ふと目が覚めた。
時計を見ると時刻は午前4時過ぎ、私はもう一度床に入り眠ろうと必死に目を瞑った。
澪「眠れない……」
少し寒々しい空気が部屋を包んでいる。
カーテンから漏れる薄暗い夜光が私を少しだけ照らしている。
朝になろうとしてる途中なのだろう。
澪「寂しいな…」
ふと、そんな気持ちが脳裏に過った。
学校ももう行かなくていい為みんなと会う機会は次第と減っていったからだ。
澪「もしかして……このまま…」
そんな気持ちに苛まれた。
元スレ
澪「この気持ちが消える前に」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1286479438/
澪「ううん……大学だって一緒なんだから…大丈夫」
そう自分に言い聞かせる。
澪「……」
それでも……
澪「みんなはこんな気持ちにならないのかな…」
私は時々不安になる。私と云う存在が果たしてみんなにどう思われているのかとか…。
澪「律…起きてるかな?」
一番最初に思い出したのはやっぱり幼なじみの顔だった。
私は律のことが大好きだ。それに偽りはない。
けど律は私のことをどう思ってるのだろう?
普段はお互い居て当たり前というかそんな空気にならないからふざけ合いで済ましてしまうのだが…。
澪「気になる…」
澪「電話…してみようか」
澪「でもこの時間に…?」
澪「さすが起きてないだろうし律にも迷惑だろ…」
澪「迷惑…か」
澪「こうやって遠慮したりするのはどうなのかな…」
澪「友達だからって何でも頼るのは間違ってる…それはわかるけど…」
澪「それって言い換えれば一線置いてるってことだよな…」
澪「それで本当に私は律の友達って言えるのかな…」
澪「律……」
私は知らず知らずに携帯で律の番号を表示し、眺めていた。
澪「3コール……3コールで出なかったら寝よう」
ダイヤルし、携帯をそっと耳にあてると聞き慣れたコール音が届いた。
澪「1……」
澪「2……」
澪「3……」
ピッ
澪「起きてるわけないよな…。こんな時間に電話して…何やってるんだろう私は」
澪「明日律に謝ろう」
そうして携帯を置いた時だった。
~♪
澪「!」
着信
田井中 律
澪「律からだ!」
澪「も、もしもし」
律『み~お~? どうした~? てか今なんじ~?』
明らかに寝起きの声だ。悪いことしたな…。
澪「ごめんな律。起こしちゃって。今4時半ぐらいだよ」
律『4時半って!!! 澪起きるの早すぎだろ~? おばあちゃんかっての』
ちょっと笑いを含んだ言い方、いつも通りの律だ。
澪「うるさい」
律『ごめんごめん~。で、何かあったの?』
澪「なんか…っていうか」
律『ふぅ~?』
澪「ちょっと…寂しくなって」ボソボソ
律『寂しいって…うふふ澪ちゅわんは子供でちゅね~』
澪「……」
律『……澪?』
澪「ああそうだよ子供だよ! 私だけだよなこんな考えて悩んでるのは! みんなは表面上のことしか考えてないんだろ……どうせ」
律『なんだよ急に。さっきのは謝るからさ。だから怒るなって』
澪「いいよ…もう」
澪「じゃあ切るから」
律『おい待てよみ(ry』
ガチャ…プーップーップーッ
澪「……最低だな私って」
澪「バカだよな……勝手に悩んで勝手に律に電話して……勝手に怒って……」
澪「でも……なんでずっとそのままなんだよ……律」
澪「やっぱりこんなこと考えてるのは私だけなのかな…」
澪「みんな心の中まで支えたいとかって気持ちはないのかな…。いつも通りの生活の上だけで成り立てばそれでいいのかな…?」
澪「じゃあ私はただそれを演じてればいい…」
澪「みんなの都合のいい秋山澪をこのまま…」
ブーブーブー
着信
田井中律
澪「律……」
ブーブーブー
澪「こんな声じゃ出れないよ…ごめんな」
ブーブーブー……
澪「……変なやつって思われたかな…。嫌だな…律にだけは溝は作りたくなかった…」
ブーブーブー
澪「メール……?」
from田井中 律
件名 電話に出ろ
本文
澪。
さっきはごめんな。
何か話があったんだろ?
