母 「あんただって英雄の息子として、色々辛かったのはわかる。街に帰ってきて、みんなから恥さらしのバカ息子って言われて、ずっと悩んでたのも知ってる」
勇 者「っせぇな、何だよいきな…」
母 「でも母さんだって限界なの! 英雄の悪妻だとか息子を腐らせた張本人だとか言われて、働きに出たくてもどこも敬遠するし、恥を忍んでお金借りに行っても馬鹿にされるだけで、相手もされない!」
勇 者「知るかよ……」
母 「私は、ここで生きていかなきゃいけないの! あの人がいなくても、この街で……うぅっ……」
勇 者「どうすれば良かったんだよ! ただ普通に暮らしたかっただけなのに、魔王が復活して、周りが勝手に勇者とか祭り上げたんだろ!?」
母 「うっ……うぅ……」
勇 者「泣きてえのはこっちだよ、くそっ! 何で、何で魔王が復活しやがるんだよ……!」
母 「……今夜。荷物まとめて旅に出てちょうだい」
勇 者「!」
元スレ
勇 者 「家から追い出された」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1280067757/
母 「一念発起して、もう一度魔王征伐の旅にでも出たって事にすれば、あんたの名誉も少しは挽回出来る。私だって、少しは他所様に顔向け出来るし」
勇 者「要するに、邪魔になったから出てけってことか」
母 「旅に出た後は、あの人の名前を出さなきゃどこに行っても、何してもいいから」
勇 者「……返事もしないんだな」
母 「恨んでくれてもいい。お願いね」
<早 朝>
母 「それだけ手持ちがあれば、3日くらいは平気でしょ」
勇 者「……」
母 「もうこの辺には近づかないでね。手紙もいらない」
勇 者「……前は、街中で送り出したんだったよな」
母 「誰かに見られるから、早く行って」
勇 者「……」
母 「じゃあね」
<町の外>
勇 者 (……これから、どうすればいいんだよ)
勇 者 (行くあても無いし、金も無いし)
勇 者 (どこか遠くに行って、仕事でも……)
勇 者 「……ん?」
少 女 「そこの人間。旅の者か」
勇 者 「は? ……まぁ、そうだけど」
少 女 「英雄の生まれた街というのは、この街か」
勇 者 「! ……そう、らしいですよ」
少 女 「ふむ」
勇 者 (……行っちまった。何なんだあの女の子?)
勇 者 (はぁ……最寄りの村は、確か向こうの山を越えて……)
ギャァァァァッ……!!!
勇 者 「! 結界!? 街に入れない」
母 「キャァァァァッ!」
勇 者 「あっ」
勇 者(……焼け野原だ)
勇 者(あそこが城で……ここが……俺の家、だった所)
勇 者「……」
少 女「お前だったのか」
勇 者「!」
少 女「よく似ている」
勇 者「もしかして……あんた……!!」
少 女「お前達が『魔王』と呼ぶ者だろうな」
勇 者「…… つくづく駄目だな、魔王を目の前にして全然気づかなかった」
少 女「私が憎いか。英雄の子よ」
勇 者「……」
少 女「この光景が信じられぬか」
勇 者「どこかで……こうなる気はしてた。いや、こうなっちまえばいいと思ってた」
少 女「母を殺され、故郷の街を焼かれ、全てを失った気分を聞いておこう」
勇 者「おかしくなってるんだと思うわ。なんとも思わねえ」
少 女「仇である私を討とうと思わぬのか」
勇 者「思ったこともねーよ。まあ、父さんみたいになりたいとは思ってたけど」
少 女「……」
勇 者「魔王、一つ聞いていいか? 父さんは……どこにいる?」
少 女「それを聞いてどうする?」
勇 者「いや……やっぱいい。もう気が済んだ、殺してくれ」
少 女「……」
勇 者「…… 魔王」
少 女「気が変わった。殺すのはやめにする」
勇 者「? やめるって、俺を見逃すのか」
少 女「一応は先代の意思を継ごうと考えていたが……どうでもよくなった」
勇 者「そんなのでいいのかよ」
少 女「お前達が口にしている魔王像は、極めて一方的な想像物にすぎん。確かに私は、我々の世界において最上位の支配者の一人であったが」
勇 者 「じゃあ……今は一人なのか」
