律「充電器? 私のかしてやろうか?」
唯「ちがうよー私の充電器」
律「え? 唯もAUだろ?」
唯「わかってないなーりっちゃんは」
澪「あぁ、私わかったかも……」
律「ん?」
唯「はやく充電したいなー」
澪「もうちょっとの辛抱だろ……」
唯「そうなんだけど」
律「ん? ん?」
紬「あー充電器ねーふむふむ」
唯「もうすぐ来るよ。充電器」
ガチャリ
梓「遅れてすいません」
元スレ
唯「あ、充電器忘れた」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1295442605/
唯「やっほーあずにゃんこっちおいでー」
梓「なんですか? あ、まただらだらして!」
唯「いいからいいからー」
梓「?」
澪「気をつけろ梓。充電されるぞ」
梓「え?」
律「あーそれか」
紬「うふふふ」
梓「なんかあるんですか?」
唯「……あずにゃん!」ガバァ
梓「うわっ」
唯「んぅー充電開始ー」スリスリ
梓「暑いです! 離れてください!」
唯「充電中は本体はとても熱くなりますのでご注意ください!」
梓「もうっ! 私は充電器じゃありません!」
唯「あずにゃん分が……あずにゃん分がたりないよぉ」
梓「先輩達みてないでこの人なんとかしてください」
唯「うへぇ、最新の充電器はしゃべるんだねー」
梓「変なとこさわらないでください!」
唯「もっと深く接続しないとエネルギーたまらないよー」
梓「うにゃぁ! 離してください!」
澪「なんか見てるこっちが暑くなってきた」
律「最近の唯はところかまわずだな」
紬「私の充電もはじまりました」
唯「あずにゃんむちゅちゅー」
梓「ちょ、だめですよ! チューは無しですチューは!」
唯「えーチューしてよー接続ー」
梓「だめですったら! こんな人前で」
唯「ここじゃだめ? じゃあ家でたっぷり充電させてー」
梓「そういう意味じゃないです」
唯「むぅ、最近のあずにゃんはツンツンしてるねぇ」
梓「唯先輩が悪いんですよ」
唯「そうやってツンツンするなら私にも考えがあります!」
梓「えっ!?」
バッ
澪「やっと離れたぞ」
律「練習しようぜー」
紬「充電強制終了……」
梓「考えって……なんですか?」
唯「あずにゃんが一方的にツンツンなんて先輩として許せません!」
梓「はい……で?」
唯「私もツンツンする!」
梓「ツンツン……え?」
唯「……ツンツンする」
梓「そ、そうですか。か、勝手にすればいいじゃないですかっ!」
唯「うん、そうさせてもらうよ」
梓「……うぅ」
澪「梓がとまどってる」
律「あーあ。梓寂しそうな顔しちゃって」
紬「そんな……馬鹿な唯ちゃん……ほんと馬鹿よっ!」
唯「……」
梓「……」
唯「……はじめます」
梓「宣言いるんですか」
唯「……ツンツン」
つんつん
梓「ひゃぅ!?」
唯「ツンツンツンツン!!」
梓「にゃぁあ!?」
唯「おりゃああ、あずにゃんツンツンツンツンツンツン!」
つんつんつんつん
梓「だ、だめです……そんなつんつんしないでぇ……」
唯「ここだろー! ここが弱いんだろー!!」
つんつんつんつん
梓「んぅ……! だめですだめですっ」
澪「ほんとにつんつんはじめた……」
律「梓、口では嫌がってるけど」
紬「すごい嬉しそうな顔してる!」
澪「楽しそう……」
律「やってみる?」
澪「ち、違う! 梓が楽しそうな顔してるなぁって思っただけ!」
律「おやおや澪ちゅわんもツンツンですかな?」
澪「おい!」
律「へっへー。シャイニングフィンガー律様から逃れられるとおもったか!」
澪「ムギ! とめてくれ!」
紬「充電開始充電開始充電開始充電開始」
唯「おやおやあずにゃんこの程度かな?」
梓「う、うるさいでうひゃぁ!?」
唯「おっとまだツンツンする余力が残っていたか」
梓「脇下はほんと……ふふ、だめっです」
唯「汗ばんできたね」
梓「それはいわないでください!」
唯「あとはどこをツンツンしようかなー」
梓「あう、もういいでしょっ! くすぐったいですって」
唯「あ! まだここをツンツンしてなかった!」
梓「ここって……ひゃうん!?」
唯「あははーいい反応だねー」
梓「ヤ、そこは……んっ、だめです……って」
唯「ウィークポイントはっけーん!」
律「おらおらー」
澪「こらっ! スティックはなし! ってか危ない!」
律「つんつんつんつん!」
澪「シャイニングフィンガーじゃないのかっ!」
律「シャイニングフィンガーソードォ! メン! メン! メエエエン!」
澪「やめっ、あはははっくすぐったい! あはははっゴホッゴホッ」
律「もっと色っぽい声をださんかい!」
つんつんつんつん
澪「んあぁ! もう!」
紬「すごいわ……どんどん私のなかにエネルギーがたまっていく!」
紬「……」
紬「でも、私もすこし混ぜてほしいかも……」
紬「お茶いれて待っとこ……クスン」
5分後
唯「はぁ……はぁ……・」
律「ゼイ……ゼイ……」
唯「手ごわい相手だった」
律「こっちもだ……」
梓「 」ピクピク
澪「 」ピクピク
唯「残るは……!」
律「あぁ……いくぞ唯!」
唯「突撃ー!!」
紬「え? ちょっと二人とも!!? ふぁあああああん!」
お し ま い
梓「またシール……」
唯「えへへー」
梓「えへへじゃないですよ」
唯「にへへー」
梓「もう! 勝手に貼ったらだめじゃないですか!」
唯「もーしわけない~」
梓「全然反省してないですね。これ結構はがした後ベタベタが残るんですよ?」
唯「そうなの? じゃあ剥がさなくても……」
梓「そもそも貼らないでください!」
唯「むぅ、またツンツンしちゃう?」
梓「い、いえ……すいません。なんでもありません」
唯「わかればよろしい!」
梓「でも何事もほどほどでお願いします」
唯「おっけーおっけー承知之助~」
梓「じゃあとりあえず剥がしてまわりましょっか?」
唯「えっ? そんな殺生な」
梓「みなさん迷惑してると思いますよ」
唯「んーでもでも。私そんなにみんなの物には貼ってないよー」
梓「え? そうなんですか?」
唯「うん! 貼るのはあずにゃんだけ!」
梓「そ、それは……嫌がらせで? それとも……どういう意味でしょうか」
唯「うーん、わかんないや!」
梓「……」
唯「でもなんだかあずにゃんの物にはいっぱい貼りたくなっちゃうんだぁ!」
梓「……? えっとそれは」
唯「あずにゃんどうしたの? 顔赤いよ? 怒った?」
梓「ち、ちがいます! 関係ありません!」
唯「不可解……」ジィー
梓「私のほうが……不可解ですよ」
唯「あずにゃん」
梓「なんです?」
唯「えへへ、このシール可愛いでしょ?」
梓「え、えっと……可愛い……シロクマ?」
唯「犬だよ! あ、でもあずにゃんは猫のほうが好きかーごめんね」
