1 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:01:43.966 H4P0kcJ30 1/113

裁判長「これよりヒミツ裁判を始める!」カンッ!

裁判長「お前は巡行中の国王に襲撃をかけ、暗殺しようとした……これはけしからん」

裁判長「よって、お前は死刑!」

死刑囚「ぐっ……!」

死刑囚(なんなんだ、ヒミツ裁判って……)

死刑囚(しかもよりによって、こんな小娘に裁かれることになるとは……)

裁判長「だが……」

死刑囚「?」

裁判長「私に従うなら、生かしてやってもよいぞ」

死刑囚「ハァ?」

元スレ
裁判長「お前は死刑! だが、私に従うなら生かしてやってもよいぞ」死刑囚「ハァ?」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1597471303/

3 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:05:06.218 H4P0kcJ30 2/113

裁判長「さぁ、どうする?」

死刑囚「断る!」

死刑囚「俺はこの腐った国に天誅を加えるべく、事件を起こしたんだ!」

死刑囚「お前みたいな国家のイヌに従えるか!」

裁判長「ほぉう、いうではないか。では処刑人!」

処刑人「はい」ザッ

死刑囚(こいつは……俺を捕まえた奴! 改めて見ると強そうだ……)

裁判長「法に照らし、こやつを“一万回切り刻みの刑”に処せ!」

処刑人「かしこまりました」

死刑囚「は!?」

5 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:08:15.984 H4P0kcJ30 3/113

処刑人「では切り刻みます」

死刑囚「ちょ、ちょっと待ってくれ! 一万回切り刻みなんて刑聞いたことないぞ!」

裁判長「当たり前だ。今私が作ったんだからな」

死刑囚「えええええ!?」

処刑人「お覚悟を」ヒュルルルッ

剣を振り回す処刑人。

死刑囚「ちょっ……」

裁判長「さぁ、どうする?」

死刑囚「従うよ……従います!」

裁判長「…………」ニッコリ

死刑囚(なんつういい笑顔しやがる。つられて笑いそうになっちまった)

6 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:11:16.490 H4P0kcJ30 4/113

ある小屋に連れて行かれる。

処刑人「今日からあなたはここで暮らしていただきます」

死刑囚「ここが俺の牢獄ってわけか……」



中に入ると――

死刑囚「!」

女盗賊「あっ、お仲間が増えるっすね!」

詐欺師「へっへっへ……よろしくな」

死刑囚(なんだこいつら……)

8 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:14:29.262 H4P0kcJ30 5/113

死刑囚「お前たちは?」

女盗賊「あたしは盗賊っす!」

詐欺師「俺はケチな詐欺師さ」

死刑囚(くっ、国のために立ち上がった俺が、こんなクズどもと暮らすことになるとは……)

詐欺師「お前さんは何やらかしたんだよ?」

死刑囚「国王暗殺未遂だ」

詐欺師「暗殺ゥ!? おいおい、やるもんだねえ」

女盗賊「すごいっす! スケールが違うっす!」

死刑囚「ふん、まぁな……」

9 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:17:29.059 H4P0kcJ30 6/113

死刑囚「この国の王は、娘を事故で亡くしてから、すっかり変わってしまった」

死刑囚「政治にやる気をなくし、腐った役人を野放しにし、国民の前にもろくに出てこなくなった」

死刑囚「だから珍しく巡行してるとこを狙って、天誅を加えようとしたんだが……」



……

ドカッ! バキッ! ドゴッ!

『国王ォ、覚悟ォォォォォ!!!』タタタタタッ

国王『あわわわ……ひえええええっ!』

大臣『おいっ! 兵士ども、ワシを守れぇ!』

10 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:19:20.403 H4P0kcJ30 7/113

護衛『そこまでだ……ドブネズミ』

ザシュッ!

『ぐあっ……!』

……



死刑囚「惜しくも護衛に斬られて失敗、命からがら逃げてるところで……」

詐欺師「捕まって、ここに連れてこられたってわけか」

女盗賊「惜しかったっすね~」

12 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:22:17.899 H4P0kcJ30 8/113

死刑囚「だが、俺は諦めてはいない!」

死刑囚「こうして捕まりはしたが、力をつけたら、いずれまた国王を狙ってやる!」

死刑囚「俺の国を救いたいという熱き心は、未だメラメラと……」

詐欺師「んじゃ、おやすみ」ゴロン

死刑囚「聞けや!」

女盗賊「襲わないで下さいね!」

死刑囚「誰が襲うか!」

死刑囚(くそっ、調子が狂う……)

…………

……

14 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:26:12.111 H4P0kcJ30 9/113

次の日――

裁判長「さあ、お前たち起きろー! 朝だぞー!」

詐欺師「おはようさん」

女盗賊「さわやかな朝っすー。鳥さんも鳴いてるっす」

死刑囚「ふぁぁ……」

裁判長「コラ、あくびなどするな!」

死刑囚「俺は朝弱いんだよ……」

裁判長「朝食を済ませたら、さっそく労働に励んでもらうからな」

死刑囚(労働……何やらされるんだ?)

15 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:29:38.444 H4P0kcJ30 10/113

― 村の畑 ―

裁判長「他の二人はもう知ってるが、お前たちはこれからこの村でしばらく暮らしていく」

裁判長「だから、村に恩返しせねばならん。今日はこの畑を耕してもらう」

詐欺師「へーい」

女盗賊「はーい!」

死刑囚「なんで俺がこんなことを……」

裁判長「不服か?」

死刑囚「不服だ! 俺は国難に立ち向かった勇士なんだぞ!」

裁判長「一万回……」ボソッ

死刑囚「畑仕事、頑張るぞ!」

16 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:31:49.073 H4P0kcJ30 11/113

畑を耕す三人。

女盗賊「よいしょ、よいしょ」ザクッザクッ

死刑囚「ふんっ! ふんっ!」ザクッザクッ

詐欺師「はぁ、はぁ、はぁ……」

死刑囚「! おい、大丈夫か」

詐欺師「長年口八丁で生きてきたから、体力がなくてなぁ……」

死刑囚「ちっ、仕方ない。お前の分もやってやるよ」

詐欺師「悪いなぁ……」

18 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:34:33.467 H4P0kcJ30 12/113

裁判長「ほぉう、なんだかんだいってちゃんとやってるな、感心感心」

死刑囚「まぁな」

裁判長「しかしなぜ、詐欺師の分までやってるんだ? あまりはりきるとバテてしまうぞ」

死刑囚「え、だってあいつ体調が悪いって……」

裁判長「あやつなら、向こうで元気そうにお茶を飲んでいたが」



死刑囚「てめえ、ふざけんなァッ!!!」

詐欺師「これが俺流の自己紹介ってやつさ。今後ともよろしくな」

死刑囚「ぐぬぬ……」

20 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:37:30.124 H4P0kcJ30 13/113

村長「ほっほっほ、おかげでだいぶ畑の状態がよくなったわい」

村人「どうもありがとう」

村娘「ご飯を用意しましたので、召し上がって下さい」

ワイワイ…

女盗賊「働いた後のご飯はおいしいっすねー!」パクパク

死刑囚「ふん……(おかわり欲しい)」モグモグ

詐欺師「へっへっへ、まったくだねえ」ガツガツ

死刑囚「お前はろくに働いてないだろうが!」

21 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:40:24.652 H4P0kcJ30 14/113

裁判長「昼食は済んだか?」

死刑囚「ああ……午後も畑仕事すればいいのか?」

裁判長「いや、午後は処刑人と剣の訓練をしてもらう」

処刑人「よろしくお願いします」

死刑囚「え……なんで!?」

裁判長「理由はまだ明かせん。だが、お前は私に従うと誓ったはずだな?」

死刑囚「くっ……」

死刑囚「いいだろう! この処刑人を、逆に処刑するぐらいのつもりでやってやる!」

処刑人「ええ、そのぐらいの意気込みでなければ困ります」

死刑囚「…………?」

23 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:43:31.591 H4P0kcJ30 15/113

木の剣で訓練する死刑囚と処刑人。

ガンッ!

死刑囚「ぐっ……!」

処刑人「さあ、どうしました? こんなものですか?」

死刑囚「ふざけんな! 俺は国を変える男……この程度でへばってたまるか!」

ガンッ! ガツンッ!

死刑囚(こいつ……強い!)

