令嬢「これがどういうことか……お分かりね?」
男「はい……分かります」
男(令嬢さんの父さんがやってる会社から注文が来なくなったら、ウチの工場は終わりだ……)
男(だから、なにを命じられても逆らえない……!)
令嬢「じゃあさっそくだけど……」
男(何をさせられるんだ……!?)
令嬢「舐めなさい」
男(靴を舐めさせるつもりか……!?)
令嬢「このアイスを」
男「え?」
元スレ
令嬢「私がお父様に頼めば、あなたの家の町工場なんていつでも潰せるのよ」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1607514669/
男「アイス……ですか?」
令嬢「そうよ」
令嬢「私一人でアイス舐めるなんて恥ずかしいでしょう? だから一緒に舐めなさい」
男「わ、分かりました」
男(どういうつもりだ……!?)ペロペロ
令嬢「どぉう? おいしい?」
男「は、はいっ! おいしいです!」
男(しかし……)
令嬢「……」チラッチラッ
男(やたらこっちを見てくるな……おかげでアイスに集中できない)
男(もしかして、俺のも食べたいとか? それはないと思うけど一応……)
男「よかったら……俺のも舐めます?」
令嬢「なにいってるの! そんな食べかけのアイスなんているものですか! 無礼者ッ!」
男「わわっ、すいませんすいません!」
男(ミスってしまった……)
令嬢「ふぅ……」
執事「お嬢様、『一緒にアイスを食べる』という目標をクリアなさいましたね。おめでとうございます」
令嬢「ええ、ありがとう」
令嬢「だけど……」
男『よかったら……俺のも舐めます?』
令嬢「なんでもらわなかったの!? 私のバカ!」
令嬢「もらって最高級冷凍庫に保存すれば、間接キスし放題だったのに~! バカバカバカ!」
執事「ミスりましたね、お嬢様」
学校の昼休み――
男(昼ご飯はいつも菓子パン一つ)
男(わびしいけど……仕方ないよな)
令嬢「またお会いしましたわね」
男「令嬢さん!」
令嬢「そのパン……私によこしなさい」
男「えっ、でもこれは……」
令嬢「私がその気になれば、町工場の命運は尽きるのよ?」
男「うぐ……」
男「どうぞ……」
令嬢「ありがとう。たまにはこういうのを食べたかったの」モグモグ
男(今日は昼ご飯無しか……)
令嬢「しかし、庶民に恵んでもらうだけでは、私のメンツが潰れてしまいますわね」
令嬢「物々交換として、このお弁当を差し上げますわ」
男「弁当……?」
男(まさか、とんでもない物がいっぱい入った弁当なんじゃ……)
男「……!」
男(綺麗に炊かれたご飯、色とりどりの野菜、ジューシィなお肉、ふわりとした卵焼き……)
男「これもらっちゃっていいんですか!?」
令嬢「ええ、私の食べかけですけど」
男(手をつけた感じには見えないけど、こういうの食べ飽きちゃったのかな)
令嬢「あさましくブタのように食べなさいな」
男「ブタ……!? 分かりました、手を使わず食べます!」
令嬢「え、ちょっと待って! 手は使ってよろしいですわ」
男「あ、はい。じゃあ手で食べ……」
令嬢「箸も使っていいです!」
男「は、はいっ!」
男「おいしかった……」
令嬢「ほ、本当?」
男「ええ、本当です」
令嬢「よかったら、毎日差し上げてもよろしいですわよ」
男「いいんですか!?」
男「でも、こんなおいしい弁当を……」
令嬢「気にしないで。私にとっては、残飯を処理してもらうようなものですから」
男「分かりました。それじゃ遠慮なく」
次の日の朝――
令嬢「ふんふ~ん」
執事「お嬢様、お早いですね」
令嬢「だって、やっと昨日、彼に私の手作り弁当をあげられたんだもの!」
令嬢「しかも、これから毎日食べてくれるって! はりきって作らなきゃ!」
執事「またも目標クリアーですね。おめでとうございます」
令嬢「ありがとう、頑張る! よーし、今日はウインナーをタコさんに……」
執事(しかし、作りすぎなような……)
男(本当に今日もお弁当を持ってきてくれるのかな……?)
令嬢「お待たせしました」
男「重箱!?」
令嬢「さあ、お食べになって」
男「は、はい」
モグモグ…
令嬢「おいしい?」
男「お、おいしいです……」
男(おいしいけど、この量はキツイ……!)
男(やっぱり、令嬢さんは俺を責めてるつもりなんだろうか……)
男「ごちそうさまでした……」ゲップ…
令嬢「あらあら、全部食べちゃって。食欲旺盛なブタさんだこと」
令嬢(明らかに作りすぎてたのに全部食べてくれた……! 嬉しい……!)
