女「あーあ、有名人になりたいなぁ」
女「有名になって、NHKの番組に出演したいなぁ」
男「だったらいいものをやろう」
女「え、なになに?」
男「この棒を見てくれ」
女「やだ……太くて長くて硬い……」
男「君ならきっと、この棒を使いこなし、有名人になれるはずだ!」
女「うん、やってみる!」
元スレ
男「この棒を見てくれ」女「やだ……太くて長くて硬い……」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1591434439/
女(といってもこれ、どうすればいいんだろ?)
女「こうかな?」ブンッ
女「お、いい感じ」
女「こう突いてみたり」シュッ
女「振り回してみたり」ブンブン
女「振り下ろしてみたり!」ブオンッ
女「うん、だんだんコツが掴めてきた!」
男「調子はどうだい?」
女「だいぶ上達したよ!」
女「そりゃっ!」ブブブブンッ
女「せいやっ!」ビュババババッ
女「ハイィィィィィィッ!!!」ブンブンブンブンブンッ
男「想像通り……いや、想像以上の上達ぶりだ」
女「ありがとう!」
全日本棒術選手権――
審判「始めっ!!!」
女「ハイッ!」シュッ
相手「くっ!」
女「ハイッ! ハイッ!」ブンブンッ
相手「くううっ……!」
女「イヤァァァッ!」シュバッ
ピタッ…
相手「ま、参りましたァ!」
審判「勝負あり!」
女「やった、優勝できたわ!」
女「……ん?」
「泥棒だー!」
「屋根の上を飛び跳ねてる!」
「ネズミ小僧かよ!」
泥棒「へへっ、誰も俺様には追いつけねえよ!」ピョンピョン
女「ふむ……」
女「とりゃあっ!」タタタッ
ガッ
ピョーンッ
女「こんばんはー」スタッ
泥棒「な……! 棒高跳びの要領で!?」
女「成敗!」ブオンッ
バキッ!
泥棒「ぐはぁっ……!」ドサッ
ザァァァァァ……!
幼女「た、たすけ……」バシャバシャ
「大変だ!」
「女の子が川に流されてる!」
「どうやって助ければ……!」
女「ここは私の出番ね」
ザァァァァァ……!
女「はっ!」シュッ
幼女「あうっ!」
女「捕まえた」ヒョイッ
幼女「お姉ちゃん、ありがとう!」
ワァァァァ… ワァァァァ…
女「“箸にも棒にもかからない”という言葉があるけど、私の棒はどんなものでも引っかけるのよ」
女「そろそろ……あれができるかもしれないわね」
ブンブンブンブンブンッ!
女「お、いけそう」
ブンブンブンブンブンブンブンッ!
女「もう少し……!」
フワッ…
女「やった! 棒をプロペラ代わりにして飛べるようになったわ!」
ブンブンブンブンブン…
女「空の旅は快適だわ~!」
少年「ねーねー」
女「ん?」
少年「桃白白やってー!」
女「桃白白?」
少年「うん、漫画に出てくるこういうやつ」サッ
女「ふーん、柱を投げて、自分で飛び乗るのか」
女「いいよ、やってあげる!」
少年「ワーイ!」
女「とりゃっ!」ブオンッ
ギュゥゥゥゥゥン
女(あの棒に……飛び乗る!)ピョーンッ
女「できた!」スタッ
ギュゥゥゥゥゥゥン…
少年「すごいや!」
ザクッ
女「だけど最大飛距離は10km程度ってとこね……まだまだだわ」
DQN「へっへっへ、金出せや」
学生「ひいい……!」
女「カツアゲなんてやめなさい」
DQN「あ? なんだてめえ?」
女「あなた、もう行っていいわよ」
学生「は、はいっ!」タタタッ…
DQN「あっ、せっかくの金づるを……! このクソアマァ!」
女「人様から金をたかろうとするその根性……文字通り叩き直してあげるわ」
DQN「やっちまうぞ、コラァ!」ダッ
女「ハイイイイッ!!!」
ボゴォッ!
DQN「ぶげえっ!」
DQN「あ、あうう……すいませんでした……」
女「今からでも遅くないわ。悔い改めて、人生をやり直しなさい」
DQN「もう……おせえよ」
DQN「俺は散々悪さして生きてきて、人生を棒に振っちまったんだ……」
女「そんなことないわ」
女「私のサブ棒を貸してあげる。これを振りなさい」サッ
DQN「へ……?」
女「早く!」
DQN「えいっ、えいっ!」ブンッ ブンッ
女「どう?」
DQN「す、すごい……。一振りするごとに心が浄化されて……」
女「人生を棒に振るのはよくないことだけど……」
女「棒を振る人生、というのはなかなかいいものでしょう?」
DQN「はいっ!」
女(勢い余って、つい道場を建てちゃった)
女「みんなー! 今日も元気よく棒を振るわよー!」
弟子A「はいっ!」
弟子B「はいっ!」
DQN「はいっ!」
学生「はいっ!」
幼女「はいっ!」
少年「はいっ!」
ブンブンッ ブンブンッ ブンブンッ
男「調子はどうだい?」
女「絶好調よ!」
男「それはよかった。君に棒を渡したかいがあったよ」
TV『ここで臨時ニュースです』
男「ん、なんだろ?」
TV『太平洋で発生した超巨大竜巻が、日本に迫っています』
TV『このまま上陸すれば、日本は丸ごと吹き飛ばされ、滅亡するでしょう』
男「なんだって!?」
女「これを止められるのは……私しかいないわね」
男「だったら……僕は近くで見物させてもらうよ」
ビュゴォォォォォォォォッ!!!
男「すごい竜巻だ……」
女「いくわよ……」
男(いったいどうやって止める気だ……? 相手が風じゃ棒で殴っても……)
女「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」ブンブンブンブンブン
男「おおっ、棒を回転させて、竜巻を作ってるのか!」
女「そう、逆回転の竜巻をぶつけてやれば、打ち消せるはずよ!」ブンブンブンブンブン
男「なるほど!」
女「ハイヤァァァァァッ!!!」
ビュゴォォォォォォォォッ!!!
バシュッ!!!
ボシュゥゥゥゥゥゥゥ…
女「相殺……完了」サッ
男「お見事!」
しばらくして――
男「おーい!」
女「どうしたの?」
男「ついに君の夢が叶う時が来たよ!」
女「夢?」
男「君に、NHKの番組から出演のオファーがあったんだ!」
女「えっ、ホント!? 紅白? 大河ドラマ? それとも連続テレビ小説?」
男「えぇっと、これは……」
…………
……
女「えぇと……あの……分かりません!」
チコちゃん「ボーっと生きてんじゃねーよ!!!」
女「棒と生きててごめんなさい……。この棒はもはや私と一心同体だから……」
チコちゃん「棒じゃねーよ!!!」
― 完 ―


