1 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:21:03.890 491g0XRH0 1/32

悪魔「クックック……一人で出歩くとは不用意だったな、姫よ」

「キャーッ!」

悪魔「魔王様がお前を欲しがっている。ついてきてもらおう!」ガシッ

「いたっ!」

悪魔「さあ、魔王様のいる山へ――」バッサバッサ…

「ふんっ!」ドズッ

悪魔「ぐえっ!?(ひ、肘打ち……!?)」

元スレ
勇者「姫を助けに行くぞ!」女戦士(私が姫なんだけどね……)
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1603884063/

2 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:24:09.200 491g0XRH0 2/32

悪魔「うぐううっ……!」

「私が姫だからって油断してたから、思い切り入っちゃったわね」

「おととい来なさーい!」

悪魔「うぐぐぐ……くそぉ……! こんなの聞いてない……」バッサバッサ

「あー、スッキリした。さ、お城に帰ろっと」



…………

……

3 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:27:04.103 491g0XRH0 3/32

国王「大変だ……! 魔王から『姫をさらった』という手紙が送られてきた!」

国王「頼む、勇者よ! 我が娘を取り戻してくれ!」

勇者「分かりました」

勇者「姫は美しく、国民みんなの憧れの存在……必ず救い出してみせます!」

国王「ありがとう、勇者よ」



(ゲ!? なぜか、私さらわれたことになってる……)

(魔王め……手紙出すのが早すぎるのよ!)

(これで無事に出ていったら、おかしなことになっちゃうじゃない!)

5 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:30:16.243 491g0XRH0 4/32

国王「誰か、お供をつけようか?」

勇者「いえ、魔物相手なら少数精鋭の方が都合がいいです」

国王「それもそうか。並みの兵士では足手まといにしかならんしな」

勇者「最近、なかなか腕の立つ女戦士と知り合いましてね」

勇者「二人で姫を取り戻してきますよ」



(その女戦士ってのは……私!)

(お父様や城のみんなに内緒でやってる、私の仮の姿!)

(バレたら怒られる上、剣を振るうのも禁止されちゃうだろうから、絶対バレるわけにはいかない!)

(こうなったら急いで着替えないと!)

7 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:33:03.651 491g0XRH0 5/32

勇者「お、いたいた」

女戦士「!」

勇者「実はさ……」

女戦士「姫がさらわれて、魔王を倒しに行くんでしょ? 行ってあげるわ」

勇者「……やけに耳が早いな。まだなにもいってないのに」

女戦士「そ、そうかな?」

女戦士(なにしろ当事者なもんで)

11 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:36:23.675 491g0XRH0 6/32

勇者「姫は美しく、気高く、国民みんなの人気者だ。俺にとっても憧れの人だ」

女戦士「……」カァ…

勇者「お前なんかと違ってな」

女戦士「……」ムカッ

勇者「魔王なんかには渡さない! 絶対助け出すんだ!」

女戦士「おー……」

勇者「もっとやる気出せよ! 姫になにかあったらどうする!」

女戦士(なにもないからやる気なんか出ないっての)

女戦士(それにしてもさぁ、多少メイク変えてるとはいえ、顔同じなのになんで気づかないの?)

女戦士(ま、いいか。その方が都合いいし)

12 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:39:11.348 491g0XRH0 7/32

一方、その頃――

魔王「なにぃ!? 姫をさらうのに失敗した!?」

悪魔「は、はい……。肘打ち喰らっちゃって」

魔王「バカ! もう姫はさらったって手紙送っちゃったぞ! これじゃワシがバカみたいじゃないか!」

魔王「バカのせいでワシまでバカだ! ダブルバカだ!」

悪魔「申し訳ありません……」

部下「魔王様!」ババッ

魔王「なんだ?」

部下「この≪魔王の山≫に、勇者ともう一人が来て、『姫を取り戻す!』と暴れています!」

魔王「は? なんで……?」

14 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:42:17.316 491g0XRH0 8/32

魔王「まぁいい……姫をさらう目的の一つは“勇者をおびき出して倒す”ことでもあるからな」

魔王「ワシの手下どもに伝えろ! 勇者を全力で迎撃しろとな!」

部下「ははっ!」

魔王「それにしても……勇者はともかく“もう一人”というのは誰だ?」

悪魔「誰でしょう……?」

魔王「お前は本当に使えんな!」

悪魔「す、すみません!」

16 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:45:40.929 491g0XRH0 9/32

勇者「オラァッ!」ザシュッ!

