1 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:10:10.67 EQzioBaLO 1/142

「……(お外こわいよお日様こわいよ)」

ガチャ
「おい、お前さ…うわ、昼間なのに部屋暗…」

「…ガタガタブルブル(勝手に入って来んなばか)」

「布団から出て来いよ、兄ちゃん真面目な話しがあるんだ」

「…ガタガタブルブル(現実こわいよお日様こわいよ)」

「お前、いまいくつ?」

「…ガタガタブルブル(じゅ、じゅうろくさい…)」

「16だっけか」

「…ガタガタブルブル(分かってるなら聞かないで)」



元スレ
妹「学校やめて早三年」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1285791010/

2 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:15:06.04 EQzioBaLO 2/142

「これからどうすんの?」

「…ガタガタブルブル(きこえない)」

「うちいつまでもお前養う程金があるわけじゃないんだぜ?」

「…ガタガタブルブル(みえない)」

「死んだ父さんも天国でお前見て泣いてるよ」

「…ガタガタブルブル(しらない)」

「…はぁ…メシだって、下りてこいよな」

「…ガタガタブルブル(行くかばか)」

「来ないならメシ抜きな」

「…ガタガタブルブル(……)」


4 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:19:09.55 EQzioBaLO 3/142

トントン…

「あ、おりてきた」

「今日妹の好きな豚の角煮だよ!ほら、座りな」

「……(コクリ)」

「………(もぐもぐ)」

「………(むぐむぐ)」

「…………」

「…………」

「ふ、ふたりともなにか飲む?」

「いい」

「……(フルフル)」

「そっか……」


7 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:24:37.41 EQzioBaLO 4/142

「ごちそうさまでした(ポソリ)」

トントン……

「もう上行っちゃった、降りてきたの久々だったのに…」

「母さん妹のこと甘やかしすぎ」

「だってさぁ、どうするか決めるのはあの子じゃない」

「俺はあいつを何とかしたい、今すぐにでも」

「お兄ちゃんっぽいお兄ちゃんに成長したよね、あんた」

「知るかよ」

次の日(日曜日)

コンコン

シーン……

「妹、入るぞ(ノックしたって出やしねえ)」

「!!!(バッガタッゴトトッ)」

ガチャ
「またパソコンやってんのか…」


9 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:30:08.70 EQzioBaLO 5/142

「…ガタガタブルブル(フルフル)」

「首振んな、やってただろーが」

「…そんなことはいいんだけどさ、お前がこれからどうすんのか本気で考えるぞ」
ピンポーン

「(ビビビクッッ!!)」

「お前がネットで頼んだ荷物が届いた音で怖がってんじゃねーよ」

「………はぁ…お前イジめられてたわけでもないのにどうして引きこもったわけ?」


10 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:37:12.91 EQzioBaLO 6/142

「……(ぶわっ)………」

「なんで泣くんだよ…つーか喋れるんだから黙るな」

「……(ぶわわわっ)…」

「なあ、今から兄ちゃんと出掛けようぜ」

「(ブンブンブンブン!)」

「来ないと今日メシ抜きだぞ」

「…………きがえる……」

「終わったら下来い」

15分後

「よし、出掛けるか。ほれ、メット被れ」

「う…ん……」

「前はお前兄ちゃんの後ろ乗るの好きだったよなぁ…」

「………(しゅん)」


11 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:44:54.85 EQzioBaLO 7/142

ブオオオオオン

「ついた」

「…(すたば、だ!)」

「疲れただろ?何飲む?」

「………(チョンチョン)」

「えーと、キャラメルフラペチーノ?と、アイスコーヒー下さい」

「………(わぁい)」


「うまい?これから何見ようか、ここ何でもあるぞ」

「………(ステーキたべたい)」

「…飲み終わったら本屋行こうか」

「………」

「首傾げんな」


12 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:53:32.02 EQzioBaLO 8/142

本屋

「何か欲しい本ある?」

「………(あるわけない)」

「わかった、兄ちゃんはわかるよお前の欲しい本」

スタスタ

「!!!(グイッ)」

「ん?裾掴んで可愛いのは二次元だけだから」

「………(パッ…フルフル)」

「いやいや、これとか…これだろ?」

ドサドサドサドサ

「………腕、重い…(くそあにきめ…)」

「(そくどくえいたんご、ねくすてー?、ふぉれ……、いっぱい…)」

「ぜーんぶ兄ちゃんのおごりだぞ(キラキラ)」

「……」


13 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 05:59:34.31 EQzioBaLO 9/142

「ただいまー…つっても母さん仕事か」

「ただ…いま……(フラフラ)」

「久しぶりに外出たから疲れた?明日からやれよな」

「……(プイ…結局本しか買ってもらってない)」

「寝に行っちゃったよあの馬鹿」

「16歳、間に合う…よな…うん…夕飯作るか」


ガチャン
「………(きょう外出れた、バイク気持ち良かったなぁ)……Zzz……」


15 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 06:04:43.96 EQzioBaLO 10/142



トントン
「…うぅ…あさ……?」

「朝よ、お兄ちゃんが昨日の夜あんたの為にステーキ焼いてたから食べればー?」

「(…ステーキ…!…パアァァ……)」

ガチャ
「あら、あんたから出てくるなんて、昨日楽しかったの?」

「…………」

「首傾げんなー、行ってきまーす」

「ビクッ!(階段下から…エスパー…)」
「いってらっしゃーーい」


17 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 06:13:52.57 EQzioBaLO 11/142

「……おいしい……(もぐもぐ)」

カチャカチャジャージャー
「食べ終わったらお皿洗うからよこしてね」

「お兄ちゃんが…最近へん…なんだけど……」

「えー?………」

「母さんはあんたの好きにさせたかったんだけどさ」

「お兄ちゃんは限界だったんじゃない?」

「………」

「ああ見えてお兄ちゃんシスコンだからww」

「………(ねぇよ)」

カチャカチャ
「…あらいもの…」

「ありがとう、これから毎日下降りてきてよね」

「…うん」


18 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 06:22:39.60 EQzioBaLO 12/142

ガチャ
「まど、あけようかな?」

ガラガラガラ

「きがえる」
「かおあらう」
「はみがき」

「それから、それから、」

「(……勉強机に山積みのアレ)」

パラパラ
「(…紙挟まってる)」


お前大学行かなきゃさ
折角高卒の認定証貰ってもあんま意味ないんだからな!
二年後兄ちゃんの後輩になれよ
イケメンいっぱいだぞ!!


「ぶっ、なにこれww」

「大学くらい選ばせてよ、って………」

「…………」


19 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 06:29:45.69 EQzioBaLO 13/142

コンコン、ガチャ

「母さん会社行ってく……チョゲラヒサカピプギュルルリィ!?」

「ビビビビビクッッッガタガタブルブル(発作が、発作が!)」

「どーしたの?どーしたの!?勉強してんの?あんた誰!?」

「ぉ、お兄ちゃんが、かってくれた、から…」

「そっか、そっか!今日夕飯ハンバーグにするわ!母さんの手作りで!」

「お兄ちゃんに夕飯作んなつっといて!行ってきまーす♪」

「う、ん…(…嵐……)」

「……(でもハンバーグかぁ…//)」

「…よし…8、紳士服と婦人服でボタンが違う理由…うぇすたん、くろーずぃず…?」


22 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 06:36:50.81 EQzioBaLO 14/142

「(今日はずっと単語やってただけで日が暮れた…)

「きゅるるる…(お腹すいたなぁ…)」

「ただいまー!!」

「(ガチャ)おかえり…」

「!?ただいま!お土産買ってきた、下でアイス食べようぜ」

「………(コクコク…あいす…!)」

「ほい、お前チョコ好きだよな」

「はーげんだっつ!(…クリスピーサンドチョコレートアンサンブル!!)」

「夕飯何にしよっかな…」

「ぁっ、お母さんが、ハンバーグ…(サクサク)」

「作るって?」

「(サクサクサクサク)」

「(美味)」


23 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 06:42:44.94 EQzioBaLO 15/142

ガタッガタン!

「ただいまー!」

「騒々しいなw何その大荷物」

「今日はパーティーよ!ほら、新発売のハーゲンダッツ!!」

「あ、」

「(サクサクサクサクサクサク!もういっこ//)」

「被った…(しゅん)」

「あとでたべる…ありがと…(わーいわーい)」

「よかったー、じゃハンバーグ作るから待っててねー」


25 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 06:50:46.10 EQzioBaLO 16/142

三人「いただきまーす」

「……おいしい…(もぐもぐ)」

「当たり前!ね、お兄ちゃん聞いてよ」

「ん?」

「今日ね、この子着替えて窓開けてパソコン閉じて勉強してたんだよ!」

「まじか、偉いじゃん」

「………(むぐむぐ)」

「そうだ、お兄ちゃん速読英単語を元にテスト作ってきたんだ」

「ビクッ!」

「テストはお前を取って食ったりしないよ?」

「……点」

「机置いとくから寝る前にやれよ、復習すれば0点でも良いから」


26 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 07:01:14.35 EQzioBaLO 17/142

ガチャ

「ふぅ、おなかいっぱい…しあわせ…」

「うげ、本当に机に問題乗ってるし…208問とか…」

「……(カリカリカリカリ)」

トントン
「出来たかー?」

ガチャ
「………(ズイ)」

「おう、採点してやるから邪魔するぞ」
「………(えっ)」


27 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 07:02:52.13 EQzioBaLO 18/142

シャッシャッシャッ
「できた、すげーじゃん!」

「208問中191問正解だ」

「今日、10番まで、やったから…」

「偉いわ、流石俺の妹」

「間違えた所明日の朝テストするから練習しとけよ」

「全問正解ならご褒美やるよ」

「(ご褒美……?)」

「(ケーキ、プリン、やきにく、)」

「がんばる…(カリカリカリカリ)」


28 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 07:10:58.76 EQzioBaLO 19/142

翌日

バターン!
「おはよー妹!朝のテストのお時間だよ!!」

「んぁ!?(ガリガリガリガリガリガリ)」

「…まだ、起きてたん…(怖い)」

「やきにくくものすすぱげってぃー(ガリガリガリガリガリガリ)」

「は、はい、テスト……(スッ)」

「(パシッ)てぃーかっぷぷりん、ん、ん、(ガリガリガリガリガリガリ…スッ)」

「早ッ、……ぜ、全問せいかい(怖い)」

「ごほうび?びんちょうたん!ん、ん、ん…」

「ああ…もしかしてずっと勉強してたのか?(怖い)」

「んんん…ん……(バターン!!)」

「おおおぉぉい!?」

「(スー…スー…)」


「寝てる…」


29 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 07:18:10.18 EQzioBaLO 20/142

「(目が覚めたらお昼過ぎだったよ)」

「(パソコン付けようかな)」
ヴイィン

「2ちゃんねる、規制中…ニコニコ…うーん…ようつべ…………」

「今まで何が楽しくて見てたんだっけ」

「いいや、OFF、と」
ヴォン

「…………」

「…私、この一年間何やってたんだろう」

「…………(ポロポロ)………」

「…お兄ちゃん……」


30 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 07:25:23.28 EQzioBaLO 21/142

「ただいまー!」

「ぉ、おかえりなさい!!」

「おう、珍しく元気いいな!

