2 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:09:06.87 HlM7IxOg0 1/28

~ぶしつ!~

「え? やっぱり、澪ちゃんのおっぱいは同じ女子から見てもおっきいよ~?」

「で、でもさ? 唯だって、こう……見た目で、大きい方だってわかるんだからさ。私をそんな風に言うのは何か違うんじゃないかな」

 澪ちゃんの視線が、私の胸元に向けられる。
 遠慮がちに、恥ずかしそうに、ちらちらと。

「そんなことないよ。澪ちゃんに比べたら、富士山とチョモランマくらいの差があるよ!」

 あ、私のおっぱいが富士山みたいって誤解される例えだったね今の。
 でも、澪ちゃんには私の言いたいことは伝わったみたい。

「そっ……そんなに差はないと思う、けど……」

 ああ。
 やっぱり、伝わってた。
 澪ちゃんは私の胸元から、自分の胸に目を向けて溜め息をつく。

「差、あるよ」

「……はあ。だから、唯が言うような差はないんだってば」

 そういう澪ちゃんの胸を、改めて眺めてみる。
 ……やっぱし、おっきいよ。

「測ってみようか? どっちがおっきいか」

「え?」


元スレ
澪「唯だって、結構……おっぱい大きいじゃないか」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1297001303/

5 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:11:18.98 HlM7IxOg0 2/28

「どうせ、澪ちゃんの方が大きいと思うけどね」

 メジャーは手元にないけど、その代わりに交換したばっかりの、あとは捨てるだけの弦を引っ張り出す。
 これじゃ足りないかもしんない、って思いながら、手に取って澪ちゃんへ近付いていくと。

「や、やあっ!? そんな、食い込みそうなのは嫌だぞぉ!?」

 あり。
 メジャーが一番いいけど、糸か何か持ってたらよかったね。
 生憎と、今日は持ち合わせがありませんので。

「痛くしないよ。ただ当ててみるだけだよ?」

「嫌だって! 見るからに痛そうじゃんか!」

 そっと当てれば、大丈夫だと思うんだけどなあ。
 でも、おっぱいって乱暴にすると痛いし、何とかして優しく澪ちゃんの胸の大きさを測るやり方を考えないと……。

「……あっ」

「あっ? て、何だ?」

「抱き着いてみればいいんだ! 少なくとも憂との違いはわかるもんね!」

「いやその理屈はおかしくないかっ!?」

 抱き着いてみてから、こう、ふにゅっとしてる具合とか柔らかさとか比べてみればいいじゃなーい。
 私ってば、ナイスアイディーア。

「ちょっ……おい? 駄目だぞ? 駄目ったら駄目なんだぞ、唯?」


6 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:13:33.75 HlM7IxOg0 3/28

「えっへっへー……いいじゃん、澪ちゃん? 別に揉むわけじゃないんだから」

 手で触って実際に大きさを把握出来れば一番いいんだけどね。
 でも、軽く抱き着くくらいにしておかないと、澪ちゃんに本気で嫌がられちゃうし。
 というわけで、ぎゅーっと。

「ひゃんっ!?」

「んぎゅーぅ♪」

 あ、やっぱし柔らかい。
 私なんて、澪ちゃんのビーズ入りクッションみたいな胸と比べたら、まるでテニスボールだよ。

「んう……んにゅ、ふにゅう……」

「あ、あぅ、唯ぃ……もっ、もおいいだろ? 満足したろ?」

「まーだー。澪ちゃん、あったかいし……気持ちいーし……♪」

 離れたくないよ。
 満足もしてないよ?
 だからもっと、ぎゅうって。

「んぅっ……あ、唯……駄目だってばぁ……」

「……やっぱ、澪ちゃんのおっぱい、大きいよ。ぷにぷに具合が全然違うもん」

「……そ、そうなの?」

「うん。ムギちゃんもなかなかだけど、澪ちゃんの方が……何ていうか、気持ちいーし、ずっと抱き着いていたい感じ?」


7 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:15:44.66 HlM7IxOg0 4/28

「そう、なのか……ん、とっても恥ずかしいけど……あれだぞ!? みんなが来るまでだからな!?」

 あ。
 お許し、いただいちゃいました。

「……えへ。それじゃ、遠慮なく……んにゅううっ♪」

 ぎゅむむっ、ってね。
 やっこくてあったかくて、澪ちゃんはやっぱり気持ちいいよ。

「ふあ……や、約束だからな、唯……みんなが来るまで……すぐ離れてくれよ?」

 そんなことを言うくせに、澪ちゃんは私の髪をなでつけてくれます。
 手付きは優しくて、心地よくて、約束守りたくなくなっちゃう。

「澪ちゃんは優しいねぇ」

「……何となくだよ。頭なでたのは」

 多分、もうすぐ誰かが用事を済ませてここへ向かってる頃だと思う。
 けど、それまでは澪ちゃんに甘えさせてもらおう。
 あったかくて、やぁらかくて、心地いい温もりに。

