1 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 20:32:04.21 fnyOV6piO 1/104

『そうそうデートデート!』

『デートって…私達女の子同士だよりっちゃん!』

『細かいことは気にすんなって! で? いけるの?』

『う~ん…でも勉強が…』

『唯っ! お前までそんなこと言うのかっ!? 澪にもそうやって断られて…私は一体どうしたら…ウウウ』

『ああ泣かないでりっちゃん! わかったよ! 私で良ければ付き合うよぉ』フンス

『オーココロのトモよー。じゃあ駅前に12時なー!』

ガチャ、プッープッー…

「りっちゃん勉強大丈夫なのかなぁ…。まあ準備準備」



元スレ
律「唯~暇ならデートしようぜ!」 唯「デート?」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1281180724/

3 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 20:42:01.40 fnyOV6piO 2/104

11時45分 駅前──

「ちょっと早く来すぎたかなぁ。学校じゃないと遅れない不思議!」

「お、唯。早かったな」

「あっ、りっちゃ~……ん?」

「よっ!」

「誰っ!?」

「私だよ!」

「でも髪下ろして……白いシャツに黒いデニム……首元にドクロのネックレスなんて!」

「りっちゃんイケメンだよ!!」

「よせやい照れる。デートって私から言ったからな。普通じゃ面白くないからちょっと趣向を変えて私が男の子役、唯が女の子役で本当のデートっぽくしてみようかな~なんて……」

「」ドキドキ

「唯?」

「はっ! な、何でもないよりっちゃん!(りっちゃんほんとにイケメンさんだぁ……思わず見とれてたなんて言えない)」


6 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 20:51:20.07 fnyOV6piO 3/104

「じゃあどっから行こっか? お小遣いもらったばっかりだからだいぶ余裕あるよん」

「り、りっちゃんの好きなとこでいいよ?」

「ブッブー」

「へ?」

「今日はりっちゃん禁止な! この格好なら男に見えるだろ? なのにちゃん付けばちょっとさ~雰囲気出ないし?」

「じゃあなんて呼んだらいいのかな…?」

「普通に律、か律君! 律君って自分で言ってて腹いてー」ハハハッ

「じゃあ律君で…」

「律でいいよ。」

「うぅ…」

「ほ~ら、練習。呼んでみ」

「り、り、り、りっちゃ(ry」

「んん~?」
「り、つ……///」
「良くできました」ナデナデ
「なんだか恥ずかしいね///」


7 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 20:58:41.89 fnyOV6piO 4/104

「唯に律って呼ばれるの新鮮だな!」

「そ、かな?」

「なんだなんだ~? さっきから初対面みたいに緊張してさぁ~もしかして惚れたか!」フフンッ

「ち、ちがうよぉ」カァ///

「だよなぁ~…」

「は、早くいこっ! 見たい映画あるんだっぁ」

「わかったわかった。引っ張るな引っ張るな~」

「(なんかわからないけどドキドキする…。何でだろ。わかんないや…)」


12 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 21:07:08.68 fnyOV6piO 5/104

映画館────

「いっぱいあるね!」

「そうだな~! で、唯の見たいのってどれ?」

「え~とね…(考えてなかった…!)」

「あ~う~んとこれっ!」シュビッ

「激突!!ベイブレードMAX 魂は燃えているか!?……だと」

「あわわ(適当に指したらとんでもないことに)」

「悪いな~唯、これこないだ聡と見たんだ…」

「あっそうなんだ。
(良かったぁ…聡君ナイスだよぉ)」

「でも唯が見たいならもう一回見てもっ!」ワナワナ

「他の見ようよ! り、律!」

「そうだな、唯」

「(慣れないよぉ…)」


14 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 21:15:11.41 fnyOV6piO 6/104

結局今話題の洋画を見ることにしました

「えと…Hの8…Hの8…」

「もうちょい上だろ?」

「そだね。ここがEだから…わっ」コケッ

「唯っ!」ガシッ

「えへへつまずいちゃった」

「…全く気を付けろよ~暗いんだから」

「あぁっ!」

「次はどうした?」

「ポップコーンこぼれたぁ」メソメソ

「あ~わた…俺のやるから! ちょっとこれ持って先に座ってろ。係員の人にゴミ袋もらってくるから」

「ごめんねりっ…律…」ウルウル

「気にすんなよ。あ~泣くな泣くな。」ナデナデ


16 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 21:24:46.59 fnyOV6piO 7/104

無事始まるまでにポップコーンの残骸を片付け終え、席につく二人。

「俺一人で良かったのに」
↑慣れた
↓慣れてない
「り、律一人に任せたら悪いよぉ」

隣の席の女「うふふ、ラブラブねあの二人。見てて顔が熱くなっちゃうよ」

「俺もあれぐらい優しくなれたら女さんに…」

「///」
「///」

「あ、は、はじまるよっ」
「お、おう!」

上映されているものをビデオ撮影することは、法律で(ry
 ┏━┓
 ┃●┃
⊃┃ ┃⊂
 ┗━┛

「(これ面白いよね」クス

「(手の動きがなんともいえないよな」

(←は小声


18 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 21:32:02.96 fnyOV6piO 8/104

「待てよ! お前死ぬ気か!?」

「俺が死んでも…覚えててくれるか?」

「マイケールッ!!!!!」

「(マイケル死んじゃうのかな…」

「(死亡フラグ立ちまくりだもんな…」

────────

「俺はどうなってもいいっ! その代わりこの子だけは助けるッ!」
「っ……」
「(唯のやつ見入ってるな~……)」

「(マイケル頑張れっ!)」

映画の光に照らされた唯の横顔をまじまじと眺める律。

「(唯って女の私から見ても可愛いって思うよな。彼氏とかいないのかな)」

「(あぁっ! マイケルそっちじゃないよあぶなーいっ!)」

「っ!!?」
「……」

律は、黙って唯の手に自分の手を重ねた。


19 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 21:37:39.41 fnyOV6piO 9/104

「(り、りっちゃん…?)」

唯も律の方を振り向く。しかし律は既に映画に目を向けていた。
しかし、手は依然として唯の手の上に重ねられている。

「(いくらデートって言っても雰囲気出しすぎだよぉ…。)」

律の横顔を見つめる唯。

「(髪下ろしたりっちゃん可愛いかっこいい…服装次第で女の子になれたり男の子になれたりりっちゃん凄いっ! 胸がちっちゃいからねりっちゃんは)」ニヤニヤ

「(……)」

「(……ん)」

そして私達は、静かに手を握りあった。



21 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 21:42:44.47 fnyOV6piO 10/104

──────

「いや~まさかあそこでジャックスが助けに来るなんてな!」

「燃える展開だったね~!」

「マイケルッ! お前ばっかりにいい格好されてたまるかよっ!」

「りつ似てないよ~それ」

「なにを~っ!」

ぐぅ~…

「そう言えば飯食ってなかったな~」
「お腹空きましたなぁ」

「ご飯に致しますかな唯姫」
「姫だなんて恥ずかしいですわ律王子」

「いざ参りましょうぞっ! マックへ!」
「ええ! よくってよ!」

というわけで近くのマックに行くことに


22 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 21:48:49.38 fnyOV6piO 11/104

「」モグモグムシャムシャ

「も~りつはしたないよぉ?」

「べらんべ~腹が減ってはデートは出来ないでぇ!」

「ケチャップついてるよぉ?」フキフキ

「!!////」ビクッ

「どうしたの?」

「い、いやぁ…なんか唯が女の子だなぁって」

「失礼だなぁ。これぐらい私にも出きるよ」フンス

「唯って彼氏とか出来たら尽くすタイプなのかもな」

「そうなのかな? 居たことないからわかんないやっ」

「ではわたくしが初の彼氏でございますかな?」キランッ

「うふふ、そうだね~」

「ゆい~ナゲットあげる!」
「じゃあ私はポテトをあげよう!」
「物々交換とはいやはや社会の定義ですな!」
「全くですな!」
「ははっ」
「えへへ」


26 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 21:58:22.73 fnyOV6piO 12/104

「次はどこに行こっか!」

「服とか見に行かね?」

「いいねいいね! じゃあデパート行こうか!」タッタッタ

「あんま走るなよ~こけるぞ~」

「小学生じゃないんだからだいじょ(」バタンッ

「全く…」

「(こうしてるとほんとに彼氏と彼女みたいだよな。唯は私のことどう思ってるのかな……って友達意外に何があんだよ)」

「えへへはしゃぎすぎちゃいました!」

「(ドキッ き、気を付けろよ~(その笑顔は女の私でも来るぞ……)」

「せっかくだし手繋いでいこっか!」
「さっきから随分積極的だなおい!」

「デートだからねっ!」
「まあな!」

そうして二人は手を握り合いながら、ニコニコしながら歩いてゆく


28 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:05:59.90 fnyOV6piO 13/104

デパート────

「どうかなりつ!」

「お~可愛いな。似合ってるぞ(何で胸に懐中電灯! とか書いてる服を選ぶのか…)」

「ありがとっ」

「さあ次は律の番だよ!」

「え~……私はいいよ~」

「私?」

「お、俺!」

「よしっ! じゃあ選んでくるねー」タッタッタ
「元気なやつ」フフッ

───────

「って何このヘビメタみたいな服!」

「似合ってるよ~律」
「ありがとな」ワシャワシャ

「ふふふーん」テレテレ

店員「お客様大変お似合いでございますよ! 彼女さんもかっこいいですよね? 彼氏」
「か、彼氏…あっ、はいっ! かっこいいと思います!!」


31 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:15:15.68 fnyOV6piO 14/104