「今日のお土産は~…駅前に開店したチーズケーキ専門店のケーキだ!」

「ごほうび!」

「そうそう、一つ630円のケーキだ、噛み締めろよ!」

「(コクコクコクコク)」

「食べたら単語テストな」

「(プイッ)」

「ケーキいらないのか…残念だ」

「やるっ!やる!」

「よろしい」


31 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 07:32:05.72 EQzioBaLO 22/142

「すげえ、209~533まで満点だぞ」

「(昨日の夜通しやったから…)」

「(昨日狂人のように書いてたもんな…)」

「明日から単語テストの量は半分にするから、他もバランスよくやれよ」

「お兄ちゃん…」

「あ?」

「ありがとう……」

「何についてか分からないけど…頑張れよ」

「あ、再来週は模試だからそのつもりで」

「………(前言撤回)」


32 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 07:37:11.58 EQzioBaLO 23/142

模試の日

「起きろおおおお(ぐいぐいぐいぐい)」

「いーやーらー(ガタガタブルブルガタガタブルブル)」

「(人混みこわいよお日様こわいよ)」

「会場まで一緒に行ってやるから!」

「(ガタガタブルブルガタガタブルブル)」

「帰りに…」

「(テストこわいよお日様こわいよ)」

「焼き肉」

「ピクッ」

「ミルキーウェイのパフェ」

「ピクッ」

「じゃあな」

ぐいっ
「なに」

「…ぃぃいいく(カタカタカタカタ)」


35 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 07:57:19.88 EQzioBaLO 24/142

会場前

「お兄ちゃんの手作り弁当だ」

「………(おべんとう!//)」

「何にも怖くないから、頑張れよ、最後の科目になったらメールして」

「………(コクコク)」

会場

「(緊張する…まだ会場まで30分あるよ)」

「お隣りさんだ!こんにちは!」

「ビクビクッッ」

「あはは、驚きすぎ!友達全員別室でさぁ、今日はがんばろーね」

「ぅ、うん(いいひと)」

「隣がいい子でよかった、お昼一緒にたべよっ」

「(コクコク)」


37 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 08:07:23.86 EQzioBaLO 25/142

「お疲れ、どーだった?」

「…(コクコク)……」

「そうか…(どういう頷きだ?)」

「よし母さんと合流して焼き肉行くか」

「!!!(コクコクコクコクコクコク)」


深夜

「結局模試行けたんだー、凄いじゃん」

「相当疲れたみたいだけど、楽しかったみたい(多分)」

「良かったぁ…高望みはしないけどさ、大学入れたら一安心だよ」

「俺が入れる」

「それにしても何で……(引きこもりになんて…?)」


39 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 08:18:33.97 EQzioBaLO 26/142

模試返却日

「……(ドキドキ)」

「早くあけろよ(ペリッ)」

「」

「なになに…?偏差値…国語53、英語49、日本史37…?」

「よいよい」

「3…7…(ガーン)」

「思ったより全然悪くない」

「………(ばかにされてる)…」

「(もっと頑張らなきゃ……)」


41 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 08:29:30.82 EQzioBaLO 27/142

一月後の模試日

「あり、今日また模試?」

「ああ…一人で行けるってサッサと行っちまった」

「あいつ勉強しかしなくなったな」

「一つのことしか見えなくなるのは二人とも父さん似だね」

「………」

「父さんが死んでから……

「お兄ちゃんの記憶は一時飛ぶし、妹は不登校になったし…一年ちょっと大変だったけど……」

「………(その辺の記憶…いまだにないんだよな)」

「二人ともそれだけショックだったってことかな…でも……」

「まあこの話しはいーじゃん!妹のテスト採点してくるわ」

「あっ…そうね…ごめんなさい」


42 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 08:39:57.08 EQzioBaLO 28/142

シャッシャッシャッ

「……(単語、必修編はほぼ覚えたな…)」

「(次のテスト文法作るか単語で上級編か……うーん…)」

「(何となく私立しか考えて無かったがこの勢いなら国立も……)」

「ん?なんだこの本」

パラパラパラ
「なになに……、お兄ちゃんがスタバに連れて行ってくれた……」

「…日記か、見ちゃイカンよな、こういうのは」

「でも………(あいつが考えていたこと…気になる)」


44 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 09:07:17.10 EQzioBaLO 29/142

「(少しくらい…出しとく方が悪いよな!)」

パラパラパラパラ

7/24
お兄ちゃんが私の部屋に来た、微妙。
お父さんが天国でって、ばかみたい。

「(>>1の日か…ばかって…どういうことだよ)」

7/25
お兄ちゃんがスタバに連れて行ってくれた。
バイクに乗るのは気持ち良かった。

7/26
勉強に目覚めた。かも。
いつもよりごはんがおいしい。


45 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 09:08:37.03 EQzioBaLO 30/142

7/27
好きな言葉は「ご褒美」です。

7/28
がんばる。がんばった。

パラパラ

8/8
お兄ちゃんは幸せ者

「……?」

バン!!!
「うわあああ!」

「はぁ、はぁ…にっき……にっき…」

「いきなりあけんな!急いでどうした」

「そこに、にっき、……みた?」

「…見てないよ」


48 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 09:23:04.78 EQzioBaLO 31/142

「よかった…」

「大事ならしまっとけよ(俺が見てる前でベッドの下放り込んでも…)」

「…お母さん今日お仕事休みなんだね」

「ああ、母さんのご飯食べれるな」

「うん!」

「俺のメシも旨いだろ?」

「…………」

「首傾げんな!もうケーキもお菓子も買ってこねえ」

「お兄ちゃんのごはんおいしいです」

「はぁ…下いこうぜ、テストは一問間違いだったぞ」

「うん!」

「(ほっ…バレなくてよかった)」

「……………」


51 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 09:46:15.60 EQzioBaLO 32/142

妹の誕生日

「メリークリスマス!!」

「母さんそれは後!妹、17歳おめでとう!!」

「ありがとう!」

「死んだ父さんにも報告しなきゃね」

「…………」

「……(何とか言えよ…)」

~~~♪~~♪

「あっ!友達だ、電話してくるね!」

パタパタパタ
「あー、あの子か、夏の模試で知り合った、」

「多分その女ちゃんだな」


52 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 09:59:39.63 EQzioBaLO 33/142

「よく喋るようになったよねー…お兄ちゃんありがとね」

「いや、愛する妹のためだからw」

「ふふっw成績ぐーーんと伸びたしね、お兄ちゃんと同じとこ入りたいみたいだけど…どうなの?」

「あと一年あるし、もっともっと上狙えるくらいだよ」

「さすが母さんと父さんの子w」

「………あのさ、妹の誕生日にアレだけど…父さんって…どうして死んだの?」

「殺人」

「へ!?」

「じゃなくて事故…」

「…………?」


53 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 10:11:56.30 EQzioBaLO 34/142

「うん…それで?(事故ってのは知ってるんだけど…)」

「電車で―――……」

「電車?」

「たっだいま~♪…どしたの?二人とも変な顔して」

「あっおかえり!素晴らしい母スペシャルコースが冷める前に食べよ!」

「うん!!」

「……(なんだかなぁ…)」


54 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 10:24:13.53 EQzioBaLO 35/142

「あんたはさー、将来何になりたいの?」

「先生、とか」

「あら、血は争えないもんね」

「…………」

「…あんた父さんの話しすると暗い顔するけどさ…」

「父さんはそんなこと望んでないよ?」

「…………(カタカタカタカタ)」

「…ごめん」


「(俺は、妹の日記を見なきゃいけない気がする)」


55 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 10:38:26.33 EQzioBaLO 36/142

「ほ、ほら、プレゼント!」

「ありがと…でも、きぶん悪くなっちゃったから…うえいく」

「…………」


数日後

「今日も図書館行ってくる」

「おう、行ってら!」



「(あれからベッドの下にも、どこにも無い)」

「(日記…)」

「(…探すのもおかしい話しだけどさ)」

~~♪~~~♪


60 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 13:22:34.43 EQzioBaLO 37/142

~♪~~♪

「わっ(びっくりした…妹携帯忘れてる…鬼○ちひろの月光ってことは…)」

「090-****-****(女)…女ちゃんからか……」

「(090って久々に見たな…ま、放っとくのが吉)」


~~♪~♪~…ピタッ…

「(それより妹が携帯取りに来たらまずいな…出るか…)」

「(あと探してないのは勉強机の付属の引き出しのみ…ここだけでも…)」

「(一番上の底が15センチ程の引き出し…文房具がバラバラに押し込められてる…だけ)」

「(一段目とさほど深さが変わらない二段目…」

「(水彩絵の具や色鉛筆など、妹が好きだった絵の道具がぎゅうぎゅう詰め)」

「(最後、教科書やファイルなどがいれられる一番深い段)」

「(何も入って無い…空だ…区分けするための縦の仕切りも外されてる…)」

バタバタバタバタ


61 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 13:27:19.99 EQzioBaLO 38/142

「(やばい、妹だ!はさみ、ハサミは一段目!)」

ガチャン!

「…?お兄ちゃん?」

「ああ、ほら、このハサミ、借りようと思ってさ、勝手に入ってごめんな」

「もー…携帯忘れちゃって…」

「開けたドア閉じればコンニチハ、だ」
パタン
「ほんとだ、あった!あ、女から電話入ってる」

「まさか出てないよね~?」

「失礼な、不在着信になってんだろ」

「冗談冗談♪いってきまーす!」

「もう忘れもんないな?いってらっさい」

「うん!」
ガチャッ!バタン!ドタドタドタドタ!

「………そういや、女さんって、父さんが死んでから出来た初めての友達なんだよな…」

「何か相談のってたり…しないか…(ハサミ戻しとこ…)」


62 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 13:29:00.75 EQzioBaLO 39/142


「…………(ジィ―――…)」


「………(………キィ…パタン…)」



「…ん?……気のせいか……」


70 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 15:00:38.67 EQzioBaLO 40/142

数日後

「(…何度も妹のいぬ間に部屋に来るなんて、俺変態だよな)」

「……でも…(どう考えてもあの、一番下の引き出しが、おかしいんだよな)」


ガラッ


「白線の内側に下がってお待ち下さい」

「…は?前こんなん無かった…(真っ白い紙に妹の綺麗な字…)」

「他には何も無しか……」

「気味わりーなオイ…」

「(しかもなんだこの、左上の角の墨汁垂らしたみたいな染みは…)」

「はぁ…もう、諦めるしかないのかな…」


71 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 15:07:19.17 EQzioBaLO 41/142

翌日の夜

「お風呂いってくる~」

「はいよー、上がったらダッツが待ってるよ!」

「はーげんだっつ!わーい!」
パタパタパタ

~~~♪~~♪

「妹の携帯よく鳴るなぁ…クラシックの月光…暗くてあんまり好きじゃないのよね…」

~~♪~~~♪

「(あ、この曲は女ちゃんだ…)」

「こっちは好きよ♪でもテレビ見てるから、お兄ちゃんマナーモードにしてくんない?」

「ああ、うん…(女ちゃんの番号…090-****-****覚えておこう…)」


73 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 15:23:05.86 EQzioBaLO 42/142

「(もう女ちゃんしか頼みの綱がない…明日電話しよう…)」

「(俺は何をこんなに気にしてるんだ…)」

「…………」


コンコン
「お兄ちゃん?分からない所があって……」

「あ、ああ、入れよ」

「おじゃまします♪」

「…………(なんも変わった様子は無いなぁ…)」


74 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 15:26:17.50 EQzioBaLO 43/142

翌朝

プルルルルル…プルルルルル…プルルルルル……プチッ
「…出ない(間違い電話かと思われてる?)」

「(ならもう一度だ)」

プルルルルル…カチャ
「……はい…?」

「あっ、朝からすみません…女ちゃ…さんですか?あの…妹の兄です」

「えっ……」

「ちょっと妹のことで相談があって…」

「長々と電話するのも悪いし…直接会えないかなって」

「直接…?」

「………(何か怪しまれてる気がする…)」


75 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 15:27:20.23 EQzioBaLO 44/142

「○○大学のこと、何でも教えるし相談のるから…お願い!」

「そうだ、お兄さん○○大なんですよね…えーと…今度の日曜なら、いいですよ!」

「ありがとう、1時に××駅の改札で良い?(ほっ…大学名出したから信用してくれたっぽい)」

「はい!顔は…プリで知ってます?」

「うん、平気、あっ、俺は……」

「写メ見てますから分かりますw」

「(いつの間に…)おし、じゃあ日曜に!ありがとう」

「いえいえ」

「ふぅ………」




「………(ジ―――――ッ……)」


76 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 15:44:44.26 EQzioBaLO 45/142

日曜日

「お兄ちゃんどこ行くの?」

「ちょっと用事」

「ふーん……」

「お前は勉強しろよ、心配ないと思うけど」

「お兄ちゃん……気 を つ け て ね」

「(!?)そ、んな語気強めんでもwははw」

~~♪~~~♪

「(クラシックの月光…)行ってくんね、お土産買ってくる」

「わーい!楽しみ!」


78 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 15:52:46.63 EQzioBaLO 46/142

「うわ…電車行ったばっかりか」

「(並んでんの一番前だし、座れっかな…)」

「……………」

「…………(白線の内側に………)」

「すみません、前、どうぞ…(スッ)」

「(また一番後ろに並んでしまった)」

「(あれから何となく電車…と、白線が怖いんだよな)」

「(俺ってば影響受け易過ぎww)」

「………はぁ……」

××駅

「(……まだかなー)」

「あ!お兄さん!お待たせしてごめんなさい!」

「今来た所だから、それより今日はありがとう、受験生の時間奪っちゃって…」

「いえーそこは気にしないで下さい」

「んー…ここじゃなんだし…喫茶店でも行こっか」


89 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 18:51:49.21 EQzioBaLO 47/142

「こちらアイスティーとホットコーヒーでございます」

「どうも」

「ええと、それで早速なんだけど相談ってのがさ…」

「実は俺個人の相談で……」

「………?」

「女ちゃ…さんはさ、うちの父親が他界してることは知ってる?」

「!…勿論です、出会いは偶然ですが、それがきっかけで妹とは深い仲になりました…」

「(……ビンゴか)俺に一部記憶が無いことは…?」

「……知ってます、でも……」

「なら…俺が知らないことを教えてくれないか?」

「…………」

「急に押しかけて…申し訳ないと思ってる」

「いえ……ですが…」

「妹とお母さんは…記憶について、お兄さんに刺激を与えたくないとお考えのようです…」


90 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 18:58:17.17 EQzioBaLO 48/142