とりあえず電話に出てくれ。
澪「律……」
私はすぐさま携帯を開き律に電話した。
1コールで出た。
律『もしもし』
澪「律……さっきはごめん」
律『私こそ…ごめん。茶化したりしてさ』
澪「ううん。それがいつもの律だろ?」
律『いつもの私……か』
澪「?」
律『ん~ん。何でもない。それでどうしたんだ? こんな夜更けに~ってももうそろそろ朝か』
澪「うん……」
律『寂しいって言ってたけど……』
澪「うん……」
律『どうしたんだよみーお。何でも私に話してみろよ。幼なじみだろ?』
澪「……律はさ。私のことどう思ってる?」
律『へ?』
余りに突拍子のない質問に間の抜けた声が律から漏れる。
澪「そのままの意味だよ。どう思ってる?」
律『どうって…そりゃあ……幼なじみで……友達だけど』
澪「それだけ?」
律『それだけって言われても!』
澪「他に何かないのか?」
律『う~ん……ないかなぁ』
澪「そっか……」
律『あ、う、ウソウソっ! 大切なバンドメンバーでもあり欠かせないベーシストで』
澪「……」
律『あ~……ファンクラブの会員No.2番は私だぞー! なんちゃって……』
澪「……」
律『……』
律『挙げればきりがないぐらい、大切な友達だよ澪は』
澪「律……。律ううううう」
澪「私も凄い大切にしてるからぁ……!」
律『なんだよ改まって……///』
澪「さっきな、ずっとな……考えてたんだ。私はみんなにとって何なのかって」
律『うんうん』
澪「私はみんなの為になりたいんだ。心の中まで支えてあげたい……! それぐらいみんなのこと大事な友達だと思ってる!」
律『…そっか』
澪「これっておかしいのかな?」
律『いや、おかしくはないよ』
澪「だよなっ! みんな表面上ではああだけど内心色々抱えたりしてるよな! 私はそれの支えになって…」
律『澪……』
澪「なに?」
律『みんな同じなんだよ。多分唯も、ムギも梓も。そうやってみんなのことを気にかけてる。勿論私もな』
澪「うん……」
律『普段言わないのは言わなくていいことだとわかってるからだと私は思う』
澪「……どういう…?」
律『澪。例えば私の親が借金をしてて取り立てで悩んでるとしよう』
澪「!? 律!? ヤクザ屋さんに取り立てられてるのか!?」
律『落ち着け澪。例えばの話だ』
澪「そっか…」
律『で、だ。そんなことになってて確かに私は悲しい。でもそれをみんなに言えると思うか?』
澪「言ってよ!!! 律の苦しみは私の苦しみ……!」
律『微妙にロミオってるぞ澪』
澪「ちょっと興奮してたみたい…。でもなんで言ってくれないんだ?」
律『解決方法がないからだ。後は余計に心配かけるから』
澪「心配かけるって…そんなのっ」
律『じゃあ澪ならどうする?』
澪「えっ…」
律『みんなに話すか? 自分の家は借金をしてて毎日取り立て屋さんが来て迷惑してるんだって…。何の力もない女子高生の友達に』
澪「……」
律『しないだろ? そう、これは話すだけみんなに心配をかけるだけの話なんだよ』
澪「でも……」
律『澪、私が言いたいのはここなんだ。澪が私の悩みを解決したいように私も澪が悩んでいたら解決してあげたい。けどな、心配はかけたくないんだよ』
澪「あっ……」
律『そう。みんな他人のことは親身になって協力するのに自分のことは隠したがるんだ。自分何かの為にみんなに心配させたくないって…』
澪「私と同じだ…」
律『私も澪と同じだよ。みんなを支えてあげたい。けどそれは実際に言葉や仕草に出たときにしか出来ないことなんだ。悲しいけどな』
澪「そんな…でも律は借金の取り立てで苦しんでるんだろ?! それを私達は知らずにただいつも通りしてればいいのか!?」