少 女 「後継者に指名されてはいたが、先代亡き後側近に謀殺されたことになっている。まあ、そう思わせているだけだが」
勇 者 「一人になったわけだ」
少 女 「そうかもしれぬ」
勇 者 「……」
少 女 「この先どうする?」
勇 者 「何にもしようがない。俺にはもう、何も無いんだから」
少 女 「ならば、私と共に来い」
勇 者 「俺が、魔王とか」
少 女 「魔王ではない、かつて魔王だった者だ」
<某 城>
女勇者 「魔王って、どこにいるのかなぁ」
女戦士 「密林の奥地か、天を突くような山奥か……いずれにしてもそれを探すのは軍の仕事。私達が考えることじゃない」
女僧侶 「私達はとにかく、魔王を討つことだけを考えりゃいいのよ」
女勇者 「うん、それもそうだね」
女魔法 「お腹すいた」
女僧侶 「ちょっ、上に何か着なさいよ!」
女魔法 「暑いから着たくない」
女勇者 「僕もおなかすいた~」
女戦士 「全く……」
侍 女 「失礼いたします。宴の準備が整いましたので、大広間へどうぞ」
王 「……この勇者殿の活躍で、魔族共は今や、魔王の居城に立て篭もるばかりとなった。再び世界を恐怖に陥れた彼奴らを、今少しで討つことが出来るのだ」
女勇者 「ど、どうも……」
王 「今宵は明日の戦いに備え、存分に英気を養って欲しい。乾杯!」
一 同 「乾杯!」
勇 者 「魔王……じゃなくて、元魔王」
少 女 「何だ、その呼び名は」
勇 者 「いいだろ別に。それより、こんな所にいて見つからないのかよ」
少 女 「ここにいる誰も我等の姿は見えぬ。それよりも、あそこにいる少女が」
勇 者 「正真正銘の勇者ってわけだろ」
少 女 「彼女らの働きにより軍を率いていた将軍達を次々と討たれ、それにより盛り返した人間達に今や王城まで追い込まれる有様だ」
勇 者 「何もしなくていいのか。味方がやられてんのに」
少 女 「もはや関係の無いことだ」
勇 者 「今なら武器も持ってないし、奇襲できるぜ」
少 女 「ふっ」
勇 者 「……何だよ」
少 女 「お前はすっかり、こちら側の人間になったな」
勇 者 「……」
少 女 「さて、ここに来たのは、お前に見せたいものがあるからだ」
勇 者 「見せたいもの……うわっ!」
少 女 「…… ここだ」
勇 者 「さっきまで城の中だったのに…… ここは? 宿?」
少 女 「お前は先程、父の行方が知りたいと言っていたな」
勇 者 「! ここに父さんが!?」
少 女 「自ら確かめるが良い」
勇 者 「……」
<街の宿>
勇 者 「あ、あの」
女 将 「いらっしゃい。一人?」
勇 者 「あ、はい、その」
女 将 「あーあ、ずいぶんボロボロじゃない? それ脱ぎなさい、洗ってあげるから」
勇 者 「違うんです。ちょっと、聞きたいことがあって」
女 将 「? 何?」
勇 者 「ここに……英雄がムグッ」
女 将 「しーっ! しーっ! …… ちょっとあんた、誰からそれ聞いたの!?」
勇 者 「! それじゃ……」
女 将 「ったく、あの人ったら死んだ後も色々苦労かけて……」
勇 者 「あ、あの人って……死んだ!?」
女 将 「英雄の家だってバレたら、有象無象が押しかけて大変でしょ? だから秘密にしてんの」
勇 者 「家って……じゃあ女将さん」
女 将 「一応ね。女ぼ……」
女勇者 「ただいま!」
女僧侶 「お邪魔しまーす」
女戦士 「失礼します」
女魔法 「します」
女 将 「ああ、おかえり」
女勇者 「あっ……」
女 将 「いいの、この人には全部バレてるから」
女勇者 「そうなんだ……あの、僕がここの子だって黙っててもらえませんか?」
勇 者 「……」
女 将 「……それでね、そのままここに居ついて、あの子が生まれちゃったってワケ」
勇 者 「……」
女 将 「子供が出来たら、もう勇者稼業は終わりだーって言ってねぇ。すっかり身分を変えて、ただの一般人になっちゃったのよ」
勇 者 「それから父……英雄は」
女 将 「死んじゃった。あの子が旅に出る直前だったかなぁ……遠くの街まで仕入れに行ってね、帰る途中に魔物に襲われて……あっけないもんよ」
勇 者 「そう……ですか」
女 将 「でも変ねー、赤の他人なのに、あたしなんでこんな話もしてんだろ? もしかして隠し子?」
