男「ワンピースのルフィに憧れて海賊になったけど……」
仲間A「今日はあの漁村を狙うぞ!」
仲間B「なにもかも奪い尽くせ!」
仲間C「女はさらっちまおうぜ……あ、ブスは処刑で!」
ギャハハハハハ…
男「……」
男「なーんか違うんだよなぁ……」
元スレ
男「ルフィに憧れて海賊になったけど……なーんか違うんだよなぁ」仲間「村を焼け!金を奪え!女を襲え!」
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ヒャッハー! シネシネー!
ガガガガガガ… ガガガガガガ… パァンッ! パァンッ! ガガガガガガ…
キャァァァァァ… ヒィィィィィ…
男「もっとこう……かっこいいのを期待してたっていうか……」
村人「た、助けてくれぇ……」
男「……」パァンッ!
村人「ぐはっ!」
「ガキが逃げたぞー!」
「見せしめだ! 殺しちまえ!」
少女「はぁ、はぁ、はぁ……」タッタッタ…
男「……ん」
少女「こっちにも……海賊が……!」
男「……」
少女「ひいいいいい……!」ガタガタ
男「……」
男(ルフィだったら、こんな女の子を殺したりしないだろうけど……)
「なにやってんだ新入り! とっとと殺せ!」
男「悪いな、嬢ちゃん」
パァンッ!
仲間A「よし、まとめて焼いちまえ!」
仲間B「ヒャッハーッ! よく燃えるぜ!」
ゴォォォォォォ… メラメラメラ…
男(50人は暮らしてた漁村が、一時間足らずで壊滅か)
男(なーんか違うんだよなぁ……)
――――
――
少年時代、俺は漫画『ワンピース』が大好きだった――
少年「わぁっ、ルフィってかっこいいな!」
少年「ゴムゴムのピストルー!」シュッシュッ
少年「ぼくも大きくなったら、こういう海賊になりたいな!」
教師「進路は……決めてあるのか?」
男「はい、俺は海賊になります!」
教師「え!?」
父「なにバカなこといってるんだ!」
母「海賊なんてなれるわけないでしょ!」
男「止めないでくれ、俺は絶対海賊になる!」
外国語を独学で学び、家を飛び出した俺は、海外の“海賊のメッカ”とも呼ばれる地に向かい――
男「お願いします。俺を仲間に入れて下さい」
海賊「へいボーイ、俺たちを舐めてるのか?」
海賊「死にたくなきゃ、とっとと消えな。おっと有り金も置いてな」チャッ
男「お願いします!」
海賊「ハハ、銃口向けられても引かないとは……こりゃクレイジーだ」
男(今の俺は最高にワンピースのキャラっぽいぞ……!)
こうして海賊になったのはいいが、やることといえば――
「よし、あの船を襲うぞ!」
「おう!」
「皆殺しにしろ! 船は死体ごと沈めちまえ!」
ガガガガガガ… ガガガガガガ…
男「……」
男(これじゃまるで悪役だ)
――
――
男「ハァ……」
先輩「どうした新入り、ため息なんかついて」
男「実は……理想と現実のギャップに悩んでまして……」
先輩「ギャップ?」
男「俺が海賊になったのは、ワンピースって漫画のキャラに憧れたからなんですけど」
先輩「ワンピース? ああ、聞いたことあるぜ。ジャパニーズコミックだな」
男「しかし、俺が理想としてた海賊と、現実の海賊とじゃ、だいぶ違いがあって……」
先輩「なるほど……そういうことか」
男「はい……」
男「もっと“いい海賊”みたいなのを期待してたんですけど……」
先輩「……」
先輩「お前、今もそのワンピースって漫画持ってるか?」
男「もちろんです」
先輩「じゃあ俺にも読ませてくれねえか?」
男「いいですよ。実は布教用に、翻訳されたワンピースも持ってますから」
次の日――
先輩「おーい!」
男「おはようございます、先輩」
先輩「お前に借りたワンピース、全部読んだぜ!」
