シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」【前編】
シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」【中編】


604 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:01:02.20 3d5dCKQ9o 586/814

シンジ(留守番電話)「はい、ただいま留守にしています。発信音の後にメッセージをどうぞ」

アスカ「最後の仕事か…」

アスカ「まるで血の赤ね」




シンジ「拉致された!?副指令が?」

諜報部員「今より2時間前です。西の第8管区を最後に、消息を絶っています」

シンジ「うちの署内で…!?消えようがないじゃないか」

諜報部員「身内に内報、および先導したものがいます。その人物に裏をかかれました」

シンジ「身内に内報……?…まさか!」

諜報部員「惣流・アスカ・ラングレー。この事件の首謀者と目される人物です」

シンジ「………!」

諜報部員「首謀者とあなたの過去の経歴を考えると…致し方ない処置かと思われます。作戦課長を疑うのは、同じ職場の人間として心苦しいのですが…」

シンジ「いいよ…。それが諜報部の仕事だもの…」

諜報部員「ご協力感謝します。お連れしろ!」

605 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:02:01.61 3d5dCKQ9o 587/814

カヲル「……お久しぶりです、キール議長。ずいぶんと手荒な歓迎ですね」

キール「非礼を詫びる必要はない。君とゆっくり話をするためには、当然の処置だ」

カヲル「相変わらずですね……僕の都合はおかまい無しですか?」

ゼーレ「議題としている問題が急務なのでね。やむなくの処置だ」

ゼーレ「分かってくれたまえ」

カヲル「やれやれ…委員会ではなく、ゼーレのお出ましとは」

ゼーレ「われわれは、新たな神を作るつもりはないのだ!」

ゼーレ「ご協力を願いますよ、渚先生」

カヲル「……」

カヲル(渚先生、か…)

606 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:03:01.87 3d5dCKQ9o 588/814

学生「先生!渚先生!」

カヲル「ん?ああ、君たちか」

学生「これからどないです?鴨川でビールでも」

カヲル「またかい?学生の本分は勉学じゃなかったのかな」

学生「そない言わんと。リョウコらが先生と一緒なら行くゆうとりますんや」

学生「教授もたまには顔出せゆうてはりましたで」

カヲル「……ああ、分かったよ」

607 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:04:02.85 3d5dCKQ9o 589/814

教授「たまにはこうして外で飲むのも良かろう」

カヲル「えぇ…まぁ…」

教授「…君は優秀だが、人の付き合いというものを軽く見ているのがいかんな」

カヲル「恐れ入ります」

教授「ところで渚君、生物工学部の葛城という生徒を知っているかね?」

カヲル「? いいえ、存じませんが」

教授「成績はいいのだがね…色々と悪い噂を耳にする。君のことも嗅ぎ回っているようだ」

カヲル「僕のことを?」

教授「おそらく…君の後ろにある組織にくみいろうという魂胆だろう。気を付けたまえ」

カヲル「……」

カヲル「肝に銘じておきます」

608 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:05:02.07 3d5dCKQ9o 590/814

ゼーレ「S2機関を自ら搭載し、絶対的存在を手にしたエヴァンゲリオン初号機!」

ゼーレ「われわれには具象化された神は不要なのだよ」

キール「神を作ってはいかん」

ゼーレ「まして、あの男に神を手渡すわけにはいかんよ!」

ゼーレ「葛城。あの男、信用に足る人物かな?」

609 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:06:01.51 3d5dCKQ9o 591/814

論文に没頭するカヲル

カヲル「……おっと」

カヲル「すっかり時間を忘れていたな…」

カヲル「……」

カヲル「…この時間なら、学食も空いてるか…」




葛城「B定を」

カヲル「B定食を」

葛城カヲル「………」

おばさん「すみませんねぇ、B定こちらの学生さんで終わりなんですよ」

カヲル「そうですか……ではA定食を」

おばさん「すみません」

葛城「………」

610 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:07:02.08 3d5dCKQ9o 592/814

葛城「あの……取り替えましょうか?」

カヲル「え?」

葛城「迷っていたんです。だから…どちらでもよくて」

カヲル「ああ……定食のことか。気にしなくていいよ、僕もそんなに拘って決めたわけではないんだ」

葛城「そうですか……それじゃあ…」

カヲル「……おや、君は…」

葛城「?」

カヲル「その資料、生物工学部の子かい?」

葛城「はい、まぁ…」

カヲル「では、僕の講義は?」

葛城「…取っています」

カヲル「ちょうどよかった。意見を聞かせてくれないかな」

葛城「…自分のですか…?」

カヲル「そう。論文で行き詰まっててね、新しい風を入れたいんだ」

カヲル「君、名前は?」

611 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:08:06.78 3d5dCKQ9o 593/814

カヲル「そう…彼の第一印象は、不思議な男だった…」

カヲル「影のあるようにも見えるが…どこか人を惹き付ける」

カヲル「言葉少なで、人と距離を置きたがるために…誤解されることも多いが、少なくとも僕の目には善人に見えた」




カヲル「そしてあの時はこの国に季節、四季があった」

612 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:09:02.56 3d5dCKQ9o 594/814

カヲル「いいことじゃないか。…パートナーの存在は人生をより良いものにしてくれるよ」

葛城「…しかし」

カヲル「何か問題が?」

葛城「彼女を……幸せにできる自信がありません」

カヲル「……」

カヲル「…ふふ、葛城君。そういうことは直接本人に聞くべきだよ」

葛城「?」

カヲル「自信があるとか、ないとかは関係ないんだ。人を変えるのはいつだって変わりたいという人自身の意思だからね」

葛城「…人自身の、意思…」

カヲル「彼女が君を愛しているならば、彼女自身が君の隣を選ぶだろう。それが幸せの道だからね」

葛城「……」

カヲル「そして君自身が選ぶ、幸せの道でもある」

613 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:10:01.62 3d5dCKQ9o 595/814

カヲル「…彼らは籍を入れた」

カヲル「その直後だった」


カヲル「セカンドインパクト。20世紀最後の年に、あの悲劇は起こった」

カヲル「そして、21世紀最初の年は、地獄しかなかった…他に語る言葉を持たない年だ」

614 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:11:01.88 3d5dCKQ9o 596/814

2年後、南極調査船内


カヲル「これがかつての氷の大陸とはね。見る影もない…」

カヲル「…君があの日、帰国していなかったらと思うと…ゾッとするよ、葛城君」

葛城「…自分は、難を逃れましたが……多くのものを失いました」

カヲル「そうだね…その通りだ」

カヲル「何も取り戻せはしないが…少しでも情報を得ないと。二の舞だけは御免だからね」

葛城「……先生」スッ

カヲル「? …なんだい?」

葛城「…これを。妻からあなたへ渡すように言われています」

カヲル「これは、奥さんと…息子さんの写真かい?」

葛城「…娘です」

カヲル「なぜ僕に?」

葛城「…妻は、よく溢しています…自分たちより渚教授が大切なのか?と」

カヲル「はは…それは…一度怒られに行かなくてはね」

615 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:12:01.78 3d5dCKQ9o 597/814

カヲル「…最近、ゼーレについて良くない噂を耳にするよ。…力で、理事会を押さえ込んだとか」

葛城「………」

カヲル「たしかに、口利きをしたのは僕だが。情報はすべて入れるという約束じゃなかったかな?」

葛城「……すみません」

カヲル「……まぁ、いいさ…こんな時代だ。綺麗なだけの組織では生きていけないだろう」

葛城「…おっしゃる通りです。今回のセカンドインパクトの正式調査、これも…ゼーレの人間だけで調査隊を組めば、いろいろと面倒な事になります」

カヲル「僕たちはそのための間に合わせというわけか…」

葛城「…気を悪くされましたか…?」

カヲル「いいよ。……他ならぬ君の頼みだ」

葛城「…ありがとうございます」

616 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:13:02.53 3d5dCKQ9o 598/814

暗闇で膝を抱えるシンジ


シンジ「暗いとこは、まだ駄目だな…いやな事ばかり思い出す…」






カヲル「……彼は?」

「例の調査団ただ一人の生き残りです。名は、碇シンジ」

カヲル「碇?碇博士のご子息か…!」

「はい、もう2年近くも口を開いていません」

カヲル「なんて…むごい…」

「ええ…それだけの地獄を見たのです。体の傷は治っても、心の傷はそう簡単には治りませんよ」

カヲル「……」

カヲル「……あとは本人の生きる意思の問題か…」


カヲル「…こちらの調査結果も、簡単には出せそうにないな。この光の巨人…謎だらけだよ」

617 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:14:05.03 3d5dCKQ9o 599/814

カヲル「その後国連は、セカンドインパクトは大質量隕石の落下によるものと正式発表した」

カヲル「だが、僕の目から見れば、それは…あからさまに情報操作をされたものだった」

カヲル「その裏にはゼーレ、そして、キール議長の姿が見え隠れしていた」

カヲル「疑いたくなかった。葛城君を。彼の背中は、僕が押したのだから…」

カヲル「だが衝動は抑えきれず…」

カヲル「僕は、あの事件の闇の真相を探った」

618 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:15:01.37 3d5dCKQ9o 600/814

カヲル「なぜ巨人の存在を隠すんだい?…セカンドインパクトを知っていたんじゃないのか、君らは。その日、あれが起こる事を…!」

葛城「……」

カヲル「君は運良く事件の前日に引き揚げた……では、全ての資料を一緒に引き揚げたのも、幸運の内かい?」

葛城「……」

カヲル「…君の資産、いろいろと調べさせてもらったよ。子供の養育にお金はかかるだろうが、個人で持つには額が多すぎる」

葛城「……」

カヲル「……何か言ってくれ…!このままでは…セカンドインパクトの裏に潜む、君たちゼーレと、死海文書を公表することになる。あれを起こした人間たちを、許すわけにはいかない」

葛城「……お怒りはごもっともです。ですが…お別れの前に、お目にかけたいものがあります」

619 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:16:02.51 3d5dCKQ9o 601/814

カヲル「随分潜るんだね…」

葛城「心配ですか?」

カヲル「得体が知れないからね」



カヲル「これは…!」

葛城「われわれではない、誰かが残した空間です。89%は埋まっていますが…」

カヲル「もとはきれいな球状の地底空間か…」

葛城「…あれが、人類がもてる全てを費やしている施設です」



ナオコ「あら、渚先生」

カヲル「赤木君……君もなのか」

ナオコ「ええ、ここは目指すべき生体コンピュータの基礎理論を模索する、ベストな所ですのよ」

カヲル「これは…」

ナオコ「MAGIと名づけるつもりですわ」

カヲル「MAGI?東方より来たりし三賢者か…見せたいものというのは、これかい?」

ナオコ「いいえ、こちらです」

620 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:17:01.87 3d5dCKQ9o 602/814

カヲル「これは…まさか、あの巨人を…!?」

ナオコ「あの物体をわれわれゲヒルンではアダムと呼んでいます。が、これは違います。オリジナルのものではありません」

カヲル「では…」

ナオコ「そうです。アダムより人の造りしもの、エヴァです」

カヲル「エヴァ…!」

葛城「われわれのアダム再生計画、通称E計画の雛形たる、エヴァ零号機です」

カヲル「神のプロトタイプか…!」

葛城「…先生、力を貸していただけませんか。…人類の、新たな歴史のために」

カヲル「……」

621 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:18:02.95 3d5dCKQ9o 603/814

レイ「……」

ヒカリ「綾波さん?」

レイ「あぁ、ごめんなさい、リツコちゃんの再テスト、急ぎましょう」

ヒカリ「今日……碇くん、見かけないわね」

レイ「…そうね」





レイ「碇くん?」

シンジ「うん。碇シンジっていうんだ…よろしく」

(手紙)

レイ「先生、先日碇くんと言う子と知り合いました」

レイ「他の人たちは私を遠巻きに見るだけで、その都度先生の名前の重さを思い知らされるのですが、なぜか彼だけは私に対しても屈託がありません」

レイ「彼は例の調査隊ただ一人の生き残りと聞きました。一時失語症になっていたそうです。そのせいか…今も言葉少なですが、どこか優しさを感じます。彼の一挙一動から、心の内側が暖かくなるような、何かを…。これがロジックじゃないということでしょうか?」

ナオコ「レイちゃん、あなたにもとうとう春がきたんですね。こっちは相変わらず、地下に潜りっぱなしの男日照りです。支給のお弁当にも飽きました」

ナオコ「上では第二遷都計画による第三新東京市の計画に着工したようです」

622 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:19:01.95 3d5dCKQ9o 604/814

レイ「このところ碇くんが大学に来ないので、理由を問い詰めたら、呆れてしまいました。ずっと彼女とアパートで寝ていたそうです」

レイ「飽きもせず、一週間もだらだらと。彼の意外な一面を知った感じです」

レイ「今日紹介されました。可愛い子ですが、気性が荒く、私はどうも好きになれません」



ナオコ「恋に嫉妬…、順調ね。勉強以外でもあなたの成長が見られて嬉しく思います。たくさん悩んでください。大丈夫、あなたは気づいてないでしょうけど、周りの男の子はみんなあなたを気にしています。あなたがその気になれば、きっと碇くんをあなただけのものにすることもできるはず…」

ナオコ「…駄目ね、恋愛観を押し付けるのは。あなたの思う通りにやってみてください。決して後悔のないように。あなたのことを娘のように思っています。いつでも相談してください」


ナオコ「……」


ナオコ「…娘か…」


机の上、碇調査隊の写真

623 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:20:01.77 3d5dCKQ9o 605/814

電話中の葛城

葛城「ああ、分かった……手続きは明日、お互いの弁護士を通してやろう」

葛城「ああ……それじゃあ」

カヲル「……」

カヲル「…これで良かったのかい」

葛城「彼女が決めたことです…自分はそばにいてやれなかった」

カヲル「しかし…」

葛城「…先生、幸せの道ですよ。彼女の道は、きっとまたどこかに続いている…」

カヲル「………」





レイ「先生、MAGIの基礎理論、完成おめでとうございます。そのお祝いと言うわけでもないのですが、私のゲヒルンへの正式入所が内定しました」

レイ「来月から、E計画勤務となります」

ナオコ「レイちゃん、おめでとう。これであなたも一人前ですね。優秀な助手を持てて嬉しく思います」

ナオコ「私もあなたに伝えたいことがあるのだけど…それは研究所で。きっと驚きますよ」

624 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:21:05.28 3d5dCKQ9o 606/814

零号機、機動実験日

オペレータ「L.C.L.変化、圧力、プラス0.2」

オペレータ「送信部にデストルドー反応無し」

オペレータ「疑似回路、安定しています」



カヲル「なぜ、実験に零号機を?」

ナオコ「そのことですが、われわれは考えを改めました。初号機だけでは使徒には勝てない…」

カヲル「それは…」

ナオコ「使徒との戦闘は必ず厳しいものになります。そのためには…この子にも動いてもらわないと」

傍らの子どもを見つめるナオコ

ナオコの視線を追うカヲル


カヲル「……その子は…?」

レイ「赤木先生のお子さんです」

625 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:22:01.55 3d5dCKQ9o 607/814

カヲル「赤木君の…?」

ナオコ「リツコといいますのよ」

ナオコ「ほら、リッちゃん。ご挨拶して?」

リツコ「…こんにちは」

カヲル「こんにちは」


カヲル「…どういうことだい?君は独身のはずでは?」

ナオコ「あら。今時分、父親がいないことなんてそう珍しくはないでしょう?」

カヲル「それは…そうだが、今日は…」

ナオコ「大丈夫です。ちゃんと言って聞かせますから。ねっ?リッちゃん」

リツコ「はい」

カヲル「赤木君……君の実験なんだよ?」

ナオコ「だからこそですよ。この子には明るい未来を見せておきたいんです」

レイ「先生…」

626 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:23:01.90 3d5dCKQ9o 608/814

ナオコ「レイちゃん…葛城所長に、渚先生も」

ナオコ「…私に、もしものことがあったときは…その時は娘を頼みます」

リツコ「ママ…」

ナオコ「大丈夫よ。…必ず帰ってくるから」





レイ「それが先生の最後の言葉でした。イレギュラーな事件は、先生をこの世から消し去ってしまった…」

レイ「先生の右腕となって、先生を支える…」

レイ「そんな願いとは裏腹に。私だけではない…いったい誰が組織の頭脳を失うことを望んだでしょうか。ゲヒルンは一時騒然としました」

レイ「ただ…葛城所長だけは、平静を保っているように見えました」

627 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:24:01.56 3d5dCKQ9o 609/814

