1 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 17:40:50.20 Jcy+BlCp0 1/55

ロボ「君のパパを殺したい」

少女「…なに言ってるの??」

ロボ「君は、パパのせいで傷ついている。そうだろう??」

少女「…」

ロボ「だから、なぜかそう思ったんだ」

ロボ「僕が君を守るから」




元スレ
ロボット「君のパパを殺したい」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1261471250/

4 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 17:44:40.57 Jcy+BlCp0 2/55

少女「パパを殺すだなんて」

ロボ「…」

少女「そんな怖いこと、思いつかないで」

ロボ「ごめん」

少女「それに、ロボットは人を傷つけることはできないはずよ」

ロボ「そうらしいね」

少女「…パパの持っている本で読んだわ」



7 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 17:48:18.87 Jcy+BlCp0 3/55

ロボ「僕は本当に人を傷つけられないのかな」

少女「そうだと思うわ」

ロボ「パパで試してみようか」

少女「やめて」

ロボ「…冗談だよ」

少女「…あなた、冗談が言えるのね」

ロボ「そうらしいね」



8 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 17:51:39.50 Jcy+BlCp0 4/55

ロボ「パパが帰ってくるのは何時くらいかな」

少女「あなた、本気で…??」

ロボ「違うよ、聞いてみただけさ」

少女「さあ、今日はまだ帰らないんじゃないかしら」

ロボ「いつも思ってるんだけど、それ、良い時計だね」

少女「ありがとう、パパに買ってもらった宝物なのよ」

ロボ「大切にしてるんだ」

少女「ええ、とっても」

ロボ「いつもつけてるもんね」



9 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 17:55:10.85 Jcy+BlCp0 5/55

少女「ねえ、わたし、傷ついているように見える??」

少女「悲しそうな顔をしてるの??」

ロボ「さあね。ただ、楽しくなさそうな顔には見えるよ」

少女「そうかしら」

ロボ「パパが君にもっと構ってくれたら、君は笑ってくれるの??」

少女「…そんなこと言わないで」

ロボ「だって、そうなんだろう??」



10 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 17:59:02.62 Jcy+BlCp0 6/55

少女「ママが死んでから、パパはわたしにあまり構ってくれなくなったわ」

ロボ「振り向いて欲しいんだ」

少女「そうよ。別にパパが悪いんじゃないわ」

ロボ「…」

少女「もちろんママが悪いのでもなかったわ」

ロボ「…」

少女「悪いのはいつも、わたしだったわ」

ロボ「ねえ、パパがいなくなれば、君は悲しまなくてすむじゃないか」

少女「…言ってる意味がわからないわ」

ロボ「そうかな」



11 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:03:47.97 Jcy+BlCp0 7/55

ロボ「虫歯が痛くて楽しくないのなら、治療すればいい」

ロボ「林檎が腐ったのなら、捨ててしまえばいい」

ロボ「心配事があるのなら、忘れてしまえばいい」

少女「…そうね」

ロボ「だから、パパがいなくなれば君も悲しむ必要がなくなる」

少女「…」

少女「難しいことはわからないわ」



13 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:23:04.05 Jcy+BlCp0 8/55

少女「それにパパは好きよ。死んでほしくないわ」

ロボ「それなら、君がパパのもとから離れてしまえばいい」

少女「離れ離れもいやよ」

ロボ「僕が君を連れて逃げるから」

少女「いやだったら」

ロボ「第一、君のパパは遊び歩くばかりで君のために何もしないじゃないか」

少女「…そうね」

少女「でも、パパはあなたにとってもパパじゃないの」

ロボ「それは、僕を作ったという意味でかい??」

少女「…」コクン



16 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:26:54.52 Jcy+BlCp0 9/55

ロボ「本当に彼に僕が作れたとは思えないんだ」

少女「どうして」

ロボ「彼は本当に科学者なのかい??」

少女「そうよ。えらい科学者なのよ」

ロボ「ならどうして、それらしいことをしていないんだい」

ロボ「僕に油をさすのも、君の役目じゃないか」

少女「パパが、お前がやりなさいって」

ロボ「故障したとき、そばに付いていてくれるのもいつも君だ」

少女「…パパが、お前がやりなさいって」



18 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:31:02.10 Jcy+BlCp0 10/55

