妹「そうか……私に妹としての概念がない、と言うことは、つまり、そういうことだな兄よ」
兄「いや、どういうことだよ」
妹「詰まるところ、兄は私を妹として見れないわけだ」
兄「いや、俺は何も言ってないが」
妹「しかし、兄も大胆だな。お前をもう妹として見れない――なんて、そんなに私を恋人にしたいのか」
兄「話聞けよ」
はいどうぞ
元スレ
妹「妹と言う概念が無くなってしまった・・・だと・・・?」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1318851514/
妹「仕方ない。不本意だが、兄の恋人になってやってもいい」
兄「ナニイッテンダコイツ……おい待て、どこへ行く」
妹「つきましては、ご両親へ挨拶に」
兄「おい」
妹「はい」
兄「冗談はよせ」
妹「冗談だと思っているのだろうか」
兄「いや、冗談だろ」
妹「なんだと。私は兄のことをこんなにも好いているのに」
兄「嘘つけ。俺が近くに寄ると嫌そうな顔をして逃げるくせに」
妹「兄よ、私は嘘をついていない」
兄「ほう」
妹「ほら、私の目を見てみろ」
兄「……お前、何か企んでるだろ」
兄「吐け。何を企んでいる」
妹「兄よ、貴方は何を申しておるのか」
兄「反抗期真っ盛りのてめえが、俺のことが好きだのなんだの、そんなおかしいこと言うはずねえだろ」
妹「ひどい」
兄「さあ、いったい何を悪巧みしてやがる」
妹「私を貴方のお嫁さんにしてください」
兄「こいつ……」
妹「兄はなぜ私を信じてくれないのだろうか」
兄「お前の俺に対する普段の態度が悪いからだ。顔見た瞬間に舌打ちしたりとか。部屋で音楽聞いてたら壁殴って威嚇したりだとか」
妹「悪かった。反省してます」
兄「軽いわ」
妹「反抗期でごめんねてへぺろ」
兄「お前もう部屋から出てけよ」
妹「ひどい」
兄「お前の方がひどいわ」
妹「しかし兄よ、良く考えて欲しい」
兄「なんだよ」
妹「可愛い可愛い妹が、こうして頭を下げているのだ。少しは……許してくれても良いのではないだろうか」
兄「うーん」
妹「よし、じゃあ脱ごう」
兄「脱ぐな」
妹「なんだと」
兄「……スカートを捲るな。下着が見える」
妹「見せております」
兄「お前もう部屋から出てけ」
妹「待って欲しい、兄よ」
兄「だから、今度はなんだよ。俺は疲れてんだよ。用があるなら手早くすませてくれ」
妹「兄の一番好きな料理を教えてくれ」
兄「……はあ?」
妹「今すぐ食べたい、とか、一度食べてみたい、とか、そんなものがあれば」
兄「……お前、熱でもあるんじゃないのか? なんかいつもと態度が違う」
妹「お答えくださいお兄様。さあ、さあさあさあ!」
兄「ちょ、なんだよお前……オムライスだよ。オムライス」
妹「それはなんと可愛い」
兄「黙れ」
妹「……よし」
兄「何だそのメモ帳。って何慌てて隠してんの」
妹「なんでもない。気にしないで欲しい。兄の花嫁になるために必要なものなのだ」
兄「いや、まだ言ってんのかそれ」
妹「愛してるぜ」
兄「あー、はいはい。なんか普段と違うから妹っぽいなお前」
妹「兄よ、第二の質問だ」
兄「……今度はなんだよ」
妹「兄の一日のオ○ニー回数は何回だ」
兄「この淫乱」
妹「貶さないで。濡れる」
妹「んっ……冗談はさておき」
兄「……変な声出すなよ」
妹「兄よ、貴方はその豚さん貯金箱に沢山のお金を貯めているな」
兄「何で知ってんだよ」
妹「昨日、豚さんが私に教えてくれたんだ。彼は良い豚だ」
兄「お前、貯金箱の位置がずれてると思ったら……」
妹「ごめんね。許してね」
兄「目を合わせて謝れ」
妹「それはどうでもいいが、兄よ、貴方は貯まったお金で何を買うつもりなんだ」
兄「何度もいいだろ。お前にゃ関係ない」
妹「ひどい」
妹「教えてくれたって、いいじゃない」
兄「やだよ」
妹「貴方のことが、もっと知りたいのよ」
兄「何か企んでそうだし」
妹「……」
兄「ほら、もういいだろ。俺は課題しなきゃなんねえからアッチイケ」
妹「ねー教えてよおにーちゃん! ひどいよ教えてくれたっていいでしょおにーちゃん! ねーねーねーってばっ!」