梓「いえ、そんな。可愛いと思いますよ犬も」
唯「じゃあこの黒猫さんのシールあげるね」
梓「あ、ありがとうございます」
唯「さっそく貼っていいよ!」
梓「はい。んーっと、どこに貼ったらいいですか?」
唯「どこでもいいよ?」
梓「じゃあ唯先輩の物に貼っていいですか?」
唯「仕返し?」
梓「まぁそんなようなものです」
唯「んで、どれに貼る? 鉛筆? ピック? あ、ギー太はだめ!」
梓「わかってますよ。んと、そうですねぇ」
唯「あ、名前かいたほうがいいよ! せっかく名前欄あるんだから」
梓「私の名前書いたシールを唯先輩の持ち物にはってどうするんですか」
唯「じゃあさ! 貼った物は自由につかっていいことにしよう!」
梓「ということは私の持ち物はすでに大半唯先輩の物化してるんですね……」
唯「そゆこと! 俺のものは俺の物! あずにゃんの物も俺のものだー!」
梓「……そうですか」カキカキ
唯「相変わらず丸くて可愛い字だね!」
梓「書きました。貼りますね?」
唯「わくわく! わくわく!」
梓「じゃあここで」
ペタ
唯「髪の毛? ほえ?」
梓「……あ、や、やっぱなしで!」
唯「?」
梓「すいませんすいません、すぐ剥がしますっ!」
唯「NO!」
梓「うぇ?」
唯「そっかぁあずにゃん……」
梓「うっ……」
唯「あ、また顔真っ赤。可愛い!」
梓「いわないでください」
唯「あずにゃんってさ……その」
梓「あうぅ……」
唯「髪の毛が欲しいんだね!」
梓「……あ、あぁー、はいそうです……」
唯「なんだーびっくりしたよー。言ってくれたら髪の毛の一本や二本あげるのにー」
梓「……ばか」
唯「え?」
梓「もうこんな馬鹿なことやめましょ」
唯「えーもっといっぱいぺたぺたしてよー」
唯「まだまだあまってるよー?」
梓「……あーもう! じゃあこれでどうですか!」
ペタッ
唯「むぐっ!」
唯「むぐむぐ……ふぁがしてぇ」
梓「あ、やってしまった……」
唯「あじゅにゃーん」
梓「すいません、剥がします」
ペリペリ
唯「もう! いきなり唇に貼るなんてそんなに私の唇……あっ……!」カァ
梓「……えっと」
唯「あ、あはは……あずにゃん……」
梓「ま、間違えたんです。ほんとはヘアピンに貼ろうかと」
唯「……そ、そうなんだ。すごい間違え方だねー」
梓「ほんとですよ? はい、ほんとに」
唯「あずにゃんのいけずぅ」
梓「あの、唯先輩は貼らなくていいんですか……?」
唯「……そだね。貼る」
梓「……顔真っ赤ですよ」
唯「いいのいいの。ちょっとまってねー名前かくから」
梓「……」
唯「えーっと、どこに貼ろうかなー」
梓「……」
唯「よーし目つぶって貼ろうかなーっと」
梓「え?」
唯「目つぶってるんだからたまたまおかしなとこに貼っちゃってもしかたないよねー」
唯「うん、だって目つぶってるもん!」
梓「は、はい……そうかもしれませんね」
唯「よーし貼るよー貼るよー」
唯「えい!」
ペタッ
梓「……」
唯「どれどれー……あっ」
梓「……ハズレです」
唯「あーほっぺたねー、ほっぺたねーあー……」
唯「しかたないよねー目つぶってたもん」
梓「そうですね」
唯「ね! もっかい! もっかい貼らせて!?」
梓「まだ貼るんですか?」
唯「シールならいっぱいあるから!」
梓「い、いいですけど……次はちゃんと……いえなんでもないです」
唯「もう目はつぶらない」
梓「そうですか」
唯「じゃあ……い、いきます」
梓「なんだか……ど、どきどきしますね!」
唯「そうだね!」
梓「その、何に貼るのかなーって意味でですよ!?」
唯「しってるよ……うん!」
梓「どうぞ」
唯「……」
ペタ
梓「ん?」
唯「あ、えへへ……えー、あぁー」
梓「なんで反対のほっぺたに貼ってるんですか」
唯「あのぅ……その……」
梓「……いくじなし」
唯「ご、ごめんなさい」
梓「唯先輩のばか」
唯「……い、いいじゃん! 私の勝手でしょ!」
梓「むぅ、そうですけど」
唯「ほんとはほっぺたがほしかったんだもーん!」
梓「そうですか、ならいいですけど」
唯「ほれたこ焼きー!」ムニュ
梓「しょれでいいにゃらいいでしゅけど!」
唯「たこ焼きあずにゃん可愛いーあははははー……ハァ……」
梓「……ハァ」
唯「ため息なんてあずにゃんらしくないぞっ!」
梓「いや、もういいんです……なんか疲れました」
唯「私もー。なんか神経磨り減ったって言うかね」
梓「とりあえず今日は帰りましょっか?」
唯「そだね」
梓「これも剥がしますね」
唯「うん。もうほっぺたは貰ったし」
梓「……アイタタ」ペリペリ
唯「やっぱ体に直接はるもんじゃないね。ごめんね?」
梓「いいですよ。私も貼っちゃいましたし」
唯「どんまいどんまい!」バンバン!
梓「な、なんですかいきなり律先輩みたいなノリ」
唯「さぁ、お手手つないで帰りましょー」
梓「それは……ちょっと」
翌日
純「おいーっす梓」
梓「おはよ」
純「梓見た!? 昨日のドラマのさー! あれ?」
梓「ん?」
純「なんか制服の後ろについてるよ」
梓「何? とって」
純「……なにこれ、なんか猫みたいな、あぁー」
梓「?」
純「とれたとれた、糸くずだった」
梓「ありがと」
純「梓いいなー」
梓「なにが?」
純「私もいつか素敵な王子様に占有されたいー」
梓「ふえ?」
憂「おはよー梓ちゃん」
唯「あずにゃんおっはー!」
純「私には挨拶なし!?」
梓「憂おはよ。おはようございます唯先輩」
唯「えへへーまた新しいシールもってきたんだー」
梓「次こそはちゃんと貼ってくれるんですか?」
唯「ちゃんとって? むふ、あずにゃん……えへへ」
梓「ち、ちがいます! もう教室いきますね!」
スタスタ
唯「おやおや」
純「なんか急に怒った。てか私らおいてくなー!」
憂「あれ、梓ちゃん背中になんかついてるー」
唯「そりゃあ私の充電器だからねー」
お し ま い
梓「唯先輩に首輪つけたい」
純「なにいきなり」
梓「いや、首輪でもつけようかなって」
純「なに? そういうプレイがお好み!?」
梓「あっ……ち、ちがうって! ほんとそういう意味じゃない!」
純「わかったわかった。顔赤くしない! で、首輪って何なのさ」
梓「えっと、ほら、なんていうか唯先輩っていつもふらふらしてるでしょ?」
梓「だからなんか見てて危なっかしくて……不安だよ」
純「……ほほう?」
梓「ホントに変な意味はないよ。ただなんとなく似合うかなぁって……」
梓「唯先輩ってちょっと犬っぽいとこあるし……」
梓「た、たまたま思いついただけ!」
純「常日頃考えてないとそういう発想には至らないとおもうけど……」
梓「純とは、あ、頭の回転とかイマジネーション力がちがうんだよ!」
純「梓がつければいいじゃん。あずにゃんなんだし」
梓「うるさいなぁ。私は飼猫はヤなの!」
