1 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/28 23:38:21.77 0OcaSI+K0 1/36

一同「「「真/真ちゃん/真クン/まこちん」」」

一同「「「お誕生日おめでとう!」」」

「みんな、ありがとう!」

春香「ケーキですよ、ケーキ!」

「わぁ、すっごいや! 可愛くて食べるのがもったいないぐらいだね」

やよい「春香さんと雪歩さんと私で作りました!」

雪歩「えへへ、喜んでもらえたなら嬉しいな」

「うん。三人ともありがとう!」


元スレ
真「ボクだって合法です!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377700701/

2 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/28 23:42:21.55 0OcaSI+K0 2/36

亜美「よし、コヨイはブレーカーだ!」

小鳥「無礼講よ、亜美ちゃん」

真美「朝まで飲んで食べて騒ごうぜ!」

律子「ダメに決まってるでしょ」

あみまみ「「ノリ悪いよー!」」

「あはは……あ、プロデューサー!」

P「おう、18歳の誕生日おめでとう、真」

「ありがとうございます! 18歳って、全然実感ないですけど」

「ボクって、ちゃんと大人になれてるのかな、って……」

P「そうか? 真はみんなのいいお姉さんになってくれてるよ」

「お、お姉さんですか? お姉さん……へへっ///」

「あの、プロデューサー……」

P「ん?」

「ボク、18歳になったら……」

P「なんだ?」

「うぁ……あの……///」

美希「あー! 真クン、誕生日だからって抜け駆けはズルイの!」

「み、美希!? 別に抜け駆けなんてしてないよ!」

美希「信用ならないの! ほら、二人ともこっち来て!」

P「ははは、わかったわかった」

「うぅ、もう……」


しょうがないなぁ、明日でいいか。

18歳になったら、絶対に言おうって決めてたからね。


ボクの気持ちを、プロデューサーに……。

3 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/28 23:44:10.56 0OcaSI+K0 3/36

 ── 翌朝 765プロ事務所 ──


18歳かぁ……お酒はまだダメだけど、ボクももう大人なのかな。

可愛い女の子には……ちょっとなれなかったかもしれないけど。

でもいいんだ! これからは素敵な大人の女性を目指すんだから!


プロデューサーも、ボクのことみんなのいいお姉さん、って……。

ちゃんと、女の子? ううん、女の人? として見てくれてるってことだよね。

うはっ/// 照れちゃうなぁ///


 ガチャ

「おはようございます!」


あれ? 誰もいないのかな?

鍵が空いてたから、プロデューサーか小鳥さんはいるはずだけど。


P「zzz……」


あ、プロデューサー……机で寝ちゃってる。

どうしよう? 起こしたほうがいいのかな?

起こして……。

今なら誰もいないし、昨日言えなかったことを……。


だ、ダメダメ! プロデューサー疲れてるんだから。

こんなときぐらい、少しでも休んでもらわないと。

4 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/28 23:45:33.90 0OcaSI+K0 4/36

「大変ですよね。9人もアイドルを支えて……」

「それなのに、ボクたちには少しも辛そうな素振りなんて見せないで……」

「ボクがもうちょっと大人だったら、少しは頼ってくれましたか?」

「……」

P「zzz……」

「へへっ、油断しすぎです」

「いたずらしちゃいますよ~?」

P「ん……zzz……」

「嘘です……そんなことしません」

「いつもありがとうございます、プロデューサー」

P「zzz……」

「……」

「ボクは、プロデューサーのこと……」


ううん、こんなの違う。

今言ったって、気持ちを伝えたつもりになって、それで自己満足するだけだ。

ちゃんと伝えなきゃ。

大切なことなんだから……。

5 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/28 23:48:31.24 0OcaSI+K0 5/36

ふぅ……なにか飲もうかな。

お茶は……ボクが淹れると渋くなるんだよなぁ。

雪歩はなんであんなに美味しく淹れられるんだろ?


