1 : 以下、名... - 2010/07/25(日) 23:22:37.48 Gwm4ygN/0 1/33

   「あんただって英雄の息子として、色々辛かったのはわかる。街に帰ってきて、みんなから恥さらしのバカ息子って言われて、ずっと悩んでたのも知ってる」

勇 者「っせぇな、何だよいきな…」

   「でも母さんだって限界なの! 英雄の悪妻だとか息子を腐らせた張本人だとか言われて、働きに出たくてもどこも敬遠するし、恥を忍んでお金借りに行っても馬鹿にされるだけで、相手もされない!」

勇 者「知るかよ……」

   「私は、ここで生きていかなきゃいけないの! あの人がいなくても、この街で……うぅっ……」

勇 者「どうすれば良かったんだよ! ただ普通に暮らしたかっただけなのに、魔王が復活して、周りが勝手に勇者とか祭り上げたんだろ!?」

   「うっ……うぅ……」

勇 者「泣きてえのはこっちだよ、くそっ! 何で、何で魔王が復活しやがるんだよ……!」

   「……今夜。荷物まとめて旅に出てちょうだい」

勇 者「!」



元スレ
勇 者 「家から追い出された」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1280067757/

3 : 以下、名... - 2010/07/25(日) 23:28:54.43 Gwm4ygN/0 2/33

   「一念発起して、もう一度魔王征伐の旅にでも出たって事にすれば、あんたの名誉も少しは挽回出来る。私だって、少しは他所様に顔向け出来るし」

勇 者「要するに、邪魔になったから出てけってことか」

   「旅に出た後は、あの人の名前を出さなきゃどこに行っても、何してもいいから」

勇 者「……返事もしないんだな」

   「恨んでくれてもいい。お願いね」


<早 朝>
   「それだけ手持ちがあれば、3日くらいは平気でしょ」

勇 者「……」

   「もうこの辺には近づかないでね。手紙もいらない」

勇 者「……前は、街中で送り出したんだったよな」

   「誰かに見られるから、早く行って」

勇 者「……」

   「じゃあね」


4 : 以下、名... - 2010/07/25(日) 23:34:03.96 Gwm4ygN/0 3/33

<町の外>
勇 者 (……これから、どうすればいいんだよ)

勇 者 (行くあても無いし、金も無いし)

勇 者 (どこか遠くに行って、仕事でも……)

勇 者 「……ん?」

少 女 「そこの人間。旅の者か」

勇 者 「は? ……まぁ、そうだけど」

少 女 「英雄の生まれた街というのは、この街か」

勇 者 「! ……そう、らしいですよ」

少 女 「ふむ」

勇 者 (……行っちまった。何なんだあの女の子?)

勇 者 (はぁ……最寄りの村は、確か向こうの山を越えて……)


ギャァァァァッ……!!!




7 : 以下、名... - 2010/07/25(日) 23:39:02.98 Gwm4ygN/0 4/33

勇 者 「! 結界!? 街に入れない」

   「キャァァァァッ!」

勇 者 「あっ」



勇 者(……焼け野原だ)

勇 者(あそこが城で……ここが……俺の家、だった所)

