男「……」ゴロゴロ
男「あー……仕事行くのめんどくせえ。ずっとゴロゴロしてたい」
業者「でしたら、あなたのお仕事……代行しましょうか」
男「代行?」
業者「ようするに、あなたの代わりに会社に行って仕事をするということです」
男「へぇ~、そんなサービスができたんだ。だったらよろしく頼むよ」
業者「かしこまりました」
元スレ
男「仕事行くのめんどくせえ……」代行業者「あなたのお仕事代行しましょうか」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1601543709/
業者「代行終わりました」
男「ご苦労さん」
男「引き継ぎもせず、突然代行させる形になったけど、大丈夫だった?」
業者「もちろんです。私もプロですから」
男「そりゃよかった」
業者「では私はこれで」
男「飲み会めんどくせえなぁ……」
男「酔っ払った奴に絡まれたり、上司に酌させられたり、どうもあのノリが苦手だ」
業者「それでしたら、飲み会を代行しましょうか?」
男「またあんたか。仕事だけじゃなく、飲み会まで代行してくれるの?」
業者「ええ、ご希望とあらば」
男「だったら俺の代わりに出席してくれ」
業者「かしこまりました」
業者「戻り……ました……」フラフラ
男「お疲れ、結構飲んだみたいだね」
業者「ええ……代行なのではりきって飲みました」
男「帰りはどうやって帰ってきたの? 徒歩?」
業者「運転代行に頼みました」
男「代行業者が代行してもらったわけか、アハハ」
業者「面目ありません……」
男「連休か……」
業者「久々の大型連休ですね」
男「どこか旅行でも行きたいけど……ゴロゴロしてたい気持ちのが大きいな。だけど行かなきゃ後悔しそう……」
業者「でしたら、代行して旅行に行ってきましょうか?」
男「え、マジ? そうしてくれる?」
業者「ええ、土産話をいっぱい持ってきます」
男「楽しみにしてるよ!」
業者「戻りました」
男「お帰り、旅行はどうだった?」
業者「はい、とても楽しかったです」
男「どこに行ったの?」
業者「まずは、お寺巡りをしまして、それから温泉街に……夜は地酒のある居酒屋へ……」
男「ふむふむ、なかなかいいチョイスだ」
男「俺もいい年だ……そろそろ彼女作らないとなぁ~」
男「だけど、恋愛経験なんてろくにないし、キツそうだなぁ」
業者「私が代行して恋人を作りましょうか」
男「え、そこまでしてくれるの?」
業者「はい、恋人に求める条件をおっしゃって下されば」
男「じゃあ……色白で、清楚で、胸が大きくて、料理が上手で……」
業者「条件を満たす彼女を作ってきました」
女「こんにちは……得意料理はサバの味噌煮です」
男「おお~、こりゃあ美人だ。女優っていわれても信じちゃうよ」
業者「ではさっそく、デートしたらいかがです?」
男「デート、ねえ……。どこ行けばいいのかも、正直よく分からないな」
男「あの、デートの代行ってのは……」
業者「可能ですが」
男「じゃあ、代わりにデートしてきてよ。この子を楽しませてくれ」
業者「かしこまりました」
男「彼女とは上手くいってる?」
業者「はい、結婚一歩手前というところまできました」
男「やるぅ」
業者「後はあなたがプロポーズするだけです」
男「プロポース、か……。なんていえばいいのかな」
業者「普通でいいんですよ、普通で」
男「……」
男「悪い! また代行してくれ!」
業者「では、代行で彼女にプロポーズします」
業者「プロポーズは成功しました」
女「あなたの妻になりました」
男「いやー、こんな美人を奥さんにできるとは、代行業者さんさまさまだな」
業者「後はお二人で結婚式を挙げるだけですね」
男「結婚式……」
男(どこか式場を予約したり、招待状送ったり、両親に挨拶したり……大変そうだな)
男「めんどくさいから、代行してもらえる?」
女「子供が欲しいね」
業者「そうだね」
業者「というわけで、あなたと子供を作りたいそうです」
男「ああ……夫婦だし、やることはやらなきゃな」
男「でもな……腰が痛いし……。悪いんだけど、また代行で」
業者「かしこまりました」
業者「じゃあ、今夜……」
女「うん」
男「元気な俺の子を作れよー!」
業者「妻が無事出産しました」
業者「種は私ですが、あなたの子供です」
赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
男「おお、当たり前だけど俺には似てないな」
業者「さっそく育児をなさって下さい」
男「育児も大変そうだし……代行で頼むよ!」
業者「かしこまりました」
業者「子供もずいぶん大きくなりました」
子「パパー、どこか遊び連れてってー!」グイグイ
男「おお、よしよし。俺に育てられたわけじゃないのによく懐いてくれるな」
業者「あくまで私は父親代行ですから。本物の父親に懐くのは当然でしょう」
男「じゃあ……家族サービスも代行してもらおうかな」
業者「分かりました。遊園地にでも連れていきましょう」
子「やったーっ!」
業者「子供も大きくなり、大学を卒業しました」
男「俺の息子を立派に育ててくれてありがとう」
業者「いえいえ」
業者「さて、あとは老後の生活設計を考えなくてはいけませんね」
業者「今、私はあなたの仕事を代行していますが、その会社ももうすぐ定年ですしね」
男「老後の生活設計も代行してもらうことってできる?」
業者「もちろん可能です」
男「じゃあ、頼んだよ。完璧なプランを立ててくれ」
男「俺も老いたな……」
業者「私もです……」
男「いつもいつも代行してくれて、ありがとう……」
業者「いえいえ、私も楽しんでましたから……」
男「しかし、死んだらどうなるんだろうなぁ……。天国とか地獄とか輪廻転生とか、めんどくさそう……」
業者「でしたら、死ぬのも代行しましょうか?」
男「そうしてくれる? 頼むよ!」
業者「かしこまりました」
男「……」
男「……」
男「……」
男「最近、あの業者さん来ないけど、どうしたんだろ?」
男「ああ……そっか。俺の代わりに死んだんだっけ」
男「……」
男「……」
男「……」
男「っていうか、なんで俺は死なないんだ?」
男「ああ……死を代行してもらったから、死ねないのか」
男「やっちまったなぁ」
男「……」
男「……」
男「……」
男「あれからどれだけ時が経ったか……」
男「俺以外の人類はあっさり滅んだ」
男「原因……忘れちまった。きっと記憶に残らないほど、下らない理由だったに違いない」
男「……」
男「……」
男「……」
男「……」
男「……」
男「地球もなくなった」
男「膨張した太陽に呑み込まれちまったんだ」
男「その太陽も……自壊するか、他の星に呑まれるかして、消えちまった」
男「……」
男「……」
男「……」
男「……」
男「……」
男「ついに宇宙が終焉の時を迎えた」
男「今、俺は……“無”の中を漂ってる。気分は悪くない。退屈だけど」
男「……」
男「……」
男「……」
男「これってもしかして、俺が新しい宇宙を創造しなきゃいけない流れ?」
男「めんどくせえ……」
男「誰か代行してくれないかな……」
END