女「こんにちはー!」
男「なんだお前……!? なんで俺のことが……!」
女「あたし霊感強いからさー」
男(いるよな……こういう霊感強いって自称するクソ女)
男(もっとも……こいつは本当に霊感があるようだけどさ)
女「あなた、なんで幽霊になっちゃったの?」
男「死んだからに決まってんだろ!」
元スレ
女「あたし霊感強いからさーw」男「いるよな……こういうクソ女」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1598439669/
女「普通、人は死んだら成仏するもんだと思うけど。なにか恨みでもあるの?」
男「恨みというか、未練だな」
女「どんな未練?」
男「俺は生きてる時、全然モテなくて、彼女が一人も出来ないままつまらない事故で死んじまった……」
男「だから、その未練のせいでこうして浮遊霊になっちゃったんだよ」
女「ふうん、だったらあたしがデートしてあげよっか?」
男「え、いいのか?」
女「うん、あたし多少あなたに親近感湧いたし」
男「もしかして、俺の顔が結構好みだとか?」
女「ううん、全然。あたし面食いだし」
男「ちっ」
男「しっかしデートってどこ行けばいいんだ? 神社とか寺とか?」
女「そんなとこ行って喜ぶ若い女がいると思う?」
男「中にはいるだろ」
女「だいたい幽霊がそんなとこ行ったらお祓いされちゃうでしょ」
女「あたしはあなたと違って、彼氏いたことあるからね。ここはあたしに任せて」
男「うん、頼むよ」
<映画館>
男「映画って……結構月並みじゃないか」
女「うるさいわね」
女「えぇと、買うのはあたしのチケットだけでいいか」
男「この体はこういう時はタダ見できて便利だな」
……
男「いやー、地下世界から地上への大脱走劇! 面白かった~」
男「どうだった?」
女「んー、イマイチ。舞台が地下ってのがなんか息苦しくて」
男「ふん、女にはああいうロマンは分からないか」
<遊園地>
男「お次は遊園地か」
女「お化け屋敷入ろ。ここのは怖いらしいよ」
男「幽霊がお化け見てもなんも怖くないだろうけどな」
オバケ「うらめしや~」ガタンッ
男「ぎゃあああああああああああ!!!」
女「ビビりすぎだって……」
男「学習した! 幽霊になっても、怖いもんは怖い!」
男「ジェットコースターは、周囲は俺が見えないから、君一人で乗ってるような格好になっちゃうんだよな」
男「どうする?」
女「別にかまわないけど」
男「じゃ、二人で乗ろう」
ゴォォォォォォォォッ!!!
男「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
女「絶叫系もダメなのね」
男「なにか食べる? といっても俺は食えないけど」
女「ううん、あたしもいいや」
男「じゃあどこかで休む? 結構歩いてるだろ」
女「大丈夫、全然平気」
男「へえ、体力あるんだ。スポーツでもやってるの?」
女「そんなわけでもないんだけどね」
男「じゃあ、生まれつき足腰が強いんだ。と、足の話をしてたらあんなところで――」
男「手相占いやってるよ。見てもらえば?」
女「えー、いいよ」
男「いいじゃん。やってもらえよ」
女「じゃあ……」
手相師「いらっしゃいませ」
手相師「ではあなたの手相を見ていきますので」
女「お願いします」
手相師「どれどれ……」
女「……」
手相師「金運は……まあ、普通でしょう」
手相師「男運は……よくありませんねえ。極めて悪い。来世に期待した方がいいレベルです」
女「……どうも」
男(この人には俺が見えてないから、ボロクソにいってくれるなぁ。どうせハズレ男ですよ)
手相師「次は……ん? んん? なんだこれ? おかしいぞ……!?」
女「!」
女「行こ!」ダッ
男「ちょっ!?」
女「……」タタタッ
男「おい、待てよ!」フワフワ
手相師「あれは……見間違いか……!?」
<公園>
男「締めは公園か」
女「あっちの方、アスレチックになってるし一緒に遊ぼうよ」
男「いいよ」
女「よいしょ、よいしょ」
男「といっても、俺はスケスケのフワフワだから、雰囲気を味わうだけだな」
女「もう少しで頂上に……」グッ…
女「きゃっ!」ツルッ
男「えっ」
女「きゃあああっ!」
男「助けないと! ――って幽霊だから助けられねえ!」
ドシンッ!