少女「パパは忙しいのよ」

ロボ「そんなはずはない」

少女「わたしにはわからない、お仕事をしてるのよ、きっと」

ロボ「君は甘いよ。僕が言うのもなんだけれど」

少女「そうね。まだ子どもだわ」

ロボ「僕もまだ生まれて間もないけれどね」

少女「とにかく、子どもにはわからない、オトナノジジョウがあるのよ」

ロボ「…ねえ」

少女「ん??」



22 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:38:34.45 Jcy+BlCp0 11/55

ロボ「パパは、なぜ君のことを可愛がらないの」

少女「…」

ロボ「大切な、一人娘だろうに」

少女「…」

ロボ「理由があるのかな」

少女「そうね」

ロボ「ごめん、こんな話、いやだよね」



25 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:42:37.39 Jcy+BlCp0 12/55

少女「パパはね…」

少女「息子が欲しかったのよ」

ロボ「そうか」

少女「一緒にキャッチボールをする、息子が欲しかったのよ」

ロボ「…そうか」

少女「一緒に野球観戦をする、息子が欲しかったのよ」

少女「一緒にくだらないジョークで笑いあえる、息子が欲しかったのよ」

ロボ「…」



26 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:46:55.69 Jcy+BlCp0 13/55

少女「それにね…」

ロボ「うん??」

少女「わたしはママを、殺してしまったのよ」

ロボ「うん??」

少女「だから、パパはわたしのことが許せないんだわ」

ロボ「…」



30 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:54:11.48 Jcy+BlCp0 14/55

ロボ「冗談かい??」

少女「本当のことよ」

ロボ「…どうして、ママは死んだの」

少女「階段から、落ちたの」

ロボ「それじゃあ事故じゃないか。君が殺したんじゃ、ないだろ」

少女「わたしが、突き落としちゃったのよ」

ロボ「わざとじゃ、ないだろ」

少女「…」

ロボ「仕方のないことだろ??」

少女「…」



31 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 18:58:55.51 Jcy+BlCp0 15/55

ロボ「気に病んじゃ、だめだよ」

少女「…ありがとう」

ロボ「そりゃあ、悲しい出来事だけど」

ロボ「パパの気持ちもわかるけれど、君は悪くない」

少女「ありがとう」

ロボ「僕は君の味方だからね」

少女「うん」



32 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:03:18.95 Jcy+BlCp0 16/55

ロボ「やっぱり、この家を出よう」

少女「どうして」

ロボ「パパから離れるべきだよ、君は」

少女「離れて、どうするの」

ロボ「二人で暮らそう。きっと楽しいよ」

少女「ありがとう」

少女「でも、だめだわ」

ロボ「どうして」



33 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:07:04.42 Jcy+BlCp0 17/55

少女「やっぱりパパを置いてはいけないわ」

ロボ「だからパパと離れるために」

少女「パパのご飯はだれが作るの??」

少女「パパの靴はだれが磨くの??」

少女「パパを朝だれが起こすの??」

ロボ「…みんな、君がいつもやっていることだね」

少女「そうよ。パパはわたしがいないと何もできないんだから」



35 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:11:14.51 Jcy+BlCp0 18/55

ロボ「僕はやっぱり、パパを恨むよ」

ロボ「君をこんなに働かせて…傷つけて…苦しめている」

少女「苦しくなんかないわ」

少女「パパの為だもの、何でもするわ」

ロボ「…」

ロボ「僕が代わりに、ならないかな」



36 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:14:38.35 Jcy+BlCp0 19/55

少女「あなたがパパの代わりに??」

ロボ「いや、君の仕事をさ、僕が代わりに」

少女「無理よ」

ロボ「そうかな」

少女「あなた、ご飯作れないじゃない」

ロボ「そうだね」

少女「それに力も強すぎるわ」

ロボ「そう作られてしまったからね」



37 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:18:39.14 Jcy+BlCp0 20/55