死刑囚(俺だって腕に覚えはあるのに……!)

死刑囚(処刑人って、こんな強い必要あるのかよ……!?)

24 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:46:07.460 H4P0kcJ30 16/113

死刑囚「はぁ、はぁ、はぁ……」

処刑人「荒削りですね。基礎もまるで出来ていない」

処刑人「しかし、国王暗殺一歩手前までいっただけあって、やはりスジはいい」

処刑人「特に突進力に関しては、私すら及ばない天性のものを持っている」

処刑人「あなたを選んだかいがあったというものです」

死刑囚「選んだってのはどういうことだ!」

処刑人「それはまだ話せません。さあ、続きをしましょう」

死刑囚「……望むところだ!」

26 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:49:31.911 H4P0kcJ30 17/113

― 小屋 ―

死刑囚(やっと一日が終わった……)ボロッ…

女盗賊「お疲れっすー」

詐欺師「へへへ、だいぶしごかれたみたいだな」

死刑囚「……お前たちは何をやらされたんだ?」

女盗賊「あたしは色んな鍵をずっと開けさせられてたっす! 金庫とか宝箱とか」

女盗賊「もちろん、中身はないっすけどねー」

詐欺師「俺は村人たちを作り話で楽しませろって、ずっと話をさせられてたぜ」

詐欺師「おかげでノドがいてえや」

死刑囚「…………」

28 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:51:04.484 H4P0kcJ30 18/113

死刑囚「あの裁判長と処刑人は、俺らに何をさせようってんだ?」

詐欺師「さあて、な」

女盗賊「面白いことだったらいいんすけどねー」

詐欺師「いずれにせよ、ただの裁判長と処刑人じゃないことだけは確かだろうな」

死刑囚「…………」



…………

……

30 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:55:16.802 H4P0kcJ30 19/113

次の日――

裁判長「おはよう諸君! さぁ、今日ははりきって水汲みだ!」

裁判長「えいえい、おーっ!」

女盗賊「おーっす!」

詐欺師「へーい」

死刑囚「ふぁぁ……」

裁判長「コラ、あくびするな! 皆の士気に関わる!」

死刑囚「だから朝は弱いんだっての……」ムニャ…

33 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 15:57:37.356 H4P0kcJ30 20/113

女盗賊「わっ!」ヨロッ…

死刑囚「おっと、気をつけろよ」ガシッ

女盗賊「あ、ありがと……っす」

詐欺師「わぁぁぁっ! 俺もコケそうだぁぁぁっ!」ヨロヨロ

死刑囚「二度も騙されねーぞ!」

詐欺師「わぁぁぁぁぁっ!」ヨロヨロ

死刑囚「…………」

死刑囚「ほれ、手を貸してやるよ」

詐欺師「俺のも持ってくれるのか!? ありがとよっ!」ヒョイッ

死刑囚「お、おいっ! くそぉ~……!」

35 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:00:17.221 H4P0kcJ30 21/113

午後――

処刑人「さぁ、かかってきて下さい」

死刑囚「行くぞ……だああああっ!」

ガッ! バキッ! ガツンッ!

ぶつかり合う木剣。

処刑人「はっ!」バシッ!

死刑囚「あぐっ……!」

死刑囚「ま、まだまだ……!」

処刑人「よい気迫です」

36 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:03:19.917 H4P0kcJ30 22/113

他の二人も――

女盗賊「う~ん……」グリグリ

女盗賊「なかなか開かないっすねえ……」グリグリ

女盗賊「ここをこう……」カチャッ

女盗賊「開いたっすー! この開いた瞬間の快感がたまらんすねえ……」ハァ…



詐欺師「で、その酔っ払いが酒を吐き出したら、そっから酒の魔人が飛び出してきて……」

村人「アッハッハ!」

若者「こりゃ面白いや。よく思いつくな、こんな話」

37 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:05:10.945 H4P0kcJ30 23/113

― 小屋 ―

死刑囚「ううう……体が痛い……」

女盗賊「あたしも、鍵開け飽きたっす……」

詐欺師「俺もノドがいてぇや……」





こうして死刑囚たちは、村の手伝いと謎の特訓を繰り返し、日々を過ごした……。

39 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:09:18.358 H4P0kcJ30 24/113

……

村長「今日もよく働いてくれたのう」

村人「たまにゃ酒でもどうだい?」

死刑囚「いや……俺は一応死刑囚なんで……」

裁判長「別にかまわんぞ」

死刑囚「いいのかよ! 緩すぎねえか、オイ!」

女盗賊「やったーっ! 飲むっすー!」

詐欺師「へへへ、疲れたノドには酒が一番ってね」

40 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:12:27.061 H4P0kcJ30 25/113

村人たちと杯を交わす。

死刑囚「いやぁ~、この村はいい村だなぁ~。酒はうめえし、メシもうめえし……」

女盗賊「ホントっすね!」

詐欺師「あんた、朝弱いだけじゃなく、酒にも弱いんだな」

詐欺師「よーっし、ここは酒にまつわるヨタ話を披露すっかぁ!」

ドンチャンドンチャン…

裁判長「なぁ……私もお酒飲みたい」

処刑人「ダメです。ジュースで我慢して下さい」

裁判長「ううう……」

42 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:16:46.479 H4P0kcJ30 26/113

……

― 小屋 ―

女盗賊「今日も疲れたっすー」

詐欺師「俺は今日、涙あり笑いありの勇者の大冒険を一日中くっちゃべってたぜ!」

死刑囚「…………」

詐欺師「ん、どしたい?」

死刑囚「そういや聞いてなかったが……」

死刑囚「お前たちは、どういう盗みや詐欺を働いてたんだ? どうやって捕まったんだ?」

詐欺師「お、あまり他人に興味なさそうだったお前さんも、そういうこと聞くようになったか」

死刑囚「うるせえな」

女盗賊「んじゃ、あたしから話すっす!」

43 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:19:51.020 H4P0kcJ30 27/113

女盗賊「死刑囚さんもいってたけど、この国はお姫様が事故死してからおかしくなったっす」

死刑囚「ああ、巡行中に親衛隊とともに崖から転落……」

詐欺師「まだまだ若かったが、将来を嘱望されてた姫さんだったらしいな」

女盗賊「それからというもの、王様は税を上げたり、各地にひどい役人を送り込んだり……」

女盗賊「一気に暴君になったっす」

死刑囚「そうだ。だからこそ、俺は国王暗殺を決断したんだ」

死刑囚「娘が死んだのはショックだろうが、国民を巻き添えにしていいはずがねえ」

女盗賊「あたしが暮らしてた地方の人も、みんな参っちゃって……」

女盗賊「だからあたしは、みんなが取られ過ぎてる税金を少しでも取り返すため、盗賊になったっす」

死刑囚「いわゆる義賊ってやつか」

44 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:22:26.368 H4P0kcJ30 28/113

女盗賊「だけど、ある時ドジっちゃって……役場の兵士に追い詰められたんす」

女盗賊「そしたら……あの処刑人さんに……」

死刑囚「捕まって、あのふざけた≪ヒミツ裁判≫にかけられたってわけか」

女盗賊「そうっす! で、許して欲しければ私に従えって……」

死刑囚「ふうん。お前はお前なりに、ちゃんと考えて盗賊やってたんだな」

女盗賊「こりゃ照れるっす」

死刑囚「――詐欺師は?」

詐欺師「俺? 俺はただのツボを魔法のツボだとかいって売ってたら、捕まっちゃって……」

死刑囚「ただのクズじゃねえか!」

女盗賊「重いエピソードを期待しちゃったっす!」

詐欺師「重いエピソード? あるよ、そのツボがものすごく重くてよ……」

死刑囚「もういいよ!」

45 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:25:49.081 H4P0kcJ30 29/113

詐欺師「ただ、俺はともかく、お前さんたち二人は……」

詐欺師「考えようによっちゃ、“裁判長と処刑人に助けられた”とも取れるな」

死刑囚「助けられた? なんで?」

詐欺師「だって普通に捕まってたら、盗賊の嬢ちゃんは監獄行き、お前さんは即座に死刑だろ」

死刑囚「…………!」

女盗賊「たしかに……」

死刑囚(あいつらが……俺を助けた? 王を殺そうとしたこの俺を?)

死刑囚(いったい何をさせようってんだ……!)