「記憶喪失というのは…なにしろ繊細らしくて…それで」

「父さんの死亡原因だけでも…だめ?俺には女さんしかいないんだ…」

「………」

「頼むよ…」

「ご家族にはナイショでお願いしますね…」

「恩に着るよ」

「………」

「…嵐が吹き荒れる金曜日に、三人、線路に落ちたんです」

「……(ゴクリ)」


91 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 19:01:21.70 EQzioBaLO 49/142

「一人がバランスを崩し、咄嗟に両脇にいた二人の腕を掴んで」

「そのまま崩れるように三人ともホームに…」

「それが私のパパとあなたのお父さんと、二人と同年代の中年男性だったらしいです」

「そして俺の父親は電車に引かれ、死んだ…」

「(コクン)幸い中年男性とパパは助かりました」

「不幸な中年男性は左脚を失いましたが…うちのパパは義肢装具士で…」

「きっとパパも可哀相に思ったんですね…義足をプレゼントしました…詳しくは分かりませんが…」


92 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 19:15:51.80 EQzioBaLO 50/142

「でも、引きずりこんだって…電車を待っていたら普通は人に背を向けている筈じゃ?」

「誰かと揉めていたか、喋っていたか…」

「雨風は酷く電車は遅れ、とにかく人がごった返していたみたいで…」

「カメラもそれ程約には立たなかったとのことです…」

「事故前後の記憶はパパもこれまたスッポリ抜けているらしく、分からないんです…」

「計り知れない恐怖ですもんね、仕方ないとは思いますが…もし殺人だったらと思うと…」

「以上が人づてに聞いた話しです……大丈夫、ですか?」

「……うん…話してくれてありがとう」

「(女ちゃんの父親も記憶が……)」

「関係無い話しですが、私のパパとお兄さんのお父さんは仲良しだったんですよ」

「へえ」

「話しに出る度に良い先生だ、って褒めてました」

「知らなかった…身の回りの話しをあまりしない人だったから…」

「そういう話しは、嬉しい」


93 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 19:29:28.54 EQzioBaLO 51/142

「あれ?てことは事故当日は女さんのお父さんとうちの父さんは一緒に出掛けてた?」

「(フルフル)たまたまホームに居合わせただけみたいです」

「なるほどなぁ…女さんのお父さんが元気ならなによりだ…いつか思い出すかもしれないし」

「そうですよね…すみません…」

「何で女さんが謝るの、悪いのは事故だよ」

「気を取り直して…大学について俺に聞きたいことある?」

「ぁっ、はい!ここの2006年からの……」

「ふむふむ……」


95 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 19:37:53.35 EQzioBaLO 52/142

「今日はありがとう、無理ばっかり言って…」

「こちらこそ!良かったらまた私とお話ししてください」

「喜んで、…本当に送ってかなくて平気?」

「はい、一駅ですし、駅まで母が迎えに来てくれるので」

「わかった、気をつけてね」

「ありがとうございます!」


「(妹の友達あって良い子だった)」

「(地元のコージー○ーナーでいっか)」

「(やっぱり最後尾に並ぶ俺キモイw)」


「マモナク デンシャガ マイリマス」


――ズルッ―ズル――――

「うぷっ…(後ろの汚いホームレスオヤジくっさ!!)」


97 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 19:48:03.62 EQzioBaLO 53/142

「あの~~スイマセン、煙草、持ってます?」

「うぇっ、俺?ごめんなさい、俺煙草吸わないんスよ…(なんだこのネットリしたダミ声は)」

「(悪臭過ぎて振り向くことも出来なかった、失礼だったかな…)」

「そう…ですか……」

ズルズル――ズルッ――

「(後ろ姿…カーキ色の上着が長すぎて引きずってるから下の方真っ黒じゃん…)」

「残り香うえぇぇっ」

「!!(つーか電車着いてるし!微妙な位置で突っ立ってて恥ずかしい//乗ろ…)」


98 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 20:00:38.67 EQzioBaLO 54/142

「たっだいま~」

「おかえりー!(ぎゅっ)」

「わあぁっ、何だそれ!纏わり付くなお土産落ちる」

「お土産?(キラキラ)」

「コージ~~~?」

「冨田ー!!」

「はぁ…ホイ…」

「わあ、コージー○ーナーだ!チーズケーキある?」

「あるある」

「やったー!」


104 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 20:34:04.04 EQzioBaLO 55/142

半年後

「(……7月入った…あれから何も分かったことがない…)」

「(時々日記も探すけど見付からないし)」

「模試かえってきたあああ!」

「見たくない、もうお前兄ちゃんより頭いいんだもん」

「前回より上がってたらごほうび!だよ、ね?」

「お兄ちゃん開封係だもんね!はやくはやく!」

「(ペリッ)……あ~…AとB判定しかねぇ…(K模試ってそんな簡単だっけ?)」

「俺と同じ大学やめろよ勿体ない」

「嫌だ…一緒がいい……もう決めたから」

「キュン!(近頃妹が可愛くて仕方ないです)」

「それで…上がってた?」


107 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 20:46:34.69 EQzioBaLO 56/142

「上がってる…お前ず~っと右上がりで下がったこと無いじゃん」

「ごほうびだー!」

「(この半年の間に困ったことが一つ増えました)」

「……何がいい?」

「わかってるくせにぃー」

「(と言うのも見てれば分かると思いますが)」

「はやく~!ん~っ!」

「(ご褒美にキスをねだるようになりました)」

「他!他じゃ駄目なのか?」

「お兄ちゃん顔あかいよ?」

「うるさいな…」


112 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 21:35:54.80 EQzioBaLO 57/142

「ちゅっ!」

妹が待ち切れないとばかりに不意をついて俺の唇を奪う。
その柔らかな感触が離れたと同時に、艶やかな妹の唇に目はくぎ付けになった。

「…っおい!」

暫しの間を置き出た声は少々上擦り、思わず口元を押さえる。
どうしたものかと思案していると、

「やだ?」

首を傾げ、大きい瞳がうるうると誘うように真っ直ぐ俺を射抜く。
いつもは腹立つことの多い首を傾げるこの仕種も、今だけは胸の鼓動を速めるばかりで。
俺はただ首を左右に振るしか無かった…。

段々と近付く妹の身体…床に胡座をかいて座る俺に抱き着くように座る。
ぎゅっと背中に手を回され、優しく抱きしめ返すと、妹が嬉しそうに俺を見上げた。


113 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 21:37:11.81 EQzioBaLO 58/142

「ちゅ…ちゅぷっ…ん……ちゅっ…」

「ん…っ……は……ちゅ…ふ……」

密着した状態で、徐々に舌を絡めてゆく。
口内を貪り合いながら、妹は一定のリズムで腰を擦り付けている…半身が滾るのを感じた。
次第にちゅくちゅくと唾液が絡む水音が鼓膜を刺激し、口の周りを汚す。
唇を離すと、透明の糸が一瞬二人を繋ぎ…妹の篭った熱い吐息が鼻先にかかる。

「はぁ…はぁ……お兄ちゃん…たってる…」

「…はぁ…知ってる……」

嬉しそうに舌なめずりをするその視線は俺の下半身に向けられていた。
熱そうな頬は綺麗な桃色に染まっている。


116 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 21:50:58.65 EQzioBaLO 59/142

カチャカチャと器用にズボンを脱がしてゆく妹。
初めての相手は、一応俺なのだけれど…少し心配になるほど手際が良い。

「もうおっきいねぇ……ごくぶとあいすきゃんでぃー♪」

妹にしげしげ眺められている間にも成長を続ける相棒は、妹がツンツンイタズラをするだけでも健気に反応を示す可愛い奴だ。

「あむ…ん…あう…じゅぷ…ちゅるる…じゅるじゅる……」

「…っく…あ………やば………」

ちゅるんと亀頭を撫でる唾液たっぷりの舌が動き回った直後のバキュームフェラ。
じゅぱじゅぱ我慢汁が妹の口の中へと消えてゆく。

「じゅっじゅっ…ん…んんっ…んっ…」

「……ああっ…もう………っ」

前後に振られる妹の頭…温かな喉奥に腰を振り、突き立ててしまいたいのを堪える。


117 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 22:06:52.03 EQzioBaLO 60/142

ぐい!!!妹を思い切り突き放す。
パーリィーは始まったばかりなのだ、まだ一人で逝く訳にはいかない…。

「ぜぇ…はぁ………」

今にも溢れ出しそうなソコに瞳を閉じて念じる―――静まり給え我が息子よ、解き放つ時はすぐに来るだろう、と。
ふと前を見遣ると唾液の次は我慢汁でベタついてしまった口がヌラヌラ光る顔を向ける妹。
俺は妹に抱き着くとそのまま持ち上げ、陶器を扱うかの如くベッドに降ろした。

「おにい……」

「ぐっ…」

途端に戦場へと引き戻される。
分身との格闘が続く…勝った。
「おにい」とは妹がおねだりする時に使う呼び名で、俺はとてもこれに弱い。

「分かってるよ…」

妹の顔を舐めるように見つめつつ、秘所に手を伸ばす。
ヌタァ…生温い愛液が指に吸い付き、纏わり付く。
入口で糸を引く液をクチュクチュこねていると、焦れたのか妹は両足をくねらせた。


118 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 22:22:54.82 EQzioBaLO 61/142

「おにい…もっと…もっとぉ…」

俺はラブ・アイランドに顔を埋める。

「ぐじゅ…れろ…ぢゅぢゅっ…ぺろぺろ…」

「ひゃああぁん!あっ…んや、あっ、あああっ//」

主張し始めた突起を舌で押し潰し、爪でカリカリ引っ掻く。
のけ反り動き回る両足をガッチリ掴み、妹の愛液を全て舐めとるつもりでベットリ舌を往復させる。

「はぁっはぁ、やあぁう…おにい、おにいぃぃっ//」

呂律の回らない口から発される喘ぎ声、ビクビク跳ねる滑らかな身体……。
目の前に広がる情景が自らの手中にある幸せを噛み締める。
右手指を二本、ヒクつく秘所に侵入させる。
キュウ…指を捕らえて離さない肉壁の手触りを指を動かし確かめる。


123 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 22:38:04.58 EQzioBaLO 62/142

「もおいいからぁっ…はやく…ちょーだい…おね…がいぃ……」

泣き出してしまったのか、声色には水気が含まれている。
よだれを垂らし、恥も外聞もない妹の姿……。
俺のピュアな心は仔猫ちゃんのか弱いお手々に鷲掴みにされたのだ。

「ああ…挿れるぞ?」

「はぁく……めたくたに…して……?」

うねうね動く腰が肉棒を何度も撫ぜる。
哀願されれば躊躇も遠慮も無く突き上げは始まる。

さあ、ようやく夜が更けて来た……


125 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 22:51:59.35 EQzioBaLO 63/142

広くもない部屋に矯正が反響する。

「ふあっあっああっ…んっ…はげしぃっよぉ…みゅあああ//」

容赦なく打ち付ける。リズム&暴力とはこのことだと俺は思う。
今まで何度となくお預けを喰らった肉棒はタコさんウインナーから大変身を遂げていた。

「妹っ…あぁ…さいっこう…はぁ…はぁ…うっ…くうぅっ」

「ひああぁっ!きもちいぃぃっ…はうぅ…あふっ…んあぁ…」

俺達は狂ったファービーだった。
壊れたオルゴールだった。
調律のされていないピアノだった。

妹は上下に揺する、俺は腟内を掻き回す。
肉体同士がぶち当たる渇いた音。
ぐちゅんぐちゅん、飛び散る混じり合った液体。
妹の感じる様を表す、妹の悲鳴にも似た喘ぎ。


126 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 23:01:20.44 EQzioBaLO 64/142

俺たちは同時に果てた。
一際甲高い声を上げ、ビクビクビクビク!制御の効かぬ妹の身体が跳ね暴れる。
今しがた陸に放り出された哀れな小魚のように。

ドクドク…注がれる音が聞こえるのではという位の白濁液が溢れ出る。
おさまらず、妹の痙攣が続く。
カタカタと震える様は一年前の妹を思い出させ、少し切なくなった。

俺は繋がったままそっと妹を抱きしめた。

たっぷりと余韻を堪能したあとに抜き取る…
あとからドロドロで真っ白の液が後をついて零れた。

「お兄ちゃん…だいすき…//」

「俺も……すきだ…」


俺達はこのまま二人仲良く眠りについた。


127 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 23:11:15.16 EQzioBaLO 65/142

