1 : 名も無き... - 2016/02/29 01:42:11.68 zxiBQ48E 1/12

先輩「夜の校舎って、なんだか不気味」

後輩「そうですね。何か出てきそうで怖いです」

先輩「出るか出ないか。それが問題だ」

後輩「賭けませんし問題でもありません」

先輩「その反応は、もしかしてシェイクスピアをご存じでない?」

後輩「キョトンって顔するの止めて下さい。 腹が立つので」

先輩「ふふん、まだまだ勉強不足だね。 ちょっと座ってて貰ってね」

後輩「何言ってるんですか。リア王をリア充の王だと言ってたくせに」

先輩「貴様なぜそのことを知っている?」

元スレ
後輩「あのね、先輩」 先輩「うん?」
http://hayabusa3.2ch.sc/test/read.cgi/news4viptasu/1456677731/

2 : 名も無き... - 2016/02/29 01:44:06.14 zxiBQ48E 2/12

後輩「終盤の悪役ぶるの止めて下さい」

先輩「それを告げたのは僕じゃない。僕であって僕ではない」

後輩「私的古典ぶるの止めて下さい」

先輩「僕思うゆえに僕あり」

後輩「哲学者ぶるの止めて下さい」

先輩「後輩ちゃん、今日も冴えてるね」

後輩「毎日鍛えられてますからね」

先輩「さすが僕の後輩ちゃんだけのことはある」

後輩「さすが私の先輩は見る目があるだけのことはあります」

先輩「なんだか照れるね」

後輩「照れますね」

4 : 名も無き... - 2016/02/29 01:50:23.79 zxiBQ48E 3/12

先輩「唯一惜しいと思うことといえば?」

後輩「暗くてその照れ顔を見ることが適わないということです」

先輩「全く以て同感だ」

後輩「奇遇ですね」

先輩「僕たちは同じことを考えていた」

後輩「そして同時に、私は今この暗闇に最大級の感謝を捧げているのです」

先輩「おやどうして」

後輩「なぜなら恥ずかしいからですよ。 言わせるなばかやろー」

先輩「いたいいたい。もしかしなくても今顔赤い?」

後輩「…赤いかどうかは知りませんが、火照っているのは事実です」

先輩「こんなことなら松明持ってくればよかった!」

後輩「現に懐中電灯一本だと心許ないですもんね」

5 : 名も無き... - 2016/02/29 01:52:49.04 zxiBQ48E 4/12

先輩「ああ、それに信じられるか?俺達まだ下駄箱にいるんだぜ」

後輩「律儀に靴を履き替える不法侵入者なんて犯罪者の風上にも置けないでしょうね」

先輩「履き替えた?」

後輩「履き替えました」

先輩「よしじゃあいこう。僕たちの冒険の旅へ」

後輩「次回作にご期待下さい」

先輩「終わっちゃった!これからなのに」

後輩「僕たちの恋はまだ始まったばかりだ!」

先輩「それならよろしい。打ち切り感が否めないけど」

後輩「はは、無いといいですね(笑)」

先輩「はは、笑えないから」

6 : 名も無き... - 2016/02/29 01:54:37.22 zxiBQ48E 5/12

後輩「冗談ですよ。私が本当のこと言ったことがありますか?」

先輩「ならよかった、いやよくなかった」

後輩「冗談ですよ。ブラックジョーク」

8 : 名も無き... - 2016/02/29 02:00:43.76 zxiBQ48E 6/12

先輩「僕の目の前は真っ暗になった!君も足下に気をつけて」

後輩「…あっ」

先輩「おっと、大丈夫?」

後輩「平気です」

先輩「どさくさに紛れて手を繋いじゃおう作戦」

後輩「しかたないから知らない振りで繋がれちゃおう作戦」

先輩「どきどきするね」

後輩「どきどきします」

先輩「どうしよう、繋いだ手が君の手じゃなかったら」

後輩「繋いだ手のぬくもりが私が隣にいる証拠です」

先輩「J-pop歌手と付き合えるなんて夢みたいだ」

後輩「ちょっと私も言ってて恥ずかしくなりました」

9 : 名も無き... - 2016/02/29 02:05:06.06 zxiBQ48E 7/12

先輩「そんなこんなで2階へとやって来た俺達は」

後輩「延々と続く廊下から永久に出られないのであった。完」

先輩「終わっちゃった。でも今度はちゃんと終えられてよかった」

