1 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 01:21:43.35 YZOfi314O 1/34

「!?」


「ゆいーゆいー」ニコニコ

「ふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわふわ」

「お、おい!!しっかりしろ唯!」

「どういうことだ…これは…」

「ふむ…これはいわゆる…」


「幼児退行ってやつね」

「なんという二番煎じ臭」


みたいな感じでお願いします



3 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 01:30:45.07 YZOfi314O 2/34

「つまり、よくわからないが梓は子供に戻ってしまったと」

「見た目はいつも通りなのにねぇ…」

「まぁもともと子供みたいなもんだったけどな」


「ゆいー」キャッキャ
「」ナデナデナデナデ

「唯は何やってるんだ?」
「無心で梓をあやしてる」
「あのままじゃ梓ちゃんハゲそうね」
「何か言ったか?」
「?」


4 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 01:36:39.88 YZOfi314O 3/34

「しかし、これからどうするか…」

「んー…とりあえず梓と交流を試みるか」

「妥当ね」


「梓ちゃーんムギ先輩ですよー」ニコッ
「む…ぎ…ムギー」ニコニコキラキラ

「…このままでいい気がしてきたわ」
「おいおい」
「よーしっ!梓ー!憧れの律先輩だぞー!!」

「…プッ」

「おい!こいつ今笑ったぞ!私バカにされたぞ!」
「子供相手になにムキになってるんだ」
「そうよ大人気ない」
「なぜだ」

「ゆいーゆいー」ニコニコ


7 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 01:40:57.86 YZOfi314O 4/34

「どうやら唯に一番懐いてるみたいだな」

「うらやましいわー」

「ムギはいいじゃないか。私はなんか怖がられたぞ」

「なんたってHTTが誇るクレイジークイーンだもんなぁ」

「誰がだ!」
ドグシャァ

「ほら澪ちゃん、梓ちゃん怖がってるから」

「あ…ごめんな梓…」
「私に謝罪はないのか」

「…決めた」

「?」


「あずにゃんは私が飼います!!!」


9 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 01:46:03.08 YZOfi314O 5/34

「飼うってなんだ飼うって」

「梓はペットじゃないんだぞ?」

「それは言葉のあやだけど…とにかくあずにゃんは私が面倒見ます!!」

「とは言ってもなぁ…梓の親にも伝えなきゃいけないし…」

「あずにゃんの両親は仕事の都合で2ヶ月くらい海外にいるらしいよ」

「ご都合主義だな」

「私は賛成だわ!」

「ムギ!?」

「琴吹家全力をあげて、唯ちゃんの梓ちゃん育成計画を後押しします!」

「壮大だな」

「どうなるんだこれから…」


12 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 01:55:13.48 YZOfi314O 6/34

平沢家

「かくかくしかじかで」
「まるまるうまうまなのね」

「しかし梓ちゃん…ちゃんともとに戻るのかなぁ…」

「とりあえず大切なのは今だよ!憂も挨拶してあげて!」

「はーい…梓ちゃん、憂だよわかる?」

「ういー」ニコニコ

「…お姉ちゃん、私このままでいい気がしてきたよ」

「ムギちゃんと同じこと言ってるね」

「ゆいーういー」キャッキャ

「(この破壊力…できるなこの娘)」

「とりあえずご飯にするね」

「よろしく憂!私はあずにゃんの面倒見てるよ!」

「あとで変わってね」

「ごはーん」


13 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 01:58:54.40 YZOfi314O 7/34

食べた

「ごちそうさま」
「さまー」

「じゃあ片付けは私がやるから、あずにゃんよろしくね」

「はーい。梓ちゃん、憂お姉ちゃんと遊びましょうねー」

「ういー」ニコニコ

「…ジュルリ」

「…憂?」

「な、なんでもないよお姉ちゃん!!」

「?」


14 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:02:31.87 YZOfi314O 8/34

「さて、片付けも終わったしお風呂入ろうか」

「準備はしてあるよー」

「さすが憂!」

「おふろー」

「梓ちゃんは…やっぱり一人じゃ入れないよね?」

「三人で入ろう!」
「そうだね」

「おふろー」キャッキャ


15 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:06:24.08 YZOfi314O 9/34

~入浴シーンはカットされました~

一部抜粋
「あ、梓ちゃん!そんなとこ触っちゃだめだってば!!」
「ほおおおあずにゃんずるい!私もー!!」
「お姉ちゃんまで!」
「ふかふかー」
「ふかふかだねぇ」