休日の昼

「せっかく昼間に全員揃ったんだからご飯たべよー、二人共降りて!」

「はーい!」

「わかった」


「お昼は母さん特製ピッツァ!」

「わーい!」

「お皿用意するね!」

「ありがと」

~~~♪~~♪

「(出た…クラシック月光…聞き過ぎてうんざりだ)」

「(しかも妹出ねーんだよな……)」

「誰からだろ…(ソォー)」

「080-****-****(女)」

「(女ちゃん?何で出ないんだよ…)」

「(つうか…なんかおかしいような…)」


129 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 23:21:03.57 EQzioBaLO 66/142

「(あー…番号が違うのか)」

「(090で始まるの俺の周りじゃ珍しかったから覚えてる)」

「(二台持ちか……?)」

「(まぁ二台持ちか)」

「(…いいや…今度妹の目盗んで番号メモろっと…)」

「(……俺まじで変態だな…はぁ…)」

「お兄ちゃんなに百面相してるの?たべよ!」

「ああ?あああ、うん、いただきます」

「(むぐむぐ)……おいしい!」

「あんたそれ口癖?」

「(ブンブン)おいしい!!」

「ありがとね」


130 : 以下、名... - 2010/09/30(木) 23:40:19.18 EQzioBaLO 67/142



「(妹の風呂中…携帯を拝借し、メモはバッチリ…)」

「(だからって何も無いけど)」

「テスト採点行くか…最早あんま意味ねえけど」

カチャリ

シャッシャッシャッ
「三問間違い…果たして俺自身はこれを解けるのかしら……」

「(そういえば引き出し…随分開けてないな)」

ガラッ
「(何もない…紙も…左上の黒い染みが余計目立つけど)」

「女ちゃんに電話しよーか…話すことねぇよ…」



「(俺、記憶戻らないままなのかな?)」


147 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 08:00:32.50 OuYvD8VHO 68/142

翌日の朝

「お墓参り…二人とも今年は行く?」

「……(もぐもぐ)……(フルフル)」

「……(明後日…父さんの命日か)」

「妹は受験生だし、妹の分も俺が拝んどくよ」

「わかった」

ブーッブブーッブーッ
「うお…俺の携帯か」

「(何なに?午前中サボるわ?あいつ単位落とすんじゃ…)」

「(…そういや例の女ちゃんの番号…一応かけてみるか)」


148 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 08:17:59.13 OuYvD8VHO 69/142

プルル…

「(出んの早…)もしもし…?」

「…コスー…コスー………」

「…女さん……?」

「ダレだ?」

「わっ…女さんの携帯じゃないですよね、すみません…間違えたみたいです」

「ア゙ア゙アアァァァ!!!」

「うわっ(ブチ!)思わず切っちまった…」

ブチッ!ツーッツーッツーッ……

「こええええよ何あの怪獣みたいなガラガラの雄叫びは!」

「(俺番号うつし間違えたのか…でもあんな怒んなくても)」

「まだ耳がジンジン鳴ってるよ……」



「(再び何もツテが無くなったわけだ)」


149 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 08:30:20.57 OuYvD8VHO 70/142

「それじゃ、いってきまーす!」

「ここ一週間俺より早く出掛けるけど、あいつどこ行ってんの?」

「さあ…お勉強でしょ?」

「………(まだ図書館開く前だぞ…?)」

「色々あんのよ、詮索しすぎちゃだめよー?」

「ああ…今日帰り早いし、バイトまで時間あるから買い物あれば行くよ」

「うーん…食パンと…安かったらお醤油もよろしく」

「了解、そろそろ俺も行ってくる」

「いってらっしゃい!」

―――――



「(はー…むし暑いな…)」

「…………(ジィ―――――――)」





153 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 09:53:14.04 OuYvD8VHO 71/142

「マモナク デンシャガ マイリマス」

「ふわぁ~ぁ…(ねみぃ…)」

プシュー…ガタンガタン……


「(電車行った…)」

「(なら…明日……………)」

「お兄ちゃん…」

「…………」

「もうこんな時間…(やば…女ちゃんと××駅で待ち合わせなのに)」

「次の電車は………」

「あと二分か」

「…………」

ズルッ――ズルッ―――――
カシャ――キィ――――


「……この音………」


155 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 10:33:39.30 OuYvD8VHO 72/142

―――――――――

SIDE:兄

ブーッブブーッブーッ
ポケットからけたたましいバイブ音が伝わってくる。
何故か…それが電話だと確信したし、同時に絶対に今出なきゃならない気がした。

――そしてその第六感は確かに当たっていた。

「先生、腹痛くて…トイレ行って来ます!」

返事を聞く前に部屋を飛び出す。
慌てて制止しようとする友達の声も聞こえないフリをして。
その勢い口で走り出し、人気のない暗い男子トイレにかけ込んだ。
ポケットから取り落としそうになるのをあたふたとキャッチし、通話ボタンを連打する。

「もしもし!もしもし?」

何も聞こえない、と一瞬思った。
次の瞬間ザワザワとした喧騒が聞こえてくると、一層のこと動悸が激しくなった。

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!?聞こえる?」

妹の声が耳に入るとドクンと心臓が脈打ち、吐き気を催す。
しかし妹は俺よりも酷く動揺しているようだ。
自分の心音を出来るだけ落ち着かせ、宥めるよう優しく声のトーンを落とした。

「聞こえてるよ、どうした、落ち着いて、聞こえてるから」


156 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 10:50:33.48 OuYvD8VHO 73/142

「―――…デンシャガ マイリマス」

妹の後ろで機械的なアナウンスが聞こえる。
緊張が最高潮に達した時、ある音声がパッと鮮やかに頭に浮かんだ。
『ザアアアアァァ………白線の内側……ってお……下さい』
はっと意識を戻す。妹の危機に俺は何を……

「どうした?どうしたんだよ…妹?」

「……や…め……くろい…み…しみ…(カシャン!!)クロイシミ!!ガタッガチャッガタタタッ…ガタンガタン…ツーッツーッツーッ」

ツーッツーッと通話が切れた音にこれほど寂しさと恐怖を抱いたことはない。
俺は呆然と立ち尽くすしかなかった。

耳障りな渇いた落下音の直後、遠くの方で確かに聞こえた。
「クロイシミ」……黒い染みと言えば、一つしか思い浮かばない。


俺は駅に向かって全速力で走り出した。


157 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 11:24:25.40 OuYvD8VHO 74/142

「人身事故!?誰が、どうして!?」

駅で俺は叫んでいた。
家に帰るための電車は人身事故で運転を休止していた。
俺の鬼気迫る勢いに駅員はしどろもどろに詳細は分からないと答える。

予感は確信に変わりつつあった。

―――――――――
SIDE:妹

真っ白。

真っ白だ。

ぼやける視界が瞬きの度にクリアになってゆく。
何年も寝ていたかのように頭が働かない。
誰かが私の顔を覗き込んでいる。
――――お母さんだ。泣いてる。
あ、女だ、女のお母さんとお父さんも……………お兄ちゃん?お兄ちゃんは?

お兄ちゃん!!!!急激に思考の靄が晴れた。


158 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 11:25:08.62 OuYvD8VHO 75/142

「いま…いま、いつ?なんじ?」

言葉の強さと同じくらい力いっぱい起き上がったつもりが
腕の力は弱々しく脚にも全く力が入らなかった。

「落ち着いて…朝の9時よ…二日も眠っていたの…」

お母さんの化粧もしていない顔がくしゃくしゃに歪み、しゃくり上げながら教えてくれた。
ふと視線を泳がせると涙ぐむ女のお母さんと目が合い、続いてお父さんとも目が合い。
私はぎこちなく会釈をし、お礼を言った。

お兄ちゃんは?とは、聞けなかった。


159 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 11:43:58.15 OuYvD8VHO 76/142

―――――――――
SIDE:兄

一時間半後に運転が開始し、俺はイライラした足踏みをやめて満員電車に飛び乗った。
時間が経つごとに、俺が感じていた胸騒ぎは第六感などではなく
経験に基づくものだとハッキリ気付き始めていた。
ショック療法が一番効くじゃねえか。
誰にでもなく悪態を吐いた。


どうして妹が狙われなきゃならない?
それに…俺を「見た」のは父さんだけだ。




その父さんは、二年前に俺が線路に突き落とした筈なのに。


162 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 12:05:51.15 OuYvD8VHO 77/142

駅に着いた。ドアが開き切るのも待てずに半分程あいた隙間から出る。
後ろポケットから定期を取り出して翳す、改札が開いた。
それから家までの5分間、ひたすら走り続けた。
ゼエゼエ息を切らし鍵を差し込む。が、開いている。

「母さん?」

額の汗を拭い、靴を乱暴に脱ぎ捨てる。
電気つけっぱなしのリビングの真ん中でエプロンが脱ぎ捨てられていた。
エプロンを広い、台所前の椅子にかける。
後ろを向けば、まな板の上で切りかけの玉ねぎと包丁が転がっていて。
玄関に母さんの普段靴が無かった事実を除いても
これだけおかしな状況は初めてで、俺の勘違いという僅かな期待は脆くも崩れ去った。


二階だ、妹の部屋に…答えが、ある。はずだ。


169 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 15:00:44.19 OuYvD8VHO 78/142

妹の部屋に入ると真っ直ぐ引き出しへ向かい、一番下の引き出しを開いた。
以前と変わらず何も入っていない。
500円玉大の黒い点だけだ。
この黒い染みをどうしろと言うのか…爪でトントン叩いてみる。

「ここを…押すくらいしか思い付かないな…」

一段目の引き出しから太いマッキーを取り出し、黒い染みの上に縦に置く。
その上から少し体重をかけた。

「おわっ!…まじかよ…」

ガコ!底の木の板が持ち上がった。
妹の日記は板の下に隠されていたらしい。

椅子に座り、妹の勉強机で日記の最初のページを開く。



8/2
家族でハワイ旅行行ってきました!
この日記もハワイのお店で買ったのですが
どこも日本人だらけでびっくりでした


「(懐かしいな…五年前のハワイ旅行…)」


171 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 15:29:32.63 OuYvD8VHO 79/142

8/3
今日は東中と練習試合でした
なんと全勝!サーブ上手くなりたい

8/6
宿題終わらせちゃった!わたしってすごい!

「(最初の方は普通だな…二年前は…と)」パラパラパラ

1/1
年賀状今までで一番届いた!お兄ちゃんに勝ったし、嬉しい

パラパラパラパラ
「(うーん…………ん?)」

4/4
折角のお休みなのに嫌な日、お父さんがおかしい

「(…………)」


172 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 15:31:05.85 OuYvD8VHO 80/142

5/14
クラス対抗バレーボール大会だった
学校は楽しい
夜お父さんに叩かれた

5/30
デブ 怖いよ 気持ち悪い

6/18
お母さんがキャラ弁に挑戦!食べるのもったいなかった
夜にデブ来た、お腹痛い

6/19
妹ちゃんのお父さんは丁寧で優しくて、いい先生だね
右腕を骨折した青山さんのオバちゃんが言った

6/27
誰も気が付かない

7/3
お母さんには言えない、お兄ちゃんにはもっと言えない

7/13
台風が近付いてますって
もうすぐ夏休みだ


177 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 15:48:23.61 OuYvD8VHO 81/142

7/14
服の下、気持ち悪い

7/15
お兄ちゃんが怖い顔してデブを殴った
気付いてくれた…あのデカイ体が宙を舞ったから、おかしかった

ここまで読んで、一端目を離す。
悔しさに唇を噛んで、口の中に血の味が広がった。
自分のことしか考えてなかった俺は、長い間気付かなかったんだ…。

次のページは空白の変わりに新聞の切り抜きが貼ってあった。

「人身事故で一名死亡、一名重傷…………」
女ちゃんから聞いたことばかりが書かれていたが、ある一行が目を引いた。
「死亡者の頭部と両腕見付かっておらず…?」
それは教えて貰っていない事実だった。


179 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 16:34:17.96 OuYvD8VHO 82/142

「気遣ったんだろうな…」

あなたの父親の頭は吹っ飛んで見付かりませんでしたーなんて言えるわけがない。
それか、本当に知らなかったんだろう。
よくある人身事故の情報だからか、ネットにも死体の状態まで載っていなかった。

記事は事故直後のものだし、もう見付かっているのかも知れない。

ページをめくる。
空白の時間が続いた。
どうやら妹が引きこもった期間は日記が書かれていないようだ。
丸々一年後、俺が連れ出した日から始まっている。

パラパラ…
8/8
お兄ちゃんは幸せ者

8/15
女ちゃんとは仲良くなれそう

9/11
夜、電話がきた
一年間無駄に過ごした私は本当にばか