兄「うわああああ抱きつくなお前! 離れろ! やっぱなんか今日お前おかしい! ……耳噛むな!」
妹「はむはむ」
兄「おいこら離れろ!」
妹「がぶがぶ」
兄「わかったって! 教えるから耳噛むのやめろ!」
妹「がぶ」
兄「ギターだよ」
妹「なんと」
兄「ほら、教えたから自分の部屋に帰れ。今日のお前はなんか怖い。かまってられん」
妹「でも、豚さんはもうお腹がいっぱいだと言っている」
兄「はあ?」
妹「もうお金、食べたくないって」
兄「いや、何が言いたいのか全くわからんが」
妹「その豚に貯えられた財力を持ってしても、駄目なのか……! やつは、やつは購入できないのか……!」
兄「俺もうお前についていけない」
妹「これは由々しき事態だ。やはり、高校生の財力ではやつは購入できないのか」
兄「あー、そうっすね、はい。……だからそのメモなんだよ」
妹「ささっ。お兄様、人には見られたくないものがあるのです」
兄「お前はいつも、俺の部屋を勝手に物色するだろうが。漫画貸せ、とか言って」
妹「……」
兄「ほら、いい加減、部屋に戻れ。シッシッ」
妹「……やっぱ、今さらだよね」
兄「何がだよ」
妹「何でもないぞ、お兄様」
兄「そうかよ。ほら、ドア閉めるぞ」
□ □ □
兄「ってことがあったんだけど」
母「まあ、あの子もいろいろ多感な時期だし」
兄「でも突然コロッと態度変わるんだもんな。あいつにも何度も言ったけど、絶対何か企んでやがる」
母「そう?」
兄「だって俺の貯金箱の中、見てたみたいだし。金貸せ、とか言ってくるんじゃね」
母「でもあの子、結構お金持ってるみたいよ。あんまり友だちと遊びにいかないし」
兄「つうかあの性格からして、友だちいねえだろ、ぜったい。何もしてないのに人のこと蹴ったり殴ったり、最悪だわ。おまけに側通っただけで睨んでくるし」
母「まあ、それも今のうちだって。お兄ちゃんだから我慢しなさいな」
兄「こっちだいぶ我慢してるんだけどな。だいたい母さんもあいつを甘やかすから……」
母「そろそろ、反抗期も終わりかねえ」
□ □ □
兄「いつもの妹だ」
妹「……チッ」
兄「水飲みに台所に行ったら、バリアーがはられてた」
妹「ちょ、そっちバリアーはってるから! バリアーはってるから入れないし!」
兄「バリアー解除」
妹「駄目だって、バリアーはってるって! 駄目! このクソ兄貴、入ってくんな!」
兄「態度変わりすぎだろコイツ」
妹「……いいから、とっとと帰れよ。私は今忙しいんだからな」
兄「つうか、お前一人の台所じゃねえだろ。そこどけ」
妹「どかないし」
兄「こいつ……はぁ」
兄「ちくしょう、ほんと苛々するわ……昨日は妹が妹っぽくなるという驚きの事態があったが、やっぱり妹は妹だった――って言ってること意味わかんねえ」
母「あはは」
兄「オカンは台所を占拠されてることを気にせず、テレビを見て笑っている」
母「あ。あんた、そこに夕御飯置いてあるから」
兄「コンビニ弁当……」
母「妹ちゃんが台所使ってるし、料理できなくって」
兄「はあ……なんかもう」
母「そうそう、あんた明日どうするの?」
兄「明日?」
母「あー、まあいっか。お母さん、仕事で遅くまで帰ってこないし、適当にお金でも渡しとくから。妹ちゃんと好きなの食べなさい」
兄「なんかよくわからないけど、了解……っておい母さんこれ」
母「あ、犬の特集、8時からやるのね」
兄「諭吉……一食分なのに多くないか?」
一日後。
兄「起きた。今日は土曜日である。学校はお休みだ。したがって、二度寝しようと思う」
妹「おい」
兄「反抗期真っ盛りの妹の声が耳朶を打つ。私は少々いらっとした」
妹「おいってば!」
兄「うるさい……」
妹「起きろ!」
兄「あぐっ!」
妹「あっ、み、鳩尾……」
兄「ゲホッ、ゴホッ! ウグッ」
妹「べ、別にわざとじゃないし、だいたい、兄がさっさと起きないから」
兄「……お前、ふざけんなよ」
妹「……顔洗ってきなよ、汚いし。くさいし」
兄「……」
兄「家の鏡って、こんなに汚かったっけ……あ、クマが」
妹「なにぼさっとしてんの」
兄「……」
妹「おい、無視すんなよ」
兄「……うるさいなあ」
妹「なっ、うるさいって」