勇 者 「!」
女勇者 「ねー母さん、僕の着替えどこ?」
女 将 「ったくあの子は……」
勇 者 「あ、俺部屋に戻ります」
女 将 「あらそう? じゃあおやすみ、ね」
<部 屋>
勇 者 「……」
少 女 「驚いているな」
勇 者 「父さんは行方不明じゃなかったんだな。それに、現勇者が俺の妹……」
少 女 「……」
勇 者 「ずっと生きてたんだ。他に女を作って、子供も作って」
少 女 「……」
勇 者 「俺達の所には戻らないまま、死んじまってた」
少 女 「……」
勇 者 「何で……戻って来てくれなかったんだよ……」
少 女 「その理由を知りたいのか」
勇 者 「そういうわけじゃ……ていうか、あんた知ってたのか」
少 女 「何をだ?」
勇 者 「父さんのこと、この宿のこと、現勇者のことも、全部」
少 女 「本人の口から聞いた」
勇 者 「何言ってんだよ。さっきの話じゃ父さんはもう」
少 女 「あの女は死んだと言っていたが、まだ生きている可能性が高い」
勇 者 「…… 嘘だろ」
少 女 「この街の墓に眠っているのは、魔法で巧妙に偽装させたトロルだ。本物は確かに、私が捕らえた」
勇 者 「それ、マジで言ってんのか」
少 女 「英雄は密かに、新たな魔王討伐を企てていたようだ。自らを祭り上げる世間の目から逃れるため、素性を隠していたに過ぎん」
勇 者 「じ、じゃあ父さんは、まだどこかで生きて……!」
少 女 「処刑されていなければ、王城地下の牢獄に囚われている。このままあの少女が攻め込めば、対面することとなろう」
勇 者 「……!!」
少 女 「ふっ」
勇 者 「元魔王……頼みがある」
少 女 「父に会いたいのか」
勇 者 「……」
少 女 「会って如何にする?」
勇 者 「聞いておきたいんだよ。何で、俺と母さんを捨てたのか」
少 女 「私は既に死んだことになっている身だ。そんな私がお前の望みを叶える理由は? そのために危険を冒す代償は?」
勇 者 「……」
少 女 「あるわけがない、な」
勇 者 「……まあ、わかってるよ。仮にも敵だった相手の言うことだし」
少 女 「しかし、だ。私は常に、己の興味によってのみ動くことにしている」
勇 者 「俺は、興味がそそられる相手なのか?」
少 女 「クスッ……」
勇 者 「……」
少 女 「もう、あの城には戻るつもりもなかったが……気が変わった」
<翌日 魔王城>
幹 部 「報告いたします。我が軍と勇者軍が交戦、劣勢の模様です」
側 近 「勇者は?」
幹 部 「既に、3人の仲間と共に城へ侵入し……こちらへ向かっております」
側 近 「邪魔者を消した矢先に……勇者が本物であるというのは、本当らしいな」
幹 部 「側近殿。今こそ、奴を利用する時では」
側 近 「作業は終わったのか?」
幹 部 「はっ。既に待機……」
女勇者「魔王っ!!」
幹 部 「! ……勇者……!」
側 近 「来たか」
女僧侶 「さすが魔王って感じね。今までの奴とは桁違いじゃない」
女戦士 「ようやくこの場所に……兄上、今こそ仇を……!」
女魔法 「私の魔力……全てを賭ける」
女勇者 「今こそ、今こそお前を倒して、父さんの仇を討つ!」
側 近 「勇者よ、よくぞここまで辿り付いた。そんなお前に褒美をやろう」
女勇者 「…… !!」
英 雄 「……」
3 人 「!!」
女勇者 「と、父さ……父……さん……!?」
女戦士 「英雄殿が生きて……いや、あれは……!? 僧侶」
女僧侶 「間違いないわよ。魔物や人形の類じゃなくて、正真正銘の英雄」
英 雄 「……」
女魔法 「剣を抜いた。やる気だわ」
女勇者 「父さんっ! 父さん、僕だよ! 僕!」
女僧侶 「待ちなさいよ、気持ちはわかるけど……話が通じる状態じゃないっての」
女戦士 「傀儡となっているのか。魔王らしい汚い手だ」
側 近 「私の前に、彼と戦うがいい。かつての英雄と……」
少 女 「相変わらず姑息な手段を好むのだな」
側 近 「……!! きっ、貴様は!?」
幹 部 「ぐふっ!?」
4 人 「!?」
少 女 「さて、と……」