184 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 18:05:34.13 OuYvD8VHO 83/142

10/16
電話は女のせいだ、世間狭い

11/28
お兄ちゃん、この日記探してるでしょ?
見付からないと思うけど見付けても、日記のことは声に出しちゃだめだよ?

「(ドキッとした…けど今やそんなことどうでもいい)」
「(だって妹は電車に…もしかしたら……いや、最悪の事態はまだ考えない)」

12/25
誕生日、お兄ちゃんが時計をくれた
着信、着信、着信

12/29
絶対に電車に引かせるつもりだ
あの紙なら声にだされても平気だよね?

1/5
女ぜったい喋っちゃったとおもう

1/18
お兄ちゃん守りたい

「(…………)」

ブワッ!パラパラパラパラ!!
「う、わっ!」


190 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 19:07:49.48 OuYvD8VHO 84/142

紙が挟まっていた。
グシャグシャの紙を必死に引き伸ばしたような汚い紙だ。
大きくて乱暴な字でこう書かれている。


俺が手下す前にお前がバラしたら
お前と母さんも死ぬ
俺には全部聞こえている


その紙に妹の字で
080-****-****と書いてあった。
この番号には覚えがある。
腐るほど聞いた月光の番号……。
『ア゙ア゙アアァァァ!!!』
耳が割れるような雄叫びが思い出される。
もう一つ、いつかのネットリしたダミ声も………

何の気無しに視線をうつす。
プレゼントした腕時計が綺麗に飾ってあって、自然と笑みが零れる。
時刻はまもなく午前0時を回る所だった。


192 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 19:29:57.15 OuYvD8VHO 85/142

二年間の妹の生活を一心不乱に読み漁っていたらこんな夜更けだった。
ポケットから携帯を取り出すと一時間前に母さんからメールが入っている。
全然気付かなかった……メールを開こうとボタンを押そうとした、が、指が止まった。

急にツン、と顔を顰めたくなる悪臭が鼻をついたからだ。
グワングワン頭を何かに掻き回されているような頭痛が襲う。
携帯を机に起き、ぐしゃぐしゃの紙を握り潰した。
紙がどかされ、現れたページにはこう書かれている。
「命日に私に何かあったら、日記を持って逃げて」
このページに折り目が付いていた理由はこれか。
「俺は駄目な兄ちゃんだなぁ…。」


ズルッ――カシャ――ズル――カシャ―――――


振り向く必要はなかった。





「俺、煙草持ってないからね、父さん」


204 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 20:58:58.27 OuYvD8VHO 86/142

―――――――――
SIDE:妹

太陽の光が顔に注がれる。
眩しくてうっすらと目を開いた。

真っ白だ。

ぼーっと天井を見詰めながら、そう思ったのは今日で五回目。

落ち着いたと判断したのか、お母さんが教えてくれたことがある。

私が病院に運ばれた日、家は空き巣にあったらしい。
お母さんが鍵をかけ忘れたんだから、当然の結果かもしれないけど。

でも、盗まれたのはまな板に置いてあった包丁だけだった。

これが何を意味するか。
私には一目瞭然だった。
私を落とした犯人は捕まっていない。

そして、携帯が、鳴らない。
お兄ちゃんが、今、ここにいない。


210 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 22:04:22.35 OuYvD8VHO 87/142

二年と四日前。
お兄ちゃんはずぶ濡れで帰ってきた。
玄関先で倒れて高熱を出し、そのまま病院送りに。
三日間眠り続けた挙げ句に起きた時には自分の名前すら忘れていた。
数日を病院で過ごし、幸運にもすぐにほとんどの記憶を取り戻したものの
倒れた前後の日の出来事は遂に思い出さなかった。

『念のため本人確認をしていただけますか?』

そう問われ、お母さんに代わり私は首を横に振った。
所持品から身分証が出たことと、身体的特徴が重なったこと、
何より「居合わせた友人」が死体はお父さんだと認めたこと。
それで十分だった。
私は憔悴し切ったお母さんに頭のない死体を見せるなんてことは出来なかった。
これ以上精神的苦痛を与えたくなかったのだ。

私はお父さんがこうなった原因がお兄ちゃんにあることを確信していたから、
事件から早く離れたかったのもあるけれど。


でも、ここから私の悪夢は始まってしまった。


214 : 以下、名... - 2010/10/01(金) 22:41:17.32 OuYvD8VHO 88/142

はぁ…やることが無いから五日間、過去を辿ってばっかり…。
色々有りすぎたんだから、こうやってゆっくり整理する時が必要なのかも…。


――うん、そう、それで…私は怖くなったんだ。
事故は何かの間違いで、アイツがまた暴力を振りにくるんじゃないかって。
殺しに来るんじゃないかって。
――家族をめちゃくちゃにしに来るんじゃないかって。
だって私はアイツの死に様を見ていない!
お父さんは15歳の女子高生だった私に、根深いトラウマを植え付けた。
恐怖に震えた、次に光に、その次には人、最後には音も駄目になった。
私はひたすらに逃避した。
この時にはただの典型的な引きこもりになっていたわけだけれど。

事件やお父さんの話しをされる度に自然と涙が零れるクセは今だに直っていない。
引きこもりを脱した後も、私がお父さんの話題で黙ったのは、涙を堪えていたからだった。



コンコン

物音でハッと現実に帰る。
優しく扉を叩く、この叩き方はお母さんだ。

「どうぞー!」

私は精一杯元気よく返事をした。


243 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 10:00:06.37 FLlFetwCO 89/142

私はいそいそとベッドを起き上がらせるスイッチを押す。

「おはよ!」

思った通り、お母さんだ。
話し相手が来たことが嬉しくて、顔が綻ぶ。
今日はあの人も来ていないようだし…………。
そう思ったのもつかの間、お母さんの後から人の良さそうな細身のおじさんがひょっこり入ってきた。

今日も来た、私の笑顔は固まった。

事故に「居合わせた友人」その張本人、女のお父さんだ。
毎日私を説得しにやって来る―――。

「やあ妹ちゃん、調子はどうだい?」

「おはようございます…まあまあです」

わかりやすく声のトーンが下がった私に、合いの手とばかりにお母さんが声をかける。

「あんた毎日暇そうだから、小説買ってきたの」

重そうな三冊の本をゴトゴト私の前のテーブルに置く。
一つずつ眺める、流行りのファンタジーの1~3作目だった。

「ありがと」

これで暇が潰せる、内心は嬉々としていた。


244 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 10:01:51.78 FLlFetwCO 90/142

「それとね、女ちゃんのお父さんが今日はりんご下さったの!今剥く?」

「うーん」

張り切ってナイフを取り出すお母さんにいらないとは言えず、曖昧な返事をした。


暫しの沈黙。
シャリシャリ…滞り無く林檎の皮が剥かれる音だけが響いている。
女のお父さんはしげしげ私の下半身を見ていた。
右足、そして左足…舐めるように視線を流す……嫌な気分だ。




再び、思考の闇に意識が飲み込まれる。

お兄ちゃんは何を見て、どこまで知ったのだろう。


249 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 11:16:03.60 FLlFetwCO 91/142

私が落とされたあの日――――

お兄ちゃんがいつ襲われるかも分からないと、一週間ほど前から駅に先回りして見守っていた。
あの日も、無事電車に乗り込んだのを確認してほっと胸を撫で下ろし
女との約束まで時間を潰してから反対電車を待つことにしたんだ。

ズルッ――ズルッ―――――
カシャ――キィ――――

おかしな足音、悪臭に混じって聞き慣れない金属音がした……左脚を引きずる音だ。
お兄ちゃんに電話をかけながら、私は振り返った。

脂ぎった汚い輪郭を髭で覆った顔…使い古した雑巾のような服はパツパツに伸びていた……

優秀な外科医だった面影はどこにも無かったけど、あれはお父さんだった。


250 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 11:24:51.98 FLlFetwCO 92/142

私がお父さんに落とされた理由……。
お父さんは私がビクビク怖がるのを楽しんでいたし、私を恨んではいなかった。
じゃあなぜ?
お兄ちゃんに「バラした」と思われたから。これしか思い付かない。
少なくとも行方不明になるまで、お兄ちゃんは私の日記を見ていないはず。
書かれていたことを見たらどうにかして直接私にコンタクトを取るだろうし…。
残されたお父さんの痕跡は電話番号だけ……。

つまりお兄ちゃんがお父さんに電話した。
女のサブの番号に設定していたことが仇になったのか。
私の携帯を盗み見て女に電話している所は見た…事故についても女から聞いただろう。
その後記憶を取り戻した様子もなく、女への興味は失せたと思っていた。
その後にわざわざサブの番号まで調べたんだ…入浴中か、就寝中か……。

どちらにせよ私のヘマだ。


コトッ

「剥けた!」

お母さんの大袈裟な歓声が沈黙を破った。


253 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 12:00:29.95 FLlFetwCO 93/142

「……?あんた目開けたまま寝てんの?食べなー」

確かに、夢を見ていたかのような気分だ。
考えるということに没頭すると視界がぼやけるのは何故だろう。

「あはは……うん、いただきます…」

りんごに手を伸ばしたその時入り口のドアが開いた。
小太りな中年の看護婦さんだった。

「こんにちは。お母さん、ちょっとお時間あります?後でも大丈夫ですけど…」

「はい、すぐに行きます」

慌ててお母さんが立ち上がる。
そして申し訳なさそうに女のお父さんに振り返った。

「……すみません、少々お待ちいただけますか?」

「いいですよ、お気にならさずに」

ニッコリ、目を細めて仏の笑顔を向ける。
お母さんが言いにくそうに口を開く。

「ありがとうございます……妹、毎日来ていただいちゃ悪いから、どうするか決めなさいね…」

お母さんは女のお父さんに軽く会釈して、看護婦さんについて出ていってしまった。
室内が静まり返る。
初めて二人きりになってしまった。


261 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 14:00:42.28 FLlFetwCO 94/142

「………お父さんは生きてる」

唐突過ぎたか、女のお父さんは俯いていた顔を勢いよく上げた。

「あなたが、お父さんに協力したんでしょう……?」

細い目を限界まで見開いている。
構わず続けなければ。
聞くなら、今しかない。

「どこまで気付いてるんだ…?」

訝しげに眉を寄せる。
スマイルロボットにもこんな顔が出来るのかと少し感心してしまった。
私はゴクリと一度喉を鳴らして一方的に話し出した。

「お父さんが生きている理由を考えました…」
「単純な消去法ですが……」
「二年前の事故で一名は無傷、一名は死亡、そして一名は左脚を失った、そうですね?」

顔色を伺う。
真剣な眼差しで黙りこくっている。

「無傷はあなた、死亡はお父さん、左脚を負傷したのは赤の他人の中年男性」
「でもお父さんは生きている」

「私はこう考えました」

「左脚を失ったのがお父さんで、亡くなったのは生きているとされている中年男性だったのでは?と」


267 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 15:58:55.33 FLlFetwCO 95/142

「何らかの方法で入れ替わった……お兄ちゃんに復讐するために」

「君は…そんなことが可能だと思うのかい?」

「…………」

私は頭を捻った。
……つい先日見たお父さんの汚い姿を思い浮かべる。
事故当時、咄嗟に思い浮かんだ復讐劇…入れ替わりが成功すると踏んだ理由は……

「ホームレス……」

私はぼそりと呟いた。

「一緒に落ちたのは家も仕事もない人……さがす人がいないなら、バレないかもしれない」
「死体の死亡原因が明らかだったから、身分証明っていう物証と、一緒に落ちたあなたの証言」
「そしてそれを私達が承諾」
「別段医者も疑う要素はなく、バレなかったかも…知れ、ない……」

息継ぎもせず、一気にたたみかけたが、語尾は弱々しいものだった。
話してるうちに膨らんだ風船がしぼむように自信は失われていったのだ。
こういった知識は私には無い。
「かもしれない」「かもしれない」では意味がない。


271 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 16:48:57.51 FLlFetwCO 96/142

「大丈夫?辛そうだけど……」

女のお父さんが否定も肯定もせず、そんなことを聞いてくる。
心臓がドキドキ高鳴っている。
事件以来こんなにお父さんの話しを口にしたのは初めてで、吐き気さえ込み上げてきた。

「…自信が無い話しはもうやめます」

もやもやした気持ちが晴れるならと、続け様に話す。

「順を追うと………まず、お父さんが生きていると知ったのは去年…」
「実際にお父さんから電話がかかってきたからなんです。」
「女と仲良くなり、事件の関係者だと知った直後のことだったので、女経由だと真っ先に疑いました」

「そこから、女が話していた…あなたが義足を与えた相手、」
「それをお父さんに繋げるのは簡単でした」
「すぐにお兄ちゃんを襲い来なかった理由もこれで納得でき………」

「そこまで分かってるなら、変に小細工をしなくともこれを渡せる」

女のお父さんは私の言葉を遮り、椅子の脇に置いた鞄から本を取り出すと
無表情で私に差し出す。