とりあえずコーヒーでいいか。

あ、だったらプロデューサーの分も淹れよう。

少しは女らしいところもアピールしないとね。へへっ。


「え~と、コーヒーコーヒーと……あった」

「わぁ~、いい香りだなぁ」


粗挽き? ああ、なんか聞いたことあるかも。

でも、こんなのお湯に溶けるのかな?

前に律子が淹れてたのとは、全然違う気がするけど……。


ま、いっか。なんでもやってみないとね!

眠気覚ましには濃いほうがいいだろうから……よし、いっぱい入れよう!


 ザザー

「お湯を注いで……」

 ジャー

「かき混ぜれば……」

 シャカシャカ

「……」

 シャカシャカシャカシャカ…

「あれ? 溶けないぞ?」

6 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/28 23:50:33.26 0OcaSI+K0 6/36

おかしいなぁ。

コーヒーっぽい色にはなってるのに、なんで具入りみたいになってるんだろ?

粗挽きっていうぐらいだから溶けにくいのかな?


よし、すりつぶそう!

そうすれば溶けやすくなるよね!

 ゴリゴリ…

 ゴリゴリゴリゴリ…

うん、だいぶ粉っぽくなった。

さっきより少なめにして、お湯を注げば……。

 ジャー

これなら溶け……てるの、これ?


なんだか、すごくドロドロで毒々しい液体だなぁ。

僕の知ってるコーヒーとは違う気がするけど……。

で、でも、これなら眠気なんて一発で覚めるよね!


それじゃ、ボクの分も淹れて……。


 <ガチャ

 <オハヨウゴザイマス…オヤ?


誰か来た? あ、貴音か。

あ~あ、事務所じゃなかなか二人っきりってわけにはいかないかぁ。

でも、ちょうどいいや。

コーヒー冷めちゃったら美味しくないし、そろそろプロデューサーを起こそう。

7 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/28 23:53:12.74 0OcaSI+K0 7/36

貴音「あなた様。そのような姿勢では、休んでも疲れが取れませんよ」

P「zzz……」

貴音「ふむ……では」


貴音、なにしてるんだろ?

プロデューサーに……え!? 後ろから抱きついた!?


貴音「体を起こして……えいっ!」

 グイッ


こ、これは!?

貴音が後ろから支えて……。

 ポフッ

プロデューサーの頭が90に! 90に埋もれて!


貴音「ふふっ、貴音枕です」

「!?」

貴音「む! 何奴!?」

「」ビクッ

貴音「……」

「……」

P「ぅ……zzz……」

貴音「……わたくしとしたことが、気のせいでしたか」

8 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/28 23:57:24.16 0OcaSI+K0 8/36

ボク、いま声出してないよね?

思わず隠れちゃったけど……気配で他人がわかる人なんて初めて見た……。

すごいなぁ……どうすればそんな達人みたいなことができるんだろ?

今度教えてもらおうかな……。


じゃなくて!


貴音「日頃から、このように素直に休んでくれればいいのですが……」

貴音「起きているときは、なにを言っても聞き流してばかりで……」

P「ん……zzz……」

貴音「今だけは……ゆっくりお休みください」


貴音……。


貴音「わたくしの胸の中で……」


ぐっ……!

なんだろう、この敗北感は。


ボクが同じことをしたら……。

 ペタペタ

ちくしょう……。

9 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:00:23.16 inbDNLsx0 9/36

「……」

貴音「さて……そろそろ姿を見せたらどうですか?」チラッ

「ひっ!?」

貴音「やはりあなたでしたか、真」

「あ、あはは……おはよう」

貴音「おはようございます。ふふふ……」

「……」

貴音「どうかしましたか?」

「い、いや! なんでも!」

貴音「ふふっ、おかしなこと」

「あはは……」

貴音「……」

「……」

貴音「今見たこと……他言無用ですよ?」ニコッ

「う、うん! 絶対に誰にも言わないよ!」

貴音「よい心がけです」ニコニコ

「どういたしまして……」

貴音「ふふふ……」

「……」ゾクッ


765プロの仲間が、初めて怖いと思いました……。

10 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:02:40.88 inbDNLsx0 10/36

