DQN「オラァッ!」
バキィッ!
金髪「ぐはっ……!」
DQN「この町で誰が一番強いか分かったか? あぁん!?」
金髪「わ、分かりました……」
教師「コラーッ! なにをしてるんだ!」
DQN「ちっ、またかよ……」
元スレ
DQN「東大喧嘩学部ゥ!? それなら俺にだって入れるぜェ!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1604740809/
母「いつもいつも申し訳ありません」
教師「いえ、とんでもない」
母「うちは母子家庭で、しっかり教育できてなかったばっかりに……」
母「このままじゃあの子は……」シクシク
教師「……」
教師「お母さん、任せて下さい」
教師「必ず私があいつを更生させてみせます」
DQN「こんなとこに呼び出しやがって……なんだよォ?」
教師「お前、将来はどう考えてるんだ」
DQN「将来ィ? 知らねーよ。とりあえず喧嘩だけはやめられねーがな!」
教師「大学に行くつもりはないか?」
DQN「大学って、例えばどこだよ?」
教師「東大」
DQN「ハァ? お前バカか? 俺が入れるわけねーだろ! 百万回生まれ変わったって無理だ!」
教師「んなことは分かってる……だが」
教師「ここならどうだ?」パサッ
DQN「なんだこの安っぽいパンフレットは……って」
DQN「東大喧嘩学部ゥ!?」
教師「そうだ……あの東大が新しく設立した喧嘩学部!」
教師「ここならお前にうってつけだろう?」
DQN「……!」
教師「ここに入れば喧嘩の相手には困らない」
教師「日本最高レベルの喧嘩相手とずっと戦えるぞ」
教師「しかも、“東大生”という肩書きもついてくるオマケつきだ!」
教師「想像してみろ……東大生になった自分の姿を!」
DQN「……」ホワンホワン
DQN「ヒャッハー! 俺は東大生だー!」
「ステキー!」 「ワルのくせに超高学歴!」 「濡れちゃうっ!」
DQN「やるよ!」
DQN「俺……東大に入る!」
教師「お前ならそういってくれると思ってたよ」
DQN「で、どうすりゃいい!? 誰をブッ倒せば東大に入れるんだ!?」
教師「ん~……とりあえず……」
DQN「番長だろうと格闘家だろうと、どんな奴だってブッ倒してやるぜ!」
教師「国語を勉強しろ」
DQN「は……?」
教師「現代文はもちろん、古文もしっかり勉強しろよ」
DQN「おい……なんで喧嘩学部入るのに勉強しなきゃなんねーんだよ!」
教師「喧嘩ってのは、なにも殴り合うだけじゃあるまい。当然、口喧嘩もある」
DQN「まあな」
教師「そんな時、ものをいうのは国語力! 豊富なボキャブラリーで相手を煽りまくれ!」
教師「口喧嘩で相手を圧倒すれば、その後の喧嘩の勝率も上がるしな!」
DQN「な、なるほど……」
DQN「だけど、古文は勉強する必要なくねーか?」
教師「もしも……」
DQN「?」
教師「もしも平安時代あたりからタイムスリップしてきた猛者が、お前に挑んできた時困るだろう?」
DQN「たしかに……!」
DQN「俺、やるよ! 国語勉強するよ!」
教師「国語を勉強したら、その次は――」
DQN「いよいよ喧嘩か!?」
教師「数学だ」
DQN「数学……!? また勉強かよ!」
教師「数学とは、すなわち数を支配する学問」
DQN「それと喧嘩とどんな関係があるんだよ?」
教師「例えば、喧嘩する時、相手の数を把握しておくのは基本だろ?」
DQN「その通りだ……スタミナ配分ミスると勝てる喧嘩も勝てねえからな」
教師「そうだ。相手が1人、10人、50人の時はそれぞれ戦い方も変わってくるはずだ」
教師「だから、数学も勉強しろ!」
DQN「分かったよ。これも喧嘩に勝つためだ!」
教師「地理と歴史も学んでおくべきだろう」
DQN「地理ィ? 歴史ィ? 笑わせんな! なんでだよ!」
教師「地理を把握しておけば、喧嘩で有利に立てることはいうまでもない」
教師「リアス式海岸ではこう戦うとか、扇状地ではこう動く……とか」
DQN「それは分かる……」
教師「それに人類の歴史ってのは戦いの歴史でもある。ようするに喧嘩の歴史だ」
教師「歴史を学べば、間違いなく喧嘩も強くなる!」
DQN「うおおおおおおおお! そういうことか!」
教師「それと、理科も勉強しろ」
DQN「理科なんて、ひょろひょろの白衣着た奴がやるもんだろ! 俺はやりたくねえ!」
教師「人間の体の動きってのは全て物理で説明できる」
教師「物理を極めれば、喧嘩を極めることも可能!」
DQN「マジかよ!」
教師「化学を学んでおけば、喧嘩に薬品を使うような卑劣な輩に出会った時、困らないぞ」
DQN「ああ、たまにいるぜ! 酸みたいなの投げつけてくる奴!」
教師「今までよく無事だったな」
教師「最後に、英語」
DQN「英語ォ? 俺は日本人だぞ!」
教師「おいおい、21世紀は喧嘩もグローバルになる時代だぞ?」
教師「もしアメリカ人に喧嘩を売られたら……どうするんだ?」
DQN「あ……!」
教師「無様なジェスチャーなどしたら、それこそ『HAHAHA! クレイジージャップ!』と笑われてしまうぞ!」
DQN「喧嘩で恥はかけねえ! 英語もペラペラにならないと……」
DQN「すげえ説得力だった……。分かったよ、俺勉強するよ!」
教師「お前が東大を目指すなら、俺は全力で応援する。協力は惜しまない」
教師「ただし……これからはもう喧嘩するなよ」
DQN「ハァ? 喧嘩学部に入るなら、喧嘩しなきゃダメだろ! 喧嘩は場数がものをいうんだ!」
教師「逆だ。喧嘩学部に入ったら、それこそ今までとは比べ物にならない修羅の日々が待っている」
教師「少しでも体力を温存しておかないと……死ぬぞ」
DQN「……」ゴクッ
DQN「分かった……俺もう卒業まで喧嘩しねえ!」
教師「約束だぞ」
勉強を始めるDQN――
DQN「……」カリカリ
DQN「……」カリカリカリ
DQN「……」カリカリカリカリカリ
DQN(俺はこんなことも知らなかったのか……)
DQN(勉強ってなんて楽しいんだ!)
