憂「え? 中学の頃の和ちゃ……和さん?」
梓「うん。唯先輩との昔話はよく聞くんだけど、そういえば憂とはどうなのかなって」
憂「なに、和ちゃんに気があるの? あげないよ?」
梓「え? え、いや、そういうわけじゃ……(あげないよ、って?)」
憂「ふぅ……和ちゃんとの出会いは衝撃的だったなぁ」
梓「え? 出会うとこから始まるの?」
元スレ
憂「中学の頃の和ちゃん?今とそんなに変わんなかったよ」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1291215058/
梓ちゃんは、私の両親が家にいないこと、知ってるよね。
うん。
実は、私とお姉ちゃんが中学の頃、2人とも逃げちゃったんだ。
お父さんの事業が失敗して、2人だけで夜逃げだよ。
私とお姉ちゃんを残して、ね。
でもね、借金取りは、もちろん同情なんてしてくれなくて、
私はお姉ちゃんを養いながらも、毎日アルバイト。
生活費を削りながら、少しずつお金を返していたんだ。
でも、やっぱり中学生が働いて稼げるお金なんか、たかがしれててね。
紬「ひー、ふー、みー」
憂「……」
紬「なんだ、今月はこれだけかいな」
憂「ごめんなさい……来月はきちんと返しますので!」
紬「ふざけんじゃねいぃ! って言うのが夢だったのおぉ!」ベチーン!
憂「痛い!」ドサ
紬「先月よりさらに少なくなってるなんて、どういうこっちゃのー?」
憂「うう……お姉ちゃんが、もうすぐ高校受験だから……」
紬「ふむふむ、それで? 頑張って貰おうと、いつもより豪華な食事を?」
憂「……///」コク
紬「……///。……この、姉思いがあぁぁ!」ベチーン!
憂「痛い!」ドサ
紬「おまえんとこの両親がウチにどんだけ借金したのか知らんわけじゃアルマーニ!」
憂「……」
紬「一兆億万円じゃ! 一兆億万!」
紬「そんな額、おまえ一人が一生働いたって、返せるか返せないか紙一重だわよ!」
憂「そ、そんな……」ガーン!
紬「それを、姉の高校受験の応援だあぁぁ?」
憂「……///」コク
紬「……///」
紬「もう、あかん。こうなったらおまえのご両親を呼んで……」
憂「あの……夜逃げして……」
紬「そうだった! くそぅ、今頃2人でハミングバードか!」ムキー
紬「……よく見たら、おまえ結構可愛い顔しとるのう」
憂「え?」
紬「か、身体売れ///」
憂「……え、今なんて」
紬「身体売って金稼いでこい!」
憂「そ、そんな! 嫌です!」
紬「嫌よ嫌よで渡れるほど世の中甘くないんじゃあ」ベチーン!
紬「なぁに、おまえほどの器量じゃ、一兆億万なんてすぐ返せるじゃき」
憂「そ、そんなあ……。だって私……」
紬「ん?」
憂「しょ、処女……だし///」
紬「……///」
紬「しょ……処女なら、なおさら高く売れるんじゃあぁ!」
憂「……」
紬「……おまえの姉、たしか平沢唯いうんたん?」
憂「! やめて! お姉ちゃんには手を出さないで!」
紬「ほんなら、わかっとるの?」
憂「うう……」
紬「なに、私も鬼じゃないわ。おまえの初めての相手にはイケメンをみつくろってあげる」
憂「ほんとに、やらなきゃダメですか?」
紬「な、なんならウチに来て76人の妖精さんと一緒にお話でもしようか?」ドキドキ
憂「……イケメンで、お願いします……」
紬 ガーン
ホテルのロビー
紬「ほら、あそこにいるのが、あなたの初めての相手よ」ムス
憂(なんで機嫌が悪いんだろう?)
紬「イケメンが都合良く見つかって幸いだわ。ま、あなたみたいな女の子を買うんだもの。イケメンたって、碌な男じゃないでしょうけどね」プンスカ
紬「そうそう、あなたの将来のこともあるし、本名は名乗らない方がいいわ」
紬「べっ。別にあなたを心配してるわけじゃないんだからね!」
憂(キャラが安定しないなぁ……)
憂「あの……お待たせしました」
イケメン「ん……」
憂「本日のお相手をさせていただく、平沢ウインブルドンです」
イケメン「アルゼンチンからサッカー留学してきました、マナドーカだYo。チェケラッチョイ!」
紬「チェケラッチョイ、Mr.マナドーカ。このこが例の……」
マナドーカ「そうなんだ」
紬「あの、あまり激しいことは……しょ、処女ですので///」
ウインブルドン「///」
マナドーカ「///」
紬「そうそう、Mr.マナドーカ。まずは貰うもの貰わんと」
マナドーカ「チェケラッチョイ!」サッ
紬「ひー、ふー、みー……」
ウインブルドン「そ、そんな! 25万円も!」
紬「も……もう一声ー!」
マナドーカ「じゃあ5万円にして」
紬「まいどありー」
ウインブルドン「え、なんで減ったの?」
紬「さぁ、憂、ンブルドンちゃん」
ウインブルドン「……」
紬「今夜あの男に、あなたの鳥かごの扉を開いて貰ってドキドキの向こう側にいってらっしゃい」
ウインブルドン「……はい」
ウインブルドン「……」テクテク
ウインブルドン(これでいい……これでいいんだ。私さえ我慢すれば、お姉ちゃんは幸せに暮らすことが出来る)テクテク
