1 : 以下、\... - 2014/07/25 02:51:10.75 VxiV2xJj0 1/87

「あー、怠い」

「姉さん、カバン片付けてよ。邪魔」

「弟の癖に姉に命令してんじゃねえっての」

「命令じゃなくてお願いしてるんだよ」

「なら断わる。今あたしはダラダラすんのに忙しいんだよ」

「はあ。あーあ、他の家のお姉ちゃんはもっと優しいのに」

「なら他の家の弟になれよ、バーカ」

「みんな分かってないんだよな、姉さんの本性が」

「は?」

「うちに来た友達、みんな言ってるんだよ。美人で可愛い姉さんがいて羨ましいって」

「は、はぁ!? ばば、バカじゃねえの! はぁ!?」

「え、どうしたの?」

「あたしが可愛いとか、な、何だよそれ! わかった、バカにしてるんだろ!?」

「し、してないと思うけど」

「……そ、そっか。なら、別にいいけど」

元スレ
弟「姉さんを誉めると面白い」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1406224270/

6 : 以下、\... - 2014/07/25 02:58:18.34 VxiV2xJj0 2/87

(どうしたんだろ、急に怒り出して。別に怒られるような事、言ってないと思うけどなぁ)

「姉さん、なんで怒ってるの?」

「怒ってないし」

「でもさっき怒鳴ったじゃん」

「うるさい」 プイッ

(あれ、耳赤くなってる? そういえばさっきも、顔真っ赤にしてたけど……)

(もしかして、照れてるだけ?)

「……そういえばさ、姉さんのこと優しくて一緒にいて楽しそうって言ってたなー」

「……っ」 ビクッ

「ほら、僕の友達が遊びに来てた時にさ、姉さん一回だけ一緒になってゲームしたでしょ? 他の家のお姉ちゃんはそういう事してくれないらしくてさー」

「へ、へぇ……」

「姉さんのこと好きだって友達もいてさー、どう思う?」

「は、はぁ!? ガ、ガキに好きだとか言われても全然嬉しくないっての!」

「そうだよね。じゃあ僕、部屋に帰るね」 スタスタ

12 : 以下、\... - 2014/07/25 03:06:21.59 VxiV2xJj0 3/87

「……ぷ」

「ぷく……」

「ぷぷ……」

「ぷは、あはは!」

(姉さんのあの照れ顔、もう面白くて面白くてしょうがなかった!)

(いつも僕に偉そうにしてる姉さんが、あんなに顔真っ赤にして照れてるんだもん!)

(しかも僕がからかってる事に全然気付いてないし!) ポフポフッ

(もう最高! あー、姉さんって褒められるのにあんなに弱かったんだ)

(そういえば、母さんも父さんもあんまりベタベタ誉めたりしないし、姉さんああいう性格だからまっすぐに誉める人ってあんんまりいないのかも)

(よぅし、これからは僕が姉さんのことをたくさん誉めてあげよう!)

「ぷくくく……」

16 : 以下、\... - 2014/07/25 03:12:11.42 VxiV2xJj0 4/87

「ふぁ~あ」

(欠伸なんてして、昨日もどうせ夜更かししてたんだろうけど……)

「ね、姉さん」

「ん~?」

(姉さんが褒められるのに弱いのはもう分かってるんだ、今までの恨みも晴らしてやる!)

「そ、その寝癖良いね!」

「は?」

「そのダラしない感じのパジャマも姉さんらしいっていうか」

「……ふぅ」

「姉さん? ひっ、いだっ、いだだだだだっ!?」

「お・ま・え・なぁ! あたしのこと舐めてんのか、ああ?」 グリグリ

「ごめんなさいぃ! 痛い、頭痛いって、放してよぉ!」

「おら。……ったく、朝から無駄に疲れさせるんじゃねえよ」

「う、うぅ」

17 : 以下、\... - 2014/07/25 03:15:59.83 VxiV2xJj0 5/87

(こんなはずじゃなかったのに)