DQN(もちろん、喧嘩ほどじゃあねえが……)
母(あの子、ずっと部屋に引きこもってるけど、どうしたのかしら)
母(まさか、シンナーとかやってるんじゃ……!)
母「開けるわよ……」ガラッ
DQN「……」カリカリ
母「な、なにやってるの!?」
DQN「勉強」
母「どれぐらい……!?」
DQN「昨日の夜からだからもうすぐ20時間になるかな。やっとエンジンかかってきたぜぇ!」
母「どうしちゃったの……!?」
不良「おーい、最近隣の高校の奴らがチョーシこいてんだ」
ヤンキー「シメにいこうぜ!」
DQN「いや……やめとくわ」
不良「な、なんで!?」
DQN「今日はちょっと……“館”に行かなきゃならねえからよ」
不良(まさか……極真会館!? すげえ! 俺たちとはレベルが違う……)
DQN(さて、図書館行くか)
DQN「……」
教師「このところ、メキメキ成績が伸びてるじゃないか!」
DQN「元が低かったから当然だろ」
DQN「登山だって標高が上がってくにつれきつくなる。3000m超えると高山病が出てくるしな」
DQN「俺は今まさに、そんな局面ってところだ。東大入るレベルにはまだまだ……」
教師「お前の口から“高山病”なんて言葉を聞けるなんて……」
DQN「おいおい、バカにしすぎだろ」
DQN(模試の結果が返ってきた……)
DQN「文系科目は一見点数を取れてるように見えるが、問題に救われた部分が大きい」
DQN「理系科目はまだまだ甘いが、弱点は浮き彫りになった。長所を伸ばしつつ、弱点を補強する!」
DQN「方針は見えた! もっともっと勉強しねえと! 過去問も解きまくって――」
DQN「……」カリカリ
DQN「……」カリカリカリ
……
……
時は流れ……
不良「高校最後の夏休みだー!」
ヤンキー「よっしゃー!」
不良「どうするよ? ナンパでも行くか?」
ヤンキー「そりゃいい! 今なら山行けば山ガールを引っかけられるかも!」
不良「DQN、お前も行こうぜ!」
DQN「いや、俺は夏休みは他の山を登る……」
不良「どこ?」
DQN「受験の天王山だ!」
202X年 冬――
DQN(ついに受験シーズン……)
DQN(“大学入学共通テスト”を経て、2月下旬に行われる“二次試験”に受かれば、東大に入れる……)
DQN(やるだけのことはやった……どうなろうと悔いはねえさ)
DQN(だが……ッ!)
DQN「行くぜ、東大ッ!」
母「頑張ってね!」
教師「全てをぶつけてこいッ!」
教師(かつては、群れをはぐれた荒くれライオンといった風情だったDQNだが……今や王者の風格ッ!)
――
――
――
DQN「受かったぜぇ!」
DQN「自分でも信じられねえ! マジで『なんで私が東大に!?』だろこれ!」
教師「あれだけ努力したんだ……自信を持って誇るべきだ」
DQN「これで……これで俺は東大喧嘩学部に入れるんだな!?」
DQN「赤門くぐって、思う存分強い奴らと喧嘩できるんだな!?」
教師「……」
教師「……すまん」
DQN「!?」
教師「実は……東大に喧嘩学部なんて学部はないんだ……」
教師「お前に見せたパンフレットは、俺が捏造したものだったんだ……」
教師「せめて、これをきっかけに勉強してくれればと思って……」
DQN「……フッ」
DQN「なんとなく……分かってたさ。そんな学部ないんだってことぐらい」
教師「いくらでも殴ってくれ! お前にはその資格がある!」
DQN「殴るわけねえだろ。俺はあんたのおかげでまともになれた」
DQN「ありがとうございました……先生!」
教師「DQN……!」
入学式――
DQN(大勢が集まってる――)
東大生A「……」ゴゴゴゴゴ…
東大生B「……」メキメキメキ…
東大生C「……」シュインシュインシュイン
DQN(どいつもこいつもなんて“東気”出してやがる……!)
DQN(同じ東大生でも、俺と奴らじゃジャギとケンシロウぐらいの違いがある!)
DQN(だけど、俺は猛勉強して、この中で成り上がってやるぜ!)
――
――
記者「今はどういった活動を?」
DQN「今は、ミーズ族とアヴラ族の仲裁を行っています」
DQN「長年争ってきた二つの部族ですが、ようやく和解の時を迎えられそうですよ」
記者「東大卒業後、世界各地でこういった仲裁を行ってきたわけですね」
DQN「これが自分の使命だと思ってますから」
記者「あなたの高い学力と度胸があってこそ、務まる使命ですね」
DQN「ありがとうございます」
記者「何か、最終的な目標などはございますか?」
DQN「はい、それはもちろん――」
DQN「かつて東大喧嘩学部を目指した者として、世界中の喧嘩を止めることです!」
― 完 ―