女勇者 「なっ、何!? 何が起こったの?」
女戦士 「魔王の手下を、一瞬で……!?」
女魔法 「あ……あ……」
女僧侶 「何よあの、ドス黒い魔力……!」
側 近 「魔王……!」
女戦士 「魔王!? 魔王だと!?」
少 女 「惨めなものだ。こう易々と王の間まで侵入を許すとは」
側 近 「生きていたとはな。私を殺しに来たか」
少 女 「お前にもはや、興味は無い」
側 近 「何っ…… かはっ!?」
女戦士 「!? あれほどの相手を、いとも簡単に……!」
女僧侶 「消し去った……」
女勇者 「……君が、魔王、なの?」
少 女 「話に違わぬ実力の持ち主のようだな。父のそれを超えている」
女勇者 「父さんをこんなにしたのは、君のせいなんだね」
女僧侶 「本当、嫌んなっちゃうけど……」
女戦士 「ここでやるしか、ないようだな」
少 女 「やめておけ。私も、お前達と争うために来たわけではない」
女勇者 「えっ?」
少 女 「そろそろ目覚めるがいい」
英 雄 「! ……う……」
女勇者 「父さん!」
英 雄 「ここは…… ! 女勇者! お前なのか……!」
女勇者 「父さんなの!? 本物なんだね! 良かった……生きて、生きてたんだ……!」
少 女 「久しいな英雄殿。以前会った時と変わらぬようだ」
英 雄 「お前は……魔王………!!」
少 女 「私がここに来たのは、お前達を殺しに来たわけではない」
英 雄 「何だと……?」
少 女 「英雄よ。彼を知っているか?」
勇 者 「……」
英 雄 「! お前は……」
女勇者 「父さん……?」
英 雄 「…… いや、知らんが」
勇 者 「しっ、知らんだって……? 俺に、俺の顔に見覚えも無いってのかよ」
少 女 「彼が言うには、お前の息子なのだそうだ」
英 雄 「すまないが、俺の子はそこの女勇者ただ一人だ。何かの勘違いだろう」
勇 者 「知らないなんて言わせねえ、この大陸の北にある、あんたの生まれ故郷だ! 母さんは幼馴染だったよな? このペンダントを預けて、いつか帰るって約束してたんじゃねえのかよ!!」
女僧侶 「ちょっと何? 何の話なのよ」
女戦士 「北方のある街が英雄殿の故郷だとは、私も聞いたことがあるが」
女勇者 「わかんない……父さん、あの人は」
英 雄 「……」
勇 者 「あんたが帰らなかったおかげで、全部なくなっちまったんだよ。親子二人、街のみんなから馬鹿にされながら生きてきた……母さんも俺を追い出した後、そこの元魔王に街ごと燃やされちまったんだ」
英 雄 「……すまないが、おそらく君の勘違いだろう。故郷が北方の街というのはよく流れていた噂なんだ。英雄の幼馴染ってのも、良く使われていた小銭稼ぎのネタだ」
勇 者 「なっ……」
少 女 「……」
英 雄 「君の母さんは、悪い男に騙されていたんだろう。可哀想に、信じきっていたんだろうな」
勇 者 「う……嘘言うなよ、家にはあんたの使ってた道具が、服が、みんなまだ残ってたんだぞ!?」
女戦士 「……なるほど、あの時宿に現れたのは、偵察だったのか」
勇 者 「!」
女僧侶 「ていうか、そもそも魔王とここに現れた時点で信憑性無いってのよ。あんた、宿にいた奴でしょ? あの時から怪しいとは思ってたけど」
女魔法 「魔王の手下と見るのが妥当」
女勇者 「……」
勇 者 「おい……何で剣を向けんだよ? お前の……兄貴なのに!」
英 雄 「…… 魔王たる者が、ずいぶん陳腐な揺さぶりをかけてきたな」
勇 者 「!!」
少 女 「ふむ」
勇 者 「お前ら……父さん…………」
女勇者 「父さんの妻は母さん一人……父さんの子は、僕一人なんだ」
勇 者 「おい」
女戦士 「女勇者が今まで、どれほど苦しんできたのか……お前達に思い知らせてやる」
勇 者 「待てよ」
女魔法 「覚悟を、決める」
勇 者 「待てって」
女僧侶 「いい加減黙れってのよ、魔王の手下その1。さて、最後の戦いといきますか」
勇 者 「おーい」
英 雄 「…… すまん、な」
勇 者 「あ……」
少 女 「だ、そうだ。どうする? 勇者よ」
勇 者 「……あ、あああああああああああああああああああああ!!!」
少 女 「ふむ。お前達は、私と戦う気なのか?」