(僕、ちゃんと褒めたのに。寝癖とか、パジャマとか)

(昨日と何が違うって言うんだよ、もう)

18 : 以下、\... - 2014/07/25 03:19:42.79 VxiV2xJj0 6/87

「おはよー」

「おはよ、弟くん!」

「んー」 ガタッ スッ

「どうしたの、なんだか元気ないよ? 大丈夫?」

(そりゃ朝から頭グリグリされてまだちょっと痛いし、元気もないけどさ)

「……女ちゃん、ちょっと聞いていい?」

「何?」

「例えばさ、僕が女ちゃんのこと可愛いって褒めたらどう思う?」

「え……う、嬉しいよ?」

「やっぱり褒められたら嬉しいよね」

「ほ、褒められるのが嬉しいんじゃなくて、弟くんに褒められるのが嬉しいん、だけど」 ボソッ

(昨日のあれはやっぱり照れ隠しだよね)

19 : 以下、\... - 2014/07/25 03:27:45.27 VxiV2xJj0 7/87

「じゃあさ、例えば女ちゃんが寝癖のまま学校に来てさ」

「来ないよ?」

「例えばだよ。寝癖のまま女ちゃんが学校に来て、僕がその寝癖を誉めるの」

「だから来ないってば」

「……じゃあ、僕が女ちゃんの家に行ったら寝癖のままだったって事でいいよ」

「ちゃんと連絡してから来てよ!」

「だから例えばだってば。……とにかく、それで女ちゃんに『その寝癖良いね』って褒めるの。どう思う?」

「んー、なんか嫌」

「え、なんで?」

「だって寝癖は寝癖だよ? 私、弟くんに寝癖なんて見られたくないもん。そんなの褒められても恥ずかしいだけだよ」

(そういうものなのか。そうだよな、誉めて欲しい所って人それぞれあるもんな)

「ありがと、女ちゃん。僕の悩み、解決したよ。そっか、そういう事だったんだ」

「……もっと可愛いって言ってくれてもいいのに」 ボソッ

20 : 以下、\... - 2014/07/25 03:35:37.81 VxiV2xJj0 8/87

(まずは姉さんがどういう所を誉めて欲しいのか、それを知る所から始めなくちゃ)

(ええと、今まで姉さんが喜んだ褒め言葉は……『可愛い』、『美人』、『優しい』、『一緒にいて楽しそう』に……『好き』?)

(逆に『パジャマ』、『寝癖』は怒られた)

(んー) トントンッ

(基本的に褒めたら喜んでくれてる気もするけど、今朝は何がダメだったんだろ?)

(『ダラしない』……あ、これ普通に貶してる)

(それに、姉さんを誉めるのに僕の方が照れちゃって、中途半端な感じになってるし)

(んー、昨日は『友達が言ってた』って形だったから上手く言えたっていうのもあるかも)

(だって、僕が姉さんに『美人』、『優しい』なんて言っても嘘くさいし)

(誉める時はビシッと照れずに! でも、少しだけ遠回しに言う! うん、これだ!) パンッ

「あ、勉強終わった?」

「うん! 急いで帰らないと! じゃあね!」 タッタッタッ

「あ……もう! 弟くんのバカ!」

21 : 以下、\... - 2014/07/25 03:42:57.58 VxiV2xJj0 9/87

「ただいま~」 ボンッ

「おかえり姉さん」

「はいはい邪魔、あ~もうマジ怠い。部活しんど~い」 バタンッ

(……今日の研究を生かして姉さんを誉める! まずは姉さんの誉める所を探して……)