律『仮の話だけどな。と言うように言わなくていいこともあるんだ。正確には言えない、けどな』
澪「何だか悲しいな……それって」
律『そんな時、澪はどうされたら嬉しい?』
澪「どうって?」
律『澪がそういう言えない悩みを抱えてる時、周りにどうされたら嬉しい?』
澪「どうされたら……か。やっぱり心配はされたくないし…みんなを危険に巻き込みたくないから…普段通りが一番……はっ!」
律『そう。みんなわかった上でああやって過ごしてるんだよきっと』
澪「そうだったんだ……なのに私は……」
律『気にするなよ。澪はただそれを言葉に出しただけだから。私も澪がそうやって思っててくれて嬉しい』
澪「律ぅ……」
律『安心したか?』
澪「やっぱり律のこと大好きにで間違いなかった!」
律『なんだよそれ/// ちょっと日本語おかしーし』
澪「りつぅっ! りつぅ」
律『はいはいよしよし』
澪「ずっと友達だからな!ずっとだからな!」
律『わかったわかった』
律『寂しくなくなったか? んじゃ切るぞ?』
澪「……うん」
律『……』
澪「……」
澪「切らないのか?」
律『いや…ん、澪からきってくれ』
澪「やだよ…」
律『なんで?』
澪「律にプーップーップーって聞かせたくない…」
律「はあ? なんだよそれ」
澪「だから!……プーップーップーって切れた音聞いて……寂しい想いさせたくない」
律『そこまで気を遣わなくても…』
澪「じゃあさ! 同時に切ろう!」
律『あ~わかったわかった』
澪「いくぞ~りつぅ」
律『あいよ』
澪「せ~っ」
律『のっ』
澪「……」
律『……』
澪「切った?」
律『切ってない』
澪「りつぅ! りつぅううう」
律『次はなんだよ』
澪「そうやって一人になりたがるなよぉ……。これで私が切ってたら一人でプーップーップーって音聞きながら「やっぱり私は一人なんだな…」とか考えたりするんだろ!?」
律『しないって!』
澪「う~……う~……」
律『澪が私のことをそこまで思ってくれてるのはわかったから。澪の電話代も気になるしそろそろ6時に……』
澪「りつぅうううう」
律『なんだよ~』
澪「律とは話放題のやつに登録してるから大丈夫だよ!」
律『……』
澪「あの三人選べるやつ! 私はママとパパと律にしてるんだ! 唯達とはまだ知り合う前からしてたからさ…」
律『そ、そっか』
澪「律は私にしてないの…?」
律『あ~…私はそういうの自体やってないからなぁ』
澪「じゃあauのガンガントークで私を」
律『み、澪ちゃんそろそろ寝た方がいいんじゃないのか?』
澪「……やっぱり迷惑かな。ここまで友達友達したがるのは……」
律『そんなことないって。ただやっぱり側に居すぎても駄目だと私は思うよ。やっぱり私は私で澪は澪だから。自分にしかわからないこともあるしな』
澪「そっか…わかった。もう寝るね」
律『ん、元気出せよ』
澪「うん……」
澪「……はあ」
律『……』
澪「……じゃあな…律」
律『うん…』
澪「樹海いこっかな…」
律『えっ!?』
澪「冗談だよ。じゃあね…おやすみ」
ガチャ、プーップーップー
澪「……」
着信
田井中律
澪「りつぅうううう」
携帯を愛しく抱き締めた後電話に出る
澪「どうしたの…?」
律『いやどうしたの?じゃなくて。別れ際にあんなこと言われたら心配するだろ』
澪「冗談だよ。やだな…律」
律『なんだ冗談』
澪「私が死んだら……律はどうする?」
律『どうする?って……』
澪「泣いてくれる?」
律『……泣くどころじゃないかな。正直考えたくもないよ。澪がいなくなるなんて』
澪「(りつぅうううう。でもここはシリアスだもんな…!)そっか…」
律『なんだよ急に。まさか本当に死にたいなんて言うんじゃないだろうな?』