273 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 17:18:14.64 FLlFetwCO 97/142

「これ……」

受け取り、表紙を見た瞬間に血の気が引いた。
説明を促すように女のお父さんを見上げる。

「『返す』ってさ」

私の日記だった。
震える手で本を開く。
ページがビリビリに破かれ、白紙のページしか残っていない。
パラパラ乱暴にめくっていくと、あるページの異変に気付く。

せき止められていたダムが決壊したように、あとからあとから涙が溢れる。

ページいっぱいに少し傷んだ金髪がセロテープでびっしり貼付けられていた。
セロテープと紙に赤い指紋も付いている。
金色の毛が窓から入る光に反射してキラキラ輝いていた。


―――――――――

『お兄ちゃんにあわないよそれww』

『うるさいな!ギラギラでかっこいいだろ?ザ・夏男って感じで』

『ぜんっぜんwww』


たわいない会話を思い出す。
それ程時間は経っていないのに、遠い昔の日の出来事のように感じた。


274 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 17:37:05.21 FLlFetwCO 98/142

コンコン

扉が鳴った。
咄嗟に日記を布団の下に隠す。

「お待たせー!遅くなっちゃっ…どうしたの!?」

お母さんが戻ってきた。
泣いている私に驚いている。

「説明をしてたら怖くなってしまったみたいで……」

女のお父さんがサラリと言った。
お母さんが心配そうに私を見たから、私はコクリと頷いた。

「…でも、決心がついたみたいで……」

勝手に話しを進められている。

「そうなの?後々楽かもしれないけれど、嫌ならまだ悩んでいいんだよ?」

さっきは早く決めろと言っていたくせに、本心はお母さんも戸惑っているようだ。

お母さんと女のお父さんを交互に見る。
もう迷っている余裕はない。
私にはお母さんしかいなくなってしまった……

「おねがいします…」

私はゆっくりと頭を下げた。


277 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 18:14:56.38 FLlFetwCO 99/142

――――――――
一年後

「おはよー妹ちゃん!一緒にいこ!」

友ちゃんが手を振り、私に走り寄ってくる。
春から新しく出来た友達だ。
ぎこちなく歩みを進めながら、私も手を振り返す。


―――私が退院してからすぐ、私とお母さんはマンションに引っ越しをした。
二人きりであの一軒家は大き過ぎたし、辛い思い出が残る家にあれ以上いることは耐えられなかった。
今では新しい生活にもすっかり馴染み、時が傷を癒してくれるのを信じるばかりだ……。

………学校やめて早三年。

見ての通り、私はまた学生をやっている。
勿論、お兄ちゃんが通っていた大学の生徒だ。
一番喜んでくれるはずだったお兄ちゃんは、やっぱりいないけれど。
お母さんは私の前ではいつも明るい。
だけど、今でもお兄ちゃんは行方不明だと思っていて、お兄ちゃんを捜し続けている。
いっそ死体が出て来ればいいのに、と思う時さえあるけど、叶いそうもない。


281 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 18:33:45.61 FLlFetwCO 100/142

頭を下げたあの日から、女のお父さんは親身になってリハビリに付き合ってくれた。
そのお陰で早くに歩けるようになった。

しかし、事件についてはもう関係ないとでも言うように口を閉じた。
しつこく問うたら『もう関わりたくない』それだけ言った。

私はようやく諦めた。
深く追求して、もし、お母さんまで失ったら…そんな危険は犯せないから。

そして、お父さんからは一切音沙汰が無くなった。
でも、忘れることなんて出来ない。
この左脚がある。
一生お父さんから逃れることなんて、不可能なのだ。



何の因果だろうか……
そう、私はお父さんに突き落とされたあの日に

お父さんと同じ




左脚を失っていた。
―――――――――


282 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 18:35:27.84 FLlFetwCO 101/142





SIDE:父







291 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 19:55:40.59 FLlFetwCO 102/142

あ゙~~~!空が青いなぁ~!!
やっぱり夏の公園はいいもんだな!な?

つうかよ、俺が死んでからもう三年もたってるんだぜ?
意味わかんねえな、でも本当だもんよ。
自分で言ってて笑っちまうよ。
俺これからどうしたらいいんだよ。
手元にゃあなーんもねえ。

え?しらねえだと?

もう良いからさ、ただ黙って聞いててくれよ。
誰に言ってるかってか?
わかってんだろ、そ こ の お 前 だ よ!
ど~うせ俺と一緒で暇だろうが。

やっと話す気になったんだ。
俺のこの命日にさ。


神父サマになったつもりで聞いてくれよ、俺の懺悔を。


294 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 20:26:33.40 FLlFetwCO 103/142

どっから話そうか…そうだなぁ……。

俺は外科医だった、これはさすがに知ってるだろ?
とびきり優秀で堅物でズル賢かった俺は、巷じゃ裏ボスな~んて呼ばれててよ。
次期院長になると期待されていた。
ハハハ!今の俺からは想像もつかないか?
口数も少ないクールな男だったが、月日は人を変えるんだよ。

そんでなぁ言いにくい話しだが……
俺はさ、妹が高校に入学した頃に妹部屋に盗聴器を付けたわけよ。

殴んなよ!?言わなくていいことを正直に話してるんだから!

こんな生きてるのか死んでるのか分からんカスに労力を使うな。な!
まぁ、なんだ…可愛い娘がどんどん大人になっていくものだから、心配になったんだ。
いい訳になってねえよな。わかってるさ。
俺はとんだクソヤロウだって自覚してる。

しかもそのあと、俺は妹に暴力を振るった。
最初は確か…遅くまで男と喋りくさってる妹に腹を立てて部屋に乗り込んだ。
当時仕事が上手く行ってなかったストレスで、ほとんどやつあたりだったと思う。

だが、妹の恐怖に引き攣る姿を見るのが次第に楽しくなってったわけだ。


296 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 20:55:41.96 FLlFetwCO 104/142

すぐに携帯を取り上げたさ。
夜遅くまで電話してくるようなやつと付き合うな!ってな。
俺ぁ妹の粗をそりゃあもう探しまくったよ。
そんでまぁ……パッと見気付かない所を狙って精神的にも肉体的にも存分にいたぶった。
その時はすげ~楽しかったよ。

俺はかなり用意周到だったから、母さんにも兄にも気付かれないと思ってた。
小型の盗聴グッズも毎日肌身離さず持っていたしな。

だが、俺の予想を反して兄が部屋に乗り込んできた。
あれは偶然だな、部活の合宿行った筈なのに忘れ物かなんかで帰って来たんだっけか。
兄のパンチは相当痛かったよ。
ほっせーのに俺吹っ飛んだ。舞ったよ。
人生終わった、と思った。

なのに兄ときたら二日だか三日だか?何事もなかったかのように静かなもんだ。
勿論一言も口は聞かなかったが、それはいつものことだったな。


298 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 21:24:21.58 FLlFetwCO 105/142

フゥ…暑くなってきたな……

そんでホレ、ようやく俺が死んだ日の話しだ。
あの日は台風でそりゃあ凄い雨だった!!
珍しく早く帰れるって日にこりゃないぜと落ち込んだもんだ。
混む時間帯に電車が遅れてホームは人・人・人!
そんでようやく電車が来たのに人が多すぎて俺はギリギリ乗れなかった。
あれに乗れてりゃあ今頃……まぁこれが無くとも包丁で刺されてたか。

左隣を見たら汚いよれよれのスーツを纏ったオヤジ。
小物臭っつか無職臭、ホームレス臭。
俺と同じデブのオッサンでもここまで違うかと思ったね。

右隣を見たらなんとまぁ偶然。
義肢装具士やってる友人がいた。
俺が挨拶したらヘコヘコ何度もお辞儀しやがる。
俺はギャンブル好きだったそいつにたんまり金を貸してた。
母さんは無駄遣いする人じゃなかったから、金は有り余るほどあったし
その金でいろ~んな所で俺は恩を売っていたよ。ちまちまとね。
そういうのも意外と役に立つもんさ。


299 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 21:51:20.25 FLlFetwCO 106/142

そんでな~、やっっっと電車が来る!
そう喜んでいたら真っ黒のウインドブレーカー着て目深にフード被った男が…
イヤ、ホラ、兄だけど。
それが後ろから俺を叩いた。
振り向いて、ああ兄か、と思ってたらタックルされてバランスを崩した。
落ちる…気付いたら友人の腕を掴んでいたよ。
ヒョロヒョロの友人は俺を支え切れず俺と同じようにバランスを崩す。

ここでよ、聞いてくれよ…さっき俺が小物臭って紹介したヤツ、
そいつが俺に手を伸ばしてくれたんだ。
咄嗟に助けようとしてくれたんだな。
だが、俺と友人、二人を支えることは不可能だった。
そいつも一緒に落ちた。

電車が近付く音がすぐ近くでした。
俺は線路の上で腰を抜かした。
だが、後ろから両腕を掴まれてズルズル引っ張られたんだ。
友人だった。線路のとこって、人が入れるくらい大きな横穴あいてるだろ?
友人が俺をそこまで運んでくれた。
だがな、如何せん友人は軽く、俺は重かった。
まずい、間に合わない!そう思って右脚をサッと折り畳んだ瞬間に遅れた左脚が轢かれた。

同時にドン!ガン!と何かが派手に車体にぶつかって踏まれた、物凄い音がした。


300 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 22:14:45.79 FLlFetwCO 107/142

俺は呆然と脚を見つめたよ。
見るに耐えたい光景だった。
痛すぎて、痛くなかったけどな!
…オイ、笑うところだぞ?

そんな中、最初に考えたことはこれだ。
脚は駄目かも知れんがこの怪我じゃあ死なないだろう、大丈夫。
ここは人が多いし、放置されて出血多量の心配も無い。

冷え切った脳みそが冷静に結論付けた。
職業病だな。
次にはキンキンに凍った頭に熱く煮えたぎる血が上るのを感じたさ。

『よくも……殺してやる……』

明確な殺意が沸いた。
例の小物臭の様子を確認に行った友人が戻ってきた。
頭がぶっ飛んでいるって言うじゃねえか。
金ならいくらでもやるから協力しろと凄んだ。
半ば脅しだな、ありゃあ。


302 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 22:37:44.35 FLlFetwCO 108/142

俺の荷物を線路にポーン!と放り投げた。
友人に小物臭の荷物…つっても財布のみだったが…を集めさせ、
死んだのは俺だと言え、そう命じた。

俺は住所不定無職の設定だったので、医者をたらい回しにされた。
俺と面識無い遠い病院に送られたのは良かったけど、死ぬかと思ったよ。

「死んだ俺」は一番近いウチの病院に運ばれたに違いないと思い、
翌日、俺はパソコンから隠しIDを使って自分についての情報をチェックした。
思惑通りヒットしたので、情報をチョチョイノチョイとイジった。
俺を死んだことを決定づけたのは、俺だ。
様々な管理を院長に任されていた俺に、病院内のことで不可能なことはなかった。

あんなに上手くいったのは正直びっくりだったけど、こんなもんだ。


305 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 22:56:16.38 FLlFetwCO 109/142

かくして俺はホームレスの座を手に入れた!!
威張って言えることじゃねえよってか!
復讐に燃えていた俺はそれどころじゃなかったんだよ。

見舞いにきた友人に契約済みの携帯を買わせ、義足もお願いした。
もちろん母さんにも黙ってた“恩売り用口座”の番号を教え、金をやったよ。

それからはリハビリの日々だった。
友人はギャンブル馬鹿だが、仕事の腕は良い。
地位も名誉も失ったショックは俺を飲んだくれにしたが、リハビリはやめなかった。歩けないことには復讐なぞ出来やしないからな。

死んだと思っていた父親がある日自分を殺しに来る…そのときどんな顔をするだろう?
考えただけで元気が出た。
生きる糧だった。

決行は何年先でも良い、だが、俺の命日にしてやろう。
その方がドラマチックだからな。
俺はそう決めた。


310 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 23:15:35.44 FLlFetwCO 110/142

ある日、友人からメールが入った。
なんということだ!友人の娘と妹が友人同士らしい!!
早速メールアドレスと電話番号を教えてもらったよ。

ひとつだけ、線路に放り出すわけに行かなかった荷物があったんだが、わかるか?
そうだそうだ、小型盗聴器だよ。
事故からは使っていなかったが、捨てないで良かったと思った。
妹をウサ晴らしに使ってやろうってな。

電話をしたら、妹はすぐに出た。
一年ぶりの妹の声は大人びて聞こえたなぁ。

「お父さんだよ^^」

切られた。

またかけた。

「イタズラはやめてください」

脅えた声で言う。
ゾクゾクした、懐かしい感覚だった。

「声で分かるだろ?兄は元気か?」

切られた。


311 : 以下、名... - 2010/10/02(土) 23:36:14.53 FLlFetwCO 111/142

あまり電話をし過ぎて母さんや兄に気付かれても困るからさ
一時間ごとにでも電話したかった気持ちをどうにか抑えてちゃんとバランスを取ったよ、偉いだろう?
………睨むなよ。
俺をあれだけ怖がっていた妹だから、
簡単にはバラさないだろうし、かといって拒否も出来なかったと思う。
そう分かっててストレス解消に使った。