P「ん……くぁ……!」

 ムクッ

「あ、プロデューサー起きましたか?」

P「ん……おお」

P「真と貴音か、おはよう」

「おはようございます!」

貴音「おはようございます、あなた様」

P「あ~……寝ちゃってたか」

「もう少し休んでたほうがいいんじゃないですか? ボクが起こしますよ」

P「いや、朝のうちにやっておくことがあるんでな」

「そうですか……」

P「時間になったら現場に送るから、二人ともそれまで適当にくつろいでいてくれ」

「はい」

貴音「かしこまりました」

11 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:04:56.15 inbDNLsx0 11/36

貴音「おや? あなた様、おぐしが……」

P「ん? 寝ぐせか?」

貴音「はい。こちらが……」

 サッ…サッ…

P「お、おい。いいよ、自分でやるから」

貴音「遠慮なさらず」

P「遠慮っていうか……」

「……」


貴音にこんなことされたら、男の人はたまらないだろうなぁ……。

ボクが同じことをやったって……女の子ぐらいしか喜んでくれないよね。


それにしたって……。

プロデューサー、デレデレしすぎです!

もう……!


P「も、もういいから。ありがとな貴音」

貴音「礼には及びません」

12 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:07:10.96 inbDNLsx0 12/36

貴音も、やっぱりプロデューサーのこと……なのかな?

美人だし、あずささんと同じぐらい……すごいし。

ボクなんて、なにひとつ勝てないよな……。


でも、ボクとひとつしか違わないのに大人だと思ってたけど……。

貴音枕とか……あはは。

ちょっと可愛いかも。


貴音「……」ジー

「!?」

貴音「忘れさせて……あげましょうか?」

「うん、忘れた! いえ、なにも見てません!」

貴音「ふむ……」ジー

「……」ゴクッ

貴音「まあ、それはいずれ……」

「えぇ!?」

P「なんの話だ?」

貴音「なんでもありませんよ。ふふっ」

「あは、は……」

貴音「では、わたくしは向こうにいます」

P「おう」

「はぁ……」

13 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:08:55.89 inbDNLsx0 13/36

P「ん~~~!さて、遅れを取り戻さないと……ん?」

「ん?」

P「なんだか、コーヒー豆をぶちまけたみたいな匂いが……」

「あ! ボク、コーヒー淹れたんです! よかったら」

P「え? 真が?」

「むっ。どういう意味ですか?」

P「いやいや、せっかく真が淹れてくれたんだ。ありがたくいただくよ」

「えっ、あ……はい、どうぞ」

P「いただきま……あ~、これは匂いだけで眠気が吹っ飛ぶな」

P「飲んだら意識も吹っ飛びそうだ……」

「な、なにか変でしたか?」

P「コーヒー豆はな、お湯には溶けないんだよ」

「え? でも、前に律子が……」

P「それはインスタントだな」

「違うものなんですか!? ボク、そんなことも知らないで……」

P「まあ、よほど好きじゃないと、わざわざ豆から落とさないだろうからな」

「……」

14 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:11:10.91 inbDNLsx0 14/36

P「できれば飲んでやりたいんだが……これはさすがに体に悪いな」

「ごめんなさい……」シュン


なにやってんの、ボク……。

こんなの、女らしいとか以前の問題だよね……。


P「せっかく淹れてくれたのに、すまないな」

「いえ、ボクが悪いんですから……」

P「今度一緒にコーヒーを淹れよう。やり方ぐらいは知ってるから」

「え……?」

P「真なら、すぐに美味いコーヒーが淹れられるようになるよ」

「ボクが……?」

P「ああ、真さえよければな」

「は、はい! お願いします!」


失敗しちゃったのは恥ずかしいけど……怪我の功名っていうのかな?