「(唯のやつ照れすぎだろ…)」

店員「お客様、こちらの方も試着してみてはどうですか?」

「あ~(あんな普通のTシャツ来たら胸で女ってバレちゃうな。なんか変な人達って思われない前に撤退しときますか)」

早々と着替える律

「いや、もう帰るとこなんで。唯、帰るぞ~」

「えぇ~もう帰るの~?」

「いいからいいから」

店員「あぁっ、ちょっと待ってくださいっ! これだけ試着(ry」

Tシャツを律に当てる(サイズを計るため)

店員「(あれ、柔らかい…)」

「あっ…」

店員「えっ…あれ? 女の子…?」

「/// 唯、行くぞっ!」
「り、りつ~」
店員「(ああいうの流行ってるのかしら…にしてもイケメンだったわぁあの子!)」


32 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:21:36.87 fnyOV6piO 15/104

「りつ大丈夫…?」

「変な子とか思われなかったかな…?」

「思われないよきっと~。りつイケメンだもんっ」

「イケメンは関係ないだろ~?」

─────

「もう結構な時間だな。最後にどこ行く?」

「公園!」

「賛成っ! お金がかからないことはいいことだー!」

「でクレープ食べよう!」

「世の中お金ですものねー」
「ね~」ニコッ


34 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:28:18.86 fnyOV6piO 16/104

「ママも買い物ぐらい自分で行けばいいのに…はあ…」

「結局勉強捗らなかったし、気分転換に律の誘いに乗っとくんだったな…」

「律……今何してるんだろ」

「─の中──ものね~─」

「ね~」

「(カップルか……女子校の私には無縁だな。彼氏か~…想像つかないな。もし…律が…って何考えてるんだ私はっ!)」


「じゃあ行こっか、唯」ニギッ
「うんっ! 律!」ニギニギッ


ドサッ……

「えっ…? り…つ? 隣にいたの唯だよな……? なんで律が男の格好なんて……」

「凄くカッコよかった……じゃなくて! どうなってるんだ…」
「まさか唯と律…つ、付き合っ…って女の子同士だぞっ! ないないっ!」


38 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:34:42.49 fnyOV6piO 17/104

「でもっ! でもっ! じゃあなんで律が男の格好なんて……しかも仲良く手とか握ってたし……あれじゃまるでデート……」

スゥ───

「あれっ……なんで私泣いてるんだろ……。別に悲しいとかじゃ……ないのに…ヒック……うぇ……りつぅ……なんでだよぉ……」

「(ずっと側にいるのが当たり前だと思ってた…。私が呼んだら来てくれて…私が呼ばなくても来てくれて…律も私のこと好きなのかな?って思ってたのに…)」

「律は…唯が好きなんだな…そっか…いいよ…もう」

「玉子潰れてる…また買いなおさないと…」

「胸が痛い…苦しい…何でだろ…おかしいな…」


41 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:40:07.40 fnyOV6piO 18/104

公園────

「りっつ~あ~ん」

「あ、あ~ん///」モグモグ

「美味しい?」ニコッ

「お、おぉ美味い美味い。唯も食べるか? 男のハバネロ味っ!」

「辛いの苦手だよぉ」

「これを気に克服するんだ! はい、あ~ん」

「ん、ん~……あ~ん……」モグモグ

「どうだ?」

「……辛い~……けど意外と美味しいねっ!」

「だろ~? 食わず嫌いは良くないぞ~? 唯。何でも食べないとおっきくならないぞっ!」

「りっちゃんもちっちゃい(ry」

「何が小さいって?」

「ひぃっ何でもないですぅっ」


43 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:45:56.36 fnyOV6piO 19/104

「」ボー
「」ボー

「平和だな~」
「そうだね~」

「なぁ唯~」
「なぁに~?」

「膝枕してくれない?」
「ひ、膝枕っ!?」

「駄目?」
「べ、つにいいけど…」

「よ~しっじゃあ失礼して」

スカートを直し、照れながら「ど、どうぞ」と唯

「せやっ」
「はうっ」

「これが膝枕か……!」
「ど、どうかな…?」

「唯の太もも暖かくて柔らかいな……」ふぃ~

「恥ずかしいよ律ぅ」
「よいではないか~よいではないかぁ~」「お止めくだされお代官様ぁ~」


47 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:51:34.14 fnyOV6piO 20/104

「なぁ、唯」
「下から見上げないでよぉ/// なぁに?」

「唯の好きなタイプとかってどんなの?」
「好きなタイプ? う~ん…よくわからないけど……優しい人がいいかなぁ」
「ほうほう」

「私ちょっとどんくさいからさ……そういうのふぉろーしてくれる人がいいかな」
「(あ、自覚あったんだ……ちょっとは)」

「ものを溢したりしても怒らないで一緒に片付けてくれたり~」
「ふむふむ」

「一緒にいて楽しくて、話があって~」
「なるほどね~」

「優しくて可愛くてカッコよくて私に合わせてくれて……」
「へぇ~」

「りつみたいな人がいい」
「って俺かいっ」


48 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:54:47.62 fnyOV6piO 21/104

「私ね、りっちゃんのことすごく好きになっちゃった……んだ!」

「……えっ」


「りっちゃん……」

「ちょ、唯、顔が…近っ…」


─────────


51 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 22:58:58.13 fnyOV6piO 22/104

「りっちゃん……」

トロンとした目付きで私を見下ろす唯、唇に残る暖かい体温。
私はしばしその余韻に浸りながら……どうしていいか考えを叩き出していた。

「……唯、」

それ以上言葉が出ず、私達は二回目のキスをした───────


53 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:02:54.14 fnyOV6piO 23/104

「結局5回も……しちゃったね///」

「唯がしつこくちゅっちゅっしてくるからだろ」

「やだった…?」

「嫌って言うか…ほら、私達女同士だし。変じゃん?」

「……そう…だよね」

「……まあしたもんはしゃあないっ! 私も何だかんだで拒否らなかったしさ! まあ同性はカウントしないからな!」

「そうなんだ……りっちゃんに初めてあげれたと思ったのにぃ」

「あっ、唯! あっちにボートあるぞ! 乗ろうぜ!」

「えっ! どこどこ!? 乗ろう乗ろう!」


55 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:07:10.96 fnyOV6piO 24/104

「あっちあっち!」

「うんっ!」

唯が自然に私の手を握る、私はそれを……

「えっ…」

払いのけてしまった────

「あ、あ~もうデートゴッコは終わりにしようぜ? 唯も一々手を繋いだりめんどくさいだろ?」

「……りっちゃんがそういうなら…」

「こ、こっからは普段通りのりっちゃん隊員でありますっ! さあ唯隊員いざ行かん脱出ボートへー!」

「……うん」

私は怖くなったのだ。これ以上唯が近づくのが、そして……澪が遠くに行くのが。

このモヤモヤする気持ちはなんだろう……その時の私には全くわからなかった。

それが、恋であることに。


68 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:26:38.89 fnyOV6piO 25/104

───────

「う~み~は~広いな~大きいな~」

「……」

「って海じゃないし湖だしっ!」ビシッ

「…そだね」

「唯……さっきのまだ怒ってるのか?」

「……」

「……はあ…(咄嗟とは言え悪いことしたかな…)」

湖の上に浮かぶボートに二人だけ。
本当のカップルなら最高のシチュエーションなんだろうけど今の私達にはただの息苦しい箱庭だ。

「ごめんね…りっちゃん」

「な、何が?」

「やだったんだよね? その…私がいきなりちゅーとかしたから…」

「えっ、と…嫌って言うか……びっくりした?って言うか……」


70 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:31:26.11 fnyOV6piO 26/104

「私もね…そんなことするつもりじゃなかったんだ。でもりっちゃんの顔見てたら…なんか…ちゅーしたいって…思っちゃって…変なだよね…?」

「(変だ! 変態だ! と言いたいとこだが…ここは上手くごまかすか)唯~私の唇がたらこにでも見えたのか~? いくら美味しいだからって食べたら…」

「ヒック……」

「(やっちまったァッ!)」ガガーン

「ゆ、ゆいっ! 泣くなよ! ほらっ! 角っ!」

前髪を掴みあげ必死に小鬼アピール

「りっちゃん……ほんと優しいよね…だから…余計に辛いの…わかんない…わかんないよ…」

「ま、まあとりあえず泣き止めよ? な?(私の方がわかんないよ~……)」


74 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:35:58.93 fnyOV6piO 27/104

──────

ボートを降り、私達はただひたすら公園の中を歩いた。

「…」
「……」

「(気まずい……どうしたらいいんだ…。)」

泣かせたのは自分の責任なのだから謝るべきか、しかし何を謝ればいいのか。

「(謝るってことはその……女同士でいいってことを認めるってことになるんだよな…)」

「(そりゃ唯のことは好きだよ!? でも女の子同士だぞ!? それってちょっと…って言うかかなり普通じゃないよな~…。)」

「(もし聡がクラスメートの男子連れてきて、彼氏、とか言い出したらおええええないないない!)」ブンブンッ


75 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:42:45.55 fnyOV6piO 28/104

「りっちゃん」

「ん、あっ、なんだ唯!?」

「もう6時だしそろそろ帰るね」

「そ、そうか? そうか…」

「じゃあね。今日はとっても楽しかったよ! 色々迷惑かけてごめんね」エヘヘ

「唯……」

「明日からは元通りりっちゃん隊員と、唯隊員でっ!」ビシッ

なんでそんな強がるんだよ……

「じゃあね……りっちゃん」

そう言い、踵を返し去る唯。

「ゆ……」

引き留めるか迷った、だけど

唯の目に涙が溜まってたのを見て、私は迷わず駆け出していた。

「ゆいっ!!!」
「りっ……ちゃ…」

唯を後ろから強く抱きしめる。


81 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:49:06.63 fnyOV6piO 29/104

「辛いんなら…言えよ……っぉ!」

「でっ…も…りっち…ゃんに迷惑かけたくないから……ウッ…ヒック…」

「私が原因なら……何でもするから! そんな悲しい顔するなよ…。唯が辛そうな顔するの見るの…嫌なんだ…っ」ぎゅっ

「でも私…変だよぉ…?」

「……変だっていい!」

「……りっちゃんは女の子なのに…好きなんだよ?」

「うっ……それでも……唯がいいなら……いい。」

「りっちゃん……じゃあ…キスして……?」

「……(私は…)」

正しいことをしたんだよな?

