梓「にゃお~ん」
こんにちは、平沢唯です。
突然ですが、私の後輩が猫になってしまいました。
梓「にぃ~」
唯「こら、膝に乗っちゃダメだよ」
元スレ
唯「猫さんはこうやってあげると喜ぶんだよ」梓「にゃっ!?にゃっ///」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1281752235/
もちろん外見は私達と変わりません。
猫耳と尻尾がある点を除けばですが。
梓「ごろごろ~」
唯「くすぐったいよ~。頭をスリスリしないで~」
梓「フンフン」
唯「鼻を押しつけてこないで~」
最初はすごく可愛かったです。可愛いあずにゃんの魅力が三倍増になったのですから。
ですが…。
唯「♪~」
梓「にゃあ~」ノシッ
唯「ああ~、また本を読む邪魔をする~」
今はちょっとうっとうしいです。
今のあずにゃんは人の言葉が話せません。
ガチャ
唯「こんにちは~」
梓「にゃ~。にゃあーにゃあー、にゃあぁ~」
唯「なあに?」
梓「にゃ~。みい、みぃ~」
唯「お腹すいたの?」
梓「にゃおぉ~ん」
たまに会話が通じてる気がします。
唯「はい、ムギちゃんのお菓子だよ」
梓「にゃあ~♪」
今のあずにゃんはみんなと違って、床でティータイムをすごします。
けれどもこれは決していじめではありません。
だって…。
律「こら梓、机に登るな!」
澪「うわあああ、私のケーキがああああ!」
お行儀が悪くなってしまったんです。
唯「もーあずにゃん、降りなさい」ペシッ
梓「にゃぅ」
これではとても他人様に会わせられません。
それにもう一つ…。
紬「じゃあ、始めましょう」
唯澪律紬「じゃーんけーん!」
律「やったー、今日は唯が梓のブラシ係な!」
唯「ちぇー」
今のあずにゃんは髪をいじられるのが嫌いなんです。
でも、あずにゃんも年頃の女の子ですから、誰かがきれいにしてあげなきゃいけません。
唯「じゃ、動かないでね~」
梓「んにゃああ」
唯「いい子いい子。すぐ終わるよ~」
梓「う゛ぅ~」
唯「こら、動いちゃダメだよ」
梓「んにゃっ!」フー!
唯「あいたっ!」
唯「あうぅ…。また指噛まれた…」
あずにゃんは爪が使えない分、噛みつきが強力です。
正直、かなり痛いです。
唯「うぅー、ギターが弾けなくなっちゃうよぉ…」
梓「んにゃあ」ゴロゴロスリスリ
唯「また~?」
このあずにゃんはかなり調子のいい子です。
梓「ごろ~ん、ごろ~ん」スリスリ
あずにゃんは首の下や頭の後ろを撫でるとすごく嬉しそうにします。
猫はここが気持ちいいらしいです。
梓「うぅ~ん」
唯「こらあずにゃん。パンツが見えてるよ」
あずにゃんはたまに尻尾を上げてお尻を見せつけてきます。
何て言いたいのかな?