「全く……唯は年相応になれよ。そろそろ『子供っぽい』じゃ済ませられなくなるぞ?」

「んふ……じゃあ、その限界まで甘えちゃう。だって、澪ちゃんに抱き着いてると最っ高に気持ちいいんだもん」

「んっ……」


8 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:17:54.12 HlM7IxOg0 5/28

 今、澪ちゃんがびくって震えた。
 本気で嫌がってるみたいじゃないし、私を離れさせないってことは……いいってことだよね。

「みーおちゃん♪ んにゅにゅっ、澪ちゃーんっ♪」

「ん……仕方ないなぁ、唯は」

 なで、なでりと覚束ない手付きで私の髪をなでてくれる。
 それを何度も繰り返されるうちに、気持ちよくて、にゅむっと眠気に襲われる。

「ふぁ……んぅ、澪ちゃん、私……ちょおっとだけ、お昼寝したいかも……」

 駄目だぞ、って言われるかと思ったのに、澪ちゃんは。

「……ちょっとだけだぞ。誰か来たら、すぐ起こすからな」

「うん……んにゅむ……ん……」

 目を閉じて、寝息っぽく呟く。
 そうすると澪ちゃんは、まだ私は眠っていないのに、自分から抱き直してくれたりして。

「もう、ちゃんとしないと滑って落ちるだろ……落ちて痛がったら、私が悪者にされるんだからな」

 だったら、ソファーにでも運んでくれればいいのに。
 澪ちゃんは、椅子に座ったまま私を抱っこしたまま、ぎゅってしたまま。

「全く、唯は……」

 小さく溜め息をつくように呟いて、私をまた、ぎゅってしてくれるのでした。


9 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:20:10.05 HlM7IxOg0 6/28

~そのご!~

「あらあら。熱烈でございますことね?」

「からかうなよ。唯がふざけて抱き着いてきて、そのまま寝ちゃったんだよ」

「眠ってしまうくらい、澪ちゃんのおっぱいがふかふかな感触っていうことよね?」

「……先輩がた、不潔です」

 実は既に起きてるし、全部聞こえてるんだけどなあ。特にあずにゃん、酷いなあ。
 私、りっちゃんやムギちゃんの胸でもほんわか出来るし、あずにゃんだって、ぺったんこで感触は寂しいけど、不思議と幸せ度はMAX近いんだよ?

