京子「結衣ー!お見舞いに来たぞー!」
結衣「!」ビクッ
京子「お見舞いに来て上げたってのにーなんだよ浮かない顔して!」
結衣「あ、あの…」
京子「んー?」
結衣「あなた、誰ですか…?」
京子「」
元スレ
京子「結衣が記憶喪失になった!?」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1313564725/
今から三日前、学校の階段から結衣が転落した。
30段もの高さから落ちた衝撃というのは人体にはキツ過ぎたらしい。
大きすぎる衝撃を受けた結衣の脳は、今までの思い出をすっかり忘れてしまったらしい。
あかりの話だと、その当時の私はいままでに無いような表情をしていたそうだ…
京子「冗談やめろよー!」
結衣「ご、ごめんなさい…」
結衣「あの、あなた…名前は?」
京子「あはは、京子だよー!歳納京子…」
結衣「歳納さん…?」
京子「なんだよ歳納さんって…今まで京子って呼んでたじゃないか…」
結衣「いままで…?私と歳納さんは初対面じゃ…」
京子「結衣のばかっ!」
結衣「あっ…歳納さん…!」
そのまま私は、家に帰ってしまった。
家に帰るといの一番に、綾乃に電話した。
綾乃「あら、歳納京子からの電話…!」
京子「もしもし…綾乃?」
綾乃「な、なに?何か用事でもあるの?」
京子「実はさ…今日、結衣のお見舞いにいったんだけど…」
(中略)
綾乃「へえ、船見さんが…」
京子「結衣のヤツ、歳納さん、なんて呼んできて…」
綾乃「うーん…記憶喪失なんて、そう簡単にありえることじゃないと思うんだけど…」
綾乃「船見さんの冗談だってことは無いの?」
京子「冗談なんかには見えなかった…そもそも、あいつ冗談なんていうようなタチじゃないし…」
綾乃「まあ、心配はノンノンノートルダムなんじゃない?明日会ってみたら、案外ケロリとしてたりして」
翌日
京子「昨日飛び出して帰っちゃったし…なんか病室には入りづらい…」
千歳「あれ?歳納さん?」
京子「ち、千歳!?」
京子「どうして千歳がこんなところに…!?」
千歳「船見さんのお見舞いに来たんよ~」
京子「結衣のお見舞い…?」
千歳「同じクラスの友達が大怪我して入院したんなら、お見舞いぐらい行くのが友達ってもんやないの~」
京子「友達…私、もう結衣の友達じゃないのかな…」
千歳「なに言っとんの!二人とも綾乃ちゃんが嫉妬するほど仲良かったじゃ…」
京子「結衣、昨日お見舞いに行ってやったらあなたのこと知らないって…」
千歳「…?ちょっと詳しく聞かせてもらってええ?」
京子「昨日、結衣のお見舞いに行ったら…」
(中略)
千歳「そうだったんか…にわかには信じられへんけど…」
京子「まさか、記憶喪失なんじゃなくて、私の存在だけ結衣の中から消えてたり…」
千歳「そんなん、なかなかありえそうな話じゃあらへんけどなあ…」
京子「でも、昨日は本当に!」
千歳「歳納さんの話はちゃんと信じとるで?でもなあ…」
千歳「とりあえず、病室に入ってみよ?」
京子「う、うん…」ガチャ
結衣「お!千歳!それと…歳納さん…?」
京子「ど、どうして…」
千歳「歳納さんって…船見さん、何言っとるんよ~」
結衣「千歳、歳納さんと知り合いなの?」
千歳「知り合いも何も、船見さんの幼馴染だって船見さんに紹介してもらったやないか~」
結衣「私の幼馴染?」
結衣「そんなはずは…ない、と思うけど…」
千歳・京子「!!」
京子「結衣冗談もそろそろいい加減にしろよ!結衣ッ!」ガタッ
結衣「ご、ごめんなさい…っ…でも、私…」
