後輩「取り立てです!」
先輩「はあ?」
後輩「あ! 忘れてましたね!」
先輩「忘れてたもなにも、俺なんにももらわなかったし」
後輩「もらわなくても返していいんですよ?」
先輩「釣り針だけで鯛を釣る気か?」
後輩「くいこめー針くいこめー」
先輩「やめろよそのえぐい呪い……」
元スレ
後輩「時間差ホワイトデー開幕!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1585136721/
後輩「くれないんですか?」
先輩「だってもらってないし」
後輩「何にも? 本気で?」
先輩「かなり」
後輩「こんなに頼んでるのに?」
先輩「……頼んでるか?」
後輩「くださいよーうくれやがりなさいよーう」
先輩「いやもらってないしなあ」
後輩「じゃあこうしましょう、先輩は夢破れこの街に着の身着のまま辿り着きました」
先輩「ん?」
後輩「見知らぬ土地で途方に暮れる先輩。それを助けたのがわたしでした」
先輩「いや、そんな過去ないけど」
後輩「というわけでホワイトデーのブツを」
先輩「何がというわけでだ」
後輩「なんで! 信じて! くれないんですか!」
先輩「信じる以前の問題だろ!」
後輩「……のに」
先輩「え?」
後輩「先輩なら騙されてくれると思ったのに……」
先輩「そういう方向の信頼はいらない」
後輩「シィィット!」
先輩「はしたない!」
後輩「じゃあこうしましょう。わたし実は引っ越すんです」
先輩「……へえ」
後輩「動揺! 動揺しましたね! なんかくださーい!」
先輩「どういう関連性があるんだ。あと動揺してない。そしてあげない」
後輩「ちぇー」
後輩「じゃあこうしましょう」
先輩「じゃあこうしましょうの時点で駄目なことに気づいてくださいホントマジで」
後輩「先輩は何ももらってないって言うじゃないですか」
先輩「ああ」
後輩「あげたんですけど」
先輩「え?」
後輩「覚えてないんですか?」
2月14日
先輩「悪い、シャー芯もらえね?」
後輩「いいですよー」
後輩「はい回想終わり。というわけでください」
先輩「シャー芯はチョコじゃない」
後輩「似たようなもんです」
先輩「どこが」
後輩「色」
先輩「他は?」
後輩「味」
先輩「ないだろ!」
後輩「あります! 多分シャー芯苦いです! パッキパキのビターですー!」
先輩「バーカ! お前バーカ!」
後輩「信じてませんね!」
先輩「当たり前だ!」
後輩「疑うなら食べてみてくださいよ!」
先輩「誰が食うか!」
後輩「えい」
先輩「むぐっ」
先輩「にっっっがっ! ぐおぉぇ! なんてもの食わせんだ!」
後輩「ふうむ、やっぱり駄目でしたか」
先輩「何がだ!」
後輩「まあそれはともかく、お返しください」
先輩「この流れでよく言えたなお前!」
後輩「?」
先輩「シャー芯刺すぞコラ!」
先輩「ちくしょう疲れた。帰る」
後輩「あくまでくれないんですね」
先輩「そんな陰のある顔したって無駄だぞ」
後輩「……のに」
先輩「ん?」
後輩「わたしのチョコ食べたのに」
先輩「もらってないだろ」
後輩「あげましたよ、たった今!」
先輩「いやもらってなんか……あ」
…………
後輩「えい」
先輩「むぐっ」
…………
先輩「……あれか?」
後輩「お返しください」
先輩「あれチョコだったのか……てっきり極太シャー芯かと」
後輩「さ、早く」
先輩「なんで今頃バレンタインチョコ……」
後輩「……だって、上手くできなかったから」
先輩「え?」
後輩「先輩には一番上手に出来たのをと時間がかかりました」
先輩「……めっちゃ苦かったけど」
後輩「なるたけシャー芯風にしたかったので」
先輩「気は確かか」
後輩「ということにしましょう」
先輩「は?」
後輩「ください。お返し」
先輩「なんなんだこいつは」
先輩「……まあいいや。帰りになんか買ってやるよ。根負けだ」
後輩「わあい!」
先輩「あまり高いものは駄目だぞ?」
後輩「大丈夫。お金はいりませんから」
先輩「ん?」
後輩「わたしが欲しいのは先輩です!」
先輩「……ん?」
後輩「わたし、先輩がいないと生きていけない」
先輩「んん?」
後輩「これからずっと先輩と一緒にいたい」
先輩「んんん?」
後輩「というわけで新天地に共に赴きましょう!」
先輩「何がというわけでだ」
後輩「わたし引っ越すことになったんですよー」
先輩「……あれ? さっきの話マジだったの?」
後輩「しかも親が両方仕事で海外に。わたし着の身着のまま天涯孤独」
先輩「いや全然違うと思うけど」
後輩「まあ細かいことはいいのでわたしと一緒に来てください!」
先輩「……つまり一人で不安だから俺を巻き添えにしようと」
後輩「でも先輩が好きなのは本当ですよ」
先輩「さらっと言うなあ」
後輩「だから一緒に行きましょう!」
先輩「無理」
後輩「えー!」
後輩「そんな! 何でですかー!」
先輩「常識的に考えろよ、急に言われてはいってなるか?」
後輩「うう……」
先輩「お前どんだけ自分が無茶言ってるのか自覚しろ」
後輩「ううう……」
先輩「まあ、だからもうちょっと待て」
後輩「え?」
先輩「多分時間はかかる。でもきっとそっちに追いつく」
後輩「ほ、本当ですか?」
先輩「ああ。お前みたいな変な奴、一人にしとくとヤバいだろ」
後輩「やったあ!」
先輩「まあ、とりあえずは帰ろうぜ」
後輩「はい! とりあえずは今川焼き買ってください!」
先輩「は?」
後輩「わたしのこと変な奴とか言った罰です」
先輩「馬鹿言うなよ、今月金欠なんだよ」
後輩「え、でもお財布結構重いですよ?」
先輩「あ、てめ、いつの間に!」
後輩「お返しください」
先輩「またかよ」
後輩「今川焼。半分こしましょう」
先輩「はいはい分かった分かった、割り勘な」
後輩「わーい!」
終