男「だ、大丈夫か!?」
女「うん、平気」ケロッ
男「うわっ! ……痛くないのか?」
女「全然」
男「結構シャレにならない落ち方してたけど……タフだなぁ」
女「まあね~、さ、もっと遊ぼう!」
男「う、うん……」
女「あー、楽しかった」
男「俺もハラハラしたけど、楽しかったよ」
女「満足できた?」
男「まあね。欲をいえば肉体がある頃にデートしたかったけど……満足したよ」
男「これなら、あとは天国行きたいって祈れば成仏できそうだ」
女「……」
女「いいなぁ」
男「? いいって……なにが?」
女「あなただけ成仏できて。羨ましい」
男「あなた、だけ……? どういうこと?」
女「つまりね、死んでるのはあなただけじゃないってこと」
男「……な!?」
男「だって俺と違って……君は実体があるじゃないか!」
女「うん、あるよ」
男「実体はあるのに死んでる……それってまさか」
女「そう、あたしは……ゾンビってわけ」
男「えええ……!?」
男(いや、だけどデートを思い出してみると、たしかに思い当たる節が……)
男(それにゾンビなら霊感が強くて当然だ! 自分もその世界に足を踏み入れてるんだから!)
男「なんでゾンビになっちゃったの?」
女「死んじゃったからに決まってるでしょ」
女「あたしね、ある男と付き合ってたの」
女「あたし面食いだし、彼氏はかなりのイケメンだった。だけど、性格は最悪だった」
女「殴られたり、金をせびられたり……だけど惚れた弱みで彼を支え続けた」
男「……」
男(当たってるな、手相占い……)
男(ひょっとして占い師が驚いたのは、もう生命線が尽きてるからだったりして)
女「そんなある日――」
イケメン『悪いんだけどさ、もう別れてくれよ』
女『どうして!? なんで突然!?』
イケメン『ぶっちゃけお前に飽きちゃったんだよね。それに俺、他に好きな子できちゃったから。じゃ』
女『ちょ、ちょっと待ってよ!』
男「ひどい話だな……」
女「あたしも受け入れられなくて、それで二人とも、どんどんヒートアップして……」
イケメン『しつっけえんだよ!』
――ガンッ!
女「思い切り殴られて……あたしの意識はなくなった。で、気づいたら土の中に埋まってたの」
女「最初は真っ暗で、どこにいるか分からなかったわ」
男「つまり……殺されて埋められたってことか……」
女「そういうこと」
女「ほら、ここ。傷も残ってるもん」
男(それじゃ、地下から地上を目指す物語なんて楽しめるわけないよな)
女「あなたが彼女ができなかった未練で幽霊になっちゃったように……」
女「あたしは殺された恨みでゾンビになっちゃったの」
女「疲れもしないし、痛みもないし、お腹もすかない。体が腐ることもないみたい」
男「そうだったのか……」
女「ま、だけどこうして人一人助けられてよかった」
女「いずれあたしも成仏してみせるから、先に行っててよ」
男「……」
男「……なぁ」
女「ん?」
男「一日デートして俺だけ幸せになった、ってのも後味が悪い。このままじゃ成仏できない」
女「なにいってんの。そしたらデートした意味が……」
男「だからさ、君も未練をなくせばいいんだよ」
女「どうやって?」
男「君を殺したそいつに復讐してやろうよ」
女「復讐!?」
女「復讐ってどうやって……?」
男「あまり大がかりなことは無理だけど、俺たち両方死んでるし、そのイケメンをおどかすぐらいはできる」
男「そうすりゃいくらか気も晴れるはずだ」
女「……」
女「うん、面白そう! やってみよう!」
男「決まり!」
女「じゃあ、さっそく彼のいるマンションへ!」