内線「所長、弁護士の方からお電話ですが。お繋ぎしますか」

葛城「繋いでくれ」

葛城「……」

葛城「…!」





レイ「何をおっしゃっているんですか…!先の事件で先生を失ったばかりなのに…、あまりに危険すぎます!」

葛城「時間がないんだ、どいてくれ…!」

レイ「あっ…!…渚教授、教授からも言ってください!」

カヲル「……」

レイ「教授!」

628 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:25:07.06 3d5dCKQ9o 610/814

葛城「本当にいいんだな?」

「いいわ…あの子といられるなら…」

葛城「……」

「それに…今度は、あなたの仕事場だもの…」

「きっともう、寂しくない…」

葛城「…!」

葛城「すまない…」




レイ「そして…「無事に」事件を起こすことに成功した葛城所長は、姿を消した」

629 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:26:03.35 3d5dCKQ9o 611/814

カヲル「…ずいぶんと長かったじゃないか。赤木君もいない、所長の君もいないでは、ここは回らないよ」

葛城「…分かっている」

カヲル「…それで?話はつけてきたのかい」

葛城「ああ…今日から新たな計画を推奨する」

カヲル「始めるのか…あれを」

葛城「連中はもう止まらない。我々も止まるつもりはない…」

カヲル「…かつて誰もが為し得なかった神への道」

カヲル「人類補完計画か…」

630 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:27:01.79 3d5dCKQ9o 612/814

ゲヒルン本部

レイ「おはようございます」

リツコ「おはようございます」

葛城「ああ、おはよう」

レイ「所長…今日は面会の日では?」

葛城「いいんだ…私に会う資格はない」

葛城「……リツコ。調子はどうだ?」

リツコ「…げんき、です…」

葛城「そうか…」

レイ「………」




カヲル「赤木リツコに関する全ファイルが、抹消済み?どういう事だ…」

レイ「その件については、私からお話しします」

631 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:28:09.64 3d5dCKQ9o 613/814


(ナオコ「MAGI-CASPER、MAGI-BALTHASAR、MAGI-MELCHIOR。MAGIは三人の私。科学者としての私、母親としての私、女としての私」)


レイ「その3つがせめぎあっている…」

レイ「3人の先生か…。後は電源を入れるだけね」



レイ「あら…リツコちゃん、どうしたの?」

リツコ「…ママは迷子なの…?」

レイ「……!」

リツコ「どこにもいないの…ママはどこへ行ったの」

レイ「……リツコちゃん。私も、ずっと前にママがいなくなって…ママを探してたの」


リツコ「…あやなみ博士も?」

レイ「そう。ママは見つからなかったけど…赤木先生…あなたのお母さんと出会えたわ。私のママの代わりになってくれたのよ」

リツコ「ママが…?」

632 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:29:02.61 3d5dCKQ9o 614/814

レイ「そうよ。リツコちゃん、あなたのママは本当に素晴らしい人だったの…姿は見えなくても、今もこの場所を支えてる。科学の礎となって、隅々にまで存在しているのよ」

リツコ「……いるのに、会えないの」

レイ「リツコちゃん…。今はまだ分からないかもしれないけど、必ずお母さんの存在を感じるときがくるわ…」

レイ「……それまで、私がママの代わりじゃ、ダメかな…?」

リツコ「……」

リツコ「…いい。……ママは、ママひとりだから」

リツコ「会えるまで…まつ」

レイ「そう……」

レイ「そうね……先生は、ひとりよね…」

リツコ「……」

633 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:30:02.63 3d5dCKQ9o 615/814

リツコ「泣いてるの…?」

レイ「え……?」

リツコ「……だいじょうぶ、だいじょうぶ」

レイの手を撫でるリツコ

レイ「リツコちゃん…」

リツコ「泣いてるとき、ママがこうしてくれると、悲しくなくなるのよ」

(ナオコ「大丈夫よ、あなたなら…」)

レイ「リツコちゃん…!」

リツコ「だいじょうぶ…だいじょうぶ、」

レイ「うっ…う、う…っ」

リツコ「…だいじょうぶ」



カヲル「……」

634 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:31:03.75 3d5dCKQ9o 616/814

カヲル「キールローレンツを議長とする人類補完委員会は、調査組織であるゲヒルンを即日解体。全計画の遂行組織として特務機関ネルフを結成した」

カヲル「そしてわれわれは、そのまま籍をネルフへと移した。二人の女性の魂を宿した、エヴァ零号機、初号機と共に…」





監禁を解かれるカヲル

カヲル「君か…」

アスカ「ご無沙汰ね。少し痩せたんじゃない?」

カヲル「…さすがに老体には堪えるよ」

アスカ「外の見張りには、眠ってもらってるから。逃げるんなら今よ」

カヲル「分からないな……僕を拐っておいて、また助けるのかい」

アスカ「こっちにも色々と都合があんのよ。どうやらゼーレや委員会より、ネルフのほうが真実に近いみたいだし」

アスカ「私はそれが知りたいだけよ」

カヲル「真実か…しかし、この行動は君の…」

アスカ「もとより、覚悟の上よ」

636 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:33:01.23 3d5dCKQ9o 617/814

諜報部員「ご協力、ありがとうございました」

シンジ「……もういいの?」

諜報部員「はい、問題は解決しましたから」

シンジ「そう…」

シンジ「……彼女は?」

諜報部員「存じません」






アスカ「遅かったじゃないの。…さっさと済ませなさいよ」


響く銃声

637 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:34:01.83 3d5dCKQ9o 618/814

シンジ「ただいま…」

ミサト「……」

シンジ「……!」


留守電の再生音


アスカ「…シンジ?あたしよ。あんたがこれを聞いてるときは…ずいぶん迷惑かけた後でしょうね。まぁ、あんたのことだから、自分より私の心配してるんでしょうけど」


アスカ「大丈夫よ、後悔はしてないわ…自分のためにやったことだもの。だから…シンジ、あんたもうじうじしてんしゃないわよ?」

638 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:35:03.44 3d5dCKQ9o 619/814

アスカ「あんたが胸張らないから…あたしが叱らなきゃいけないんじゃない」

アスカ「次会うときくらい、優しくさせなさいよね」

アスカ「……」

アスカ「信じてるって言ってくれて…嬉しかった。…それじゃあ」


電話「午後、0時、2分、です」

シンジ「………うっ」

シンジ「うっ、く……アスカ…!どうして…」

ミサト「……」



ミサト「その時私は、シンジさんから逃げる事しかできなかった。他には何もできない、大人になったつもりでいても…大切な人を支えることもできない、子どもなんだと…私は分かった」



弐拾壱話分終わり

639 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:41:01.80 3d5dCKQ9o 620/814

「兄ちゃん!」


「任せろ…ここで待ってろ」


「言え!コソ泥め」



「……坊主。仲間の居場所を言え。そうすれば…」




「加地リョウジくん、ですね?」



「605号室の患者。あなた知らないの?」

「…お兄さんがよくお見舞いに来られてますよね。それが?」

「もう長くはないでしょう……衰弱しきってる」




「……おれのせいだ」

640 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:42:01.94 3d5dCKQ9o 621/814

「民間から?信用できるのかね」

「ですがコアとのシンクロ率は基準値を上回っています」

「…連中か。まったく得体の知れない…」

「気味が悪いよ」


「無理はしてないかな?君の心のケアも私の仕事の内だ」

「必要ない。必要のあるやつはみんな死んだ…」

「俺は生きるんだ 俺が殺した分も…」



「我々も誇らしいよ」

(「お前すげぇな」)

「頑張ってね」

(「頼むぞー!」)


「俺が必要なんだ…」

「………」

641 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:43:02.75 3d5dCKQ9o 622/814

レイ「聞こえる?加持くん。シンクロ率が低下してるわ。いつも通り、余計な事は考えずに…」

加持「ああ……分かってる」


ヒカリ「シンクロ率8も低下…加持くん、最近調子悪いですね」

レイ「ええ…困ったわね…この余裕のない時に。やはりリツコちゃんの零号機を優先させましょう、今は同時に修理できるだけのゆとりはない」

アナウンス「弐号機左腕のマイトーシス作業は数値目標をクリア」

アナウンス「ネクローシスは、現在0.05%未満」

アナウンス「アポトーシス作業、問題ありません」

アナウンス「零号機の形態形成システムは、現状を維持」

アナウンス「各レセプターを第2シグナルへ接続してください」



シンジ(…あのアダムより生まれし物、エヴァシリーズ…)

シンジ(セカンドインパクトを引き起こした原因たるものまで流用しなければ…僕たちは使徒に勝てない)

シンジ(逆に…生きるためには、自分たちを滅ぼそうとしたものをも利用する)

シンジ「それが人間なんだ……」


トウジ「センセ!」

642 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:44:02.97 3d5dCKQ9o 623/814

シンジ「……エヴァ13号機までの建造開始?世界七個所で?」

トウジ「上海経由の情報や。ソースに信頼は置ける」

シンジ「…なぜこの時期に量産を急ぐの?」

トウジ「……エヴァを過去に2機失い、現在は2機も大破…。第2次整備に向けて予備戦力の増強を急いどるんやないか?」

シンジ「どうだろう…ここにしてもドイツで建造中の5・6号機のパーツを廻してもらってるから…。最近、ずいぶんお金が動くね」

トウジ「ここに来て予算倍増やからな。それだけ上も、せっぱ詰まっとる、って事やろ」

シンジ「……委員会も焦ってるんだ…」

トウジ「…ほなら、今までみたいな単独やなく、使徒の複数同時展開のケースを設定した…?」

シンジ「そうかもしれない…でも、非公式に行う理由がないよ。何か別の目的があるんだ…」

643 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:45:05.01 3d5dCKQ9o 624/814

シンジ「あ……煮付け、どうだったかな? いやっ、失敗したってわけじゃないけど。今日味見してなくて」

加持「すごく旨かったよ。いつも通り、な?」

ミサト「……うん」

シンジ「…あ、よかった……」


シンジ「……」

電話がなる

ミサト「あ、」

シンジ「あっ、いいよいいよ。僕が出るから」

644 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:46:02.71 3d5dCKQ9o 625/814

加持「先輩かな?最近ご無沙汰みたいだし、ここいらで…」

シンジ「……」

ミサト「ごっ、ごちそうさま!あたし、部屋に…」

シンジ「……加持くん」

ミサト「!」

加持「うん?」

シンジ「電話だよ…お母さんから、国際電話」ニコ

ミサト(………ぅ…、)


ミサト(シンジさん……)


加持「はいはい。母さんね…」

加持「(外国語)」

645 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:47:02.69 3d5dCKQ9o 626/814

ミサト(…浮いている。加持くんの明るい声だけ…)

ミサト(違う。浮いているのは私。シンジさんも加持くんもいつも通りにしようとしてくれてる。情けないのは私…)

ミサト(私の知っている加持くん、知らない加持くん…)

ミサト(家族と話す彼。…家族? 相手がお母さんなのに)

ミサト「……嬉しくないのね」

加持「ん? 何か言ったか」

ミサト「ううん、電話、終わったの?」

加持「ああ」

ミサト「…お母さん?」

加持「向こうでのね。血は繋がってないが、ずいぶん良くしてもらってる。たまに恋しくなるよ」

ミサト「嘘ばっかり…」

加持「……なんでそう思う?」

ミサト「分かるわよ」

加持「……」

646 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:48:01.73 3d5dCKQ9o 627/814

ヒカリ「シンクログラフ、-12.8。起動指数ギリギリです」

レイ「……昨日より更に落ちてる」

シンジ「ごめん、綾波。最近気を遣わせることが多くて…疲れてるんだよ」

レイ「シンクロ率は表層的な身体の不調に左右されない。気のほうでしょうね…問題があるのは。ただしもっと深層の部分…」

レイ「…変更もやむを得ないわ、弐号機のコア…」

レイ「加持くん。上がっていいわよ」

647 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:49:02.24 3d5dCKQ9o 628/814

アナウンス「第8動力システムの復旧作業は、本日18:00より再会の予定です」

レイ「酷く傷ついてるみたいね……彼の心」

アナウンス「第1発令所処理問題に関する定例会議は、定刻より行われます」

シンジ「昔のことは…もういいみたいに話してたのに。どうしたんだろう、加持くん…」


レイ「……暴かないことと、治すことは違うわ」


アナウンス「総務担当者は第2会議室にお集まりください」

シンジ「離れたほうがいいんだろうか……彼らにとって負担なら…」


レイ「…あなたもよ」

シンジ「え…?」


レイ「顔色が悪いわ…ここのところずっと」

シンジ「……」

シンジ「……ごめん、もう少し考えてみる」

648 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:50:01.91 3d5dCKQ9o 629/814

加持「ウッ……」(吐瀉)

加持「………」


加持「……すまない、みんな…」





エレベーター前。

アナウンス「第7環状ルートは現在事故のため閉鎖中です。迂回ルートは12号線を利用してください」


加持「おっと、」

加持「調子はどうだい?って…俺が聞くことじゃないか」

リツコ「……」

加持「はは…」

649 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:51:02.72 3d5dCKQ9o 630/814

リツコ「あなたは悪いみたいね、調子…」

加持「まぁね。スランプってやつかな? 望むところだよ」

リツコ「何か悩みごと」

加持「……なんで、そう思う…」

リツコ「元気がないみたい、あなたも、ミサトも…」


リツコ「エヴァは………いえ」

加持「なんだよ、気になるじゃないか」

リツコ「エヴァには心がある」

加持「何?」

リツコ「心があるから…心を開かなければ、動かないわ」

加持「……馬鹿な。あれは俺たちが動かして…」

リツコ「分かっているはずよ」

650 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:52:01.70 3d5dCKQ9o 631/814

加持「………リッちゃん、君は…」

加持「…ウッ」

口許をおさえる加持

リツコ「大丈夫、」

加持「大丈夫、大丈夫だ……すまない、」

加持「……聞こえないんだ。昔は聞こえていた声が…」

加持「自分の声が煩くて…」

リツコ「……」

リツコ「聞こえるはずよ」

加持「……!はは…厳しいな」

リツコ「……」

651 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:53:07.24 3d5dCKQ9o 632/814

加持「そんな顔で見ないでくれ……泣きたくなってくる」

リツコ「……、」

リツコ「いけないの」

加持「……ッ」

リツコ「泣いてはいけないの?」


リツコ「あっ、」

リツコに抱きすがる加持。

抱き返そうとするリツコの手が回る前に加持が体を離す

加持「すまない。……また」

閉じるエレベーター

リツコ「………」



加持「ないさ…そんな資格はない」

加持「……」

652 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:54:05.17 3d5dCKQ9o 633/814

青葉「葛城、今日も来ないな。赤木はいつもの事として…」

マヤ「それに加持くんも…。日向くんもまだ退院できないみたいだし」

青葉「…学校どころじゃないんだな、今や」




アナウンス「エヴァ弐号機のシグナル、問題なし」

アナウンス「VAの接合および融合は正常。増殖範囲は予定通りです」


加持「さぞ憎んでいるだろう……俺を」

加持(お前のせいで死んだ、お前が殺した)

加持「お前は俺の誇り…生きる意味」

弐号機 (沈黙)

加持「………もう誤魔化しはきかないな」

(沈黙)

ケンスケ「総員、第一種戦闘配置。対空迎撃戦用意!」

加持「…お出ましか」

653 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:55:01.64 3d5dCKQ9o 634/814

ケンスケ「使徒を映像で確認、最大望遠です!」

トウジ「衛星軌道から動かん」

ケンスケ「ここからは、一定距離を保っています」

シンジ「ということは、降下接近の機会をうかがっているのか、その必要もなくここを破壊できるのか…」

トウジ「こりゃ迂闊には動けんな」

シンジ「…どの道目標がこちらの射程距離内にまで近づいてくれないと、どうにもならない。エヴァには衛星軌道の敵は、迎撃できない…」

シンジ「リツコちゃんは?」

ヒカリ「零号機共に順調。行けます!」

シンジ「了解、零号機発進、超長距離射撃用意、弐号機、加持くんはバックアップとして…」

加持「待ってくれ」

シンジ「加持くん」

加持「射撃は俺が。」

リツコ「……」

加持「………シンジさん。最後にチャンスをくれ」

シンジ「……分かった…」

654 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:56:04.89 3d5dCKQ9o 635/814

トウジ「…ええのか」

レイ「本人がそう言うのなら。…覚悟があるのはありがたいわ」

シンジ「……」

ヒカリ「そんな……これまで、ってことなの…」

レイ「失敗したときは。…弐号機パイロットの変換、考えておかなくてはね」

ヒカリ「…ええ…」

トウジ「初号機は?出さんのか」

シンジ「凍結なんだよ、葛城司令の絶対命令で」

シンジ(…無理ないか、あんな事の後じゃ…)


待機する初号機、ミサト。

ミサト(……加持くん…!)