「お茶の準備をしたら起きるかしら」

「あー、有り得るな。頼む、ムギ」

「今日のお菓子が何か、まだわかりませんが……甘い匂いで飛び起きるんじゃないです?」

 むむむむむ、しっけーな。
 危うく本気で寝ちゃいそうなとこを我慢して、意識を保っている私ですぞ?
 紅茶はともかく、お菓子の匂い如きにつられるなんて……。

「今日はチョコケーキなの~」

「チョコ!」

「……チョコ?」


11 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:22:09.17 HlM7IxOg0 7/28

 ううっ。
 みんなして、そんなに反応しなくてもいーじゃん。

「チョコケーキですか……ほぅ……♪」

 目を閉じてるから、どんなケーキなのかわかんない。
 うう。
 でも、澪ちゃんに抱っこされてる感触だって捨てがたいよぉ。

「唯は寝てるみたいだし……みんなで分けて食べちゃおうか」

「澪ちゃん酷いっ!?」

「おー、起きたな」

「……はっ」

「約束だったよな、唯。みんな集まったから、もう離れてくれよ」

 そんなの、澪ちゃんが先に破ったじゃない。
 『みんなが来たらすぐに起こす』って言ってたのに、ね。

「ケーキ食べたらまた抱き着いてもいい?」

「駄目だめ、おふざけはお終い。食べたら練習しなきゃ」

「練習が終わってからだったら、いいの?」

「いい悪いの問題じゃなくって……ああもう、みんな! 面白がってないで何とかしてくれぇ!」


12 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:24:11.77 HlM7IxOg0 8/28

 ……あり、私の背中に回ってた澪ちゃんの腕が緩んじゃった。
 みんなに見られて恥ずかしさが限界になっちゃった、かな。

「よしよしよーし、唯。ちちっち、ちっ、ケーキはこっちだぞ~」

「ふふふ……ふ、くふっ……す、すぐ紅茶淹れるわね」

 私を犬猫みたいに扱おうとするりっちゃんはともかく。
 ムギちゃん、そこまで残念そうな笑顔っていうのは、私この歳まで生きてきて初めて見たよ。

「……ええと、私は……私は……」

 ああ……そのおろおろ葛藤してる表情は堪らなく可愛いけど、無理しなくていいんだよ、あずにゃん?

「へーぇ? 梓はどうやって愛しの唯先輩の気を惹くつもりなんだ?」

「律、からかうなよ。唯も梓もそんな気は全然……」

「さ、さあ、唯先輩! 今日は特別に、三分間だけ自由に抱っこさせてあげますっ!」

 ぬぁ!? 何ですと!?

「三分も自由にしていいの!? 聞いたよ、みんなも聞いたよね!?」

 思わず、がばぁって飛び起きちゃう。

「にゃっ!?」

 私の勢いに、びくうって肩を震わせるあずにゃん。
 でも、立ち上がろうとする直前に、ぎゅっと身体を捕らえられた。


13 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:26:16.48 HlM7IxOg0 9/28

「……唯の、浮気者」

「ふあ……」

 他のみんなには聞こえないように、耳元でぼそっと。
 澪ちゃんにそうささやかれて、何だか毒気みたいなものが私から抜けてく。

「唯。部活が終わった後、ちょっと残れ。今日という今日はお説教してやるからな」

「うっ、うん……ごめんなさい……」

 完全に出鼻をくじかれちゃって、でも、澪ちゃんは私の手を引きながら立ち上がってくれた。
 私が調子に乗りすぎたから、怒ってるのかな。
 でも、それならぎゅっと握ってる手の説明が付かないよね。

「うわ、やっちゃったな唯。こえー。キレた澪こえー」

「うん? 別に私はキレてないぞ? 律」

「おひょう!? そっ、そうだよな、優しい澪しゃんはキレたりしない! 怖くない!」

 りっちゃんに向けられた微笑みは、間近で見るとそれはそれはもう……。

「唯も、な? 聞き分けてくれるかな?」

「はいいっ!」

 声はものすごく優しかったのに、私は思わず気を付けしながら返事をしたり。

「……ほっ」


14 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:28:10.91 HlM7IxOg0 10/28

 あずにゃんは、自分でも三分間無制限抱っこ一本勝負は無茶だったと思ってたらしくて、あっち向いて胸をなで下ろしてるし。
 ムギちゃんはティータイムの準備で忙しそうにしてるし。

「いいか、唯? 澪の説教の間はふざけないで真面目に聞くんだぞ? じゃないともっと怖いからな?」

「う、ん」

 私の指定席に座ろうとすると、りっちゃんが深刻そうな表情で忠告してくれた。
 今の澪ちゃんの顔、私とりっちゃん以外、誰も見てなかったのかなあ。
 ……あ、何故かトンちゃんが壁の方へ必死に泳いでいってる。
 もう水槽の端っこで進めないのに、変だねえ。


16 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:30:11.75 HlM7IxOg0 11/28

~ぶかつしゅうりょう!~

「はー。久々にまともな演奏をした気がします」

「そうだな。久々でもこんだけ演奏出来るあたしらって、マジで才能あんじゃね?」

「だったら毎日もっと真面目に練習するべきです!」

「うふふふ。ごもっともだけど、私はそろそろ帰らないと家の者が心配するから~」

 私と澪ちゃん以外のみんなが帰る準備を済ませて、ドアを開ける。

「じゃあな、唯! ご愁傷様!」

「それでは、唯先輩、澪先輩。また明日」

「うふふふふふふふふふ。もしよかったら、あとでお話聞かせてね?」

 ばたむ。

「…………」

「…………」

 みんなより時間をかけて弦を拭いたり、指板やフレットの手入れをしてみたり。
 うん、単なる時間稼ぎにしかならないってことは、充分わかってるんだけど。
 澪ちゃんは本当にお説教をするつもりなんだか、私より先に帰る素振りがない。