少女「靴を磨こうとしたら、粉々になっちゃうじゃない」

ロボ「だろうね」

少女「いつだったか、洗ったお皿を全部割ってしまったものね」

ロボ「そうだったね」

少女「でもパパは、あなたが嫌いじゃないわ」

ロボ「…」

少女「息子が欲しかったパパにとって、あなたは初めての息子だもの」



38 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:22:59.20 Jcy+BlCp0 21/55

ロボ「息子…」

少女「そうよ」

ロボ「僕が…」

ロボ「何もできないのに…」

少女「あなたは、いるだけでいいのよ」

少女「それでパパは満足なの」

少女「だから、パパを殺すとか、わたしを連れて逃げるなんて言わないで」



39 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:27:01.62 Jcy+BlCp0 22/55

ロボ「僕は、キャッチボールができないね」

少女「そうね、力が強すぎるもの」

ロボ「野球観戦は、できるかな」

少女「どっちが勝っちゃうかを言わなければ、大丈夫よ」

ロボ「一度それで怒られたしね」

少女「最後まで結果がわからないから、野球は楽しいのよ」

ロボ「でも僕には結末が分かってしまう…」

少女「つらいわね」



40 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:31:21.53 Jcy+BlCp0 23/55

少女「あなた、ジョークはわかるの??」

ロボ「ある程度、インプットされているみたいだね」

少女「なにか、言ってみて」

ロボ「…」

ロボ「Heyボブ!!昨日見た夢は最悪だったぜ!!」

ロボ「おれもさ!!君のはどんな夢だったんだい??」

ロボ「机の上に最高級のウイスキーのボトルが置いてあるんだ」

ロボ「そりゃあ最高じゃないか」

ロボ「でも飛びついてみると、底に穴が空いてたんだよ!!」

ロボ「そりゃあ最悪だ!!おれの夢と真逆だな」

ロボ「そうかい。どんな夢だい??」

ロボ「机の上に最高級の女が座ってるんだ」

ロボ「そりゃあ最高じゃないか」

ロボ「でも飛びついてみると、底に穴が空いてなかったんだよ!!」

ロボ「HAHAHA!!」



43 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:35:36.68 Jcy+BlCp0 24/55

少女「…」

ロボ「…」

少女「どういう意味??」

ロボ「え、あ、えっと…ごめん」

少女「どうして謝るの」

ロボ「ごめん」

少女「どういう意味なの??」

ロボ「勘弁してください」

少女「…イヤラシイやつなのね」



44 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:42:01.01 Jcy+BlCp0 25/55

少女「わたしにもわかりやすいのは、ないの??」

ロボ「うーん…」

ロボ「社長、良い知らせと悪い知らせがあります」

ロボ「そうか、良い知らせから教えてくれ」

ロボ「社長、あなたにはまだ子どもを作る能力があることがわかりました」

ロボ「…ごめんやっぱり今の忘れて」

少女「どういう意味??」



45 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:48:06.98 Jcy+BlCp0 26/55

ロボ「ごめん」

少女「どういう意味??」

ロボ「君が知るにはまだ早いってこと」

少女「ジョークっていうのは、そんなのしかないの??」

ロボ「うーん。あ、これなら大丈夫かな」

ロボ「社長、良い知らせと悪い知らせがあります」

ロボ「そうか」

ロボ「実は今朝、奥様が交通事故で亡くなられたようです」

ロボ「そうか!!で、悪い知らせはなんだ??」



48 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:53:20.95 Jcy+BlCp0 27/55

少女「…」

少女「笑っていいの??」

ロボ「ごめん、不謹慎だった」

少女「そうよ、フキンシンだわ」

ロボ「なにしろ量が多くて、選ぶのが大変なんだ」

少女「ジョークって、ろくなものがないのね」

ロボ「まあそういうものだしね」



49 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 19:57:59.30 Jcy+BlCp0 28/55