655 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:57:01.97 3d5dCKQ9o 636/814

加持「これで駄目なら、所詮俺はそれまでの男…」

加持「……よくやったさ。もういいだろう」


ケンスケ「目標、未だ射程距離外です」

加持「…………」


加持「来る…!」



天から光線が注ぐ。



加持「……!」



シンジ「これは…!敵の指向性兵器…?」

ケンスケ「いや、熱エネルギー反応無し」

ヒカリ「心理グラフが乱れています、精神汚染が始まります!」

レイ「使徒が心理攻撃…まさか、使徒に人の心が理解できるの…?」

656 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:58:01.96 3d5dCKQ9o 637/814

加持「…ッグ!アアアアッ!」


オペレータ「陽電子消滅」

ケンスケ「だめです、射程距離外です!」

ライフルを乱射する弐号機

ケンスケ「弐号機、ライフル残弾ゼロ!」

シンジ「光線の分析は!?」

トウジ「可視波長のエネルギー波!A.T.フィールドに近いが、詳細は不明!」

レイ「加持くんは」

ヒカリ「危険です、精神汚染、Yに突入しました!」

657 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 15:58:57.06 3d5dCKQ9o 638/814

加持「っぐ、ぅ…ア……!」


加持「…め、ろ…」

加持「やめろ…ッ」


加持(!)


加持「やめろ!」


加持「駄目だ、そこは…嫌だ!!!」


加持「ぐ…ッ」


加持「…やめろ、それは…!」

加持「暴かないでくれ、」

加持「それだけは」



加持「俺を見るな!!!!」

658 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:00:01.87 3d5dCKQ9o 639/814

シンジ「加持くん!!」


ヒカリ「心理グラフ限界!」

レイ「精神回路がズタズタにされている…これ以上の過負荷は危険過ぎる」

シンジ「加持くん!戻って!!」


加持「うっ、う、ウッ……」


シンジ「加持くん!!加持くん!命令だ、撤退して!」


加持「……ォ、ア……」


シンジ「加持くん!!!」

659 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:01:02.09 3d5dCKQ9o 640/814

オペレータ「加速器、同調スタート」

オペレータ「電圧上昇中、加圧域へ」

オペレータ「強制収束機、作動」

オペレータ「地球自転および重力誤差、修正0.03」

オペレータ「薬室内、圧力最大」

トウジ「最終安全装置、解除!全て、発射位置!」


リツコ「くっ…!」

弾道は使徒を捕らえるが、A.T.フィールドに阻まれ、分散する

660 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:02:01.96 3d5dCKQ9o 641/814

ケンスケ「だめです!この遠距離で、A.T.フィールドを貫くには、エネルギーがまるで足りません!」

トウジ「すでに最大出力や、これ以上はない…!」

ヒカリ「弐号機、心理グラフシグナル微弱!」

レイ「L.C.L.の精神防壁は」

ヒカリ「だめです、触媒の効果もありません!」

レイ「生命維持を最優先、エヴァからの逆流を防いで!」

ヒカリ「はい!」


レイ(…この光は、まるで…加持くんの精神波長を探っているみたい……まさか、使徒は人の心を知ろうとしているの?)

661 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:03:07.21 3d5dCKQ9o 642/814

加持(泣いている……)

加持(泣いているのは誰だ?俺か…)

加持(弟か……)



加持「どうしたんだ?男の子だろう…泣いてちゃだめだ」

加持「泣いてたって誰も助けちゃくれない。自分で何とかするんだ。でもお前は…」

加持「俺が守るから。待ってろ。食い物をとってくる」



加持「……どうした?泣いてちゃ分からないだろう…」


加持「はっ」



加持「泣かないんだ。死人は泣かない」


加持「俺が殺した…死ぬはずだった俺が」

662 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:04:02.76 3d5dCKQ9o 643/814

加持「俺の…身体だけが大きくなる。仲間たちを置き去りにして」

加持「大きくなりたかったはずだ…その権利があった、」


加持(俺が置いてきた)



加持「……死人じゃない」


加持「これは俺だ…」


膝を抱えている加持。

663 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:05:03.36 3d5dCKQ9o 644/814

オペレータ「弐号機、活動停止!生命維持に問題発生!」

ヒカリ「パイロット、危険域に入ります!」

ケンスケ「目標、変化無し、相対距離、依然変わらず!」

トウジ「零号機の射程距離内に移動する可能性は、0.02%」

シンジ(零号機を空輸、空中から狙撃するか…?いいや駄目だ、接近中に撃たれたら、おしまいだ…)

ミサト「……!」

ミサト「私が初号機で出ます!」

カヲル「いけない、目標はパイロットの精神を侵蝕するタイプだ」

葛城「今、初号機を侵蝕される事態は、避けねばならない」

ミサト「やられません!」

葛城「確証がない」

ミサト「でも、このままじゃ加持くんが!」

664 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:06:04.55 3d5dCKQ9o 645/814

葛城「……」

葛城「構わん。リツコ、ドグマを降りて、槍を使え」

カヲル「ロンギヌスの槍を…?葛城君、それは…」

葛城「A.T.フィールドの届かぬ衛星軌道の目標を倒すには、それしかない。急げ!」

シンジ「しかし!アダムとエヴァの接触は、サードインパクトを引き起こす可能性があります!あまりに危険です、葛城司令、やめてください!」

葛城「……」

シンジ「……!」

シンジ(なぜ…危険はないのか…?セカンドインパクトは使徒の接触が原因ではない…?)


アナウンス「セントラルドグマ10番から15番までを開放、第6マルボルジェ、零号機、通過。続いて、16番から20番、開放」


シンジ(嘘…欺瞞だったんだ。そんな事でサードインパクトは起こらない……だったら、セカンドインパクトの原因は…?)

665 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:07:02.79 3d5dCKQ9o 646/814

カヲル「…早計なんじゃないかい」

葛城「抵抗手段はひとつではない」

カヲル「しかし…」

葛城「…渚。時計の針は止まってはくれないんだ」

カヲル「……」

葛城「今セカンドを失うわけにはいかない」

カヲル「老人たちが黙っていないよ」

葛城「ゼーレが動く前にすべて済ませる」

カヲル「かと言って、ロンギヌスの槍をゼーレの許可なく使うのは面倒だ」

葛城「理由が存在すればいい」


カヲル「…そううまく丸めこまれてくれるかな」


槍を引き抜く零号機

リツコ「……」

666 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:08:01.77 3d5dCKQ9o 647/814

トウジ「弐号機のパイロットの脳波、0.06に低下!」

ヒカリ「生命維持、限界点です!」

ケンスケ「零号機、二番を通過、地上に出ます!」


シンジ「……!」

シンジ「あれが、ロンギヌスの槍…!」

ケンスケ「零号機、投擲体制!」

トウジ「目標確認、誤差修正よし」

ヒカリ「カウントダウン入ります、10秒前、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」


リツコ「…、……っ!」

投擲。

667 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:09:03.01 3d5dCKQ9o 648/814

ケンスケ「目標、消滅!」

ヒカリ「エヴァ弐号機、開放されます」

カヲル「ロンギヌスの槍は…」

トウジ「第一宇宙速度を突破、現在、月軌道に移行中」

カヲル「回収は不可能に近いな…」

トウジ「…今のところは。あの質量を持って帰る手段はない」





ヒカリ「弐号機健在、グラフ正常位置」

ケンスケ「機体回収は、2番ケイジへ」

オペレータ「第67番ルートを使用してください」


シンジ「加持くんは?」

トウジ「パイロットの生存は確認。汚染による防疫隔離は解除されとる」

シンジ「……そう」

668 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:10:02.42 3d5dCKQ9o 649/814

回収される弐号機

加持「………」


ミサト「良かった、加持くん。本当に…」

加持「……ああ…」

ミサト「…加持くん…?」


加持「悪い。少し…休ませてくれ」


ミサト「……」





加持「…これは俺だ」

加持「死人じゃない……」



弐拾弐話分終わり

669 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:11:01.71 3d5dCKQ9o 650/814

アスカ「…シンジ?あたしよ。あんたがこれを聞いてるときは…ずいぶん迷惑かけた後でしょうね。まぁ、あんたのことだから、自分より私の心配してるんでしょうけど」

アスカ「大丈夫よ、後悔はしてないわ…自分のためにやったことだもの。だから…シンジ、あんたもうじうじしてんしゃないわよ?」

アスカ「あんたが胸張らないから…あたしが叱らなきゃいけないんじゃない」

アスカ「次会うときくらい、優しくさせなさいよね」

アスカ「……」

アスカ「信じてるって言ってくれて…嬉しかった。…それじゃあ」




シンジ「…鳴らない電話、か…」




ミサト(シンジさん、今日も部屋から出てこない…)

ミサト(……加持くんも…)

ミサト「…今日も帰らない気かしら…」

670 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:12:02.30 3d5dCKQ9o 651/814

加持(学校にも行かず、家にも帰らず、ずっと…)


「んっ………ねーえ、」

「うん?」

「寝よっか?」

「…お望みとあらば」

「ふふっ」

携帯のバイブ音

「ごめんね…私、邪魔かな?」

「そんなことないさ。こうやって俺を置いてくれてる」

「…それだけ?」

「どうかな…」

「…あっ…」


加持(……ここに俺はいない)

加持(いるのは誰でもいい、誰か…)

671 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:13:02.11 3d5dCKQ9o 652/814

(通話)

レイ「そう…いなくなったの、あの子…」

レイ「そうね……猫ってそういうところ、あるもの…」

レイ「でもまだ分からないじゃない。いつもの場所は探したの?…うん、うん…」

レイ「分かったわ…時間ができたら一度帰るから…。それじゃ、また」



レイ「……そう、あの子が…」

レイ(…嫌な予感がする…)

672 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:14:01.93 3d5dCKQ9o 653/814

ゼーレ「ロンギヌスの槍……回収はわれらの手では不可能だよ」

ゼーレ「なぜ使用した」

ゼーレ「エヴァシリーズ。まだ予定には揃っていないのだぞ」

葛城「使徒殲滅を優先させました。やむを得ない事情です」

ゼーレ「やむを得ないか。言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ」

ゼーレ「最近の君の行動には、目に余るものがあるな」


葛城「…渚、審議中だぞ」

葛城「……分かった」

葛城「使徒が現在接近中です。続きはまた後ほど」


ゼーレ「その時君の席が残っていたらな」

キール「葛城、ゼーレを裏切る気か?」

673 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:15:02.64 3d5dCKQ9o 654/814

車を走らせるシンジ

シンジ「後15分でそっちに着く。零号機を32番から地上に射出、弐号機はバックアップに廻して」

シンジ「そう……初号機は葛城司令の指示に。僕の権限じゃ凍結解除はできない」

シンジ「……!」

シンジ「使徒を肉眼で確認、か…」



オペレータ「零号機発進、迎撃位置へ!」

トウジ「弐号機は現在位置で待機!」

葛城「いや…発進だ」

トウジ「司令…!」

葛城「必要があるときにいなかったでは遅い。発進だ」

トウジ「…了解」

674 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:16:02.01 3d5dCKQ9o 655/814

オペレータ「エヴァ弐号機、発進準備!」


加持(また乗っている…どうして?)

加持(誇りであるはずのエヴァ。自分であるはずの身体…)


ヒカリ「弐号機、第8ゲートへ。出現位置決定次第、発進せよ」


加持(発進…なんのため?)


ケンスケ「目標接近、強羅絶対防衛線を通過」


加持(俺のため…人類のためか どっちだったか…)

加持(……)

675 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:17:01.81 3d5dCKQ9o 656/814

ケンスケ「目標は、大涌谷上空にて滞空。定点回転を続けています」

トウジ「目標のA.T.フィールドは依然健在」


レイ「遅いわ」

シンジ「ごめん、状況は!」

ケンスケ「膠着状態が続いています」

トウジ「パターン青からオレンジへ、周期的に変化しとる!」

シンジ「どういう事…!」

ヒカリ「MAGIは回答不能を提示しています!」

ケンスケ「答えを導くには、データ不足か」

レイ「ただあの形が固定形態でない事は確かだわ」

シンジ「先に手は出せないか…」

676 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:18:01.65 3d5dCKQ9o 657/814

シンジ「リツコちゃん、しばらく様子を見よう」

リツコ「…いえ、来る……!」


変形する使徒


シンジ「リツコちゃん!応戦して!」

トウジ「間に合わん…!」

応戦する零号機。

ライフルを撃ち込むが、効かない

リツコ「……!」

ケンスケ「目標、零号機と物理的接触!」

シンジ「零号機のA.T.フィールドは?!」

ヒカリ「展開中、しかし、使徒に侵蝕されています!」

レイ「使徒が積極的に一次的接触を試みているの?零号機と…!」


リツコ「……っ、う……っ!」

677 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:19:02.11 3d5dCKQ9o 658/814

ヒカリ「危険です!零号機の生体部品が侵されて行きます!」

シンジ「エヴァ弐号機、発進、リツコちゃんの救出と援護を!」

ヒカリ「目標、さらに侵蝕!」

レイ「危険よ…!すでに5%以上が生体融合されている」



シンジ「加持くん!後300接近したらA.T.フィールド最大で、パレットガンを目標後部に撃ち込んで!」

シンジ「エヴァ弐号機、リフトオフ!」


シンジ「…加持くん…!どうしたの、加持くんは…?!」

ヒカリ「だめです、シンクロ率が二桁を切ってます!」

シンジ「まずい…!」



加持「動かない…」


加持「死体だ。死体は俺……」




シンジ「駄目だ!このままじゃ餌食にされる」

シンジ「戻して!早く!」

678 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:20:04.42 3d5dCKQ9o 659/814

リツコ「誰…?」

リツコ「私。エヴァの中の私」

リツコ「いいえ、あなたは私じゃない…」

リツコ「あなたは誰?…使徒?私たちが使徒と呼んでいるヒト…?」

使徒「私を抱いて。私とひとつにならない?」

リツコ「嫌よ。あなたとは繋がりたくない」

使徒「そう。でもだめ、もう遅いわ」

使徒「あなたを抱いてあげる。抱き返してあげる…私の心を分けてあげるわ」

使徒「温かいでしょう、ほら、心がポカポカする…」

リツコ「温かい…?違うわ、寂しいのね」

使徒「サビシイ?分からないわ」

リツコ「寂しいから隙間を埋めようとするの」

リツコ「隙間が埋まったら、心も埋まった気がするから…」

リツコ「それを、寂しい、というのよ」

使徒「それはあなたの心よ。悲しみに満ち満ちている。あなた自身の心よ」

679 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:21:03.49 3d5dCKQ9o 660/814

リツコ「私の心…?」

リツコ「……あ、」

リツコ「泣いているのは、私…」


変容し膨れ上がる零号機


シンジ「リツコちゃんっ!」




葛城「…初号機の凍結を現時刻をもって解除、直ちに出撃させろ」

シンジ「え…」

葛城「出撃だ」

シンジ「…はい!」




加持「……声なんてない」

加持「…死人は口を利かないんだ…」

680 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:22:01.89 3d5dCKQ9o 661/814

シンジ「A.T.フィールド展開、リツコちゃんの救出急いで!」


ミサト「はい!」



リツコ「…ミサト…!」


シンジ「ミサトちゃんっ!!」

使徒が初号機を襲う

シンジ「プログナイフで応戦してっ!」

ミサト「はっ!」

悲鳴を上げる使徒

リツコ「これは、私の心…!」

リツコ「ミサトを…?」

リツコ「だめ…っ!」

681 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:23:02.41 3d5dCKQ9o 662/814

ヒカリ「A.T.フィールド反転、一気に侵蝕されます!」

レイ「まさか、使徒を……!」

シンジ「駄目だリツコちゃんっ!機体は捨てて、逃げて!」

リツコ「いいえ……私がいなくなったらA.T.フィールドが消えてしまう…!」

レイ「……!」

シンジ「リツコちゃん!!」

ヒカリ「コアが潰れます、臨界突破!」



リツコ「!」

走馬灯。人々の温かな笑顔

682 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:24:01.53 3d5dCKQ9o 663/814

