おばさん「勉強してえらくなって頂戴よ」
おっさん「なあに人間そんなに偉くなるこたあねえ。ちょうどいいってものがあらあ」
おっさん「いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるようになりなよ」
おっさん「それが人間偉すぎもしない、貧乏すぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ」
男「……」
男「なります!!!」
男「うおおおおおおおおおおおお! トンカツをいつでも食えるようになるぞ!」スタタタタタッ
元スレ
おっさん「学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるようになりなよ」男「なります!!!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1590053534/
男「うおおおおおおおおおお!!!」
男「肉切ってぇ……小麦粉と卵とパン粉つけてぇ……油に入れてぇ……」
ジュワァァァァァ…
男「うおおおおおおおおおおおお!!!」
母「どうしたの、バカの一つ覚えみたいにたくさんトンカツ作って」
男「これもトンカツをいつでも食えるようになるためなんだ!」
母「はぁ……?」
教授「なので、情報が氾濫するマスメディア社会においては、各々がしっかり情報の取捨選択を……」
男「……」モグモグ
教授「む」
教授「コラーッ! 講義中になにを食っとるんだ!」
男「トンカツです」
教授「む、それならよし!」
店長「牛丼並盛り一丁!」
男「はいっ!」
店長「バイト君、一休みしていいぞ」
男「よぉし、トンカツ食べよう!」モグモグ
店長「えぇと……牛丼屋でトンカツ食うの?」
男「いけませんか?」
店長「いや、いいけどさぁ……」
女「今日のデート、楽しかったね」
男「うん」
女「あ、ちょっとお腹すいちゃった」
男「だったらあそこのベンチで休憩しようか」
女「なにか食べる物あるの?」
男「……」ゴソゴソ
男「これさ」サッ
女「懐から……トンカツ!?」
男「どうぞ」ニコッ
女「う、うん……」
女「……」ガツガツ
女「うん! うまい!」
女「外はサクサク、中はジューシー! 理想的なトンカツだわ! やるじゃない!」
女「おかわり!」
男「う、うん……」
男(まさか俺より食べるとは思わなかった)
男「……という理由で、御社を志望いたします」
面接官「なるほど、分かりました」
面接官「では続いて、自己PRをお願いします」
男「はいっ! 私は……いつでもトンカツを食べられます」
面接官「ほう」
男「今もこの通り」サッ モグモグ
面接官「むむむ……採用ッ!」
課長「新人君、これコピーを……」
男「……」モグモグ
課長「おいおい、仕事中に何を食べてるんだね」
男「トンカツです」モグモグ
課長(こいつは……大物になるかもしれん)ゴクリ…
男「俺たち……付き合い始めてから、ずいぶん経つよね」
女「そうだね。大学時代からだし……」
男「もうそろそろ……いいんじゃないかと思うんだ」
女「……?」
男「結婚しよう」
女「!」
男「どうかな?」
女「よろしく……お願いします!」
男「じゃあ、このトンカツ……受け取ってくれるかな?」
女「いつもより大きい……!」
女「嬉しいわ、ありがとう!」ムシャムシャ
男「どういたしまして」
女「おかわり!」
男「食うの早っ!」
パチパチパチパチ…
司会者『今回の式では、新郎新婦の希望でケーキ入刀ではなく――』
司会者『トンカツ入刀を行います!』
ワァァァァァ…
男「じゃ、いくよ」
女「うん」
男「せーのっ!」
ザクッ…
男(新婚生活が始まったってのに……こんなことになるなんて)
強盗「ぐっへっへっへ……金出しな」
男「……出してくれ。命にはかえられない」
女「う、うん」
強盗「物分かりがいいじゃねえか。おかげで死ななくて済んだな」
強盗「……」グゥゥ…
強盗「おっと腹も減っちまった。おい、なんか食い物出しな」
男「……」
男「どうぞ」サッ
強盗「トンカツ!? お前どこから出したんだよ!」
男「いつでも食えるようにしてるので」
強盗「意味分からんが……まぁいい、食ってみるか」モグモグ
強盗「……こ、これは! なんてうまさなんだ……!」
強盗「こんなうまいトンカツを食わせてくれる人から、強盗しようとしてたなんて……」
強盗「自首……します」
男(強盗に……勝った……!)
男(俺も今や父親になったし、今日は早く帰らないと……)
男「……」スタスタ
ブロロロロロ…
男「え!?」
男(赤信号なのにトラックが突っ込んできて……!)
ブロロロロロ…
ドカァンッ!!!
ピッ… ピッ… ピッ…
医者「……」
女「夫は、夫は助かりますか!?」
医者「手術は成功しましたが、このまま意識が戻らない可能性もあります」
女「そんな……!」
子供「お父さん……!」
医者「声をかけてあげて下さい。それがきっかけで、意識が戻った事例もありますから」
男「……」
女「あなた!」
男「……」
子供「お父さん!」
男「……」
女「トンカツよ!」
男「……」ピクッ
医者「えっ?」
男「いつでも……つまりたとえ死にかけててもトンカツは食う!」ガバッ
女「よかった……!」
子供「お父さぁん!」
医者「おおっ、奇跡だ!」
男「トンカツうまい!」ガツガツ
女「おかわりもあるわよ」
社員A「定年退職、お疲れ様でした」
社員B「今日は若手社員一同でご馳走しますよ!」
男「じゃあ、トンカツをいただこうかな」
男「うん、この店のトンカツはうまい!」モグモグ
社員A「すげえ食いっぷりだ……」
社員B「若い俺たちより食ってるよ……」
孫「おじいちゃーん」
男「おお……よしよし」
男「……」ボケー…
男(いかんいかん、このところ頭が働かなくなってきた……。寿命が近いということだろうか……)
男(あまりご飯も食べられなくなってきたし……)
男「だけど、トンカツは食う」ムシャムシャ
孫「おじいちゃん、すげー!」
男「……」
医師「ご臨終です……」
孫「おじいちゃん……!」
息子「オヤジ……大往生だったなぁ」
女「あなた、いずれ私も行くから、待っててね」
――
――
男(あー……ついに俺も死んでしまったか)
男(まぁ、愛する家族に囲まれて逝けたんだ。幸せな一生だったといえるだろう)
男(えぇと、あっちに行けば、閻魔様に裁いてもらえるようだな)スタスタ
閻魔大王「ふむ、おぬしは特に悪事をしておらず、極楽行きが妥当――」
男「……」モグモグ
閻魔大王「っておい! 裁きの最中になにを食っておるんだ!」
男「トンカツです」モグモグ
閻魔大王「なんという奴だ……! ええい、こやつをキャベツ地獄に連行しろ! ソースもつけてな!」
男「おお、それはありがたい」
END