千歳「お、落ち着いてな、歳納さん」
京子「落ち着いて…られるかよ…結衣……本当に、本当に私がわからないの…?」
結衣「ごめんなさい、私…」
千歳「あかん…歳納さん泣いて…」
京子「じゃあ、あかりとちなつちゃんのことはっ!?二人のことは知ってる!?」
結衣「知ってるも何も、二人は同じ部活の子で、あかりは私とは幼馴染なんだけど…」
京子「……そんな…どうして私だけ」
千歳「歳納さん…とりあえず一旦帰ろう。顔、真っ赤で…」
千歳「ほな、船見さん、騒がしくしてごめんな。このヤマユリはお土産やから、好きなところに飾っといて?」
結衣「うん。ありがとう…」
京子「どうして…っどうして…」
病院の駐車場
千歳「ほんまに、船見さんが嘘ついてるようには見えへんかったなあ…」
京子「私だけ、ユイの記憶から居なくなっちゃ…って…」ポロポロ
千歳「歳納さん、これハンカチ」
京子「ありがとう…」
千歳「でも、なんで船見さんは歳納さんのことだけ忘れてしまったんやろ…」
京子「きっと、結衣は私の事が嫌いだったんだ…だから、ショックで私のことだけ…」グスッ
千歳「そんなことあるはずないやん!」
京子「でも…」
千歳「きっと何か理由があるはずや。一緒に考えてみよ?」
京子「うん…」
千歳「ほな、綾乃ちゃん家行こうか」
京子「綾乃ん家?どうして?」
千歳「三人寄れば文殊の知恵ってな?二人より三人の方が断然解決方法も考えやすいんとちゃうかな?」
京子「うん…」
千歳「ほな、行こか!」
京子「お――っ!」
千歳(ああ…楽園を見られる予感が…っ)
綾乃の家
綾乃「で、私の家に来たと」
千歳・京子「はーい」
京子「ついでに泊まりに来ましたー」
綾乃「今日はパパもママもいないからいいけど…」
京子「やったー!」
綾乃「も、もう…しょうがないんだから…」
千歳「そんなこと言うたかて、まんざらでもなさそうやないの?」ヒソヒソ
綾乃「…!」カァァァァ
京子「で、本題なんだけど…」
綾乃「どうして船見さんが歳納京子のことだけを忘れてしまったのか、よね」
京子「うん…」
綾乃「前に聞いたみたいに、冗談だってスジは無いの?」
京子「本当のことは私自身にもわからないけど…それについてはなさそう」
綾乃「うーん…」
綾乃「船見さんが階段から落ちたとき、あんた一緒にいたんじゃなかったけ?」
京子「あ、いたよ」
綾乃「その時のこと、ちょっと思い出せる?」
京子「えーっと…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
結衣『へー、それは災難だったね」
京子『ホントだよなー。あはは』
結衣『でもさ、空き缶で指を切るって結構痛いよね。私も昔やっちゃったことあるよ」
京子『結衣でもそういうドジ踏んだりするのかー」
結衣『私を何だとおもtt
京子『ゆ、結衣!』
ここで、結衣が落ちて…それで、私が先生を呼びにいったんだよな…
京子「こんなカンジだった」
綾乃「聞く限りじゃそこにヒントは無さそうね」
京子「どうして…」
ピピピピピピ お風呂が沸きました
千歳「続きは、お風呂でゆっくり考えへん?」
京子「三人ではいると結構狭いなー」
綾乃「仕方ないじゃない…一人ずつ入ってたら時間がもったいないし…」
千歳(綾乃ちゃん、照れちゃって可愛ええなあ)
綾乃「京子って…好きな人とか居るの?」
千歳(ッ!?)
京子「なんだよいきなりー!…今はいないかな」
綾乃「そ、そうなの…」
千歳「綾乃ちゃんは、好きな人おるん?」
綾乃「ちょ、千歳っ…!
