小町「お兄ちゃん、おはよ!」ギュ
八幡「んっ……起こしてくれるのはありがたいが、人のベッドに潜り込むのは止めろ」
小町「えーだってこうした方が確実に起きるじゃん」
八幡「前まで普通に起こしてただろが……なんで急に」
小町「……嫌、かな」
八幡「……別に嫌とは言ってねえだろ。ほら朝飯食うぞ」
小町「うん!えへへ……」ギュ
八幡「……」
八幡(……最近、小町の様子がおかしい)
元スレ
八幡「俺と血が繋がってないと知ってから小町の様子がおかしい」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1398516166/
八幡(前もけっこうじゃれてくる事はあったが最近は特にスキンシップが激しい気がする)
小町「どう、お兄ちゃん! 今日も朝ごはん上手に出来たでしょ?」
八幡「ああ上手いよ。日に日に上達してるな。ほんと、兄妹じゃなきゃ求婚してるレベル」
八幡(こんな事を言えば前は「うわあ……それは流石に引くよごみいちゃん」とか言って哀れみの目で見てくるところだが……)
小町「……っ、そ、そうかな」
八幡(なんでこの娘、顔赤くしてうつむいてんの?)
八幡(いつからこうなったのか……まあ、思い当たる節は一つしかない)
八幡(ジャンジャジャーンつい最近両親が告げた衝撃の真実ぅ!実は俺と小町は血が繋がってませんでした(・ω<))
八幡「……はあ」
小町「どうしたの?ため息なんか吐いて……もしかして、小町の料理が」
八幡「ちげえよ……ちょっと考え事しててな。お前の料理はほんとに旨いよ」
小町「そ、そっか……」
八幡「……」
八幡(……なんというか、気まずい)
八幡(両親から告げられた衝撃の真実に俺自身、戸惑いはなかったと言えば嘘になる)
八幡(だが、血は繋がっていなくとも小町は俺の妹で家族だ。それは変わらない。そう思っていたのだが……)
小町「ごちそうさま」
八幡「……ごちそうさま。着替えてくるわ。お前も学校行く準備しろよ」
小町「あっ、お兄ちゃんちょっと待って!」
八幡「んっ、なんだ」
ペロッ
八幡「!?」
小町「ケチャップ、口に付いてたから……えへへ、今の小町的にポイント高い」
八幡(……まさか、小町がここまで変わるとはな)
八幡「小町、ちゃんと鍵は閉めたか?」
小町「うん、バッチリだよ!」
八幡「よし、んじゃ行くか」
八幡(前はたまに送る程度だったが、最近は毎日こうやって小町と一緒に当校してる気がする)
小町「……えへへ」ギュ
八幡「おい、そんなに強く掴むな」
小町「えーだって掴まってないと落ちちゃうじゃん」
八幡「……仕方ねえな」
小町「えへへ、お兄ちゃん……お兄ちゃん」サワサワ
八幡(これ、掴むというか触るだよな? えっ、やだ痴漢?)
小町「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」サワサワサワサワスーハースーハー
八幡「」
八幡(触るだけじゃ飽きたらず匂いまで嗅ぎだした……だと)
八幡「お、おい、小町?」
小町「お兄ちゃん、んっ、あっ、あっ……」サワサワ
八幡「……」
八幡(何も見ていない何も聞いていない小町の片手がスカートの中に伸びて何かしてるなんて俺は知らない)
小町「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ!、あっ、あっ!……あっ」ビクンビクン
八幡「……」
―――
――
八幡(と、とりあえず着いたか……良かった、やっと解放される)
八幡「おい小町。着いたぞ」
小町「はあ、はあ……んっ、ありがと、お兄ちゃん」
八幡(内股で紅潮した顔の女子中学生と一緒にいる目の腐った高校生……ヤバイはたからみれば通報もんだな)
八幡「んじゃ、俺は高校行くから。またな」
小町「お兄ちゃん!」
八幡「どうした? また前みたいにカバンを籠に……」
チュ
八幡「」
小町「送ってくれたお礼だよ……えへへ、今のポイント高いね」
奉仕部
八幡「」
雪ノ下「……ねえ、由比ヶ浜さん。彼、何かあったの?」
由比ヶ浜「えっと……なんか今日はずっとこんな感じだよ。彩ちゃんに話し掛けられてもぼーってしてたし」
雪ノ下「随分、重症ね……ねえ、比企谷くん」
八幡「」
雪ノ下「聞いているの? その普段以上に腐った目をするのは止めて欲しいのだけど。部室全体が腐ってしまうわ」
八幡「」
雪ノ下「聞いているのかしら?」
八幡「」
雪ノ下「その……本当に何か、あったの?」
八幡「」
―――
―
八幡(気付いたら俺は部活を終え、家に帰っていた)
八幡(まるで時間を吹っ飛ばされたかのようだ。小町に……頬とはいえキスされただけでまさか、ここまで動揺するとはな)
八幡「……はあ」
ガチャ
小町「お兄ちゃん!晩御飯できたよ~」
八幡「ああ、わかった。いまいく」
八幡(流石に、このままじゃ不味いよな……)
八幡「ふう、ごちそうさま。旨かったよ」
小町「そっか、良かった~あっ、そうだお兄ちゃん言い忘れてたんだけど……」
八幡「なんだ?」
小町「今日、お父さんとお母さん、仕事で家に帰らないんだって」
八幡「えっ……」
小町「だから……二人きり、だね。あっ今の小町的にポイント高い」
八幡「お、おう」
八幡(不味い……今の小町と二人きりだと?)