リハビリをし、酒を飲み、妹を盗聴する。とても忙しい日々だった。

だがな、失敗した、と思うこともあった。
右耳に盗聴器を嵌めながら電話したときのことだ。
いつも通り妹がおどおど出た。

「も、もしもし…?」

「俺の着信音月光なの?暗くないかな?」

この日から盗聴を気にしてか、物音が減った。
つまらなくなった。
酒を飲む量が増えた。
俺の野太くてよく通る声は酒ですっかりダミ声になっていた。


313 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 00:01:29.12 GPKtZeEsO 112/142

イライラが募ったある日、俺は危険を犯した。
ナント家の玄関に侵入したんだぜ?
そう、そんなことまでしてたんだよ俺は。

妹の靴に、バラしたら母さんと妹も殺すという旨を書いたメモをグシャグシャに丸めて入れたんさ。
ああ、妹の日記に挟まってたやつだよ、そういや知ってたな。
俺はメモを見て怖がる妹を想像して満足したが、満足した直後に後悔した。
危うく計画が台なしになるところだったことに気付いたからな。

その後の俺はかなりの慎重派だった。
時々暇潰しに妹に電話をかける以外は、来たる時をひたすら待った。

だがしかし冬にだな、駅で兄を見掛けてしまった。
いても立ってもいられずに、気付いたら背後に迫ってた。
まだ決行の日ではないのによ……。
苦し紛れに行った俺が行った言葉を覚えてるか?
「あの~~スイマセン、煙草、持ってます?」
アッハッハッ!失笑モノだよ!

ま、ここで兄の声が聞けたのは後に役立ったがな。


317 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 00:42:30.58 GPKtZeEsO 113/142

何に役立ったかってえとな、電話だよ、電話。
俺の命日直前に、兄がかけてきた電話な。
女さんがどうとか言ってたよな…。
すぐに、駅で会った兄と同一の声だと気付いたよ。
俺の方はほぼ叫び声だったし、なかなか繋がらなかったみたいだけどな。
あ?薄々感づいてたって?嘘は良くないぞ嘘は。
って、殺人の方が良くないよな
……軽いジョークだっつに!

で、あん時の俺は話しの内容とかそんなことより
「兄から電話がかかってきた事実」でパニックに陥っていた。
妹が兄に俺の存在をバラした怒りと戸惑いで、電話口で叫んじまったよな。
変なハナシ、妹に裏切られたショックみたいなもんがあった。
それも実際は俺の勘違いだったんだよな、妹はバラさなかったんだろ?

だが、勘違いを突っ走る俺は勢いそのままに妹に制裁を加えることにした。

妹は俺の目論みに気付き、兄を守ろうとするに決まってる。
だから、兄がいる所に妹がいる。
兄は大学生だ、平日朝は絶対電車を利用するよな?

行くところは決まってたわけだ。


320 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 01:17:13.33 GPKtZeEsO 114/142

駅は兄でやりたかったシチュエーションだったが致し方ない。
悪いコにはお仕置きが必要だもんな。

兄が電車に乗るのを陰で見つめる妹を、陰で見つめていた俺。
すげえ図だな。
「兄は命日当日に料理してやるからな」
車内に消えてゆく兄に、心の中で声をかけていた。

妹はしばらく駅構内をウロチョロしてから、
兄と反対側の線に乗るらしくてな、丁度電車が来たら真ん中辺りだろうって位置に立ってた。
俺は後ろから妹に近付いてた。
と、妹が急いで携帯を取り出した。
なんだ…?近付いてるのがバレたか!
そう感づいた俺は歩みを早め、義足を引きずった。

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!?聞こえる?

俺は、そう急き込んで聞く妹の肩を掴んだ。

「マモナク デンシャガ マイリマス」
アナウンスが鳴り響く。
妹から携帯を奪った。
妹はクロイシミクロイシミ叫んでいる。
携帯を線路に投げた。
妹を線路に突き落とした。
携帯は、電車が踏み潰してくれない位置に落ちた。
妹は、電車が踏み潰してくれる位置に落ちた。

見届けずに背を向けたよ。
直後に背中に電車の轟音と風圧を感じた。


325 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 01:52:21.33 GPKtZeEsO 115/142

……怒ってるよなぁ…当たり前だわ。
許して欲しくて話してるわけじゃねえんだ、な、だから…。
もう少しだけ聞いてくれ。

――俺はあても無く、日が沈みかけの街中をさ迷い歩いていた。
明日、兄に復讐を果たし、ようやく俺は解放されるんだ。
何かに抗うように、何度も何度も繰り返し自由を想った。
何に束縛されているのかも分からなかった。


『妹は大丈夫だろうか……?』

思考が途切れたほんの隙に、決して浮かべたくなかったこの疑問をハッキリ浮かべてしまった。
自分が殺そうと落としたくせにだ、気が狂ってるとしか思えねえな。
言い知れぬ不安と寂しさに胸が押し潰されそうで、思わず盗聴器を耳にあてた。
妹の生活音が聞きたかったんだ。
無駄だって、ちゃんと分かってた。

無音でも、なんとなく安心できた。
俺は、妹の部屋と繋がっている。


349 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 10:00:03.41 GPKtZeEsO 116/142

俺は更に歩き続けた。
空が藍に染まっても、月が煌々と俺を照らしてもずっと。
そのうちに、自然と足は懐かしい我が家へと向かっていた。

そして、急に、本当に急にだった。
盗聴器から声が聞こえたんだ。

『人身事故で一名死亡、一名重傷…………』

俺はすこぶる驚いたよ。
もしかしたら実際に跳びはねてたかもしれない。
だってさ、妹の部屋から急に男の声で妙なことを喋りやがる。

一瞬誰だか悩んだよ…一瞬だぜ?
盗聴器、精度がそれほどよくなくてよ。
電話なんかよりもっと声が実際とはかなり異なって聞こえるもんなんだ。
分かるだろ?声だけじゃあ「誰」とまではなかなか結びつかないわけだ…

いや、だから一瞬だって。
兄しかいないとすぐに気付いたさ。


351 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 10:25:31.02 GPKtZeEsO 117/142

『兄が妹の部屋にいる。』

俺の心臓は電気ショックを受けたみたいに、それは大きく鼓動した!!
ヨッタヨタ亡霊みたく歩いてた俺だが、ぐんぐん力が漲った。
あん時は急いだ急いだ。
途中から左脚が痛んで引きずる羽目になったくらいにな。
太り過ぎて合わなくなってきてたんだよな……まったく…。

今も亡霊みたいなもんじゃん?
真顔で何言ってくれてんだよ。
少し痩せろ?
メシも酒もうめえんだ、良いことだろうが。

それはそうと…待ちに待った俺の命日はあと数時間に迫っていた。
時折、ブツブツ呟く兄の声が聞こえていたからまだ部屋にいることは確認出来たが
内心いつ出掛けてしまうかとハラハラしたな。

これはカミサマとやらが二年間苦労してきた俺にくれたプレゼントだと信じた。


急いだ甲斐あって、二時間前に家に着いた。
だが、妹の部屋と…リビングにもあかりが灯っている…。
母さんがいるのか?

俺は足止めをくらった。


354 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 10:54:59.76 GPKtZeEsO 118/142

家の前で待ってると怪しまれる…無い頭を働かせて、俺は付近を何周も歩いて待つことにした。

アッハッハ!それも怪しいよな!!
誰かしら、フロウシャがうろついてると気付いてたかもしんねえ。
でもな、このご時世自分から不審者に関わろうって輩はいないんだ。
だからそこまでは気にしてなかったよ。
もし何かあったら『殺される!』より『家事だ!』の方が通報して貰えるから、覚えとけよ。

ああ、スマンスマン話しがズレちまった。


――…一層俺は盗聴器に耳を澄ませたが、母さんらしき声は一度も入って来なかった。
リビングの明かりもついたまま。

ウロウロと収穫の無い時間を過ごして、二時間が経とうとしていた。
念のため、ここで帰るか?
いいや、冷静ではいられなかった。
あと十分で日付がかわる。
俺が生まれ変わる記念日まで、あと、たった十分なんだ。
いま行け、いま行かなきゃダメだ。
…これは予感とかそんなんじゃなく、俺が行きたかっただけだがな。
直前でお預けなんて、もう待てなかった。


355 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 11:27:16.49 GPKtZeEsO 119/142

母さんはいない。いないんだ。
妹の事故で呼び出されているに違いない。
俺は自身に都合よく言い聞かせた。
もしいたら、その時だ。

扉に手をかけた。
緊張の一瞬……鍵がかかっていない。
こんな日くらい用心しろとイラついたな。

あ?それどころじゃなかった?
ヘイヘイ、ウチは普段も無人じゃなきゃ鍵閉めないじゃねえか。
お前らがそんなだからこそ妹は面倒な細工して日記隠してたんだろ?
習慣ってのはここぞと言う時命運を分けるぞ。

とは言っても、俺が家に侵入したのは靴にメモ入れた時とこん時の二度だけだがな。

――中にそうっと入った。ゴキブリのように音も無く。
心臓を口からポロリするかと思った。
しちゃえば良かったのに、じゃねえよ!
リビングへの扉を開け、隙間から覗く。

誰もいない。ホッとした。

中に脚を踏み入れると、出掛ける際はピッシリ部屋を整える母さんが慌ただしく外出準備をした様子が現れていた。
コンロの上に水の入った鍋が置かれ、切りかけの玉ねぎが包丁と共にまな板に横たわる。

俺の予想…というか願いは、当たっていた。


357 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 12:03:14.40 GPKtZeEsO 120/142

勢いで行動した恐怖に、あとからブルブルと身震いをした。
まな板で寝ている、よく切れそうな包丁を手に取り、眺める。

さあ、もう零時まで何分もない。
身を翻した。
階段へ向かい、細心の注意を払い、上る。
あれほど左脚が邪魔だと感じた日も無かったなぁ…。

妹の部屋のドアを開ける。
妹の勉強机に向かう兄の背中が見えた。
一心不乱に本のページをめくってたな。
真後ろにいるのに全然気付いてなかったな。
怒りやら喜びやら、色んな感情が爆発しそうで震えが止まらなかった。


音に気を遣うことをやめて近付いた。
ズキズキ痛む脚を構わず引きずった。

それでやっと気付いただろ?肩がビクッと上下するのを見て拍子抜けしたよ。


361 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 12:34:30.43 GPKtZeEsO 121/142

「俺は駄目な兄ちゃんだなぁ…。」
なにいってんだこいつ。そう思ったよ。
妹の日記見て納得したけどな。
だが次の一言には驚いた。

「俺、煙草持ってないからね、父さん」

俺は固まった。
煙草をせがんだホームレスが=父親だと分かっていた?
ア゙ア゙アアァァァァ!!俺は叫んだ。
振り向かない兄の後ろから、生意気な金髪を鷲掴みにして、包丁で髪をザックリ切った。

左手に髪を握ったまま、右手の包丁を捨て、力一杯頭に殴りかかった。
兄は椅子からガタンと落ちた。
一方的に何度も何度も殴った。手に血が付いた。
兄が気絶したのを見て、興奮がおさまるのを感じ、一息ついた。

友人に電話をかけ、辺りを見回す。
そして、兄が読んでいた本が気になった。
机に寄る。髪を離し、本を手に取った。
金髪が机の上にばらまかれた。

本を開くと妹の日記。
もう読んだから内容は知ってるよな?

一通り読み終わり、俺は憎しみを込めて日記を叩きつけた。


外でクラクションが鳴るのが聞こえた。


364 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 12:58:47.58 GPKtZeEsO 122/142

ふう…話してたら興奮しちまった…。
スー……ハー……空気がおいしい。
よし、続きだ。


次に電話もかかってきた。
俺が呼んだ友人だ。下に到着したらしい。
妹が病院にいることも教えてくれた。
命に大事はないと……。

生きている…顔が綻ぶ。
日記の仕置きをせねばならんな、俺はニヤついた表情を浮かべた。
日記を脇に抱え、髪と包丁をポケットに突っ込んで兄を運ぼうと両腕を持った。
ふと思いついて兄を置いた。
妹の引き出しを適当に開けて、セロテープを見つけるとそれも拝借した。

兄が階段にガンゴンぶつかるのも構わず階下に引きずった。
体中青痣だらけだったのはそのせいだ。
大仕事だったよ。

玄関の扉を開けると、黒のワゴンが止まっていた。
運転席から辺りを見回しながら友人が出てきた。
真夜中だから人っこひとりいなかったよ。

二人で兄を車に運んだ。


366 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 13:21:44.07 GPKtZeEsO 123/142

発進した。
ハンドルを握る友人は顔面蒼白だった。
今更後悔でもしてんのか?
いくらやったと思ってんだ。

俺は舌打ちして作業に取り掛かった。
車内で妹の日記のページをビリビリに破いた。
ポケットから髪の毛を取り出し、セロテープで貼付けていく。
至福の時間だ。
妹は泣き叫ぶだろうか、ワクワクしたよ。
手に入れた髪を一本残らず貼付けて満足した俺は日記を閉じ、妹に届けるよう友人に手渡した。

これで最後だぞ、友人が言った。
偉っらそうによ…。

暫く走り続け、だだっ広い公園についた。
遊具はなくて木とか花とか、池が……ああ、ここだよ。今いる公園だ。

深夜二時だったが、木が鬱蒼と繁る奥の方まで運んだ。
友人は逃げるように帰った。


369 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 14:04:22.43 GPKtZeEsO 124/142

暗い。

僅かな月明かりと公園の電灯がうっすらと木々の間から漏れていた。