光の輪を宿す零号機

消滅。辺りが光に包まれる


ミサト「……、…」



ケンスケ「目標、消失…」

シンジ「……現時刻をもって、作戦を…終了します。第一種警戒態勢へ移行」

トウジ「了解、状況イエローへ、速やかに移行」

シンジ「零号機は……?」

ヒカリ「エントリープラグの射出は、確認されていません…」

シンジ「…生存者の確認と救出、急いで」

レイ「……」

683 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:25:03.02 3d5dCKQ9o 664/814

「綾波博士…」

「レベルCの…は、南西方向に広がっています」

レイ「…この事は極秘とします。プラグは回収、関係部品は処分してください」

「了解」

「作業、急げ!」

レイ「……」

684 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:26:01.60 3d5dCKQ9o 665/814

ゼーレ「ついに第16の使徒までを倒した」

ゼーレ「これで、ゼーレの死海文書に記載されている使徒は、後一つ」

キール「約束の時は近い。その道のりは長く、犠牲も大きかったな」

ゼーレ「左様。ロンギヌスの槍に続き、エヴァ零号機の損失」

ゼーレ「葛城の解任には十分すぎる理由だな」

ゼーレ「渚を無事に返した意味の分からぬ男でもあるまい」

ゼーレ「新たな人柱が必要ですな、葛城に対する」

キール「そして事実を知るものが必要だ」




レイ「……」

机の上。ゲヒルン時代の写真

685 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:27:01.31 3d5dCKQ9o 666/814

シンジ「ミサトちゃん、入るよ…」


ミサト「……シンジさん。涙、出ないんです……どうしてだろう とても悲しいのに…」


ミサト「…もう嫌、もう忘れたい…シンジさん」

ミサト「忘れさせて…」


シンジの手に自分の手を重ね、身体を預けるミサト

シンジ「っ、」


シンジ「……ミサトちゃん…!」

ミサトの肩を押し身体を離すシンジ

シンジ「ミサトちゃん…自分を捨てちゃ駄目だ」

シンジ「…僕には何もできないよ。ごめん……」


ミサト「……」

686 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:28:06.68 3d5dCKQ9o 667/814

ミサト(アスカさんのことがあるから?違うわね。私がいけないんだわ…)

ミサト「ペンペン、おいで…」

ペンペン「……」

ミサト「……最低だ、私って…」






ネルフ地下、3号分室

散乱した書物。倒された机


カヲル「……綾波博士か…」

カヲル「…愛する者を失った今…彼女の心は深い絶望の底だろう」

葛城「……」

カヲル「……話してはやらないのかい」

葛城「彼女が望んだのは…ここで生きた赤木リツコの未来だ」

カヲル「……」

カヲル「希望の依り代とはならないか…」

687 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:29:05.79 3d5dCKQ9o 668/814

シンジ「はい…もしもし………えっ…!」

シンジ「ミサトちゃん!」



アナウンス「第一内科のウガイ先生、ウガイ先生、至急、第二会議室へご連絡ください」




ミサト「リツコ!」

リツコ「……」

688 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:30:01.74 3d5dCKQ9o 669/814

ミサト「ばか、バカァ!心配したじゃないのよ…!」

ミサト「良かった。本当に良かった…」ギュ

リツコ「……」

ミサト「…あ、ごめん…まだ体キツいわよね」

リツコ「……」

ミサト「他は誰も来てないの?薄情ねえ みんな忙しいのかしら…」

リツコ「……」

ミサト「……まだ、ちゃんとお礼言ってなかったわね」

ミサト「ありがとう、助けてくれて」

リツコ「…何が」

ミサト「……何が、って…零号機を捨ててまで助けてくれたじゃない」

リツコ「私が?」

ミサト「そうよ!……覚えてないの…?」

リツコ「…いいえ、知らないの」

リツコ「多分私は二人目だと思うから」

689 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:31:03.33 3d5dCKQ9o 670/814

リツコの部屋。

リツコ「……」

眼鏡を手に取るリツコ

リツコ「これが、涙…?初めて見たはずなのに、初めてじゃないような気がする。私、泣いてるの?…なぜ、泣いてるの…?」





葛城「そうだ、ファーストチルドレンは現状維持だ。新たな拘束の必要はない。セカンド、サードに関しても同様だ。監視だけでいい」

カヲル「赤木リツコが生きていると分かれば、議長らが黙っていないだろうね」

葛城「………」


カヲル「それで……彼女を代わりにか。つくづく君は…敵を作る」

カヲル「だが恨んではくれないだろうね」

葛城「……」

690 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:32:01.80 3d5dCKQ9o 671/814

キール「われわれも穏便に事は進めたい。君にこれ以上の陵辱、辛い思いはさせたくないのだ」

レイ「私は何の屈辱も感じていません」

ゼーレ「気の強い女性だ。葛城がそばに置きたがるのも分かる」

ゼーレ「聞けば…君は自ら名乗り出たそうじゃないか。代理人として」

ゼーレ「零号機パイロットの尋問を拒否…では、君なら応えてくれるのかね?」


レイ「私で……代わりになるのなら」

691 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:33:01.70 3d5dCKQ9o 672/814

アスカ「あんたが欲しがっていた真実の一部よ」


アスカ「他に36の手段を講じてあんたに送ってるけど、そっちはたぶん駄目ね」

アスカ「確実なのはこのカプセルだけ」

アスカ「これは私のすべてよ。あんたに託す。好きにしなさい」

アスカ「パスコードは私たちの最初の思い出」

アスカ「それじゃ、しっかりやんなさいよ」




シンジ「鳴らない電話を待つのはもうやめだ…」

シンジ「アスカの心は無駄にしない…」

692 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:34:02.25 3d5dCKQ9o 673/814

ゼーレ「良いのか?綾波博士の処置」

ゼーレ「渚とは違う。彼女は返した方が得策だ」

ゼーレ「さよう…まだ利用価値はある」

ゼーレ「いま少し役に立ってもらうか。われわれ人類の未来のために…」

ゼーレ「エヴァンゲリオン、すでに八体まで用意されつつある」

ゼーレ「残るは後四体か」

キール「第3新東京市の消滅は、計画を進める良き材料になる」

キール「完成を急がせろ」

キール「約束の時は、その日となる」

693 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:35:01.68 3d5dCKQ9o 674/814

ミサト「はい、もしもし」

レイ「そのまま聞いて。あなたのガードを解いたわ。今なら外に出られる」

ミサト「レイさん……」




ターミナルドグマ入り口。カードキーを差し込むレイ

レイ「……、…!」

シンジ「無駄だよ。僕のパスがないと」

レイ「……そう…アスカの仕業ね」

シンジ「綾波博士。…ここの秘密、見せてもらうよ」

レイ「…いいわ。ただしこの子も一緒に…」

ミサト「……」

シンジ「…分かった」

694 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:36:02.24 3d5dCKQ9o 675/814

ミサト「……まるでリツコの部屋…」

レイ「…彼女の部屋よ。生まれ育ったところ」

ミサト「ここが?」

レイ「そうよ、一人目のね」

ミサト「…、……!」


レイ「リツコちゃんの深層心理を構成する光と水は、ここのイメージが強く残っていたのでしょうね…」

シンジ「何を……!言ってるんだ、綾波…!目的の場所はここじゃない!」

レイ「…分かっているわ」

695 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:37:02.08 3d5dCKQ9o 676/814

ミサト「エバ…?」

レイ「その失敗作…。10年前に破棄されたの」

ミサト「…エバーの墓場…」

レイ「……そうね」


レイ「あなたのお母さんが消えたところでもあるわ」


レイ「あなたも見ているはずよ…あなたのお母さんが、魂を亡くした姿を…」

ミサト「……!」

シンジ「…、綾波!」


レイ「……こっちよ」

シンジ「……」


レイ「あなたが知りたかった真実…」



レイ「……」

696 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:38:02.01 3d5dCKQ9o 677/814

ミサト「赤木…リツコ…?」

ミサト「……!!」

シンジ「まさか、ダミープラグの…!」

レイ「そう、ダミーシステムのコアとなるもの……その生産工場よ」

シンジ「これが…?」

レイ「ここにあるのはダミー。そして赤木リツコのためのただのパーツに過ぎない」

レイ「……人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たったの。それが15年前…」

レイ「せっかく拾った神様も消えてしまった」

レイ「……でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム」

レイ「そしてアダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ…」

ミサト「ヒト…人間なんですか…?」

レイ「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには、人の魂が宿らせてあるもの」

レイ「みんな、サルベージされたものなのよ」

697 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:39:13.57 3d5dCKQ9o 678/814

レイ「魂が入ったのは赤木リツコ、一人だけだった……あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになっていたのよ」

レイ「ここに並ぶ赤木リツコと同じ物には魂がない。ただの入れ物なのよ」

レイ「だから壊すの」

レイ「怖いから…」


リツコたち「……」


シンジ「……! やめるんだ、綾波!そんなことしたら…!」


レイ「したら、何…?入れ物が壊れるだけよ。この中には何もないの。ただ人の形をしたもの…」


レイ「……これ以上ない生命に対する侮辱よ…」


レイ「代わりはいくらでもいる。…そんなことはもう、言わせないわ…」

レイ「あの子が優しいんじゃない、私が愚かだった……」

698 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:40:15.45 3d5dCKQ9o 679/814

レイ「…私たちのために死んだあの子は、もういないの」


レイ「…初めから、こんなもの……っ、作るべきじゃなかったのよ…!」


レイ「うっ、うぅ…うっ…」

ミサト「……」

シンジ「綾波…」




シンジ(エヴァに取り憑かれたヒトの悲劇……)

シンジ(僕も…同じか…)




弐拾参話分終わり

699 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:41:01.90 3d5dCKQ9o 680/814

「リョウジ、お手柄だな!」

「ちょろいさ、こんなもん」

「よくやったな加持くん」

「当然です。それが俺の役目」

「フルスコアだ。その調子で頼むよ」


(リョウジ!)

(加持くん)

(兄ちゃん!)

700 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:42:01.76 3d5dCKQ9o 681/814

病室


(沈黙)


古い倉庫


(沈黙)


仲間に駆け寄る加持

抱き上げる。血が滴っている


加持「はっ」

701 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:43:01.63 3d5dCKQ9o 682/814

廃墟のバスタブ

加持「分かったんだ。俺は誰も守っちゃいない。守りたかったものはもういない。置いてきた……」


諜報課員「加持リョウジだな」




トウジ「諜報二課から。セカンドチルドレンを無事保護したそうや」

シンジ「……そう。ずいぶん…遅かったね」

トウジ「いけ好かん奴らや。地味な嫌がらせしくさって…」

シンジ「……」

シンジ(……そして今日、加持くんの代わりのフィフス到着…話が出来過ぎてる、これもシナリオ通りか…)





ミサト(ダミープラグ…赤木リツコ…魂の入れ物?父はいったい何をしているの…?)

過去の記憶。病室の母。安らかな寝顔

ミサト(何をしたの…!)

702 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:44:04.21 3d5dCKQ9o 683/814

レイ「葛城司令…」

葛城「……」

レイ「猫が…死んだんです。家で飼っていた……。とても可愛がっていたのに。突然、もう二度と会えなくなるんですね」


葛城「……君には、辛い役割を負わせた…」

レイ「いいえ…いいえ。私が望んだんです。後悔はありません」

葛城「……赤木リツコの容態は」

レイ「落ち着いています。記憶に…混濁は見られますが……」


レイ「……う…っ」

泣き崩れるレイ

703 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:45:02.16 3d5dCKQ9o 684/814

レイ「……あの子をよろしく、と…!そう言われた日に破壊すべきだった!」

レイ「彼女は人間なんです!…代えのきく人形じゃない」


葛城「……すまない」


(ナオコ「…所長。お話があります」)


葛城「いつか君には真実を話す」

葛城「もう少しだけ……耐えてくれ」


閉まるドア

レイ「…う…っ、先生……」

レイ「教えてください…」

704 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:46:01.94 3d5dCKQ9o 685/814

(通話)

カヲル「…そうだ、拘束だ。形式上のものでいい。…誰にも知られるな」

カヲル「ああ、頼んだよ」


葛城「……」

カヲル「…名目は破壊行為への懲罰…。不満だったかい?」

葛城「……いや」

葛城「そのほうが安全だろう…」

705 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:47:02.83 3d5dCKQ9o 686/814

ミサト(どこに行ったんだろう…加持くん…)

ミサト(でも会ってどうするんだろう…リツコの話でもする…?)


ミサト(日向くんも青葉くんも…みんな家を失って他のところへ行ってしまった。友達は…友達と呼べる人はいなくなってしまった…誰も…)


ミサト(……リツコには会えない…その勇気がない。どんな顔をすればいいのか、分からない。加持くん、シンジさん、お母さん…私はどうすれば…どうしたらいいの…?)




マリ「しっあわせは~あるいてこ~ない」

マリ「だ~からあるいていっくんだねぇ~」

ミサト(…なに、この子…)

マリ「歌はいいよねぇ」

706 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:48:02.42 3d5dCKQ9o 687/814

ミサト「……」

マリ「いいよね?」

ミサト「……」

ミサト「…私に言ってる?」

マリ「君しかいないジャン!」

ミサト「あぁ、そうね…まぁ…」

ミサト(なんなのこの子…)

マリ「……辛いから明るく歌うの。面白い文化だよね。せつな~くてあったかくてさぁ…」


マリ「君はどう思う?葛城…ミサトちゃん」


ミサト「なんで、私の名前…」

マリ「なっんででしょ~~~?」

707 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:49:07.59 3d5dCKQ9o 688/814

ミサト「……まさか、あなた。新しいパイロット?」

マリ「そ。真希波マリ。よろしくねん♪」

ミサト「……」

マリ「…あっ!ちょっとー!」

マリ「待ちなってば」



(加持「最後のチャンスをくれ」)

ミサト(……)

708 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:50:10.39 3d5dCKQ9o 689/814

トウジ「フィフスチルドレン…到着したそうや」

シンジ「真希波マリ…過去の経歴は抹消済み。リツコちゃんと同じ…」

トウジ「……ここが気になるな。生年月日、セカンドインパクトと同日…」

シンジ「…委員会が直接送ってきた子どもなんだ、必ず何かある…」

トウジ「マルドゥックの報告書も、フィフスの件は非公開になっとる。せやから……ちーとばかし、諜報部のデータに割り込んだ」

シンジ「なっ…、トウジ、そんな危ないこと…!」

トウジ「お小言はあとや。確かに危ない橋やったが…その甲斐はあった」

トウジ「…綾波レイの居場所」

シンジ「……!」


トウジ「フィフスのシンクロテスト。どないする」

シンジ「…小細工してもしょうがない…。見せてもらおう。彼女の実力がどの程度のものなのか…」

709 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:51:05.48 3d5dCKQ9o 690/814

カヲル「…後、0コンマ3下げて」

ヒカリ「はい」

カヲル「……」

カヲル「このデータに間違いは…?」

トウジ「全ての計測システムは、正常に作動しとります」

ヒカリ「MAGIによるデータ誤差、認められません」

カヲル「……まさか、コアの変換も無しに弐号機とシンクロするとはね…」

ヒカリ「しかし、信じられません!…いえ、システム上、ありえないです…」


シンジ「それでも…事実なんだ。事実をまず受け止めてから、原因を探ってみて」

710 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:52:01.79 3d5dCKQ9o 691/814

マリ「君がリリスの器?」

リツコ「私は……赤木リツコ」

マリ「ん~。やっぱ似た匂い…」

リツコ「……あなたは?」

マリ「私? ヒ・ミ・ツ」

リツコ「……」




カヲル「…フィフスが赤木リツコと接触したそうだよ」

葛城「…そうか」

カヲル「今、フィフスのデータをMAGIが全力を挙げて当たっている」あらっている



シンジ「にもかかわらず、未だ正体不明。何者なんだ…?あの子は…」


シンジ「ミサトちゃんも未だ戻らず、か……ダメだな…」

シンジ「……父親役が…聞いて呆れるよ…」

711 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:53:02.75 3d5dCKQ9o 692/814

ヒカリ「現在、セントラルドグマは開放中。移動ルートは3番を使用してください」



マリ「おっまたー♪」

ミサト「…待ってないわよ。……ついて来ないで!」

マリ「な~んでさぁ。仲良くしよ~よ~」

腕を回そうとするマリ。振り払うミサト

マリ「……」

ミサト「……」

マリ「つれないにゃ~…なんで?」

ミサト「……」

ミサト「…知らない子だもの…」

マリ「……ふぅ~ん?」


ミサト「……ついて来ないでよ」

マリ「あたしもそっちに用があるの~」

712 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:54:05.84 3d5dCKQ9o 693/814