令嬢「それじゃ私はこれで」タタタッ…
男「うぇっぷ……」
執事「……大丈夫ですか?」スッ
男「あなたは……?」
執事「お嬢様の執事です。これをどうぞ。よく効く胃薬です」
男「ありがとうございます……」
執事(それと、お嬢様には量を減らすよういっておくのでご安心を)
放課後――
―町工場―
父「おーい、これ削っておいてくれ!」
男「はーい!」
ギュイィィィィィン…
従業員「へへへ、だいぶ腕上げたねえ」
男「うん、将来はこの工場を背負って立つんだもの!」
従業員「頑張りなよ!」
男「ふぅ、今日も疲れたぁ……」
男「学業と工場の二足のわらじは大変だ……。だけど、早く一人前になりたいし……」
男「……ん?」
令嬢「あら、またお会いしましたわね」
男(何しに来たんだ……!?)
令嬢「この液体をお飲みなさい」
男「は、はい」
男(たとえ下剤が入ってても、俺には逆らえない……!)
男「飲みます!」グビグビ
男「ん!?」
男「おいしい……これはスポーツドリンク!?」
令嬢(それも私特製のね)
令嬢(工場で作業するこの方の姿……素敵だったわ……)
男「ありがとう、力が湧いてくるようですよ!」
男(もしかして、令嬢さんは俺を助けてくれてるのか……?)
令嬢「さて、命令よ」
男「は、はいっ!」
令嬢「そこにうつ伏せになって、私にあなたを踏ませなさい」
男「ええっ!?」
男(違った……! やっぱり俺を責めたいだけなんだ……!)
令嬢「さあ、早く!」
男「わ、分かりました……」
令嬢「じゃあ踏みますわよ」
男(女の子に踏まれるなんて、情けなすぎる……)
令嬢「ほれっ、ほれっ」ギュッギュッ
男「あっ!? うっ!?」
男(気持ちいい……! なんていう気持ちよさだ!)
男(多分令嬢さんは俺を責めてるつもりなんだろうけど、メチャクチャ気持ちいい……!)
男(極楽だぁ~……)
令嬢「ふふふ、どぉう? 女に踏まれる気分は?」ギュッギュッ
男「う、ううう……!」
令嬢「あまりの屈辱に声も出ないようね」ギュッギュッ
男(最高です……! どんどん体力が回復してくようだ……!)
執事(お嬢様はその眼力で、男さんのツボを的確に見極め)
執事(さらに自身の体重を、絶妙な踏みつけができるように調整なされた……)
執事(なんという涙ぐましい努力……!)
ある日――
ギュルルルルルル…
ザクッ!
父「ぐあっ!」
男「親父、どうした!?」
従業員「おやっさん!」
父「ぐうう……! 腕をざっくりやっちまった……! 俺としたことが……!」
男「ひどい出血だ!」
従業員「救急車呼んでくる!」
バババババババ…
男「ん? なんだこの音?」
バババババババ… キュンキュンキュン…
男「ヘリコプター!?」
令嬢「またお会いしましたわね」
男「令嬢さん!」
令嬢「あなたのお父上が怪我をなされたんでしょう? すぐヘリに乗せてちょうだい!」
男「なんですって!?」
男「ヘリで親父を運んでくれるんですか?」
令嬢「というより、ヘリの中で治療しちゃいますの」
令嬢「ねえ? 治せるでしょ?」
名医「死んでなきゃ治せます」
父「う、ううう……」
名医「ふむふむ、私にとってはかすり傷ですな」
男「……」
令嬢「どうなさったの?」
男「せっかく来てくれたのは嬉しいけど……」
男「理由もないのに、ヘリで輸送してもらったり、名医さんに治療してもらったりなんてできないよ……」
男「お弁当やドリンクぐらいならともかく、ここまでしてもらっちゃ……」
パシッ!
