ゲイ「…………」
屋上にまで呼び出しといてそれかよ。
後輩「なんで無言……」
ゲイ「ああ、いや……後輩だな」
好きな男に惚れられてる邪魔な女とはさすがに言えんな。
後輩「あのさ、私はさ……」
元スレ
後輩女「ゲイさんは私のことどう思ってる?」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1254317773/
ガタ、
ゲイ「おー」
後輩「……!」
男友「よっ」
ゲイ「どうした? 友、なんか用か?」
友「いやゲイと後輩が二人で屋上行ったって聞いたから」
ゲイ「それで不安になったんかよ、べた惚れだな」
後輩「まさか、友さんが私に惚れてるなんてありえない」
ゲイ「なんで?」
後輩「それは……まあ希望的観測」
友「失礼だなーハッハッハ、ハハ……」
ゲイ「じゃあ俺は用事あるから二人で楽しめよ」
後輩「えっ……ゲイさん」
友「ありがとな」
後輩「…………」
ゲイ「はー……」
友ともっと話がしたかった。
ゲイ「ゲイも楽じゃねえな」
恋するだけ神経磨りへるし、楽しくねえ。
後輩「なにが楽じゃないの?」
ゲイ「ゴホッ、こ、後輩! お前いつから?」
後輩「ゲイさんが何とかも楽じゃねえって言ったとこからだけど」
ゲイ「そうかよ」
前半部分聞かれてなくてよかったな。
疎ましく感じることはあっても可愛い後輩だ、ゲイなのがバレて距離置かれるのはキツい。
ゲイ「友はどうした?」
後輩「ゲイさんと話したいからって伝えてきました」
前言撤回だ。
コイツとは距離置きたい……
ゲイ「はー……バカかお前……」
後輩「何が?」
ゲイ「そんなん言ったら俺がアイツと気まずくなるだろ」
後輩「あ……すみません」
ゲイ「いいけどさ、お前案外鈍いのな? 友は明らかにお前のこと好きだぞ」
認めたくはないけどな。
仕方ねえよ、友は男だから後輩みたいな可愛い女好きになるのが普通だし、幸せだ。
後輩「ゲイさんだって……」
ゲイ「俺?」
後輩「鈍いじゃん、何も分かってない」
ゲイ「俺は鈍くねえよ、むしろ敏感だ」
性的な意味で、なんて。
後輩「ゲイさんはいつも傍観者でいようとする。そうやって周りから自分を切り離して考えようとするから他人の気持ちが分からないんだよ」
ゲイ「そんなこと……」
後輩「あるから! 私が……私がゲイさんのこと死ぬ程好きなことも知らないじゃん」
ゲイ「は?」
何言ってるんだコイツ?
俺はゲイだぞ、いや知らないか。
後輩「だーかーら私はさ、ゲイさんのことを世界で一番愛してるの!」
ゲイ「……マジ?」
何この三角関係?
報われないループしてるぞ。
後輩「……こほん、マジだよ」
これは……言うしかないんじゃないのか?
今さら関係修復とか無理だろ。
ゲイ「だが……イです」
後輩「聞こえない、大声でお願いします」
ゲイ「だが俺はゲイです!!」
後輩「…………」
言っちまった、誰にもカミングアウトしてなかったことを自分のことを好きな女に。
後輩「そ、そんなこと大声で言わないでよ!」
ゲイ「いや、お前が大きな声でって……」
後輩「そんなトンデモ告白だとは思わなかったし」
ゲイ「すまん」
後輩「いえ……でもそれなら私諦めるしかないかな……」
ゲイ「まあ、そうなるな」
落ち込ませちまったか?
後輩「なんて言うわけないでしょ、私はゲイさんのこと諦めない」
ゲイ「諦め悪いな」
後輩「というわけで付き合おう」
ゲイ「どうしてそうなった」
後輩「おためし期間、クーリングオフしてもいい」
ゲイ「一週間?」
後輩「YES」
ゲイ「まあ、それなら」
こいつも諦めるだろうし。
後輩「じゃあ……よろしく」
あ、手握られた。
小さい手だなー友とはまったく違う。
そんな些細なことからも俺は後輩を好きになることはないという絶対の自信を得ていた。
月曜日、残り6日。
ゲイ「行ってきます」
後輩「おはよう、ゲイさん」
ゲイ「後輩、どうした?」
後輩「……私、彼女だもん一緒に学校行くくらい当たり前じゃん」
方向真反対だけど、
後輩「さ、行こ行こ」
健気な奴。
ゲイ「手、つなぐか?」
後輩「いいの?」
ゲイ「まあ」
ぎゅ……
ゲイ「小さいな」
後輩「なにが?」
やっぱり好きじゃない。
ゲイと女なんて性嗜好の壁厚すぎるだろ。
こいつも友みたいな奴と付き合った方が絶対いい。
ゲイ「後輩、お前さやっぱり友と……」
後輩「友先輩がどうかしたの?」
ゲイ「いや、別に」
今は一応俺の彼女だ。
こんなこと言うべきじゃないな。
放課後、下駄箱前。
友「ゲイ、後輩と付き合ってるんだってな……」
なんで知ってるんだ?