マリ「…なんか、悩みごと?」

ミサト「……」

マリ「私でよかったら、聞くよ~?」

ミサト「……」

マリ「……加持くんのことかな~」

ミサト「…っ」

マリ「それとも、赤木リツコ?」

ミサト「なんで…っ」

(加持「俺は手を取ってもらえて嬉しかったよ…」)



ミサト「……あんたには、関係ないでしょ…!」


シャワールームを出るミサト

マリ「……」

マリ「…なるほど。繊細だねぇ」

713 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:55:01.64 3d5dCKQ9o 694/814

マリ「ちゃんと乾かさないと、風邪引いちゃうよ?」

ミサト「…ついて来ないでって、言ってるでしょ」

マリ「…心配しなくても加持くんの居場所とったりしないよー」

ミサト「……、いいかげんに…っ」

ミサトの口に人差し指を立てるマリ

マリ「続きはさっ、私の部屋で話そーよ」

マリ「一人だと退屈なんだよね」

マリ「ほらっ!早く早く~」


促すマリ。立ち尽くすミサト

ミサト(……)

714 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:56:02.92 3d5dCKQ9o 695/814

ゼーレ「ネルフ。われらゼーレの実行機関として結成されし組織」

ゼーレ「われらのシナリオを実践するために用意されたモノ」

ゼーレ「だが、今は一個人の占有機関と成り果てている」

ゼーレ「さよう。われらの手に取り戻さねばならん」

ゼーレ「約束の日の前に」

キール「ネルフとエヴァシリーズを本来の姿にしておかねばならん。葛城、ゼーレへの背任、その責任は取ってもらうぞ」




初号機のケージ。

葛城「われわれに与えられた時間は残り少ない…」

葛城「希望であるロンギヌスの槍は手を離れた」

葛城「まもなく最後の使徒が現れる。今はそれを消すことだ」


葛城「……信じている」

葛城「…お前も、そうだろう…」

715 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:57:01.54 3d5dCKQ9o 696/814

リツコ「私は…なぜここにいるの」

リツコ「なぜまた生きているの」

リツコ「何のために」

リツコ「誰のために…」


リツコ「フィフスチルドレン…」

リツコ「…あの子から、私と同じものを感じた…」

リツコ「なぜ…?」

716 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:58:01.72 3d5dCKQ9o 697/814

シンジ「ここが街外れで良かった…。ペンペンが巻き込まれずに済んで…」

シンジ「…でも、この次の保証はないんだ…だから、明日からは伊吹さんちのお世話になるんだよ…」

シンジ「…しばらく、お別れだね…」

ペンペン「クワァッ」

シンジ「ペンペン……」ギュ…

717 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 16:59:02.54 3d5dCKQ9o 698/814

ミサト「……こういうのって、普通お客が上なんじゃないの…?」

マリ「知らない子だも~ん」

ミサト「……」

マリ「…それで、居づらくなって逃げ出してきたんだ?」

ミサト「あんたが無理やり誘ったんでしょ」

マリ「そりゃあ、君の中に逃げたいって気持ちがあったからデショ」

ミサト「……」

マリ「…図星?」

ミサト「知らないわよっ。もう寝る」

マリ「え~」

718 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:00:01.62 3d5dCKQ9o 699/814

マリ「……」

マリ「とりゃっ」

ミサト「ちょっ…!自分のとこで寝なさいよ…!」

マリ「ん~?寒いから。ここで寝る」

ミサト「…パーソナルスペースってもんがあるでしょっ」

マリ「い~じゃんい~じゃん~。袖振り合うも多生の縁、って言うし」

ミサト「意味分かんないわよ、もう」

ミサト「だったら、私は上に…」

マリ「うにゃっ!」

ミサト「!、ちょっと…!」

マリ「い~じゃん。あったかくて、やわらかいし…」

マリ「あたしも柔らかいっしょ?うりうり~」

ミサト「ちょっと……、もう…」

719 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:01:05.76 3d5dCKQ9o 700/814

マリ「お? 大人しくなった」

ミサト「……馬鹿らしくなっただけよ。まともに取り合うのが」

ミサト「……はぁ…」

マリ「ん~…ぬくぬく」

ミサト「……」


ミサト(誰かと寝るなんて、いつぶりかしら…)


ミサト(生温かい…人の呼吸、落ち着かない…)

ミサト(いや、落ち着くの…?誰かの体温)


ミサト(鼓動……)


ミサト(……)


ミサト「……おかぁ、…さん…」

マリ「……」

720 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:02:02.07 3d5dCKQ9o 701/814

シンジ「どうだった、あの子のデータ」

トウジ「これや。イインチョに借りた」

シンジ「これは…!」

トウジ「…公表できんのも納得や、こんなもん…」

シンジ「理論上ありえない…エヴァとのシンクロ率を自由に設定できるなんて」

シンジ「それも、自分の意志で…!」

トウジ「謎やな…探れば探るほど」


シンジ「……もう、正攻法ではいかないか…」

721 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:03:02.20 3d5dCKQ9o 702/814

レイ「……よく来られたわね」


シンジ「…聞きたいことがあるんだ」

レイ「…ここでの会話は録音されるわ」

シンジ「構わないよ。あの子の…フィフスの正体は何なの?」

レイ「……」

レイ「……おそらく、最後のシ者…」

722 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:04:01.89 3d5dCKQ9o 703/814

マリ「さ…行くよ、アダムの分身。そしてリリンの僕…」


空中に踏み出すマリ。



トウジ「エヴァ弐号機、起動!」

シンジ「そんな…!? 加持くんは!」

ケンスケ「303病室です。確認済みです!」

シンジ「じゃあいったい誰が…!」

ヒカリ「無人です、弐号機にエントリープラグは挿入されていません!」

シンジ(誰もいない?フィフスじゃないのか……!?)

トウジ「セントラルドグマに、A.T.フィールドの発生を確認!」

シンジ「弐号機!?」

トウジ「…いや、パターン青!間違いない!使徒や」

シンジ「使徒……!」

シンジ「あの子どもが…!」

723 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:05:02.91 3d5dCKQ9o 704/814

オペレータ「目標は第4層を通過、なおも降下中!」

ケンスケ「だめです、リニアの電源は切れません!」

オペレータ「目標は第5層を通過!」

カヲル「セントラルドグマの全隔壁を緊急閉鎖!少しでも時間を稼ぐんだ!」

アナウンス「マルボルジェ全層緊急閉鎖、総員退去、総員退去!」

カヲル「……まさか、ゼーレが直接送り込んでくるとはね…」

葛城「連中は予定を一つ繰り上げるつもりだ。われわれの手で…」

724 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:06:01.46 3d5dCKQ9o 705/814

ゼーレ 02「最後の使徒がセントラルドグマに侵入した。現在降下中だ」

ゼーレ「予定通りだな」

キール「葛城。君はよき友人であり、志を共にする仲間であり、理解ある協力者だった。これが最後の仕事だ。初号機による遂行を願うぞ」





ケンスケ「装甲隔壁は、エヴァ弐号機により突破されています!」

トウジ「目標は、第2コキュートスを通過!」

葛城「……!」

葛城「エヴァ初号機に追撃させろ」

シンジ「はい!」

葛城「…いかなる方法をもってしても、目標のターミナルドグマ侵入を阻止するんだ」

725 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:07:03.18 3d5dCKQ9o 706/814

シンジ(……使徒はなぜ、弐号機を…!)


カヲル「まさか…弐号機との融合を果たすつもりなのか」

葛城「あるいは破滅を導くためか…」





ミサト「あの子が、使徒……?」

ミサト「…嘘よ。だってあの子は…」

シンジ「本当なんだ。ミサトちゃん」

シンジ「出撃の準備を」

ミサト「……」

シンジ「ミサトちゃん…!」

726 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:08:02.10 3d5dCKQ9o 707/814

マリ「おっそいな~」

マリ「…ちょっとからかいすぎちゃった、かな」



オペレータ「エヴァ初号機、ルート2を降下!目標を追撃中!」


(マリ「加持くんの居場所とったりしないよー」)


ミサト「……!」

ミサト「馬鹿にして…!」

ミサト「汚させやしない、加持くんの、弐号機を…!」

727 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:09:01.87 3d5dCKQ9o 708/814

ケンスケ「初号機、第4層に到達、目標と接触します」



ミサト「…いた!」

マリ「おっそ~い。待ちくたびれたよ」


ミサト「マリ…ッ!」

マリ「あー。はじめて!名前呼んでくれたね」

ミサト「ふざけんじゃ、ないわよ…っ!」


にらみ合い、掴みあう弐号機と初号機


マリ「今さら向き合ったって。許してあげないよ!誰でもよかったくせに」

ミサト「…! じゃあ、あんたはどうして…ッ」

ミサト「私に近付いたのよっ!」

プログナイフで斬りかかる

728 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:10:01.86 3d5dCKQ9o 709/814

弾かれる

ミサト「うっ」

マリ「無駄だよ」

マリ「弐号機は今、誰とも会いたくないって。」


ミサト「これは…!A.T.フィールド…!?」


マリ「驚くこたないじゃん。誰だって持ってる。A.T.フィールドは心の壁」

ミサト「心の壁…!?」

マリ「そう。こうやって、土足で上がることだって…!」

ミサト「グッ」

マリ「できる!」

ミサト「アアアッ」

729 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:11:02.17 3d5dCKQ9o 710/814

オペレータ「エヴァ両機、最下層に到達」

オペレータ「目標、ターミナルドグマまで、後20」


シンジ「……く…っ!」

シンジ「……初号機の信号が消えて、もう一度変化があったときは…」

トウジ「分かっとる。その時は…ここを自爆させるんやな」

シンジ「…トウジ、僕は…!」

トウジ「このワシがセンセ一人置いていくわけないやろ。死ぬときは一緒や」

ケンスケ「はは。俺はできれば死にたくないかな」

トウジ「アホ!何をウジウジ言うとんのや。ちゃんとタマンキついとんのか!?」

ヒカリ「ちょっと!やめなさいよ、こんなときに…」

トウジ「もとより覚悟の上や!…ついて行くで」


シンジ「……ありがとう、みんな…!」

730 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:12:01.79 3d5dCKQ9o 711/814

マリ「…ヒトの宿命か…。いじけてたって何にも楽しいことないのに…」

ミサト「…なんなのよ…!」

マリ「遺伝子レベルでの欲求に対する疑問…ヒトの限界だよ…」





シンジ「いったい、これは…!」

トウジ「これまでにない強力なA.T.フィールド…!」

ケンスケ「光波、電磁波、粒子も遮断しています!何もモニターできません」

シンジ「結界…!?」

ヒカリ「目標およびエヴァ弐号機、初号機、共にロスト、パイロットとの連絡も取れません!」

731 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:13:01.72 3d5dCKQ9o 712/814

最深部に落下する両機


ミサト「んっ…!う、うぅ…っ!」

ミサト「待ちなさい、よ…っ!」

弐号機に足を掴まれる

ミサト「!」

マリ「……」

マリ「諦めちゃいなよ」

ミサト「……!」

マリ「もう無理だって」

ミサト「無理じゃない……!」




ケンスケ「最終安全装置、解除!」

トウジ「ヘヴンズドアが、開く…!」

シンジ「……!」

シンジ「たどり着いたのか、使徒が…!」

732 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:14:01.70 3d5dCKQ9o 713/814

シンジ「みんな…」

トウジ「……」


猛攻。


ミサト「……ぁああああっ!」


弐号機に掴みかかる初号機


ミサト「はっ!」


シンジ「…状況は!」

トウジ「A.T.フィールドや!」

ケンスケ「ターミナルドグマの結界周辺に先と同等のA.T.フィールドが発生」

ヒカリ「結界の中へ侵入していきます!」

シンジ「まさか、新たな使徒…!」

ケンスケ「だめです、確認できません!…いえ、し、消失しました!」

シンジ「消えた?!使徒が?!」

733 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:15:02.65 3d5dCKQ9o 714/814

マリ「…おまたせ。アダム…ようやく会えたね…」

マリ「……!」

マリ「違う、これは…!」

マリ「…なるほど。」

マリ「リリンの狙いはこれか…」


横たわる弐号機。


マリ「悔しいなあ……」


初号機の手がマリを捕らえる


マリ「……あとちょっとで勝てると思ったのに。」


ミサト「あんた…っ!なんで、こんなこと…!」


マリ「生きることに……理由なんていらない。ただ生きていたいじゃん?」


マリ「生み落とせば次が待ってる。できるからやればいい。そうやって繰り返し、生命は巡ってきた…」

マリ「疑問なんて…持ってるみたいだからサ、面白くって。もうちょっと見ていたかったけど…」

734 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:16:02.62 3d5dCKQ9o 715/814

マリ「でももう終わり。今回は生命に懐疑的なほうが生き残る」

ミサト「…なに、言ってんのよ…」


マリ「…ま。それも面白いか…」


ミサト「わけ、分かんないわよ…!どうしろって言うのよ、私に…!」



マリ「受け取ってよ、リリンの代表として」

ミサト「……」

マリ「私のキモチ」


ミサト「…!」



ミサト「なによ…なんなのよ、ずっと!最初から…」

ミサト「勝手なことばっかり言わないでよ、あたし、あたしは…!」

735 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:17:02.13 3d5dCKQ9o 716/814

マリ「知ってるよ?」


ミサト「!」

マリ「最初から好きじゃなかった…気に入らなかった。だよね?」


ミサト「…ッ」

マリ「殺しなよ。そうすれば君たちの世界はそのまま」


マリ「…このまま死んで、心に残るのも悪くない……」

ミサト「……」

マリ「…悪かったね。パーソナルスペース汚しちゃって」

ミサト「……、」

ミサト「馬鹿…!」

736 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:19:08.81 3d5dCKQ9o 717/814

洗浄される初号機

葛城「……」

リツコ「……」





ミサト「あの子は…」

ミサト「マリは……使徒じゃなかった」

ミサト「温もりがあったもの…」

ミサト「好きじゃなかった…でも、嫌いでもなかった…」

ミサト「……何も違わなかった。私たちは…っ」

737 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/06 17:20:01.74 3d5dCKQ9o 718/814

シンジ「……彼女は死を望んだんだ。ミサトちゃん、君は生を…」


ミサト「違う!」

ミサト「違う、違う、違う違う!私は逃げただけ…!」

ミサト「何も選びたくなかった…だから、あの子の言うことを聞いた…そのほうが、自分が傷つかないもの」

ミサト「嘘ばっかり…知ってるなんて、ぜんぶ嘘…!」

ミサト「あの子も生きたかったんだわ……」

シンジ「……」


扉を閉めるシンジ

布団に踞るミサト

ミサト「……寒い…」




弐拾四話分終わり

743 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:01:02.24 KdkUNOgoo 719/814

第一脳神経外科。


ミサト「……」

アナウンス「東棟の第2、第3区画は本日18時より閉鎖されます。引き継ぎ作業は本日16時30分までに終了してください」


ミサト「加持くん…、ねぇ」

ミサト「起きてよ……こわいの。シンジさんも、リツコも、みんな…!」

ミサト「どうして平気なの…?あんな…!」

ミサト「……起きて…起きてよ…!分かって、私を見てよ…!」

ミサト「おかしいって、言ってよ…!こんなの変だって…!」


(マリ「…悪かったね」)

(ミサト「馬鹿!」)

(シンジ「彼女は死を望んだんだ」)

(ミサト「違う!」)

(ミサト「寒い…」)

744 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:02:02.02 KdkUNOgoo 720/814

ミサト「……もう分からないの。他人も、自分も…」

ミサト「…ねぇ。加持くん…!加持くん…」

ミサト「起きて、また…いつもみたいに、好きって、言っ……」

加持の上に泣き崩れるミサト

ミサト「うっ、う…っ」


ミサト「う…っ、加持くん…」



ミサト「私を助けてよ…!」

745 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:03:05.83 KdkUNOgoo 721/814

加持。夢の中。

「大勢で行くと目立つ」

「大丈夫さ…うまくやるよ」


「こいつらか、最近この辺を荒らしてる」

「殺せ。どうせ足もつかない」

「やめろ…」

「やめろ?やめろって?坊主…」


「やめてやってもいい。…仲間の居場所を吐きな」

「そうすりゃ助けてやる」

「……あ、」


加持「……あぁ……っ」

ミサト「加持くん…?加持くん!」

746 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:04:02.25 KdkUNOgoo 722/814