男「!」
令嬢「なにをおっしゃってるの? あなたは工場の後継者失格よ!」
男「え……」
令嬢「あなたのお父様の治療が遅れれば、確実にこの町工場の仕事も遅延する」
令嬢「そうなれば、工場の評判はガタ落ち。顧客離れも出てしまうでしょう」
令嬢「それなのに、下らないプライドで最善の選択を逃すというの?」
令嬢「あなたが真の後継者であれば、迷わずお父上をヘリに乗せるはずですわ!」
男「……!」
男「その通りだ……! すぐ親父を治療して下さい!」
名医「ラジャー」ニコッ
令嬢「……」ズーン
執事「どうしました?」
令嬢「私……彼を叩いちゃったの」
執事「はぁ」
令嬢「もう終わりよ~! 嫌われて、二度と会ってもらえない……!」
執事「大丈夫ですって」
……
令嬢「はい、今日もお弁当をあげるわ」
男「ありがとうございます!」
男「ところで前々から思ってたんですけど……」
令嬢「なにかしら?(もしかして、実はあまり美味しくないとか……?)」
男「このお弁当、令嬢さんが作ってません?」
令嬢「!? な、なぜそのようなことをおっしゃるの……?」
男「この温かいほっとする味が、どことなく令嬢さんを思わせるから……」
令嬢「な……!」
令嬢「違います、違います、違います!」
男「ご、ごめんなさい!」
令嬢「私、失礼します!」タタタッ…
男「俺の推理、当たってると思ってたけど、外れてたかぁ……」
執事「……」
令嬢「ああっ……どうしましょ!」
令嬢「あんなこといわれたら、もう恥ずかしいやら、嬉しいやらで……」ドキドキドキドキドキ…
執事「お嬢様」
令嬢「あら執事、どうしたの?」
執事「いい加減、ご自分の気持ちを伝えたらいかがです?」
令嬢「! なにをいってるの! ダメに決まってるでしょ!」
令嬢「そんなことして断られたら、私は一生立ち直れない……」
令嬢「私はこのままでいいの……。彼はいつか町工場の後継者として優しい奥さんを見つけるでしょう」
令嬢「その時まで、このままで……」
執事「なるほど、お嬢様の考えを尊重いたします」
令嬢「分かってくれて嬉しいわ、執事」
執事「話は変わるのですが、明日一日休暇を頂けませんか?」
令嬢「休暇を?」
執事「ええ、たまには骨休めしようと思いまして」
令嬢「もちろん、かまわないわよ。ゆっくり休んでらして」
執事「ありがとうございます」
次の日――
令嬢「ああ、どうしましょ」
令嬢「今日はまともに彼の顔を見られるかしら」
令嬢「あ」
男「あ、令嬢さん!」
男「昨日はごめんなさい! 変なこといって!」
令嬢「い、いえ……」プイッ
男(やっぱり怒ってるのかな……?)
令嬢(ああもう……心臓がドラム演奏状態!)ドキドキドキドキドキ…
令嬢「あ、あの私……今日は失礼します!」
男「う、うん」
男(行っちゃった……。追いかけるのは……やめた方がいいよな)
キャーッ!
男「なんだ!?」
不審者「ぐへへへへ……」
令嬢「な、なにをするの!?」
不審者「お前は竜宮グループ総帥の娘だろ? 誘拐して身代金を頂くのよ!」
令嬢「嫌ッ! はなして!」
男(大変だ!)
男「やめろーっ!!!」
不審者「なんだお前は? 怪我したくなきゃ、引っ込んでな!」
男「そうはいかない!」
不審者「お前も知ってるぞ? たしか町工場の息子だったな」
男「な……!」
不審者「ははーん……読めたぞ。お前が助けにきたわけが」
不審者「ここでこの女に恩を売っておけば、今後仕事に困ることはないもんな!」
不審者「とんだ打算ヒーローってわけだ!」
令嬢「逃げて……! 私は大丈夫だから……!」
不審者「うるさい! 静かにしろ!」
男「うおおおおおおっ!」ブンッ
不審者「わっ!」サッ
不審者「あぶねえ……! ふん、そんなにヒーローになりたいか! 工場が大事か!」
男「今は工場なんかどうだっていいよ……」
男「俺はその子が好きだから助けるんだよ! 文句あるかァ!」
男「うわああああああっ!」ブンッ
不審者「このっ!」バシッ!
男「ぐうっ……!」
令嬢「ああっ……!」
不審者「くそっ、まさかここまで手こずるとは思わなかった……」
不審者「今日のところはこれで引き上げ――」
令嬢「よくもぉ!」ガブッ!
不審者「ギャッ!」
不審者「いたたたた……! もう誘拐なんかやめだァ~!」タタタッ…
令嬢「ふん、手に噛みついてやりましたわ」
男「……」ホッ
令嬢「お怪我はありませんこと?」
男「うん、はたかれただけだし。それより令嬢さんが助かってよかった……」
令嬢「ところで……」
男「?」
令嬢「さっき私のこと好きって……」
男「あ、いや、それは……」
令嬢「私も好きです。大好き」
男「え……!」
令嬢「これからも、今までのようにお弁当を作ります。大好きなあなたのために」
令嬢「よろしいかしら?」
男「は、はいっ!」
……
令嬢「今日のお弁当です」
男「ありがとうございます」
令嬢「あっ、だけどたまには……」
男「?」
令嬢「あーんっていうのをやってみたいのだけど……よろしくて?」
男「……!」
男「いいですよ」
令嬢「敬語はやめて下さる?」
男「い、いいよ」
令嬢「じゃ、あーん」
男「あーん」パクッ
男「うん、おいしい! 令嬢さんのお弁当は最高だ!」
執事「お二人とも、すっかり仲良くなられましたね」
令嬢「ええ、あなたがお休みしてる間にね」
男「変な奴が現れて、本当に危なかったんですよ」
令嬢「あら、執事? 右手に包帯を巻いてるけどどうなさったの?」
執事「ああ、これですか……。久しぶりの休みにちょっとはしゃぎすぎましてね」
おわり