「やー……弾いた後は、きちんと拭いてあげないとねえ? すぐ錆び錆びになっちゃうもんねえ?」


17 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:32:12.87 HlM7IxOg0 12/28

「そうだな」

 ……ああ、神様。
 どうして澪ちゃんも、私の行動を読んでいるかのように同じくお手入れしてるんでしょうか。
 ……うん、ベースだって仕組みはギターと同じだから、お手入れの仕方も同じで当たり前なんだけども。

「……ふう。それじゃお疲れ様、澪ちゃん!」

 ギー太をケースに仕舞って、カバンを拾って緊急脱出!
 ……しようとしたら。

「待って、唯」

「……うん」

 澪ちゃんの真面目な声に呼び止められて、足が止まった。

「まず、ひとつだけ教えて欲しいんだけど」

 澪ちゃんもベースを仕舞って、帰り支度は万端。
 なのに帰らないのは、幼馴染みのりっちゃんさえも恐れさせるお説教を私にする為……だよね。うん。
 今日はいきなりちょっとやりすぎたかも。

「なっ、何かな、澪ちゃん?」

「あ、あのさ、変なこと聞くかもしれないんだけど……」

「うんっ!?」


18 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:34:11.92 HlM7IxOg0 13/28

 ギー太のケースと、カバンを握る手に力がこもる。
 何か、変な汗をかいちゃってるかもしんない。
 けちょんけちょんに叱られちゃったら、どうしよう……って。

「……唯は、誰でもいいのか?」

「……ほへ?」

「いやいや! 今のは言い方がおかしかった! 忘れてっ!」

 あれ?
 お説教とか、怒ってるとか、そういう雰囲気じゃない……よ?
 むしろ恥ずかしがってるような、乙女ちっくな香りがする。

「澪ちゃん?」

「うう、うっ……その、唯は……抱き着けるなら、誰が相手でもいいのか、って……そう聞きたかったんだ!」

 ……そりゃあ私、隙あらば誰にでも抱き着いてる感じだけど。
 好きな人にしか、しないよ? 出来ないよ?
 りっちゃんも好きだし、ムギちゃんも好きだし、あずにゃんも好き。
 勿論、澪ちゃんは……だーい好き。

「澪ちゃん、もしかして……どくせんよく?」

「なっ……」

「えへ……もしそうだったら、いいよ。澪ちゃんが私をそーゆー目で見てくれてるんなら……」

「んっ、そ、そーゆー目、って」


19 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:36:11.86 HlM7IxOg0 14/28

「『私以外に抱き着くな』って、ゆって。そしたら私、もう澪ちゃんにしか抱き着かないから」

「い、や、そんな話をしたいわけじゃなくって……大体、独占欲なんて私は全然……」

「……私は澪ちゃんに独占欲。澪ちゃんも私を独占欲……だったらいいなあ?」

 荷物を置いて、ゆっくりと澪ちゃんの下へ進む。
 澪ちゃんは恥じらって目を伏せて、でもちらちらと私の顔を見ながら、自分で自分の身体を抱き締めてる。

「んぅ……わ、私は……その……」

「もし、澪ちゃんが私を独占したかったら……来て、澪ちゃん」

 さっきは、まぁ、約束っていうには大袈裟だったけど……ずっと抱っこしててもらったから、今度は私がする番だよね。
 そんな気持ちを込めて、両腕を大きく広げる。

「う……あ、う……あう……」

「おいで、澪ちゃん。さっき澪ちゃんがしてくれた分、お返しに私も抱っこしてあげる!」

「ゆっ、唯っ……いや、抱っこがどうこうじゃなくって……」

「私、色んな人に抱き着いてるけど……私にも、独占欲はあるんだよ?」

「……ん、くっ」

 澪ちゃんは、まだ色々と言いたそうだったけど。
 全部飲み込むように、喉を鳴らす。

「私は、澪ちゃんを独占したい」


21 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:38:28.13 HlM7IxOg0 15/28