少女「パパはこういうので笑うのかしら」

ロボ「どうかな。僕はパパの笑う姿をあまり見たことがないから」

少女「ママが死んでから、あまり笑わなくなったわ」

ロボ「仕方無いよ」

少女「…わたしも今度、パパを笑わせてみようかしら」

少女「キャッチボールも野球観戦も苦手だけれど、ジョークなら覚えられそうね」

ロボ「でも、君にはまだ早いんじゃないかなあ」

少女「イヤラシクなくて、フキンシンでもないジョークは、ないの??」



50 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:06:55.82 Jcy+BlCp0 29/55

ロボ「うーん…」

ロボ「お嬢さん、よかったら僕と一緒にコーヒーでもどうですか??」

ロボ「ありがとう、でも遠慮しておくわ」

ロボ「誤解しないで、僕は誰にでもかまわず声をかけてるわけじゃないんだよ」

ロボ「誤解しないで、私も誰でもかまわず断ってるわけじゃないの」

少女「あはは、これならわかるわ」

ロボ「ジョークっていっても様々だからね」

ロボ「でも、僕にインプットされてるってことは、パパはもう知ってるんじゃないかな」



51 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:11:03.02 Jcy+BlCp0 30/55

少女「ロボットにインプットするジョウホウってのは、だいたい寄せ集めなのよ」

ロボ「寄せ集め??」

少女「そう、いろんな科学者がトッキョを取ってるわ」

ロボ「特許ねえ」

少女「つまり、これを買ってロボットにはめ込めば、だいたい大丈夫ですよ、ってね」

ロボ「じゃあインプット内容全部をパパが知ってるわけじゃないのか」

少女「ちょっとお金を出せば、大事なパーツも手に入る時代だものね」

少女「苦労して自分一人で作るわけじゃないのよ」

ロボ「ふーん」



52 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:15:13.60 Jcy+BlCp0 31/55

ロボ「じゃあやっぱり、パパは大した科学者じゃないんじゃないの??」

少女「そうかもしれないわね」

少女「でも、おそらくあなたは大発明よ」

ロボ「どうして」

少女「『殺意』を持っているもの」

ロボ「…」

少女「今までそんなロボット、ないんじゃないかしら」



53 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:20:10.73 Jcy+BlCp0 32/55

ロボ「ねえ、ちょっと気になったんだけど」

少女「なあに」

ロボ「パパは科学者だけど、収入はあるの??」

少女「さあ、よくわからないわ」

ロボ「この家はどうやって生活費を出しているの??」

少女「銀行に行けばお金はあるわよ」

ロボ「貯金で暮らしてるってこと??」

少女「そうよ」

ロボ「どうしてそんなお金が…」



54 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:24:25.90 Jcy+BlCp0 33/55

ロボ「昔に大発明したとか??」

少女「ちがうわ」

ロボ「実家が資産家??」

少女「ちがうわ」

ロボ「宝くじ!!」

少女「ちがうわ」

ロボ「…」

少女「もう思いつかないの??」

ロボ「…」

少女「意外と想像力がヒンコンね」



55 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:31:30.18 Jcy+BlCp0 34/55

少女「ママのセイメイホケンのお金よ」

ロボ「!!」

少女「まだいっぱい残ってるの」

ロボ「…そうか」

少女「だから一応、生活していけるのよ」

ロボ「…」

少女「どうしたの??」

ロボ「いや…」



56 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:35:06.08 Jcy+BlCp0 35/55

ロボ「ねえ、パパのことは好き??」

少女「好きよ。さっきもそう言ったじゃないの」

ロボ「じゃあママは好きだった??」

少女「…ええ」

ロボ「本当に??」

少女「好きだったわ」

ロボ「そう…」



58 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:41:46.09 Jcy+BlCp0 36/55

ロボ「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」

少女「なあに??」

ロボ「正直に答えてほしいんだけど」

少女「いいわよ」

ロボ「殺意はあった??」

少女「…」

少女「え??」

ロボ「殺意は、あった??」



59 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:46:34.54 Jcy+BlCp0 37/55

少女「言ってる意味がわからないわ」

ロボ「君がママを階段から突き落としてしまった時、殺意はあったの??」

少女「なに、それ…」

ロボ「どうかな」

少女「…なかったわよ」

ロボ「本当に??」

少女「本当よ」



60 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:50:22.19 Jcy+BlCp0 38/55