八幡(今の小町は正直、何をしでかすか分からん……今日はさっさと寝て過ごすのが無難か。寝るときは念のために鍵も掛けよう)
八幡「小町、風呂は沸いてるか?」
小町「お風呂? うん、いつでも入れるけど」
八幡「なら今日は先に入っていいか? 少し疲れててな。今日は早く寝たいんだ」
小町「疲れてるって……また奉仕部関係?」
八幡「ま、まあそんなところだ」
小町「ふーん、そう……また、お兄ちゃんを……あの部活が」
八幡「……小町? どうかしたか?」
小町「ううん、何でもない。それじゃ、お兄ちゃんの着替え準備しとくね」
八幡「ああ、助かる」
風呂場
八幡「はあ……どうしたもんか」
八幡(小町のあの行き過ぎたスキンシップの意図は流石に分かる)
八幡(あいつは俺に対して兄や家族以上の感情を抱いている)
八幡(いつからそんな感情を秘めていたのかは分からない。血の繋がりがないと知り、元々の想いに歯止めが効かなくなったのか? それとも……)
八幡(ともあれ、何としないといけない。少なくとも、俺は血の繋がりがないとしても、小町を妹として……家族として見ているのだから)
八幡「とりあえず、一度小町と話して……」
ガラッ
小町「お兄ちゃん!久しぶりに一緒にお風呂入ろう!」
八幡「」
八幡「お、おい! お前なんで勝手に入ってきてんの!?」
小町「いいじゃん別に~」
八幡「よくねえよ!たくっ……俺は先に出るぞ」
小町「待って!」ギュ
八幡(えっ、ちょ、まずいって、裸でなんで抱きつてんの?背中に突起が、柔らかい二つの突起がああああああ!!)
小町「……お兄ちゃん、お願い」
八幡「さ、流石にこの年で一緒に風呂入る兄妹なんていねえだろ」
小町「……血は繋がってないんだから、大丈夫だよ」
八幡(血は繋がっていない、か……)
八幡「血の繋がりなんて関係ねえよ。俺たちは兄妹だ。だからこんな事はダメだ」
小町「……」
八幡「なあ、わかったなら早く離して……」
ギュ
八幡「ちょ、な、なんでさらに強く抱きついてんの?」
小町「お兄ちゃ……ううん、は、八幡」
八幡「なっ……!」
小町「えへへ、こうやって「お兄ちゃん」って呼ばないなら、もう兄妹じゃないでしょ? なら、こうやって抱きつくのもいいよね」
八幡「お、おい!そういう問題じゃ……」
小町「小町ね、本当はずっと前から、こうしたかったんだよ」
八幡「なに……?」
小町「でも、小町たちは兄妹だから……血が繋がってるから、ダメだって……」ギュ
八幡「……小町」
小町「だからさ、一緒になれないなら、せめて大好きなお兄ちゃんが幸せになれるよう雪乃さんや結衣さんを応援してたんだ」
小町「それなのに、血が繋がってないって……お兄ちゃんの側にずっといていいって、なったら、そんなの我慢できるわけないじゃん」
八幡「……」
八幡「……何度も言うが俺たちは兄妹だ」
小町「血は繋がってないよ」
八幡「それでも家族だろうが。だいたい、兄妹でも別に一緒に居れるだろ。何年俺の妹やってきたんだよ。シスコン舐めんな」
小町「血の繋がってない家族なら、こういう事をしていいよね」スリスリ
八幡「だ、だからなんでそうなるんだよ……」
八幡(ちょ、なんで突起擦り付けてんの? や、ヤバイこのままでは俺の八幡が元気になってしまう……早く風呂から出ねえと)
小町「だって、血の繋がってない家族なんて……そんなの夫婦しかないよ」
八幡「なっ……」
八幡「お、お前、んなの極論だ。俺はお前と夫婦になった覚えはねえよ」
小町「なら、夫婦になってよ」
八幡「なっ!?」
小町「小町はお兄ちゃんが大好き。そして血も繋がってない。問題ないよね?」
八幡「大有りだ馬鹿!だいたいずっと妹だったお前を異性として見るなんて……」