純「そっか梓は『私のことをご主人様とお呼び!』『あう~ん』がやりたいんだ」
梓「だからそういうのじゃないってば! 馬鹿にしないでよ」
純「あーはいはいなんとなく言いたいことはわかるよ」
梓「そ、そう?」
純「つまり愛しの唯先輩が他の人になびかないように拘束したいんだー?」
梓「えっ、と、ちがうもん!」
純「平たく言えばそういうニュアンスでしょ?」
梓「そ、そうなのかな……」
純「おやおや御自分でもわかってらっしゃらないと?」
梓「うぅ……ちがうもん」
純「梓は憂のお姉ちゃんのこと大好きだもんねー」
梓「好きじゃないし……嘘、わりと好き……かも」
純「へぇ~?」
梓「……純むかつく」
純「突然だけど携帯みせて」
梓「え?」
純「けーたいでんわ!」
梓「い、いや」
純「なんでー? じゃあさ、待ち受けだけでいいから」
梓「む、無理……」
純「ふーん? いったい何が待ち受けになってるのかなー」
梓「……」
純「あ、もしかして『わりと』好きな先輩だったりして」
梓「……いじわる」
純「いーじゃんいーじゃんコイバナ大好き華の女子高生です!」
梓「私と唯先輩はそんなんじゃないもん……」
純「わかったわかった。そんな顔しない、いじめてるみたいじゃん」
梓「いじめてる……じゃん」
純「で、話もどるけど首輪ってさ」
梓「あーもう! なんで純にこんなこと話ちゃったんだろう!」
純「キレる十代……」
梓「もうはっきり言う! めんどくさい!」
純「おぉ! 吹っ切れたかあずにゃん一号!」
梓「常日頃から唯先輩はあっちいったりこっちいったり、ふらふらふらふら!」
梓「澪先輩に甘えてるを見るとなんだかイライラするし」
梓「律先輩とじゃれあってるとムカムカ!」
梓「ムギ先輩とおふざけで抱き合ってるときなんてもう!」
梓「あーなんかヤな気分!」
純「あんた……そりゃ嫉妬だよ」
梓「しってるよ! ていうか自分でもびっくりしてる……」
純「独占欲の強い女ってやだねー」
梓「憂とベタベタしてるのはまだ許せるかな……」
純「許すって、何様」
梓「うぅ……」
純「でも梓は唯先輩の物なんでしょ? それでいいじゃん」
梓「そうなの?」
純「そうなのって……気づいてないのか背中の」
梓「え?」
純「いやいやこっちの話」
梓「あ、もうすぐお昼終わるね」
純「なにか進展があったらぜひきかせてほしいね」
梓「もう純には何も言わないから」
純「えー私の密かな楽しみだったのにー」
梓「くそー人のこ、こい、恋路を……いやなんでもない……ハァ」
純「ま、唯先輩の天然をなんとかするのはあんたにとっての試練だね」
梓「……むむむ」
梓「ねぇ、どうすればいいとおもう?」
純「人にいきなり聞くかー。自分でなんとかせんかいっ!」
梓「だって……難しいし」
憂「ただいまー」
梓「あ、おかえり」
純「おっかえりぃ! 今ね今ね梓が!」
梓「わー! だめだってば!」
憂「なになに? またお姉ちゃんのこと?」
純「鋭い! さすが憂」
梓「そんなしょっちゅう唯先輩の話してるみたいな……」
純「してるよね?」
憂「してるよー」
梓「うそだぁ……」
憂「授業はじまるよー」
梓「唯先輩の天然か……どうしよほんと」
放課後
梓「あの……」
律「なんだよぉ! いま盛り上がってるんだって!」
澪「梓もここ座って! ほら」
紬「うふふふ、うふふふ」
梓「はぁ……で、なんの話してるんですか?」
唯「コイバナだよあずにゃん!」
律「そ! コイバナ!」
梓「!!」ドキッ
澪「いまさっきまで唯の初恋について聞いてたんだ」
梓「え……初恋……唯先輩の」
唯「うん! 初恋!」
梓「そ、そうですか……初恋……」
律「どしたー? あからさまに落ち込んで」
紬「あらあら、聞きたかった?」
澪「もっかい話す?」
唯「えー恥ずかしいよー」
梓「……初恋」
律「うーん、じゃあ梓に聞いてみよっか」
梓「え?」
唯「……あずにゃんの初恋か」
律「梓はどんな恋をしてきたのかなーって」
澪「興味ある……かも」
紬「うんうん!」
唯「わ、わたしはあんまりききたくないかなぁ……っていうか練習しよー」
律「おい、唯?」
紬「どうして聞きたくないの?」
唯「うぅ……まぁいいや、話してあずにゃん」
梓「はぁ。といって初恋話なんてあってないようなもんですけど」
唯「はは、きかせてみんしゃい……」
澪「なんだ唯。顔ひきつってるぞ」
唯「え、えへへそうかな……」
梓「話していいですか? あんまり言いたくないですけど」
律「カモンかもん!」
紬「中学生時代!? それとも最近!?」
梓「あーえっと……すっごく前です」
律「いつぐらいだ?」
梓「んー記憶は定かじゃないですけど、たぶん小学校低学年くらい……」
律「こりゃまたずいぶんと昔だな」
澪「そ、そんなころから恋を……大人だな」
梓「か、からかわないでくださいね?」
律「うい!」
紬「了解~」
梓「できれば黙ってきいてほしいです」
梓「あれは確か家族で県外のなんとか動物ランドにいったときの事です」
梓「ほら、あの動物とふれあえるっていうアレです」
梓「そこで私、家族とはぐれて迷子になっちゃったんですよ」
律「おうおうおうおう!」
梓「だまってきいてください」
唯「……」
梓「それで怖くなってわんわん泣きながら走りまわってたらですね」
梓「一人の女の子と出会ったんです」
澪「女の子? 女の子!?」
梓「あ、はい。聞いてください」
梓「その子も私と同じく迷子になったみたいだったんですが、なんだかそうは思えないくらいあっけらかんとしていて」
梓「泣いてる私をそっと抱きしめて慰めてくれたんですよ」
梓「少し歳上か同い年くらいの子でした」
梓「それでしばらく一緒に二人で歩きまわったんです」
紬「……」ゴクリ
梓「その子がいるとなんだか気持ちが暖かくて、楽しかったんですよ」
梓「親をさがすことなんて忘れて夢中で遊びまわりました」
梓「いま思えばすごく危ないですよね」
梓「でも子供ながらにすごい冒険だったんです」
梓「それで、しばらくしてその子の家族が現れて、私はそのまま迷子センターへと届けられることになりました」
梓「そこには私の両親がいました」
梓「迷子になったはずの私が泣きもせずケロっとしていたので両親はびっくりしてました」
梓「でもそれは全部その子のおかげなんです」
梓「ずっと側にいてくれて、手をつないでくれて」
梓「笑顔が太陽みたいでした」
梓「あの温もりはいまでも忘れません」
梓「残念ながらそこでその子とはおわかれになりましたけど……」
梓「名前くらいきいとけば良かったなぁ……」
梓「あ、以上です。つまらなくてすいません」
梓「ていうかこれ初恋っていうんですかね?」
律「……」
澪「……」
紬「……」
唯「……」