加持「あ、ああああっ!」

ミサト「…や、ぁ!」

ミサト「か…加持く、離し…!」

(「仲間の居場所を言え」)

加持「……ろ…してやる…!」


加持「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる…っ!」

ミサト「い…い、や…」

ミサト「だれかあっ」

加持の身体から計器が外れる。電子音。

747 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:05:02.31 KdkUNOgoo 723/814

看護師「…何をしてるの!」

看護師「先生!」

医師「鎮静剤だ、」

医師「押さえろ!興奮している」

加持「うぅ、あぁ…!」

加持「……っあああッ!」

看護師「…っ、落ち着いて!ここは病院よ」

加持「ふーっ、ふーっ……」

加持「……、……」

加持「…」



ミサト「………」

看護師「大丈夫?怪我はない?」

748 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:06:02.14 KdkUNOgoo 724/814

ヒカリ「本部施設の出入りが全面禁止…?」

トウジ「解せんな。第一種警戒態勢のままっちゅうのも…」

ヒカリ「最後の使徒だったんでしょう?あの子が…」

ケンスケ「ああ。全ての使徒は消えたはずだよ」

トウジ「なんや。ほんならめでたしめでたし、ってことなんか?」

ヒカリ「じゃあここは…エヴァはどうなるの?綾波さんも今いないのに…」

ケンスケ「……ネルフは、組織解体されると思う。俺たちがどうなるかは…見当もつかないよ」

トウジ「補完計画の発動まで、自分らで粘るしかないか」





シンジ「…出来損ないの群体として既に行き詰まった人類を完全な単体としての生物へ人工進化させる補完計画。理想の世界、か…。」

シンジ「そのために委員会はまだ使うつもりなんだ…」

シンジ「アダムやネルフではなく、あのエヴァを」


シンジ「アスカの予想通り…」

749 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:07:02.02 KdkUNOgoo 725/814

キール「約束を違えたな……葛城」

ゼーレ 02「我らに背き 滅びを拒むとは」

ゼーレ 05「滅びの宿命は新生の喜びでもある」

ゼーレ 04「神も人も全ての生命が死を以てやがて一つになる為に」

キール「だがロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完は出来ぬ」

キール「それが可能なのはリリスの分身たるエヴァ初号機のみ」

キール「速やかな遂行を願うぞ…」


葛城「死は何も生みません」


キール「死は君達に与えよう」


カヲル「人は生きていこうとする所にその存在がある」

カヲル「それが自らエヴァに残った彼女の…いや」

カヲル「彼女たちの願いだからね」

750 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:08:02.79 KdkUNOgoo 726/814

夜。

目を覚ますリツコ

リツコ「……」


目を閉じるミサト

ミサト「……」



明け方。

キーを叩くシンジ

シンジ「…これが…セカンドインパクトの真意…」

シンジ「はっ」

シンジ「気付かれた…!」

シンジ「…いや、違う…!」

シンジ「始まったのか…」

シンジ(始まってしまった。こんなにも早く…)

751 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:09:01.86 KdkUNOgoo 727/814

葛城「……結局、最後まで頼ることになってしまった」

葛城「…行ってくれるか」

リツコ「……」コクン…





警告音。

オペレータ「第6ネット、音信不通」

カヲル「左は青の非常通信に切り替えろ。衛星を開いても構わない…そうだ。右の状況は?」

オペレータ「外部との全ネット、情報回線が一方的に遮断されています!」

カヲル「目的はMAGIか…」

752 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:10:02.28 KdkUNOgoo 728/814

ケンスケ「全ての外部端末からデータ侵入。MAGIへのハッキングを目指しています!」

カヲル「やはりか…侵入者は松代のMAGI2号かい?」

ケンスケ「いえ、少なくともMAGIタイプ5」

ケンスケ「ドイツと中国、アメリカからの侵入が確認できます!」

カヲル「…ゼーレは総力を挙げているな…彼我兵力差は1対5…分が悪い…」

オペレータ「第4防壁、突破されました」

トウジ「主データベース閉鎖…駄目や、進行をカットできん!」

ヒカリ「更に外郭部へ侵入、予備回路も阻止不能です!」

カヲル「まずいな…MAGIの占拠は本部のそれと同義だ…」

753 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:11:04.65 KdkUNOgoo 729/814

アナウンス「総員、第一種警戒態勢。繰り返す。総員、第一種警戒態勢。D級勤務者は可及的速やかに所定の配置に付いてください」



レイ「解ってる…、MAGIの自律防衛でしょう…」

諜報員「はい、詳しくは第2発令所の洞木二尉からどうぞ」

レイ「ここもいよいよね…。最後の敵は人か…」




アナウンス「現在、第一種警戒態勢が発令されています」

(通話)

シンジ「状況は!」

トウジ「今しがた、第2東京からA-801が出た」

シンジ「801?」

トウジ「特務機関ネルフの特例による法的保護の破棄」

トウジ「及び、指揮権の日本国政府への委譲…最後通告やな。ああ、そうや。今MAGIがハッキングを受けとる…かなり押されとる」

ヒカリ「碇くん?洞木よ。今、綾波さんがプロテクトの作業に入ってくれてる」

ヒカリ「あ…!」

シンジ「綾波が…?」

754 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:12:02.79 KdkUNOgoo 730/814

レイ「……先生、私。待てませんよ、もう…」

レイ「疲れました……そっちへ行ってもいいですか…?」


レイ「…駄目ね、私…弱気になってる。こんなことじゃ先生に叱られてしまうわ」

レイ「先生……」




オペレータ「強羅地上回線、復旧率0.2%に上昇」

オペレータ「第3ケーブル、箱根の予備回線、依然不通」

シンジ「後、どれくらい…?」

トウジ「ギリギリ間に合いそうや…綾波博士様様やな」

シンジ(MAGIへの侵入だけ……それで済むはずがない。おそらく……!)

755 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:13:02.62 KdkUNOgoo 731/814

カヲル「MAGIは前哨戦に過ぎない。彼らの狙いは本部施設、及び残るエヴァ2体の直接占拠だ」

葛城「ああ。リリス、そしてアダムさえ我らにある」

カヲル「老人達が焦るわけだ……」


ヒカリ「MAGIへのハッキングが停止しました」

アナウンス「フリーズ、フリーズ、フリーズ、フリーズ…」

ヒカリ「Bダナン形防壁を展開。以後62時間は外部侵攻不能です」




レイ「先生……今度は一緒ですよ…」

756 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:14:01.79 KdkUNOgoo 732/814

ゼーレ 09「葛城はMAGIに対し、第666プロテクトを掛けた。この突破は容易ではない」

ゼーレ 07「MAGIの接収は中止せざるを得ないな」

キール「出来うるだけ穏便に進めたかったのだが、致し方あるまい。本部施設の直接占拠を行う」


山道に蠢く影。


隊員「始めよう」

隊員「予定通りだ」

757 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:15:02.39 KdkUNOgoo 733/814

被弾するネルフ本部。


オペレータ「第8から17までのレーダーサイト、沈黙」

ケンスケ「特科大隊、強羅防衛線より侵攻してきます」

トウジ「御殿場方面からも二個大隊が接近中」


カヲル「…最後の敵が人とはね」

葛城「…総員、第一種戦闘配置」

ヒカリ「戦闘配置…?相手は使徒じゃないのに…同じ人間なのに…」

トウジ「…敵さん、そうは思うてくれんようやな」

758 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:16:02.10 KdkUNOgoo 734/814

ネルフ本部ゲート前

職員「…、……」

職員「う、……!」

開放されるゲート

警報。

職員「おいどうした!おい!」

職員「なんだ?」

職員「南のハブステーションです」

着弾。


オペレータ「台ヶ丘トンネル使用不能」

オペレータ「西5番搬入路にて火災発生」

オペレータ「侵入部隊は第1層に突入しました!」

759 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:17:06.39 KdkUNOgoo 735/814

シンジ「西館の部隊は…陽動だ」

シンジ「本命がエヴァの占拠なら、パイロットを狙うはず…至急ミサトちゃんを初号機に退避させて!」

トウジ「了解」

シンジ「加持くんは」

ケンスケ「303号病室」

シンジ「…そのまま弐号機に乗せて。あそこだと確実に見つかる…!エヴァの中のほうが安全だ」

ヒカリ「…了解、パイロットへの投薬を中断、発進準備!」

シンジ「加持くん収容後、エヴァ弐号機は地底湖に隠して」

シンジ「…すぐに見付かるけど、ケージよりマシだ…!リツコちゃんは?」

ケンスケ「所在不明。位置を確認できない」

シンジ「こんなときに…!捕捉急いで!」




迷いなく進むリツコ。その手にはアダム

リツコ「……」

760 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:18:02.40 KdkUNOgoo 736/814

トウジ「弐号機射出!8番ルートから水深70に固定」

シンジ「続いて初号機発進!ジオフロント内に配置して」

ケンスケ「駄目だ…!パイロットがまだ…!」

シンジ「そんな、」

シンジ「ミサトちゃん…!」


アナウンス「セントラルドグマ第2層までの全隔壁を閉鎖します。非戦闘員は第87経路にて待避してください」


ケンスケ「地下、第3隔壁破壊。第2層に侵入されました」

カヲル「戦自約一個師団の投入か…占拠は時間の問題だね…」

葛城「……渚先生、後を頼みます」

カヲル「…解っているよ。彼女に伝えてくれ、すまなかったと」

葛城「……」

761 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:19:03.24 KdkUNOgoo 737/814

侵攻、破壊。

オペレータ「第2グループ、応答なし」

オペレータ「77電算室、連絡不能」

ケンスケ「52番のリニアレール、爆破されました!」

トウジ「なんて奴らや…、使徒のがよっぽど可愛いげがあったな」

シンジ「無理ないよ。今までとは相手が違う。人を殺すなんて…!」



瀕死の同僚を運ぶ職員

職員「っっん、っっん…!」

銃撃。


隊員「赤のケーブルから優先して切断…」


火炎放射機。

職員「あぁぁ…」

762 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:20:05.46 KdkUNOgoo 738/814

オペレータ「第3層Bブロックに侵入者!防御できません!」


ケンスケ「Fブロックからもです!メインバイパスを挟撃されました」

シンジ「第3層まで破棄します。戦闘員は下がって」

シンジ「803区間までの全通路とパイプにベークライト注入」

ケンスケ「ベークライト注入!」


アナウンス「第703管区、ベークライト注入を開始。完了まであと30。第730管区、ベークライト注入を開始。完了まであと20」


シンジ「これで、少しは…」

トウジ「センセ!…ルート47が寸断されてグループ3が足止め食っとる。このままやと、葛城ミサトが」

シンジ「……、」

シンジ「…非戦闘員の白兵戦は極力避けて。向こうはプロだ。ドグマまで後退不可能なら投降した方がいい…!」


シンジ「…ごめん、ここは任せる」

トウジ「…シンジ、…」

シンジ「大丈夫。…死なないよ」

763 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:21:02.68 KdkUNOgoo 739/814

無線「二子山はもういい、長尾峠に回れ」

戦闘団長「以外と手間取るな…」

隊員「我々に楽な仕事はありませんよ」




トウジ「……まったく。無茶しよるわ。こっちは本格的な対人要撃システムもないっちゅーのに…」

ケンスケ「だな。精々テロ止まりだ」

トウジ「…戦自が本気出したら、この施設なんてイチコロなんやないか?」

ケンスケ「イチコロなんてもんじゃないさ。骨も残らないと思うね」

トウジ「アホ!嘘でもそんなことないて、言わんかい!」

764 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:22:02.24 KdkUNOgoo 740/814

爆撃。

トウジ「が……っ!」

トウジ「……!!」


トウジ「イインチョ!」

ケンスケ「ロック外して!」

ヒカリ「嫌……私…鉄砲なんて撃てない…!」

ケンスケ「訓練で何度も撃ったろ…!」

ヒカリ「その時は…!その時は人なんて、いなかったもの…!」

トウジ「…く…っ、」

トウジ「委員長!伏せとれ!」

765 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:23:07.06 KdkUNOgoo 741/814

無線「第2層は完全に制圧。送れ」

無線「第2発令所、MAGIオリジナルは未だ確保できず。左翼下層フロアにて交戦中」

無線「5thマルボルジェは熱冷却装置に入れ」


無線「エヴァパイロットは発見次第射殺」

無線「非戦闘員への無条件発砲も許可する」

無線「柳原隊、新庄隊、速やかに下層に突入」


隊員「サード発見。これより排除する」

隊員「悪く思うなよ…!」


銃声。倒れる隊員


ミサト「……!」

葛城「立つんだ…ミサト」

766 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:24:06.86 KdkUNOgoo 742/814

倒れた隊員の無線を聞くシンジ

無線「紫の方は確保しました。ベークライトの注入も問題ありません」

無線「赤い奴は既に射出された模様。目下移送ルートを調査中」

シンジ「ミサトちゃんと初号機の物理的接触を断とうとしている…。ミサトちゃん、無事なのか…!でもどうやって…」


無線「ファーストは未だ発見できず」

シンジ「……うかうかしてられない。どっち道初号機までのルートを確保しなきゃ…」


(通話)

シンジ「トウジ、聞こえる?」

767 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:25:01.94 KdkUNOgoo 743/814

ミサト「たすけて…加持くん、助けてよ…」


葛城「……セカンドは弐号機の中だ」

葛城「ミサト。お前もすぐに…」

ミサト「やめてよ…!」

ミサト「もう、嫌なの…!もう誰も殺したくない!行きたくない!」

ミサト「もう嫌……なんでなのよ」


葛城「……すまなかった」

ミサト「………!」

ミサト「なに…よ、なん…今さら!何なのよ!」

ミサト「こんなところに呼んで!ずっと来てくれなかったのに、急に、エバーに乗せて、私から奪って、また…!」

768 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:26:02.15 KdkUNOgoo 744/814

カヲル「構わない!ここよりもターミナルドグマの分断を優先させるんだ」

トウジ「あちこち爆破されとるのに、やはし此処には手を出さんか…」

ケンスケ「一気に片を付けたい所だろうが、下にはMAGIのオリジナルがあるからね…」

トウジ「はん。できるだけ無傷で…ちゅうわけか」

ケンスケ「ただ、対BC兵器装備は少ない。使用されたらヤバイよ…」

トウジ「N2兵器もな…」


爆発。激しい揺れ。


ケンスケ「あ~、言わんこっちゃない…」

トウジ「奴ら加減ってもんを知らんのか!」

カヲル「無茶をする…」

さらに降り注ぐ

ヒカリ「ねぇ、どうしてそんなにエヴァが欲しいの!」

769 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:27:02.31 KdkUNOgoo 745/814

葛城「奴らは……ゼーレはサードインパクトを起こすつもりだ。使徒ではなくエヴァシリーズを使って…」

葛城「15年前のセカンドインパクトは、人間に仕組まれたものだ」

葛城「だがそれは、他の使徒が覚醒する前にアダムを卵にまで還元する事によって被害を最小限に食い止める為のものだった…」

葛城「…ミサト、われわれ人間も、アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた18番目の使徒だ。他の使徒達は別の可能性だった…。人の形を捨てた人類の」


葛城「……私は16年前、この事実を知った。ゼーレにおもねることで計画を絶つ気でいた。だが…それも失敗だ」

葛城「人間同士で争う形となってしまった…」

ミサト「……」



葛城「……生き残るにはエヴァシリーズを全て消滅させるしかない。ミサト…」


葛城「それが叶わなくても、お前なら…」

ミサト「……?」

葛城「…いや。来るんだ」

770 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:28:01.69 KdkUNOgoo 746/814

首相「電話が通じなくなったな」

秘書官「はい、3分前に弾道弾の爆発を確認しております」

首相「ネルフが裏で進行させていた人類補完計画。人間全てを消し去るサードインパクトの誘発が目的だったとは…とんでもない話だ」

秘書官「自らを憎むことのできる生物は人間くらいのものでしょう」

首相「さて、残りはネルフ本部施設の後始末か」

秘書官「ドイツか中国に再開発を委託されますか?」

首相「買い叩かれるのがオチだ。20年は風地だな。旧東京と同じくね」

771 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:29:02.30 KdkUNOgoo 747/814

無線「表層部の熱は退きました。高圧蒸気も問題ありません」

無線「全部隊の初期配置完了」

隊員「現在、ドグマ3層と紫の奴は制圧下にあります」

戦闘団長「赤い奴は?」

隊員「地底湖の水深70にて発見、専属パイロットの生死は不明です」




加持(………、)

加持(生きてる…)

加持(…また、夢の中か…?)