「姉さん、香水付けてる?」

「はあ? んなもん付けて部活行ったら怒鳴られるってぇの。つーか今休憩中なんだから話掛けんな」

「付けてないんだ。じゃあ、この良い匂いって姉さんの匂いなのかな」

「は、はぁ?」

「汗の匂いかな? 女の人の汗ってこんなに良い匂いするものなの?」 クンクン

「お、お前何バカっ、バカ言ってっ! か、嗅ぐなぁ! て、ていうか自分の匂いとか分かるわけな、ないだろっ!」 ワタワタ

「ふーん、そういうものなんだ。でも僕好きだな、姉さんの汗の匂い」 クンクン

「……っ! は、離れろバカっ! あ、あたしシャワー浴びてくるからっ!」 タッタッタッ

(ふーん、汗の匂いでも怒られないんだ。むしろ前よりも反応凄かったかも。……面白いなぁ)

24 : 以下、\... - 2014/07/25 03:54:38.64 VxiV2xJj0 10/87

「あースッキリした! ったく、何が汗の匂いだよ、気持ち悪い」

(匂いシリーズその2でいってみようかな?)

「……僕、お風呂上がりの女の人って好きなんだよね」

「風呂上がりぃ? つーか盛ってんじゃねえよ、ガキの癖に」

「リンスの匂いなのかな? 女の人しかしない匂いってあるよね? 僕、あの匂いが凄く好きなんだ。……今、姉さんからしてるみたいな匂いが」

「う……っ」 カァァァァ

「もっと近くで嗅いでみたいな」

「ね、寝る!」 スタスタスタ

「え?」

「あ、あたしはもう寝る! 晩ご飯いらないって言っといて!」 スタスタスタ

「……あーあ、行っちゃった」

(いつもは何言っても全然言うこと聞いてくれない姉さんが、こんなに簡単に僕の思う通りになるなんて)

「なんか、楽しい!」

25 : 以下、\... - 2014/07/25 04:02:51.63 VxiV2xJj0 11/87

(もっと姉さんを誉めたい! もっと照れる姉さんを見たい! どうすればいい?)

(あんまり誉めすぎると、姉さんはすぐに逃げちゃうし、無理に追いかけたら変に思われるだろうし)

(……追かけるんじゃなくて、もっと一緒にいる時間を増やせたら)

(そうすれば、姉さんの誉める所も増えるし、一石二鳥だけど)

(今よりも一緒にいられるようにするって、どうすれば……)

「あ」

(姉さん、カバン部屋に持って行くの忘れてる)

(学校のカバンだけならいいけど、部活のカバンもあるから邪魔なんだよなぁ)

「……部活、見に行っちゃおうかな」

(いや、ダメだ。絶対に怒られる。学校にまで見に行ったりしたら、絶対に姉さんは本気で怒る。だからダメだ、絶対にダメだ!)

26 : 以下、\... - 2014/07/25 04:09:44.30 VxiV2xJj0 12/87

(……昨日あれだけ悩んだのに、あっさり姉さんの学校まで来ちゃった。一応、忘れ物を届けに来たって事にして入ったけど……) チラッ

姉友「……体育館の入り口から覗いてるの、あんたの弟じゃないの?」

「は?」

(うわ、もう見つかった!)

「なんでお前が学校にいるんだ? ……練習の邪魔だ、今すぐ帰れ」 スタスタ

「あ、あの」

「あ?」

(怒ってる、すごく怒ってる! どうしよう、何か言い訳しないと!)

「ね、姉さんの……」

「は?」

「姉さんの、部活してる格好良い姿が見たかったから……」

「なっ」 カァァァァ

「いつもクタクタに疲れるまで頑張ってるから、その頑張ってる格好良い姿が見たくなって……」

「ばっ、何恥ずかしい事言ってっ、んなもんで誤魔化されるわけっ!」

27 : 以下、\... - 2014/07/25 04:14:54.54 VxiV2xJj0 13/87

姉友「姉、長くなるならあんた抜きで練習再開するよ?」

「い、今戻るから! ……そ、それとさ、ちょっとうちの弟、見学させていい?」

姉友「え? いや、それは私じゃなんとも言えないけど。顧問に言ってよ」

「んじゃ、あたしちょっと顧問の所行ってくるっ!」

姉友「ちょ、だから……ああ、もういいわ! はいはい、練習再開! 代わりに一年入って!」

「あの」

姉友「隅っこで邪魔にならないようにしてて」

「あ、はい」

「オッケーだって! んじゃ、あたし入るね!」

姉友「あんたは1セット終わるまで待機!」

「そ、そんなぁ!」

姉友「そんなも何もない! 私用で流れ止めてそれだけで済ませてあげるんだから感謝しなさい!」

「むぅ」

28 : 以下、\... - 2014/07/25 04:20:11.02 VxiV2xJj0 14/87

(正直、姉さんに問い詰められた時に出た言葉は八割が口から出任せで)