「唯っ!?」

 澪ちゃんには、りっちゃん。
 私には、あずにゃん。
 ムギちゃんは、私達を優しく見守ってくれてる感じ。
 私達をぱっと見たら、そう思うかもしれない。

「……私、澪ちゃんが好きなんだよ」

「だっ、だから、何なんだよ……」

「独占、してよ……澪ちゃんが私を独占してくれたら、私も澪ちゃんを独占出来るから、だからっ」

 ……ああ、私、ズルい。
 こんなに難しいことを、澪ちゃんに決めさせようとしてる。
 本当に、ズルいよね。

「……あのさ、唯」

「うん」

 力も気持ちも入ってない声だよ。
 ……やっぱり駄目だったかな?
 まあ、今までの私の行動を考えると、信用してもらえなくて当たり前なんだけども。

「私には、ちょっと、私が唯を独占するっていう状況が想像出来ないんだよ」

「……そっか。ごめんね、変なことゆっちゃって」

「ん……」


22 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:40:12.58 HlM7IxOg0 16/28

 駄目、だったみたい。
 抱き着いたまま眠っちゃうくらい安心出来る人で、そんでもっていつでもどこでも抱き着きたくなっちゃう人って、そうそういなかったのになあ。

「じゃ、じゃあ、私……帰るね。お説教はあとで……失恋の傷が治るまで、待ってね」

「……待て」

「んう?」

「しっ、失恋したなんて、勝手に決めるんじゃないっ!」

「……へ? ……ほええ!?」

 まるで、タックルみたいに。
 私が荷物を拾おうとしてたところに、澪ちゃんが飛び付いてきた。

「唯ぃぃっ!」

 ばたん、と私が尻餅をつく音。
 でも澪ちゃんはしっかりと私の腰に腕をかけてて、その力は段々強くなってきてる。

「み、澪ちゃん……?」

「んぅ……ゆ、唯っ! 寂しいこと言うなぁ! 私だって唯が好きなんだからぁ!」

「んくっ」

「あ、あの……き、気持ちが一方通行だと思うな!」

「んぅ……み、澪ちゃん……?」


23 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:42:30.52 HlM7IxOg0 17/28

「わかってたよ、唯の気持ち! でも私、こんな恥ずかしがり屋だから! 自分の思い込みかもって考えたら、何も出来なかったから!」

「うん……」

「勇気、出せなくって……本当に、唯が私を好きだって思えるまで、何も出来なかったんだよ……!」

 制服越しに、お腹の辺りがじわじわと熱くなってくる。
 湿った感じが広がってきて……ああ、澪ちゃんってば泣いちゃってるんだ。

「……澪ちゃん。大丈夫、っていうのも変かな……私、誰よりも澪ちゃんが好きだよ……だから、泣かないで?」

「ん、ぐす……っく、ゆ、唯……?」

「うん、いきなり独占欲ってのは、澪ちゃんには難しかったかなあ」

「ん、んぅ……?」

 誰よりも欲しい、抱き締めたい、自分以外の誰にも抱き締めて欲しくない。
 私はこんな感じだけど、きっと、澪ちゃんの考えてる独占欲とあんまり違いはないと思う。

「えいっ」

「ふぷっ!?」

「私、澪ちゃんも好きだけど、澪ちゃんのおっぱいも同じくらい好きだから……澪ちゃんにも、私のおっぱいを好きになってもらえたら嬉しいな」

 ぎゅって、澪ちゃんが私を抱いてくれたように、優しく。
 澪ちゃんの顔を真っ正面から、私の胸の谷間に埋めるように。
 ちょっとズレてても構わない。澪ちゃんがその気でいてくれるなら、きっと。


25 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:44:17.30 HlM7IxOg0 18/28

「んうー♪」

「む……んぅ、ふう……」

「……澪ちゃん。苦しくない?」

「ふぁ、だ、大丈夫……だよ……」

 無意識なのかそうでないのか、ふにふにと、私の胸に顔を押し付けてきてる。
 澪ちゃんってば、かぁわいいんだぁ。

「んっっ、んにゅ……ゆぃ……唯のおっぱいも、やっぱり気持ちいいよぉ……」

「ん。でも、私は澪ちゃんの方がおっきくて、感触もいいと思うけど」

「……大きさじゃないんだよ。感触も。要は、相手が誰か、ってことじゃないのかな」

 小さく呟きながら、澪ちゃんはまた私の胸を堪能するように、ふるふると顔を左右に振ってみたり。
 こりは……ちょっと、気持ちいーかも。

「んっ、んんぅ……澪ちゃん。あんまりそうされると、変な気分になっちゃうよ」

「……ごめん。でも、もうちょっとだけ、こうしていたいんだ」

「いいよ、このくらい我慢するから……そのうち我慢出来なくなっちゃいそうだけどね」

 澪ちゃんにこうやって甘えられるの、気持ちいーだけじゃなくって、とっても嬉しいよ。
 私の気持ちが全部伝わったわけじゃないんだろうけど、少しでも伝わったっぽいからね。