プロデューサーと一緒に……へへっ、嬉しいな///


絶対に美味しいコーヒーを淹れられるようになりますからね!

今度こそ、プロデューサーに飲んでもらうんだから!


プロデューサーに……。

15 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:13:07.60 inbDNLsx0 15/36

よ、よし! 貴音は向こうに行ってるし、今なら二人きりで話せるはず。

とっくに覚悟は決まってるんだ。

あとはプロデューサーに伝えるだけ。


たぶん、ボクの望むような結果にはならないと思うけど……。

自分で決めたことだから!


 ガチャ

小鳥「おはようございます」

P「おはようございます、音無さん」


伝えるだけなんだけどなぁ……。


小鳥「あら、真ちゃんと……貴音ちゃんも。今日はずいぶん早いのね」

「はい、プロデュ……じゃなくて! 朝から収録なんです」

小鳥「みんな、もう売れっ子ねぇ」

「ボクなんて、まだまだ……」

P「そんなことないぞ。最近は男性ファンもだいぶ増えたじゃないか」

「そ、そうですね……へへっ」

小鳥「真ちゃん可愛いもの。当然ですよ」

「かゎ……///」

P「たしかに、こういうところが真の可愛いところですね」

小鳥「ね~」

「もう! からかわないでください!」

小鳥「うふふ♪」

P「はは」

「もう……///」

16 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:15:11.84 inbDNLsx0 16/36

小鳥「あ、私お茶淹れてきますね」

「……」

P「お願いします」

小鳥「真ちゃんと……え~と、貴音ちゃ~ん」

貴音「なんでしょう?」

小鳥「お茶飲む?」

貴音「いただきます」

小鳥「お煎餅があったはずだから、お茶請けに出すわね」

貴音「なんと……!?」グゥ~

貴音「あ、いえ……お茶にはやはりお煎餅ですね」グゥ~

小鳥「あら、うふふ」

P「お~い貴音。アイドルなんだから、こっちまで聞こえるような腹の虫はダメだぞ」

貴音「あなた様、それはいけずです……」

小鳥「急いで用意するわね~」


小鳥さんか……。

意外となんでもできる人なんだよなぁ。

お料理だって上手だし。

ボクなんて、コーヒーひとつで失敗しちゃうぐらいなのに……。


たまに理解できないことを口走るけど……。

あの薄い変な本?のコレクションも、どうかと思うけど……。

美人だし優しいし、素敵な大人の女性だよね。


小鳥さんはプロデューサーのこと、どう思ってるんだろ?

プロデューサーは小鳥さんのこと……?

この二人は全然わからないよ……。

17 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:18:05.82 inbDNLsx0 17/36

小鳥「はい、貴音ちゃん。お茶とお煎餅お待たせ」

貴音「まるでわたくしが急かしたようではないですか」グゥ~

小鳥「うふふ、体は正直よね~」

貴音「はて、なんのことか……いただきます」

小鳥「はい、プロデューサーさんと真ちゃんも」

P「お、ありがとうございます」

「いただきます!」

小鳥「それじゃ私も……」

P「うん?」

小鳥「はい?」

P「俺と音無さんの湯呑が入れ替わってるんですけど?」

小鳥「え? あらら、いっけな~い。ウッカリシテタワー」

P「そうですか、うっかりですか……はい」

小鳥「は~い。こっちがプロデューサーさんのでしたね~」

P「まったく……なにか変なものは入ってないでしょうね?」

小鳥「え~? 私をなんだと思ってるんですか~?」

小鳥「それはちょっとひどいですよ~」

P「どの口が言うんだか……」

小鳥「えへへ」


なんか、無性に腹立つのはなんでだろ……。

……。

ううん、気のせいだよね!


この二人は、やっぱりよくわからないけど……。

こういう関係……ちょっとだけ羨ましいな。

18 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:20:24.28 inbDNLsx0 18/36

プロデューサー、忙しそうだな……。

全然話しかけられないや……。

今日こそは、って……思ってたのに。

ボク、なんでこんなに間が悪いんだろ……。


P「よし、終わり!」

「!」


い、今だ!