英 雄 「もうやめようじゃないか、魔王。お前がいる限り、世界に光は訪れん」
少 女 「私は争う気は無いと言ったが?」
女勇者 「僕は父さんを信じる。父さんと一緒に、戦う」
勇 者 「ああああああああああ」
少 女 「……クスッ……人間が、これほど面白いものだったとはな。気が変わった」
5 人 「!」
勇 者 「ああああああああああ」
少 女 「立つがいい、勇者よ。私と共に戦うのだ」
勇 者 「……」
英 雄 「なん……何だと!?」
少 女 「何を驚くことがある? 我々が相手になってやろうというのだ」
女勇者 「いこう、父さん!」
英 雄 「あ、ああ」
女魔法 「炎よっ!」
女僧侶 「最初っから全力で……いくわよっ!」
女戦士 「はぁっ!」
女戦士 「女……僧侶、大丈夫、か……うあっ!」
女勇者 「戦士っ!」
女魔法 「腕が……私の、腕……」
女僧侶 「う……う……」
少 女 「私は確かに、争う気は無いと言ったはずだ。あのまま引いていれば、世界の英雄として再び凱旋できたはず。お前が無益な戦いを望んだ結果が、これだ」
英 雄 「くっ……ここまで、とは……」
勇 者 「……」
少 女 「一つ聞いておこう。なぜ、お前はそこに転がっている勇者を攻撃しなかったのだ」
英 雄 「かはっ……」
女勇者 「父さんを離……あぁっ!」
少 女 「……私が、知らぬとでも思ったか?」
英 雄 「!? 待てっ、魔王……」
少 女 「女勇者とその仲間達よ、聞くが良い。その青年は……紛うことなき、英雄の子なのだ」
女勇者 「何を、嘘言ってっ!!」
3 人 「!?」
少 女 「そこな英雄の表情が、真実を物語っている」
女勇者 「父さん! 頑張って、何とか反撃しなくちゃ」
英 雄 「うくっ……」
少 女 「勇者の言ったとおり、英雄は幼馴染との間に子をもうけた。しかし、彼には神の恵みは与えられず……自らの力の欠片も受け継がれていないことを、知ってしまった」
女勇者 「父さん? 何してるのさ、早く、黙らせないと」
英 雄 「……」
少 女 「やがてお前は、旅先であった女……娼婦に入れ込んだ挙句、その女との間にも子をもうけてしまった。それが女勇者だ」
女戦士 「黙れ魔王……ぐあっ!」
女勇者 「父さん! 父さんってば!」
少 女 「だがその子には、生まれながらに強き力を備えていた。娼婦も嫉妬深く、神経質な幼馴染とは対照的な、明るい女だった。そうだな」
英 雄 「……」
少 女 「そうして、お前は選んだ」
女勇者 「ねぇ……父、さん?」
少 女 「女勇者よ。この世で立った一人の、兄をその手にかけた気分を聞いておこう」
女勇者 「ねぇ……父さん……父さん?」
英 雄 「……すまん」
女勇者 「…… え?」
少 女 「どうやら、外の戦も一段落ついたようだ。やがて、ここにお前達の仲間がやってくるだろう」
英 雄 「! 待っ……魔王っ……!!」
少 女 「勇者は連れていく。また、会うこともあろう」
女勇者 「兄? 僕の……兄? 僕が、殺した?」
英 雄 「魔王っ! 俺と戦え、戦ってくれっ!」
少 女 「さらばだ」
英 雄 「魔王……!!」
女勇者 「……ねぇ。父さん」
女戦士 「英雄、殿……」
女僧侶 「英雄さん、あなた」
女魔法 「……英雄」
英 雄 「……すまん」
4 人 「えっ?」
街人1 「壮絶な戦いだったそうだ。仲間と共に魔王に挑んだ女勇者様だったが、最後は相討ちだったんだと」
街人2 「軍が魔王の間に着いた時にゃ、四人とも息絶えてたんだっけ?」
街人3 「魔王と部下の死体と、勇者達四人が転がってたそうだ」
街人1 「だが、そのおかげで再び平和が訪れたんだな」
英 雄 「……」
街人1 「何だいあんた、ボーっとして。この宿に泊まりたいのか」
英 雄 「あ、いや…… !」
少 女 「……クスッ」
勇 者 「……」
65 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 02:12:57.08 XsEN39Pz0 33/33変な終わりかただったけど終わりです。
エロを入れたかったが時間がなかった・・・・