっ、そうだったんですか。知らなかった……」
上司『大抜擢されたので、きっとプレッシャーもかなりのものでしょう』
上司『気持ちを強く保つため、奥さんに弱音を吐くこともしないのではないでしょうか』
上司『もうしばらくしたらプロジェクトも落ちつきますから……どうか我慢してあげて下さい』
人妻「上司さんがおっしゃるのなら……」
人妻「赤ちゃん……出来たみたい」
夫「ホントかい! 嬉しいなぁ……」
夫「会社に行って、みんなに自慢しよっと!」
~
人妻「もしもし」
上司『妊娠したそうですね。おめでとうございます』ニチャア
人妻「ありがとうございます」
上司『ベビー用品をお送りしますのでぜひ使って下さい』
人妻「まぁっ、そこまでして頂いて……ありがとうございます!」
人妻「予定日まであとわずか……楽しみだわ」ナデナデ
人妻「うっ!?」
人妻(これは……陣痛!? 予定より早いッ!)
人妻「あうう……意識が……」
人妻(夫に電話しても……今日は出張だし……このままじゃ……お腹の子が……)
?「どうやら、赤ちゃんが産まれるようですねえ」ニチャア
人妻(誰……?)
?「タクシーを呼びました。旦那さんにも連絡しておきましょう」
人妻(この声は……もしかして……)
夫「出産おめでとう! たった一人でよく頑張ったね!」
人妻「うん……本当に危なかったわ」
人妻(もしかしたら、あの人が助けてくれたのかもしれないけど……)
夫「君とは喧嘩もしたけど、俺もっともっとしっかりしないとな!」
人妻「うん、お願いね。両親と子供でどこかに出かけるってのが私の夢だったんだ」
夫「そっか、君はたしか……」
人妻「うん……」
夫「よぉし、いつか三人で旅行に行こう! 約束だ!」
人妻(最近夫が元気ないけど、どうしたんだろ……。子供産まれたし、昇進したのに……)
プルルルル…
人妻「もしもし」
上司『旦那さんが係長になられて、おめでとうございます』
人妻「ありがとうございます」
上司『しかし、生意気な部下に手こずられてるようなんですよ』ニチャア
人妻「そ、そんなっ!」
上司『ご安心下さい。その部下には私から釘を刺しておきましたから』
人妻「どうも……」
夫「ただいまー」
人妻「お帰りなさい。あれ、今日は声が弾んでるね」
夫「うん、実は俺に部下が出来たんだけど、すごいハネッ返りで全然いうこと聞かなくてさ」
夫「扱いに困ってたんだけど……どういう心境の変化か、いきなり素直になったんだ」
人妻「へえ、よかったわね」
夫「今回は運がよかったんだろうけど、俺ももっと管理職としてしっかりしないとなぁ」
人妻「これから成長していけばいいんだよ」
人妻「5が二つだと、10になるでしょ?」
息子「わかんなーい!」
人妻「もう、なんで分からないの!」
息子「わかんなーい!」
夫「おいおい、あまり勉強を無理強いするなよ。かえって嫌いになるっていうぞ」
人妻「だけど、他の子はもう九九ができてるのよ? このままじゃ……」
夫「うーん……」
人妻「9かける9は?」
息子「81!」
人妻「あらすごい! 掛け算分からなかったのに!」
息子「こないだね、おじさんが僕に掛け算教えてくれたんだ」
息子「教え方がすごく分かりやすくて……なんでこんなこと分からなかったんだろ!」
人妻「そのおじさんって、どんな人だった?」
息子「ニチャアって笑ってた」
人妻「え……」
夫「おーい!」
人妻「どこー!?」
夫「参ったな、せっかく遊園地に来たのに迷子になるなんて……」
人妻「迷子センターにも来てないみたいだし……このまま行方不明になったら……」
人妻「やっと……夢が叶ったのに……」グスッ
夫「大丈夫だよ。必ず見つかるさ」
人妻「うん……」
人妻「あっ!」
息子「おとうさーん、おかあさーん!」
夫「よかった、心配したぞ!」
息子「あのね、算数教えてくれたおじさんがまた助けてくれたの」
夫「?」
人妻「あっ……」
夫「明日は遅くなるから」
人妻「何かあるの?」
夫「上司さんが定年退職なんだ」
人妻「まあ……」
夫「面倒見よくてみんなに慕われてたけど……あの人も可哀想な人さ」
人妻「どうして?」
夫「若い頃結婚してたらしいけど、相当あくどい手段で奥さんに親権取られちゃって今一人ぼっちだからな」
夫「最後ぐらい、盛大に送り出してあげないと」
人妻「ねえ……私も行っていい?」
夫「へ? なんで君が?」
人妻「お願い、私も行く! 上司さんには一度ちゃんと会ってみたかったの!」
夫「別にいいけど……」
社員A「お疲れ様でした!」
社員B「長い間お世話になりました!」
上司「みんな……ありがとう」ニチャア
夫「私からも花束です」
上司「ありがとう。君もすっかり立派になったね」
夫「それと……今日は妻も来ました。どうしても一度お会いしたかったと」
上司「ほう……」
人妻「あの……いつもいつも大変お世話になりました!」
上司「いやいや、上司として当然のことをしたまでですよ」ニチャア
夫「なんの話?」
夫(ん、それにしてもなんだかこの二人……)
夫「こうして並んでるの見ると、二人ってよく似てるな! まるで親子みたいだ!」
人妻「え……!」
上司「……」ニチャア
おわり