梓「あれっ? いや、ほんとすいません期待外れでしたよね」
パチパチパチパチ パチパチパチ
梓「え?」
律「はぁーなんか嫉妬しちゃうんですけど」
梓「え?」
澪「カミサマっているんだな……」
紬「素敵……こんなことってあるのね」
梓「はぁ、でもそんなにロマンチックではないですよ? ずっと昔のことですし」
唯「……あずにゃん」
梓「はい?」
唯「あずにゃんだったんだ……」
梓「なにがです?」
唯「んーん、たまたまだよね」
律「いやいや! たまたまなわけあるか!」
澪「そうだぞ唯! 唯っ!!」
唯「あれれーなんか……混乱してるや」
梓「いまいち理解できないですけど」
紬「あのね、梓ちゃん。さっき唯ちゃんの」
律「あーまてムギ。それは絶対本人から!」
紬「そ、そうね。ごめんなさい……」
澪「ほら、唯。ちゃんと言わないとわからないぞ」
唯「だってぇ……」
梓「なんなんですか? 私だけわからないなんて不公平です」
唯「ん……あずにゃんさぁ」
梓「はい」
唯「あそこのおっきいハムスター気に入ってたよね……」
梓「え?」
唯「あと、わんわんゾーンで吠えられて泣いちゃってさ……でしょ?」
梓「な、なんで唯先輩が……あ!!」
梓「ああああああっ!!!」
唯「……えへ」
梓「う、うそ……」
唯「唯先輩でしたー……なんて」
梓「……う」
梓「あ、ちょ、ちょっとすいません、トイレいってきます」
唯「あずにゃん……」
律「なぁ唯……」
唯「な、なにかな」
澪「なんか、私たちのほうが恥ずかしい……」
紬「唯ちゃんの話きいた後だとなおさら……」
唯「う、うん……ごめん」
律「唯の出会ったキャワイイ泣き虫な天使って梓だったんだな」
唯「み、みたいだね……うへぇ、どうしよ」
澪「あー暑いっ! 窓あける」
紬「私はいま感動しているわ。素敵よ唯ちゃん!」
唯「こ、このあと戻ってきたあずにゃんとどう顔をあわせたらいいのかわかりません!」
律「ん……んー。それはだねぇ……」
澪「いつもどおり、は無理か」
紬「じゃあもういっそ!」
唯「いっそ……いっそ……」
律「そうそう、この際……ってなんでやねーん! ……アハハ」
澪「律、おデコだしなさい」
律「ほんとごめ、アイタっ!」
唯「……ふふっ……わかった」
紬「梓ちゃん、きっといまでも唯ちゃんのこと好きよ?」
唯「ムギちゃんありがとう。でも大丈夫、私逃げないよ」
律「おっしゃあ! そうと決まれば、梓はやくもどってこーい!」
澪「どきどきする……あ、私たち席外したほうがいい?」
唯「ここにいて? 二人だとまた黙りこんじゃうかもしれないし……」
律「以外とぴゅあでシャイだからなー」
紬「でもそれがいいとこよね?」
唯「あずにゃん……」
ガチャ
梓「お、お待たせしました……」
唯「おかえり」
梓「……」
唯「……」
律「おいっ!」
澪「しっ!」
紬「……」ハラハラ
梓「……」
唯「……」
律「……おいおい」
梓「あの、唯先輩」
唯「うん」
梓「すいませんでした!」
唯「えっ!?」
梓「唯先輩ご本人だとは露知らず、勝手にしゃべくり散らかして!」
唯「いや、その、違っ」
梓「ホントごめんなさい! もうあの日のことは忘れます! だからその」
唯「あずにゃん!」
梓「いままでどおり仲良くしてくださいっ!」
唯「……あずにゃん」
ギュウ
梓「あっ……」
唯「聞いて? 私の初恋」
梓「……えっと……い、いやです」
唯「どうして?」
梓「私の初恋は唯先輩なのに……なのにそんな唯先輩の初恋話をきくなんて」
梓「きっと……心が張り裂けます」
唯「遡ること、67、8年くらい前かな?」
梓「……」
唯「私はとっても可愛い天使に出会いました」
梓「……」
唯「ちっちゃくて、泣き虫で、ちょっとおこりんぼで、でも笑顔がとっても可愛い天使です」
梓「……」
唯「その天使、私の初恋の天使。当時の顔はあまり思い出せないけれど」
唯「長い時を経て今再び、私の腕の中にいます」
梓「!」
唯「わくわく動物ランド、楽しかったよね? あずにゃん」
梓「あっ……あっ……」
唯「あれ、泣き虫はあの時から治ってないの?」
梓「唯先輩……唯先輩……グス」
唯「グス……また会いたいと思ってた。ずっとずっと」
梓「私もです……私も思ってました」
唯「たった数時間一緒にいただけなのに、なんでかな、忘れられなかった」
梓「はい……そうなんです」
唯「でもこうしてまた会えたんだよ? おっきくなったねあずにゃん」
梓「……うぅ……グス、まだこんなに、差があるじゃないですか」
唯「またよしよししてあげよっか?」
梓「け、結構です……もうあの時とはちがいますから」
唯「天使なのはかわりないよ?」
梓「恥ずかしいこと言わないでください」
唯「あずにゃ~ん」スリスリ
梓「あ……そっかぁ」
唯「ん? 何?」
梓「あのですね、唯先輩抱きしめられると、どうしてこんなに落ち着くんだろうってずっと考えてたんですよ」
唯「へぇー」
梓「今わかりました。きっと、あの時の温もりをずっと私の体が覚えていたんですね」
唯「……私もね、ここであずにゃんを最初に抱きしめたとき、なんだかすっごく懐かしい感じがしてたんだ」
梓「えへへ、なんなんでしょうね」
唯「きっと私の抱き心地メモリーにしっかりと刻まれてたんだろうね」
梓「あは、なんですかそれ」
唯「もっと刻んでいい?」
梓「もうっ、特別ですよ」
唯「あたりまえだよ! あずにゃんは特別!」
ギュウウ
梓「うっ、くるしいですって! そんなに強く抱かなくてもどこへも行きません」
唯「もう迷子にならないでねー」
梓「唯先輩が言えた口ですかソレ」
唯「私はどこへもいかないよー。えへへーあずにゃんあったかーい」
梓「暑いですって……アハハッ」
唯「あじゅにゃ~ん」
梓「……最初から首輪なんていらなかったんですね」
唯「え?」
梓「体はともかく、心はずっとずっと……私のこと……う、恥ずかしい」
唯「首輪~?」
梓「忘れてください」
唯「あ、そうだ!」
梓「なんです?」
唯「もう一度あの場所へいこうよ! 私たちの出会った場所!」
梓「あ、いいですね! 私も行きたいです!」
唯「デートだねー」
梓「そ、そうなりますよね……えへへ」
唯「また前みたいに手つなぐー?」
梓「それも……あり、かな」
律「いい雰囲気な中、突然ですまんが凶報だ」
唯「え?」
梓「あっ……いたんでしたね」
律「こらぁ! 勝手にふたりだけの国に行ってんじゃねー!」
梓「す、すいません……えへ」
唯「で、なに? きょうほうって? きょうほうってきょうほう?」
澪「悪い知らせって事」
唯「えっ悪い知らせ!?」
律「実はその動物ランド、二年くらい前に閉園してる」
唯「えっ?」
梓「あ……嘘……」
唯「えええええっ!?」
澪「知らなかったのか……」
