私の父の実家は自宅から車で二時間弱くらいの所にある。
農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校生になってから、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行ってた。
おじいちゃんとおばあちゃんも「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。
春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われてじいちゃんの家にバスで行った。
まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。
「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ……」
女「? 何だろうこの音」
庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。生垣の上に置いてあったわけじゃない。
帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで来ると、一人女性が見えた。
まあ、帽子はその女性が被っていたわけだ。その女性は白っぽいワンピースを着ていた。
元スレ
百合少女「八尺様……?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1358263001/
女「!」ドキッ
女(綺麗な人……///)
でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高い人なんだろう。
ドキドキしていると、彼女はまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。
また、いつのまにか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。
女「あっ……」
女「お話、したかったな……」
それは、一目惚れだった。
その後、居間でお茶を飲みながら、おじいちゃんとおばあちゃんにさっきのことを話した。
女「さっき、とっても綺麗な人を見たんだ~/// 背が高くって、スタイルも良かったなあ//」
祖母「へぇ~」ニコニコ
女「どれくらいかって言うとね! 垣根より背が高かったの! 帽子を被っていてね、『ぽぽぽ』って可愛い声を出してたんだ」
祖父・祖母「!」
その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」
と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。
おばあちゃんは心なしか震えているように見えた。
女(有名人だったのかな。そりゃ綺麗なわけだ)
ガラッ
祖父「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」
女「え?」
祖父「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」
と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。
女「ねえおばあちゃん。何がどういうことなの?」
祖母「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何にも心配しなくていいから」ビクビク
女「えっ!」カァァ
女「み、魅入るって……そういうことだよね……///」ドキドキ
女「……」
女「ふおおおおおおおおっ!」
祖母「!?」
それからおばあちゃんは、おじいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。
女(都市伝説かあ。……でも、凄い綺麗な人だったなあ)
そのうち、おじいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。
Kさん「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」
Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。
それから、おじいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。
おばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。
しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅には盛塩が置かれていた。
また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、その上に小さな仏像が乗っていた。
あと、どこから持ってきたのか「おまる」が二つも用意されていた。これで用を済ませろってことなのかな。
祖父「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。
俺もばあさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。
そうだな、明日朝の七時になるまでは絶対ここから出るな。七時になったらお前から出ろ。家には連絡しておく」
Kさん「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。何かおきたら仏様の前でお願いしなさい」
女「うん! 私、絶対に八尺様をモノにするからね!」
祖母「かわいそうに……あまりの怖さでおかしくなっちゃって……ううっ……」ポロポロ
祖父「きっと、大丈夫だ……」ダキッ
~夜~
テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。
女「どうしよう……どの服がいいかな……」
私は持ってきた着替えと睨めっこをしていた。
女「あ、このお菓子おいしい。八尺様にもあげよっと」
女「いつ来るんだろう……まだかなぁ」
いつのまにか眠っていたようで、目が覚めたときには、何だか忘れたが深夜番組が映っていた。
携帯を見たら、午前一時すぎだった。
なんか変な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえた。小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。
女「も、もしかして!」ドキドキ
女「こんな時間に会いに来てくれるなんて……八尺様ってば///」
そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」
思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。
