男「……」テクテク
男「ん……?」
「ははは、女だよ女!」
「しかも可愛いぞ、これはマワすしかねぇだろ」
「おらっ、来いよ!」
「抵抗すんな、クズ!」
バキッ
元スレ
男「君、女ホームレスなの?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1331634067/
男(あれは……!)
男「っ!」タッ
男「はぁ、はぁ……」
「あぁ?」
「んだテメェ」
男「警察に電話した」
「……っ!」
「チッ、クソがっ」
タタタ……
男「……」
女「ぅぅ……」ブルブル
男「大丈夫ですか」
女「ぅ……」ビクッ
女「ぅぁ……っ」
男「逃げないで、大丈夫だから」
男「傷が酷い、ちょっと待って」
女「……っ」
男「染みるかも知れないけど、ウェットティッシュで……」フキフキ
女「んっ……」
男「……」フキフキ
女「……」
男「ふぅ、血は落ちましたね」
女「……っ」
男「それにしても、服も酷く汚れてますね……」
男「ウチ、ここから近いんですが、お風呂入りますか?」
ガチャッ
女「……」ホカホカ
男「ふふ、気持ちよかったですか?」
女「……」コク
男「そうですか、それは良かった」
男「シャンプーのいい匂いがしてます」
女「ぅ……」モジモジ
男「……」
女「……」モジモジ
男(……恥ずかしがり屋なのか、もしくは、)
男(喋れないのか……)
グゥー
男「!」
女「ぅ……」カァァァ
女「もぐもぐっ」
男「お腹空いてたんですね」
女「……」カァァァ
男「良いですよ、いっぱい食べてください」
男「量は沢山ありますんで」
女「……」
女「……」フリフリ
男「え、書くものですか?」
男「……はい」
女「……」カキカキ
スッ
男「何々……?」
『助けてくれて、お風呂に入れてくれて、ご飯も頂いて、ありがとう』
『そろそろ行きます、本当にありがとう』
男「……」
女「……」ニコ
男「……帰るところは、あるんですか?」
女「……」
カキカキ スッ
男「……」
『何とかなります』
『今までも、そうしてきました』
男「……」
男「……」
男「……いや」
男「それは危ないです」
男「最近、この辺りで色々な暴行事件が多発しているんです、あなたも危なかったでしょう」
女「……」
男「いいですよ、もう少しここにいても」
男(……と言うか)
女「……」ウルウル
男(守りたい)
女「……」カキカキ
『気持ちは本当にありがたいし、嬉しいけど、やっぱり行きます』
男「なんでですか」
『今日会ったばかりの人に、そんな迷わk』
男「僕は大丈夫です」
男「……と言うか、もう少しここにいて欲しい」
男(おい、なんでこんなこと言ってるんだ、僕は……?)
男「あなたの役に立ちたい」
女「……」
カキカキ
『本当に、いいんですか?』
男「うん、君が良ければ」
女「……」
『ありがとう』
男「……!」
女「……」ニコ
男「じゃ、じゃあ……」
男「何か、したいこととか、見たいものとか、ありませんか?」
女「……」
男「ない、ですか……?」
女「……」カキカキ
『人の温もりを感じたい』
男「!?」
男「っ、っ」
男(そ、それってどういう……)
男(まさか、そんな……)
男(いや、僕は何を……、まだ今日会ったばかりの人と……っ!)ドキドキ
ピト
男「!」
男(横に寄り添って座って……)
女「……」ニコ
『あったかい』
男「……」
女「……」
男(ああ、僕は何て……)
男「……ありがとう」
女「?」
男「君みたいな、純粋な人に会えて良かった」
女「……??」
男「……ふふ」ニコ
女「……」
女「……」ニコ
女「……」
男「……」
男(温もりを感じる……)
男(何だ、この気持ち)
男(今まで、こんなすぐに人に打ち解けたことなんか……)
男「……」チラ
女「……」ニコ
男「!」ドキッ
男「ぅ……」ドキドキ
男(な、なんだこの感じ……)
男(す、すごく、胸が……)
男(……)
男(そんなこと言ってる場合じゃないよな)チラ
女「……」
男(なんで、あんなところにシートで家作って、一人で寝て……)
男(……)
男(聞かないほうが、いいかも知れないな……)
女(あったかい)
男(僕は、この人を元気にしたいと)
男(笑顔を見たいと思った)
男(それだけだから……)
男(……僕に出来ることは、何だろう)
男「……」