京子「あー!それ私も気になるー!」
綾乃「い…いないことも、ないかしら?」
京子「へえ!だれだれ!?」
綾乃「ひひひ、秘密よっ!」
千歳(ああ…お風呂場だからどんどん血圧が上がってくわあ)ブシュウウウウ
綾乃「キャー!千歳――っ!」
京子「千歳、大丈夫かー?」
千歳「も、問題あらへんよー」ダパー
綾乃「もう…お風呂でのぼせちゃうなんて…」
千歳「ごめんな、綾乃ちゃん…ええところやったのに…」
綾乃「ばっ…!いいところって何よ!」
京子「いいところ?」
千歳「なんでもあらへんよ~♪」
京子「んー?」
綾乃「///」
京子「うわっ!綾乃ものぼせてるっ!」
千歳「」ブッ
京子「こっちも悪化した――――!?」
京子「二人の介抱してたら夜になっちゃったじゃないかー!」
千歳「ご、ごめんな歳納さん…」
綾乃「ごめん…」
京子「まあいいよ。のぼせちゃうのは仕方ないことだし…」
京子「今日はもう寝よう?」
綾乃「そ、そうね…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
千歳「ほな、電気消すでー」パチ
京子「今日は色々あったなー…」
千歳「ほんまになあ…でも、気を落とさんといて、歳納さん」
京子「うん!結衣には、私が無理矢理でも私のことを思い出させるからねっ!」
綾乃「記憶、もどると良いわね」
京子「ありがと、綾乃」
綾乃「わたしだって、落ち込んでるあんたなんて見たくないから…」
京子「さっきさー」
綾乃「ん?」
京子「さっき、好きな人の話したじゃん?」
綾乃「あ、ああ…したけど…それがどうしたの?」
京子「もしかしたら…」
綾乃「な、何よ…」
京子「私、結衣のことが好きなのかも」
綾乃「船見さんのことが…?」
京子「うん。こんな風に考えたのは初めてだけど」
綾乃「どうして…そう思うの?」
京子「わかんない。でもさ…結衣の記憶が戻らなくて、私の思い出がなくなっちゃってたとしても…」
京子「これからまた、結衣と新しい歳納京子としていっしょに居られたら、もうそれだけでもいいかなって」
京子「こんな風に思うのは、結衣のこと、こころのどこかじゃきっと、なんか特別な風に考えてるからだろうなって…」
綾乃「……そっか」
京子「うん…」
千歳(綾乃ちゃん…)
朝
綾乃「起きろー!歳納京子お――!」
京子「今…何時…」
綾乃「朝の六時よ」
京子「あと30分…」
千歳「起きて、歳納さん!」
京子「今日休みじゃんかー!」
千歳「あ、起きた」
綾乃「今から、決着を付けに行くわよ。船見さんが本当に歳納京子のことを忘れちゃったのか、確かめてやるの!」
千歳「朝早くから行くのも船見さんに申し訳あらへんけどなあ」
京子「そっか…結衣のところに行くんだ…」
京子「うん…決心はついてるよ。覚悟もできた。足りないものは…ないよね」
綾乃「何言ってるのよ」
京子「え?」
綾乃「思いを伝える準備は?」
京子「あっ…」
京子「そうだよね…記憶があっても無くても、言うべきことがあるよね…」
綾乃「歳納京子!」
京子「はいっ」
綾乃「いい?船見さんの前では絶対泣かないこと」
京子「え、ど、どうして?」
綾乃「船見さんがあなたのことを忘れていたとしても、それは船見さんのせいじゃないわ。船見さんだって、あなたを泣かせちゃったって落ち込むわよ。」
京子「うん…」
綾乃「覚えてたとしたら、そうね…嬉し泣きなんてしても、冗談喉が過ぎたって落ち込んじゃうわよ」
綾乃「好きな人の泣いてるところなんて…見たい?」
京子「ううん。私のせいで好きな人が泣いているところなんて、見たくない!」
綾乃「でしょ?」
千歳(綾乃ちゃん…昨日の、ショックじゃあらへんかったのかな…?)