勇 者「……」

少 女「お前だったのか」

勇 者「!」

少 女「よく似ている」 

勇 者「もしかして……あんた……!!」

少 女「お前達が『魔王』と呼ぶ者だろうな」



8 : 以下、名... - 2010/07/25(日) 23:45:17.73 Gwm4ygN/0 5/33

勇 者「…… つくづく駄目だな、魔王を目の前にして全然気づかなかった」

少 女「私が憎いか。英雄の子よ」

勇 者「……」

少 女「この光景が信じられぬか」

勇 者「どこかで……こうなる気はしてた。いや、こうなっちまえばいいと思ってた」

少 女「母を殺され、故郷の街を焼かれ、全てを失った気分を聞いておこう」

勇 者「おかしくなってるんだと思うわ。なんとも思わねえ」

少 女「仇である私を討とうと思わぬのか」

勇 者「思ったこともねーよ。まあ、父さんみたいになりたいとは思ってたけど」

少 女「……」

勇 者「魔王、一つ聞いていいか? 父さんは……どこにいる?」

少 女「それを聞いてどうする?」

勇 者「いや……やっぱいい。もう気が済んだ、殺してくれ」

少 女「……」


9 : 以下、名... - 2010/07/25(日) 23:49:23.37 Gwm4ygN/0 6/33

勇 者「…… 魔王」

少 女「気が変わった。殺すのはやめにする」

勇 者「? やめるって、俺を見逃すのか」

少 女「一応は先代の意思を継ごうと考えていたが……どうでもよくなった」

勇 者「そんなのでいいのかよ」

少 女「お前達が口にしている魔王像は、極めて一方的な想像物にすぎん。確かに私は、我々の世界において最上位の支配者の一人であったが」

勇 者 「じゃあ……今は一人なのか」

少 女 「後継者に指名されてはいたが、先代亡き後側近に謀殺されたことになっている。まあ、そう思わせているだけだが」




10 : 以下、名... - 2010/07/25(日) 23:52:27.92 Gwm4ygN/0 7/33

勇 者 「一人になったわけだ」

少 女 「そうかもしれぬ」

勇 者 「……」

少 女 「この先どうする?」

勇 者 「何にもしようがない。俺にはもう、何も無いんだから」

少 女 「ならば、私と共に来い」

勇 者 「俺が、魔王とか」

少 女 「魔王ではない、かつて魔王だった者だ」



11 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/25(日) 23:57:40.30 Gwm4ygN/0 8/33

<某 城>
女勇者 「魔王って、どこにいるのかなぁ」

女戦士 「密林の奥地か、天を突くような山奥か……いずれにしてもそれを探すのは軍の仕事。私達が考えることじゃない」

女僧侶 「私達はとにかく、魔王を討つことだけを考えりゃいいのよ」

女勇者 「うん、それもそうだね」

女魔法 「お腹すいた」

女僧侶 「ちょっ、上に何か着なさいよ!」

女魔法 「暑いから着たくない」

女勇者 「僕もおなかすいた~」

女戦士 「全く……」

侍 女 「失礼いたします。宴の準備が整いましたので、大広間へどうぞ」

   「……この勇者殿の活躍で、魔族共は今や、魔王の居城に立て篭もるばかりとなった。再び世界を恐怖に陥れた彼奴らを、今少しで討つことが出来るのだ」

女勇者 「ど、どうも……」

   「今宵は明日の戦いに備え、存分に英気を養って欲しい。乾杯!」

一 同 「乾杯!」


14 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:04:17.66 XsEN39Pz0 9/33

勇 者 「魔王……じゃなくて、元魔王」

少 女 「何だ、その呼び名は」

勇 者 「いいだろ別に。それより、こんな所にいて見つからないのかよ」

少 女 「ここにいる誰も我等の姿は見えぬ。それよりも、あそこにいる少女が」

勇 者 「正真正銘の勇者ってわけだろ」

少 女 「彼女らの働きにより軍を率いていた将軍達を次々と討たれ、それにより盛り返した人間達に今や王城まで追い込まれる有様だ」

勇 者 「何もしなくていいのか。味方がやられてんのに」

少 女 「もはや関係の無いことだ」

勇 者 「今なら武器も持ってないし、奇襲できるぜ」

少 女 「ふっ」

勇 者 「……何だよ」

少 女 「お前はすっかり、こちら側の人間になったな」

勇 者 「……」

少 女 「さて、ここに来たのは、お前に見せたいものがあるからだ」

勇 者 「見せたいもの……うわっ!」


15 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:05:44.19 XsEN39Pz0 10/33

少 女 「…… ここだ」

勇 者 「さっきまで城の中だったのに…… ここは? 宿?」

少 女 「お前は先程、父の行方が知りたいと言っていたな」

勇 者 「! ここに父さんが!?」

少 女 「自ら確かめるが良い」

勇 者 「……」

<街の宿>

勇 者 「あ、あの」

女 将 「いらっしゃい。一人?」

勇 者 「あ、はい、その」

女 将 「あーあ、ずいぶんボロボロじゃない? それ脱ぎなさい、洗ってあげるから」

勇 者 「違うんです。ちょっと、聞きたいことがあって」

女 将 「? 何?」

勇 者 「ここに……英雄がムグッ」

女 将 「しーっ! しーっ! …… ちょっとあんた、誰からそれ聞いたの!?」



16 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:07:12.97 XsEN39Pz0 11/33