澪──────


89 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:58:53.36 fnyOV6piO 30/104

─────

澪ママ「あら? 澪ちゃん遅かったわね」

「うん…ちょっとよそ見してて…玉子割っちゃってさ。玉子のお金は私が払っとくから。ごめんね、ママ」

澪ママ「澪ちゃん…何かあったの? 顔が真っ青よ?」

「な、なんでもないから! 大丈夫だよ。じゃあ部屋に行ってるから…」

澪ママ「澪ちゃん…」

バタンッ

「いっぱい泣いたら…ちょっとは出なくなったかな…涙」

何でだろう。唯だって、私の大事な大事な友達だ。その二人が仲良くしてたって別に……

「……ッ」ズキズキ

痛い……唯と律が一緒にいるところを思い出すたび……どこかが痛くなる……

「ウウッ……」

涙はまだ、枯れてなかったみたいだ


90 : 以下、名... - 2010/08/07(土) 23:59:58.99 fnyOV6piO 31/104

そうして、私達はみんなに黙って付き合う?ことになった。

付き合うって言っても一緒に買い物したり、ご飯食べたり映画見たり、たまに…その、キスしたり。
まあそれぐらいだった。唯もそれで満足みたいだ。ただ二人きりの時はやたら甘えて来るようになった。

撫でてやると目を細めて喜んだりするのを見ると、私も悪い気はしなかった。

そんな日が何日か続き、新学期が始まり、部活が始まってしばらくした時だった。


98 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:05:58.47 iqxUO3ADO 32/104

放課後 音楽室───

「ういーす」
「あっ、りっちゃん!」

「なんだ唯だけか?」
「なんだって…酷いなぁ…」

「ごめんごめん言い直す。うわぁっ! 唯だけなのかぁっ! ラッキー! ヒュッウ!」

「それは喜びすぎだよぉ///」テレテレ

「なんだよ~せっかくやり直したのに」

「えへへごめんねりっちゃん」ニコリ

「てかここじゃ内緒だからな唯? わかってるよな?」

「わかってるよぉ。心配性だねりっちゃんは」

「(最近唯の甘え方が半端じゃないからな…釘打っとかないと澪に…澪に…バレたら困るのか? 私…なんで)」


100 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:12:42.24 iqxUO3ADO 33/104

ガチャ

「~、ってあれ? 唯と律だけか?」

「なんだよ澪っ! 私達だけじゃ役不足だってのか!?」
「しょ~だしょ~だ~!」

「別にそう言うつもりで言ったわけじゃないよ。じゃあ先に練習しよっか」

「真面目ですなぁ」
「いやはや、全くですなぁ」

「わたくしとしてはムギのお茶が来るまでのんびり待ちたいとこなんですけどなぁ」
「いやいや、同意見ですなっ!」

「はっはっは、これは奇遇ですな唯しゃん」
「さすが律しゃん隊員!」

「……ッ! なら座ってればいいだろっ! 私一人でやるよッ!」


104 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:18:13.21 iqxUO3ADO 34/104

「澪ちゃん…?」

「あ、ご、ごめん。ちょっと進路のことでさ…色々あって」

「大変だね…澪ちゃん…」

「他人事みたいに言ってるけど唯だって受験生だろ? 進路のことはちゃんと決めないと後で困ることになるぞ」

「うぅ~…頭がぁ~」

「…ッふぅ、練習するぞ、二人とも」

「は~い」

「……」

「律?」

「あっ、うん! 練習な! するする」

「(バレて……ないよな? でも澪があんなに大声出すなんて…。いくら進路のことだって澪が他人に当たり散らすなんてことするだろうか…? でも私と唯はいつも通りだし…)」


107 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:25:16.78 iqxUO3ADO 35/104

~♪

「なかなか上手に出来たね!」

「…どうした? 律。今日はえらく元気がないなドラムに」

「ん? えっ…あ~そうそうちょっと最近ダイエットしててさ! 力が出な…へなへな…」クタリ

「りっちゃんが倒れたっ!?」

「ダイエットって、律は十分痩せてるじゃないか。私なんて…」

「何いってんだよ! 澪は胸が重いから(ry」

「ふんっ!」ゴチンッ
        「あいたぁっ」

「ごめんね~掃除当番だったの 」

「ムギ~! 助けに船とはまさにこのこと! さあエネルギー補充だっ!」

「……」 ←唯「……」


110 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:31:49.25 iqxUO3ADO 36/104

──────

「ケーキうまぁっ!」

「全く、ダイエット中じゃなかったのか?」

「ふふんっケーキは別腹って言うだろ?」

「先輩それ意味違います」

「ケーキ食べたら練習だからな~」

「わかってるわかってる~」

「りっちゃんお腹空いてるなら私の分けてあげる~」

「!」
「!」
「!?」

「えっ…? い、いいのか? 唯」

「うんいいよぉ。私今日は何かお腹いっぱいだし」
「唯先輩熱があるんじゃっ」ササッ

おでこに手を当て熱を計る梓

「救急車って何番だっけ…?!」アワアワ
「みんな私がケーキあげただけで驚き過ぎだよぉ」


111 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:37:47.78 iqxUO3ADO 37/104

「(唯のやつ~!!!)」

「(いっぱい食べてねりっちゃん)」パチッ

「(今はあのウインクが痛いっ! 悟られない為に取った行動がまさか裏目に出るとは…。唯がこういう雰囲気読めないとこを計算に入れとくの忘れてたぁ…! ここで無理に拒否るのも逆に怪しいし…)」

「じゃあ遠慮なく…」

「」ゾワワッ

「(寒気がっ)」

寒気の正体を突き止める為に辺りを見回すと、それはすぐに見つかった。

「よかったなぁ律。お腹減ってたんだろ? 唯に感謝しろよ~?」ニコニコ

「(な、なんか怖いっ!)」

「…澪いる(ry」
「いらない」


114 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:45:22.63 iqxUO3ADO 38/104

それ以外は特に変わったこともなく、私達は部活を終え帰路についた。

帰り道────

「……」
「……」

「(気まずいでごわす……。いかんいかん思わず関取に…)」

「律、」

「っんっ? 何っ?」

「ダイエットもいいけどあんまり無理しないようにな? 学園祭の前に倒れたら困るだろ?」

「そ、そうだなっ! 今日からほどほどにしとくよ…」

「……」
「……」

「(…変に勘ぐるのやめよう。澪に悪いし…それに私と唯はそんな悪いことしてるわけじゃないし…)」

「澪、今日どうしたんだ? 急に怒鳴ったりして」

「それは…お前達が真面目に練習しようとしないからだろ?」


120 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:51:06.79 iqxUO3ADO 39/104

「それはいつものことじゃんか~」

「いつもだから…色々重なったりして我慢出来なくて…」

「…そっか。ごめんな、わかってやれてなくて」

「ううん。私も悪かったよ。当たり散らすなんて最低だよな…」

「誰だってどうしようもなくなったり…することはあるさ」

誰に言ってるんだろうな、この言葉。

「明日唯にも謝らないとな」

「唯は気にしてないだろ別に。あの性格だし」ニシシッ

「だといいな…」

「絶対そうだって。ムギのケーキ賭けてもいい、なんちゃって」

「……律は、優しいな」


122 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 00:57:48.72 iqxUO3ADO 40/104

「なんだよ急に?」

「昔からさ…。ずっと思ってたんだ。律ってふざけてるふりして実は一番周りのこと見てて…」

「やめろよ~こそばゆい。てか今頃気づいたのか~? 遅いっての」

「律は優しいから…こんな嫌な私のことも…気を遣ってくれて……」

「は、はぁっ? いきなり何言い出すんだよ澪。自虐ネタに目覚めたのか~?」

「私……私……ね…」

「なんだよ、泣いてちゃわかんないぞ?」

「見たんだ…二人が……一緒にいるところ」

「えっ…」

心臓を鈍器か何かで殴られたようにバクついた。
目眩がする、一番知られたくなった人に知られてたなんて…。



123 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:01:51.33 iqxUO3ADO 41/104