で、でも、ここじゃ小鳥さんががいるから……。


「ぷ、プロデューサー!」

P「なんだ、真?」

「ちょっと顔を貸してください!」

P「えっ」

「えっ」

小鳥「……」

「あ、あぁ……」

P「な、なに? 俺シメられちゃうの?」

「ち、ちがっ……!」

P「え?」

「なんでもないです……」

 トボトボ


ケンカ売ってどうするんだよ、ボク……。

まだなにも言えてないのに、こんなんじゃ嫌われちゃうよ……。

19 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:23:23.60 inbDNLsx0 19/36

 ── 律子・あずさin ──


律子「あ、プロデューサー殿。昨日の企画書の件なんですが……」

P「ああ、どうだった?」

律子「スポンサーは好印象だったんですが、あちらのディレクターが……」

P「あの人はなぁ……」


また仕事の話かぁ。

プロデューサー、休んでる暇あるのかな。


P「今日、時間見て挨拶してくるよ」

律子「お願いします。あの企画はどうしても通したいですから」

P「わかってる。任せろ」


律子はすごいよなぁ。

ボクとふたつしか違わないのに、プロデューサーと対等に仕事できるんだもん。

プロデューサーだって、たぶん律子のこと一番信頼してるよね。


もしボクが律子より年上だったら……?

ボクが一番になれた?

ううん、そういうことじゃないって、わかってる……。

20 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:27:30.96 inbDNLsx0 20/36

あずさ「あら、どうしたの真ちゃん?」

「いえ、なんでも……」

あずさ「?」


あずささんは……反則だよなぁ。

大人の女性としてほぼ完璧な人なのに、その上すごく可愛いなんてさ。

貴音とか律子ならあずささんにだって負けないだろうけど、ボクなんか……。


律子「あずささん、ちょっといいですか?」

あずさ「あ、は~い」ドタプーン

「……」


歩いただけで……。

あ、足元が見えないのは危ないよね!

ボクなんて足元の視界バッチリだし、運動の邪魔にもならないし!


それに……小さいほうが可愛い服だって多いもんね!

春香とか雪歩のほうが、そういうの似合うけど……。

そのくせボクよりも……大きいってどういうこと?


で、でも、大きいと肩がこるっていうし。

大変そうだよね、肩こり。なったことないからわからないけど!


律子「ふぅ……」トントン

あずさ「律子さん、肩こりですか? 私も最近ひどくて……」

小鳥「辛いですよね~、肩こり」コキコキ

貴音「なるほど、この肩の違和感が……」

「くっ……!」


心が折れそうだ……。

ここに美希が来たら、ボクはもうダメかもしれない……。

21 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:31:23.68 inbDNLsx0 21/36

あずさ「真ちゃん、真ちゃん!」

「は、はい? なんですか、あずささん?」

あずさ「この雑誌で紹介されてるカフェって、このあいだ真ちゃんと雪歩ちゃんがロケで行ったお店よね?」

「そうです! ここのケーキ、すごく美味しかったんですよ!」

あずさ「いいわねぇ、私も行ってみたいわ~」

「じゃあ、今度みんなで行きますか?」

貴音「参りましょう、ぜひ」ズイッ

「うわっ!?」

あずさ「あらあら~」

貴音「けぇき……なんと甘美なる誘惑……」

「あはは……簡単に背後を取られると、ボク自信なくしそうだよ」

貴音「?」

「プロデューサーと律子と小鳥さんも一緒にどうですか?」

P「う~ん……甘いものは嫌いじゃないけど、わざわざ食べに行くほどでもなぁ」

「でも、ほんとに美味しいんですよ」

律子「私はパス」

「えぇ? なんで?」

律子「……聞かないで」ボソッ

「なに? 聞こえな……」

律子「聞かないで!」バンッ

「は、はい! ごめんなさい……」

22 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:33:27.97 inbDNLsx0 22/36