勇 者 「! それじゃ……」

女 将 「ったく、あの人ったら死んだ後も色々苦労かけて……」

勇 者 「あ、あの人って……死んだ!?」

女 将 「英雄の家だってバレたら、有象無象が押しかけて大変でしょ? だから秘密にしてんの」

勇 者 「家って……じゃあ女将さん」

女 将 「一応ね。女ぼ……」

女勇者 「ただいま!」

女僧侶 「お邪魔しまーす」

女戦士 「失礼します」

女魔法 「します」

女 将 「ああ、おかえり」

女勇者 「あっ……」

女 将 「いいの、この人には全部バレてるから」

女勇者 「そうなんだ……あの、僕がここの子だって黙っててもらえませんか?」

勇 者 「……」


17 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:08:33.30 XsEN39Pz0 12/33

女 将 「……それでね、そのままここに居ついて、あの子が生まれちゃったってワケ」

勇 者 「……」

女 将 「子供が出来たら、もう勇者稼業は終わりだーって言ってねぇ。すっかり身分を変えて、ただの一般人になっちゃったのよ」

勇 者 「それから父……英雄は」

女 将 「死んじゃった。あの子が旅に出る直前だったかなぁ……遠くの街まで仕入れに行ってね、帰る途中に魔物に襲われて……あっけないもんよ」

勇 者 「そう……ですか」

女 将 「でも変ねー、赤の他人なのに、あたしなんでこんな話もしてんだろ? もしかして隠し子?」

勇 者 「!」

女勇者 「ねー母さん、僕の着替えどこ?」

女 将 「ったくあの子は……」

勇 者 「あ、俺部屋に戻ります」

女 将 「あらそう? じゃあおやすみ、ね」


19 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:10:06.81 XsEN39Pz0 13/33

<部 屋>

勇 者 「……」

少 女 「驚いているな」

勇 者 「父さんは行方不明じゃなかったんだな。それに、現勇者が俺の妹……」

少 女 「……」

勇 者 「ずっと生きてたんだ。他に女を作って、子供も作って」

少 女 「……」

勇 者 「俺達の所には戻らないまま、死んじまってた」

少 女 「……」

勇 者 「何で……戻って来てくれなかったんだよ……」

少 女 「その理由を知りたいのか」

勇 者 「そういうわけじゃ……ていうか、あんた知ってたのか」

少 女 「何をだ?」

勇 者 「父さんのこと、この宿のこと、現勇者のことも、全部」



21 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:12:55.13 XsEN39Pz0 14/33

少 女 「本人の口から聞いた」

勇 者 「何言ってんだよ。さっきの話じゃ父さんはもう」

少 女 「あの女は死んだと言っていたが、まだ生きている可能性が高い」

勇 者 「…… 嘘だろ」

少 女 「この街の墓に眠っているのは、魔法で巧妙に偽装させたトロルだ。本物は確かに、私が捕らえた」

勇 者 「それ、マジで言ってんのか」

少 女 「英雄は密かに、新たな魔王討伐を企てていたようだ。自らを祭り上げる世間の目から逃れるため、素性を隠していたに過ぎん」

勇 者 「じ、じゃあ父さんは、まだどこかで生きて……!」

少 女 「処刑されていなければ、王城地下の牢獄に囚われている。このままあの少女が攻め込めば、対面することとなろう」

勇 者 「……!!」

少 女 「ふっ」


22 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:17:35.93 XsEN39Pz0 15/33

勇 者 「元魔王……頼みがある」

少 女 「父に会いたいのか」

勇 者 「……」

少 女 「会って如何にする?」

勇 者 「聞いておきたいんだよ。何で、俺と母さんを捨てたのか」

少 女 「私は既に死んだことになっている身だ。そんな私がお前の望みを叶える理由は? そのために危険を冒す代償は?」

勇 者 「……」

少 女 「あるわけがない、な」

勇 者 「……まあ、わかってるよ。仮にも敵だった相手の言うことだし」

少 女 「しかし、だ。私は常に、己の興味によってのみ動くことにしている」
 
勇 者 「俺は、興味がそそられる相手なのか?」

少 女 「クスッ……」

勇 者 「……」

少 女 「もう、あの城には戻るつもりもなかったが……気が変わった」


24 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:23:45.94 XsEN39Pz0 16/33