後輩「最終章には感動して目から涙が出てきそうでした」

先輩「廊下の奥からは何かが走ってきそうでした」

後輩「突然のオカルトやめてくれませんか?」

10 : 名も無き... - 2016/02/29 02:09:10.02 zxiBQ48E 8/12

先輩「それにしても風情があるね」

後輩「もしかして:雰囲気ではないですか?」

先輩「そうそうそれそれ」

後輩「出てきそうですね」

先輩「例えば?」

後輩「お化けとか」

先輩「きゃあ怖い」

後輩「走る人体模型とか」

先輩「やだ怖い」

後輩「聞こえてくるピアノの音とか」

先輩「ちょう怖い」

後輩「明かりを持った警備員とか」

先輩「あっ。こんばんは」

後輩「お疲れ様です。私たち忘れ物取りにきただけなので」

先輩「びっくりした」

後輩「びっくりしました」

13 : 名も無き... - 2016/02/29 02:12:44.05 zxiBQ48E 9/12

先輩「陰口の最中に本人登場は最も心臓に悪いことのうちの一つだよ」

後輩「違いありませんがなぜ英文和訳調なんですか?」

先輩「それは怖さを少しでも紛らわせるためさ」

後輩「しかしながら私はあなたが比較級の和訳例を知っていたことに対して恐怖を抱いています」

先輩「それはちょっとひどくない?」

後輩「英語ノート忘れたって夜に呼び出された私の境遇よりひどくはないとは思います」

先輩「」

後輩「ぐうの音も出ないってわけですか」

先輩「よくわかったね」

14 : 名も無き... - 2016/02/29 02:16:40.91 zxiBQ48E 10/12

後輩「とか言ってたらもう教室に着きましたね」

先輩「いやはや後輩ちゃんと話していると時が経つのは早いものだね」

後輩「しみじみしていないでさっさとノート取りに行ったらどうです」

先輩「太陽神が僕に微笑んでくれたらね」

後輩「一筋の道標は貴方の進むべき道を照らした」

先輩「ミッションクリア。ノートを手に入れたぞ」

後輩「長く苦しい道のりでしたね」

先輩「じゃあ、帰ろうか」

後輩「うん?なぜ扉を閉めたんですか」

先輩「今夜は君を帰さない」

後輩「鍵締めて言われるとロマンチックどころか狂気すら感じます」

先輩「部室だし誰も来ないよ。さあおいで」

後輩「…かくして私は、先輩の隣に膝を抱えて座るのであった」

15 : 名も無き... - 2016/02/29 02:24:39.14 zxiBQ48E 11/12

先輩「じゃあ、君が今何を考えているかあててあげよう」

後輩「私は人生でこんなにも無駄な時間はあっただろうかと思っていたところでした」

先輩「じゃあ、無駄な時間じゃなかったと思わせるための魔法を君にかけてあげよう」

後輩「……これ、魔法なんですか?」

先輩「うん。ブランケットという名の魔法」

後輩「もしかして、…寝泊まりするつもりなんですか」

先輩「そんなつもりはないよ。ただの合宿のつもり」

後輩「これは…合宿とは言いません。ただの添い寝です…」

先輩「まあ、そうとも言う」

後輩「…あったかいから、…許してあげます、……」

先輩「後輩ちゃんならそう言ってくれると思った」

16 : 名も無き... - 2016/02/29 02:34:27.56 zxiBQ48E 12/12

後輩「あのね、先輩」

先輩「うん?」

後輩「私、あの約束ずっと信じていますから」

先輩「もちろんさ。例え世界が終わっても僕は君を好きでいる、だろ?」

後輩「…覚えていてくれたんですか」

先輩「忘れるわけがないだろう?なんたって僕が何十回も練習した台詞なんだから」

後輩「そうだったんですね。…私、そう言って貰えてほんとうに嬉しかったです」

先輩「僕も、君と一緒に過ごせてよかった」

後輩「私もですよ。…まだ、実感はわかないですけど」

先輩「眠いだろう?もう寝よう。きっと明日はまた来るさ」

後輩「…そうですね。じゃあ、おやすみなさい、先輩」

先輩「うん。おやすみ。後輩ちゃん」

 いつも通りの明日が迎えられますように。
 閉じた瞼に、そう強く願った。

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