加持(…うっ、)

加持(何が起きてる…?)

加持(いたい…痛い、身体が…)

加持(殴られている、強い、力で…)

加持(上から…)

772 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:30:01.89 KdkUNOgoo 748/814

「兄ちゃん」

「リョウジー!」

「兄ちゃん」

「リョウジ」

「兄ちゃん」

「リョウジ」

「兄ちゃん!」

「リョウジー!」

「兄ちゃん……」


加持「はっ…」


(「教えろ…」)

(「仲間の居場所を吐け」)

773 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:31:03.05 KdkUNOgoo 749/814

爆雷。


加持「死ぬのか…?俺は…」

(「仲間の居場所を言えば…」)


加持「死ぬのは俺、死ぬのは俺…?死ぬのは俺…。死ぬのは俺、死ぬのは俺…!死ぬのは俺、死ぬのは俺、死ぬのは俺、死ぬのは俺、死ぬのは俺…」


(「兄ちゃん……」)

774 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:32:02.09 KdkUNOgoo 750/814

(「もうここは出よう」)

加持「死ぬべきなのは俺、」

(「俺たちは自由なんだ」)

加持「あの時死ぬはずだったのは俺」

(「軍の倉庫を見つけた」)

加持「俺が死んでさえいれば、」

(「これで当分は…」)

加持「みんなは助かった…」

(「あっこら、はは」)

加持「死ぬのは俺」

(「兄ちゃん!」)



(「加持くん」)

加持「死ぬのは俺……一人だ!」

閃光。

775 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:33:01.93 KdkUNOgoo 751/814

隊員「こっ、これは!?」

隊員「やったか!?」



護衛艦を押し上げ、現れる弐号機

戦自の攻撃を蹴散らしていく



加持「……大切だった」

操縦桿を握る加持

加持「大切だ…!」


空を翔る。




車内。

ヒカリ(無線)「エヴァ弐号機起動!加持くんは無事です。生きてます!」

ミサト「加持くんが……!」

776 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:34:03.81 KdkUNOgoo 752/814

隊員「ケーブルだ!やつの電源ケーブル、そこに集中すればいい!」

爆撃。

加持「……チイッ!」

加持「アンビリカルケーブルが、無かろうと……ッ!」

加持「こちとら1万2千枚の特殊装甲と!」


加持「A.T.フィールドがある…!」


攻撃機を凪ぎ払う


加持「うぉぉぉぉぉ…っ!」




キール「忌むべき存在のエヴァ。またも我らの妨げとなるか…やはり毒は、同じ毒を以て征すべきだな」


輸送機からエヴァシリーズが投下される


加持「エヴァシリーズ…!完成していたのか」


カヲル「S2機関搭載型を9体全機投入とは…大げさすぎるな。ここで起こすつもりか…!」

降り立つエヴァシリーズ

777 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:35:03.86 KdkUNOgoo 753/814

無線。電話越しに。

シンジ「司令…!よかった、ミサトちゃんは無事なんですか!」

葛城「無事だ」

シンジ「そのまま非常用のルート20へ向かってください」

葛城「電源は」

トウジ「三重に確保しとります。3分以内に乗り込めば第7ケージに直行できます」

葛城「分かった。……セカンドに繋げるか」

トウジ「どうぞ」

葛城「…エヴァシリーズは必ず殲滅させるんだ。初号機もすぐに上げる」

葛城「それまで耐えてくれ」

778 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:39:13.80 KdkUNOgoo 754/814

加持「必ず殲滅、ね…。司令も、病み上がりに軽く言ってくれる」

加持「…残り3分半で9つ。一匹につき20秒か……ははっ」

加持「望むところだ…!」



加持「うお、お…!」

9号機の頭を潰し、背骨を折る



加持「Erst!」

779 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:40:02.24 KdkUNOgoo 755/814

ルート20。

葛城「……ここだ」

銃撃。逃れる葛城、ミサト。


隊員「逃がしたか」

隊員「目標は射殺出来ず。追撃の是非を問う」

無線「追撃不要。そこは爆破予定である。至急戻れ」

隊員「了解」

780 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:41:13.30 KdkUNOgoo 756/814

ミサト「え……?」

葛城「……っ…、」

ミサト「ちょっと…!」

葛城「電源は……生きている」

葛城「行って初号機に乗るんだ」

ミサト「……お父さんは…!?」

葛城「……」

ミサト「ねぇ……!」

葛城「……ミサト」

何かを手に握り込ませる

葛城「 」

扉が閉まる

手のひら。血のついた十字架

ミサト「う……っ」

ミサト「くぅ…、っ、う、う…っ」

781 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:42:12.19 KdkUNOgoo 757/814

加持「だああああっ」

11号機を地底湖に沈める

加持「あああ…っ!」

11号機の頭にプログナイフを突き刺し沈黙させる

加持「これで4つ…っ!」


加持「次ッ!」


加持「でやあああああッ!」


プログナイフが砕ける

加持「チイッ!」


弐号機の顔面を掴まれる

加持「ウッ」


加持「…ゥオアアアッ!」

782 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:43:02.94 KdkUNOgoo 758/814

ターミナルドグマに辿り着くリツコ


リツコ「……」

リツコ「……!」


レイ「……待っていたわ。司令は一緒じゃないのね…」

レイ「嘘ばっかり。結局……真実なんて教えてくれなかった」

レイ「……でももういいの…」カチャ…


リツコに銃口を向けるレイ


レイ「……あなたはトリガーとなる。だったら殺すのが確実……」

リツコ「……」

783 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:44:02.03 KdkUNOgoo 759/814

レイ「ずっとあなたを守ってきたつもりだった。先生と自分を重ねて。…それをあなたが重荷に感じていたのも知ってる…」

レイ「……もう、終わりにしましょう。家族ごっこは終わり」

リツコ「……」

リツコ「…あなたは私を撃てない」

レイ「……!」

レイ「……そうね。でももう遅い。さっきMAGIのプログラムを変えてきたわ」

レイ「一緒に死にましょう…先生も……あなたのお母さんも一緒に」カチ…

レイ「……」

レイ「……!、なぜ……!」

レイ「は…っ」



レイ「BALTHASARが……!」

レイ「う……っ、」


レイ「……なぜなの!母としての先生がそう望むならいったい、私は…!」

784 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:45:14.60 KdkUNOgoo 760/814

トウジ「どうなっとるんや外は!」

ヒカリ「活動限界まで1分を切ってる!このままじゃ加持くんが…!」


シンジ「ミサトちゃん、急いで……!」




加持「葛城は、せめて葛城だけは」


加持「守ってみせる…!」


加持「アアアアアッ!」



加持の声が鳴り響いている。第7ケージ。


ミサト「……いや…!」

ミサト「もう失うのはイヤ…!」

ミサト「どうしてなの…ッ」

785 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 22:46:20.62 KdkUNOgoo 761/814

埋もれている初号機。

ミサト「こんなときにッ!」

ミサト「動けないで何が世界の希望よ」


加持「だああああっ」


ミサト「動いてよ…!」

ミサト「私の初号機なら、動いて…!」


壁が軋む。

ミサトに手を伸べる初号機


ミサト「アッ……」

ミサト「……!」

ミサト「まさか…!」


初号機「………」


ミサト「お母さん…?」






25話分終わり

786 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:01:02.29 KdkUNOgoo 762/814

肩を貫かれ、よろめく。

加持「…ッグ…!」

右腕を引き裂かれる。

加持「ォア…!」

加持「…………!」

加持「ダアアアアッ!!!」


なぎ倒して後ずさる

加持「……ハァ、ハァ…!」


加持「………、」

加持「ここまでか…!」

787 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:02:01.67 KdkUNOgoo 763/814

ヒカリ「内部電源終了…っ!予備電源に切り替わります、活動限界です…!」


シンジ「加持くん…!」


加持「……はぁ、は……」

加持(………よく、やった…)


加持「へへ…」

加持「…よく、ここまでもったな…」

加持「ありがとう」

788 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:03:01.85 KdkUNOgoo 764/814

加持「俺もすぐに行くよ」

加持「…今度は、一緒に…」

目を閉じる加持。

刃が迫る。


大きな影。

初号機が飛びかかる

ヒカリ「……!」

ヒカリ「エヴァ初号機、起動!」

789 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:04:03.59 KdkUNOgoo 765/814

加持「葛城……!?」


ミサト「……ごめん、遅れちゃって」


加持「………、」

加持「……締まらないな…」


残った機体をなぎ倒していく初号機

加持「………」

790 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:05:02.60 KdkUNOgoo 766/814

レイ「…欠けた心の補完」

レイ「不要な身体を捨てて、全ての魂をひとつにする…それが人類補完計画の全容」

レイ「…なぜ先生は、あなたを行かせようとするの…!」


レイ「復讐のためだったと言うの…?すべて、私を育てたことも…」

リツコ「…違うわ」

リツコ「確かに母さんは、セカンドインパクトで愛する人を失った」



リツコ「でもこれは、私が決めたこと…」

レイ「……!」

791 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:06:02.36 KdkUNOgoo 767/814

ミサト「…加持くん、腕、大丈夫…?」

加持「…どってことないさ、これくらい…」


加持「…葛城、俺のことは気にするな」

加持「いや…しないでくれ」

ミサト(…………、)


加持「俺は弟たちを身代わりにして生き残った」

加持「悔いることも恐れていた…でも今は分かる」

加持「俺が悪かったんだ」

加持「もうこれ以上、俺は……!」


ミサト「加持くんのせいじゃない」

加持「……、」

792 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:07:16.34 KdkUNOgoo 768/814

ミサト「大人が悪いのよ……いえ、セカンドインパクトが。あれが世界を変えてしまった。加持くんたちを苦しめた…」

ミサト「背負う人が違っただけ。あなたを身代りにしても…しなくても、必ず誰かが背負うことになるのよ」

加持「葛城…」

ミサト「………」

ミサト「生きろ、と…言われたの、お父さんに」


ミサト「そう望まれたの…。だから生きるの。私も望んでる。加持くん、あなたに」

ミサト「生きていてほしい、って…」


ミサト「……絶対に生き残るのよ。生き残って、それでも死にたかったら、その時死ねばいい…!」


ミサト「今、死に急ぐような真似したら…!一生許さないから…!」



加持「……、…」

加持「敵わないな…」

793 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:08:06.50 KdkUNOgoo 769/814

ヒカリ「エヴァシリーズ、すべて沈黙!」

トウジ「ィヨッシャー!」

ヒカリ「ミサトちゃん!加持くんを安全な所へ運んで」

ミサト「はい!」


加持「………」

加持「葛城、………帰ったら」

ミサト「?」

加持「あの時の続きをしよう」

ミサト「……、!」

ミサト「バカ…!」

794 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:09:07.02 KdkUNOgoo 770/814

ヒカリ「……待って」

ヒカリ「…なに、これ……」


加持「!」

加持「葛城、後ろ…!」


シンジ「倒したはずのエヴァシリーズが…!?」


飛び立つエヴァシリーズ

狙いすまされる。乱れ打ち。

加持「ッグ、」

ミサト「加持くん!」

795 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:10:02.35 KdkUNOgoo 771/814

対抗するミサト


ミサト「ああああっ!」


ミサト「うぐ…っ!」

腹部を貫かれる

加持「葛城!」

ミサト「…ぅああああああっ!」

加持「……っ」

引き抜いて突き刺す

ミサト「あああああっ!」

加持「葛城……っ」

ミサト「…ぁあああぁ!」

796 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:11:05.57 KdkUNOgoo 772/814

ミサト(加持くんは)

ミサト(私が守る、絶対に)

ミサト(話したいことが沢山あるのよ)

ミサト(自分で決めたの)


ミサト(……お父さん、お母さん…!)

ミサト(私が決めたのよ、守りたいと、思ったの)


ミサト「ぐ…っ!」


ミサト(力を貸して…!)


光が天を貫く。

光の羽を纏い、初号機が立ち上がる


隊員「エヴァンゲリオン初号機…!」

隊員「まさに悪魔か…」



加持「葛城…!」

797 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:12:03.99 KdkUNOgoo 773/814

隊員「大気圏外より高速接近中の物体あり!」

隊員「なんだと…!」



カヲル「ロンギヌスの槍…!」



加持「ロンギヌスの槍…!?」


シンジ「ミサトちゃん!」


ミサト「ッア……!」

飛来した槍が初号機の喉元に止まる

798 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:13:02.21 KdkUNOgoo 774/814

キール「遂に我らの願いが始まる」

ゼーレ 04「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に還った」

ゼーレ 02「葛城の娘を乗せたままだが」

キール「神が時を選んだのだ」

ゼーレ 03「方舟の行き先は決まっている」

ゼーレ 09「いささか数が足りぬが、やむを得まい」

ゼーレ(全員)「エヴァシリーズを本来の姿に」


全員「我ら人類に福音をもたらす真の姿に」

全員「等しき死と祈りを以て、人々を真の姿に」

キール「それは魂の安らぎでもある」


キール「では、儀式を始めよう」

799 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:14:06.52 KdkUNOgoo 775/814

エヴァシリーズが初号機を空へと運ぶ

トウジ「エヴァ初号機が拘引されていく…!」

ケンスケ「高度12000!更に上昇中!」


カヲル「ゼーレめ、初号機を依り代とするつもりか…」


ミサト「…………!」


キール「エヴァ初号機に聖痕が刻まれた」

ゼーレ(全員)「今こそ中心の樹の復活を」


キール「我らが僕、エヴァシリーズは皆この時の為に」

光を放つエヴァシリーズ

ケンスケ「エヴァシリーズ、S2機関を開放!」

トウジ「次元測定値が反転、-を示しとる!…観測不能!数値化できん!」

カヲル「…アンチA.T.フィールドか…」

空に図象が浮かび上がる

ヒカリ「全ての現象が15年前と酷似している…じゃあこれってやっぱり、サードインパクトの前兆なの…!?」

800 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:15:14.86 KdkUNOgoo 776/814

隊員「S2機関、臨界!」

隊員「これ以上は、もう…」


戦闘団長「作戦は、失敗だったな…」


辺り一帯が赤く染まる。爆発。


ケンスケ「直撃です!地上堆積層が融解!」

トウジ「第2波が本部周辺を掘削中……外郭部が露呈していく…!」

カヲル「まだ物理的な衝撃波だ。アブソーバーを最大にすれば耐えられる!」




ゼーレ 08「悠久の時を示す」

ゼーレ 09「赤き土の禊を以て」

ゼーレ 11「まずはジオフロントを」

キール「真の姿に」




カヲル「……人類の、生命の源たるリリスの卵…黒き月…今更、その殻の中へと還る事は望まない……」

カヲル「だが、それも…リリス次第か…」

801 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:17:02.21 KdkUNOgoo 777/814

遠くで響く爆音。


レイ「終わらせると言うの?この世界を…」

リツコ「……そうじゃない」

リツコ「……手に」


リツコ「触れたいと思ったの」

リツコ「だから掴みにいく」


レイ「そんな……!」


リツコ「さよなら……母さん」

レイ「…、……!」


レイ「リ……!」

802 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:18:02.22 KdkUNOgoo 778/814

ケンスケ「ターミナルドグマより正体不明の高エネルギー体が急速接近中!」

トウジ「A.T.フィールドを確認!分析パターン青!」

ヒカリ「まさか、使徒!?」

トウジ「いや、違う…人! 人間…!」


上昇していくリリス。ネルフメンバーの目の前を通り過ぎていく


地中から現れる白い手。

ヒカリ「ひっ…!」


(ヒカリの悲鳴)

803 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:19:02.44 KdkUNOgoo 779/814

ミサト「なんなの、これ…」



ミサト「どうなったの…!加持くんは、みんなは…!」

ミサト「はっ」


巨大化したリリス。

ミサト「リツコ…!」


マリ「知らない子だも~ん」

ミサト「マリ……!?」

マリ「………」

ミサト「いや…!」

マリ「…」

ミサト「嫌…っ!」

804 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:20:03.32 KdkUNOgoo 780/814

ケンスケ「エヴァシリーズのA.T.フィールドが共鳴!」

トウジ「さらに、増幅しています!」

カヲル「…赤木リツコと同化を始めたか」


(ミサトの悲鳴)


ケンスケ「心理グラフ、シグナルダウン!」

トウジ「デストルドーが形而化されていく…!」

カヲル「…これ以上はパイロットの自我が持たない…」



ゼーレ「エヴァンゲリオン初号機パイロットの欠けた自我をもって人々の補完を」

キール「三度の報いの時が、今」

805 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:22:01.69 KdkUNOgoo 781/814

ミサト(はっ)


ミサト(ここは、どこ)


ミサト(私はどうなったの…)



マリ「こーっちだよーっ」

ミサト(…あれ。私……)

リツコ「こっちよ」

ミサト「あ…」

加持「遅れるぞ?」

806 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:23:01.54 KdkUNOgoo 782/814

ケンスケ「ソレノイドグラフ反転!自我境界が弱体化していきます!」

ケンスケ「A.T.フィールドもパターンレッドへ!」


コアに槍が刺さり、初号機との同化が始まる


カヲル「使徒の持つ生命の実と、人の持つ知恵の実。その両方を手に入れたエヴァ初号機は神に等しき存在となった…」

カヲル「そして今や生命の胎芽たる生命の樹へと還元している。この先にサードインパクトの無から人を救う方舟となるのか…人を滅ぼす悪魔となるのか」

カヲル「未来は子どもらの手に委ねられた……」


ヒカリ「ねえ!私たち、正しいわよね?」

ケンスケ「分かるもんか」


生命の樹となる初号機。

807 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:24:01.93 KdkUNOgoo 783/814

ミサト(ここはどこ、)

ミサト(私は…?)