小町「でも……ここは素直みたいだよ?」ニギニギ
八幡「や、やめろばか!……た、だの整理現象だ」
八幡(くっ、風呂場に長居してるせいか頭がのぼせてきた……思考がまとまらない)
八幡「だいたい俺がお前をそんな目で見れるわけが……」
八幡(でも……血は繋がっていない、んだよな。体が反応するのは別に間違ってはいない、のか)
八幡(思えば……小町はいつも俺の側にいてくれた)
八幡(一色の依頼の時も、小町がいたから乗り越えられた)
八幡(俺の唯一の理解者であり、俺の……)
八幡(って、なに考えてんだ、俺は……のぼせて、まともに思考できなくなってる)
八幡「……まあ、そのあれだ」
八幡(とりあえず、小町に言わないと……兄として、家族として)
小町「……?」
八幡(俺はお前を……
)
八幡「異性として……見れなくはない、な」
小町「お兄ちゃん!」ギュ
八幡(あれ……? なに言ってんの、俺)
八幡「小町……」
八幡(いかん……のぼせて、思考が……意識が、飛ぶ……)
小町「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんえへへ」
―――
―
八幡「んっ……あれ」
八幡(俺、なんでベッドに……確か、風呂入ってたら小町が入ってきて、それから……)
ムニ
八幡(……むに? えっ、なにこの感触……いやな予感が)
小町「お兄、ちゃん……んっ」
八幡「」
八幡(裸?えっ、小町裸?なんで裸?てかよく見たら俺も裸!?)
八幡「お、おい、小町!起きろ!」ユサユサ
小町「もぅ~なあに、お兄ちゃん」
八幡「ど、どういう事だこれは!?」
小町「どうって……あっ、そっか小町、お兄ちゃんと」
八幡「お、俺となんだ?」
小町「……気持ち良かったよ、お兄ちゃん。あっ今のポイント高いね」
八幡「」
八幡「お、俺は、なんて事を……」
小町「大丈夫だよ、お兄ちゃん。千葉の兄妹なら許されるよ!」
八幡「ねえよ。高坂さん家は性行までしてねえだろ…」
小町「それに血が繋がってないからセーフ!」
八幡「アウトだよ……はあ」
小町「……やっぱり、嫌、だった?」
八幡「……」
小町「……ごめん」
八幡「……昨日、言っただろ。異性として見れなくはない、ってな」ギュ
小町「あっ……」
八幡「責任は取るよ……家族、だからな」
小町「……うんっ!」
―――
――
奉仕部
八幡「悪い、雪ノ下。今日は早く帰っていいか?」
雪ノ下「また? 随分とサボり癖が着いたものね」
由比ヶ浜「なんか最近、ヒッキーそういうの多くなったね」
八幡「小町と約束があってな」
雪ノ下「それも前に聞いたわ。あなた達、最近は随分と仲がいいのね」
八幡「ま、まあな……」
由比ヶ浜「あっ、そう言えばこの前日曜にヒッキーと小町ちゃんが一緒に歩いてるの見たよ! なんかちょっと、仲良し過ぎるというか……話しかけにくかったよ」
雪ノ下「可哀想に、シスコンを拗らせてとうとう妹に手を出したのね」
由比ヶ浜「え~ヒッキーキモい!」
八幡「……」
八幡「……まあ、そうかもな」
雪ノ下「えっ」
由比ヶ浜「えっ?」
八幡「んじゃ、帰るわ。またな」
由比ヶ浜「ちょ、ヒッキー!」
雪ノ下「ま、待ちなさい!」
バタン
八幡「はあ……まっ、隠し通すのは無理だろうな」
八幡(俺と小町の関係を知れば、あの二人はどういう反応をするだろうか)
八幡(軽蔑するだろう。拒絶するだろう。そして……俺から離れるだろう)
八幡(僅にできた俺の繋がりも、これで全て終わり、か)
八幡(別に悲観する事ではない。元々俺は一人ぼっちだ。ただ、前に戻るだけ)
八幡(前に、そう小町だけが側にいる、前のように……)
八幡(いや、前と同じではないか)
八幡(今、俺にとって小町は兄妹ではなく、『家族』なのだから)
終わり