眠っている兄の青白い顔を照らした。

遂に、遂に、遂に俺は……!!
俺の二年間の全てがここにある。
憎い、憎い兄。俺の脚を奪った兄。
今の惨めな暮らしも全部コイツのせい……。
はやく、解き放たれ、安堵感に包まれたい。

俺はポケットから包丁を取り出した。

喉元に突き立てる―――。


あぁ!?……もういい?もういいってオイ!そりゃないぜ!?
最後まで聞いてくれよ。
こっからは知ってる、ってちょっと。
待て待て待て!


お前はいいだろうけど俺の気持ちはおさまらん!なあ、兄!


371 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 14:35:34.11 GPKtZeEsO 125/142

おう、おう、座れや、な!な?

知っての通り、俺はお前を殺せなかったわけなんだ。
俺には息子に包丁を刺す度胸は無かった。
それこそ惨めなハナシだ。
背中を押して電車に轢かせるのと、自分で直接手を下すのでは全く感覚が違ったよ。
しかも、刃を向けた途端に妹の時に感じた不安が俺を襲った。
冷や汗が頬を伝い、夏だというのにブルブル寒気がした。

汗が兄の頬に落ち、そしてお前は目覚めた。

シガラミがガラガラ音を立てて崩れたよ。
もういい、急に力が抜けて、どうでもよくなった。


374 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 14:49:03.09 GPKtZeEsO 126/142

――――で、今に至る………と。

あー…すっかり空がオレンジ色んなっちまったな。

話しかわるけどよ、俺を殺して記憶喪失になったって聞いてちょっと嬉しかった。
それだけショックだったてことだもんな…。
俺を殺したのに気にも止めずのうのうと暮らしてんのかと思ってたけど、
違ったんだ…ってさ。

…なあ、お前……そろそろ家に戻ったらどうだ?
お前が聞きたがってたことも、今話した中にあっただろ?
やっと全部話せたし……スッキリしてるよ。
……もう少し俺の所にいるのか。
めちゃくちゃ捜されてるだろうになぁ…。
まだやることがあるのか、まあ好きにしろや。
っておい、携帯鳴ってるぜ
いや、出ろよ!

あ?へー、お前記憶ぜーーんぶ戻ったのか!!
よしよし!俺の三回忌は恨みっこナシのぶっちゃけ大会だ!話せ話せ!

―――――――――


385 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 16:14:12.31 GPKtZeEsO 127/142

SIDE:兄のメール送信ボックス

_________________
Date│2011 7/17 18:18
▲ │M
Sub │(non title)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


今日、これから。


_________________


387 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 16:18:20.50 GPKtZeEsO 128/142

SIDE:?のメール送信ボックス

_________________
Date│2011 7/17 18:11
 ▲│兄
Sub │(non title)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


まだ、終わらない?


_________________




388 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 16:26:17.93 GPKtZeEsO 129/142

SIDE:兄のメール送信ボックス

_________________
Date│2008 7/15 7:03
 ▲│M
Sub │(non title)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


わかった、ありがとう。
すぐに取りに行くよ。


_________________




389 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 16:30:12.30 GPKtZeEsO 130/142

SIDE:?のメール送信ボックス

_________________
Date│2008 7/15 7:01
▲ │兄
Sub │(non title)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


合宿でしょ?
妹の部屋に忘れ物してたから
戻りなよ


_________________




391 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 17:08:33.64 GPKtZeEsO 131/142

SIDE:?

~~♪~~♪

待ち兼ねたメールが届いた。
深呼吸をして携帯を開く。
_________________
Date│2011 7/17 22:37
 ▲│兄
Sub │(non title)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

終わった。
うちに帰る。

_________________

パタン、ゆっくり携帯を閉じた。
涙が溢れる。やっと終わった。

もう、可愛い可愛い娘を何度も傷付けた人はいない。
娘はびくびくしなくて済むんだ。

~~♪~~♪
?またメールだ、とおもったら電話だった。
ピッ、通話ボタンを押し、耳に宛てる。


『息子の手を二回も汚させて、今どんな気持ち?母さん。』
_______________


395 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 17:23:21.88 GPKtZeEsO 132/142

SIDE:?→母

電話は一言だけ言って切られた。
メールには「うちに帰る」とあった。

私も「うちに帰らなければ」ならない。


財布と携帯だけを持ち、娘を連れて外に飛び出した。


398 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 17:39:33.02 GPKtZeEsO 133/142

SIDE:兄

午前零時、俺はとある一軒家にいた。
家族が揃っていた時に住んでいた場所だ。

今は全ての部屋が真っ暗で、カーテンも無い、勿論、家具も無い……。


399 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 17:50:26.46 GPKtZeEsO 134/142

SIDE:母

携帯の時計は零時半を数秒過ぎた所だった。
懐かしい家の前に、懐かしい人がいる。
娘がカタカタと震えている。
二メートルほど間隔をあけ、私は軽く会釈した。

「お久しぶり、です…」

「何畏まってんだ…電話で俺は聞いたよな、その答えを聞きに来たんだ。」

何も言わない私に携帯電話が投げられる。

「母さんが送ったメールがいくつか保護してある…」


400 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 18:20:01.77 GPKtZeEsO 135/142

受けとったまま私は携帯を持て余す。

「実の息子に父親を二回も殺させるよう仕向けるなんてな」

吐き捨てるように言われた。

「一回目は……殺せとは……」

言葉に詰まる………そうだ、私は知っていた。
妹がお父さんに暴力を振るわれていると、気付いていた。
なのに、妹は従順で、決して打ち明けることはなかった。

兄は妹をとても大事にしていた。
そこで、私が合宿に向かう兄にメールをし、鉢合わせにした。

そしてお父さんが死んだ。
安心していたのに……二年後に妹が脚を失った。
行方不明だった兄が「助かった」とメールをくれたのに、
今度こそ息の根を止めなくていいのかと、帰ってくるのを許さなかったのも私。

妹に危険が及ぶ可能性があるのが、堪えられなかった。
けれど、自分が巻き込まれるのも、手を汚すのも嫌だった。

「妹が大事……兄よりも」

本心だ。

「やめ…て………」

ガタガタ震えながら、妹が私をガードするように前に立ちはだかった。


401 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 18:23:18.32 GPKtZeEsO 136/142




「お母さんは…傷付けないで……お父さん……」






404 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 18:33:59.47 GPKtZeEsO 137/142

SIDE:妹

お父さんとお母さんが何の話しをしているのか、理解する余裕はない。
でも、私にはお母さんしかいないんだから。
私が守る。

「おい!俺は最低のクソ親父だが、母親も中々狂ってるぞ!!いいのか?」

お父さんが叫んだ。
私に言っているの?


パッ


玄関の明かりが付いて、私たちが立っている所まで光が広がった。


昔の、大好きだった家の、扉が開く。



「いいよ……」


言いながら、家から出て来たのはお兄ちゃんだった。


405 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 18:52:28.64 GPKtZeEsO 138/142

SIDE:父

二人が兄の姿を呆然と見つめてる。
死んだと思ってたやつが売り払った家から出てくるもんだから、当たり前か。


昼間、兄は俺の話しを聞いたあと、戻った記憶と母さんのことを打ち明けた。
母さんは何も知らない、そう思っていた俺からすりゃあ大変ショックな事実だったが…
それよりも気になることがあった。
兄の携帯を借り、兄のフリをしてメール、直後に俺が電話をかけた。
兄が死んだと思わせるため、そして母さんの本心を聞くためにだ。


兄が俺の隣に並ぶ。

「どういうこと?」

母さんが聞いた。


「俺がこの家を買い戻した。」


俺は三人にこの家に戻って欲しかった。


412 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 19:13:35.36 GPKtZeEsO 139/142

SIDE:兄

『息子の手を二回も汚させて、今どんな気持ち?母さん。』

母さんに言った父さんの言葉に、俺はドキリとした。

償いのつもりなのか何なのか…父さんは家を買い戻したと言う。
たけど、俺の話しを聞いて母さんに確認したいことが出来たらしい。
家の内側に隠れ、扉に耳を押し付けて話しを聞いた。

まさかこんなにキッパリ妹の方が大事だと言われるとは思っていなかったが……
また妹と母さんとこの家に住めるならば、正直嬉しくもあった。


415 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 19:44:08.99 GPKtZeEsO 140/142

父さんは母さんに詰め寄った。

「お前は…俺に兄が殺されていたかもしれないのに、素知らぬフリだ」
「兄が俺を殺ったらラッキー、くらいにしか思ってなかっただろ?妹さえいれば良かったんだろ?」
「俺は兄を本気で殺そうとしてた、妹も傷付けた、でも俺と違ってお前は……」
「お前はまともで……妹と兄を立派に…………」

「いいよ母さん、何にも答えないで」

俺は父さんを遮った。
悲痛な表情を浮かべる母さんを見てられなかった。

「いや…ごめん…あぁ…スマン……」

ハッと我に返ったように父さんが謝る。
ゴソゴソポケットを漁り、鍵を取り出す。
それを母さんに渡した。
母さんは恐る恐る手を伸ばし、受けとった。

そのあとに妹を一瞥すると「ごめんな」とだけ呟いた。


416 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 20:08:35.95 GPKtZeEsO 141/142

母さんと妹は何も言わず固まっている。
最後に、父さんは二人に見えないよう俺に小型盗聴器を渡した。
「俺はもう悪さしない、っていう証拠だ」
そう耳打ちし、父さんが真っ黒の歯を見せて笑った。
俺たちに背を向け、歩きだす。

「どこ行くんだ?」

父さんの背中に投げかける。

「警察!俺もう疲れたわ」

父さんはこちらを向かずに言い、ヨタヨタ歩きながら手を挙げて、ゆらゆらと振る。
俺は父さんに駆け寄った。
俺の罪はどうなる―――?

「俺は………」
「妹どうすんだ。お前は妹が自立してからにしろ!」

俺に言いたいことはお見通しだったらしく、早々に遮られてしまった。

「……わかったよ」

本当は納得出来ていなかったが、ノーとは言えなかった。

「カッとなって母さん殺したりすんじゃねえぞ?」

父さんはまた笑った。俺は全く笑えなかった。

父さんは姿が見えなくなるまで、一度も振り返らなかった。


421 : 以下、名... - 2010/10/03(日) 20:26:56.35 GPKtZeEsO 142/142

父さんがすっかり見えなくなり、後ろを振り返る。
棒立ちになった母さんと妹がいた。
俺は二人に歩みより、家を指差す。

「どうする?入る?」

母さんは妹を見た。
妹はコクンと頷き、俺に抱き着いた。
妹の頭をワシワシと撫でる。
母さんが申し訳なさそうに俺を見たから、俺は困ったように笑った。

母さんが扉を開けて俺と妹は中に入った。

壁紙、床、畳…家中『新しい』匂いでいっぱいだった。
疲れていた俺達三人はカーテンの無いリビングで、月明かりを浴びながら大の字になって寝た。

これからどうするかとか、俺達の関係とか、事件とか、
その他諸々考えなくちゃいけないことだらけだ。
問題山積みと言う言葉がこれほど似合う家族はいないだろう。

だけど今は、今この瞬間は、この家があって、家族がいて、
それしか無いけど、それで十分だった。
それは妹も、母さんも、変わらないといいなと思う。



『学校やめて早三年』終


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