26 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:46:09.66 HlM7IxOg0 19/28

「澪ちゃん。私、澪ちゃんが大好きだよ。女の子として」

「……私も。唯のことが、好き……こうして、抱き着いてると……幸せな気分になる……」

 それはきっと、私と同じ気持ちだよ?
 でも、澪ちゃんはまだ、この気持ちをまともに受け入れられないと思うから。

「えへへ。可愛い、澪ちゃん」

「んなっ!? あ、あっ、私は……別にそんなつもりじゃっ!?」

 ……ほら、離れちゃった。
 すごく残念だけど、仕方ないかな。

「澪ちゃん……お説教、する?」

「……いや。明日にしよう。また明日、居残りしてくれないか」

「うん。明日もいーっぱい抱っこしてあげるね?」

「お、お、お説教だってば!? 明日こそは必ずするからな!」

「はいはい。んじゃ、今日は遅いし、もう帰ろ?」

「ああ……」

 澪ちゃんが荷物を背負うのを見ながら、私も帰る準備をする。
 この調子なら、しばらくの間はお説教されなさそうだね。


27 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:49:53.42 HlM7IxOg0 20/28

「ねぇ、澪ちゃん」

「うん?」

「大好き」

「ひゃあ……!?」

 うわ、ぼんって顔を真っ赤にしちゃって。
 これじゃ、私の気持ちを全部伝えるのは難しそう。

「あ、う、あぅ、はうう……」

「んっと……ほら、澪ちゃん。そろそろ私達も帰ろうよ」

「ぁぅ……」

 固まって動かない澪ちゃんの手を取って、部室を出る。
 その時、ものすごく小さな声で、澪ちゃんが呟いたのが聞こえた。

「わ、わっ、わわわ……私も……好きだよ、唯……」

 恥ずかしがりーの澪ちゃんにとっては、すっごく勇気がいることだったと思うんだよね。
 握ってる手にも力が入ってて、緊張してるのが伝わってきてるし。
 でも、だから、私は、照れながらこう答えた。

「えへへへ……ありがと、澪ちゃん。嬉しくて泣いちゃいそう」


28 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:51:17.27 HlM7IxOg0 21/28

「そっ、それはそれで困る!」

「じゃあ泣かないよ!」

「なっ、何だよ、からかうなよぉ……全く、唯は……」

 からかってなんかないよ。
 澪ちゃんが困るなら、どうしても我慢出来ない時にしか泣かないよ。
 だけど、今がその時だから……泣いてもいいよね?

「おっ……おい、ちょっと、唯!? いきなり泣き出すなよ!?」

「んっ、ぐす……嬉し泣きだよ。澪ちゃんのせいだからね」

「ん、もう……唯は、本当にズルいよな……」

 うん、寝てるふりして起きてたのとか、ズルいことはしたけど、今はどのズルのせいなのかわかんない。
 ぽろぽろ涙を零していると、澪ちゃんがさっきみたいに私を抱き締めてくれた。
 おっきくてやーらかい、ふにふにの胸に。

「泣くなよ、唯……その、これが独占欲ってやつかもしんないけど……泣いてる唯は、見たくないんだっ」

 澪ちゃんの方から、ぎゅうぅって私を抱き締めてくれてる。
 ……嬉しい。
 嬉しくって、どんどん涙が溢れそうになってくるけど、澪ちゃんを困らせたくない。

「ぐすっ……んぅ、ふぅ……じゃ、じゃあ、澪ちゃん。こうして毎日抱き締めてくれる?」

「そ……それは……そのぉ、えーと……」


29 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:52:23.52 HlM7IxOg0 22/28