<翌日 魔王城>

幹 部 「報告いたします。我が軍と勇者軍が交戦、劣勢の模様です」

側 近 「勇者は?」

幹 部 「既に、3人の仲間と共に城へ侵入し……こちらへ向かっております」

側 近 「邪魔者を消した矢先に……勇者が本物であるというのは、本当らしいな」

幹 部 「側近殿。今こそ、奴を利用する時では」

側 近 「作業は終わったのか?」

幹 部 「はっ。既に待機……」

女勇者「魔王っ!!」

幹 部 「! ……勇者……!」

側 近 「来たか」

女僧侶 「さすが魔王って感じね。今までの奴とは桁違いじゃない」

女戦士 「ようやくこの場所に……兄上、今こそ仇を……!」

女魔法 「私の魔力……全てを賭ける」

女勇者 「今こそ、今こそお前を倒して、父さんの仇を討つ!」


25 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:29:28.78 XsEN39Pz0 17/33

側 近 「勇者よ、よくぞここまで辿り付いた。そんなお前に褒美をやろう」

女勇者 「…… !!」

英 雄 「……」

3 人 「!!」

女勇者 「と、父さ……父……さん……!?」

女戦士 「英雄殿が生きて……いや、あれは……!? 僧侶」

女僧侶 「間違いないわよ。魔物や人形の類じゃなくて、正真正銘の英雄」

英 雄 「……」

女魔法 「剣を抜いた。やる気だわ」

女勇者 「父さんっ! 父さん、僕だよ! 僕!」

女僧侶 「待ちなさいよ、気持ちはわかるけど……話が通じる状態じゃないっての」

女戦士 「傀儡となっているのか。魔王らしい汚い手だ」

側 近 「私の前に、彼と戦うがいい。かつての英雄と……」



29 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:37:19.67 XsEN39Pz0 18/33

少 女 「相変わらず姑息な手段を好むのだな」

側 近 「……!! きっ、貴様は!?」

幹 部 「ぐふっ!?」

4 人 「!?」

少 女 「さて、と……」

女勇者 「なっ、何!? 何が起こったの?」

女戦士 「魔王の手下を、一瞬で……!?」

女魔法 「あ……あ……」

女僧侶 「何よあの、ドス黒い魔力……!」


32 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:44:06.34 XsEN39Pz0 19/33

側 近 「魔王……!」

女戦士 「魔王!? 魔王だと!?」

少 女 「惨めなものだ。こう易々と王の間まで侵入を許すとは」

側 近 「生きていたとはな。私を殺しに来たか」

少 女 「お前にもはや、興味は無い」

側 近 「何っ…… かはっ!?」

女戦士 「!? あれほどの相手を、いとも簡単に……!」

女僧侶 「消し去った……」

女勇者 「……君が、魔王、なの?」

少 女 「話に違わぬ実力の持ち主のようだな。父のそれを超えている」


33 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:47:58.67 XsEN39Pz0 20/33

女勇者 「父さんをこんなにしたのは、君のせいなんだね」

女僧侶 「本当、嫌んなっちゃうけど……」

女戦士 「ここでやるしか、ないようだな」

少 女 「やめておけ。私も、お前達と争うために来たわけではない」

女勇者 「えっ?」

少 女 「そろそろ目覚めるがいい」

英 雄 「! ……う……」

女勇者 「父さん!」

英 雄 「ここは…… ! 女勇者! お前なのか……!」

女勇者 「父さんなの!? 本物なんだね! 良かった……生きて、生きてたんだ……!」

少 女 「久しいな英雄殿。以前会った時と変わらぬようだ」

英 雄 「お前は……魔王………!!」


35 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:49:51.47 XsEN39Pz0 21/33