…………

……

47 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:29:39.023 H4P0kcJ30 30/113

ある日――

三人が集められる。

裁判長「今日はお前たちに、一仕事してもらいたい」

死刑囚「仕事……?」

裁判長「この一帯の領主は、女癖が悪いことで有名でな」

裁判長「元々評判が悪い男だったのだが、世が乱れてからは特にひどくなった」

裁判長「そしてついに先日、近隣の町から若い娘をムリヤリ連行するという暴挙に出たそうだ」

死刑囚「!」

女盗賊「ええっ!?」

詐欺師「そりゃひでえ。山賊みたいなもんじゃねえか」

48 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:32:26.854 H4P0kcJ30 31/113

裁判長「今の荒れた時世、この暴挙を止められる者はいない」

裁判長「ついてはお前たち三人で、この娘たちを救出し……」

裁判長「領主にギャフンといわせてもらいたい!」

死刑囚(ギャフンて)

裁判長「やってもらえるか?」

死刑囚「……ようするに、これは俺らに対する“テスト”ってわけか」

裁判長「そう捉えてもらっても構わぬ」

死刑囚「いいだろう、やってやる。俺は元々そういうクソ野郎が大嫌いだしな」

女盗賊「あたしもやるっす!」

詐欺師「ま、しゃーねーな。囚人の身だしさ」

裁判長「うむ、期待してるぞ」

49 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:35:29.790 H4P0kcJ30 32/113

さっそく三人は領主の屋敷に向かう。

― 屋敷周辺 ―

死刑囚「ここか……」

女盗賊「おっきいっすね~」

詐欺師「こういうバカでかい屋敷に住んでる連中ってのは、騙しがいあるよな」

死刑囚「よし、行くぞ。さらわれた娘たちをとっとと助けてやろう」

女盗賊「おうっす!」

詐欺師「助けたお礼にイッパツぐらいさせてもらえるかもしれねえしな」ムフッ

死刑囚女盗賊「…………」ギロッ

詐欺師「じょ、冗談だよ、冗談!」

51 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:38:41.593 H4P0kcJ30 33/113

門番「なんだお前ら?」

詐欺師「へへへ……こちらのご主人様に、ぜひとも極上のいい女を献上しようと」

門番「いい女ァ?」

女盗賊「どうも」ウフッ

門番「これが? とんだイモ娘じゃないか」

女盗賊「む……!」

詐欺師「いや、これがなかなかどうして、“テク”が凄いんでございますよ」

詐欺師「ご覧下さい、この指のしなやかさを! あっという間に“極楽イキ”間違いなし!」

女盗賊「うふ~ん」ワキワキ

門番「おおっ!」ゴクッ

門番「なるほど……この女なら領主様を満足させられるかもな。よし、通れ!」

52 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:41:19.318 H4P0kcJ30 34/113

まんまと屋敷に入った三人。

タタタッ…

死刑囚「女が捕われてるとすると、どのへんだ?」

女盗賊「こっちっす!」

死刑囚「なんで分かる?」

女盗賊「盗賊としての……カンっす!」

死刑囚「カンかよ」

詐欺師「ま、人間最後に頼れるのはカンだからな」

タタタタタッ…

53 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:44:23.230 H4P0kcJ30 35/113

女盗賊「ここっぽいっすね」

死刑囚(カンってバカにならねえな)

詐欺師「だけど厳重な鍵がかかってるな。開けられるのかい?」

女盗賊「昔のあたしならいざ知らず、今のあたしなら……針金でちょちょいっす!」カチャカチャ

ガチャッ…

あっけなくドアが開く。

死刑囚「やるじゃねえか」

女盗賊「えへへっ、どうもっす」

54 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:47:40.140 H4P0kcJ30 36/113

捕われた娘たちを逃がす。

「ありがとう!」 「このご恩は忘れません!」 「みんな、逃げよ!」

タタタッ… タタタッ…

女盗賊「いやぁ~、気分爽快っすね。頑固な便秘な片付いた気分」

死刑囚「どういう喩えだ」

詐欺師「命の恩人は俺だからね、俺! 忘れちゃダメだよ~」

死刑囚「ったく、こいつは……」



ところが――

領主「な、なんてことしてくれた……貴様ら!」

領主「せっかく集めた女どもを逃がしおって……お前たち、奴らを捕えろ!」

ワァァァァ…

詐欺師「あーあ、やっぱこうなるのかい」

死刑囚「ふん……ここは俺に任せろ。処刑人との特訓の成果、見せてやる!」チャキッ

55 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:49:27.456 H4P0kcJ30 37/113

死刑囚「はっ!」

ズバッ!

「ぐぎゃっ!」

死刑囚「せやっ!」

ザンッ!

「うああっ……!」

番兵を次々と戦闘不能にしていく。



女盗賊「か……かっこいいっす……!」

詐欺師(こんなに強かったのか……もう騙すのは程々にしとこっと)

57 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:53:07.659 H4P0kcJ30 38/113

死刑囚「さてと……この色ボケ領主」チャキッ

領主「ひっ……!」

死刑囚「お前みたいなクソ野郎はいっそ死刑にしてやりたいが……」

死刑囚「あいにく俺も死刑囚なんでな。命だけは助けてやる」

領主「へ……?」

死刑囚「だけど、とりあえず、こいつは全裸縛り上げの刑にでもしとくか」

詐欺師「そりゃおもしれえや!」

女盗賊「さんせーっす!」

領主「いやぁぁぁぁぁぁぁ……!」

死刑囚「あ、そこはギャフンで頼む」

領主「ギャフン!」

58 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:56:35.557 H4P0kcJ30 39/113

本当に全裸で縛られた領主。

領主「んーっ! んーっ!」

死刑囚「じゃあな」

女盗賊「反省するっすよ!」

詐欺師「次また悪さしたら……手足切り取って、ミノムシみたいにぶら下げて生きながら牛に食わす」

詐欺師「この国伝統の≪ミノタウロスの刑≫にしてやるぜ」

領主「んううう……」ジョボボボ…

女盗賊「ホントにあるんすか、そんな刑?」ヒソヒソ

詐欺師「今作った」ヒソヒソ

死刑囚(一瞬信じちゃったよ……)

…………

……

60 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 16:59:39.426 H4P0kcJ30 40/113

……

裁判長「よくやってくれた。罪なき女たちを助けられたこと、嬉しく思う」

女盗賊「楽勝っす!」

詐欺師「ま、俺がだいたい全部やったけどな」

裁判長「本当か!?」

処刑人「騙されないで下さい」

死刑囚「……で? これで俺らはテスト合格ってわけだ」

死刑囚「そろそろ、あんたの正体と目的を話してもらいたいもんだな」

裁判長「うむ、分かった……話そう」

裁判長「お前たちには、この国を救う手伝いをして欲しい!」

61 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:03:37.022 H4P0kcJ30 41/113

女盗賊「国……!」

詐欺師「こりゃまた……一気にスケールでかい話になったねえ」

裁判長「死刑囚よ」

死刑囚「ん?」

裁判長「お前は国王を暗殺し損ねて、今ここにいるが……その時、なにか違和感はなかったか」

死刑囚「違和感……」

死刑囚「そうだな……。あの国王、情けなく悲鳴上げて……仮にも一国の王かと呆れたな」

裁判長「その通り。あれは王ではない」

死刑囚「は?」

裁判長「お前が殺そうとした王……あれは偽者だ」

死刑囚「な、なんだと!?」

62 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:06:33.613 H4P0kcJ30 42/113

死刑囚「なんで分かるんだよ!?」

裁判長「我々もあの時、王の巡行を見ていたからだ。あれは間違いなく偽者だ」

死刑囚「なるほど……だからしくじって無様に逃げてる俺を捕まえられたわけだ」

死刑囚「って、だからなんで偽者って分かるんだよ! 肉親でもないのに――」

裁判長「私は国王の肉親だ」

死刑囚「……は?」

裁判長「私は王の娘――つまり、姫だ」

死刑囚「な……!」

女盗賊「えええええ!?」

詐欺師「こりゃまいったね」

65 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:09:29.182 H4P0kcJ30 43/113

死刑囚「姫は、たしか事故で死んだはずじゃ……!」

女盗賊「そうっす! 大ニュースになったっす! 崖から転落したーって!」

裁判長「そう、私は死んだことになっている」

裁判長「ただし……あれは事故などではない」

裁判長「私は……明確に命を狙われたんだ」



…………

……

66 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:12:37.490 H4P0kcJ30 44/113

およそ一年前、姫は見聞を広めるため、親衛隊と地方を巡っていた。

「隊長、次の町へはいつごろ着く?」

親衛隊長「あと一時間といったところでしょうか」

「ふむ、そうか」

「このあたりは崖道だ。皆の者、くれぐれも通行には気を付けるように」

親衛隊長「かしこまりました、姫様」

ガタゴトガタゴト…

その時だった。

ドドドドド…

67 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:15:20.381 H4P0kcJ30 45/113

ザンッ! ザシュッ!