(真実だって言えるのは、姉さんを見に来たって事くらいだったんだけど)

(実際にコートの中を動いてる姉さんを見ると、言葉通りに格好良いと思った)

(家ではあれだけ怠けている姉さんの頑張る姿は、なんだか僕の胸の中をモヤモヤさせて)

(……ちょっと、憧れた)

「お疲れさまでした~!」

姉友「おつかれ~」

「じゃ、あたしちょっとお先に失礼します」

姉友「ん?」

「ほら、ガキ待たせてるからあんまり遅くなるとまずいんで」

「……」 ペコリ

姉友「ああ、はいはい、まあ適当に気を付けて帰りなさいよ」

「へへっ」

30 : 以下、\... - 2014/07/25 04:30:27.05 VxiV2xJj0 15/87

「ったく、学校にまで押しかけてあたしの格好良い姿が見たいとか、どんだけシスコンなんだってぇの」

(もし僕がシスコンなら、多分日本中の弟の9割くらいはシスコンだと思う)

「で? お姉様の部活魂は焼き付けてくれたわけ? おい?」 グリッ

「い、痛いってば」

「あははは、まっ、お前みたいな素人が見ても何も楽しくなかっただろ?」

「……悔しいけど、姉さんは格好良かったよ」 プイッ

「……ふーん」

「べ、別に、それで姉さんを見直したとか、そんなんじゃないから。ただ……すごく格好良かった」

「さっきから格好良かったしか言ってないじゃん」

「う、うるさいな!」

「くくく、まあいいよ。ほら、コンビニ寄ってこうぜ。肉まんでも奢ってやるからさ」

「い、いいよ、晩御飯入らなくなるし」

「遠慮するなっての! ほらほら、行くぞ!」 グイグイッ

「な、なんで姉さんはそう自分勝手なんだよぉ!」

33 : 以下、\... - 2014/07/25 04:42:45.73 VxiV2xJj0 16/87

(……結局昨日は、僕の方が姉さんに負けた気分の一日だった)

(せっかく姉さんの弱点を見つけたのに、これじゃあ前と変わらないじゃないか)

(どうにかしてもっと姉さんを誉めないと)

「おはようさん」 スタスタ

(姉さんの誉める所……寝癖? それは前にやって怒られた。僕より大きい所? ぼ、僕だってすぐに大きくなるし)

(後は……) チラッ

「ん?」

(おっぱいが大きい所、は……褒めたら多分すごく怒ると思うし、僕もすごく恥ずかしいから却下) モジッ

「こら。お姉様がおはようって言ってんだ、お前もちゃんと言え」 ゴツッ

「痛いってば! ……お、おはよう! これでいいでしょ!」

「やればできるじゃねえかよ、最初からそうしろよな」 ニカッ

(ああもう、もっと上手く褒められるようになれば、もうこんな風に叩かれたりしないのに!)