澪「……実はさ、私生まれつきテロメアが短いんだ」
律『テ、テロメア? なんだそれ』
澪「細胞組織のことだよ。これが短いと早く死にやすいんだ…」
律『……嘘だろ…?』
澪「だったらいいのにな……」
律『…実際どれぐらい短いんだ?』
澪「多分大学を卒業するまで持つかどうか…」
律『……なんで隠してたんだよ?!』
澪「さっき律が言ったろ? 言わなくていい」
律『言わなくていいことじゃないだろそれは!!』
澪「えっ…」
律『テロメア?が何か知らないけど治るかもしれないんだろ!?なら相談しろよ…!』
澪「(ちょっと引っ張り過ぎちゃった…。嘘だって言うタイミングが…)でも……心配かけたくないし」
律『じゃあなんで私には……』
澪「律は……特別だから」
律『澪……』
澪「残りの人生よろしくな、律(これからテロメア短い設定で行かなきゃ…)」
律『……私より先に死んだら思いっきり泣いてやるからな。絶対死ぬなよ。友達泣かすなんて最低だからな!』
澪「わかったわかった(この心配されてる感……なんて心地いいんだろう。りつぅ……)」
澪「まあ今すぐどうってわけじゃないから。突然変異で治るかもだし…」
律『そんな簡単に治るもんなのか?よくわかんないけど治るといいな』
澪「うん……」
律『もう6時か…。何だかんだで一時間以上話してるな私達』
澪「楽しい時間が経つのはあっという間だな」
律『じゃあそろそろ切るよ。お母さんとかも起きてくる時間だしさ』
澪「うん、わかった。ごめんな律。夜遅くに」
律『いいよ。色々澪の思ってること聞けてよかった』
澪「私もよかった…律はやっぱり一番の友達だ!」
律『よせやい照れるぜ』
澪「うふふ」
律『じゃあ受話器離しとくから切ってくれ。こうしたらあの音も聞こえないし』
澪「律は賢いな! 可愛いし優しいしもう最高だよ!」
律『なんだよ///もう///わかったからきれよ///』
澪「うん。じゃあな、律」
律『また明日な』
澪「……大好き」
律『……』
澪「大好き……?」
律『だ、だいすきっ』
澪「/// じゃあな律!」
ガチャリ
ガチャリ、プーップーップー
律「切るの早いっての…」
律「澪も同じこと考えてたんだな…けどまあ」
律「言えないことを言えただけでもよしとするか……」
律「そろそろかな」
『田井中さーんいるのはわかってんすよぉー?』
『開けろオラァ!』
『早く返してくださいよぉ~。つか家売れwww』
『こんなボロ屋引っ張っても借金の3000万の足しぐらいにしかならないっしょwwwwww』
『た~いな~か~さ~ん~! あ~そぼ~!』
『娘さんと遊んじゃいますよ~?』
『ぎゃははwwwwww』
律「こんな現実……みんなには言えないよな」
私はただ耳を塞ぐしかなかった
────
澪「あ、もしもし唯!?」
唯『ほえ? みおちゃん? どうしたのぉ~?』
澪「実はさ……私、もうそろそろ死ぬんだ」
唯『えっ!? 嘘でしょ?! そんな……みおち゛ゃん……』
澪「泣くな泣くな唯。唯には言っときたくて……(心配されるのって気持ち良い……!)」
おしまい
53 : 以下、名... - 2010/10/08(金) 06:44:29.68 iMCJ7uldO 30/30澪も律も気持ちは同じ
けれど澪は自分が大切にされてるって実感を得たかった。
律は澪の話の例えに自分の境遇を出して気づいて欲しくはないが例え上でも心配して欲しかった。
一見澪が悪いと見えそうだけれど澪も律のことは誰よりも心配しています。
その上で自分も大切にされてるんだなと思いたかった。
なら言えない悩みを抱えた方はどうすればいいか?
警察に言いましょう
悲しいかなこれが現実
友達って難しく考えないのが一番上手く行く気がします。