少 女 「私がここに来たのは、お前達を殺しに来たわけではない」

英 雄 「何だと……?」

少 女 「英雄よ。彼を知っているか?」

勇 者 「……」

英 雄 「! お前は……」

女勇者 「父さん……?」

英 雄 「……  いや、知らんが」

勇 者 「しっ、知らんだって……? 俺に、俺の顔に見覚えも無いってのかよ」

少 女 「彼が言うには、お前の息子なのだそうだ」



英 雄 「すまないが、俺の子はそこの女勇者ただ一人だ。何かの勘違いだろう」


37 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 00:57:08.16 XsEN39Pz0 22/33

勇 者 「知らないなんて言わせねえ、この大陸の北にある、あんたの生まれ故郷だ! 母さんは幼馴染だったよな? このペンダントを預けて、いつか帰るって約束してたんじゃねえのかよ!!」

女僧侶 「ちょっと何? 何の話なのよ」

女戦士 「北方のある街が英雄殿の故郷だとは、私も聞いたことがあるが」

女勇者 「わかんない……父さん、あの人は」

英 雄 「……」

勇 者 「あんたが帰らなかったおかげで、全部なくなっちまったんだよ。親子二人、街のみんなから馬鹿にされながら生きてきた……母さんも俺を追い出した後、そこの元魔王に街ごと燃やされちまったんだ」


39 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 01:03:32.11 XsEN39Pz0 23/33

英 雄 「……すまないが、おそらく君の勘違いだろう。故郷が北方の街というのはよく流れていた噂なんだ。英雄の幼馴染ってのも、良く使われていた小銭稼ぎのネタだ」

勇 者 「なっ……」

少 女 「……」

英 雄 「君の母さんは、悪い男に騙されていたんだろう。可哀想に、信じきっていたんだろうな」

勇 者 「う……嘘言うなよ、家にはあんたの使ってた道具が、服が、みんなまだ残ってたんだぞ!?」

女戦士 「……なるほど、あの時宿に現れたのは、偵察だったのか」

勇 者 「!」


41 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 01:09:02.69 XsEN39Pz0 24/33

女僧侶 「ていうか、そもそも魔王とここに現れた時点で信憑性無いってのよ。あんた、宿にいた奴でしょ? あの時から怪しいとは思ってたけど」

女魔法 「魔王の手下と見るのが妥当」

女勇者 「……」

勇 者 「おい……何で剣を向けんだよ? お前の……兄貴なのに!」

英 雄 「…… 魔王たる者が、ずいぶん陳腐な揺さぶりをかけてきたな」

勇 者 「!!」

少 女 「ふむ」

勇 者 「お前ら……父さん…………」


43 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 01:15:06.70 XsEN39Pz0 25/33

女勇者 「父さんの妻は母さん一人……父さんの子は、僕一人なんだ」

勇 者 「おい」

女戦士 「女勇者が今まで、どれほど苦しんできたのか……お前達に思い知らせてやる」

勇 者 「待てよ」

女魔法 「覚悟を、決める」

勇 者 「待てって」

女僧侶 「いい加減黙れってのよ、魔王の手下その1。さて、最後の戦いといきますか」

勇 者 「おーい」

英 雄 「…… すまん、な」

勇 者 「あ……」

少 女 「だ、そうだ。どうする? 勇者よ」



勇 者 「……あ、あああああああああああああああああああああ!!!」


46 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 01:26:29.59 XsEN39Pz0 26/33

少 女 「ふむ。お前達は、私と戦う気なのか?」

英 雄 「もうやめようじゃないか、魔王。お前がいる限り、世界に光は訪れん」

少 女 「私は争う気は無いと言ったが?」

女勇者 「僕は父さんを信じる。父さんと一緒に、戦う」

勇 者 「ああああああああああ」

少 女 「……クスッ……人間が、これほど面白いものだったとはな。気が変わった」

5 人 「!」

勇 者 「ああああああああああ」


48 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 01:31:28.50 XsEN39Pz0 27/33

少 女 「立つがいい、勇者よ。私と共に戦うのだ」

勇 者 「……」

英 雄 「なん……何だと!?」

少 女 「何を驚くことがある? 我々が相手になってやろうというのだ」

女勇者 「いこう、父さん!」

英 雄 「あ、ああ」

女魔法 「炎よっ!」

女僧侶 「最初っから全力で……いくわよっ!」 

女戦士 「はぁっ!」


51 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 01:44:56.45 XsEN39Pz0 28/33