34 : 以下、\... - 2014/07/25 04:48:01.26 VxiV2xJj0 17/87

「お、おはよ、弟くん!」

「……え、ああ、おはよう」 ガタッ スッ

(いつでも誉める内容がすぐに思い付けばいいけど、なかなかそうもいかないのがダメなんだよなー)

(大体人を誉めるなんて、そんな毎日やってる事じゃないし……)

「ね、ねえ、弟くん!」

「ん、何?」

「弟くんって、お姉さんと仲良いの?」

「え?」

「き、昨日ね、お姉さんと二人でいるの見ちゃって、そしたらなんだかすごく仲が良さそうだったから」

「えぇ? 僕と姉さんが? それはないない」

(って、こういう風に否定しちゃうのがダメなんだよな。普通な感じで誉める方向に持って行けるようにならないと)

「そ、そっか、なんだ、そうだよね!」

「……でも、僕好きだな、女ちゃんのそういう所」

「え、えぇ!?」

35 : 以下、\... - 2014/07/25 04:55:02.41 VxiV2xJj0 18/87

「んー、人の悪い所より良い所を見ようとするところ? 僕だったら僕と姉さんが仲の良い姉弟だなんて、そう見えないと思うんだよね」

「そ、そうかなぁ、普通だと思うよ?」

「なんていうか、女ちゃんって僕のことよく見てる感じするんだよね」

「へわっ!?」

(へわ?)

「ほら、元気ない時はすぐに声掛けてくれるし」

「あわっ、あれはその、ぐ、偶然っていうか、わわ、私あの……す、好きだから!」

「はい?」

「あち、違うの! 違わないけど、あの、困ってる人を助けるのが好きなの!」

「ああうん、そういう風に嫌がらずに人のお世話をできる所とかもすごく良いと思うよ」

「あうっ」 

(うん、良い感じ。スムーズに褒められたと思う。こういう風に普段から人を誉める練習をすればいいんだよね)

「うぅぅぅ……」

「……大丈夫?」

「全然大丈夫じゃないよ、もう!」

36 : 以下、\... - 2014/07/25 05:05:59.12 VxiV2xJj0 19/87

(んー。僕、女ちゃんの嫌がるような事言ったかな? ただ褒めただけなのに) 

(まあいいや、とにかく今は姉さんを誉めてやり込めてやるのが大事だし)

「ただいま~」

「おかえり姉さん、お疲れさま! 部活大変だったでしょ、カバン持つよ」

(できるだけ自然に近くに寄って、まずは姉さんを観察する機会を作る)

「い、いいからどけよ」 スタスタ

(あれ? いつもなら僕に押し付けるくらいのはずなのに)

「……」 スタスタ

「姉さん、カバン部屋まで持って行こうか?」

「だ、だから寄るなって言ってんだろ!」 カァァァ

「え?」

「い、今あたし汗臭ぇんだよ! だからシャワー浴びるまで寄ってくんな、バカっ!」 スタスタ

(汗臭い? あ、そういえば前に汗の匂いの話したっけ)

(まだそんな事気にしてるんだ、変なの。……ま、確かに汗臭いけど、そんな嫌な匂いじゃないのに)

37 : 以下、\... - 2014/07/25 05:15:01.12 VxiV2xJj0 20/87

「ふぅ~、疲れた」

(どう誉めよう? んー、とにかく会話がないと褒める機会もないし、なんでもいいから話してみようかな)

「今日の部活どうだった?」 スタスタ

「……お前、風呂上がりはあたしの半径3m以内に入って来るの禁止な」

「え?」

「とにかく、寄るな」

(寄るな、って……そんなの、話しかけるなっていうのと大した変わらないじゃん)

「それおかしくない? なんで僕が姉さんの側に行くか行かないかを人にどうこう言われなきゃならないの?」

「あたしが嫌だからに決まってんだろ」

「だから姉さんに決められるのがおかしいって言ってるんだよ!」

「お前の尊敬するお姉様がそう言ってんだから素直に従えってぇの」

「やだよ」 スタスタ

「ちょ、だから近づくなって言ってっ!」 ガタッ

「なんで近付いたらダメなの?」 ズイッ

38 : 以下、\... - 2014/07/25 05:23:40.20 VxiV2xJj0 21/87

「だ、だから……っ」 カァァァァ

「なんで?」 ズイッ

「や、やめろってのっ!」 ビクッ

「理由言ってくれないと分かんないよ」

「お、お前が変なこと言うからだろぉ! に、匂いがどうとかっ!」

「昨日は別に何も言わなかったじゃん」

「き、昨日はそれ所じゃっ! だ、だから近づくなっ!」 ブンブンッ

(せっかく姉さんの弱点を見つけたのに、今更近くに寄るななんて……そんな自分勝手な話ってある?)