男「あ、どうでした?」
先輩「面白かったぜ! 一気に読んじまった! お前がハマるのもよく分かる!」
男「ホントですか! それはよかった!」
先輩「お前が理想としてるのは主人公のルフィって奴でいいんだよな?」
男「ええ、そうですが」
先輩「だけどよ……こいつの一体どこが“いい海賊”なんだ?」
男「え?」
先輩「だってよ、こいつ日常的に海軍に喧嘩売ってるじゃねえか」
先輩「いくら俺らでも、さすがに海軍とは敵対しないぜ! そこはわきまえてる!」
男「た、たしかに……!」
先輩「それと、裁判所に襲撃かけたりしてるしよ。司法に喧嘩売るってヤバすぎるだろ!」
先輩「俺らが今までに一度でも、裁判所を襲ったことがあったか?」
男「ない……です」
先輩「だろ?」
先輩「極めつけは、このルフィって奴、ムショに殴り込みかけて」
先輩「大勢の囚人逃がすきっかけ作っちゃってるじゃねえか!」
男「そういえば……」
先輩「世界政府……とかいうのにも、思いっきり睨まれちゃってるしよ」
先輩「世界政府って俺らの世界でいう国連みてえなもんだろ?」
先輩「国連から直接名指しで指名手配喰らう海賊なんか聞いたことねえぜ」
先輩「もはや海賊っていうより、国際テロリストだろ、こいつ! 全然いい海賊じゃねえ!」
男「あうう……」
先輩「つまりだ!」
先輩「俺らはルフィって奴より、よっぽどマシな海賊ってわけだ!」
先輩「マシってことはつまり……“いい海賊”ってわけだ!」
男「なるほど……」
先輩「だからよ……」
先輩「これからもガンガン村や船を襲撃していこうぜ!」
男「……はいっ!」
仲間A「今日はあの村だ! 静かに上陸しろ!」
仲間B「おっ、若い女がいやがるぜ!」
仲間C「ヒャッハーッ!」
男「……」ワクワク
先輩「お? いいツラになったじゃねえか」
男「ええ、もう迷いは消えました!」
男(そうだ……俺は“いい海賊”だったんだ。ルフィよりもずっと!)
男「オラオラオラァッ!」ガガガガガガガ…
男「一匹も逃がさねえぞぉぉぉぉぉ!」ガガガガガガガガ…
老人「ぎゃふっ!」
村娘「きゃあっ!」
青年「うわぁっ!」
男「へっへっへ、どいつもこいつも蜂の巣だ。たまんねえな、この感触」
男「……ん?」
母「ひいいい……」
赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
男「……」
母「お願いします、この子だけは……!」
赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
男「こりゃあいい!」
男「寂しくないよう二匹まとめて地獄に送ってやるよ!」ジャキッ
ドゴォォォォン!!!
男「……!?」
男「な、なんだ!?」
「や、やべえ、海軍だ!」
「助けてくれーっ!」
「早く逃げ……!」
ドゴォォォォォンッ! ガガガガガ…
男(動きを察知されてたのか……。仲間が次々と殺られて……!)
ガガガガガガッ
先輩「ぐぎゃあああああっ!」
男「せ、先輩!」
兵士「……」
男「てめえ、よくも……!」
兵士「……」ジャキッ
男「ひっ!」
男「ま、待ってくれ! 武器は捨てる! 降参する! だから……!」
兵士「……」ガガガガガガガッ
男「ぐはっ……!」
男(うおおおお……こいつ……容赦ねえ……)
男(なぁ、ルフィ……。俺は……お前みたいな、海賊に……)
男(なれた、ん、だろうか……)
ドサッ…
母「ありがとうございましたっ……!」
兵士「……」
兵士「ワンピースの赤犬に憧れて海軍に入ったけど……」
兵士「なーんか違うんだよなぁ……」
兵士「もっとこう……こんな小物じゃなく手強いのと戦いたいっていうか……」
―おわり―