女戦士 「女……僧侶、大丈夫、か……うあっ!」

女勇者 「戦士っ!」

女魔法 「腕が……私の、腕……」

女僧侶 「う……う……」

少 女 「私は確かに、争う気は無いと言ったはずだ。あのまま引いていれば、世界の英雄として再び凱旋できたはず。お前が無益な戦いを望んだ結果が、これだ」

英 雄 「くっ……ここまで、とは……」

勇 者 「……」

少 女 「一つ聞いておこう。なぜ、お前はそこに転がっている勇者を攻撃しなかったのだ」

英 雄 「かはっ……」

女勇者 「父さんを離……あぁっ!」

少 女 「……私が、知らぬとでも思ったか?」

英 雄 「!? 待てっ、魔王……」


53 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 01:52:43.44 XsEN39Pz0 29/33

少 女 「女勇者とその仲間達よ、聞くが良い。その青年は……紛うことなき、英雄の子なのだ」

女勇者 「何を、嘘言ってっ!!」

3 人 「!?」

少 女 「そこな英雄の表情が、真実を物語っている」

女勇者 「父さん! 頑張って、何とか反撃しなくちゃ」

英 雄 「うくっ……」

少 女 「勇者の言ったとおり、英雄は幼馴染との間に子をもうけた。しかし、彼には神の恵みは与えられず……自らの力の欠片も受け継がれていないことを、知ってしまった」

女勇者 「父さん? 何してるのさ、早く、黙らせないと」

英 雄 「……」

少 女 「やがてお前は、旅先であった女……娼婦に入れ込んだ挙句、その女との間にも子をもうけてしまった。それが女勇者だ」

女戦士 「黙れ魔王……ぐあっ!」

女勇者 「父さん! 父さんってば!」



54 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 01:56:28.92 XsEN39Pz0 30/33

少 女 「だがその子には、生まれながらに強き力を備えていた。娼婦も嫉妬深く、神経質な幼馴染とは対照的な、明るい女だった。そうだな」

英 雄 「……」

少 女 「そうして、お前は選んだ」

女勇者 「ねぇ……父、さん?」

少 女 「女勇者よ。この世で立った一人の、兄をその手にかけた気分を聞いておこう」

女勇者 「ねぇ……父さん……父さん?」




英 雄 「……すまん」


女勇者 「……      え?」


61 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 02:03:57.70 XsEN39Pz0 31/33

少 女 「どうやら、外の戦も一段落ついたようだ。やがて、ここにお前達の仲間がやってくるだろう」

英 雄 「! 待っ……魔王っ……!!」

少 女 「勇者は連れていく。また、会うこともあろう」

女勇者 「兄? 僕の……兄? 僕が、殺した?」

英 雄 「魔王っ! 俺と戦え、戦ってくれっ!」

少 女 「さらばだ」

英 雄 「魔王……!!」


女勇者 「……ねぇ。父さん」

女戦士 「英雄、殿……」

女僧侶 「英雄さん、あなた」

女魔法 「……英雄」

英 雄 「……すまん」



4 人 「えっ?」



63 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 02:11:59.63 XsEN39Pz0 32/33

街人1 「壮絶な戦いだったそうだ。仲間と共に魔王に挑んだ女勇者様だったが、最後は相討ちだったんだと」

街人2 「軍が魔王の間に着いた時にゃ、四人とも息絶えてたんだっけ?」

街人3 「魔王と部下の死体と、勇者達四人が転がってたそうだ」

街人1 「だが、そのおかげで再び平和が訪れたんだな」

英 雄 「……」

街人1 「何だいあんた、ボーっとして。この宿に泊まりたいのか」

英 雄 「あ、いや……  !」




少 女 「……クスッ」

勇 者 「……」
 


65 : 1 ◆tsGpSwX8mo - 2010/07/26(月) 02:12:57.08 XsEN39Pz0 33/33

変な終わりかただったけど終わりです。

エロを入れたかったが時間がなかった・・・・


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