「最低だよな…私。ただ二人がデートみたいなことしてただけで嫉妬して……っ! 二人が仲良くしてるのを見ると…痛いんだ…胸が」

「澪……」

違う……。

「私は…律のことが好きだって。その時ようやく気づいたんだ。唯にとられたくないって…ほんと最低で…嫌になる。でも…!」

澪は律に向き直る。涙を拭いながら、

「律が大好きだから…一緒にいたいんだ。ずっと…」

最低なのは、

「澪……」


私だ……。


131 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:09:12.54 iqxUO3ADO 42/104

「ずっと幼なじみで…いるのが当たり前になっちゃってたんだ…。律は何も言わなくても私の側にいてくれるって…勝手に思い込んで…遠くに行っちゃいそうになったらこんなやり方して……グスッ」

「澪……」

「側にいてほしい…律。」

「(駄目だ、今…泣いたら…私は…壊れちゃいそう……)」

「(我慢しろ田井中律。私が軽請け合いしたのが原因だろう……! その私が今泣いて……どうする!)」

「澪……。私にとっては澪も唯も大切な友達だよ。だから遠くに行くとか…そんなことなくて…」

「なんで嘘つくんだよぉっ律! お前達…付き合ってるんだろ?」


135 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:15:01.16 iqxUO3ADO 43/104

「なんで…」

「わからないとでも思ったのかっ! 律とは小学校から、唯とだって二年は付き合いがあるんだぞ! それでほんとにっ……わからないと思ってたのか……」

澪は私にすがり付くように両手を肩にかけ、下に俯き泣いている。
私はそれをどうしたらいいのか……わからなくて、無意識に抱きしめようとしたが

「りっちゃん」

唯がよぎって、私の手はただ役に立たないマリオネットみたいに空中で静止していた。


140 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:21:42.31 iqxUO3ADO 44/104

泣きじゃくる澪をなんとか宥め、家に送り、帰省本能赴くままに家に帰って来た。

「ただいま……」

「あ、姉ちゃんお帰り! ベイブレードやろうっぜ!」ビシッ

にこやかに親指を立てる弟に無償に腹が立ったが家族に当たり散らす気にもなれず。

「はいはい一人でやってなさい」

適当にあしらって二階の自室に転がり込む。

ドサッ

「はあ~……」

ベッドに倒れ込むように寝転ぶと、ふと一言だけ吐き出す。

「いなくなってしまいたい……消えてしまいたい……死んでしまあああああああ」

「姉ちゃんうるさいぞ!」


142 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:28:00.92 iqxUO3ADO 45/104

──────

「現状を確認しよう!」

私はノートを取り出し、唯、澪、そしてわたくし律の名前を三角形に書き、考えに浸る。

「唯は……私が好きだ。間違いないよな……凄い甘えてくるし大好きって言われたし……」

ノートに唯から私に矢印を伸ばす。

「で、澪は……。幼なじみで腐れ縁…だと思ってたけど澪は私のことが好き……私と唯が仲が良いと弱々しく泣くぐらい…」

澪から私に矢印を伸ばす。

「……」

唯 澪
↓ ↓
 律

「……、あ、梓とかムギも入れてみよう!(三人じゃ寂しいしな!)」


145 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:33:46.28 iqxUO3ADO 46/104

「梓と憂ちゃんってどうなんだろ。仲良さそうだよなぁ」

30分後には何故か梓と憂ちゃんの可能性について考えていた。

「だあああああ駄目だっ! 考えがまとまらない! よしっ! こんな時は弟とベイブレードするに限る!」

「お~い聡~! 喜べ! ベイブレードでいざ勝負勝負!」

「来たな悪のベイブレーダーリッツめ!」

リッツ「わはは覚悟しろサトシィ~!」


ブゥンブゥンブゥンブゥン───

着信 平沢 唯


150 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:42:52.09 iqxUO3ADO 47/104

──────

「りっちゃん出ないなぁ…。今日余計なことしちゃったかな…?」

「でも普段でも私達仲良いし…あれぐらい普通だよね」

「お姉ちゃ~んご飯だよ~」

「あ、う~ん」



「電話してたの?」

「ちょっとね。出なかったけど。あっちもご飯かなぁ」ウズウズ

「最近お姉ちゃんなんだかいっつもニコニコしてるよね。何かいいことでもあったの?」

「わかる? まあ何て言うか……まだ憂にはわからないかなぁ~この気持ちは」

「?」

「(りっちゃん~……えへへ///)」


152 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:49:05.27 iqxUO3ADO 48/104

「これ美味しいね憂!」

「えへへ、これはちょっと時間かかるけど今日は上手く出来たかなって思ってたんだぁ。お姉ちゃんに喜んでもらってよかった」

「……決めたよ! 憂! 私に料理教えて!」

「えっ…お姉ちゃんが料理? なんで…?」

「愛だよ、憂っ!」フンス

「えっ…」

「(りっちゃん喜ぶかなぁ…。バレないように朝渡そっと!)」

「(お姉ちゃん…だから楽しそうにしてたんだ…。彼氏…とかかな。お姉ちゃん……取られたら寂しいな…)」


155 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 01:58:47.26 iqxUO3ADO 49/104

次の日───

「結局聡とベイブレード100連戦してしまった…」

「(わかってる…何とかしなきゃいけないことなんて…)」

「でも私には片方を裏切ることなんて…」

「りっちゃんおはよっ」

「う~ん…って唯ぃっ!? なんでこっちの道にいるんだよ!?」

「ちょっと渡すものがあって早起きして待ってたんだぁ」

「渡すもの?」

「はいこれ!」

「弁当? まさか作って来てくれたのか?」

「」コクコクニコニコ

「(これもらったらヤバいだろ……でも…)」

「一生懸命作ったんだよ。ちょっと憂に手伝ってもらったんだけどね」ニコニコ


161 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:07:16.81 iqxUO3ADO 50/104

「(唯には悪いけど断ろう…勿論これが澪でも断ってた。…これ以上関係が縺れたら軽音部崩壊なんてことになりかねない…!)」

「悪いな…唯それは……」

「受け取ってやれよ律。唯がせっかく作ってくれたんだぞ? 断る理由もないだろ?」

「澪……(そりゃ通るよな…同じ通学路だもんなぁ…)」

「大丈夫。私も作って来たんだ。これも食べてくれるよな、律」

「(……)」

「あ~ダイエット明けですっごくお腹減ってたんだよね~! ありがと二人とも! なんか悪いな~気を使わせて!」

「……(いくら澪ちゃんでも…譲れない)」

「……(負けないぞ…唯。律は私が…)」

「(はあ…)」


163 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:12:23.28 iqxUO3ADO 51/104

昼休み────

「ご…ごっつぁんです…」

「(ほんとに二つとも食べるなんて…やっぱり律は優しいな)」

「りっちゃん美味しかった?!」

「う、うん…。特にこの煮物が…」

「それは憂に教えてもらってすご~く時間かかったんだぁ。気づいたら朝になっててびっくりしたよぉ」

「むっ! わ、私の卵焼きだって美味しかったろ? 律!」

「凄く美味しかったよ…はは」

「(どうしたのかしらあの三人…」

「(大体察しはつくけどね…。まあそっとしておいてあげた方がいいんじゃない」

「(りっちゃん……」


168 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:18:32.32 iqxUO3ADO 52/104

─────

「こないだ見に行った映画面白かったよね」

「マイケールッ!」

「似てない似てない」

「」ボー

「憂? どうしたのさっきから。お箸持ち上げたり下げたり。指の運動? ならこっちの方がいいよっ!」チョッキチョッキ

「」ボー

「憂~聞いてる~?」

「……あっ、うん! 学園祭の話だよね」

「それは指の運動の前の映画の前のジャズ研の珍行動の前の話題じゃない」

「う…ごめん。聞いてなくて…ふぁぁ…」

「眠そうだね憂。昨日夜更かしでもしたの?」

「純じゃあるまいし…」

「私がいっつも寝てないみたいに言うなーっ」


170 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:24:59.27 iqxUO3ADO 53/104

「ちょっとお姉ちゃんにお料理教えてたんだ…」

「唯先輩が…料理!?」

「クンクンックンクンッ……恋の匂いがしますなぁ」

「したことないのにわかるんだ」

「乙女にはわかるもんなのよ」

「唯先輩が…料理ねぇ…」

「結局誰に作るか教えてくれなかったの…。それで終わってからも眠れなくて…実はほとんど寝てないんだぁ。ごめんね二人とも…ちょっと…寝るね…」クゥ…

「健気やなぁっ! なんでこんな良い子に彼氏がいないのだろう! こうなったら私がなってやろうか!」

「女の子同士で付き合ってどうするのさ」

「それもそうだね」

「(何か嫌な予感がするなぁ…凄く)」


173 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:30:16.50 iqxUO3ADO 54/104

放課後────

ガチャ

「すみません遅れました~」


「りっちゃんハイどうぞっ!」

「私のも食べていいんだぞ、律」

「寧ろ私のを半分にして食べてくれ…お腹が…がっ」

「(予想的中…。こんなことだろうと思いました…。)」

「」オロオロオロオロ

「(ムギ先輩どうしていいかわからなくてオロオロしてる…。ここは私がビシッと言ってやるです!)」

「先輩達何やってるんですか! ケーキをあげないだのあげるだの! 持って来てくれたムギ先輩に失礼ですよ!」

「あっ…そうだね…ごめんねムギちゃん」
「ごめん…ムギ」
「ごめんな…ムギ(梓ぁ!)」


175 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:37:21.97 iqxUO3ADO 55/104

「(言えないっ! 困ってるりっちゃんが可愛くて仕方ないなんて…! 後唯ちゃんも澪ちゃんもヒナに餌をやる小鳥みたいで…)」ぽわぽわ

「ム、ムギ先輩!? 帰って来てください!」

その後私達は普通に練習して帰ったのだけれど、唯先輩と澪先輩は明らかにドラムベースで合わせたりするし…。
律先輩は律先輩であの走ってたドラムが嘘みたいに鈍足になって…音楽にメリハリが出来なくなってました。

大体のことは察しはつきますけど…このままで大丈夫なんだろうか、軽音部…。
その練習の後で律先輩からメールで呼び出され今駅前のマックにいると言うわけです!
ここは私が一肌脱いで、カムバック軽音部! です!