ミサト(なんだろう…とても、重い…)


リツコ(それは私たちが負った柵)

リツコ(託された望みなのよ)




マリ(重いなら、捨てれば?)

リツコ(とても重い)

ミサト(だけど、必要……)

808 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:25:01.74 KdkUNOgoo 784/814

ミサト「リツコ?」

リツコ「はっ」

ミサト「リツコ……どうしたのよ、早く乗っちゃいましょ」

アナウンス「列車が発車します 黄色い線の内側までお下がりください」

リツコ「私は……」


(リツコ「代わりはいる…」)

(リツコ「もう気づいて泣く人もいないわ…」)


リツコ「……なぜ戻ってきたの」



リツコ「ミサト…」

809 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:26:01.52 KdkUNOgoo 785/814

ミサト「さ~ねん」

ミサト「忘れちゃったわ」

ミサト「…きっと、そうしたかったから。」


リツコ「自分勝手ね」

ミサト「自分を殺しているよりかはいいわ」


ミサト「……」


リツコ「……私にはできない」


リツコ「私は捨てても平気」

リツコ「でも、私の体は…」

810 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:27:01.85 KdkUNOgoo 786/814

ミサト「……」

ミサト「嫌になったら、捨てればいい」

リツコ「また欲しくなったら?」

ミサト「また拾えばいいのよ」


リツコ「……もう手が届かなかったら?」

ミサト「届く範囲で探すのよ」

リツコ「忘れられなかったら?」

ミサト「……」

811 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:28:06.81 KdkUNOgoo 787/814

(ミサト「加持くんっ」)

リツコ「あなたは怖くないの?一度関わりを持ったら…」

ミサト「手を離すのが怖い?」

リツコ「……」

ミサト「簡単よ、リツコ」

ミサト「嫌になったら、離せばいいのよ」



(リフレインする意識)



リツコ「嫌になったら…?」

(葛城「リツコ」)

(レイ「リツコちゃん」)

812 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:29:02.28 KdkUNOgoo 788/814

不幸な人を見たくないのよ

私がいないと不幸になる人


幸福が誰かの存在に依存していることが


リツコ「嫌だった、ずっと……」


ミサト「自分がかわいいのね」

リツコ「そうよ」



リツコ「私のせいにしてほしくないの。それだけ」

813 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:30:03.23 KdkUNOgoo 789/814

「それ」無しでは生きられない人の

「それ」になりたくないのよ


私で何かを埋め合わせようとしている


捨てきれない人の

捨てられないものになりたくないのよ

私なしでは可哀想になってしまう人たち

私を縛る人たち


リツコ「煩わしいのよ!」

リツコ「優しさと保身を一緒にしないで!」

リツコ「自分がどうあるかなんて、」

リツコ「そんなもののために、私を使わないでよ!」

814 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:31:02.22 KdkUNOgoo 790/814

トウジ「パイロットの反応が限りなく0に近づいていく…!」

ケンスケ「エヴァシリーズ及びジオフロント、E層を通過。なおも上昇中」


アナウンス「現在、高度、22万キロ。F層に突入」


トウジ「エヴァシリーズ全機健在!」

ケンスケ「リリスよりのアンチA.T.フィールドさらに拡大、物質化されます」


巨大化したリリスがジオフロントを抱く


トウジ「アンチA.T.フィールド臨界点を突破!」

ケンスケ「駄目です!このままでは固体生命の形が維持できません!」

リリスが羽を広げる

カヲル「…ガフの部屋が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか…」

815 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:32:02.15 KdkUNOgoo 791/814

リツコ「愛しさが私を満たしていく…空しさが私を埋めていく……そうか…心地よかったのね、私…」

リツコ「誰かの心に蓋をするのが…」



ネルフメンバーの周囲に現れるリツコ(リリス)


カヲル「……シンジくん…」

カヲル「すまない。僕は…」

カヲル「あの時彼女をとめるべきだった…。彼女にその覚悟があっても、君にはないと…分かっていたはずなのに…彼女をとめられなかった」

微笑むシンジ(リリス)


カヲル「シンジくん、君は…」

カヲル「幸せになれたのかい」


融ける

816 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:33:13.09 KdkUNOgoo 792/814

トウジ「あ、あぁ…!」

ヒカリ(リリス)がトウジにキスをする

融ける


ケンスケ「ひ、ひぃ……っ!」

大量のリツコ(リリス)がケンスケに迫る

融ける


ヒカリ「…A.T.フィールドが、みんなのA.T.フィールドが消えていく。これが答えなの。私が求めていた……はっ!」

トウジ(リリス)がヒカリを抱き締める


ヒカリ「鈴原……私、わたし……っ!」


融ける

817 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:34:06.95 KdkUNOgoo 793/814

レイ「碇くん……?」

微笑むシンジ(リリス)

レイ「いいえ。私の中のあなたなのね…こんなときまで」


レイ「私も嘘つきね…」


手を握る

融ける



アスカとシンジ

シンジ「アスカ……!」

シンジ「……僕たち、これで良かったよね…?」




キール「始まりと終わりは同じところにある。良い。全てはこれで良い」

818 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:36:01.90 KdkUNOgoo 794/814

葛城とその妻


「……君か」

「ようやく会えたな…」

「……」

「…会わせる顔も、ないが…」



「…バカね」

「あなたはよくやったわよ…」

「分かるわ…」

「ずっと、側にいたんだもの…」

819 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:37:01.98 KdkUNOgoo 795/814

「これが…」

「生命の理に背いた…報いか」



「ええ…でも、これで終わりじゃない」

「あなたと私の子どもが、私たちの分まで未来を紡いでくれる」



「……」

「本来なら…私が望むはずだった…人との共存を」

「だが、私は逃げてばかりだった…君からも、仲間からも」

「結果…巻き込むまいとして遠ざけた我が子に、全てを託す形となってしまった」

「……」

820 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:38:02.07 KdkUNOgoo 796/814

「私に望みはない」

「今際の際に、何を望むか分からない。私の幸せの道は過去にしかない」


「信じている……」

「あの子らの、望む力を」



「……」

「ええ…」

821 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:39:01.97 KdkUNOgoo 797/814

自らのコアを貫くエヴァシリーズ

光の群れがリリスの手に向かう

リリスの額に生じた亀裂

初号機が取り込まれていく


(シンジ「…買い換えどきかな……」)


リツコ「大切なものは二度と帰ってこない」

大切なものが何もないから、どこででも生きていけると思った

(本当に?)

疲れるの、人を好きになるのって。

構ってもらえないと悲しいから

失うと心が欠けるから

だからもう一人になって、

一人のままで生きようと思ったのよ



ミサト「馬っ鹿ねぇ」

ミサト「そんなこと考えてたの?」

822 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:40:01.59 KdkUNOgoo 798/814

マリ「だからなるだけ遠ざけて?」

加持「そう。縁のない場所に自分を追いやる」

マリ「自分がかわいーんだ」

加持「悪いか?」

マリ「いんやー。自然なことじゃない?」

マリ「誰だって自分が一番かわいいでしょ」

(リフレイン)

リツコ「…心が、落ち着かないのよ」

弱い人間が傷ついているのを見ると

脆い人間が俯いているのを見ると

健常で、笑っている人だけを見ていたいのよ

それは人間の一面にすぎない

私は人間が苦手なのよ

ひどく憂鬱になるの、見てると…

823 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:41:01.83 KdkUNOgoo 799/814

加持「これ以上誰かに自分の存在を脅かされたくないんだ」

べき、べきじゃないの姿をこれ以上増やしたくない

俺は天の邪鬼だからな

愛せない存在を、わざわざ生むことはない

傷つけると分かっていて関わるのは暴力だ

溺愛したって、それが相手の重荷にならないとも言えないんだ



ミサト「意地でも幸せになって、そうなるために生まれてきたことにするのよ」



加持「意味なんてないさ。ただ欲しいものを欲すだけ…」

リツコ「そうすれば…」


リツコ「私は幸せになれるの?」

ミサト「あなたが望むのよ」

加持「きみが望めばね」

824 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:43:03.35 KdkUNOgoo 800/814

電車が揺れている


リツコ「……」

ミサト「…ね、この戦いが終わったらさ、みんなで旅行しない?」

リツコ「旅行?」

ミサト「そ。青葉くんとかマヤちゃんとか、ほかのみんなも誘ってさ」

リツコ「……」


ミサト「お金はネ、なんとかなるわよ。なんたって私たち、世界を救うスーパーチルドレンなんだから」

リツコ「……」

ミサト「ね!」

リツコ「……温泉」

ミサト「ん?」

リツコ「温泉、私はあのとき一緒じゃなかったから」

ミサト「…それじゃあ、決まりね」

825 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:44:02.30 KdkUNOgoo 801/814

リツコ「……」

リツコ「欲しいものは、別にいい。私はいらないものの話がしたいの」

リツコ「捨て方が分からないのよ」

ミサト「……手を離せばいいんじゃないの?」

リツコ「繋がれていたら?向こうが離さなかったらどうするの?」

ミサト「どっかに逃げ込むことね…今は無理でも。大人になれば…」


電車が止まる



ミサト「でも、寂しいわね。解放されることでしか幸せを得られないなんて」

リツコ「そうね。でも」

リツコ「私にはそれが一歩なの」

826 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:45:19.21 KdkUNOgoo 802/814

ミサト「……リツコ」


ミサト「…行きましょう、一緒に」

手をのべるミサト

リツコ「……、」


リツコ「……そう、手を…。」

ミサト「……」


リツコ「あの時はじめて…」


(ミサト「馬鹿…!」)

(加持「すまない…また」)


リツコ「…引き留めたいと思った」

827 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:47:01.56 KdkUNOgoo 803/814

ミサト「それでいいのよリツコ」

ミサト「掴みたいときに掴んで、嫌になったら離せばいいのよ」


リツコ「我儘ね…」


ミサト「我儘でいい」

ミサト「我儘でいてほしいと思うときがあるのよ」


リツコ「それは少し……分かる気がする」

リツコ「私に自由を望む人たち」

リツコ「私を愛する人たち…」


血を噴き出すリリス

828 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:49:01.80 KdkUNOgoo 804/814

(水滴が落ちる音)

あたりが真っ白になっている

リツコ(……)



リツコ「他人の存在を今一度願えば、再び心の壁が全ての人々を引き離すわ。また、他人の恐怖が始まるのよ」

ミサト「分かってる。……それでいいのよ」


ミサト「私はきっと逃げ出しても良かった……でも、逃げたところにも良いことはなかった。だって私がいないもの。誰もいないのと、同じだもの」

829 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:50:01.24 KdkUNOgoo 805/814

マリ「再びA.T.フィールドが君や他人を傷付けても良いの?」

ミサト「構わない。でも、私の心の中にいるあなたたちは何?」

リツコ「可能性なのよ。分かり合えるのか、諦めるのか……どちらにも伸びる道のひとつなの」

マリ「過去の痼。分かり合えないという形の」


ミサト「…でもそれは見せ掛けのもの。自分勝手な思い込み。希望だってそう。ずっと続くはずない……」


ミサト「後悔と自己嫌悪の繰り返し。でも…その度に、前に進めた気がするから…」



ミサト「もう一度望むわ。会いたいと。」

ミサト「……たとえ分かり合えなくても」

ミサト「それを確かめに行く」


倒れるリリス

人々の魂が解放されていく

830 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:52:02.28 KdkUNOgoo 806/814

マリ「現実は知らないところに。夢は現実の中に」

リツコ「そして、真実は心の中にある」

マリ「人の心が自分自身の形を作り出しているからね」

リツコ「そして新たなイメージがその人の心も体も変えていくわ。イメージが、想像する力が、自分たちの未来を、時の流れを作り出しているもの」

マリ「ただ人は、自分自身の意思で動かなければ何も変わらない」

リツコ「だから、見失った自分は自分の力で取り戻すのよ。たとえ自分の言葉を失っても、他人の言葉に取り込まれても」

槍が消滅する

リツコ「……自らの心で自分自身をイメージできれば、誰もが人の形に戻れるわ」

831 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:54:02.08 KdkUNOgoo 807/814

父と母

「…生きろ」

「生きなさい」



ミサトとシンジ

「生態系が戻ってる?」

「うん…少しずつだけど。本当は、夏だけじゃなくて…四季があったんだけどね」

「冬、とか?」

「そう。ミサトちゃんは雪って知ってる?」

「ええ、見たことは、ないですけど」

「…見せてあげたいな。本当に綺麗なんだ、秋も、春も…」

832 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/07 23:55:01.67 KdkUNOgoo 808/814

ミサトとリツコ


ミサトがリツコを抱き締めている

ミサト「…大丈夫」

リツコ「……」

ミサト「そう…」

ミサト「もういいのね」


リツコ「ええ」




「……待ってる」

「また、あなたが」

「あなたたちが……還ってくるのを」

833 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/08 00:00:02.12 DuEu8EUlo 809/814

○○年。居酒屋


一同「ハッピバースデェーイディーア」

一同「ミサト~~~~」

一同「ヒューヒュー」



加持「……あっちの席やけに賑やかだな」

「誕生会だろォ。加持オイ!俺の話聞いてるかァ?」

加持「飲みすぎだぞ、お前…」

834 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/08 00:01:01.96 DuEu8EUlo 810/814

一同「ハッピバースデェートゥーユー!」

一同「イエーッ」

ミサト「ふーっ、ちょっち、休憩…っと」

加持「…いいのかい?主役がいなくなって」

ミサト「いーのいーの、みんな騒ぎたいだけなんだから!」

ミサト「……あれ、あなた…どっかで会ったことある?」

加持「……あったら、忘れたりしないさ。こんな美人のこと」

ミサト「ブーッ、ちょっともぉ、やめてよ!」

「おいっ、リョウジずりーぞ!」

ミサト「キザーッ!」

ミサト「……ねぇっ、一緒に呑みましょーよ!」

「呑もう呑もう!」

加持「……はは」

ミサト「ったくもー!あいつまだ来てないのォ?!」

ミサト「んっとに仕事の虫ね~」

835 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/08 00:02:02.19 DuEu8EUlo 811/814

一同「カンパ~イ」

ミサト「プッッッ……」

ミサト「…………ハァァァ~~~~~!」

「ミサトォ!」

「ペース早すぎだよ」

ミサト「こォの一杯のために生きてるようなもんよねェ~」

加持「……この一杯のために生きてる、か」

ミサト「そォよお?ヤ~なことがあったって、楽しいことがあれば明日も頑張れる!」

ミサト「でしょ?」


加持(……!)

836 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/08 00:03:01.95 DuEu8EUlo 812/814

「ま~たミサトォ!」

「知らない子にお酒あげてるー」

ミサト「いいじゃないのよォ!今日くらい」

ミサト「サービスサービス♪」トクトクトク…

加持「……はは」

加持「頂くよ」

ミサト「そーぉこなくっちゃ!」

加持「………」

837 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/08 00:04:01.74 DuEu8EUlo 813/814

「葛城さん…ッ、俺と…!」

「おーっとぉ!これは3度目のォー?!」

「……ごめんッ!」

「ダメだったァーッ」

「ギャハハ」





一同「カンパ~~~~イ」

加持「……、…」


加持「頑張ろう……明日も」





THE END

838 : ◆gcWj88zLkc - 2020/12/08 00:05:22.38 DuEu8EUlo 814/814

以上です

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