ロボ「僕には、もうおそらく全部が分かってしまった」

少女「…」

ロボ「嘘、つかなくていいよ」

少女「…」

ロボ「パパの愛が欲しくて、邪魔だと思ったママを殺してしまったんじゃないかな」

少女「…」

ロボ「それは、まあ一時の衝動だったんだろうけれど」

少女「言ってる意味がわからないわ!!」



61 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 20:57:47.02 Jcy+BlCp0 39/55

ロボ「君のパパに対する思いは普通じゃないね」

少女「そうかしら。一般的だと思うわ」

ロボ「ママに向けられていると思っていた愛は、それでも君に向けられることはなかった」

少女「…」

ロボ「パパは存在しない息子に想いを馳せていたんだね」

少女「…」

ロボ「そしてパパはとうとう息子を作ってしまった」

少女「…」

ロボ「…でも僕は特別パパに愛されているとは思えないな」



63 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:02:01.75 Jcy+BlCp0 40/55

少女「そうね」

ロボ「彼の望む息子が出来上がらなかったからかな」

少女「そうかしら」

ロボ「僕は欠陥品のようだね」

少女「そんな風に言うのは、やめて!!」

ロボ「いいよ、本当のことだ」

少女「やめて」

ロボ「キャッチボールも、野球観戦も、一緒に出来ないダメな息子だ」

少女「やめてったら」



65 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:07:56.72 Jcy+BlCp0 41/55

ロボ「パパは、息子を作ることに失敗したからか、覇気が無くなってしまった」

少女「…」

ロボ「君に家のことを任せ、働かせて、自分は好き勝手に遊び歩く」

少女「…」

ロボ「僕はいいんだ。ロボットだから感情はない」

ロボ「でも君は生きた人間だ。傷つけられることはあってはならない」

少女「…」

ロボ「そうだろ??」



66 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:13:16.12 Jcy+BlCp0 42/55

少女「傷ついてなんかないわ」

ロボ「嘘だ」

少女「嘘じゃないわ」

ロボ「君がパパの愛を注がれず、悲しんでいるのは事実だろう??」

少女「…」

ロボ「最初の質問に戻るよ」

少女「…」

ロボ「殺意は、あった??」



68 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:17:24.75 Jcy+BlCp0 43/55

少女「…」

ロボ「…」

少女「あったわ」

ロボ「…そう」

少女「パパも、誰も、知らないわ」

ロボ「子どもの起こした事故さ、誰も君を責めないよ」

少女「パパに言うの??」

ロボ「言わないさ」

少女「どうして」

ロボ「君の方が僕には大切だからさ」



69 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:21:58.71 Jcy+BlCp0 44/55

少女「…どうしようもなくママが憎くなったの」

ロボ「どうして??」

少女「ママが昔、一度だけ、パパの研究室に入ったことがあったの」

ロボ「うん」

少女「わたしはその時まだ小さな赤ん坊で、そのことは知らなかったんだけど」

ロボ「うん」

少女「ママは無断で入ったの。危険な実験中だったのにね」


>>67
ごめんねごめんね


70 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:27:02.25 Jcy+BlCp0 45/55

ロボ「それで??」

少女「ゲンジュウに鍵をかけなかったパパも悪いんだけど、とにかく運が悪かった」

ロボ「…」

少女「その時暴走したパーツの一部が、ママに当たったの」

ロボ「…」

少女「ママの命があったのは本当に奇跡」

少女「そして子どもが作れない身体になったことが、本当に不運だったの」

ロボ「…そうだったのか」



71 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:32:13.42 Jcy+BlCp0 46/55

少女「パパは息子を欲しがってるって、薄々分かってた」

ロボ「うん」

少女「そしてママはもう子どもが作れない」

少女「欲しい息子はもう生まれない」

ロボ「うん」

少女「パパはもう…喜んでくれない」

ロボ「…うん」

少女「ママが全部悪いんだって、その時思っちゃったのよ」

ロボ「…そうか」

少女「もちろん後になって反省したわ。後悔したわ」

ロボ「…そうだろうね」



72 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:38:01.14 Jcy+BlCp0 47/55