「小鳥さんは?」

小鳥「私もスイーツは好きだけど……大人には大人の嗜みが、ね」

「大人の?」

小鳥「というわけで、今夜にでもどうですか?」

あずさ「あら、うふふ。ちょうど大人組が揃ってますね」

小鳥「いうなれば……そう! 765プロ合法部!」

P「合法部って……」

律子「そんないかがわしい集団の一員なんて、思われたくないんですけど……」

小鳥「健全ですよ! 合法なんですから!」

律子「はいはい……」

P「まあ、あずささんと音無さんだけじゃ不安だから、つきあいますよ」

P「なあ、律子?」

律子「……」

小鳥「20歳以上は強制参加だから、抵抗しても無駄ですよ?」

律子「……」

あずさ「律子さんも、諦めが良くなりましたね~」

律子「……」

貴音「ふむ……まだお酒は飲めませんが、わたくしも興味がありますね」

小鳥「あら、貴音ちゃんも大人の世界を覗いちゃう?」

貴音「面妖な……」


18歳って、大人なのか子供なのかよくわからない年齢だよね。

20歳にならないと出来ないことのほうが多いし。

23 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:35:36.12 inbDNLsx0 23/36

そういえば、貴音はボクより誕生日が後だから、まだ18歳なんだ。

うん、立場は同じじゃないか。

だったらボクだって!


「ぼ、ボクも!」

小鳥「え?」

「ボクも参加したいな、って……」

P「真はダメだ」

「ど、どうしてですか? 貴音だって……」

P「真はまだ高校生だろ」

「あ……」

あずさ「そうね。もうちょっとだけ待ってから、一緒に行きましょうね?」

「……」


わかるけど……。

貴音は大人で、ボクは子供?


「ボクだって、もう子供じゃ……」

P「そんなことを言ってるようじゃ、まだ子供だ」

「……!」


やっと……やっとプロデューサーと対等の立場になれたと思ったのに……。

高校を卒業したら、大人って認めてくれるんですか?

そこまで待っても、次は20歳じゃないから……?


20歳になったって、どうせ……。

どうせ、ボクのことなんてずっと子供扱いなんでしょ!?

24 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:37:43.59 inbDNLsx0 24/36

「ボクだって合法です!」

律子「は?」

あずさ「え?」

貴音「?」

小鳥「んなっ!?」

P「お、おう……」

「あれ?」

律子「真……それはちょっと」

小鳥「はっ! 閃いた!」

律子「閃くな」

P「忘れろ」

小鳥「ぐぬっ……!」

「あ、ああ……」


うあぁぁぁぁ……! なに言ってんのボク!?

人前でこんな自己主張する人、どこにいるのさ!?


あ、ここにいた……。


「……」プルプル

P「お、おい……真?」

「うわあぁぁぁぁん!!」

 ダッタタタッ…

P「真!?」

25 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:39:21.18 inbDNLsx0 25/36

 ── 児童公園 ブランコ ──


 キィ……キィ……

みんなの前で、あんな……。

最悪だよ……。

もう事務所に戻りたくない……。


「今日はもう休んじゃおうかな……」

P「それは……ゼェ……困るな……ハァ……」

「ふわっ!? プロデューサー!?」

P「おう……スゥゥ……ハァァ……」

「だ、大丈夫ですか?」

P「真のペースを追って走ったからな……死ぬかと思った」

「そこまでして追ってこなければいいじゃないですか……」

P「そういうわけにはいかないだろ」

P「お、ブランコか、懐かしいな。よ……っと」

「……」

26 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:41:25.66 inbDNLsx0 26/36

P「大人でも座れるものなんだな」

 キィ……キィ……

「ボクのことなんか放っておいてくださいよ」

P「放っておけるわけないだろ」

「仕事があるからですか?」

P「は?」

「そうですよね、どうせ……」

P「仕事があってもなくてもだ。俺はプロデューサーだぞ」

「わかってますよ! プロデューサーはみんなのプロデューサーですからね!」

「ボクのせいで、みんなに迷惑がかかるっていうんでしょ!?」

 ギィ…ギィ…

P「みんなに迷惑をかけたいのか?」

「そんなわけないでしょ!」

P「だったら、子供みたいに聞き分けのないことを言うんじゃない」

「子供ですよ……ボクなんて!」

P「……」


なにが大人の女性だよ……!

