■2011年3月20日 午前3時過ぎ 薫葉恩賜公園
女「まいど」
男「ぅお? ……なんだ、女か こんばんは」
女「月、見に来たの?」
男「あー、うん そう 女も?」
女「うん なんか眠れなかったし」
男「女ひとりで何出歩いてるんだよ ヤバイだろ夜中は」
女「んー、なんとなく、きみが来てる様な気がしたし」
男「気がしたんだったら、メールでもしとけば良いのに」
女「あ、そうか」
女「凄い明るさだね、月 それにおっきい」
男「うん」
女「……」
男「……」
女「なんか、ボ~っと見ちゃうね」
男「あー、そうなー」
女「……」
男「明るさ、すげーよなー 目閉じると残像が残るよ」
女「あ、ほんとだ 太陽みたい」
男「……」
女「……」
女「男」
男「あぃ?」
女「口、開けっ放し」
男「ああ」
女「スッゴイばか面だったよ」
男「いいじゃないさ 誰が見てる訳でも無いんだし」
女「私は数に入らないのか」
男「お前にはもう、格好付けるのも今更って感じでしょ」
女「まーね」
男「……」
女「……」
女「……」
男「……」
女「あれ? カメラは?」
男「ん? 持ってきてないよ」
女「今日は撮らないの? 写真」
男「あー、うん、今日はいいや」
女「きみ、いつも資料資料言って色々撮ってるじゃない」
男「ん~、まあ、いいでしょ、こういうのは 見てるだけで」
女「そーだねー そうだよね」
男「……」
女「きれいだよね」
男「うん」
男「なんか雲が多くなってきたな」
女「隠れちゃう」
男「アレ位だったら、すぐに晴れるでしょ」
女「もっと近くで見たいなぁ」
男「無理だろ 今で最大に近いんだから」
女「宇宙に行けば良いじゃない」
男「宇宙って、俺ら行けないじゃん」
女「月に近づく遊覧飛行ツアーとか、これから出来るかも知れないでしょ?」
男「いつかって話なら、そうかも知れないけど」
女「そうそう」
男「お前、そんな非現実的な事言い出すタイプだったっけ 俺が言うならまだしも」
女「私は実は殆ど信じてないけどね でも、生徒の前では何についても可能性はたくさんあるよ、って風に話す様にしてるんだよ」
男「ああ、うん、なるほど」
女「いつか、そういう仕事をしてくれる子が、私の教え子から出てくるかも知れないじゃない?」
男「まぁ、そうだよなぁ」
女「あれ、男はこういう夢とか絵空事みたいの、キライじゃなかったっけ」
男「可能性の話なら、いいんじゃないの?」
女「うん」
男「お、雲が切れる」
女「あ、ほんとだ」
男「……」
女「……」
女「……」
男「……」
女「なんだっけ、今日のこの月」
男「ん?」
女「何か名前があったでしょ? なんとかムーンみたいなの」
男「ああ、エクストラスーパームーン」
女「うん、それ スゴイ名前だよね」
男「うん、月と地球が接近して、月がでかく見えるのを『スーパームーン』ていうんだけど、今回のは最大規模で、最も近くなるんだって、しかも満月 19年振り」
女「へー、19年か~」
男「長いよなぁ」
女「……」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……あれ、19年って言うと、私らってもう知り合ってるんじゃない?」
男「んん? ……ああ、本当だ ギリギリ会ってるかも」
女「そうだよ、小学校に入るちょっと前くらいだったから」
男「そうか そうか~ そう考えると、俺らもなげー付き合いだよなぁ」
女「そーね 途中あんまり会わない時期も、あったけどね」
男「ま、そうな お互い、実家を離れちゃうとね」
女「うん」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……」
男「……子供の頃にこんなの見たら、覚えてそうなもんなんだけどなぁ」
女「小さかったし、夜更かしはさせて貰えなかったんじゃない?」
男「あ、そうか」
女「うん、きっとそうだよ 男のおかあさん、厳しかったじゃない」
男「悔しいな、見れてた筈だったのに見れなかったとか」
女「でも、いいじゃない 今見てるんだから」
男「ああ、そうだね」
女「……」
男「……」
女「……」
男「……」
女「明るいね~」
男「ああ、空全体も結構明るいね」
女「うん あ、そのせいか、ここに来る時、そんなに怖くなかった」
男「あ、お前、帰りは1人とかで歩くなよ 家まで送るから」
女「え、いいよ 方向反対じゃない、きみんちって」
男「いいから、送られとけって」
女「心配し過ぎだって、きみは」
男「……」
女「……」
男「大体さぁ」
女「なに?」
男「公園まで来て、俺が居なけりゃどうしてたんだよ」
女「そしたら、ひとりで見てたよ」
男「あほか あぶねーっての」
女「いいじゃない、居たんだから」
男「良くねーよ お前、生徒がそういう言い方したら叱るだろ」
女「今日は仕事の無い日だからいいの」