「…もう、これじゃ赤ちゃんが2人いるみたいじゃない」

「くるしゅうないくるしゅうない」
「ないない」


16 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:10:23.71 YZOfi314O 10/34

「今日はリビングに布団しいて三人で寝ようか」

「そうだね、あずにゃーん、おねむの時間だよー」

「ん…」フラフラ

「あらあら、梓ちゃんもうすっかりおねむみたい」

「あずにゃんマジ天使」

「お姉ちゃん?」

「?いま何か変なこと言った気がする」

「ねむーい」フラフラ

「はいはい、ここでみんな一緒に寝ましょうねー。それじゃお姉ちゃん、梓ちゃん、お休みなさい」

「おやすみー」

「…」スゥスゥ


18 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:24:51.76 YZOfi314O 11/34

翌日
「お姉ちゃん梓ちゃん、朝だよ起きてー」

「むぅ…」

「でも…梓ちゃんこのまま学校に行かせていいのかな?おかしくなったのは昨日の部活前からだし…さすがにこのまま授業には…」

「うーん…ういー?今日は開校記念日だから学校お休みだよー?」

「ああ、そういう設定なのね」

「?」

「まぁそれならいいか、どっちにしろ朝ご飯にするから2人とも起きてね。お姉ちゃん、梓ちゃんよろしく」

「ほーい、あずにゃーん、朝だよー」

「ん…おはよう…」


19 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:29:15.48 YZOfi314O 12/34

食べた

「ごちそうさま」
「さまー」

「うーん、でも梓ちゃんどうしようか…さすがにこのままにしとくわけには…名残惜しいけど」

「でも何すればいいかわからないからねー…今は下手に刺激を与えないほうがいいかも」

「…お姉ちゃん、なんか普段よりしっかりしてる」

「そりゃ愛しのあずにゃんのことだもん!真面目に考えなきゃ!」

「そうだね」ニコ

ピンポーン

「ん?ちょっと行ってくるね」



22 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:33:34.61 YZOfi314O 13/34

「おじゃましまーす」

「おぉ!みんなこんな朝早くからどうしたの?」

「梓の様子を見にな」
「あれからどう?」
「特に変化はないねぇ…」


「おい!こいつ私見た瞬間鼻で笑ったぞ!梓め、先輩を敬う気はないのか!」
「こっちは唯とは違った意味で懐いてるな」
「懐いてる…のでしょうか…?」


23 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:38:03.40 YZOfi314O 14/34

「とりあえず、何か解決策が出るまでは何もしないのがいいかと」

「そうね」

「梓が昨日部室に来るまでに…何かあったのか…?」

「!そういえば」

「?」

「昨日は梓ちゃん、部室行く途中まで純ちゃんと一緒でした」

「何か知ってるかもしれないな…聞いてみるか」


24 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:50:08.96 YZOfi314O 15/34

来た
「あらぁ、梓こんなになっちゃったか…」

「何か知ってるの!?」

「いや昨日梓のやつ、廊下で盛大に滑って転びまして」
「ドジっこだな」
「ドジっこね」

「そのときすごい勢いで後頭部ぶつけてたんで、心配したんですが大丈夫って言ってたんでそのままにしたんですが」

「ふむ」

「なんかそのあとから話し方がおかしくて、なんというか…だんだん子供になってくような」

「そんなことで…」
「ファンタジーって恐ろしいわ」

「梓が去り際におねえちゃん、またねなんて言ったときにはいろいろと複雑な気持ちが入り混じってました」

「わかるわぁ」
「お前のは違う、直感的にそう感じる」

「原因はなんとなくわかったかもだけど、でも治すにはどうしたらいいんだろう…」

「同じショックを与える…とか?」

「…?」


25 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 02:57:01.13 YZOfi314O 16/34