ゲイ「それは……そうだな付き合ってるよ」
友「……俺のことは気にするなよ、じゃあな」
ゲイ「ああ」
行っちまった……
ゲイ「友……俺はお前ともっと話がしたい、一緒にいたい」
気持ち悪いなあ、俺。
後輩「ゲイさんは、友さんが好きなんだ」
ゲイ「後輩? どこにいるんだ?」
後輩「下駄箱の裏」
確かに後ろから声がする。
後輩「昨日からそうかもしれないと思ってたから気にしないよ」
ゲイ「泣いてるじゃねえか」
下を向いてもバレバレだ。
思わず後輩の頭に手を置いた。
後輩「……自惚れないで、先輩のせいで泣いてるんじゃない」
ゲイ「いきなりツンデレかよ、流行らんぞ」
後輩「ほっといて」
ゲイ「とりあえず帰るか」
後輩「うん」
ほんの少しだけ、頼りなさげな小さな肩を抱き締めたいと思ったのは内緒だ。
家の前。
ゲイ「寄ってくか?」
後輩「襲うよ」
ゲイ「ゲイの強さなめんなよ」
後輩「……親御さんは?」
ゲイ「オカマ」
後輩「そういう意味じゃなくて……あ、ということは夫婦仲は……」
ゲイ「とオナベ」
後輩「絶妙なバランスだった!」
ゲイ「まあ仲はいいな」
後輩「そうじゃなくてお家にいるんでしょ?」
ゲイ「今はモロッコへ旅行中」
後輩「それ絶対手術だよ、じゃあお邪魔するよ」
ゲイ「おう」
後輩「ゲイさんのベッドは良い匂いだなあ」
俺のベッドに顔をうずめて足をばたつかせる後輩は明らかに気持ちの悪い存在ではあったが不思議と嫌悪感は感じなかった。
ただ交互に左右の足をパタンパタンと持ち上げては打ち付ける動作は白い太腿やら水色ドットの黒い布やらが見えてしまうのが気になるのでやめてほしいとは思う。
ゲイ「後輩陰毛が見えてる」
後輩「えっ!?」
ぱたん、ばさばさ――
後輩「見せ毛だし」
ゲイ「そういう趣味ないから」
後輩「てか……は、はみでてないけど」
ゲイ「嘘だからな」
後輩「なんで嘘つくの?」
ゲイ「パンツとかは見えてたぞ」
後輩「……全然別物だけど」
ゲイ「そうでも言わんと気にせん性格だろ」
後輩「まあね」
ゲイ「……友とかの前ではやめろよ」
後輩「あ、ヤキモチ?」
ゲイ「……メシ作るか、食ってく?」
後輩「なに考えてるか分かりにく人だなあ」
後輩「美味しい……」
ゲイ「なんで不満そうなんだよ?」
後輩「お弁当作りたかったもん」
ゲイ「俺に?」
後輩「うん、なのにこんなに美味しかったら私なんかの料理出せない」
ゲイ「まあそうだな、作らなくていい」
後輩「うー……」
ゲイ「スカート握るなよ、しわになるぞ」
後輩「子供扱いしないでよ」
ゲイ「俺もお前もまだ子供だ」
後輩「子供……ゲイさん今日泊まっても良い?」
ゲイ「いいぞ」
後輩「理由聞かないの?」
ゲイ「なんでだ?」
後輩「子供はね、一人では寝られないの」
ゲイ「そうか、そうだな俺も一人は寂しいかもしれない」
少し生意気で強引な所もあるが俺の腕を枕にして眠る姿は本当に子供みたいで可愛いもんだ。
後輩はいい子だと思う。
だからこそ幸せになるべきだし同性愛者への恋心なんかさっさと忘れてしまうべきだ。
ゲイ「なあ後輩……」
後輩「すーすー」
ゲイ「俺はノン気じゃないからお前を好きになることはできない」
後輩「すーすー」
ゲイ「……悪いな」
火曜日、残り五日。
目が覚めると腕に圧迫感を感じたからほんの少し驚いた。
ゲイ「そういえば、後輩がいるのか」
後輩「すーすー」
ゲイ「寝起きの顔なんか見られたくないだろうし起こさない方がいいか」