女戦士「せやっ!」ズバッ!

魔物A「むぎゅう……」

魔物B「強すぎる……」

勇者「下っ端の魔物じゃ俺らの相手にならんぜ! なぁ?」

女戦士「そうね」

女戦士(このままだと……姫がいない魔王城に突入することになっちゃう。どうしよう……)

17 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:48:20.659 491g0XRH0 10/32

ドラゴン「ここから先へは通さんぞ!」ズシン

勇者「ちっ、手強いのが出てきたな!」

ドラゴン「カァッ!!!」ゴォワァァァァァッ

勇者「うおっ!」

女戦士「きゃっ!」

ドラゴン「どうだ! 俺様の炎は!」

勇者「あの炎を喰らったらひとたまりもないな……」

勇者「俺が引きつけるから、お前はドラゴンを切りつけてくれ!」

女戦士「分かった!」

18 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:51:12.140 491g0XRH0 11/32

勇者「行くぞ!」バッ

女戦士「うん!」バッ

ドラゴン「むっ! まず勇者をやってやる!」ゴワァァァァァッ

勇者「おっとぉ!」ババッ

勇者「今だ!」

女戦士「こっちよ! たあああっ!」ズバッ!

ドラゴン「グアアアアッ……!」ズン…

勇者「よっしゃー! よくやった!」

女戦士「イェーイ!」

女戦士(やっぱり戦うって楽しい~!)

20 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:54:32.900 491g0XRH0 12/32

勇者「もうすぐ魔王のいる城だな」

女戦士「うん」

女戦士(そろそろ離脱して、姫にならないと……)

女戦士「うっ!」ガクッ

勇者「どうした?」

女戦士「さっきの戦いで足を痛めちゃって……引き返すからここからは一人で行ってくれる?」

女戦士(こうやって勇者と離れて、急いで魔王城に向かおう!)

22 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 20:57:18.342 491g0XRH0 13/32

勇者「引き返すんなら、俺もついていくよ」

女戦士「え、なんで!? まさか一人じゃ怖いの……?」

勇者「そうじゃねえよ。一人じゃお前が危ないだろ」

女戦士「一人で平気だって……」

勇者「姫みたいにさらわれたらどうする」

女戦士(さらわれに行くんだって!)

勇者「魔物を甘く見るな。せめて安全なところまでついていくよ」

女戦士(なんでこういう時に限って優しいのよ!)

23 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:00:30.481 491g0XRH0 14/32

女戦士「あ、やっぱり治った!」スクッ

勇者「え?」

女戦士「もうへっちゃら! やっぱり引き返すのなし!」ピョンピョン

勇者「大丈夫かよ」

女戦士「大丈夫大丈夫! さ、魔王城にレッツゴー!」

女戦士(全然大丈夫じゃない……どうしよう)

24 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:04:08.562 491g0XRH0 15/32

魔王城――

バァンッ!

勇者「魔物ども、覚悟しろォ!」

悪魔「クックック……」

勇者「お前は……魔王の腹心の部下!」

女戦士(ゲ、こいつは!)

悪魔「お前たちは魔王様に会えん……なぜならここで俺に倒されるからだ」

勇者「そうはいかない! 姫は絶対返してもらう!」

悪魔「姫?」

25 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:07:33.264 491g0XRH0 16/32

悪魔「お前は何か勘違いしてるようだが、俺は姫をさらっては――」

女戦士「……」

悪魔「あれ?」

女戦士「……!」ギクッ

悪魔(どう見ても……こいつ、姫だよな。雰囲気は違うけど顔同じだし)

悪魔「姫ならすぐそこに――」

女戦士「……」ギヌロッ!