177 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:42:40.99 iqxUO3ADO 56/104

「ごめんな梓、奢るから好きなもの食べろよ。私は…ほら」

「先輩それ…自分の」

「残して帰ったらお母さんに悪いだろ? だからって捨てたりも出来ないしさ。ちゃんと食べないと…な」

「先輩…優しいですね」

「今はその言葉が痛いよ…」モグモグ

───────

「と言うわけなんだ…」

律先輩から大まかに説明を聞くと、大体予想通りで安心した。
その、何て言うか肉体的な関係というか何言ってるんですか私は!
まあそういうのがなくて安心しました。

「それで律先輩は…どっちの方が好きなんですか?」

「どっちもだよ。同じぐらい好きだよ。」


178 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:48:57.56 iqxUO3ADO 57/104

「じゃあどっちとも付き合えばいいじゃないですか」チューチュー

「はっ!? それが出来たらこんなに悩んでないよ…」

「そんなに二人とも独占欲強いんですか?」

「強い強い唯なんて私じゃなきゃやだよって抱きついてくるし澪は澪で泣き落としだしさ…あの二人にそんな選択肢はないよ…」

「なるほど」モグモグ

「じゃあ二人とも別れたらどうですか? って別に付き合ってるとかじゃないんでしたっけ?」

「いや…唯とは一応付き合ってると言うか……成り行きで」

「そこをもっと詳しくお願いします。ちょっと長くなりそうなのでシェイク追加してもいいですか?」

「…うん、いくらでもお飲み」


181 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 02:54:22.91 iqxUO3ADO 58/104

───────

「ってわけでさ…」

「先輩…優しさもそこまで行くと毒ですよ」チューチュー

「今日の梓はやけに厳しいな…」

「軽音部の未来(学園祭)がかかってるんですから当然です。そうなると難しいですね…。唯先輩と付き合ってるなら澪先輩は切るべきじゃないですか? 唯先輩が先ですし」

「そしたらさ…下手したら澪が部活に来なくなるんじゃないかと思って…」

「あり得ますね…」

「なぁどうしたらいいと思う梓ぁ! 私こういう経験ないからどうしたらいいかさっぱりで…」

「えっ…でも私も…」

「梓は彼氏いるんだろ?」

「えっ…?(いるなんて言った覚えないけどな)」


186 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:01:07.52 iqxUO3ADO 59/104

「去年のクリスマスパーティー来なかったじゃないか。さすがに鈍い私でもそれぐらいはわかるんだぞっ」

「(すっごい勘違いしてる……でもまあいいか、この方が話進めやすいし)」

「ま、まあいたことはありましたけどね!」

「ははぁっ! 梓様ぁ! なにとぞその知恵と経験をこの田井中律めに授けてくださいませぇ!」

「えへんっ! そう言うことなら協力してあげるです。じゃあ一番最初に聞かなきゃいけないことがあるんですけど、答えてくださいね」

「おおよっなんだって答えちゃうよん! 今ならスリーサイズだって公表…」

「律先輩ってレズなんですか?」


187 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:07:41.22 iqxUO3ADO 60/104

次の日 お昼休み────

「はいっ! りっちゃん! 今日は考えて量を少なめにしてきたよっ!」

「私は考えて…今日はスープにしたんだ」

「(ふふ、澪ちゃん一歩後退だねっ)」キランッ

「あんまり熱いと飲むの時間かかるし、まだ暑いからな。ちょっと冷まして持って来たよ。はい、律」

「ありがとう…ありがとうっ」ポロポロ

「泣くほど嬉しいのかっ!?」

「(澪ちゃんの気遣いは五臓六腑に染み渡るで…スープおいし)」

「む~…っ!」

「(押すだけが戦いじゃないんだよ、唯)」キランッ

 ────
「お~やってるやってる」
「はあ…律先輩…スペシャリストに聞くって言ってたけど大丈夫なのかな…」
「……」


191 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:14:56.55 iqxUO3ADO 61/104

放課後────

「(りっちゃんにケーキあげたいけど…ムギちゃんに悪いもんね。せっかく私達の為に持って来てくれたのに…)」

「(梓の言う通りだ。最近ちょっと律に目が行きすぎて周りに目を向けてなかった。確かに律も大切だけど…同じぐらい軽音部だって大事なんだ)」

「(わかってくれたみたいで良かったです。これで律先輩もお腹に余裕が出来るはずです!)」

「(今日は唯の弁当も少なかったし澪もスープだったからな~。自分の分食べても胃袋余裕のよっちゃんだぜ)」

「それにしてもムギ先輩遅いですね~」

「みんな~お待たせ~」

ドンッ!!!!!


192 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:20:55.12 iqxUO3ADO 62/104

「ドンッって! 今ドンッっていったぞムギ!」

「その大きなクーラーボックスなんですか!?」

「みんなお腹いっぱい食べられるようにいっぱい持ってきたの! これがショートケーキにチョコレートケーキ、シュークリームにシフォンパイ! ゼリーやアイスなんかもあるのよ~」

「……(ムギ先輩がラスボスでしたか…律先輩は…)」

「」ウルウル

「(泣いてるっ)」

「いっぱいあるからいっぱいあげていいのよ二人とも♪」

「ムギちゃん…」
「ムギ…」

「じゃあ遠慮なくりっちゃんはいあ~ん」
「あっ…こ、こっちも! あーんだ、律。」

「あ~ん…(もう好きなだけ詰め込んでくれぇぇ)」


196 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:29:24.78 iqxUO3ADO 63/104

「(まさかムギ先輩が更に爆弾を投じるとは…いや本人は悪気はないんだろうけど。寧ろ凄くいい人なんだけれど…)」

「うふふ…(楽しそう)」ぽわぽわ~

「(はっ! まさか百合のスペシャリストって!)」

────────

喫茶店───

カランカランッ

「ようムギ。待たせたか?」

「ううん~私もさっき来たとこよりっちゃん」

「さっきは私の為にごめんな…あんなにお菓子とかケーキ持って来てもらって…」

「私が好きで持って来てるだけだから。気にしないで」

「(軽音部一の良心は間違いなくムギ、お前だっ!)」

「で、りっちゃん話って?」

「うん。実はだな…」


197 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:35:53.98 iqxUO3ADO 64/104

──────

「ってわけなんだ…」

「りっちゃん……」ゴゴゴゴゴ

「ひゃ、ひゃい……」

「二股はダメよっ! どっちか一人にしないと!」

「ですよね…わかってるんですがなかなか…」

「…でもにアドバイス出来ることはあんまりないかも…。私もそういった経験ないから…」

「え~とそれは他の人にあてがあるから大丈夫。ムギに聞きたいのは…そのぉ~…百合?についてなんだけど…」

「百合…?ってなぁに?」

「あれっ? 知らないっ? こう女の子と女の子がこうなって~…まあ簡単に言えば今の私と唯と澪みたいな感じ…(言ってて虚しい…)」

「!? 百合って言うんだ…!」マジマジ


200 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:41:55.80 iqxUO3ADO 65/104

「そ、それでムギはさ…そういうの好きだろ? いっつもそういうのニコニコして見てるの思い出してさ。最近じゃ全くないけど梓と唯の時もよく見てたろ?」

「見てるとこう暖かくなって興奮するよね…!」

「いや…しませんけどー…」

「じゃありっちゃんは百合じゃないんじゃないかしら?」

「あ、それもそうだな…。ってそうだよな! 興奮しないんだから百合じゃないよな! ムギ! ありがとな! お会計払っておくからゆっくりしてくれよ! 私はちょっと会わなきゃならない人がいるから! じゃっ、また明日でな!」シュバッ

「またね、りっちゃん。……あれ? ってことは私は百合なのかしら…」


205 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:52:41.75 iqxUO3ADO 66/104

ブーンシャブンブブンブーン♪

「はいもしもし」

『今から相談したいんだけど…大丈夫か?』

「そう来ると思って既に例の場所(マック)で待機してますよ。今日は頼もしい助っ人もいます」

『助っ人? まあいいや助かる! じゃあ今から行くから!』

「はい。お腹空かせて待ってます」ガチャ

「あんた案外悪どいよね」

「純、恋はお金より大事なんだよ」

「語るじゃーん! あ、後着信変えなよそれ…」

「き、気に入ってるからいいもんっ」


209 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 03:58:51.25 iqxUO3ADO 67/104