「ふにゅむにゅ、んうっ……約束してくれたら、泣き止むよ。澪ちゃんが抱き締めてくれるなら、私の独占欲も有頂天だよ」

「意味わかんないけど……いっ、いいよ。今みたいに、他人にバレないような場所でなら、え、えっと、えええと……」

「私を独占してくれる?」

「……唯が、他の誰にも抱き着かないって約束してくれるなら」

「お。澪ちゃんも出てきたみたいだね、独占欲」

「私は約束する。だから唯も、私以外には抱き着かないって約束してくれ」

 おお……おおお。
 澪ちゃんにしては大胆な発言だね。
 私を澪ちゃん専用にしようっていう! これは告白と判断……しちゃいけない、よね……まだ……。

「うん、約束する。澪ちゃんも必ず守ってね!」

「当たり前だろ」

「それと、その、ね……不束者ですが、よろしくお願いします……」

 あれ、何だかほっぺが熱いですよ?
 澪ちゃんに抱き着いたりおっぱいに顔を埋めたりしてたのに、改めて意識したら、やたらと恥ずかしいですよ?

「うん……こちらこそ、よろしく。唯」

「ん……」


31 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:54:30.96 HlM7IxOg0 23/28

 や。
 あれ、ちょっと。
 繋いでる手がすっごく熱くて、握ってると恥ずかしいのに放したくないとか、これどういう感覚?
 思わずぴくっと引いちゃうと、澪ちゃんが強く握り返してきたり。

「んっ」

「……ど、どっか寄って帰ろう、唯。少し寄り道しても平気だろ?」

「う、うん」

 ……はあ。
 私の方が澪ちゃんより照れて恥ずかしくなっちゃうなんて、思ってもみなかったよ。

「……なぁ、唯」

「なっ、何かなっ!?」

 どうしよう。
 乙女ちっくな期待に頬を染めるのは、本当なら澪ちゃんの方だったハズなのに。

「帰る前に、もう一回だけ、その……」

「も、もっかいだけ、何っ!?」

「そのぅ……唯を抱っこさせてくれないかな。すぐ済むから」

「いいけど、すぐ済んじゃうんだ……ちぇ」


32 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:56:06.21 HlM7IxOg0 24/28

 でも、抱っこしてもらえないよりは嬉しいに決まってる。
 だから私はまた荷物を下ろして、澪ちゃんの胸元にすがりついた。
 ぎゅ、って優しく、私の背中を抱き締めてくれる。

「……はー。やぁらかいしあったかいし、気っ持ちいーよぉ」

「唯、何だかさっきよりも可愛い感じだな……」

「うにゅ……うん、澪ちゃんありがと……」

 澪ちゃんこそ、すごく綺麗な笑顔で笑ってるよ。
 これからは、もっと素敵な表情を見せてくれるのかな?
 ……なんて思ったら、もう胸のどきどきは止まらない。

「ね、澪ちゃん」

「うん、何だ?」

「今の私、さっきまでの……澪ちゃんに『好き』って言う前の私と、ちょっと変わっちゃったみたい」

「……あんまり変わってないように見えるけど」

 うん。
 澪ちゃんの胸にふにふに甘えて、ぎゅーって抱き着いて、やってることは同じだよね。
 でもね、やっぱり違うんだよ。

「私、自分が『澪ちゃんの彼女』になれたんだなって思うと、どきどきして、ほっぺが熱くなって……ぎゅむっ!?」

 顔っ……顔が、澪ちゃんが急に腕を強めるから、本気で埋まって息がっ!?


33 : 以下、名... - 2011/02/06(日) 23:58:03.94 HlM7IxOg0 25/28

「わ、私だって同じだっ! すごく恥ずかしいけど、でも、ここで頑張らないと、二度とチャンスがないかもしれないって!」

 ぎゅううううう。

「もがもがもがっ」

「だ、から、本当は私、恥ずかしすぎて気が遠くなりそうだけど……勇気出して、唯にも私の気持ちをしっかり伝えなきゃって思うから!」

「もがっ……んも……もふう……」

 タップ、タップだよ澪ちゃん。
 そろそろ、息が、おっぱいの感触は気持ちいいんだけど、呼吸が続かなくなっちゃう。

「あっ……ご、ごめん、唯! つい力が入っちゃって……」

「は、はう……はぁ、はぁぁ……んもー、澪ちゃん。ちょっぴりお花畑が見えちゃった……」

「ごめんってば、唯……私が悪かったよぉ」

 別に怒ってないし、息苦しかったけどその分気持ちよかったからいいんだけど。
 おろおろ慌てふためく澪ちゃんの姿が可愛くって、私はまた抱き着いちゃって。

「んぎゅーう♪」

「ふあ!?」

「だいじょーぶだよ、澪ちゃん。わざとじゃないってわかってる。澪ちゃんの気持ちも聞かせてもらったし」

「そ、そっか……」


35 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 00:00:09.84 dUAhxqhR0 26/28