悪魔「ひっ!?」

勇者「?」

27 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:10:14.118 491g0XRH0 17/32

女戦士「ちょっといい?」ガシッ

悪魔「わっ!」

女戦士「さっきはどうも、悪魔さん」

悪魔「えへへ……どうも」

女戦士「言うべきことは一つだけ。私が姫だってバラしたら……コロす」

悪魔「は、はい……」

女戦士「分かったら、戦闘始めましょうか」ニコッ

勇者(二人で何を話してるんだ……?)

28 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:13:26.914 491g0XRH0 18/32

勇者「でやーっ!」

悪魔「キエーッ!」

ガキンッ! キンッ!

勇者「だああっ!」

ズバッ!

悪魔「ぐはぁぁぁ……! 参ったぁ……!」ドサッ

勇者「腹心だけあって、なかなか手強かったな」

勇者「――ってあれ? 女戦士!? どこ行った!?」

勇者(今更捜してられないし……魔王のところに行くしかない!)

30 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:16:54.500 491g0XRH0 19/32

勇者「魔王ッ!」

魔王「やっと来たか……勇者よ」

勇者「麗しき姫をさらった罪……あまりに重い! 今日は徹底的に成敗してやる!」

魔王「ふん、なにをいっておる」

魔王「さらおうとしたのは事実だが……姫をさらってなどいんぞ。間抜けな部下がしくじったせいでな」

勇者「? なにをいって――」

「勇者様! 私はさらわれてますわ!」ババッ

魔王「!?」

勇者「ほらな! さらってるじゃねえか!」

31 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:20:11.408 491g0XRH0 20/32

魔王(あれ……? ワシは姫をさらってないよな? さらってたっけ? え、年かな……)

魔王「まあいい! ワシは姫をさらってたようだ!」

勇者「なにが“ようだ”だ、ふざけんな!」

魔王「ええい、今日こそ決着をつけてくれるわ!」

勇者「望むところだ……来い!」チャキッ

(マジな顔するとかっこいいのよね、こいつ。応援したくなっちゃう)

「頑張って……勇者様!」

勇者「はぁい」ニコッ

魔王「どこを見てる!」バキッ!

勇者「ぶげっ!」

(なにやってんのバカ!)

32 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:23:23.697 491g0XRH0 21/32

勇者「はーっ!」

魔王「かあああっ!」

キィンッ! バリバリッ! ザシュッ! ドカッ!

ズガガガッ! ドゴォンッ! ズガァンッ!

「……」

(すごい戦い……! あ~、混ざりたい! 武者震いしちゃう!)ブルブル…

勇者(姫が震えてる……! よほど怖かったに違いない……!)

34 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:26:11.284 491g0XRH0 22/32

勇者「勇者斬ッ!」ズシャッ!

魔王「がふっ……!」

魔王「うぐぐ……おのれ!」ヨロッ…

勇者「今だッ! だああああああっ!」

ザシュッ……!

魔王「ぐはぁっ!」

魔王「あぐぐぐ……またしても……無念……!」ドサッ…

勇者「ふん! ちったぁ反省するんだな!」

36 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:29:21.692 491g0XRH0 23/32

勇者「姫……!」

「勇者様……!」

「助けて下さってありがとうございます!」

勇者「勇者として当然の務めを果たしたまでさ」

「私、怖かった……!」

勇者「そうだろう……。こんな魔物の巣窟に捕われてたんだからね」

勇者「二度とこんな目にはあわせないよ!」

(ホント……こういう時はかっこいいんだから)

(いい機会だわ……ここらで私の気持ちを伝えちゃおう!)

37 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:32:47.758 491g0XRH0 24/32

「勇者様……」

勇者「なんだい?」

「私、前から勇者様が好きでした」

勇者「え」

「私と……ぜひ男女の交際をして下さいませ!」

勇者「……!」

(あんたが私を好きなのは知ってる……さぁ、イエスといえ! いうのだ!)