───────

「なんだ助っ人って純ちゃんか」

「なんだって酷いですね律先輩!」モグモグ
「純だって女の子なんですよ? 意見の足ぐらいにはなります!」モグモグ

「足しかよ!」

「で、昨日の答え…聞かせてください」

「ああ…!」

「(この雰囲気…ただこどじゃないわ…マックシェイクが沸騰しているっ!)」ブクブク

「純うるさいよ!」
「行儀悪いぞ~」

「すみません…」

「で、答えなんだけど…」

「」ゴクリッ

「私は…百合じゃない」

「…えっ、何の話これ」


211 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 04:04:31.41 iqxUO3ADO 68/104

──────

「ってわけで私が百合かそうじゃないかって言うのを昨日梓に聞かれてさ。わからないからそれっぽいムギに意見聞いたら私はそうじゃなかったから百合じゃないと断定したんだ」

「ムギ先輩と反対なら間違いなく百合じゃありませんね…」チューチュー

「(間違いなくなんだ…)」

「で、私が百合じゃなかったらどうなんの?」

「簡単ですよ。両方ともフってしまえばいいんです」

「……だからそんなことしたら二人とも…」

「何言ってるんですか先輩。一般常識的に女同士で付き合うなんておかしいですよ。ね、純」

「それはうん…おかしいよね(あれ…私ほんとに意見の足にしかなってないじゃ…)」


212 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 04:10:32.23 iqxUO3ADO 69/104

「そうだよな…普通おかしいよな…」

「はい。だから律先輩は一般常識を盾に二人をフってしまえばいいんです。本人にその気がなくてそれが常識的におかしいことなら唯先輩だって気づいてそれ以上何もしてこないと思いますよ」

「そうかな…」

「そうですよ!」

「でもそれやると…三人が元の関係に戻るのは難しそうですね…」

「…そう…だよね」

「律先輩をどう見て良いかわからなくなるんじゃないかな…。それに唯先輩と澪先輩の溝も深まっちゃうし…」

「八方塞がりってわけか……」

「すみません先輩…偉そうなこと言って…」

「いや、梓はよくやってくれたよ。ここからは私一人で何とかしてみるよ。大丈夫、絶対軽音部をギクシャクさせたりしないからさ」


213 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 04:15:49.35 iqxUO3ADO 70/104

ありがとうございました~

「あ~あ、結局払わせるだけ払わせて最終意見があれなんて…律先輩可哀想」

「うぅ…今度私が奢るから…それでチャラにしてもらおう」

「どうするんだろうね…律先輩」

「理想はどっちかが引いたりなんだけど…二人ともああ見えて負けず嫌いだからなぁ。律先輩のどこにそんな魅力があるのか…」

「かっこいいじゃん律先輩。髪の毛下ろしてかっこいいかっこしたら惚れちゃいそう」

「(それで唯先輩も好きになっちゃったんだけどね…。あれ? 唯先輩って…どっちの律先輩が好きなんだろ…)」


237 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 12:02:48.29 iqxUO3ADO 71/104

──────

「……」トボトボ

「はあ……」

「……」トボトボ

立ち止まっては溜め息をつき、またトボトボ歩き出す。端から見れば恋煩いか、とんでもない悩み事を抱えてると思われるだろう。
まさかその両方だとは思うまい。

「これからどうしたらいいんだろ…」

この状況を作り出した張本人は間違いなく私だ。唯を無理矢理デートに誘い、本気になりそうなのが怖くなって離れて……ただ嫌われたくないって思いで安請け合いして……唯の気持ちを全然理解してなかった。


238 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 12:09:46.30 iqxUO3ADO 72/104

澪のことだってそうだ。澪が私に好意を寄せてるは何となくわかってた。
私も澪のことは好きだ。
けど…私の好きと澪の好きは違うんだよな。
澪は幼なじみだからって一緒にいるのが当たり前だと思ってて…でも唯と私が近づいたのを見て自分の気持ちに気づいた…か。

「まさか女同士で付き合うとかでこんな悩むことになるなんてぇーっ!」

「……帰ろう」

またトボトボと歩き始めた律。

「あら、律じゃない。どうしたのこんな遅くに」

「あっ…和。うん…ちょっと梓と話しててさ」

「…そう、あのことかしら?」

「うん…」


240 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 12:18:16.25 iqxUO3ADO 73/104

「和は?」

「私は学園祭の話し合いでね。プログラム決めたり時間合わせたり足りない道具の申請用紙を見て予算と照らし合わせたり…」

「い、忙しいんだな…」

「生徒会長なんてなるものじゃないわね」

「和は凄いよな…。ちゃんと自分の意見とかキッチリ持ってて…迷ったりしなさそう…」

「……。そんなこともないんだけどね」

「そうなの…?」

「ねぇ、律。立ち話も何だから少し話していかない? まだ時間大丈夫ならだけど…」

「時間は大丈夫だよ。私も和に相談に乗ってほしいことがあるしそこの喫茶店でも…」

財布の中を見る律。
閉じる律。

「(お金ない…梓に奢りすぎた…)」

「そんな話し込むわけじゃないから。そこの公園にでも行きましょうか」


241 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 12:30:07.70 iqxUO3ADO 74/104

──────

「9月だからまだ明るいわね」

「そうだな…」

公園のベンチに腰かける二人。

「(唯…)」

ここ(ベンチ)で膝枕してもらったっけ…。
あの時キスされて…。唯はいつから私のことそうやって思うようになったんだろう…やっぱりこの時かな…。

「律、唯と…上手くいってないの?」

「えっ…そんなこと…あるけど…」

「…澪に聞いたわ。付き合ってるんでしょ? 唯と」

「うん…まあ…」

「……。ねぇ。律は唯と澪、どっちを取る気なの?」

「それを今悩んでるんだ…。」

「そうなんだ…。」

「うん…」

「律は卑怯ね」


243 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 12:44:39.95 iqxUO3ADO 75/104

「えっ…」

「だってそうじゃない。二人ともに好きでいて欲しいなんてムシが良くない?」

「でも私だけの問題じゃないし…軽音部に支障が…」

「律。確かにあなたは優しいと思うわ。唯や澪のことも考えて、軽音部のことも考えて、全部上手く行くような答えばかり見つけようとしてる。確かにそうなれば一番いいわね、けどね…唯や澪、それに軽音部のみんなも…そんな軽くないんじゃない?」

「なんだよ、軽くないって」

「あなた一人でなんとか出来るものじゃないってことよ」

「でも原因は私で…」

「違うわ。律を好きになった唯や澪にも原因はあるんじゃない? そしてそれは軽音部全体の問題でもある」


245 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 12:54:37.66 iqxUO3ADO 76/104

「軽音部全体の問題…。」

「さっき梓と話したって言ってたけど、それって律、あなた個人の相談としてでしょ? 軽音部として話し合いなら三人、いや…みんなで話し合った方がいいものね」

「それこそ綺麗事だよ。みんなの前で唯や澪になんて言えばいいんだよ…。軽音部に支障が出るから私にはもう関わるなって? そんなこと言えないよ」

「あなたにとってあの二人の問題はまだ何かが傷つかなくても何とかなる、ってレベルの問題としか捉えてないのね。いいわ、澪には内緒にされてたけど。…澪は本気だったわよ。律と離れるぐらいなら、軽音部をやめるって言ってたわ」

「嘘だろ…?」

じゃあなんだ…?
私が唯を取れば澪は…いなくなるのか…?


246 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 13:00:22.29 iqxUO3ADO 77/104

「そんなのズルいだろっ! そんなんじゃ…脅しと変わらないよ…」

「それだけ本気ってことよ、澪は。多分唯も同じよ。自分が選ばれなくて、澪とあなたが仲良くしてるのを見てるなら…」

「やめてくれっ! やめてくれ…」

「……」

しばらく沈黙が流れた。私はどうしていいかわからず、ただ俯いて涙を堪えていた。
次々に浮かぶ軽音部での思い出と、唯や澪との思い出が、涙を押し出す。

「うっ……うぅ…」

背中を優しく撫でてくれる、和の手。さっきからの厳しい意見は真剣に相談に乗ってくれてるからこそだろう、と理解した。


249 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 13:13:11.88 iqxUO3ADO 78/104

「でも意外ね。澪はともかく…唯は普通に男の子の方が好きだと思ってたのだけれど」

「どういうこと…?」

「唯とは幼稚園からの付き合いだけど、確かに可愛いものが好きでスキンシップなんかはよく取ったりするのだけど…相手を困らせてまで女の子を好きになるとは思えないのよね」

「そうなのか…?」

「まあもっとも私が魅力がないだけなのかもしれないけどね。律はほら、中性的な感じだし…男の子格好したら」

「ちょっと待った!!!」

「どうしたの?」

「私が女の子っぽくないって言うのはここは置いといて…。唯って……その、百合じゃないのか!?」

「百合…?」


250 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 13:22:34.22 iqxUO3ADO 79/104

「」カクカクシカジカ

「あぁ…女の子同士好き合うことね。学校じゃ良く聞くけど…ずっと華の名前かと思っていたわ」

「ですよねー…」

「う~ん…多分違うんじゃないかしら。少なくとも今までにこんな反応見せたのは律だけよ」

「そっか…百合じゃないのか……じゃあ何で……」

記憶を思い起こす。

あれから唯と何回かデートしたけど…確かキスをせがまれたりしたのは…私がいつも髪の毛下ろして男っぽい(最初みたいに別段意識はしたわけじゃない)服を着てた時…しか…。