男「適当だなぁ」
女「……」
男「……」
女「……」
男「……」
女「男、ずっと月見てると、なんか変な気分になってこない?」
男「ん~? いや、特に」
女「ルナティック、って狂人とか精神障害みたいな意味があるでしょ。月には魔力があって、人を狂わすって言われてるんだよ、昔から」
男「全然無いなぁ むしろクリアーな気分だよ だってキレイでしょ、月」
女「私はするな なんかドキドキする 非日常感っていうか」
男「俺は、結構夜に外歩くからなぁ 慣れなのかな」
女「あー、男は仕事の帰り、遅いもんね」
男「そーそー」
女「……」
男「……」
男「……」
女「……」
男「寒くない?」
女「うん、ちょっと」
男「そろそろ、帰っとこうか」
女「うん……なんか、もったいない気もするけど」
男「またいつか見れるでしょ」
女「そだね ……次に今みたいに見れるのって、いつになるの?」
男「さぁ、知らないや 周期は一定じゃないみたいだけど」
女「そか」
男「……」
女「……」
女「……」
男「……」
女「その頃まだ、私らって、まだ仲良いかな」
男「そりゃ、わからないよな これから何かあって仲悪くなるかも知れないし、事故とか病気とかでどっちか死んでるかもしれない」
女「うん」
男「それに、19年前から今までだって、全然会わなかった時期だってあった訳だし」
女「そうだね 離れた場所に居るかも知れないよね」
男「それもあるよな」
女「うん わかんないや わかんないね」
男「……」
女「……」
女「帰ろうか」
男「ああ ん~、ベンチでケツが冷えた」
女「私もだ」
男「そんじゃ、送ってくかね」
女「ありがとね」
男「普段も、夜道は気をつけろよな」
女「気をつけてるよ」
男「ならいいけど」
女「うん、ありがとう」
男「ほんじゃ行こう」
女「うん 手、つないでもいい?」
おわり
32 : 以下、名... - 2011/03/21(月) 00:18:03.66 2AFnvLtW0 16/26短い時間ですが、お付き合いどうもありがとう
このスレは、同じ様なテーマで色んな人が書いたりなんかしたら最高だなと思いつつも
このまま落ちるのもまた良し、といった感じでひとつ
では
女「ねー、見える?」
男「うん」
女「嘘だ」
男「なんで」
女「…声こもってる」
男「…ごめん。」
女「寝る?」
男「いやいや」
女「おやすみ」
プーップーッ
男「………」
>>40ですが続けさせて頂きますね
男「……」
男「かけ直すか。」
プルルルルル
女「…もしもし?」
男「寝ないって」
女「寝てもいいのに」
男「いやいや」
女「もう布団のなかでしょ?」
男「ベッドだけどな。」
女「…どっちでもいいけど。」
男「………」
女「…仕事、どう?」
男「ぼちぼちでんなぁ」
女「ははは」
男「…ごめんなさい。」
女「なにが?」
男「………」
女「お疲れ様。」
男「え?」
女「仕事」
男「ああ、うん、ありがとう」
女「…寝る?」
男「まだいいよ」
女「そっか」
男「………」
女「月、大きいよ」
男「うん、見てるよ」
女「嘘つくな」
男「はは」
女「明日は雨かなあ」
男「ん?」
女「星がでてない」
男「ああ そっか」
女「男なんて随分星見てないでしょ」
男「そうでもないよ」
女「都会は星見えないって聞いた」
男「………」
男「女」
女「ん?」
男「…月が、綺麗ですね。」
女「え?」
男「…夏目漱石…。」
女「なに?」
男「………」
女「なに?いきなり」
男「…いや…」
女「…意味わかんない」
男「………」
女「ねー、いま真っ暗?」
男「おー、街中節電中だからな」
女「じゃあ月が綺麗に見えると思うよ」
男「え?」
女「ん?」
男「いや…夏目漱石…?」
女「…だからそれ何?」
男「…吾が輩は猫である」
女「…名前はまだ無い」
男「………」
女「千円札の人だね。」
男「え?」
女「夏目漱石さん」
男「え?ああ…いや昔のだろ?」
女「そうだっけ?」
男「いまは野口五郎」
女「ふーん」
男「いや…あの」
女「なに?」
男「だからいまは野口…」
女「どっちでもいいや。」
男「………」
女「男ー」
男「ん?」
女「そろそろねなきゃ。」
男「俺は大丈夫だけど?」
女「お肌に悪いのー」
男「あー…そう」
女「明日も朝早いんでしょ?」
男「あーまあ、うん」
女「体壊しちゃうよ」
男「…うん。ありがとう。」
女「うん。おやすみ。」
男「おやすみ。」
女「あ!男っ!」
男「どした?」
女「月、見れる?」
男「うん?見れるよ」
女「見て。」
男「おー」
女「………」
男「…おー、まじででかいな」
女「男」
男「ん?」
女「月が、綺麗ですね。」
男「…え?」
女「おやすみ。明日も仕事頑張ってね。」
プーップーップーッ
おしまい。
初SSでしたー
至らぬ点ばかりだったと思いますが支援して下さったみなさんありがとうございました!