親衛隊員A「ぐあっ……!」

親衛隊員B「ぐわあっ!」

集団に奇襲をかけられ、次々と親衛隊が倒される。

「みんな……! なんだこいつらは!」

親衛隊長「姫、お下がりください!」

護衛「お美しくなられましたね、姫。まるで蝶々だ」

「お前は……! 大臣の側近の……!」

護衛「クックック……死んでもらいますよ、姫」

68 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:17:31.305 H4P0kcJ30 46/113

キィンッ! ガキンッ!

護衛「流石に親衛隊を任されるだけのことはある……。だが、この足場でいつまで姫を守れるかな!?」

親衛隊長「くっ……!」

護衛「二人まとめて、地獄に落ちろッ!」

ドゴォッ!

蹴り飛ばされる。

親衛隊長「しまっ……!」

「きゃあっ!」

ヒュゥゥゥゥゥ…

ザバン…

70 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:21:25.629 H4P0kcJ30 47/113

……

……

裁判長「だが、私と隊長は奇跡的に助かった……」

裁判長「そして……今の今までこの村のご厚意で生活していたんだ……」

処刑人「この村は、悪政の影響をさほど受けていないのも幸いしました」

死刑囚「隊長? ……そうか、あんたは!」

処刑人「ええ、私がその親衛隊長です」

死刑囚「どうりで強いわけだ……」

女盗賊「悪い奴らっすねえ。あたしがいうのもなんだけど」

詐欺師「姫さんを殺して、王様の偽者なんか用意して、大臣は何を狙ってんだ?」

72 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:24:40.678 H4P0kcJ30 48/113

裁判長「大臣はおそらく、護衛に私を殺させた直後、父上……つまり本物の国王を幽閉したはずだ」

女盗賊「幽閉……って閉じ込めることっすよね」

詐欺師「なんで殺さねんだ? わざわざ偽者だって用意してるのに」

裁判長「大臣は偽者の王を用意しつつ、この一年で国の政治を大いに乱れさせた」

裁判長「狙いは……一ヶ月後の式典のため!」

死刑囚「式典……?」

詐欺師「たしか一ヶ月後は、この王国が建国された日……≪王国記念日≫だっけか」

裁判長「その通り。そこで大臣は、父上に正式に王位を明け渡させるつもりなのだ」

裁判長「“今の心身では王は務まらない”という名目で」

裁判長「この儀式は、とても偽者では務まらん。だから、大臣はまだ父上を生かしているはず」

死刑囚「今の国の状況じゃ、“大臣による乗っ取りだ!”なんて騒ぐ奴も少ないだろうな」

73 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:27:58.429 H4P0kcJ30 49/113

裁判長「私は密かに義勇兵を募り……いくらかの人数を集めることができた」

死刑囚「ちゃんとやることはやってたのか」

裁判長「だが、今の戦力では、大臣が個人で動かせる兵力にも遠く及ばないのが実情だ」

裁判長「それに、私や隊長にできるような正攻法では、あの大臣に通じるとは思えない」

処刑人「そこで、姫はある格言を思い出します」

処刑人「“マンドレイクをもってマンドレイクを制す”」

詐欺師「マンドレイクって……毒かい」

女盗賊「毒には毒をってやつっすね! ……その毒って?」

裁判長「お前たちだ」

女盗賊「あたしたちっすか!? あたしたち毒っすか!? ポイズンっすか!?」

死刑囚「詐欺師、盗賊、暗殺犯……立派な毒だろ」

死刑囚「で、俺たちみたいな罪人を集めて、訓練したってわけか」

74 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:30:47.814 H4P0kcJ30 50/113

死刑囚「俺らがやるべきことは?」

裁判長「大臣が王位についたら、もはや私たちに打つ手はない」

裁判長「だからこの一ヶ月以内に、私たちは挙兵し、城に攻め込む」

裁判長「当然、大臣は兵を出すだろう。その時、城は手薄になる。そこへ……お前たちに忍び込んでもらう」

裁判長「父上を救出し、大臣の企みを打ち破ってもらいたい!」

三人「…………」

裁判長「どうだ、やってもらえるだろうか?」

75 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:33:42.172 H4P0kcJ30 51/113

死刑囚「答える前にひとつ聞きたい」

裁判長「?」

死刑囚「どうしてわざわざ裁判長なんてもんに扮したんだ?」

女盗賊「あ、あたしも聞きたかったっす!」

裁判長「もちろん、ちゃんと理由はある」

裁判長「一つは、私の正体を明かすのはリスクがあったから」

裁判長「信頼できると判断するまで、正体を名乗るわけにはいかなかった」

裁判長「もう一つは、罪人と上下関係を作るには、“裁く者と裁かれる者”の関係が一番手っ取り早いと思ったからだ」

死刑囚「なるほどな」

裁判長「だが、一番の理由は……」

三人「理由は?」ゴクッ

76 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:36:46.332 H4P0kcJ30 52/113

裁判長「一度、裁判長をやってみたかったから!」

死刑囚「…………」

女盗賊「…………」

詐欺師「…………」

死刑囚「なぁ、こいつ、一発殴っていいか?」

処刑人「一発ぐらいでしたらどうぞ」

裁判長「ちょっ!?」

死刑囚「じゃあ……一発な」ハァ~…

女盗賊「わっ、息かけて……ガチじゃないっすか!」

裁判長「ひいいい……」

78 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:39:43.114 H4P0kcJ30 53/113

コツンッ

裁判長「……え」

死刑囚「今ので、今までのことは全部チャラだ」

死刑囚「俺はあんたに従う。元々国を変えたくて、騒動を起こしたんだしな」

裁判長「死刑囚……」

女盗賊「あたしもやるっす!」

詐欺師「俺はパス! ……なんて言える雰囲気じゃねえわな」

死刑囚「決まりだな」

死刑囚「俺たち罪人三名……力を貸すぜ!」

裁判長「……ありがとう」

死刑囚「ただし俺は、この件が終わるまでは、あんたを裁判長と呼ばせてもらう」

裁判長「うむ、かまわんぞ、死刑囚!」

79 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:43:27.186 H4P0kcJ30 54/113

……

― 城 ―

大臣「おい……あれに“餌”はやったか?」

護衛「ええ、先ほど」

大臣「まだあれを死なすわけにはいかんからなぁ。式典までは生きてもらわんと」

護衛「閣下がめでたく王になったあかつきには?」

大臣「ワシらが用意した偽者は当然処分するとして……そうよのう」

大臣「殺してしまうもよし、情けをかけ“前王家最後の王”として、飼ってやるのもよいか」

護衛「クックック……」

大臣「ハッハッハ……」

80 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:45:23.701 H4P0kcJ30 55/113

大臣「なにか報告はあるか?」

護衛「特にこれといってありません。順調に王への不満は高まっています、が……」

大臣「が?」

護衛「地方のバカ領主が、近隣の若い娘を集めてハーレムを企んだそうなのですが」

護衛「賊に押し入られて、奪還されたとのことです。だらしのない話ですな」

大臣「…………」

大臣「……気に食わんな」

護衛「は?」

81 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:48:05.648 H4P0kcJ30 56/113

大臣「ワシの手でこの国はずいぶん堕落させたというに」

大臣「未だにそうやって正義感を振りかざす者がいるのが気に食わん」

大臣「もしかすると、ワシの即位の邪魔になることもあり得る……」

護衛「考えすぎでは……」

大臣「いずれにせよ、残り一ヶ月は万全を期さねばならん」

大臣「念のため、一隊を率いて調査してくるのだ」

護衛「かしこまりました」

82 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:51:21.094 H4P0kcJ30 57/113

……

正体を明かした姫たちと、死刑囚らは――

― 村 ―

死刑囚「でぇやぁぁぁっ!」

バシィッ!