枕じゃない方の腕で後輩の頭をそっと持ち上げ、その隙に腕を抜く。
ゲイ「よし」
トントントン、ガチャ――
後輩「いい匂いがする」
ゲイ「今切ってる葱切って入れたら味噌汁も出来るから座っとけ」
後輩「コップとお茶出そうか?」
ゲイ「頼むわ、本当に子供レベルの手伝いだな」
後輩「本当に家庭的なゲイだな」
ゲイ「逆に考えろゲイだからこそ家庭的なんだ」
後輩「女房役なのか、ゴツい男がキモいなあ」
ゲイ「所々入れてくるそのナイフみたいな言葉はなんなんだよ? そこまでゴツくないしネコでもない」
後輩「はいはい、そうだね」
ゲイ「ウザいなあ……」
後輩「ごちそうさま、まあパッとしないけど朝から重たすぎることもなく、目覚めもよく早く作れるという点では最高かな。何より、美味しいし」
ゲイ「だから流行らんぞ」
後輩「分かってるよ」
ゲイ「まあ分からんでもないけどな、付き合う前までは相手に好かれたいから遠慮するけど、付き合いだすとついついツンツンしてしまうなんてのは恋人の絆が壊れるきっかけとしてはポピュラーだし」
後輩「壊れるかな?」
ゲイ「俺はもともとのお前が好きじゃないからな、何をしようとマイナスなんてない」
というより、変に強がったような態度は逆に嫌いじゃなかったりする。
後輩「そっか」
秘密だけどな。
ゲイ「行くか」
後輩「うん」
ゲイ「行ってきます」
後輩「誰もいないのに言うの?」
ゲイ「クセだクセ」
後輩「へー可愛い所あるんだね」
ゲイ「ニヤけるなキモいぞ」
後輩「分かったよ、ガチムチなのにかわいいなあ」
ゲイ「……はー」
昼休み
後輩「あちゃーお弁当忘れちゃったよ」
女友「ダサっ」
後輩「今日はもう昼ゴハン抜きでいいかな」
ゲイ「後輩渡し忘れてた、悪いな」
後輩「あっお弁当」
ゲイ「俺のが上手いなら俺が作ればいいだろ」
後輩「別に昼くらい抜くつもりだったのに……」
ゲイ「はいはい」
ぽすん、なでなで――
ゲイ「じゃあな」
後輩「うー……」
放課後、
後輩「喫茶店寄って帰ろうよ」
ゲイ「いいぞ」
後輩「ゲイさんはなんで私を好きにならないのかな、こんなに可愛いのに」
ゲイ「ナルじゃねーか、まあ俺はゲイだしお前は後輩だからな」
後輩「じゃあなんで友先輩を好きになったんだよー」
ゲイ「俺はゲイだからな」
後輩「ゲイさんは男だよね」
ゲイ「見れば分かるだろ?」
後輩「男なのに男を好きになったね」
ゲイ「ゲイになったからな」
後輩「じゃあさ、」
ゲイ「ん?」
後輩「ゲイなのに女を好きになってノン気に戻るかもしれない」
ゲイ「そうだなあ」
ない、とは言い切れないのかもしれない。
今女なんかに惚れるかと思っているように、昔は男を好きになるだなんて想像もしなかった。
……何考えてるんだ。
希望を持たせる必要なんかないだろ。
俺はゲイだぞ、この子を好きにはなれない。
ゲイ「まあないな」
後輩「なんでー?」
ゲイ「ないものはない、聞き分けが悪いとお父さん怒るぞ」
後輩「ゲイは父親になれない」
ゲイ「……もちろん分かってるよ」
ゲイ「今日も泊まっていくのか?」
後輩「うん」
ゲイ「…………」
後輩「何か手伝うよセーンパイ」
ゲイ「ああ、ありがとな」
恐らく後輩はなにか事情があって家に帰りたくないんじゃないかと思う。
だけどそれを追求する勇気が俺にはなかった。
これ以上後輩の深いところまで関わったら俺は……
後輩「いい湯だったーゲイさん私のダシがしっかり取れてるよ」