澪「さて、練習するぞ」
梓「なぁ~ん」
唯「ああー、またあずにゃんがギターケースの上に座る~」
留年すると困るので、あずにゃんの両親はとりあえず学校には通わせてます。
でもこんな調子ですから、授業が受けられません。ギターも弾けません。
ライブは大丈夫かなあ。一緒に演奏したいなあ。
梓母「今日も娘がお世話になりました」
唯「いえいえ」
あずにゃんのご両親はとてもいい人です。
でも最近、ひどくやつれて見えます。
そりゃそうでしょう。実の娘がキツネ憑きならぬ猫憑きになっちゃったんだから。つらいだろうな。
唯「じゃあ、またね。あずにゃん」
梓「…」ペロペロ
あずにゃんの舌はザラザラしてます。
それからさらに数日が過ぎました。
あずにゃんは相変わらずです。猫化した原因もわかりません。
唯「♪~」カキカキ
梓「んなぁ~」
唯「あああー、プリントの上に乗らないでー」
紬「なんだか机がミシミシいってるわね」
澪「梓…もしかして、太った?」
律「あんだけ食って…」
唯「膝の上で丸くならないでよぉ~」
梓「」クークー
律「…あんだけ寝りゃなあ」
ガラッ
さわ子「みんな!今日は梓ちゃんのためにとっておきのアイテムを持ってきたわ!」
唯「猫耳なら間に合ってますよ」
さわ子「猫に猫耳をつけてどうするのよ…これよ!」パラララッパラー
澪「…市販の猫じゃらし?」
さわ子「これで梓ちゃんのハートをゲットして、スーパーかずにゃんタイムよ!」フンス
さわちゃんはこの状況を思い切り楽しんでます。
とりあえず遊んでみました。
唯「…」ピコピコ
梓「!」ピクッ
唯「…」フリフリ
梓「…」
唯(尻尾があんなにピンとしてる…。目も真っ黒になって)
梓「」ダッ
唯「ふおおー!?」
気がついたら私はあずにゃんに押し倒されてました。
そう、私は忘れていたのです。相手が通常の何倍ものサイズの猫であることを。
そしてそんな私のうっかりが、思わぬ悲劇を招きました。
律「おっ…おい」
紬「あらあらまあまあ…」
澪「」プシュー
唯「…うわあああ、ファーストキスがあああ!」
まるでギャグ漫画のように、私の大切な初めてが奪われてしまいました。
和ちゃんにケーキの苺を奪われた次にショックです。
唯「」ズーン
澪「ほら謝れ…とはずみで言ったけど相手は猫」
律「ほーら、ムギのお菓子だぞー」
澪「そんなんで機嫌が直るはず…」
唯「」モキュモキュ
澪(直ったー!?)
復活した私は、とりあえずトイレに行くことにしました。
唯(…)
梓(…)
唯(精一杯体を大きく見せようとしてる)
唯「はっ!」バッ
梓「!」タッ
唯(…逃げた。今のうち)
梓「」タカッタカッタカッ
唯「何で追ってくるのー!」
あずにゃんは意外と足が早いです。
あずにゃんは結局トイレにまで着いてきました。
あずにゃんはちゃんと人間用のトイレが使えます。紙だって使えるんですよ。
ただし…。
唯「あずにゃん!トイレの戸はちゃんと閉めなきゃダメだよ!」
やっぱり少し抜けてます。
唯「…はあー」
どうにかあずにゃんのトイレを済ませ、自分の用も足した私は、手を洗いながら一息つきました。
しかし一息つくのはまだまだ早かったのです。
ふと後ろを振り向いたら、なんとあずにゃんが下半身丸出しでお手洗いから出ようとしているではありませんか。
唯「あずにゃん、ダメだよ!スカート!パンツ!」
私の尋常でない叫び声にあずにゃんは相当驚いたようです。
丸出しのお尻から飛び出た尻尾の毛が逆立って大変なことになりました。
そして、あろうことかあずにゃんは、下半身裸のままお手洗いから飛び出してしまったのです。
唯「あずにゃん!ストップ!あずにゃああああぁん!!」
その後の騒ぎはここには書き記さないでおきます。
とにかく私は引っかかれ、噛みつかれながらあずにゃんに下着とスカートをはかせました。
澪「唯、また明日な」
律「今日もご苦労さん」
紬「大変だけど、頑張ってね」
私はいつの間にか、あずにゃんのお世話を丸ごと押しつけられてました。
おかげで今日も帰りはあずにゃんと一緒です。
ムギちゃんは嬉しそうって言ってたけど、ちっとも嬉しくないです。
あずにゃんのお家は少し遠いです。
犬「ワンワン」
梓「!」ビクッ
トラック「ブロオオオォ」
梓「!!」ビクッ
掃除機「ウィィィィ」
梓「!!!」ギクッ
