あやめ速報-SSまとめ-

リーダー「カーッ！　手が止まってるぞ！　口より手を動かせ！　ギア上げろ！」

バイトA「す、すみません！」

リーダー「カーッ！　あのテーブル汚れてるぞ、拭いてこい！」

バイトB「分かりました！」

リーダー「カーッ！　おいさっさとカフェオレ出せ！　チンタラすんな！」

女バイト「はいっ……！」

リーダー「カーッ！」

リーダー「カーッ！」

リーダー「カーッ！」



……………

…………

……

ﾋﾟﾘﾘﾘﾘ…

リーダー「……ん」

リーダー「もしもし……バイト中にかけてくるなっていっただろ！」

リーダー「……またその話か！　断る！」

リーダー「うちのバイト連中、俺がいなきゃなんもできねえからな！」

リーダー「ったく……」ﾋﾟｯ

バイトA「……」

バイトA「あの……」

リーダー「なんだ、カーッ！」

バイトA「さっきの電話で“バイト連中は自分がいなきゃなにもできない”っておっしゃってましたけど」

リーダー「あん？　その通りだろうが！」

バイトA「聞き捨てならないんですよね」

リーダー「なんだと……！？」

バイトA「別に俺らはあなたがいなくても、ちゃんと仕事ぐらいできますよ。人数も足りてます」

バイトA「だいたいあなた、もう結構いい年なんでしょう？」

バイトA「なのにこんな狭いコミュニティでお山の大将気取ってて恥ずかしくないんですか？」

リーダー「カ、カーッ！」



バイトB「うわ、あんなハッキリと……」

女バイト「言っちゃったよ……」

リーダー「面白い……」

リーダー「そんなにいうんだったら、俺抜きでやってみろ！」

バイトA「！」

リーダー「明日は休みをもらう！　エンジン停止だ！」

バイトA「どうぞご自由に」

リーダー（ふん……こいつら如きが俺抜きで店を回せるわけないだろうが！）

翌日……

リーダー「カーッ！　休んでやったぜ！」

リーダー「カーッ！　あいつら俺がいなきゃなんも出来ねえだろうな！」

リーダー（そうだ……どうせだったら俺がいなくて困り果ててるあいつらの姿を見てやるか）

リーダー（帽子かぶって、サングラスとマスクをつけて……変装して……）

リーダー「カーッ！　出発！」

リーダー（結構客が入ってるな……）



ﾜｲﾜｲ…　ｶﾞﾔｶﾞﾔ…

「○○社の次世代車の話、聞いたか？」

「ああ、開発が難航してるらしいな」

「期待してたのになぁ……」



リーダー「……」

バイトA「いらっしゃいませ」

リーダー「ブレンドコーヒー」

バイトA「かしこまりました」

リーダー（どうやら俺だとはバレていないようだ）

リーダー（当然だ。完璧な変装だからな）

リーダー（さて……席に座って、お前らのあたふたぶりをじっくり見物してやるよ！）

客A「おい、このカード使えないってどういうことだよ！？」

バイトA「使用期限が去年までとなっておりますので……申し訳ありません」

客A「ふざけんなよぉ！」



リーダー（出た出た……たまにいるんだ、ああいう無茶をいう客が）

リーダー（怒鳴れば要求が通ると思っていやがる。まるで煽り運転だ）

リーダー（俺抜きじゃどうしようもあるまい……）

バイトA「……というわけですので」

客A「分かったよ……すまなかった……」



リーダー（むむむ、理路整然と説明して、あの客をやり込めた……）

リーダー（なかなかやるじゃないカーッ！）

客B「あれ？　アイスコーヒー頼んだのに、温かいのなんだけど……」

バイトB「あ……！」

リーダー（オーダーを間違えたか……さあ、どうする！？）

バイトA「すぐご用意いたします」ｻｻｯ

リーダー（リカバリーが早い！）

バイトB「ありがとう……」

バイトA「気にするなって。次から気をつけろよ」

リーダー（おのれえ……！　なにリーダー面してやがるんだ！　代理のくせに！）

バイトA「ゴミ捨て頼む」

バイトB「オッケー！」

女バイト「いらっしゃいませー！」



リーダー（その後はトラブルらしいトラブルはなく……）

リーダー（全員そつなく業務をこなしていった……）

リーダー（なぜだ！　大黒柱である俺がいないのに何故なんだ！？）

バイトA「そろそろ片付け始めるか」

バイトA「いやぁ、リーダーがいないとのびのびと仕事できるな」

バイトB「まったくだ」

女バイト「うるさくいう人がいないから、かえってミスなく仕事できるよね」

ｱﾊﾊﾊﾊ…



リーダー「な、なんだってぇ！？」

リーダー（俺は最初からここに不要だったのか！？）

リーダー（俺はいない方がよかったのか！？）

リーダー「カ……カカカ……カカカカカ……」

リーダー「カァァァァァッ！！！」ﾀﾀﾀﾀﾀｯ



バイトA「……」

バイトB「……」

女バイト「……」

リーダー「カッ！？　お前は……」

黒服「もうお分かりになられたでしょう？」

リーダー「うぐ……」

黒服「あのカフェはあなたの居場所ではありません」

リーダー「ぐっ……」

黒服「しかし、我々にはあなたが必要なのです」

黒服「我が社へお戻りください」

黒服「自動車史を塗りかえる次世代車開発には、天才エンジニアであるあなたの力が必要なのです」

リーダー「分かったよ……」

リーダー「自分の人生に疑問を感じ、会社を飛び出し、バイトを始めたが……」

リーダー「結局俺はカーを作る宿命からは逃れられないというわけか」

黒服「……」

リーダー「いや、俺はもう逃げない……。さあ、会社に連れてってくれ！」

黒服「……どうぞお乗り下さい」ｶﾞﾁｬｯ

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ…



バイトA「……」

バイトB「行っちゃったな」

女バイト「……うん。だけどこれでよかったんだよ」

バイトA「さよなら……リーダー」

バイトA（いい車作ってくれよ……）






END