律「いまは遊園地だっけ? 動物園?」
澪「忘れた」
梓「私たちの、思い出の場所が……グス」
律「な、なくな~。あたしらだって残念に思う」
澪「うぅ……カミサマは意地悪だ」
紬「そうね……」
唯「あずにゃん、元気だして?」
梓「はい……でも……」
唯「大丈夫だよ。だってね……」
唯「見た目や中身がいくら代わっても、私たちがそこで出会った運命はかわらないよ?」
唯「あずにゃんがここにいる。それだけで充分!」
梓「唯先輩……グス」
唯「これ以上望まないくらい幸せだよ!」
梓「……はい」
律「心配ないみたいだな」
澪「唯は強いな」
紬「もしもし? 斉藤? あのね――」
律「ん? 何電話してるんだ?」
紬「実はね。いい知らせもあるの!」
唯「きっぽうって奴?」
紬「うん!」
梓「なんですか?」
紬「そのわくわく動物ランドが閉園した後、ウチの系列がそこへテーマパークを建てたの」
梓「ムギ先輩の……」
紬「ごめんなさい」
唯「ムギちゃんが謝ることじゃないよ」
紬「でもね、居抜きに近い形だから動物とのふれあいスペースやお店はほとんどそのままで残ってるし」
紬「きっといま行っても懐かしいんじゃないかしら」
唯「そうなんだ……」
梓「完全に取り壊したわけではない、ということですか?」
紬「うん! リニューアルっていうのが一番近いかなぁ」
律「なんだそれ! すげー」
澪「良かったな! 唯、梓!」
唯「……そっか!」
梓「行きましょう!」
紬「それでね。特別優待券があるからぜひうけとってほしいの」
唯「ほんと!? いいの!?」
紬「もちろん! もともと渡すつもりだったしちょうど良かった!」
律「いいなー」
紬「もちろんりっちゃんと澪ちゃんもうけとってね?」
澪「い、いいのか? もらっちゃって」
紬「うん! よければ今度の日曜日なんてどうかしら?」
梓「天気もいいみたいですしね!」
唯「みんなで行こうよ!」
律「おっけー! でもな、お前らはちゃーんとデートすることー」
唯「わかってるよ!」
澪「デートか……すごいなぁ」
梓「楽しみです……」
紬「うふふ、楽しみー!」
唯「よーしテンションもあがってきたし練習ー……の前にお茶しよー?」
律「おいっ!」
澪「梓、これから唯と付き合っていくとなると……大変だな」
梓「いえ、扱いはもう慣れてますので」
律「お、言うねぇ」
梓「いざとなったら首輪……は要らないんでした」
紬「それじゃあ、紅茶いれていい?」
唯「いえーいティータイム最高ー初恋最高ーあずにゃん最高ー!」
梓「もう、ほんと昔から落ち着きないんですから……」
律「その発言、なんだか熟年夫婦みたいだな……」
澪「いいんじゃないか、梓に手綱にぎらせておけば安心だ」
唯「あずにゃ~ん、ケーキあーんさせっこしようねー」
梓「はいはい……」
お し ま い
土曜日
梓「ハァ……ついに明日だ」
梓「唯先輩と初デート……」
梓「あの場所へもう一度……」
梓「なんだか胸がキュンキュンしちゃう」
梓「私そんなに乙女ちっくじゃないはずなのにな」
梓「何着ていけばいいのかな。唯先輩は絶対絶対可愛い服着てくるよね」
梓「……いつものシャツだったらどうしよう」
梓「あ、それと持ち物準備しなきゃ」
梓「アトラクションに乗るからあんまりごちゃごちゃ持っていったら邪魔だよね」
梓「水筒とか……いるかな?」
梓「そういえばお昼はどうするんだろう。レストラン? たしかあったはず」
梓「あ、でもリニューアルしてるならどうなんだろう」
梓「メールで聞いて……もう寝ちゃったかな」
梓「さっきおやすみなさい送ったばっかりだしね」
梓「服はこれでいいや、よし寝よ」モゾモゾ
梓「……」
梓「……」
梓「……眠れない」
梓「……唯先輩寝坊するかも」
梓「モーニングコールしないとね」
梓「その前に私がちゃんと起きなきゃ」
梓「おやすみ、唯先輩……」
日曜日
律「やっと着いたー!! ハァーつっかれたー!」
澪「もたれかかって寝てただけだろ! うわぁ私の服、よだれの跡ついてるし!」
梓「シャトルバスなんてあるんですね」
唯「うぇ~あずにゃ~ん……」
梓「だ、大丈夫ですか……」
律「やれやれ、せっかくのデートでこれかよ」
澪「唯、酔い止め飲んでこなかったのか?」
紬「ど、どうしようお医者様呼んだほうが」
唯「ダメダメ! そこまでしなくていいって!」
梓「あ、ちょっとマシになりました?」
唯「う、うぇ~あずにゃ~ん……」
律「バス酔いを理由に甘えてるだけなんじゃないのか?」
梓「なんかそんな気もしてきました。さぁ立ってください行きますよ」
澪「ここが唯と梓の思い出の場所か……なんかいいな」
律「お、でっかい観覧車あるじゃん!」
紬「うん! ジェットコースターもすっごく怖くて素敵なの!」
澪「私はメリーゴーランドとかでいい……」
律「よーしこっち三人は澪の恐怖症克服の旅だ!」
澪「絶対いやだからな!」
紬「じゃあそういうことで唯ちゃんと梓ちゃんは二人で回ってね?」
梓「お気遣いありがとうございます」
唯「うぃ~了解。でお昼はどうするー?」
律「んじゃ昼どきになったらメールで!」
澪「怖いのヤダ怖いのヤダ怖いのヤダ」
紬「これ、渡しとくね。優待券。フリーパスだから目一杯楽しんできて!」
唯「さんきゅーべりまっち!」
梓「本当にありがとうございます。嬉しいです」
律「よっしゃぁ! 早速突撃だー!」
澪「お、おいいきなり走るなっ!」
紬「じゃあね~! りっちゃんまってー!」
唯「……いこっか?」
梓「はい!」
唯「あ、手つないでいい?」
梓「え?」
唯「まだバス酔いが……」
梓「そうですか、なら仕方ないですね。まだふらふらしてますもんね?」
唯「そそ、そゆこと!」
梓「はい、どうぞ。あ、荷物も持ちましょうか?」
唯「それはいいよー。はいじゃあお手手つなぎましょう」
ギュ
梓「~♪」
唯「あれー? なんだか嬉しそうだね」
梓「い、いえっ! そんなことないです??」
唯「何で聞くの?」
梓「さぁ……」
唯「まぁいいや、れっつごー!」
……
唯「あずにゃんや」
梓「はい」
唯「中の記憶ある?」
梓「えっと、あんまり覚えてないですね」
唯「どこで出会ったんだっけ」
梓「さぁ……? どこでしたっけ」
唯「ま、そのウチ思い出すよね」
梓「だといいですけど」
唯「「なんか乗ろ!」
梓「私最初はメリーゴーランドがいいです」
唯「お、いいねぇ! 一緒に乗ろうよ」
梓「はい!」
唯「当時はたしか馬じゃなくていろんな動物だったよねー」
梓「そんなような……その辺あやふやです」
……
唯「どうして思い出せないんだろー」
梓「そりゃもう何年も前のことですし、仕方ないですよ」
唯「あずにゃんの笑顔はずっと覚えてたのになー」