親衛隊長「ぐっ……!」

死刑囚「やった、初めて一本取れた!」

親衛隊長「お見事です。私の教えた剣術と、あなたの突進力が上手く融合されてきたようですね」

死刑囚「ホントか!」

親衛隊長「ええ、これならばきっと――」

村人「大変だーっ!」

83 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:53:31.956 H4P0kcJ30 58/113

親衛隊長「どうしました?」

村人「この村に……軍隊が向かってきてるんだ。今までこんなこと、一度もなかったのに……」

親衛隊長「なんですって?」

死刑囚「ど、どうするよ!?」

親衛隊長「とにかく、すぐ姫様に知らせましょう」

…………

……

84 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:55:40.634 H4P0kcJ30 59/113

「くっ……まさか、私の生存や計画がバレてしまったのか!?」

親衛隊長「いえ、もしそうなら、もっと大々的に部隊を繰り出すはず」

親衛隊長「≪王国記念日≫も近いので、念のための調査といったところでしょう」

親衛隊長「しかし、上手く切り抜けられねば全てが終わります」

死刑囚「いっそのこと、返り討ちにしたらどうだ?」

親衛隊長「残念ながら、我々では今向かってくる部隊にすら勝てないでしょう」

親衛隊長「とにかく今はやり過ごすしかありません」

「分かった……」

85 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 17:58:13.773 H4P0kcJ30 60/113

村長「姫様たちは隠れていて下され」

村人「あいつらは上手く俺らがごまかすからさ!」

「かたじけない……!」

親衛隊長「大臣の兵を率いている護衛は、腕は立ちますが残忍な男です。くれぐれもお気をつけて」

女盗賊「あたしらも隠れるしかないっすね」

死刑囚「だけど、村人たちに“上手くごまかす”なんて出来んのか?」

女盗賊「そこは信じるしかないっすよ!」

死刑囚「まあ、そうだけどよ」

詐欺師「…………」

…………

……

86 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:02:03.136 H4P0kcJ30 61/113

兵を率いて、護衛が到着する。

護衛「お前が……この村の長か」

村長「はい、そうでございますじゃ。兵士の方々がこんなひなびた村になんのご用で……」

護衛「王の御命令で、この地域を調査して回っている」

護衛「聞けば、この村は最近にわかに活気づいてるらしいな? 収穫量も増えてると聞く」

村長「いえ、そんなことは……のう?」

村人「ええ、いつもと変わりませんよ」

護衛「まぁいい。何か……隠してることはないか?」ギロッ

村長「! か、隠すなど……そんな……」

護衛(カマをかけてみたが、この反応……)

87 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:06:12.605 H4P0kcJ30 62/113

護衛「この村にはやましいことは何もない、と?」

村長「は、はい……」

バキィッ!

村長「ぶっ!?」

殴り飛ばされる村長。

ザワッ…

護衛「吐けよタヌキ……なに隠してんだ? 吐かないんなら村人を順々に殺していってもいいんだぞ」ガシッ

村長「で、ですから、なにも……!」

護衛「分かった。ならばまず、お前から殺してやる。もう十分長生きしたろ」チャキッ

村長「ううっ……!」

「そ、村長!」 「やめてくれぇっ!」 「いやぁっ!」

88 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:08:30.819 H4P0kcJ30 63/113

「そうだ、殺せえぇぇぇぇぇっ!!!」





護衛「な、なんだ?」

村長「え……?」

ザワザワ… ドヨドヨ…

90 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:11:37.680 H4P0kcJ30 64/113

詐欺師「兵士さん、こいつらやっちまって下さぁぁぁぁぁい!!!」

護衛「なんだお前は……?」

詐欺師「これは失礼。あっしはこの村に行商に来た、ケチな商人なんですけどね」

詐欺師「こいつらに捕まって、ずっと強制労働させられてたんですよ。見て下さい、このマメ!」サッ

護衛「…………」

詐欺師「ようするに、こいつら無実な人間を捕まえて、勝手に裁いてたんですよ!」

詐欺師「こんなこと許されていいと思いますか!? ……いや、よくないッ!」

詐欺師「あっしはあんたらみたいな国の使いが来るのを待ってたんですよ!」

詐欺師「こんな村、滅ぼしちゃってくださぁぁぁぁぁい!!! レッツ・ジェノサイド!!!」

ザワザワ…

91 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:14:35.339 H4P0kcJ30 65/113

護衛「なるほど、このマメ……お前のいってることは本当のようだ」

護衛「これが、この村の“隠してたこと”ってわけか」

詐欺師「おっしゃる通りィ! 信じて下さってありがとうございますぅ!」

護衛「ああ、信じてやろう」

護衛「お前が“無実の人間”ってところ以外はな」ガシッ

詐欺師「え……?」

護衛「濁った眼をしてやがる。おおかた、詐欺でもやらかして捕まったんだろ」

護衛「我々はお前のようなウジムシに踊らされるほど甘くはない」

バキィッ!

詐欺師「ぐぴゃっ……!」

92 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:17:15.591 H4P0kcJ30 66/113

護衛「ったく閣下も、ビクビクしすぎなんだよ……」

護衛「こんなウジムシのためにクソ田舎まで足を運んだかと思うと……ムカッ腹が立ってきた」

護衛「ウジムシはウジムシらしく、地面に這いつくばってろ!」

詐欺師「ひ、ひええええ……! お許しをぉ……」

ドカッ! バキッ! ガッ! ドゴッ!

ギャァァァァ…



…………

……

96 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:21:17.709 H4P0kcJ30 67/113

……

「詐欺師の容態は?」

親衛隊長「かなり痛めつけられてますが、かろうじて一命は……」

「そうか、よかった……」ホッ

女盗賊「倒れてるの見た時は、死んじゃったと思ったっすよ……」

親衛隊長「彼のファインプレーです。私には村人を救う手立ては思いつきませんでしたし」

親衛隊長「最悪、姫様のことまで明らかになってたかもしれません」

「うむ……感謝してもしきれぬ……」

死刑囚「…………」スッ

女盗賊「あ、どこ行くっすか?」

死刑囚「ちょっとな」

97 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:24:47.159 H4P0kcJ30 68/113

重傷を負い、ベッドで横たわる詐欺師。

死刑囚「……起きてるか?」

詐欺師「ん? ……ああ、お前さんか」

死刑囚「上手いことやったな」

詐欺師「ああいう奴は……プライド高いから……“殺せ”っていったらやらねえもんなんだ……」

詐欺師「おかげで、こんなハンサムにされちまった、けどな……へへ」

死刑囚「なんでだ?」

詐欺師「?」

死刑囚「お前は姫や村を見捨てたって、いくらでも生きてくことはできるはず」

死刑囚「なのに、どうしてここまで……。殺されてもおかしくなかった」

詐欺師「…………」

100 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:27:27.943 H4P0kcJ30 69/113

詐欺師「俺さ、結構裕福な生まれ……なのよね」

死刑囚「?」

詐欺師「だけど、ペテン師に騙されて一家は破産……両親も首くくっちまった……」

詐欺師「残された俺も詐欺師に身をやつし……人を騙して生きてきた」

死刑囚「…………」

詐欺師「でもさ、ここでの生活は本当に楽しかった……」

詐欺師「騙してばっかの俺だけど……これは嘘じゃねえ……」

詐欺師「だから……ちょいと無理しちゃったよ……。らしくねえことしちまった……」

死刑囚「…………」

101 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:29:17.981 H4P0kcJ30 70/113

死刑囚「いつだったか、俺はお前をクズだといった」

死刑囚「本当にすまなかった。許して欲しい」ペコッ

詐欺師「よせやい……」

死刑囚「とにかく……ゆっくり寝てくれ。俺たちにはまだ、お前の力が必要なんだ」

詐欺師「ああ……そうさせてもらう……」

死刑囚「…………」

102 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:32:19.991 H4P0kcJ30 71/113

……

親衛隊長「はあっ!」バシッ!

死刑囚「もういっちょう! うおおおおおっ!」ダッ

バシッ! ガッ! バシィッ!