「おい澪、そういうのはお前の役目だろ」
「なんでだよ…仲良さそうなんだし、お前がやれよ、こうスパーンと」
「しかし…」

「…?」キラキラ

「できない…!この状態の梓を殴るなんて…いくら外見はいつも通りだとしても…!」

「りっちゃん!そんな暴力で解決しようとしないでよ!」フンス
「そうよりっちゃん!」プンプン

「だからやらないって…」

「…まぁ、梓がこうなってまだ1日しかたってないですし、ここは様子見でいいんじゃないですかね?」

「そうだねぇ…」

「むーん」

「…?」キャッキャ


27 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 03:03:14.46 YZOfi314O 17/34

「とりあえず部室に行ってみるか」
「そうだな、学校にいるだけでもなにか影響があるかもしれない」

「じゃあ部活の準備して学校集合だね!」

「純ちゃん、わざわざありがとうね」

「いえいえ」

「でもおそらく純ちゃんの出番はここだけよ」

「なんと!?」

「じゃあ私、梓ちゃん着替えさせてくるね」

「はいよー。じゃみんなまたあとでね」

「おきがえー」


28 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 03:10:14.87 YZOfi314O 18/34

完了

「じゃいってきまーす!」
「いてきまーす!」

「行ってらっしゃーい、何かあったら連絡してね」


通学路
「あずにゃん、おてて繋いで行こうね!」

「うん!」ニコニコ

「あ、あずにゃん、肩車してあげようか?」

「わーい!」

「ほっ…とっ…体は高校生のままだから…流石にきつい…」

「たかーい!!」キャッキャ

「ぬおおおお!!!」フンスフンス

「なにやってんだ…」
「み…澪ちゃん…また会ったね…」

「なんて滑稽な絵面だ」

「だがそれがいい」


36 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:05:37.80 YZOfi314O 19/34

到着
「というわけで部室だ」

「さてこれから練習だ…といきたいとこだが梓がこれだからな…」

「あずにゃん…」

「ぶしつ…」キョロキョロ

「とりあえず、お茶にしましょうか」


37 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:11:42.81 YZOfi314O 20/34

「急だったから間に合わせのお菓子しかなかったの、ごめんなさい」

「いいよいいよ、いつもお世話になってるんだし」

「…」ヒョイパク
「…おいし!」

「あずにゃーん、こっちこっち」ポンポン
「ゆいー」トテトテストン

「唯の膝の上の梓…」
「写真撮っとこうかしら」

「やめろ、元に戻った梓が見たら卒倒する」


「ゆいー」スリスリ

「!!」

「ふ、ふおおおおお!!!!」
「唯ちゃんいいなぁ…」


39 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:18:59.85 YZOfi314O 21/34

「」トテトテストン
「ムギー」スリスリ
「この世の春がきたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「誰だお前」
「妙に人なつっこくなったな、今の梓は」
「かわいいから万事OK!!」

「みおー」トテトテストン
「お、軽く怖がってた澪のとこにも来たぞ」
「う、うむ」
「澪ちゃん、キャラ変わってるよ」
「んむー」スリスリ
「テイクアウトで」
「おい」

「りつー…プッ」
「このガキ…どこまで私をおちょくれば…」
「まあまあ」
「まあまあ」
「まあまあ」
「お前ら…まぁこの梓じゃ怒る気にもならんな、むしろかわいく思えてきた」

「目覚めね」
「私は7時には起きたわ」




40 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:24:34.07 YZOfi314O 22/34

「あずにゃんあずにゃん、これわかる?私のギー太だよ?」

「ぎーた…」

「お、反応があるな。じゃ私のエリザベスはどうだ?」

「えりざべす…」

「そういえば昨日むったん部室に置いてきたわね」
「梓ー、お前のむったんだぞー、忘れたとは言わせんぞー」

「むったん…わたしの…むったん…」

「これは…」
「元に戻りそう!?」

「ムギ!ありったけのHTTの思い出の品を集めるんだ!」
「がってん!!」


41 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:35:26.51 YZOfi314O 23/34