梓「うっ、そういうのは心のなかにしまっておいて下さい」
唯「……それはそうと、この馬遅いね?」
梓「遅いですね」
唯「それに二人乗りだと狭いね?」
梓「あんまりくっつかないでください」
唯「えーん落ちちゃうよー」
梓「そんな危ない設計なわけないじゃないですか」
唯「おや?」
唯「あの3つ前の馬にのってるの澪ちゃんだよね?」
梓「そうですね」
唯「なんか楽しそうだね?」
……
唯「目、まわった……」
梓「しっかりしてください、あんなスピードで……情けないです」
唯「ちょっとそこのベンチで休憩~」
梓「まだ全然時間経ってないんですけど」
唯「先が思いやられるね?」
梓「……はぁ」
唯「でもね、私は別に乗り物にのらなくてもあずにゃんと一緒にいれるだけで嬉しいよ?」
梓「……はいはい」
唯「えー、そこは照れてよー!」
梓「あんまりムード考えずぽんぽんそういうこと言うのやめてくれません?」
唯「申し訳ない! でもね、こう、真面目な空気だと私も恥ずかしいんだよ」
梓「そうなんですか?」
唯「乙女ですから!」
梓「唯先輩が乙女……うーん、なんだかなぁ」
唯「あ、自販機あるしジュース買ってくる!」
梓「いえ、お茶もってきてますから結構です」
唯「え? 持参?」
梓「え? 水筒ですけど」
唯「いまどき水筒? なんだか珍しいね、あずにゃん」
梓「えっ? あ! いや、違うんです!」
唯「なにが違うの?」
梓「なんか舞い上がってて……つい……」
唯「おでかけで水筒みたのなんてひさしぶりだー」
梓「す、水筒を馬鹿にしないでください!」
唯「おぉ怒った!」
梓「とにかく、はい、これ」
唯「今度はハンカチ?」
梓「敷くんでしょ? どうぞ! 使ってください」
唯「え?」
梓「わ、私……え?」
唯「なんだかずれてるねあずにゃんって」
梓「ずれてるんですか?」
唯「いやいや、品も趣もあっていいと思うよ!」
梓「そうですよね! あはは……」
唯「とりあえずあずにゃんの座るトコに敷いてあげる」
梓「えっと……ありがとうございます」
唯「ごめんねー私もハンカチもってくるつもりだったんだけど」
梓「これからは憂任せにしないでちゃんと自分で持ち物用意する癖つけてくださいよ」
唯「はーい」
梓「さ、お茶どうぞ」
唯「んぐんぐ、あずにゃんちのお茶の味だー!」
梓「当たり前です」
唯「おいしーね?」
梓「そうでしょうか?」
唯「飲み慣れたものでもなんだかこういう所で飲むと一層おいしく感じるよ」
梓「私も飲んでいいですか?」
唯「ほい」
梓「んぐんぐ、朝から何も飲んでなかったのでおいしいです」
唯「はい関節キッスー! やーい!!」
梓「いえ違うとこで飲みました。残念でしたね」
唯「えぇ~!? つまんなーい!」
梓「少し休んだら次いきましょうね?」
唯「つめたい子!」
梓「普通です。最近の私はちょっと甘かっただけなんです。」
唯「優しいあずにゃんがいいよー」
梓「……こんな私は嫌いですか?」
唯「えっと……好き!」
梓「私も甘えんぼな唯先輩はわりと好きです」
唯「わりと!?」
梓「さて、いきましょうか。もう酔いは醒めましたよね?」
唯「ひどいあずにゃん……これは帰ったらツンツンの刑だね」
梓「私そんなツンツンしてますかね」
唯「無自覚ツンツンだなんて……逆にいいね!」
梓「ハァ」
唯「よっこらせっと、さぁて何処から攻めようか。ふれあいゾーン?」
梓「それもいいですけど、私としては園内をぶらぶらしたいです」
唯「あー思い出探しねー」
梓「出会った場所だけはどうしても……」
唯「うん……わかった」
梓「ごめんなさい変なことに付きあわせて」
唯「いえ、どこまでもご一緒します姫」
梓「ふふ、なんですかそれ」
……
律「おーい唯、こっちー!」
唯「りっちゃーんおまたせ!」
澪「遅いぞ!」
梓「すいません唯先輩が道間違えて」
唯「えぇ!? 私のせいじゃないよー、あずにゃんが自身満々であっちっていうから」
梓「ちがいます! 私はあっちから来ましたっけ?って尋ねただけです」
澪「道案内でてるだろ……」
紬「それより、午前中はたくさん回れた?」
唯「うーんまぁまぁかな。ほとんどぶらぶらしてたから」
澪「こっちはどこも結構並んでてさ、律が駄々こねて大変だったよ」
律「空いてたバイキングに乗ろって言ったのに澪のやつがー!!」
紬「私上下さかさまになるのって初めて! 楽しかった!」
梓「なんか充実してたみたいですね」
唯「こっちも楽しかったよ? ね? あずにゃん」
律「先レストラン入ろうぜぃ!」
唯「私おなかぺこぺこー」
梓「澪先輩なにか怖いの乗りました?」
澪「う、うん……小さいほうのジェットコースター」
梓「あ、それ私たちも乗りました」
律「あんなの絶叫マシーンじゃなーい!」
唯「そうだー! なんだーあのやる気のない速度はー!」
梓「唯先輩半べそでしたよね?」
唯「ちょっとあれは目にゴミがね……」
梓「……」
紬「私午後からは大きい方のりたーい!」
澪「ムリムリ無理! あれ、だって足宙ぶらりん」
律「じゃー澪だけ留守番してればいいじゃん? あたしらだけで楽しんでくるからー」
澪「うぅ……」
律「一人下のベンチでお留守番。あー悲しい。知らない人に絡まれたらどうしましょう」
澪「……ひどい」
唯「なんやかんやで乗ってしまう澪ちゃんでした!」
澪「絶対のらないからな!」
梓「唯先輩はのりますよね?」
唯「え?」
梓「乗らないんですか?」
唯「……」
梓「……乗りましょうよ」
唯「あずにゃん先輩がそういうなら」
律「あれ、唯ってこういうの苦手だっけ?」
梓「意外とこの人ビビリなんですよ」
唯「……」
梓「基本いくじなしですしね? シールの時とか」
唯「うえーんあずにゃんがいじめるよー」
澪「よしよし、恐怖は分かち合おう」
紬「席あいたみたい」
律「よーしあたし琴吹ランド名物のハンバーグにしよーっと!」
唯「私ムギちゃんランド名物のナポリタン!」
紬「そんな名前じゃないけど……ふふ」
梓「午後はまた別れて行動ですか?」
澪「それでいいかも。梓も唯と二人っきりがいいだろ?」
梓「それはそうですけど、なんか疲れるんですよ……振り回されっぱなしというか」
澪「苦労するだろうけど、まぁ惚れた弱みだし頑張れ」
梓「惚れ……うっ、違いますって……そんな」
律「なにが違うんだよぉ! あんなに涙ながして喜んでたくせに」
唯「えっあずにゃん私のこと嫌いなの? 好きって言ってくれたじゃん!」
澪「梓」
紬「梓ちゃん!」
梓「……なんですかこれ、圧力ですか」
唯「えへ~あずにゃんが困ってるとついね~」
梓「見ててください。いつか仕返ししますから」
唯「ツンツンで決着つける?」
澪「ひっ、あれはもう」
紬「結構です……」ブルブル
律「注文とるぞー」
……