ギュ
男「!?」ビク
女「すぅ……」
男「……」
男「ふふ」
男「風邪ひくよ」ファサ
女「……すぅ、すぅ……」ギュゥ
……
……
チュン チュン
男「……」
男「ん……」
男(朝か……)
女「すぅ、すぅ……」ギュ
男「……ふふ」
男(よっぽど疲れてたんだろうな、ゆっくり寝かせておいてあげよう)
……
……
女「すぅ、すぅ……」
女「……」
女「……?」
女「!!」ガバッ
女「……」
女(そうだ、ここは、昨日助けてもらって……)
女「……?」スンスン
男「あ、おはよう」
男「丁度いま、朝ご飯作ったから、一緒に食べようか」
女「……」
男「あ、後それと、歯ブラシとかも買ってきたから……」
男「勝手にごめん」
男「……でも、もし良かったら、使って」
女「……」
男「それじゃあ、いただきます」
女「……あむ」
女「もぐもぐ」
男「……クチに合うかな」
女「……!」
女「おいしい……」
男「ふふ、良かった」
男「……」
男「え?」
男(い、今……)
男「声、出るようになったの……?」
女「……っ」
男(驚いた表情してる……、やっぱり、元々話せなかったんだ)
女「……」カキカキ
『なぜだか分からない……けど、久々に声が出たよ』
男「なんで……」
女「……」
『あんまり美味しかったから、声出ちゃったのかなぁ?』
男「……」
女「……」ニコ
……
……
男「ふぅ、ごちそうさま」
女「ぅ……」
男「?」
『あんまり美味しかったから、食べすぎて苦しい』
女「……」
男「……ふふ」
男「ソファで横になる?」
女「……」コク
男「それじゃ、毛布を……」
グイ
男「え?」
『一緒に』
男「え……」
女「……」
男「……」ドキドキ
……ドサッ
ギュゥ
ムニュゥ
男「……っ」
男(後ろから、抱き締められてる……)
男(……ヤバい、心臓がバクバク言って……)バクバク
男(……後ろで何を考えてるんだろうか)
男(……)
男(何にせよ)
男(ものすごく、あったかい……)
男(し、しかし……)
ムニュ ムニュ
男(やっばい……)
男(柔らかくて暖かいものにカラダ中が包まれてる)
男(気を保て)
男(平静に、平静に)
男(……)
……
……
男「くぅ…」
男「…ん」
男「…」
男(…また寝てしまってた)
ファサ
男「ん…」
男(毛布…)
男「!!」ガタッ
男(あ、あの人は…!?)
男(ま、まさか、もう家を出…)
男(…ん?)クンクン
男(甘い匂い…?)
ガチャッ
女「…」
男「…!」
男「良かった、出て行っちゃったのかと思ったよ…」ホッ
女「…」
カキカキ
『お礼にと思って、おやつにケーキ焼いたの』
『驚かせようと思ってたのに、起きちゃったね』
女「…」ニコ
女「…」
『お金、全然持ってないから、すごく安っぽい感じになっちゃったけど…』
『良かったら、食べてね』
男「もちろん!」
男「…あの、ケーキを頂く前に」
女「?」
男「…」
男「君の名前を教えて欲しい」
女「…」
『女、だよ』
男「女、さん…」
『あなたは?』
男「男、です」
女「…」ニコ
…
…
男「あむ」
男「んむんむ…」
女「…」ジーッ
男「…」
男「うまい」
男「メチャクチャうまい」
男(…あったかい味がする)
男「僕もたまに焼くけど、全然こっちの方が美味しいです」
女「…」ニコ
『良かった』
男「…」
男「…さい」
女「?」
男「作り方、教えて下さい」
男「…」
男(あの、ケーキを食べる僕を見る、満足そうな顔…)
男(あれは、多分…)
男(僕の家を出て行ってしまう、サインなんだ…)
男(…)
男(嫌なんだ、まだ)
男(もう少し、長く)
男(少しでも、一緒に…)
…
…
女「…」
男「へぇ、こんなの入れるんですか」
『うん』
『入れるタイミングも重要で、これでふんわりしっとり仕上がるんだよ』
男「そうなんだ…」
男「すごい本格的だ…」
男「僕も見習わなくちゃ」
女「…」クスクス
男「!」
男(少しだけど、声出して笑ってる)
男(女さんが…)
女「…」カキカキ
『また、ちょっと声出たよ』
『これはきっと、楽しいから』
『心が明るくなってるからだと思う』
『ありがとう』
男「…」
男「女さん」
女「…?」
ギュッ
女「…っ」
男「もっとここに居てよ」
男「出て行かないで」
男「ずっと傍にいてよ」
女「…」
男「…」ギュゥ
男(女さんっ…!)