「あ、あああ、あああああっ!」

「一人で納得してないで話してよ」


251 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 13:32:14.69 iqxUO3ADO 80/104

───────

「で、男の格好して…」
「はい…」

「唯が溢したポップコーンを片付けてあげたり…」
「はい…」

「手を握ったり…」
「はい…」

「膝枕したり…」
「さようで…」

「それが原因ね。今まで男の子と付き合ったことがない唯がいきなり理想過ぎる彼氏(律)とデートしたせいでそれを恋だと勘違いしてるのよ。いえ、恋なのは間違いじゃないけど唯が好きなのは多分…」

「男装した私か…!」

「元々律とも仲がいいし、接してる内に境目がわからなくなったんでしょうね」

「でも普通そんなことになるか~?」

「生まれたての雛鳥と同じよ」

「唯は雛鳥かよ」


254 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 13:39:11.00 iqxUO3ADO 81/104

「それほど男装したあなたが魅力的だったのよ。私だってそんなことされたら…」

「の、和さん?」

「冗談よ。まあそう言うことなら解決策はあるわ」

「ほんとか!?」

「えぇ。澪も唯が諦めたら軽音部もやめないだろうし、いつも通りに戻るんじゃないかしら?」

「そうだといいんだけど…」

「最悪澪と付き合えばいいのよ。唯も勘違いに気づけばあなたと澪に嫉妬することもないと思うわ」

「さすが和、生徒会長だな! 何とかなる気がしてきたよ! ありがとな!」

「いいのよ。(それにあなたと唯が付き合うのを澪以外にもよく思わない人もいるし…ね」

「ん? 何か言った?」
「いえ、じゃあ帰りましょうか」


260 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 13:50:46.33 iqxUO3ADO 82/104

「こんな時間まで付き合わせてごめんな和」

「誘ったのは私からだし気にしないで」

「この恩は今度マックで返すよッ!」

「ふふ、期待してるわね」

────

「じゃ、私こっちだから」
「うん、ほんとありがと」

「友達じゃない。また何かあったら相談して」
「和もな。私じゃ頼りないかもしれないけど…唯だけじゃなくて私達も和のこと大切に思ってるから」

「」ドキッ
「和?」

「な、なんでもないの。ありがとう律。」

イソイソと眼鏡を直す和。

「(唯が勘違いするわけね。あんな笑顔であんなこと言われたら…期待しちゃうじゃない、なんてね。)マック楽しみにしてるわね、律。」

「まかせいっ」


262 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 14:01:22.88 iqxUO3ADO 83/104

──────

ブーンシャブンブブンブーン♪

「(誰だろ。律先輩メール…)」

明日 全 解決
放課後 純 共連

「なんでこんな暗号みたいなメールを…。共連ってことは純も連れてこいってことかな。メールしとこ」

──────

ブーンシャブンブブンブーン♪

「イケメンなんちゃら~。梓かー。何々~と」チョッキチョッキ(指の運動)

明日 放課後 音楽室

「……、果たし状!?」

純的解釈 最近生意気にも指の運動をしてるようだけどそろそろ目障りになってきたわ! 明日音楽室にて指の運動の決着をつけようじゃないっ

「梓め……!」ポチポチ



265 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 14:06:57.94 iqxUO3ADO 84/104

──────

ブーンブンシャカブブンブーン♪

「純からだ。

今までの 成果 見せてやる
チョッキ チョッキ ∨ ∨

「……伝言ゲームってこうやって乱れて行くんだな…」

そしていよいよ、翌日を迎える────


270 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 14:17:30.02 iqxUO3ADO 85/104

昼休み─────

「律、今日はサンドイッチにしたんだ。これだと私の分から適量あげれるからいいかなって思って」

「りっちゃんにっころがし食べて~♪」

「(始まったわね…さて、律はどうでるのかしら)」
「(わくわく)」

「ありがとう、澪、唯。」パクパクモグモグ

「(普通ね、放課後に賭けるのかしら)」
「(暑くなってきたわぁ)」フンムーッ!

「唯、澪。今日は私も自分で作って来たんだ。いっつももらってばっかりじゃ悪いから食べてくれよ」

「(上手いわね…)」

「そんな気を遣わなくてもいいのに。でもせっかくだし…卵焼きもらっていい?」

「(澪は普通ね…それはそうよね、澪が好きなのは今の律だもの。ただ唯は…)」
「(上着脱ごうかしら…ッ!)」


271 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 14:25:16.28 iqxUO3ADO 86/104

「む~……」

「(ふふ、面白くなさそうな顔してる。お弁当作ってくるなんて女の子らしいことされてちょっと嫌なのね。やっぱり唯は男っぽい律のことが好きなのね)」
「で…、ムギなんで脱いでるの?」
「えっ……ちょっと暑くて///」ヌギヌギ

───────

「な~んだ指の運動の果たし合いじゃないのか」チョッキチョッキ
「純じゃ勝負にならないよ」チョキチョキチョキチョキ

「負けたぁっ」
「ふふんっ」
「……」

「憂、最近ぼ~としてばっかりだね」

「えっ、そんなことないよ?」

「安心して憂! 今日お姉ちゃんは返ってくるからっ!」


273 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 14:36:22.37 iqxUO3ADO 87/104

「ちょっと純!」

「どういうこと…?」

「憂にも聞く権利はあるでしょ? 仲間外れは良くないぞっ」

「そんなつもりじゃなかったんだけど…えぇっと…」

─────

「そうだったんだ…」

「ごめんね憂…。隠すつもりじゃなかったんだけどさ…」

「でも安心してっ! なんか今日戻ってくるらしいから!」

「純はまたそんな安請け合いして…。」

「そっか…お姉ちゃんの相手って律さんだったんだ。良かった…」

「えっ…良かったの?」

「てっきり男の人かなって思ってて…ちょっと心配だったの。でも律さんなら信用できるし、お姉ちゃんとお似合いだよ。私がちょっと寂しいの我慢したらいいだけだもんね…」

「憂…」
「だーかーらー! 戻って来るって! 律先輩がそう言ってるんだから間違いないよっ!」


278 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 14:57:07.76 iqxUO3ADO 88/104

そして放課後────

「連れてきましたッ!」
「(ジャズ研より面白そうだしこっち来て正解だよね!)」

「あれ? 純ちゃん? どうして軽音部に…」

「私が呼んだんだ。ありがとう、梓」

「いえ…あれ? 和先輩まで…」

「申請用紙を回収するついでにお茶をもらっちゃって…(私のフォローが必要かもしれないしね。心配で生徒会の仕事に手がつけられないわ)」

「今日大人数だねッ!」

「お菓子ならいっぱいあるから大丈夫よ唯ちゃん!」

「(さて…役者も揃ったことだし始めるか…。)」

「(憂…来なかったね」
「(うん…。憂なりに唯先輩に気を遣ったんじゃないかな。唯先輩にあれこれ言いたくないんだよ。自分が寂しくなったとしても…ね」


282 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 15:15:26.38 iqxUO3ADO 89/104

「みんな、聞いてくれ」

唯、澪を始め
紬、和、梓、純も律の方を向いた。

「今日は言っておかなきゃいけないことがあるんだ。私と唯、澪のことだ」

「私と唯は付き合ってる」

全員知ってる為当然誰も驚かない。ただ澪は聞くのを嫌そうに目を附せた。

「りっちゃん…、内緒にしとくんじゃなかったの?」クネクネ

嬉しいに辺りを気にしながら言う唯、そんな唯を一瞥した後、律はこう続けた。

「けど、それも今日で終わりだ」

「えっ…」
「!!」

「……」

「(まるでブレーキの壊れたトロッコみたいに下ってくしかないんだね…もう!」

「(純ちょっと静かにして」


284 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 15:25:35.15 iqxUO3ADO 90/104

「それってどういうこと…?」

「言葉通りの意味だよ、唯。別れよう…。」

「な……んで…?」

今にも泣きそうな顔で問いかける唯。

「(このまま唯に嫌われたっていい…元のままなんて甘いことはもう考えてないよ…和。)」

律はチラッと和の方に目を向けると、和はただコクリと頷いた。

「(別れるなんてダメよっ…って言いたいけどりっちゃんから黙って見守ってくれって言われたから…。りっちゃん…信じてるからね)」

「このままじゃ軽音部が軽音部じゃなくなるからだよ、唯」

「じゃあ部室ではちゃんとしてるからぁ…」じわぁ

「そういうことじゃないんだ、唯」


286 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 15:32:44.10 iqxUO3ADO 91/104

「やだよっ! りっちゃんと別れたくない…別れたくないもん」

「(いっぱい泣かせてごめんな、唯。私の思いついた冗談なんかで…そんなに思わせてごめんな。嫌いになってくれて構わない…私は唯のこと…ずっとずっと大好きだけど…っ)」

「唯……お前が好きなのは……」

どんなに嫌われたって我慢するから……
だから……終わりにしよう

「私じゃない。唯が好きなのは男の格好をした私、なんだ。でもそれは本当の私じゃない。本当の私は普通の女の子なんだよ、唯」

「……そんなこと知ってるよ」

「それはどうかしらね」

「和ちゃん…」


287 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 15:40:19.45 iqxUO3ADO 92/104