唯「さてと、お腹いっぱい」
梓「律先輩たち元気ですねー」
唯「食べてすぐジェットコースター行くなんて気がしれないよ」
梓「あれ、案外まともなこと言いますね」
唯「あずにゃんの前でこれ以上醜態を晒すわけにはいかないからね!」
梓「お願いですからリバースだけはやめてくださいね……」
唯「一応トイレの場所かくにんしとかないと……」
梓「やめてくださいホントに!」
唯「じゃあまずはふれあいコーナー行こうよ」
梓「さっきちょっとだけ行ったじゃないですか」
唯「チラっと見ただけじゃん。ふれあいたいよ」
梓「んーちょっとだけないいいですよ」
唯「あの時のおっきいハムスターいるかなぁ」
梓「いるわけないでしょ……とっくに……」
唯「それ、なんだか寂しいね」
梓「わかってましたけどね。やっぱり思い出って美しいものです」
唯「鮮明じゃないけど、綺麗に保存されてるよね」
梓「ムギ先輩には悪いですけど、なんだかんだ言ってここはもはや別物です」
唯「うん。なんかピンとくる場所もないよね」
梓「月日が流れたんですから当然ですけど……」
唯「噴水……見たような」
梓「噴水ですか……ありましたっけ?」
唯「うーん地図みてみようよ」
梓「あ、たぶんこれですね」
唯「こんな真ん中だったっけなー」
梓「わかりません、とりあえず行ってみます?」
唯「ちょっとココからは遠いかも」
梓「じゃあ噴水行くついでにコレとコレまわりましょう」
唯「あー水がザップーンってやつね! 濡れ濡れのあずにゃん見れるかな?」
梓「濡れるんですかコレ?」
唯「しらない! 行こう行こう!」
梓「濡れるの嫌ですけど……」
唯「濡れたらお姉さんが拭いてあげる!」
梓「……わかりました」
唯「…………」
唯「ねぇあずにゃん、あんまり楽しくない?」
梓「え? いえっそんなことは」
唯「……そう」
梓「なんていうか、拍子抜けなだけです」
唯「拍子抜け? うん、そうかもね」
梓「もっとたくさんいろんなコト思い出せると、そう思ってました」
唯「うんうん」
梓「もっと果てしなく広かったような気もしますし」
唯「だね」
梓「あ、でもがっかりとは決していいません。いいとこです、賑やかですし」
梓「でも……私」
ギュ
梓「えっ?」
唯「焦らなくていいよ。これからたくさんたくさん思い出が生まれるから」
梓「唯先輩……」
唯「いいんだよ、色あせてしまっても。だって、きっとそのために出会ったんだよ」
梓「あっ……」
唯「私たちは大丈夫。一緒にいる限り、消えてしまうことはないから」
梓「……そう、ですね」
唯「だから目一杯たのしもう?」
唯「いつかうやむやな記憶になってしまっても、楽しかったことだけは思い出せるように」
唯「ふたりで笑って懐かしめるように……」
梓「はい……」
唯「ほら、行こっ! まだまだたくさんのアトラクションが私たちをまってるよ!」
梓「はい! 私、たくさん楽しんで帰ります! 唯先輩といーっぱい素敵な思い出つくります!」
唯「そうだよ! 私もあずにゃんと一緒に楽しみたい!」
梓「はい! だから、離してくださいいい加減恥ずかしいです」
唯「え"ぇ~~!?」
梓「すいません人目は結構きにするタイプなんで……」
唯「そんな~」
梓「抱きしめるのはまた……あとでお願いします」
唯「あずにゃん……うん! またいっぱい抱きしめてあげる」
梓「ほどほどで」
……
唯「あずにゃんさん……」
梓「唯先輩……」
唯「どきどきするね……」
梓「私、泣いてませんか?」
唯「無理、顔みる余裕ない」
梓「あぁ、もう目前に。秒読み開始です」
唯「大丈夫。何があってもいっしょだよ」
梓「……はい、だからしっかり前のレバーもってください」
唯「いやああああ助けてえええ!! あずにゃん私もう帰るー!!」
梓「勝手に帰ればいいじゃなあああああああああっ!!」
ガコンガコン ゴオオオオ
律「ぷぷーアイツら叫びすぎー」
紬「まさか二人とおんなじタイミングでコレに乗るなんてね」
澪「 」
律「んでなんで気絶するくせに乗るんだよぉ!」
澪「 」
紬「失禁してないだけマシかも……」
律「それシャレになんねぇ」
唯「よっこらせ、あー怖かった」
梓「もう、唯先輩怖がりすぎですよ」
唯「あずにゃんだって叫んでたじゃん」
梓「あれはー……ノリです」
唯「ほんとー?」
梓「あ、律先輩たち!」
律「よーっす、たまたまお前らの後ろに乗り合わせてた」
紬「えーん怖かったー!」
梓「全然そうは見えませんけど!」
唯「澪ちゃんは……?」
澪「 」
律「おい澪」ユッサユッサ
澪「あ、律!」
唯「すごーい! 澪ちゃんなんだかんだで乗れたんだね!」
律「気絶ですんで良かった」
澪「そ、そうだな」
梓「いやいや、気絶とか普通に危なすぎるでしょ」
澪「気絶じゃない! 外界との遮断だ! 怖いものは自動でシャットアウト!」
律「便利な能力だなー」
紬「唯ちゃんたちはどうだった?」
唯「あずにゃんのツインテールが結構邪魔くさかったよ!」
梓「そんなこといわないでください!」
澪「あぁ……すっごい髪の毛乱れてる……」
律「よーし次いくぞ次ー!」
紬「おー!」
唯「私たちはどうする?」
梓「また少し疲れたんで、なにかゆっくりできる乗り物ないですかね」
唯「んーあるにはあるけど」
律「じゃあなー! まった後で-!」
澪「おい、今日どんだけ走るんだ!」
紬「うふふふー帰りのバスは5時だから忘れないでねー」
梓「で、何があるんですか?」
梓「コーヒーカップとか? あ、スワンボートもありましたね」
唯「違う違う、あれだよ」スッ
梓「あれって。あぁ、観覧車ですか……観覧車」
唯「……」
梓「いいんじゃないですか?」
唯「でしょ?」
梓「あ、でも……」
唯「ねぇあずにゃん。デートで、ふたりきりで観覧車といったらさ……」
梓「で、ですよね。もはや定番の……あれを」
唯「てっぺんまで上がったら? だよね」
梓「そ、そうなります……ね」
唯「じゃあ乗る?」
梓「乗ったら、唯先輩と……するってことですよね」
唯「……うん」
梓「……乗ります」
唯「うん! 私も乗りたい」
梓「別に唯先輩としたいとかそういうんじゃなくてですね」
唯「うんうん、わかってるわかってる」
梓「休憩には、ちょうどいいかなって」
唯「そうだねーあずにゃんの言うとおり!」
梓「ばかにしてません!?」
唯「べっつにぃ~」
梓「とりあえず向かいましょう」
唯「……やっとだ」ボソ
梓「え?」
唯「んーん! なんでもない! いこっ!」
……
唯「徐々にあがってきたねー」
梓「まだ半分ものぼってませんけど、結構高いですね」
唯「怖い?」
梓「いえ」
唯「あ、ほら向こう、さっき見た噴水広場!」
梓「やっぱり何も思い出しませんでした?」
唯「残念ながらねー」