死刑囚「ぐっ……まだまだァ!」



女盗賊「お姫様、死刑囚さん気合入ってるっすねえ」

「うむ……しかし無茶せねばいいが」

103 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:34:38.216 H4P0kcJ30 72/113

― 小屋 ―

死刑囚「ううう……」ボロッ…

女盗賊「お疲れっすー。今日も張り切ってたっすねー」

死刑囚「まぁな……」

女盗賊「詐欺師さんに影響されたっすか?」

死刑囚「かもな……。あいつがあんな体張ったんだ。戦い担当の俺だってやらねえと……」

女盗賊「死刑囚さん、変わったっすね」

死刑囚「なにが?」

女盗賊「来た当初はあたしらのこと見下してた感じだったのに、今は全然違うっす!」

死刑囚「…………」

104 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:37:37.655 H4P0kcJ30 73/113

女盗賊「というわけで、今日はあたしがサービスっす!」

死刑囚「サービスって?」

女盗賊「マッサージっすよ」

死刑囚「……なんだ」

女盗賊「エッチなのじゃなく残念でしたね!」

死刑囚「別に期待してねえよ」

女盗賊「だけど死刑囚さんが望むなら……」

死刑囚「?」

女盗賊「いやいやいや、なんでもないっす! さ、鍵開けで培ったテクを見せるっすよ!」グッ

死刑囚「鍵開けとマッサージって互換性ないだろ……うっ!?」

105 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:39:05.461 H4P0kcJ30 74/113

「んぎいいいいいいいいっ!」

「うほおおおおおおおおおおおっ!」

「ぎっ、ぎもぢいいっ……!」





「な、なんだ!? 小屋の中から……まさか、あの二人……!?」

「ううむ……別に禁止しておらんが……しかし……」

親衛隊長「いや、多分違うと思いますよ」

107 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:42:23.561 H4P0kcJ30 75/113

それから残りわずかの期間、死刑囚たちは己を鍛え――

親衛隊長「さて、仕上げに入りましょう」

死刑囚「おうっ!」

ガッ! バシッ! カンッ!



女盗賊「ん~……これ開かないっす!」ガチャガチャ

「頑張れ! 頑張れ! 諦めるな!」

女盗賊「お姫様、集中できないので、お静かに」シーッ

「……すまん」



死刑囚「体、少しはマシになってきたな」

詐欺師「まぁな……村の人もよくしてくれてるしな」

村娘「ご飯お持ちしました!」

詐欺師「ありがとぉ~ん、尻触らせて!」

死刑囚「こいつ……トドメ刺したろか」

108 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:45:20.583 H4P0kcJ30 76/113

作戦決行前夜――

「…………」

死刑囚「まだ起きてたのか。裁判長」

「おお、死刑囚か」

死刑囚「眠れないのか?」

「うむ……。明日で全てが決まる」

「もし失敗すれば、私はもちろん、親衛隊長も、集めた義勇兵たちも……」

「そして、お前たちも命はないだろう」

109 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:49:47.651 H4P0kcJ30 77/113

死刑囚「人を“一万回切り刻みの刑”にしようとした奴の台詞とは思えないな」

「あ、あんなのウソに決まってるだろう!」

死刑囚「どうだか」

「本当だ! 私がそんな刑を執行するような輩だったら、大臣よりひどい人間になってしまう!」

死刑囚「冗談だよ、冗談」

「人の悪い奴だ」

死刑囚「なにせ誰かさんに死刑を宣告された身なもんで」

「ぐぬう……」

死刑囚「やるだけやったんだ。あとは神様がどっちに微笑むか……だろうさ」

「私は……私たちに微笑ませてみせる。私のために死んだ者たちのためにも……」

死刑囚「頼もしいねえ」

110 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:52:32.705 H4P0kcJ30 78/113

「……死ぬなよ」

死刑囚「ハハ、死刑囚に“死ぬな”っていう裁判長なんているんだな」

「一人ぐらいいてもよかろう」

死刑囚「でもたしかに、俺はあんた以外に死刑にされるわけにはいかないからな」

死刑囚「なんとか生き延びてみせる」

「ああ……頼むぞ」



「そうっすぅぅぅぅぅ!!!」



二人「!?」ギョッ

111 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:54:25.335 H4P0kcJ30 79/113

女盗賊「大丈夫っす、お姫様! あたしらなら国取り戻せるっす!」

詐欺師「任せとけ。って、詐欺師にいわれても不安にしかならねーわな」

死刑囚「お前たちも起きてたのかよ」

「これで明日、みんな寝坊してしまったらたまらんな」

アハハハハ…



親衛隊長「…………」

親衛隊長(いい仲間を持ちましたね、姫様)



…………

……

113 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 18:59:40.832 H4P0kcJ30 80/113

翌朝――

義勇兵を率い、姫たちが出陣する。

「では参ろう」

「私のために集ってくれた義勇兵たちよ、本当にありがとう」

「大臣の野望を食い止めるため、どうか力を貸して欲しい!」

親衛隊長「出撃する!」

オーッ!!!

ザッザッザッ…



死刑囚(あの数じゃ……まともに大臣の兵と戦ったらひとたまりもねえだろうな)

死刑囚「俺らも出発するか」

詐欺師「おや? 今日はあくびしねえのかい」

死刑囚「さすがに今日は……気合の入り方が違うぜ」

女盗賊「かっこいいっす!」

114 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:02:48.548 H4P0kcJ30 81/113

― 城 ―

大臣「……なんだと!? “姫”を名乗る者が兵を率いて、城に押し寄せてると!?」

護衛「ええ、たしかに突き落としたのですが……」

大臣「あの小娘……まさか生きていたとは……」

護衛「もっとも大した数ではありませんがね。兵も明らかに寄せ集めのミジンコに過ぎません」

大臣「しかし、姫が生きていたと分かれば、城の兵隊にも姫につく者が出るかもしれん」

大臣「その姫は“ニセ姫”として扱い、早急に我が手勢だけで叩き潰す!」

大臣「今夜の祝杯は……小娘の頭蓋骨で飲んでやるわ!」

護衛「クックック……ではその酒は私に注がせて下さい」

大臣「うむ……。国がワシのものになればお前が軍団長だ」

115 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:04:31.895 H4P0kcJ30 82/113

姫率いる義勇軍――

親衛隊長「姫様、大臣の軍が出てきました」

「よし、後は少しでも奴らを城から引き離す」

「私は旗を持ち、奴らの標的となる。“姫を狙え”と厳命されてるだろうからな」

親衛隊長「よいか、これから我らは大臣軍と“つかず離れず”の戦を繰り広げる!」

親衛隊長「命をかけた戦いとなる! どうか死力を尽くして欲しい!」

オーッ!!!

116 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:06:43.630 H4P0kcJ30 83/113

― 城の裏口 ―

ワァァァァ… ワァァァァ…

女盗賊「城から兵隊が出ていくっす!」

詐欺師「ついに始まったねえ……もう引き返せねえ」

死刑囚「こっちもスタートだ。裏口の鍵を開けてくれ」

女盗賊「分かったっす」カリカリ…

カチャッ

女盗賊「開いたっす!」

死刑囚「よし、行くぞ! まずは国王を助け出す!」

118 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:09:49.869 H4P0kcJ30 84/113

タタタッ…

死刑囚「こっちであってるのか?」

女盗賊「はい、お姫様からお城のことは詳しく聞いてるっすから!」

女盗賊「ごく一部しか知らない隠し部屋……そこに王様は閉じ込められてるはずっす!」

詐欺師「ま、普通の牢屋に入れとくのは無理だわな」

女盗賊「……あっ!」

兵士A「なんだ、貴様らァ!」

兵士B「ここをどこだと思ってる!」

死刑囚「ちっ、いきなり鉢合わせかよ」

女盗賊「ど、どうするっすか?」

死刑囚「やるしかないだろ!」チャキッ

詐欺師「いや……ちょいと待った」

119 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:12:15.519 H4P0kcJ30 85/113

詐欺師「お前さんたち」

兵士A「?」

詐欺師「今……城に敵軍が攻めてきてるのは知ってるだろ?」

兵士A「ああ……亡き姫様を騙った“ニセ姫”が……」

詐欺師「いいや……あの姫は本物さ」

兵士AB「!?」

兵士A「本物だと……バカな!」

兵士B「姫様は事故で……!」

詐欺師「ところが、そうじゃなかった……姫は生きてたんだ!」

兵士AB「…………ッ!」

思わず聞き入ってしまう兵士二人。

121 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:16:33.786 H4P0kcJ30 86/113

詐欺師「今、姫は……この国を取り戻そうとしてる! ……大臣の手から!」

詐欺師「俺たちはその手伝いをする特殊部隊……≪ヒミツ部隊≫なんだ」

兵士A「ヒミツ部隊……!」

兵士B「ちょっと入ってみたい……!」

詐欺師「俺らの味方をしてくれとはいわない……だが、ここはどうか静観してくれないか!」

詐欺師「頼むっ……!」

兵士A「分かった……」

兵士B「兵士の中には、大臣に疑問を感じてる者も多いんだ……行け!」

詐欺師「ありがとう!」ビシッ!