「今日律がお弁当を作って来たとき唯、あなた嫌がってたわよね?」

「っ! …それは」

「あなたは律が本当の彼氏になればいいのにって思ってたんじゃない? だから女の子っぽい律を嫌がった…違うかしら?」

「そんなことないもんっ……そんなこと…」

「唯。律はね、普通の女の子なの。私達と同じね」

「……」

「あなたは勘違いしてたのよ…。確かにけしかけたのは律の方からだけど、そこまで本気になるなんて誰も思わないじゃない?」

「……」

「だからね、唯。もうあの律のことは忘れて…今の律を、元の二人に戻って。それが軽音部みんなの為なの」


295 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 15:52:36.78 iqxUO3ADO 93/104

「忘れ……」

『あ~わた…俺のやるから! ちょっとこれ持って先に座ってろ。係員の人にゴミ袋もらってくるから』

「忘れるなんて……」

『気にすんなよ。あ~泣くな泣くな。』ナデナデ

「出来ないよぉ……」ポロポロ

「唯……」

「甘えるのもいい加減にしなさい、唯」

「うっ…ぅぇ……?」

「律はね、今のあなたよりもっともっと悩んで、みんなに相談もして…それでもやっぱり軽音部が捨てられなくて…辛くて辛くて仕方なくても唯にこう言うしかなかったのよ。その気持ちをわかってあげなさい」

「和…」


302 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 16:03:24.92 iqxUO3ADO 94/104

「でもぉ…でもぉ…」

「唯……(駄目だ…ここでまたあの時みたいに優しくしたら駄目なんだ。私の優しさが唯を苦しめてたってまだわからないのか私はっ!)」

「唯先輩。私だって…唯先輩のこと、大好きです」

「えっ…あずにゃん?」

「(よ、予定にあったっけそんなの!」

「私も唯ちゃんのこと好きよっ!」

「ムギちゃん…」

「勿論私もよ、唯。唯はずっと律を見てたのかもしれないけど、唯のことを見てる人もいるのよ。なのに振り向いてもくれないなんて、寂しいじゃない?」

「和ちゃん…」

「だからね、唯…」


「わっ、私も唯先輩のこと好きですっ」

「(あれ…なんか乗り遅れた…)」


304 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 16:13:31.24 iqxUO3ADO 95/104

「私も…唯のこと嫌いになったわけじゃないから」

「澪ちゃん…」

「私もだよ、唯。大好き、だけど付き合うとか…そういうのじゃないんだ。私はいつまでも唯にいないものを追い続けて欲しくないんだ。いくら男の格好したって…あれは私で…」

「りっちゃん…」

「戻ってこいよ、唯。前にいた場所はそんなにつまらなかったか?」

唯はしばらく目を閉じると、何かを思い出したように目を開けた。

「ううん。とっても楽しかった。りっちゃんと澪ちゃんとムギちゃんとあずにゃんと……みんなで過ごして来たこの場所を…私は壊そうとしてたんだね」

「そんな言い方するなよ。唯だけが悪いわけじゃないんだから」


305 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 16:22:09.24 iqxUO3ADO 96/104

「だから澪、お前の返事も…NOだ」

「……そっか」

「勘違いしないでくれよ。私はいつまでも一緒にいられる幼なじみの澪を選んだんだ。付き合ったりじゃ別れて、それでおしまいなんて嫌だからな」

「律……! うん、私も…いつまでも一緒の幼なじみの方がいい」

「それに女の子同士で付き合うなんて変ですしねっ! うんうん!」

「(やっぱり変なのかしら私…)」

「(出番終わったし…というかなんでムギ先輩落ち込んでるのッ!?)」

「これで一件落着かしら、じゃ……私、生徒会…行くから」

「ありがとう…和。」

「気にしないで」ニコリ

バタンッ


307 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 16:28:06.68 iqxUO3ADO 97/104

「あっ…申請用紙忘れてる」

「持っていってくるよ。和が忘れ物なんて珍しいな」

「ああ見えて一番いっぱいいっぱいだったのかもな」

「……」

「唯、私のこと嫌いか?」

「そんなことないよ。……りっちゃん」

「そっか(この溝は…私が埋めないと。どれだけかかっても…絶対に)」

「(ふ~なんとかなったね~梓」

「……」

「(梓?」

そうして軽音部はまた元通り、になったのかは不明だが、解散の危機は間逃れたのだった。

後日──────


308 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 16:35:41.00 iqxUO3ADO 98/104

屋上─────

「あっ、いたいた。梓~探したよ?」

「純。どうしたの?」

「どうしたの? じゃないでしょ~? お昼ご飯も食べないでこんなとこ来てさ」

「うん…ちょっと考え事してた」

「考え事ね~、風つよっ」

屋上の周りには安全対策の為か腰ぐらいまでの柵があり、梓はその柵の上に両肘をつけながら、遠くを見ていた。
ビュービューと強い風が梓の髪を遊ぶように揺らしている。

純はその横に同じように肘をかけ、梓の方に向き直る。

「なんかあったの? って言うかあの時から何か変だよ~梓」

「うん…。恋って難しいなって、思ってた」


309 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 16:42:40.46 iqxUO3ADO 99/104

「何を言い出すのかと思えば…梓の口から恋、だなんて。鯉の方があってるよ! 梓猫っぽいし食べちゃって…」

「好きなだけでも駄目なんだよね…」

「シカトかいっ。まあね~」

「唯先輩も澪先輩もただ律先輩が好きだっただけなのに…それで壊れてしまうものもあるんだなって……」

「うちは女子校だからそういうのはないけど、共学ならあるんじゃない? 同じ部活で付き合っててさ、けど別れて居ずらくなって…結局どっちかが部活やめちゃうみたいな」

「別れたりしたらその二人の空気で全体の空気が歪むもんね…。」

「そうそうー」


310 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 16:50:12.65 iqxUO3ADO 100/104

「ほんとに良かったのかな…あれで」

「さあね。でも同性で付き合うってことはそんな簡単なことじゃないと思うよ。あのままあの二人のどっちかと付き合ってたら…きっと辛い思いをしてたんじゃないかな」

「なんか純詳しいそうな感じがしたんだけど気のせい?」

「気のせい気のせい。さっ、ご飯食べにいこう」

「うん」

「梓、私達はずっと友達だよね」

「…どうかな?」

「いけず!」

「来年軽音部入ってくれるならいいよ」

「う~ん迷う~」

───────


313 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 16:59:58.65 iqxUO3ADO 101/104

─────

「お姉ちゃん料理やめたんじゃなかったの?」

「うん~。せっかく覚えたのに勿体無いかなって」

「そっかぁ…」

「憂、好きって難しいね」

「うん…。」

「憂は私のこと好き?」

「うんっ。大好きだよお姉ちゃん」

「私もぉ。うん、これでいいんだよねっ」

「??」

───────


314 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 17:07:14.70 iqxUO3ADO 102/104

ある日の日曜日───

ブーンブンシャカブブンブーン♪

「ん~誰だ?」

「もしもし」

『わたしだよんっ』

「唯か? どした?(あれ以来あんまり話してないんだよな…)」

『澪ちゃんもムギちゃんもあずにゃんも和ちゃん用事あるからって。だからりっちゃんに電話したの! 暇ならデートしましょうぜぃ?』ふふふ~

「えっ…(唯のやつ諦めてないのかな…)」

『勿論普通の格好でいいから! じゃああの公園に12時ね!』

「おいゆっ…」

ガチャプッープッー

「どうしよっかな…行かないわけにもいかないし…またあんなことにはならないと思うけど…」


315 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 17:17:53.49 iqxUO3ADO 103/104

公園────

「唯、待ったか?」

「前は15分前だったのに今日はギリギリなんて酷いよりっちゃん!」

「ごめんごめん…」

「じゃあとりあえずお弁当から食べよう! 私作って来たんだぁ」フンスッ!

「(唯のやつどういうつもりだ…? これじゃまた前と同じことに…)」

「あのな、唯…」

「りっちゃん、私考えたんだ。好きって意味」

「…へぇ。で、答えは出たのか?」

「簡単だよぉ。一緒にいる→楽しい→この人と一緒にいたら楽しい、それは=好きなんだよ!」

「なるほどな」

「同じ好きでもいっぱい意味があって。付き合うとか…愛してるとか、前のは多分そう意味だったんだと思うの。私は男の格好をしたらりっちゃんを愛してたんだと思う」


316 : 以下、名... - 2010/08/08(日) 17:31:46.81 iqxUO3ADO 104/104

「そっか…」

「でも今は違うの。軽音部の部長であるりっちゃんが好きなの! ただ一緒にいて楽しくて…だから好きなの。これはいけないことなのかなぁ…?」

「…ううん。私も多分、いや、みんなが他の軽音部のみんなを思う好きも、そんな感じだと思う。だから間違ってないと思うぞ!」

「そっかっ! 良かった! じゃあお弁当食べようっ」

「おぅ! タコさんウインナー襲撃ーっ」

「タコさんが~っ」

そうだ、私は難しく考え過ぎてたんだ。
今回のことはちょっと好きって言う種類が変わったり、求めすぎて溢れたりしただけだったんだ。
好きなことがいけないわけじゃないのだ。

そしてそれが正しいのか、悪いのか、その答えはこんなにも近くにあったのだから

「唯~映画見に行こうぜっ」ベイブレードなっ
「いいよっ」フンス

私達の日常の中にいつも、いつも、好きが満ちている

おしまい


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