ゲイ「汚いだろ」
後輩「汚物あつかいかよ、シトラスの香りー」
ゲイ「フレッシュだな」
後輩「若いもん」
ゲイ「女子高生萎えー……後輩は髪が長いな」
後輩「今濡れてるしね」
ゲイ「下ネタはやめろ」
後輩「はは、お前がやめろ」
ゲイ「切らないのか? 洗うのも大変だろうに」
後輩「願掛け、だから……まあそろそろ切るかもしれないけど」
ゲイ「ふーん、まあ風呂入ってくるわ」
ゲイ「寝るか」
後輩「腕枕ー」
ゲイ「はいよ」
後輩「ゲイさん、私さ、思うんだけどさ」
ゲイ「何だ」
後輩「家に人がいるのっていいね」
ゲイ「……そうだな」
後輩「誰かと一緒に寝るのも安心するよ、ゲイさんは私じゃなくて友さんがいいんだろうけどさ」
ゲイ「……当たり前だろ」
後輩「はは、おやすみ」
ゲイ「おやすみ」
後輩「すーすー」
ゲイ「寝たのか」
いい気なもんだ。
俺は腕が重たくてなかなか寝付けないのに自分は熟睡なんて。
ゲイ「でもこの重みは嫌いじゃないぞ後輩」
寝てるから聞こえてないだろうけどな。
明日も後輩は俺の腕を枕にして子供みたいな顔で寝るんだろう。
そう思うとなんだか安心した。
水曜日、残り四日。
後輩「今日もお弁当作ってくれたんだ」
ゲイ「二人分作るのも手間は一緒だからな」
食費は倍だが。
後輩「へへへー」
ゲイ「どうした気持ち悪いぞ」
後輩「うるせえガチホモ、昨日友達にゲイさんのお弁当褒められたよ」
ゲイ「嬉しいことだな」
後輩「私も鼻が高かったよ、ふん反り返っちゃった」
ゲイ「お前は何もしてないけどな」
後輩「ところでゲイさん」
ゲイ「あー?」
後輩「ゲイさんってなんだか女の子の扱いが上手いよね」
ゲイ「そうか?」
後輩「絶対そうだよー実は女性経験あったりして?」
ゲイ「あー……」
後輩「なーんてじょうだ――」
ゲイ「まああるな」
後輩「え……」
ゲイ「ゲイだって気付いたの最近だから彼女はそこそこいた」
後輩「なんか、ショック……」
ゲイ「…………」
後輩「ゲイさんが他の人の穴埋めちゃったりしたなんて」
ゲイ「逆にやらしいだろそれ」
後輩「今はそんなことどうでもいい!」
ゲイ「後輩……聞いてくれ」
後輩「なんですか……」
ゲイ「みんなみんな全然好きじゃなかったぞー」
後輩「ウザ、キモ。ゲイさんなんかもう嫌いだ」
タタタタタ――――
ゲイ「先行っちまった」
後輩の怒るポイント分かんねえよ。
ゲイ「でも――」
ゲイ「昔の彼女に嫉妬するなんか、なかなか可愛いところもあるなあ、惚れんけど」
にわかゲイの俺は少しずつ少しずつ自分が後輩に惹かれていくのを感じつつもこの感情が恋なのか父性本能なのか分かりかねていた。
ゲイ「おはよう友」
友「あ、おはよう……ゲイ、あのさ」
ゲイ「あっHR始まるぞ」
友「そうだな……」
昼休み
ゲイ「後輩どうしたんだ? まだ怒ってるのか?」
後輩「……そんなにネチっこくない」
ゲイ「知ってるよ」
後輩「一緒にゴハン食べよ、屋上で」
ゲイ「それは……」
後輩「駄目ならいい、別に寂しくないし」
寂しいんだろうな、今日はツインテールだしなんかうさぎみたいだ。
なんで後輩はこう中途半端にツンツンしてるんだよ?
ゲイ「いいにきまってるだろ、さっさと行くぞ」
ぽす、なでなで――
友「なあ、ゲイ……俺も一緒に食っていいか?」
ゲイ「おーいいぞ」
後輩「…………」
快諾したのはいいものの、せっかく友から誘ってくれたのに心躍らないのはなんでなんだろう?