「でも、抱っこの仕方を覚えてもらわないと、また胸で窒息させられそう……」

「ん……だから、それはごめ……んむっ!?」

 えいっ、と。
 澪ちゃんの肩の上に腕を組み替えて、今度は私の番だよ。

「……こんな風に、優しくぎゅってするの。思いっきり抱き締めると相手が苦しがるから、力加減が大事」

「うん……」

「んでね、こおやって髪にすりすりしたり……これも、相手の反応を見ながらね?」

「相手、か……唯は誰にでも抱き着いてたからな、抱っこはお手のものか」

「もお澪ちゃんにしか抱き着かないし、抱っこもしない。それに……これは、まだ誰ともしたことないよ?」

 ちょっと腕を緩めて、何かと不思議そうに上を向いた澪ちゃんの唇を狙って。
 ちゅ、って。

「んっ……!?」

「ん……え、えへへ。私の初モノのお味は如何だったかな、澪ちゃん」

「ふわぁ……唯と、唯の……ふぁーすときしゅ……♪」

 ど、どおやらお気に召していただけた模様です。
 でも、調子に乗ってもっとしたら、それは逆効果なのです。


36 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 00:01:22.02 dUAhxqhR0 27/28

「わかってくれたかな、澪ちゃん?」

「……うんっ」

 きゅっ、って今までで一番優しい抱き締め方をされる。
 ほんの一瞬だけど、キスしちゃったせいで、澪ちゃんの瞳が乙女ちっくになってるよ……。

「唯ぃ……んんむむ、にゅむにゅむ……いつも、こんな幸せな気分になってたの?」

「抱っこする側とされる側、どっちが幸せかは、お互いの気持ちによるんじゃないかな」

「……じゃあ、私は今、最高に素敵な抱っこをしてもらってるわけだ」

「抱っこを甘く見ないで欲しいかな!? こんなのまだまだだよ、澪ちゃん!」

「ふぇ!?」

 そう、こんなのは抱っこの中でもほんの初歩でしかないんだから。
 私だって真の抱っこ道を極めたわけじゃないけど……澪ちゃんとなら、きっと。

「素敵な抱っこに必要なのは、相手を想う気持ち。つまり、私が澪ちゃんを今よりもっと好きになれば……」

「……もっと、気持ちのいい抱っこをしてもらえる、ってことか?」

「ちっちっち、それじゃあ駄目なんだよ、澪ちゃん」

「えっ?」

「ほんとの抱っこはね、するのもされるのも、お互いにすっごーく気持ちーモノなんだから」


37 : 以下、名... - 2011/02/07(月) 00:02:05.96 dUAhxqhR0 28/28

 澪ちゃんの方から『私を抱っこしたい』って言ってきたのも、それに目覚めたからだと思うよ?
 そうでなきゃ、恥ずかしがりーな澪ちゃんが、自分から言い出せるハズないもんね?

「で、でも、私……さっき、唯を窒息させそうになっちゃって……」

「さっきはさっきだよ。今は……どうかな、澪ちゃん?」

 私に甘えてる澪ちゃんも惜しいけど、私だって澪ちゃんに甘えたい。
 だから、自分がこんな風に抱っこしてもらえたら嬉しいな、って感じで澪ちゃんを抱き締める。

「……ん。きっと、唯を苦しがらせたりしない。唯が気持ちよくなれるように抱っこする」

 今度こそ、澪ちゃんの胸を堪能出来そうです。
 声の調子と表情を見て、私はすっかり安心して。

「じゃあ、お願いね。澪ちゃんはおっぱい大きいんだし、ぱふってするだけで、誰でも気持ちよくなれるんだから」

「うん……でも、やっぱりさ」

 また腕を組み替えながら、澪ちゃんがひと言だけ呟く。

「唯だって、結構……おっぱい大きいじゃないか」

 これに関しては、私はきっと、ずーっと文句を言い続けるんだろうなって思った。


~おしまい!~


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