梓「あれ、噴水が……見てください唯先輩!」
唯「おぉ!?」
梓「いっぱい吹き上がってて綺麗ですねー……あっ」
唯「あずにゃん……やっぱり噴水だよ」
梓「はい、なんとなくそんなような!」
唯「絶対噴水だよ! 私たち! あそこで出会った!」
梓「わかるんですか!」
唯「3時ぴったりになったら、ほら、あそこ12箇所からピューっと噴き出すの!」
梓「えぇ、見えてます」
唯「そっか、だからわからなかったんだ」
梓「私も思い出しました」
唯「うん、あずにゃんにきれーだねぇーって」
梓「言ってくれましたね」
唯「あの時、どうやって泣きやますか必死だったんだー」
梓「それはどうもご迷惑おかけしました……」
唯「噴水がタイミング良かったから、あずにゃん喜んで笑ってくれて……」
梓「はい。ほんとに、綺麗でした」
唯「あ、止まっちゃった……」
梓「唯先輩」
唯「なぁに?」
梓「鮮明でした、思い出」
唯「そう? えへへ、良かった良かった」
梓「できれば間近でみたかったですけど」
唯「それは仕方ないねー」
梓「そ、そういえば」
唯「ん?」
梓「あ、あと何分くらいでてっぺんですかね」
唯「あずにゃんったらやらしーの! カウントダウンしてるなんて」
梓「うっ」
唯「そんなに楽しみなんだ? てっぺんの……えへへ」
梓「ち、ちがいます! 心の準備をですね」
唯「ふーん、じゃああと3分くらい? 確か一周15分くらいって書いてたよね」
梓「3分……3分後には私……あぁっ」
唯「まだしてもいないのに顔真っ赤だよ?」
梓「ゆ、唯先輩こそ! 真っ赤です」
唯「う、うわー人が豆粒みたいだよー……」
梓「ごまかさないでください!」
唯「あとニ分」
梓「!」ドキッ
律「さぁーて唯と梓が乗ってるゴンドラはどれかなー」
澪「や、やめろぉ……のぞき見なんて」
律「あーそっかぁ! いまごろムチュチューな展開かもしれませんしねー!」
澪「うっ、だからやめろって……」
律「あれか? それともあっちかー? おおーう、上のほうはもうよく見えないな」
紬「たぶんあの水色のゴンドラじゃないかしら」
律「え? あの一番上の?」
澪「良く見えない……」
律「なんだよー澪も興味しんしんじゃん!」
澪「……唯、梓」
唯「ねぇあずにゃん」
梓「はい……」
唯「もうてっぺんだよ」
梓「そうですね……」
唯「いい眺め。ほんとに世界に私たち二人だけしかいないみたい」
梓「はい」
唯「空に浮かんでるよ」
梓「唯先輩……」
唯「おいで?」
梓「はい、あの……目、つぶっていいですか?」
唯「うん。いいよ」
梓「……大好きです」
唯「言葉はもういらないよ」
梓「んっ……――――
――――――
――――
――
唯「……」
梓「……」
唯「あっというまだったねー」
梓「そんなもんじゃないですか?」
唯「さて、私のファーストキッスはいかがだったでしょうか」
梓「……そうですね」
唯「……どきどき、わくわく」
梓「短くてよくわからなかったので」
唯「えぇ!?」
梓「だから、もう一周……しませんか……?」
唯「……おぉ!?」
梓「あっ、や、やっぱいいです! 下着いたらすぐ降りましょう」
唯「ノーノー! 喜んでもう一周お供いたします!」
梓「うっ」
唯「でもさーそれってさ、もっかいてっぺんついたらさー」
梓「……」
唯「また、していいってことでしょ?」
梓「あぅ……はい」
唯「んーということはあずにゃんと二回目のちゅーするまであと10分ってとこかー」
梓「もうっ! そういうのやめてください!」
唯「てかてっぺん以外じゃダメ?」
梓「だ、ダメです!」
唯「どうしてー?」
梓「だって……一番上じゃないと、見えちゃうじゃないですか!」
唯「あ、そっかそっか! ごめんね。あずにゃん恥ずかしがり屋さんだもんね」
梓「唯先輩も……意外とウブですよ」
唯「でも先輩ですからー! こういうときは頑張ってリードしなくちゃ!」
梓「それは、ありがとうございます……」
唯「えへへー次のデートはどこにしよっかー」
梓「もう次のこと考えてるんですか?」
唯「うん! 毎日でもしたいよー! だってデートだよー?」
梓「じゃあ次は……バス無しでいけるとこにしましょう」
唯「りょ、了解です!」
……
律「で、こんな時間までずっと二人でグルグルしてたってのかー!!」
澪「いったい何周したんだ……」
紬「あらあらあらあら」
梓「すいません……」
唯「だってあずにゃんが何度もふがぁもがっ!」
律「んぁ?」
梓「なんでもありません! ほんと!」
唯「ふがぁ、もう! なにすんの!」
梓「何いいだすんですか! バカですか!」
唯「にゃにぃ~?」
澪「あの、もう帰るけど唯はバス大丈夫か?」
唯「あ、それは大丈夫大丈夫! 帰りは寝るから」
澪「そっか」
唯「あずにゃんの膝でね!」
梓「しりません!」
唯「ツンツン!」
梓「ひゃあっ! つんつんはダメです!」
唯「ツンツンツン! ほら乗るよーちゃんと枕になってねー」
梓「うぅ、私だって疲れてるんですから……」
唯「そっか、じゃあ一緒に寝よ!」
梓「それなら……いいですけど」
律「くぁ~、今朝とは見違えるほどおアツくなってますなー」
澪「なぁ、こんなこと聞いていいのかわからないけど」
唯「なんだい澪ちゃん!」
澪「観覧車で……その、済ませたのかなって……」
梓「!」ボン
唯「うん! えっとねー何回だっけ」
梓「なぁー! 言わないって約束したじゃないですか!!」
紬「あら、素敵なことじゃない」
澪「そ、そうか……したんだ……何回も……」
律「なんで澪が赤くなってるんだよー」
澪「だってぇ……」
梓「もう、唯先輩はおとなしく寝ててください」
唯「うーい、よっこらせっと」ゴロン
梓「……やっぱり膝なんですね。結局私寝れないじゃないですか」
唯「あずにゃんのお膝きもちー」
梓「……」
唯「ねぇあずにゃん」
梓「はい」
唯「なんだか人生の意味がわかった気がするよ」
梓「はい?」
唯「私ね、きっとあずにゃんに出会うためにあの日迷子になったんだー」
梓「……」
唯「運命だよね?」
梓「そう、かもしれませんね」
唯「えへへーあずにゃんもそう? 私に見つけてもらうために迷子になったの?」
梓「……えぇ。そうですよきっと」
唯「そっかぁ。嬉しいな」
梓「このまま唯先輩とずっとずっと一緒にいれたらいいですね」
唯「うんどんなときでもずっと横にいるからね」
梓「はい。約束しましたよ」
唯「あ、もう眠たいや……今日は疲れたな」
梓「いろいろありましたから」
唯「うーっん……あずにゃん」
梓「はい?」
唯「手握ってー」
梓「はい」
ギュ
唯「着くころにはあずにゃん分、充電おわってるといいなー……」
唯「……」
唯「zzz」
梓「おやすみなさい、唯先輩」
お し ま い