千歳(まさか無理してるんじゃ…)
病院 前
京子(なんか怖い…昨日、あんなことは言ったけど…やっぱり、忘れられてたら…)
千歳「赤座さん?池田千歳やけど…うん、うん…そっか」
千歳「うん……ほな、よろしくな」
京子「千歳、誰と電話してたの?」
千歳「生徒会長さんとや~」
京子「ふーん。なんか用事?」
千歳「今日は生徒会の行事があったんやけど、ウチと綾乃ちゃんが休むって伝えといたんよ」
京子「ごめんな、用事があったのに…」
千歳「ええってええって」
病室の前
京子「……」
綾乃「どうしたの?」
京子「い、いやあ…緊張しちゃって」
千歳「無理も無いわあ。やっぱり、忘れられてたら…って恐怖は抜けへんよなあ」
京子「う…」
千歳「歳納さん、頑張って!」
綾乃「頑張れ!歳納京子!」
病室の前
京子「歳納です」コンコン
「どうぞー」
京子「…っ」ガラッ
パ―――――ン
京子「えっ!?」
京子「クラッカー…?」
あかり「えへへー!びっくりした?」
京子「あかり…」
ちなつ「驚きました?京子先輩」
京子「ちなつちゃん…」
京子「これは、どういうことなの…?」
あかり「はーい!じゃあ、今回の主役、歳納京子さん、この企画の主催者の船見結衣さんの前へどうぞ!」
京子「???」
結衣「えー、まずは一言」
結衣「ごめんな、京子」
京子「え?え?」
京子「どういうことなの…?」
結衣「じゃあ、説明していこうか」
結衣「京子、階段から落ちたときのことは覚えてる?」
京子「う、うん」
結衣「あの時、私は本当に階段から落ちて…本当に救急車で運ばれた。合ってるよね?」
京子「うん」
結衣「で、ここからが今回の企画になるわけだけど…」
結衣「私は、歳納さん…京子のことを、忘れたフリをしていました」
京子「忘れた…フリ?」
結衣「そう。で、京子は引っかかった」
京子「そんな…」
京子「まんまと騙されたああああああああああ!」
あかり「私とちなつちゃんもグルだよ。…ごめんね、京子ちゃん。」
ちなつ「ごめんなさい、京子先輩」
京子「で、でもでも、どうしてこんなことを?」
結衣「ちょっとからかうつもりだったんだけど、随分大げさになっちゃったんだ…」
結衣「ごめんな、と…京子」
京子「馬鹿!こっちは本気で心配したんだからな!」
結衣「ごめんな…」
千歳「ほな、後はがんばってな、歳納さん」コソ
千歳「綾乃ちゃん、行こうか…」
綾乃「うん………」
京子「実は、私も結衣に言わなくちゃいけないことがあるんだけど…」
結衣「…何?」
京子「…その……今回のことで、はっきりと判ったことがあるんだ…」
結衣「わかったことって…」
京子「私は、結衣のことが好きだ」
あかり・ちなつ「ええええええええええ!?」
結衣「わ、私のことが…?」
京子「うん。忘れられちゃったこと思ったときは、死ぬほど辛かった…」
結衣「ごめん…」
京子「でも、そんなことに関係なく、わたしは結衣のことが好きだったんだ」
結衣「私も、京子のこと、好きだよ」
京子「結衣……っ!」
病室のほぼ真ん中。
そこが、二人の少女が抱き合って、一人の少女が涙を流した場所だった…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
綾乃「うっ……うぐっ…」ポロポロ
千歳「綾乃ちゃん…ごめんな…」
綾乃「うっ………うっ…」ポロポロ
千歳「ごめんなぁ……」ポロ
綾乃「うう…うわあああああん…うっ…うわあああああああああああん」ボロボロ
後日 その病室
あかり「結衣ちゃん、本当に…本当に、これでよかったの…?」
結衣「うん。心配かけてごめんなさい、赤座さん…」
結衣「私も、決心が付いたから。新しい船見結衣として、新しい歳納京子と…過ごすことが、きっと今の私にとって一番良いことなんじゃないかって、思うから」
結衣「もう記憶も思い出も無いから…後悔なんて、もちろんしてなくて…」
結衣「今は、とっても……」
あかり「結衣ちゃん…」
数年後 某大学
京子「なあ、結衣」
結衣「なに?」
京子「結衣がさ、階段から落っこちた時のこと、覚えてる?」
結衣「ああ…あの時は大変だったね」
京子「本当に記憶喪失になっちゃったんじゃないかって、私が思い込んでさ…」
結衣「うん……なつか…しいね…」
京子「そういえば結衣、あんまりあれより前の思い出話、しなくなったよね」
結衣「なんかさ、あそこで人生が再スタートしたような気がするんだ」
京子「どうして?」
結衣「京子に告白されたから、かな…」
京子「あっはは!あれは人生の大きな岐路だったのかもしれないって、私も思ってるよ…」
おしまい