兄「ほら、あっち行け。顔洗うから」
妹「……」
兄「……なんだよ」
妹「顔洗ったらさ、ちょっとリビングまで来てよ」
兄「何で?」
妹「いいから、早くして」
兄「……」
兄「顔をタオルでゴシゴシっと……つうか、さっきから階上でゴソゴソと物音がするんだが。妹か? 何やってんだあいつ――気になるので少し見に行ってみる」
妹「ちょ、兄、階段にバリアーはってるから! バリアーはってるから入ってこれない!」
兄「またバリアーか」
妹「リビングに行って、待ってろって!」
兄「つうかお前、俺の部屋で何やってたんだよ」
妹「はあ? 頭おかしいんじゃないの? 何で私が兄の部屋に入らないとダメなんだよ」
兄「あー、まあ、悪い、気のせいだわ」
妹「チッ……ボケたんじゃないのクソ兄貴」
兄「はいはい、で、まあリビングで待っときゃあ良いんだな」
妹「だから待っててって」
兄「……」
兄「妹が一階に降りてきましたとさ。で、何があるんだ、いったい」
妹「……別に」
兄「はあ?」
妹「……」
兄「何もないなら呼ぶなよ」
妹「……ある」
兄「はあ……」
妹「今日の昼御飯、どうする?」
兄「昼? ……ああ、俺、昼まで寝てたのか」
妹「だから昼御飯っ」
兄「ああ、それなら諭吉さんが。適当にどっか外に食べに行こうぜ」
妹「万札……?」
兄「……」
妹「……」
兄「なあ、駅前にオムライスのうまい店があるんだけど、行かね? 最近オムライス食ってねえし、せっかくの外食だから――」
妹「……っ!」
兄「おいっ! てめぇ何を……金、返せ!」
妹「外食は、なしっ!」
兄「なんだよお前……自分勝手に」
妹「……」
兄「お前さ……いい加減にしろよ」
妹「え……」
兄「お前はいつもいつも、わがままも程々にしておけ。俺はもう我慢の限界だ」
妹「べ、別に私はそんな、つもりじゃ」
兄「じゃあどんなつもりなんだよ」
妹「いつもは、だけど今日はっ」
兄「今日は、何だよ。朝起きたら人の腹蹴って、それも今日に限った事じゃねえし」
妹「……」
兄「お前さ、ホント、いい加減にしろ」
妹「……」
兄「それとお前、俺の金、盗んだろ」
妹「な」
兄「昨日の夜中、俺の部屋来てたろ、お前」
妹「……気が付いてたんだ」
兄「まだ確認してねえけど、なんとなくな。万札見せた時の反応怪しかったし。なんで金持ってんの、みたいな目をしてたろ」
妹「……そう」
兄「お前さ、わかってんの。自分が何をしたのか。これ、ホント洒落になんねえんだけど」
妹「……ごめん、わたし」
兄「謝ればいいと思ってんのかよ! つうか、謝って簡単に許すと思うか!?」
妹「ひっ」
兄「おい、金、どこにやった」
妹「お金、は」
兄「早く答えろ!」
妹「つ、使った」
兄「はあ!?」
妹「その」
兄「お前、人が貯めてた金を……」
妹「で、でも、わたしは……」
兄「……お前もう、どっかいっちまえよ。妹だからって思ってたけど、もう無理だわ」
妹「……」
兄「……」
妹「……わかった」
兄「……」
妹「兄、」
兄「……」
妹「……やっぱなんでもないや」
兄「あいつ、玄関の鍵閉めていかなかったな……つうか、鍵持っていってないのか」
兄「……」
兄「まあ、どうでもいいか。あんな奴の事なんて。それよりも」
兄「……あいつ、俺の部屋で何やってたんだ? まさか貯金箱の金をスッたわけじゃないし。昨日だしな」
兄「なんも変わんねえけど。つうか、やっぱ貯金箱がない……もう少しでギターが買える金額まで貯まったのに……チッ」
兄「クッソ!」
兄「……?」
兄「あ、なんか壁を蹴ったら物音が。クローゼットの中か?」
兄「……なんだこれ」
兄「これって」
兄「ギター?」
兄「なんで、ギターが……!」
兄「……母さんか?」
兄(でもなんとなく、違う気がする)
兄「まさか、妹?」
兄「そんなはずは……」
兄「妹の部屋、来てしまったが」
兄「まあ、今まで入れてもらったこともなかったんだけど、あいつ、部屋だけ見ればこう、年頃の女の子なんだな」
兄「机の上になんか、書置きがある」
兄「……つうかこれ、メモ用紙じゃないか? あの時の」
兄「鳥もも肉、マッシュルーム……ってなんだこれ」