18歳になったらなんて……勝手に思い込んでただけじゃないか。

バカみたいだ……。

27 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:42:40.86 inbDNLsx0 27/36

「うっ……ひぐっ……」グスッ

「うぁ……うぅ……」ポロポロ

P「……」

「み……見ないで、ください……」ポロポロ

P「見てないよ」

「ひぐっ……ほんと、ですか……?」ポロポロ

P「ほんとに」

「……」チラッ

P「……」

「見てるじゃないですか……」

P「のヮの」

「……怒りますよ?」

P「似てなかったか……」

「似せようとしてたんですか!?」

P「春香には内緒な?」

「できればボクも忘れたいぐらいです……」

P「そこまで言わなくても……」

「……」

P「……」

「バカ……」

P「ん?」

28 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:44:30.06 inbDNLsx0 28/36

「プロデューサーのせいで、泣いてるのがバカバカしくなりました」

P「そっか、俺のせいか」

「仕事の前に、もうちょっと発散しておきたかったんですけどね」

P「できれば、そうさせてやりたいんだけどな」

「もう時間ないですよね?」

P「そうだな。少し急がないと」

「走りますか?」

P「やめてくれ。今度こそ倒れる」

「もう、だらしないですよ! 今度ボクと一緒に走り込みして鍛えましょうね」

P「ああ、今度な。そのあと一緒にコーヒーでも淹れるか?」

「え? あ……はい///」

「へへっ、約束ですからね!」

P「おう、約束だ」

「えへへ……///」


ボクって単純だなぁ……って自分でも思うけど。

でも、いいや。

嬉しいことを嬉しいって思えるほうが幸せだもんね!

29 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:46:28.43 inbDNLsx0 29/36

P「歩きながら……少し話すか」

「はい……あの」

P「なんだ?」

「ボク、どうしてもプロデューサーに話したいことがあって……」

「昨日から、なかなか言い出せなかったんですけど……」

P「……」

「18歳になったら、きっと言おうって決めてたんです!」

P「18歳になったらか」

「はい! ボクは……」

P「その前に俺からいいか?」

「え? ええ!?」


ま、また言えないの!?

プロデューサーと二人っきりなんて、今しかないのに……・


P「俺もな、真が18歳になったら言おうと思ってたことがある」

「へ?」


プロデューサーも? ボクが18歳になったら?

このタイミングでなんて……ええ!? まさか!?

30 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:48:15.36 inbDNLsx0 30/36

ど、ドキドキがやばい……。

顔に出てない……わけないよ! 絶対真っ赤だよ、ボク!

どうしよう……こ、こここ、こ告白されちゃったら……。


P「ほんとはな、昨日の誕生日までに真をトップアイドルにするつもりだったんだ」

「とっ……え?」

P「そうできなかったのは、俺の力不足だ」

「い、いえ、そんなこと……」


あ……ああ、なんだ。結局仕事の話か。


そうですよね! あのプロデューサーですからね!

別に期待してたわけじゃ……ありますよ! まったくもう!

鈍感! 朴念仁!

31 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:50:34.37 inbDNLsx0 31/36

「トップアイドルに育てることが、俺なりのけじめだったんだ」

「けじめ?」

P「真に告白するためのな」

「はあ、告白ですか…………告白ぅ!?」

P「驚きすぎだろ」

「だ、だって……告白って?」

P「言ったぞ。たぶん真が考えてる通りの意味でな」

「そ、そんな急に……///」

「……って、あれ?」

P「どうした?」

「するつもりだったってことは……?」

P「ああ、保留だ」

「ええぇぇぇ!?」

P「少し落ち着け」

「だって!」


少女漫画だったら、今まさにクライマックスですよ?