写真とかDVDとか
「これが私たちが一年のときのライブで…」
「澪ちゃんの高校デビューのときだな」
「そんなもの見せるな!」


「これが新歓ライブだね」
「梓ちゃんも来てくれたわねー」
「お前が不覚にも感動したライブだ、覚えてないか?」

ああ。

「これがあずにゃんが初めて来た合宿!」
「梓真っ黒になってたな…あれは笑った」
「フジツボ…」
「ひいいいぃぃぃ!!」
「あらあら」

そうだ。

「そしてこれがあずにゃん加入後の初ライブ!」
「あのときは焦ったな…」
「梓なんて最後の最後まで唯のこと心配してたもんな」
「えへへ…」

これが、私たちの積み上げた、

「最後に…」

大切な思い出たち。


42 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:41:33.86 YZOfi314O 24/34

「ついこないだのライブの写真だね」
「あのときは梓ちゃんにみっともないとこ見せちゃったわねー」テレ
「まぁムギだけじゃなく全員だけどな」
「でも…いいライブだったよな」


「そう、私たちで作った、最高のライブ」


「…」フルフル

「梓ちゃん?」
「もう少しっぽいな…」
「あと一息…」

「よぅっし!やっぱり私たちは演奏するしかないでしょ!」

「そうだね!」
「はい、梓ちゃんはここに座って聞いててね」
「曲はどうする?」
「ホッチキスがいいんじゃないか?梓にとって一番思い出深いだろうし」

「よーっし…みんな準備はいい?」



『私の恋は、ホッチキス』


45 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:48:46.10 YZOfi314O 25/34

律のドラム。唯のギター。
イントロが流れた瞬間、梓は糸が切れたようにその場に倒れた。
4人は慌てて駆け寄る。

「梓ちゃん!?」
「ど…どうしたんだ…!?なにかまずいことしたのか…?」
「そんなことより保健室だ!澪、先生を呼んできてくれ!」
「あずにゃん!!あずにゃあん!!」


梓は消えた意識の中でも、その4人の声は聞こえていた。しかし、その小さな動かぬ手足では、何もできなかった。
そして、梓は闇に包まれた。


46 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:52:27.17 YZOfi314O 26/34

真っ暗な闇の中。梓は、ふわふわとそこに浮かんでいた。

(ここは…)

周りを見回してみても、目に入ってくるものは何もない。

(わからない…でも)

そのどこから来たかもわからない衝動に突き動かされ、

(進んでみよう)

梓は前へ進んだ。自分の中にある何かを、探すために。


47 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:55:58.87 YZOfi314O 27/34

しばらく進むと、前にぼんやりとした人影が見えた。

(あれは…)

その誰かに向かって梓は進む。
進むにつれて人影は近づくものの、その顔まではわからない。

「どうだった?」

そして、その人影にふと声をかけられる。
どこかで聞いたことのあるような、聞きすぎてむしろ気にもとめないような、そんな声だった。


48 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 06:59:31.52 YZOfi314O 28/34

「どうだった、って…」
わけもわからず返事を返す。

「子供になってみて。先輩たちの反応とか」

そのことか。それなら、「もみくちゃにされて疲れました」
正直な意見だ。

「そう」

人影が、笑った気がした。

「でも、悪くなかったでしょ?」

正直に返す。
「うん」


49 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 07:03:33.24 YZOfi314O 29/34

「普段のあなたじゃ、絶対あんなことできないもんね」

まったくだ。
ああいうことをするのは、唯先輩だけで十分。

「でも、」

うん。わかってる。

「たくさん、甘えられたでしょ?」

あれが、私の偽らざる本心。

「…うん」

「よかったね」
人影は、私に確かに笑いかける。


51 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 07:09:01.90 YZOfi314O 30/34