ゲイ「……分かってるさ」
俺は……
屋上
友「なあ、俺実は日曜日の二人の会話聞いてたんだ」
後輩「なっ……」
ゲイ「マジで……」
後輩「友先輩、盗み聞きなんて最低です!」
友「いや、するつもりはなかったけど……なんていうか、ぶっちゃけお前ら声でかい」
後輩「うっ……反論出来ません」
ゲイ「右に同じく……」
あれが聞こえてたってことは……俺がゲイなこと完璧バレてるじゃねーか!
ヤバいな、どおりで友の態度がよそよそしいわけだ。
なんか、言い逃れできねえかな……?
ゲイ「まさか聞かれてたなんてな……俺の本名がゲイだってこと。恥ずかしいから内緒にしてくれよ」
後輩「……さすがに苦しいよ」
自分でも重々承知だったが俺はそれ以外に回避手段を思い付かなかった。
友「は、なんのこと?」
ゲイ「えっ、だから俺が……あー」
こいつ途中からしか聞いてないのか、なんだよ焦らせるなよ。
友「まあとにかく、好きじゃないのに付き合うとか彼女をクーリングオフとかおかしいだろ!」
ゲイ「…………」
困ったことに普通に正論だ。
後輩「でも友先輩には関係ありませんよね」
友「っ……関係ある!」
後輩「なんでですか!?」
それを聞いちゃあダメだ、後輩。
分かってるだろ。
好きだからに決まってる。
友「後輩が好きなんだよ」
ほらな。
後輩「私は好きじゃありません」
友「…………」
後輩「私はゲイさんが好きなんです」
なんでこんなに可愛い子が俺なんかのことをこんなに一途に思ってくれるんだろう?
友「でも、ゲイは君を好きじゃないんだぞ」
ゲイ「友……そんなこと言うなよ」
後輩「……そうですね、ゲイさんは私のことなんか」
ゲイ「後輩……」
後輩「ゲイさんこんな質問意味ないの分かってるよ。でも答えて、わたしと友先輩どっちが好き?」
友「え、なんで俺が出てくるの?」
後輩「ちょっと黙ってて下さい。ゲイさん答えて」
俺は、友が好き……だった。
少し前までは。
でも今は……
ゲイ「俺はその質問には答えられないよ後輩」
後輩「私に気を使ってるの?」
ゲイ「違う、分からないんだ」
後輩「分からない?」
ゲイ「この三日間、後輩と過ごしてきて俺は後輩に惹かれていってると思う」
後輩「うん」
ゲイ「そのうちに友のことがさ、なんかどうでもよくなった」
友「状況がのめん」
ゲイ「もともとそんなに好きじゃなかったのかもな。さっき後輩に惹かれていってるって言ったけどそれは恋じゃないと思う。だって俺ゲイだしな、お前のこときちんと愛してやれない」
後輩「でも私は……」
ゲイ「友ならお前のこともっときちんと好きになってくれる。お前の支えになってくれる、お前は幸せになれる」
後輩「…………」
ゲイ「俺はそう思うぞ、だからごめんな」
後輩「友先輩……」
友「え、何?」
後輩「私たち付き合いましょう」
友「いいの?」
後輩「はい、幸せにしてください」
友「当たり前じゃん」
後輩「ではゲイさん……」
ゲイ「ああ……」
後輩「っ……ゲイさん私、家に誰かが一緒にいてくれるのすごくうれしかったよ。ゲイさんが大好きだったよ」
ゲイ「……ありがとう」
後輩「じゃあさようなら」
こうして後輩はいなくなった。
俺は胸に隙間が空いたかのように感じ、寂しさに耐えられなくなって発展場へ行ってガチムチ系の男と関係をもった。
こんな俺を見たら後輩は悲しむだろうな。
ゲイ「はは、ははは……」
ゲイ「流石にそれはねーよ!」
一人で過ごすベッドはやたらと暗い妄想が広がる。
ゲイ「俺、これで良かったのか?」
さようならと言った後輩の顔が忘れられない、
家に誰かがいるのが嬉しかったと言った後輩の声が忘れられない。
シーツの後輩の寝ていた部分を掴む。
冷たい布の感触だ。
ゲイ「失敗したかもなあ」
ゲイ「外……出るか」
コンビニ
ゲイ「ポンジュースグミってなんか割にあわんなあ。内容量のわりに高いだろ……」