ウインブルドン(それに、マナドーカさんも、言われたとおりイケメンだし……)チラ
マナドーカ「……」テクテク
ウインブルドン(でも、冷たい感じの顔。紬さんの言うとおり、女の子を買うなんて碌な男であるはずがない!)テクテク
ウインブルドン(やっぱり怖い! 怖いよお姉ちゃん! 助けてよ!)テクテク
マナドーカ「着いた」ピタ
ウインブルドン「……え? ここって、裏口?」
マナドーカ「そう。だましちゃってごめんなさいね、平沢……憂さん?」
憂「なんで私の名前を!? だましたって? あなたは一体」
マナドーカ「私の名は真鍋和。逃がせ屋よ。これでも、一応女です」
憂「え、女性? 逃がせ屋って?」
和「あなたたちみたいにね、にっちもさっちもいかなくなった子たちを無事に逃がす、そんな集団なのよ、私たちは」
憂「私……たち?」
和「あ、もしもし、律? どう? 空港までのルートは」
律『おう、和! 時間ギリギリ、なんとか間に合いそうだ!』
憂「あの、和さん! まだ家に、家にお姉ちゃんが!」
和「大丈夫よ。もしもし澪?」
澪『ひっ! ミエナイキコエナイ』
和「聞いて!」
澪『あぁ、和か。大丈夫、お姉さんの平沢唯さん、無事確保した。こちらもすでに空港に向かっているところだ』
和「そう、ありがと。後はチケットの手配だけど、梓ちゃんなら大丈夫ね」
梓「おい、ちょっと待て。なんで私の知らない回想に私が出てるの!?」
憂「あの! どうして私たちにこんなにしてくれるんですか!?」
和「ふふ、私たちも何もボランティアってわけじゃないのよ。貰うものはスポンサーから貰っているから気にしないで」
憂「スポンサー?」
和「それは秘密。さ、行きなさい」
紬「待ちなさい! 逃がせ屋和ちゃん!」
憂「!」
和「意外に早く気づかれたわね。さすがコトブキヤ13代目ってとこかしら?」
紬「まさかMr.マナドーカが、あの和ちゃんだったとは……迂闊だわ」
憂「和さん!」
和「憂は逃げることだけ考えなさい。ここはまかせて」
紬「逃がすと思うの!? この私が! 和ちゃんともども、この聖剣琴武器のサビにしてくれるわ!」ビュッ!
和「くっ! メガネバリヤー!」ガキッ
憂「和さん!」
和「私のことは気にせず! 早く行きなさい!」ググッ
憂「! 和さん」背中ダキッ!
和「え?///」
憂「絶対……絶対無事でいてください!」タタタ…
和「……///」
紬「別れはすんだ?」
和「あら? 待っていてくれたの? 優しいわね。優しいついでに見逃してもらえないかしら?」
紬「冗談。あなたに冥土の土産をあげるまでが私のやさしさよ。ううん。やさしさついでにあなたのすぐ後で憂ちゃんもあの世に送ってあげるわ」
和「それは……どうかしら?」ヒュッ!
紬「! な、なにぃ!?」ガキーン!
和「……ふふ」
紬(なんてパワー……さっきまでとは全然違う)ググッ
和「今夜の私は、少々のどかじゃないわよ?」
憂「その後は律さんたちが用意してくれたルートで無事に逃げ出すことが出来た。和さんや、逃がせ屋さんたちには本当に感謝している。でもね」
梓「……」
憂「和さんにはあれ以来会ってないの……。あの紬さんとの対決がどうなったのか、私には知るよしもない」
梓「……」
憂「和さんが無事でいるかどうか……ううん! あの逃がせ屋和ちゃんだもの! きっと無事!」
梓「……」
憂「今もどこかで、にっちもさっちもいかない子達を逃がすために活躍しているよ!」
梓「……」
憂「と、これが私と和ちゃんとの出会いのお話」
梓「……」
梓「……」
梓(どうすればいいんだ、これ)
梓(何も考えずに話書いてゲフンゲフン話聞いてみたら、もはや中学の頃の真鍋先輩とかカンケーないぞ?)
梓(というより、一体何を突っ込めばいいのかわからない!)チラ
憂 キラキラ
梓(うわー感想聞かせてって、こっちガン見してるよ! どうする梓! 何が正解なんだ!?)
和「憂いる?」ガラ
憂「あ! 和ちゃ……和さん!」
梓(よかった! 何はともあれ膠着状態がとけたぞ!)
梓「こんにちは、真鍋先輩。珍しいですね、2年生の教室に」
和「こんにちは、梓ちゃん。今日久しぶりに憂と帰る約束してたのよ」
梓「……」
梓「あの、真鍋先輩。つかぬ事をお聞きしますが」
和「なに?」
梓「逃がせ屋……って、何ですか?」
和「は?」
和「逃がせ屋? なにそれ。梓ちゃんが考えた言葉? ごめんね、ちょっとわからないわね」
憂「変な梓ちゃん」アハハ
梓(く! わかっていた……わかっていたさ!)プルプル
和「でも、そうね。私は逃がせ屋というよりは……脱がせ屋ってとこかな?」チラ
憂「! もう、和ちゃん! 学校では内緒って言ったのに///」
和「おっと、いけない」アハハ
梓「おい待て」
和「憂」
憂「なぁに、和ちゃん」
和「今夜も脱がせて良いのかしら?」
憂「も! もう、和ちゃん! 知らない! ///」ダッ
和「それじゃあ、梓ちゃん。私たち帰るね」
梓「……」
唯「え? 中学時代の和ちゃん?」
唯「なんていうか……憂とベッタリだったよ?」
梓(それは、たった今現在も進行形ですよ、お姉さん)
紬「おしまい!」