女(つまり、この声の主は八尺様! というか声真似上手だなあ……)
また声がする。
「どうした、こっちに来てもええぞ」
女「はぁはぁ……今行きますね!」
扉は鎖で固く閉められていた。
女「ちょっ、誰なの! こんなことしたの!」グギギギ
「……」
女「ぐへ、ぐへへ……今開けますからね……」
「や、やっぱこっちに来んでもええぞ」
女「もうっ/// 八尺様ったら照れちゃって!」
バキッ
女「……開いた……」
「ひいっ!」
女「はぁはぁ……八尺様……」ガラッ
そこには、端麗な顔立ちを歪ませ、今にも泣きだしそうな大柄の美女がへたり込んでいた。
女「会いに来てくれたんですね……////」
八尺様「い、いやっ!」
ガシッ
女「八尺様……いや、八尺さん……」ギュ
八尺様「!」
女「……好きです……/// 私も、一目見たときから魅入っていました///」
八尺様「……」
八尺様「……わ、わけわかんないっ!」ドンッ
女「きゃっ」
押された衝撃で床に頭をぶつけてしまい、女は朝まで眠ることとなった。
朝、ドアを開けると、そこには心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。
ばあちゃんが、よかった、よかったと涙を流した。
女「振られた……」ドヨーン
下に降りると、父も来ていた。
おじいちゃんが外から顔を出して「早く車に乗れ」と促し、庭に出てみると、どこから持ってきたのか、ワンボックスのバンが一台あった。
そして、庭に何人かの女性たちがいた。
ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、
庭にいた女性たちもすべて乗り込んだ。全部で九人が乗り込んでおり、八方すべてを囲まれた形になった。
女性1「大変なことになったわね。気になるかもしれないけど、これからは目を閉じて下を向いていなさい。私たちには何も見えないけど、あなたには見えてしまうだろうから。
いいと言うまで我慢して目を開けないでね」
右隣に座った三十歳くらいのお姉さんがそう言った。
そして、おじいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、後に父が運転する乗用車という車列で走り出した。
車列はかなりゆっくりとしたスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。
間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。
女「はぁ、お別れかあ……」
ここで笑い声が聞こえてくる予定なのに何も聞こえてこない。
女「……」
女「……ぽぽぽぽ~……」
女「ぽぽ、ぽぽぽ~?」
女「ぽぽ!」
女性2「この子憑かれてるんじゃないかしら……」
女性1の忠告を無視して両目をがん開きしていたが、車窓には何も映らない。
女「はぁ……」
なんとなくガラスを叩いてみる。
コツ、コツ、コツ
女「あっ、来た来た! 来たよ!」
女性3「……」
女の奇行に触れなかったKさんが「うまく抜けた」と声をあげた。
それまで黙っていた周りを囲む女性たちも「よかったわね」と安堵の声を出した。
やがて車は道の広い所で止り、父の車に移された。
父とおじいちゃんが他の女性たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろ」と近寄ってきた。
お札を見てみたが、何ら変わりはなかった。
Kさんは「え、ええっと……も、もう大丈夫だと思うがな、まあ……念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」と新しいお札をくれた。必要ない。
女「あのお地蔵さんのせいだ……!」ダダダッ
女「おらあっ!」ゲシゲシ
Kさん「ちょっ」
そんなときだった。
お地蔵さんのある木陰、つまり私の傍に白いワンピースの彼女が現れた。
大人たちがどよめいた。見えているらしい。
女「は、八尺さん……」
八尺様「……」
女「会いたかったです……」ギュッ
八尺様「っ……」
女「……」
女「……望むのなら私を殺してください。それか……私に……」
女はつばを飲み込んでからこう言った。
女「私に、キスを、してください」
八尺様は驚く表情を隠せなかった。
八尺様「……正直、こんな人間は初めてだ……」
八尺様「……私は何人もの人間を殺してきた……だから、もちろん、皆は私を恐れた。当たり前だ」
女「……」
八尺様「だが、お前は私を恐れない……いや、そんな奴は何人もいたが、もちろん殺した」
八尺様「みんな殺した……」
八尺様「だけど、だけど……お前はどうも、殺せそうにない……」
女「八尺、様……」
八尺様「あと、このよくわからない気持ちも、殺せないんだ……////」
八尺様「……この感情を人間では何と言うんだ……? ……女、答えて」
女「……」
女「恋。恋です。八尺様」
八尺様「そうか……恋か……」
女「……はい」
八尺様「恋とは……凄くいいものだな」シャガミ
チュッ
女「んっ……///」
八尺様「んむ……////」
愕然とする大人たちをよそ目に、その行為は数十分にも渡って行われたという。
~完~
~後日~
外に出られるようになった八尺さんは私と一緒に暮らしている。
好き放題人を殺せるのに、八尺さんは誰も殺さず、私と毎日イチャイチャしている。
彼女は自分を物好きだといった。照れ屋さんだなあ……。
あれから一年が過ぎ、私ももう大学生。ちょっとは八尺さんに近づけたかな?
そんなこんなで今日は八尺さんとデート。八尺さんはあの時の私みたいに洋服と睨めっこをしている。
女「も、もう。八尺さんってば、早くしてくださいよ~」
八尺様「うーん……」
おしゃれを楽しむ八尺様は素敵だ。いや、何もしてなくても素敵なんだけど。
~街~
「うわー、あの人おっきい……」
「というかすげーかわいい」
八尺様「……」
この人は私の恋人なんだぞ、と心の中でつぶやく。
女「八尺さん、今日も注目されてますね~」
八尺様「……あまり気分はよくない」
女「そりゃ身長のこともありますけど、ほとんどがその美貌の事ですよ」
八尺様「もう……」
八尺さんは照れながら私の頭を撫でた。
女「ちょ、ちょっと//// 恥ずかしいです!」デレデレ
八尺様「ふふっ」
笑顔も増えた。美しい笑顔。
なんやかんやあって私達はホテルの前に居る。
女「……///」
八尺様「いこっか///」ガシッ
女「えっ、で、でも」
八尺様「ふふ……」
八尺様「えっちな気分になってきちゃったんだよね……ね、いこ?」ボソッ
耳元で囁かれた。八尺さんの息が当たって、もう、たまらんのです。
私は顔を真っ赤にして小さな声で、「はい」と言った。
実をいうと八尺様とは一回もしたことがない。今日が初夜になるのだ。
女「あ、あの……八尺様は……何をすればいいのか知ってるんですか?」
八尺様「wiki見たから。いける」
八尺様は最近ネットにご執心。でもなんでwiki……。
結局、全く性事情に詳しくない女は付け焼刃の八尺様にイカされまくったとさ。
~完~