男「…」
男「ここにいれば、もっと笑わせてあげられる」
男「何があったのか知らないけど、ずっと不自由なんかさせない」
男「満足な生活ができるかは分からないけど…」
男「傍にいて欲しい」
男(今が、幸せなんだ…)
男(終わらせたくないんだ…っ)
女「…」
『ありがとう』
男「…」
『でも、できない』
男「…」
『私は、ずっとここには居られない』
男「…」
『でも、本当に、色々、楽しかっ…』
チュッ
女「んっ…?」
男「…」
男「…」
男「…ごめん」
女「…」
男「…」
女「…」
男「…」
女「…」カキカキ
男「…」
男「え…」
『ごめんなさい』
『もう、今すぐ出て行きますね』
『ありがとう』
男「なんで…」
女「…」
男「…っ」
男(なんて、悲しそうな顔を…)
女「…」ペコ
男「待って…」
女「…」テクテク
男「待って…っ」
ガッ
女「…っ」
男「なんで、…なんでっ」
男「すぐに行かなきゃならない理由は何ですか」
男「僕がキスしたから…?」
男「もしそうなら、もうしませんし、謝ります」
男「下心なんてない」
男「ただ、純粋に、あなたともっと一緒に…」
女「…ぅ」
男「…はっ」
男「す、すいません…」スッ
男(腕を強く握ってしまっていた…)
女「…」
男「…」
女「…」
男「…」
女「…」
男「…」
男「あ、あの…」
男「せめて…」
男「理由だけでも、教えてもらえませんか…?」
女「…」
『だって、私』
男「…」
『家、ないから』
男「え…」
男「…」
男「君、女ホームレスなの…?」
『うん』
『そうなった理由は、あまり言いたくないけれど…』
『帰るところ、ないの』
『だから…』
『あまり、私に構わないで』
男「…」
男(まさか、とは思っていたけど…)
男(本当に、そうだったんだ…)
男(…)
男(…そんなことより)
男「それ、変だよ」
男「帰るところがないから、家がないから、構わないで…?」
男「なんでそうなるの」
男「それなら、余計に…」
『そういうわけには、いかないと思うの』
『帰るところがないなら、ここに居ればいい、と言ってくれようとしたんだよね?』
男「…そうだけど」
男「それの何が間違って…」
女「…」
『ちょっと、見て』
男「え?」
女「…」スルスル
男「!!」
男「な、何を…っ?」カァァァ
パサッ
男「ぅ…っ」
男「…」チラッ
男「…」
男「…!」
男「こ、これ…」
男(カラダ中に、傷とアザ…)
『いきなり気持ち悪いもの見せて、ごめんね』
『これのほとんどは、私が小さいときに、親につけられた傷なの』
『あまり詳しくは、言わないけど…』
『私、愛されたことがない』
『学校もろくに行ってなくて、まともな教育も受けてない』
『あんまり、他人と関わらない方がいい人間だと思うの』
『私といて、楽しい気分になれると思ってもらえてるのは、嬉しい』
『でも、いつまでもそうじゃない』
『これからしばらくここに居させてもらっても、』
『私が本当はどんな人間か』
『どれだけ暗い心を持っているか』
『どれだけ知識がないか、頭が良くないか』
『そういうものしか見えてこないと思う』
『私は、あなたみたいな良い人に、迷惑をかけたくないの』
『住む世界が違う』
『きっと、近いうちに分かる』
『だから、私は…』
『ケーキを上手に作れる女の子、として覚えていて?』
『それだと何だか可愛いから、ふふ』
『…これ以上いると、それも変わっちゃうから』
『今度こそ本当にさようなら』
『…本当に、助けてくれて、ありが』
ギュゥ
女「んっ…!」
男「…」
女「ぁ…」
男「…さっきは無理やりしちゃったけど、今度はちゃんと聞きます」
男「僕にキスされるのは、イヤですか…?」
女「…」
女「…」ウルウル
チュッ
女「んっ…」
ギュゥ
女「んんっ…」
女「んっ…」ポロ ポロ
女(だめだって言ってるのに、何でこの人は…)
女(嫌われるのが怖くて、それだけがいつも怖くて…)
女(いつもいつも冷たく、心は凍らせておくように心がけていたのに…)
女(この人のせいで…)
女(溶かされそう…)
男「…」スッ
女「…」
『まだ、会って1日しか経ってないのに、2回もキスしちゃったね』
男「…」
女「…」
『あなたのことは好き』
『だけど、私はもう行きます』
『これは変わらない』
『変えられない』
『ごめんね』
男「…」
男「うん、分かったよ」
男「ごめんね、散々引き止めて」
男「…」
男「でも、最後に一つだけ」
男「…もう一度だけ」
チュッ
…
…
…
…
「…」
「ねぇ、パパー」
「んー?」
「パパの初恋の人ってどんな人ー?」
「…」
「誰よりも清らかで優しくて、美しくて、笑顔が素敵な…」
「ケーキを、上手に作れる女の人だったよ」
おわり。
「ママはー?」
「…ふふ」
「誰よりも正義感が強くて、面白くて、優しくて、心の暖かい…」
「美味しい朝ご飯を作ってくれる男の人だったよ」
ほんとの、おわり。


シンデレラの様な、外見の良さがそのまま幸せに直結する話は好きだよ、物語は綺麗なものだけ存在していれば良いからね。