テリー「ギィィィッスゥゥゥッ」
梓「!!!!」ビクッ
猫には怖いものがたくさんあって、大変みたいです。
今のあずにゃんは澪ちゃんよりも怖がりです。
よく見ると、あずにゃんの体が少し震えてました。
唯「あずにゃん、大丈夫だよ~。私がついてるからね~」
梓「うにゃ」
耳の後ろを撫でてあげたら、目を細めて嬉しそうな顔をします。
大好きな表情です。
ご両親には悪いけど、このままでもいいんじゃないかな。
うっとうしくて面倒だけど可愛いし、本人も幸せそうだし。
そんなことを思い始めていたある日、事件はおこりました。
唯「あずにゃんが…行方不明?」
あずにゃんのお母さんから電話がかかってきたのは、夜の七時過ぎでした。
なんでも開けっ放しにしていた窓から脱走してしまったのだとか。
唯「わかりました、すぐ探しに行きます!」
電話を切るとすぐに、私は靴をつっかけて外に飛び出しました。
憂の晩ご飯を食べてる余裕などありません。
実は前にも同じような事件がありました。
その時は、大きい駐車場で猫の集会に参加していました。
たくさんの猫の中に後輩がうずくまっている様子は、かなりシュールでした。
でも今回、あずにゃんは家のそばにはいなかったそうです。
唯「あずにゃーん、どこ行ったのー?」
他人の家に入り込んで迷惑をかけていないか。
野良猫とガチバトルしていないか。
不安はつのります。
三時間過ぎました。
あずにゃんは見つかりません。
唯「…っ…っく…うぅ…」
猫耳と尻尾はついてるけど、あずにゃんの外見は人間です。
もしかしたら、悪い人にさらわれてしまったのかも。
そう考えると、涙が止まりません。
私は今の今まで気がつきませんでした。
あずにゃんが、私の後輩である以上に大切な飼い猫であることに。
あずにゃんのことがこんなにも愛しいことに。
ねえ、あずにゃん。
また廊下で追いかけっこしよう。
二人でお昼寝しよう。
いっしょにお家に帰ろう。
だから、
早く帰ってきて。
唯「っく…あ、あれ…あずにゃん?」
あずにゃんは知らない街で戸惑っていました。
よく見ると、猫耳と尻尾がありません。
梓「あ、あれ?唯先輩?」
人の言葉もしゃべります。
けど、そんなことはどうでもいいです。
梓「よかった。実は気がついたら、こんな知らないところに…うわっ!」
唯「あずにゃああああん!よがっだよおおぉぉ!」ビエエェェ
梓「な、何なんですか急に!」ドキドキ
梓「落ち着きましたか?」
唯「っく…すいやせん…」
それから私は説明しました。
あずにゃんが何故か猫になってしまったこと。
みんなでお世話したこと。
ちなみに下半身裸で走り回ったことは黙っておきました。
梓「そうでしたか…。実は私、今までの記憶がなくて」
唯「覚えてないの?」
梓「はい。気がついたら来たこともない街にいて。びっくりしちゃいました。」
いろいろと大変だったのに、あずにゃんは全く覚えていないそうです。
唯「私の苦労が報われないよぉ…」
梓「でも、たくさん優しくしてもらった気はします」
唯「あーあ、晩ご飯食べてないからお腹すいちゃった」
梓「すいません。飴とか持ってなかったかな…あれ?なんだろこれ」
あずにゃんが取り出したものは、小さな緑色の木の実でした。
梓「なんで私こんなもの持ってるんだろ?」
唯「もうそれで我慢するからちょうだい」
梓「どうぞ」
よく考えもせずに、私はその実を口に放り込んでしまいました。
……
唯「にゃお~ん」
こんにちは、中野梓です。
突然ですが、唯先輩が猫になってしまいました。
律「こら、机に乗るな」ペシッ
唯「うにゃ」
澪「まったく…。梓よりも行儀が悪いな」
私が持っていた木の実、あれはどうやら特殊なマタタビだったらしく、
食べると猫になってしまうようです。
唯「うにゃん」ゴロゴロ
梓「もう、うっとうしいです!」
唯「にゃあ~あ」
梓「…」
唯「ごろ~んごろ~ん」
梓「…床に寝たら、制服が汚れちゃいますよ。おいで」
唯「ふにゃ」
梓「…唯にゃん」
バターム
憂「おねーちゃーん!」
梓「チッ」
おわり
おまけ
紬「猫の飼い方の本を買ってきたわ」
律「なになに?…メス猫が尻尾を上げてお尻を見せつけるのは、発情した際の仕草?」
澪「そういえば…」
紬律澪「…」
梓「?」
紬律澪「お幸せに」
梓「え?え?」
おわり