「ふざけないでよ」

「ふ、ふざけてんのはどっちだよっ!」

「姉さんの方でしょ。大体、姉さんが良い匂いしてるのが悪いんだろ。ほら、今だって」 クンクン

「ひうっ」 ビクッ

「良い匂いを良い匂いだって言って何が悪いわけ? それに、まだ濡れたままの髪だって可愛いし」

「なっ、うっ、うぅっ」 カァァァァァァァ

39 : 以下、\... - 2014/07/25 05:32:30.17 VxiV2xJj0 22/87

「姉さんがどう思おうと姉さんの勝手だけど、僕がどう思おうと僕の勝手でしょ? ねえ?」

「あうっ、うっ」

「別に、僕が思った事を言うだけで誰かに迷惑をかけてるわけでもないし、これからもそうするからね。いいよね、可愛い姉さん?」

「あ……っ」 ガクッ

(よし、勝った!)

(かなり力技だったけど押し勝った! これでもうどれだけ避けられても逆にネタにしていくつもりでやれる!)

「う、うぅぅぅ……!」

「……どうしたの、姉さん?」

「うわああああああああああっ!」 ドンッ

「いだっ!?」

「ああああああああああっ!!」 タッタッタッ

「……いったいなぁ、もう」 サスサスッ

(しかし毎回姉さんは逃げ出してるな。もうこれ、姉さんが逃げたら僕の勝ちって事でいいよね)

(と、あんまりいじめすぎると避けられちゃうし、これからは手加減しないとね)

41 : 以下、\... - 2014/07/25 05:38:36.06 VxiV2xJj0 23/87

「おはよう姉さん」

「……おはよ」

「今日も暑いみたいだね。でも午後から雨が降るって言ってたから傘持って行った方がいいかもよ?」

「そう」

(んー、会話が弾まないな。昨日の事でかなり警戒されてる気がする)

「今日も部活?」

「ん、まあ」

「ねえ、また見学に行っていいかな?」

「……っ」 ガタッ

「部活の時の姉さん、後輩の人達にもすごい慕われてて格好良かったしさ、今度はカメラ持って行って写真撮って……」

「だ、ダメだってぇの! ていうか調子乗んなよ! 前のは仕方なく見学させてやっただけなんだからなっ!」 スタスタ

「もう出るの?」

「朝練だ、バカっ!」

(うん、これはこれで面白いかも。部活ネタは鉄板だね!)

42 : 以下、\... - 2014/07/25 05:44:39.65 VxiV2xJj0 24/87

(朝の通学路)

(ただ普通に歩いてるだけなのに、少し楽しい)

(どうしようもないと思っていた事がどうにかなったってだけで、世界が少し輝いて見える)

(姉さんを誉めるのは、すごく面白い!)