さあ、いよいよ次回! ってところで長期休載やられた気分ですよ!

いくらなんでも、乙女心をわかってなさすぎです!

32 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:51:49.93 inbDNLsx0 32/36

P「こればっかりはな。最低限のけじめとして決めてたことだ」

「それならボクだって……」

「18歳になったからって、大人になれたわけじゃないですけど……」

P「……」

「でも、それがひとつのけじめだから、絶対に言おうって決めてたんです!」

P「ダメだ」

「どうして!?」

P「その先を言って……アイドルを続けられるか?」

「それは……!」


たぶん無理……。

プロデューサーの気持ちを……はっきりとじゃないけど知っちゃったから。

ボクはそんなに器用に、プライベートとアイドルを分けて振る舞えない。

それは自分でもわかってる。


P「少なくとも、俺は真のプロデューサーを続けられないな」

「え……?」


なんで……そんなこと言うんですか?

イヤですよ、そんなの……。


絶対イヤです!

33 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:53:06.33 inbDNLsx0 33/36

P「真が可愛いくて、俺のほうが我慢できそうにない」

「そんな言い方…………え?」

P「ん?」

「……」

P「……」

「……///」

P「どうした?」

「……ズルいです///」

P「なにが?」

「そういうのにボクが弱いと思って……///」

P「心外だな。正直に話したのに」

「そんなこと言ってもごまかされませんからね///」

P「うん、やっぱり真は可愛いなぁ」

「ぅぁ……///」

P「ん?」

「プロデューサーのイジワル!///」

P「ははは」

34 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:54:59.35 inbDNLsx0 34/36

P「少し急ぎすぎたな」

「え?」

P「あと一年待ってくれるか?」

「あと一年? 次の誕生日ですか?」

P「ああ、それまでに真をトップアイドルにして……」

P「今度こそちゃんと告白するよ」

「……」

P「ダメか?」

「ボクの告白も、今度は聞いてくれますか?」

P「もちろん」

「それ以上は待てないですよ?」

P「そこまで甲斐性無しじゃないよ」

「ボクをほったらかして、他の娘となんて……」

P「ないない」

「え~と、え~と、それから……」

P「まだあるのか?」

「あ、そうだ!」

P「なんだ?」

「ボクのこと、まこりんって呼んでください!」

P「ごめん、それは無理」

「なんでですかー!」




───

──



35 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:57:03.74 inbDNLsx0 35/36

 ── 一年後 8月29日 ──


「プロデューサー!」

P「おう、パーティーもそろそろお開きかな」

「そうですね、もう遅いし」

P「律子と手分けしてみんなを送らないとな……」

「その前に、なにか忘れてません?」

P「?」

「もう! ボク、さっきから待ってたのに!」

P「わかってるよ。忘れてません」

「だったら……」

「この一年で、ちゃんとトップアイドルになったんですからね」

P「うん」

「もう言い訳は聞きませんよ?」

P「しないよ、そんなこと」

「今からボクのことはまこりんで!」

P「はいはい、まこりんまこりん」

「愛がない!」

P「それは誤解だ」

「へへっ、わかってますよ」

37 : ◆PQxO3wwU7c - 2013/08/29 00:58:40.98 inbDNLsx0 36/36

P「よし! せっかくだから、みんなの前で発表するか」

「はい! ……はい!?」

P「コソコソするよりはいいだろ?」

「それはそうですけど……」

P「けど?」

「もう、わかりましたよ!」

P「うん。じゃあみんなを……」

「その前に」

P「ん?」

「一年も待ったんだから、今日はボクのほうが先に言います」



ボクはプロデューサーが大好きです!

これからも、ずっと!




おわり

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