兄「卵五パック、近所のスーパーで買えば安いらしい」
兄「……」
兄「これ、あと妹の貯金箱だ。割れてるけど」
兄「あいつ、そういや結構金持ってたって、母さんが言ってたっけ」
兄「どこかでみたような豚さんも隣に並んでる」
兄「中身ないけど」
兄「……」
兄「……」
兄「机の横に吊ってある、カレンダーにマル印」
兄「……」
兄「あ……」
兄「そうか、母さんの言ってた”明日”って」
兄「今日、俺の誕生日だったか」
兄「妹……」
妹「今さら私が言えたことではないか」
妹「ごめんなさいって、きちんと」
妹「だって、今まで兄には随分と酷いことをしたし」
妹「今もまだまだ反抗期だって、一言で済ませれば終わりだけど」
妹「私も少しは成長して、人の気持ちを考えるようになって」
妹「やっと大切なことに気が付いて」
妹「今まで何で、あんなことしてたんだろうって」
妹「だから少しでも助けになれればって思って」
妹「……お金を黙ってとったのには変わりない」
妹「家に帰りたくない」
妹「兄に、言われちゃったし」
妹「私は兄の妹でも何でもないって」
妹「私に妹という概念がなくなってしまっただと……?」
妹「……ただの他人で、おまけに無断でお金をとった泥棒だし」
妹「それに、それに、私は今まで、あの人を兄として扱ったことがなかった」
妹「これが因果応報ってやつだね」
妹「……寒いなあ」
妹「寒いなあ」
兄「寒いな」
妹「そういえば、もうお昼すぎちゃったなあ。オムライス、一生懸命つくって、兄に食べてもらうつもりだったんだけどなあ」
兄「そうだな、じゃあ、今日は食べに行くのやめて、家でオムライスを食べようぜ」
妹「……」
兄「……」
妹「……」
兄「ほら、帰るぞ」
妹「……」
妹「……」
兄「……」
妹「ごめん」
兄「俺も」
妹「……え」
兄「勘違いだった。本当に、ごめん。ひどいこと言って」
妹「私が、悪いんだ」
兄「そんなことねえよ。ほら、オムライス、つくってくれるんだろ?」
妹「兄のお金、とっちゃったし」
兄「誰かさんが、ギターを買ってくれたんだ」
妹「……」
兄「俺、バイトとかして金を貯めてたんだけど、なかなかうまくいかなくってさ。でも、その足りない分を誰かが自分の金から出してくれたんだ」
妹「……うん」
兄「誕生日プレゼント、ありがとな」
妹「……ふん、感謝しろよ」
兄「ああ、感謝したぞ」
妹「……」
兄「……」
妹「兄、冷蔵庫にケチャップってあった?」
兄「あん?」
妹「私は家に帰って兄の為にオムライスをつくるのだろう。しかし、オムライスにはケチャップが必要ではないのか」
兄「あー」
妹「貴様の顔に塗りたくってやろう。この儀式を終えれば私たちは晴れて仲良し兄妹だ」
兄「いや、意味わからんから」
妹「……兄」
兄「なんだ兄妹」
妹「……別に」
兄「なんだよ」
妹「チッ……ケチャップでオムライスにハートをトッピングさせてやるから覚悟をしておけ」
□ □ □
兄「あれから、妹のテンションがおかしい」
妹「兄よ、ギターの音量はもう少し下げてくれぬだろうか。濡れる」
兄「ああ、うん、すまん」
妹「ところで兄よ、今弾いている曲の名前は……?」
兄「いや、今有名なロックバンドの……」
妹「カッコいい! 抱いて!」
兄「ちょおおおお前抱きつくなおいいいい! 耳! 耳噛むなこら!」
妹「はむはむもぐもぐ」
兄「やめ、ろ! 離れろ!」
妹「離れたぞ」
兄「ちくしょうこいつ……この間まで反抗期だったくせに」
妹「……反抗期が私の、妹としてのアイデンティティだったのだろうか」
兄「は?」
妹「大変だ、このままでは……いやすでに、兄は私を妹として見ていないのか!」
兄「いや、わけわからんて」
妹「いや、恋人として見られるなら、それはそれでじゅるり」
兄「こんな、俺にデレデレべったりな妹、妹じゃない」
妹「なっ……! 私の妹と言う概念が失われてしまっただと……」
兄「あのなあ」
妹「忌々しき事態! 忌々しき事態!」
兄「…………別に反抗期であってもそうでなくても、お前は俺の妹だよ」
母「そうか……妹ちゃんも、そろそろ思春期の時期なんだねえ」
-おわり-