「今回のことは、あのときの…そうだね、ご褒美みたいなものかな?」

「あの時…?」

「そう」


「あのとき、あなたは泣かなかった」

それか。

「あなたは、先輩との最後のライブを終えて、満足していた。でも、そこには確かに喪失感があった」

当然だ。
あれが、最後だったんだから。

「先輩たちはみんな泣いていたよね。ムギ先輩なんか子供みたいに泣いちゃうし、律先輩も普段は涙なんか見せないのに」

うん。

「あのとき、あなたが一緒に泣いていたって誰も責めない。むしろ、泣いて当然だったのかも」

うん。だけど、

「でも、」

でも。

「笑って、先輩たちを送りたかったんだよね?」


54 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 08:22:07.06 YZOfi314O 31/34

そうだ。
私は、先輩たちに心配なんてかけたくなかった。

普段は頼りないけど、いざというときはしっかりしてて、一緒にいて、とても楽しい先輩たち。そんな彼女らの不安な顔なんて、見たくなかった。

「そして、あなたは立派だった。涙は見せず、ただ先輩たちと喜びや切なさを分かち合えた。」

もちろんあのとき、私は今にも泣いてしまいそうなほど、寂しかった。でも、我慢した。

「だから、これがご褒美。まあ、きっかけはあなたらしいドジなものだったけど」

むっとする。私らしいってなんだ。廊下で転ぶことがか。

「あなたは最後に、思いきり先輩たちに甘えられた。あとはもう、全てを受け入れるしかない」

わかってるけど。
もう少しだけ続かないかな、なんて不謹慎にも思った。

「それはダメ」

先輩たちの顔が浮かんでくる。


55 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 08:31:43.58 YZOfi314O 32/34

急に意識を失った私を心配する顔。顔。
唯先輩とムギ先輩なんて、涙で顔がぐしゃぐしゃになってる。

「あなたができることは、無事な顔を見せてあげること」

そうだ。そもそもあんな顔をさせないために、私は頑張ったんだから。

「だから、いってらっしゃい。あなたのいつも通りの日常に。やがて来る、別れに」

断固たる決意があるわけじゃない。でも、

「うん」

今私にできることは、わかっている。

「それじゃ、がんばってね」

「あ、あの」
最後に一つ、許しを乞う。

「卒業式くらい、泣いてもいいよね?」

人影は笑いながら答える。もうそれが誰かはわかっていた。

「自分に素直になってもいいときって、あると思うよ」


ありがとう、私。


56 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 08:38:23.74 YZOfi314O 33/34

目覚めた私は、病院のベッドの上にいた。

「ん…?」
周りには、4人の先輩がたが私を枕にして安らかに眠っていた。ホントに心配していたのだろうか。

「…もう」
私が子供になっていたときのことを思い出す。おぼろげではあるが、その…かなーり恥ずかしいことを、していた気がする。

できれば忘れさせてほしかった。いや、でも、それは本末転倒だし、もったいない気が…


とにかく、こうして私にとっての優しい異変は終わったのだった。


57 : 以下、名... - 2010/10/10(日) 08:49:51.70 YZOfi314O 34/34

それからの日々は、もう筆舌に尽くしがたい、屈辱の日々だった。

唯先輩は「あずにゃん、また抱きついてきてよー!!」とか言ってるし、律先輩はことあるごとに「梓ちゃーんっ」って子供扱いしてくる。
澪先輩とムギ先輩は割といつも通りだったが、頭をなでたり手を繋いできたり妙にボディタッチが増えた気がする。何をしたんだ、子供の私!

まあ、でも。
やっぱりこれが私の日常。
4人の先輩たちと過ごす、かけがえのない時間。

「梓ー、またもっと私たちに甘えてきていいんだぞー?」ニヤニヤ
「そうだよあずにゃん!いつでもウェルカムだよ!」

もう。またそんなこと言って。

でも、そんな日常を与えてくれる先輩たちに、ちょっと素直になってもいいかなって思う。

「もうこの前で、素直になり尽くしましたので」

先輩たちは顔を見合わせて私の言葉の意味を考える。

そして、頭の回転の早い唯先輩が、いち早く答えを出し、眩しいくらいの笑顔で抱きついてきた。

「あずにゃん大好きー!!」

私も大好きですよ、先輩方。


おしまい


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