<マンション>
イケメン「……」グビッ
イケメン(午前2時……丑三つ時か)
イケメン(ちっ、こういう時は殺しちまったあいつを思い出しちまうぜ……)
イケメン(なーんで灰皿で頭殴ったぐらいで死ぬかねえ)
イケメン(新しく付き合った女とも、結局すぐ終わっちまったしよ……)グビッ
イケメン「酒……もうねえのか」
イケメン「しかたねえ、コンビニ行って買ってくるか」
イケメン「……」スタスタ
男「お、出てきたぞ」
女「やっぱり。彼は夜に酒を買いに行くことが多いからね。あたしもよく買いに行かされたもん」
男「聞けば聞くほどひどい男だな」
男「よぉし、手はず通り、まず君が出ていって恨みごとでもぶつけてやれよ」
女「オッケー」
イケメン「……あん?」
女「お~ひ~さ~し~ぶ~り~……」
イケメン「……え」
イケメン「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
女「!?」
ドサッ
シーン…
女「……え!? あの、もしもし? えええええ!?」
男「どうした!?」フワフワ
女「それが……いきなり倒れちゃって……」
男「よっぽど驚いたんだろうな。こいつなりに罪悪感はあったってことか」
男「おーい、大丈夫かー? 頭打ってないかー?」
男「……」
女「なに? 急に黙っちゃって」
男「死んでるよ、これ」
女「え!?」
女「ウソでしょ……!?」
男「いや、本当。幽霊な俺だから分かる」
男「こいつの魂っていうのか霊体っていうのか、そういうのがなくなっちゃってるもん」
男「多分驚いた拍子に一気にあの世まですっ飛んでったんじゃないかな。救命処置しても無駄だよこれ」
女「そんな……」
男「……」
男「気にするな。君はおどかしてすらいないんだから。事故だよ、事故」
男「それにこいつだって、こういう死に方して当然のことをしたんだから」
女「うん……」
女「この死体はどうしようか……」
男「このままにはしておけないし、通報するしか……」
男「……待てよ」
男「ちょっと入ってみよう」スゥ…
イケメン「……」モゾモゾ
イケメン「入れちゃった」ムクッ
女「入れちゃうもんなの!?」
イケメン「うん、手足を動かせる。俺のものになってる」クイクイッ
イケメン「ただし心臓とかは止まったままだ。ようするにゾンビ状態になってる」
女「あたしと同じってことか」
イケメン「……」
イケメン「あのさ、一つ提案があるんだけど」
女「なに?」
イケメン「俺は元々自分の容姿に未練はないし、君もこいつの外見は好みだろうし――」
イケメン「死人同士いっそこのまま付き合わない?」
女「!」
イケメン「どうだろ?」
イケメン「嫌なら嫌で、もちろんかまわないけど。そしたら大人しく成仏するよ」
女「ううん……嫌ってことはない。さっきまでのデートは楽しかったし」
女「付き合ってみよっか! このまま成仏ってのもつまらないし!」
イケメン「ホントか!」
女「きっとあたしの男運の悪さも、死んだことでチャラになってると思うし」
イケメン「ある意味、今が来世みたいなもんだしな」
イケメン「まさか、こんなことになるとは思わなかったよ」
女「あたしもよ」
イケメン「といっても死体同士だし、いつまでこの状態を維持できるか分からないけど……」
イケメン「とりあえずよろしく!」
女「こちらこそ!」
イケメン「死が二人を分かつまで!」
女「ってあたしら、二人とも死んでるってば」
イケメン「あ、そうだった」
アッハッハ…
おわり
思い込みが強くてなんでも霊にしたがり、なんでも霊に見えてしまう人。