勇者「……姫」

38 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:35:26.772 491g0XRH0 25/32

勇者「それは……できない」

「え」

「な、なんで……? どうしてなの……?」

勇者「なぜなら、俺は……他に好きな人がいるから……」

(は……?)

(話が……違う……なんだこれ……)

(バカ……な……)ガクッ

勇者「姫!? 姫、しっかりしてくれ!」

39 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:38:33.822 491g0XRH0 26/32

……

……

勇者「あ!」

女戦士「……」

勇者「お前、どこ行ってたんだよ! 急にいなくなりやがって! 魔王とタイマンするはめになったんだぞ!」

女戦士「うるさい! バカ!」

勇者「な、なんだよ……怒りたいのはこっちの方――」

女戦士「ふん!」

41 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:41:18.199 491g0XRH0 27/32

女戦士「……話は変わるけど」

勇者「?」

女戦士「あんたの好きな人って誰なのよ?」

勇者「は? なんだよいきなり?」

女戦士「いいから答えなさいよ! 答えなきゃこの場で決闘よ!」

勇者(なんだ、このド迫力は……)

女戦士「……」

勇者(答えなきゃマジで斬りかかってきそうな勢いだな……)

勇者「いいだろう、答えてやるよ」

43 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:44:08.663 491g0XRH0 28/32

勇者「お前だよ」

女戦士「は?」

勇者「俺はお前のことが好きなんだよ!」

女戦士「……」

勇者「こうやって肩並べて戦える女なんて……初めて出会ったしさ……。だから出会った時から……」

女戦士「なぁんだ、そうだったの~」ニヒヒヒ

勇者(急に機嫌がよくなった……)

45 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:47:16.672 491g0XRH0 29/32

勇者「好きといえば、実は俺、さっき姫を傷つけてしまったんだ」

女戦士「ふうん」

勇者「すぐ謝りに行かないと……」

女戦士「は!? いや、行かんでいい! 行かんでいい!」

勇者「なんでだよ?」

女戦士「姫は全然傷ついてないから!」

勇者「なんでお前に分かるんだよ!」

女戦士(本人だからだよ!)

勇者「やっぱり行ってくる! 城にいるはずだし!」

女戦士「ちょっ!」

女戦士(あ~……めんどくせえ!)

47 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:50:13.212 491g0XRH0 30/32

勇者「姫……!」

「ハァ、ハァ……あっ、勇者様!」

勇者「なんだか息が荒いね」

「ちょっと走ったもので。オホホホホ……」

勇者「あの、先ほどは申し訳ないことを……!」

「いえいえ、お気になさらず……ぜーんぜん気にしてません」

勇者(本当に気にしてないっぽいな。女性は強いな……)

勇者「それでは、一緒に戦ってくれた仲間のもとに戻るので」

「えっ(もうかよ!)」

49 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:53:16.683 491g0XRH0 31/32

勇者「姫、気にしてなかったよ!」

女戦士「ゼェ、ゼェ、ゼェ……そう、よかったわね」

勇者「なんでそんなに疲れてるんだよ」

女戦士「さっきから……色々と忙しくて……」

勇者「そうだ、今日は一緒にメシ食わないか? 俺がおごるよ」

女戦士「別にいいけど」

50 : 以下、5... - 2020/10/28(水) 21:56:28.734 491g0XRH0 32/32

勇者「そうだ! いっそ姫を誘って、三人で……」

女戦士「わぁぁぁぁっ! 二人でいい! 二人で! 余計なことすんな!」

勇者「ご飯は二人より三人のが楽しくないか?」

女戦士「楽しくない! 全然楽しくない! 二人きり最高ッ!」

女戦士(姫と女戦士がイコールってのをバラすのはもう少し後にしたいんだけど……)

女戦士(それまで私の体が持つかなぁ……)







~おわり~

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