コンビニの前に高そうな車止まってる。
俺の心がこんなに貧しいのになんてこったい。
ゲイ「いや、金持ってるやつは心が貧しいはずだ」
……じゃあ金なくて心が貧しい俺はなんなんだよ。
ゲイ「はー……」
あ、カップルが降りてきた。
ゲイ「……後輩? いや、違うな似てるけどあんなに歳行ってないぞ」
あいつはシトラスフレッシュだからな。
じゃああの人は……
男「家で娘さんが待ってるんだろ?」
女「もう後輩も子供じゃないんだから関係ないわよ。いつまでもガキに縛られて腐るなんて嫌だわ」
男「女はまだまだ若いよ」
女「ふふ、当たり前でしょう」
ゲイ「母親か!」
いつも母親が外に出てるから寂しかったんだ……後輩。
プルルルルルルル、
ゲイ「もしもし友か?」
友「俺の携帯だから当たり前」
ゲイ「そうだな、今後輩と一緒か?」
友「あーうちに来たいって言ったけどうち親いるから断ったよ。自分の家にいるんじゃない?」
ゲイ「おまっ……! そうか、ありがとう」
友「はいはーい」
事情を知らない友を責めても仕方ない。
ゲイ「後輩に電話するか……俺、あいつの電話番号も知らないんだ」
……情けない。
電話番号どころか俺はあいつのことほとんど何も知らない。
ゲイ「帰ろう……」
家に帰った後、
もう一度ベッドに横たわって、
左腕に昨日はあった圧迫感がないことに気づいたらどうしようもなく悲しくなった。
木曜日、残り三日。
放課後
ゲイ「久々に何もない一日だったな」
後輩がいないだけでこんなに違うのか……
家の前に何か置いてある。
ゲイ「……弁当箱」
あいつ、律儀に持ってきたのか。
箱だけにしては重いな。
パコ、
ゲイ「博多の塩飴……俺の心情を表したとでも言いたいのか」
パク、
ゲイ「しょっぱいなあ……」
金曜日、残り二日。
ゲイ「行ってきます」
後輩「ふあっ……!」
ゲイ「後輩、どうしたんだ」
後輩「別に、偶然通りかかっただけ」
ゲイ「家、真反対」
後輩「友先輩の家から朝帰り」
ゲイ「だったらそんなに泣きはらした目してるわけないだろ」
後輩「うるさい、言っとくけどもうゲイさんのことなんか嫌いだから……」
ゲイ「……俺はもともと好きじゃない」
後輩「うっ……」
タタタタタタ
行っちまった。
ゲイ「寂しかったんだろうな」
夜
ゲイ「そういえば俺と後輩明日までは恋人なのか……浮気じゃねえか」
明日で最後……
ゲイ「……最後」
土曜日、残り一日。
ゲイ「行ってきます」
後輩「おはよう」
ゲイ「やっぱりいたか」
後輩「偶然だよ」
ゲイ「友とデートとか行かないのか」
後輩「別れた」
ゲイ「そうか」
後輩「怒らないの?」
ゲイ「むしろ嬉しいな」
後輩「やっぱり友先輩が好きなんだ」
ゲイ「…………」
後輩「仕方ないよね、私はたぶん女の子を好きにならないもん。もう一度頭を撫でてよゲイさん、それで我慢する。私もう子供じゃないもん」
一歩一歩と後輩との距離を縮めて俺は、
ぎゅっ……
彼女を抱きしめた。
後輩「……!」
ゲイ「そうだな、お前が女を好きになったら困る」
後輩「な、んで?」
ゲイ「まだお前は俺の彼女だろ」
後輩「でも、私には恋してないって……」
ゲイ「後輩、俺はお前が愛しいよ」
後輩「ゲイさん……」
ゲイ「恋かどうかは分からんがお前が愛おしい。それじゃ駄目か?」
後輩「駄目じゃない、駄目なわけないよ」
ゲイ「クーリングオフはしない」
後輩「……ありがとう、ゲイさん……私まだ子供でいてもいいかなあ?」
ゲイ「ああ、俺たちは子供だ、もっと二人で成長していこう」
水曜日に友がコイツを連れていかなかったら俺は後輩の大切さに気付かなかったのかもしれない。
失わないと大切だと気付けない自分は情けないと思う。
だけど俺はまだ子供だ、これから成長して大切なものを大切にできる大人になろうと思う。
Fin.