タタタッ…

死刑囚「……名演だったな」

女盗賊「あたしまでグッときちゃったっす!」

詐欺師「詐欺じゃなくほとんどホントのことだからな。いつもより楽なもんだ」

123 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:18:47.842 H4P0kcJ30 87/113

タタタッ…

「なんだてめえら!」 「侵入者だ!」

兵に出くわしてしまう。

死刑囚「ちっ、またかよ……。さっきみたいに頼むぜ」

詐欺師「俺らは姫様のために働く……」

「姫の手先か!」 「殺してしまえ!」

詐欺師「ゲ、今度の奴らは大臣の直属っぽいな」

死刑囚「さすがに城内にも残してやがったか……だったら俺の出番だ!」

124 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:23:16.544 H4P0kcJ30 88/113

死刑囚(親衛隊長との特訓の成果……見せてやる!)

死刑囚「でやぁぁぁぁぁっ!」ダッ

ザシュッ! ズバッ! ザンッ!

「ぐあぁっ!」 「ぐおっ……!」 「あぐっ!」

詐欺師「領主ん時より格段に腕上げてらぁ……」

女盗賊「シビれちゃうっす……」

死刑囚「ふん、こんな奴らの5人や10人ぐらい、どうってことないぜ」

ドドドドド…

「いたぞ!」 「こっちだ!」 「逃がすなァ!」

女盗賊「20人ぐらい来たっすけど」

死刑囚「…………」

死刑囚「逃げるぞォ!!!」

125 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:26:19.659 H4P0kcJ30 89/113

タタタタッ…

死刑囚「ヤバイ、行き止まりだ!」

詐欺師「ど、どうしよっか……」

カチャカチャッ

女盗賊「ここの扉を開けたっす! 入るっす!」

死刑囚「ナイス!」

バタンッ!

大臣兵A「……くそっ! 向こうから鍵かけやがった!」ガチャガチャ

大臣兵B「ちょこまかと……!」

126 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:29:12.438 H4P0kcJ30 90/113

城内を走り回る三人。

タタタッ…

詐欺師「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

死刑囚(女盗賊のおかげで、何とか逃げ回れてるが……このままじゃジリ貧だ)

死刑囚(早く国王のもとにたどり着かないと……!)

大臣兵C「死ねぇっ!」

死刑囚「せやっ!」

ザンッ!

大臣兵C「ぐぎゃっ!」ドサッ…

女盗賊「次はここに入るっす!」ガチャッ

127 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:32:19.643 H4P0kcJ30 91/113

一方――

ワァァァァァ…

親衛隊長「よし、退け! 少しでも大臣の兵を城から遠ざけるんだ!」

親衛隊長「姫様、もうお下がりください! まもなく本格的に交戦になります!」

「だが、私がいなければ、囮にはなるまい!」

「兵や死刑囚たちが命を賭しているのだ……私もギリギリまで……!」

親衛隊長「分かりました」

親衛隊長「私は今度こそ、あなたをお守りいたします!」

親衛隊長(しかし……大臣の部隊を率いてるのが、護衛ではないのが気になる……!)

ワァァァァァァ…

128 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:35:49.197 H4P0kcJ30 92/113

タタタッ…

死刑囚「この先か!?」

女盗賊「はいっす! この先に、王様が捕われてるはずっす!」

詐欺師「……っと、誰かいやがるぜ」

死刑囚「大臣の兵士か?」

死刑囚(いや……あれはッ!)



立ちはだかるのは――

護衛「やはり、私が残っていて正解でしたね」

大臣「こ……こいつらは!?」

130 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:38:45.668 H4P0kcJ30 93/113

死刑囚「護衛……!」

護衛「ん? 見たツラがいるな」

護衛「そっちの奴はあの村にいたウジムシ……。そしてお前は……」

死刑囚「…………」

護衛「思い出した。あの時、国王暗殺に乗り込んできた……ドブネズミか」

死刑囚「記憶力がよろしいこって」

護衛「そうか……お前ら全員姫の手先だったわけか。だとすると、色々と辻褄があう」

護衛「生き延びた姫は、お前らのようなムシケラを集めて、国王救出を狙ってたわけか」

死刑囚「どうでもいいけどよ、ムシなのかネズミなのか統一してくれよ」

131 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:40:50.486 H4P0kcJ30 94/113

護衛「だが、ここまでだ」

護衛「ドブネズミに……」

死刑囚「ちっ……」

護衛「死にぞこないのウジムシ」

詐欺師「うっ……」ビクッ

護衛「それと……ナメクジ」

女盗賊「あたしナメクジっすか!?」

護衛「今ここでまとめて駆除してやる」スラッ…

死刑囚「それはこっちの台詞だ……! お前ら黒幕二人……まとめてブッ倒してやる!」

132 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:44:21.975 H4P0kcJ30 95/113

死刑囚「うおおおおおおっ!」

護衛「はあっ!」

ガキンッ! キインッ! ――ザシュッ!

一太刀浴びたのは死刑囚。

死刑囚「うぐ……!」

護衛「…………」ニヤ…



女盗賊「死刑囚さんっ!」

大臣「ハッハッハ、いいぞっ! やれっ! 殺してしまえい!」

133 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:46:12.571 H4P0kcJ30 96/113

死刑囚(こいつはクソ野郎だが、あの親衛隊長を崖下に叩き落とした男!)

死刑囚(つまり……俺より格上!)

ギィンッ!

護衛「せやぁっ!」ブオッ

ドゴォッ!

蹴りが脇腹に命中。

死刑囚「ぐええっ……!(蹴りも一流かよ……!)」ミシメキ…

護衛「はあっ!」ブオッ

ガキィンッ!

死刑囚「ぐうっ!」ググッ…

134 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:48:37.950 H4P0kcJ30 97/113

ザシッ……!

死刑囚「うぐうう……!」ヨロッ…

死刑囚「はぁ、はぁ、はぁ……」

護衛「ドブネズミが英雄を気取ったはいいが……ここまでだな」

死刑囚「…………」

死刑囚「そう、俺は昔っから英雄気取りだった……」

死刑囚「ガキの頃から腕っ節だけは強かったから、英雄願望が強くてさ……」

死刑囚「国王を襲撃したあの時も……本当は……国なんかどうでもよかった」

死刑囚「ただ目立ちたくて……“国難に立ち向かった英雄”として、名が残ればそれでよかった」

死刑囚「この三人の中で……一番からっぽなのは……俺なんだ」

護衛「で、懲りずにまた同じことをやってるってわけか」

死刑囚「まぁな……だけど今は少し違う」

135 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:52:20.061 H4P0kcJ30 98/113

死刑囚「今は……あの姫のためなら命を賭けてもいいと思ってる!」

死刑囚「この二人となら……国を変えられるって信じてる!」

女盗賊(死刑囚さん……!)

詐欺師(へっへっへ……)

護衛「ほざけッ! ドブネズミがッ!」ビュオッ

ザシィッ!

死刑囚「ぐおおおおっ……!」ガクッ

死刑囚がついに膝をつく。

護衛(こいつさえ殺せば、残り二匹はゴミ……! これで終わりだッ!)

136 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:55:33.098 H4P0kcJ30 99/113

死刑囚「かかっ……たな!」ギュオッ

ズバァッ!

護衛「がっ……!?」

反撃が炸裂する。膝をついたのは演技であった。

死刑囚「一回ぐらい、お前を騙してみたかった……仲間がボコられてるんでな」

護衛「ぐうう……! このっ……!」ボタボタ…

護衛「くぉの、ドブネズミがァァァァァッ!!!」ダッ

死刑囚(来るッ!)