ロボ「ところで、君のつけてるその時計だけど」

少女「え??」

ロボ「女の子がつけるには、少し機能的すぎない??」

少女「…そうかしら」

ロボ「それ、コントローラーだね、僕の」

少女「!!」

ロボ「…やっぱり」



73 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:41:57.31 Jcy+BlCp0 48/55

ロボ「殺意は、あるの??」

少女「…」

ロボ「僕に対する、殺意はあるの??」

少女「…ないわ」

ロボ「それをいじったら、僕は簡単に壊れてしまうんだろう??」

少女「…」

ロボ「僕の力は強いからね、パパが万一の時のために持たせたのかな」



74 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:47:23.44 Jcy+BlCp0 49/55

少女「あのね」

ロボ「うん」

少女「わたしがついた嘘がひとつ、そしてあなたが勘違いしていることがひとつあるわ」

ロボ「ふうん」

少女「この時計、パパに貰ったって言ったけど、本当はわたしが作ったの」

ロボ「…え??」

少女「それから、あなたを作ったのはパパじゃないの」

ロボ「…」

少女「わたしよ」



75 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:52:39.55 Jcy+BlCp0 50/55

ロボ「…僕を作ったのは、君だって??」

少女「そうよ」

ロボ「でも、だって、君はまだ子どもじゃないか」

少女「子どもだって作れるわ、ロボットくらい」

ロボ「そんな」

少女「パパの研究室に色々あるからね、お借りしたの」

ロボ「じゃあパパは…」

少女「ママが研究室に入ってしまった日から、ロボットを作らなくなったわ」



77 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 21:57:02.73 Jcy+BlCp0 51/55

ロボ「じゃあ君は…なぜ僕を」

少女「決まってるじゃない、パパのためよ」

ロボ「パパのために息子を…」

少女「そうよ。でもその息子は、自分で欠陥品と言ってしまう代物だけれどね」

ロボ「…」

少女「残念だったわ」

ロボ「…」

少女「パパに殺意を向けることさえ、したわ」

ロボ「あれは、冗談で」



78 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 22:01:11.42 Jcy+BlCp0 52/55

少女「でも、あまりにも危険ね」

ロボ「…」

少女「ごめんなさいだけれど、もうあなたには止まってもらうわ」

ロボ「僕の殺意は…つまり君の…」

少女「なに??」

ロボ「いや、やめておこう」

少女「なによ」

ロボ「次は、うまくいくといいね」

少女「…そうね」



79 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 22:05:31.47 Jcy+BlCp0 53/55

ロボ「僕がパパじゃなく、君の方を大切に思うのも、そういう理由だったんだね」

少女「そうなのかしらね、たぶん」

ロボ「作ってくれて、ありがとう」

少女「やめて」

ロボ「ありがとう」

少女「…」

ロボ「さよなら」

少女「…」

ロボ「どうしたの、早く押しなよ」

少女「…」



80 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 22:10:45.97 Jcy+BlCp0 54/55

少女「明るくお別れする、良いジョークはないの」

ロボ「そうだね…」

ロボ「フローレンス、見てごらんよ。星がとっても綺麗だよ」

ロボ「本当ね、フランク。こんな綺麗な星空は初めてだわ」

ロボ「フローレンス、僕幸せだよ」

ロボ「ねえ、知ってる??人は死んじゃうとお星様になるのよ」

ロボ「ロマンチックだね」

ロボ「亡くなっても輝き続けられるなんて、幸せよね」

ロボ「そうだね」

ロボ「ねえ、一つお願いがあるんだけれど」

ロボ「なんだい??何でも聞いてあげるよ」

ロボ「私、新しいお星様が見たいの」

ロボ「なんてね」

少女「…バカ」

★おしまい



82 : HAM ◆HAM/FeZ/c2 - 2009/12/22(火) 22:14:08.73 Jcy+BlCp0 55/55

人居んのかなw
ありがとうございました。
銀杏の切なさが好きです。

http://hamham278.blog76.fc2.com/


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