137 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 19:58:43.378 H4P0kcJ30 100/113

『特に突進力に関しては、私すら及ばない天性のものを持っている』

死刑囚(ここだッ! ここで俺の突進力を!)ダッ

護衛「ぬっ!?」

死刑囚「うおおおおおおおおッ!!!」



ズドォッ!!!



胸に深々と剣が突き刺さる。

護衛「ご、は……っ!」

護衛「こ、の……ドブネ、ズ……」ゴブッ…

ドサァッ……

138 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:01:56.565 H4P0kcJ30 101/113

死刑囚「…………」ギロッ

大臣「ひっ!」

死刑囚「さぁ~て、どうしてくれようか」

死刑囚「なにしろ、お前は姫を殺そうとして、国民を騙して、国を奪い取ろうとした……」

死刑囚「俺ら三人が合体しても足りないぐらいの極悪人だからなァ!」

大臣「や、やめろっ! ……ワシに近づくなァ!」

大臣「そうだ、護衛の代わりにワシの側近にならんか!? なんなら軍団長のポジションに……」

死刑囚「この……ゲス野郎がッ!!!」

ブオンッ!

剣を振るう。

139 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:04:17.308 H4P0kcJ30 102/113

――ピタッ!

死刑囚「なーんて、死刑囚が人を裁いちゃいけねえよな」

大臣「あ、あああ……」

死刑囚「お前はもう終わりだが、これからたっぷりじっくり裁いてもらうことになる」

死刑囚「我らがこわ~い裁判長によ」

大臣「う……うおおおおっ……!」ガクッ

絶望し、うなだれる大臣。

死刑囚「さあ、国王救出だ! 戦いはまだ終わっちゃいねえ!」

詐欺師「おうよ!」

女盗賊「最後の仕上げっす!」

141 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:07:25.817 H4P0kcJ30 103/113

幽閉された本物の国王――

国王「…………」

ガチャッ

女盗賊「開いたっすー!」

国王「……む」

詐欺師「あれま、すっかりやつれちまって。お気の毒に」

死刑囚「今度こそ本物だな! 偽者じゃねえよな!?」

142 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:09:38.315 H4P0kcJ30 104/113

国王「……君たちは?」

死刑囚「あんたの娘の使いだ!」

国王「なにをいっている……? 娘はもう……」

死刑囚「生きてんだよ!」

国王「娘が……生きてる……?」

死刑囚「詳しい説明は後! あんたにゃ俺らの味方になってもらわんと困る!」

女盗賊「こっからは詐欺師さん、頼むっすよー」

詐欺師「おう、俺の話術で兵士たちを説得しなきゃな! ノドがうずくぜぇ!」

143 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:12:33.541 H4P0kcJ30 105/113

城外の義勇軍と大臣軍の戦いは――

ワアァァァ……! ウオォォォ……!

ザシュッ……!

親衛隊長「ぐっ!」

「隊長、大丈夫か!?」

親衛隊長「ええ、しかし……本格的に大臣軍と交戦に入ってしまいました……」

親衛隊長「このままでは……!」

「くっ……!」

「――ん? あ、あれは……」

144 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:15:45.556 H4P0kcJ30 106/113

ドドドドド…

兵士A「姫様たちを助けろーっ!」

兵士B「本物の国王陛下は救出されたぞーっ!」

「大臣の兵を制圧しろーっ!」 「姫様ーっ!」 「よくも騙してくれたなァ!」

ワァァァァ… ワァァァァァ…

ガキィン… キィン… グワァ… キンッ… ザシュッ… ヒエエ…



「これは……!?」

「城から続々と援軍が……!」

親衛隊長「どうやら、三人が陛下を救出し……城内の兵士たちを味方につけたようですね」

親衛隊長「我らの勝利です……!」

(死刑囚、詐欺師、女盗賊……ありがとう)

145 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:19:11.217 H4P0kcJ30 107/113

国王が救出され、大臣が敗北したことで、大臣の勢力は瞬く間に制圧された。

大臣の企みは、全て明るみに出ることとなった。



≪王国記念日≫式典にて――

国王「国民達よ、このたびは本当に申し訳なかった。いくら謝罪をしても許されるものではない」

国王「余は一刻も早く、生きていた娘とともに、国を立て直すことをここに誓う!」

「私も父上と同じ想いです! 国のために力を尽くして参ります!」

ワアァァァァァ……!



この一年で、国内は大いに乱れ、疲弊していたが、人々は王の復帰と姫の生還を歓迎した。

国王は自身の不甲斐なさを深く謝罪し、善政を敷くことを誓うのだった――

147 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:22:41.584 H4P0kcJ30 108/113

……

親衛隊長「正式に判決が下りました」

親衛隊長「今回の刑の執行は、特別に私めが務めさせて頂きます」

大臣「う、ううう……!」

親衛隊長「お覚悟を」

大臣「し、死にたくない……。助けてくれぇ……」

親衛隊長「お気持ちはお察しします。一連の件で犠牲になった者たちは皆、そう思っていたことでしょう」

親衛隊長「むろん、私の部下たちも……」

親衛隊長「では」チャキッ

大臣「うわぁぁぁぁぁっ……!!!」

…………

……

148 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:25:47.054 H4P0kcJ30 109/113

そして――

「お前たち、よく来てくれた!」

親衛隊長「お待ちしておりました」

死刑囚「二人とも、正装がバッチリ決まってやがるな。やっぱ住む世界が違うわ」

女盗賊「お姫様、お綺麗っす!」

詐欺師「隊長さんも凛々しいねえ」

死刑囚「んで、俺らになんの用だ?」

「国もだいぶ落ち着いたし、お前たちにも正式に褒賞を与えたいと思ってな」

死刑囚「マジで? だいぶ金もらったけどまだくれるのかよ!」

女盗賊「やったっす! ボーナスっす!」

149 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:28:35.127 H4P0kcJ30 110/113

「ついては正式に官職について、町を治めたり、城勤めをするつもりはないか?」

女盗賊「あたしらがお役人っすか!?」

詐欺師「正直……務まるとは思えねえな」

女盗賊「あたしもっす。堅苦しいのはちょっと」

「うむ、そうか……」

親衛隊長「でしたら、親衛隊に入るのはいかがです? 今、義勇軍に参加した者を中心に再編成しているのです」

死刑囚「俺は突撃タイプだから、誰かを守るのは柄じゃねえなぁ」

親衛隊長「それはいえますね」

「私としても、お前たちに守られるのは不安だ……」

アッハッハッハッハ…

150 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:31:09.759 H4P0kcJ30 111/113

死刑囚「俺たちは三人とも、立派な罪人だぜ? 肩書きもこのままでいいや、なんか気に入っちまったし」

女盗賊「死刑囚でいいんすか!?」

死刑囚「“執行されぬ永世死刑囚”ってのもイカすだろ?」

詐欺師「英雄になりたかっただけあって、お前さんもだいぶ特殊な感覚の持ち主だな」

「しかし……お前たちの能力はあまりにも惜しい。できればこれからも力になって欲しい」

死刑囚「うーん……」

死刑囚「だったらこういうのはどうだ、裁判長……いや、姫様」

「え?」



………………

…………

……

151 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:34:38.746 H4P0kcJ30 112/113

― 城 ―

詐欺師「聞いたか? ニセの国王がどこぞの町で“ニセキング”って芸人としてデビューしたんだってさ!」

女盗賊「マジっすか?」

死刑囚「昔、俺が仕留め損ねた奴か……ったく逞しいねえ」

そこへ姫がやってくる。

「お~い、お前たち! お仕事の時間だ!」

死刑囚「お、出番か」

女盗賊「はいっす!」

詐欺師「へーい」

152 : 以下、5... - 2020/08/15(土) 20:36:41.013 H4P0kcJ30 113/113

「実は近頃、城下で幻覚作用のあるキノコを販売している輩がいるという……」

「こやつらの実態を突き止め、販売ルートを叩き潰して欲しい!」

死刑囚「なかなか斬りがいのある連中じゃねえか」

女盗賊「こないだの窃盗団潰しよりも面白そうっすね」

詐欺師「俺の話術があれば、情報なんざいくらでも集められるってもんさ」

「頼むぞ、お前たち!」

死刑囚「おう! クソ野郎は罪人の手で叩き潰す! 姫直属ヒミツ部隊……出動だ!」







~おわり~

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