43 : 以下、\... - 2014/07/25 05:45:08.54 VxiV2xJj0 25/87

「うぅ」 カァァ

「ぐぅ」 ガシガシ

「……」 ニヤニヤ

「ぐぁ」 ガクッ

姉友「一人で何やってんの、あんた」

「い、いたなら言えよ!」

姉友「友達が一人で悶えてる所に声掛けるのって結構勇気いるのよ」

「むぅ」

姉友「はあ、ほら部活行くわよ」

「ん」

44 : 以下、\... - 2014/07/25 05:49:37.01 VxiV2xJj0 26/87

姉友「で、恋でもした?」

「は、はぁ!? あ、あたしがそんなもんするわけねえだろっ!」

姉友「じゃあ何? 最近全然集中できてないじゃないの」

「集中してるってぇの、超集中してるってぇの」

姉友「この一週間で顔面にボール何回食らった?」

「そ、それは……うん……ごめん……」

姉友「別にさ、私はあんたに説教したいわけじゃないよ。ムードメーカーのあんたにあんまり弛まれると困るけど、今まで助けられても来てるし」

「ん、うん」

姉友「男絡みでしょ?」

「まあ、うん」

姉友「で、誰なわけ? クラスにはいないわよね」

「……うと」

姉友「誰?」

「だから……弟」

48 : 以下、\... - 2014/07/25 05:56:01.83 VxiV2xJj0 27/87

姉友「……なるほどね。あんまりビックリさせないでよ、てっきりあんたが弟に恋でもしたのかと思っちゃったじゃない」

「だからぁ! そういう話じゃねえって最初に言ったろ!?」

姉友「なるほどねぇ、弟くんが妙に絡んでくるようになった、と」

「……うん」

姉友「わざわざお姉ちゃんの部活を見に来るくらいだもの、それって相当よね」

「う……っ」 カァァァァ

姉友「……いや、弟なのよね? あんたが異性関係に弱いのは知ってるけど、弟くんも異性に含まれるわけ?」

「そ、そういうのじゃねえよ! ただ、前はもっとこう、クソガキって感じだったのに……なんか……」 モジモジッ

姉友(これ、このまま放っておいたらヤバい方向に転がるんじゃないかしら)

姉友「弟くんの方がどこまで考えてやってるか、なのよねぇ」

「え、な、何?」

姉友「こっちの話。ま、あんまり考えすぎない方がいんじゃない? あんた馬鹿だし」

「ば、バカって言うなよぉ!」

姉友「はいはい、後輩待たせてるんだからさっさと行くわよ」

「あ、うん」

50 : 以下、\... - 2014/07/25 06:06:04.71 VxiV2xJj0 28/87

(さて、と)

(今日はどうやって姉さんを誉めようかな) トントンッ

(普通に褒めるのもちょっと飽きて来たし、ギリギリの所を責めて行こうかな)

(汗の話みたいに、姉さんが毎日気にしちゃうような所)

(顔? 姉さんの目。睨み付けるみたいに鋭いけど、そこを上手く誉めたら目が合うだけで照れちゃうかな?)

(体? 姉さんのお尻。部活で鍛えてるからあんまり大きくないけど、形褒めたら僕が後ろにいるだけで照れちゃうかな?)

「なんか、嫌な感じ」

「え? あ、女さん。どうしたの?」

「一緒に帰る約束、してたでしょ」

「ごめんね、ちょっとボーっとしてて」

「……ねえ、誰のこと考えてたの?」

「え?」

「ううん、なんでもない。はやく帰ろ?」

51 : 以下、\... - 2014/07/25 06:13:55.88 VxiV2xJj0 29/87

(姉さんの褒められそうな所、姉さんの褒められそうな所……)

(すぐに怒る所? んー、思い込みが激しい所? 一途? 一途な所? 確かに、部活も凄い頑張ってるし、これだって決めたら……)

「……」 スタスタ

(そういえば、前は女ちゃんともっと色々話してた気がするけど……いつからだろ、あんまり話さなくなったの)

「ん、よう」

「姉さん?」

「……え、お姉さん!? あ、あの、前に一度お会いしたんですけど、挨拶できなくて! 私、女って言います!」

「いや、あたしに挨拶されてもな」

(せっかくこんな所で姉さんに会えたんだし、軽く誉めてみようかな?)

「なんか、こんな風に外で姉さんと会うのって新鮮で面白いね」

「……別に、どこで会っても変わらないだろ」

「そうかな、知らない人みたいで面白いと思うよ? 前にみんなが言ってた事も分かる気がするなー……ほら、覚えてる?」

「なっ、何の話してんだよ、お前はっ!」 カァァァ

姉友「はいはい、その辺にしてね」 スタスタ

(あれ。この人たしか、姉さんの部活の……)

52 : 以下、\... - 2014/07/25 06:21:41.18 VxiV2xJj0 30/87

姉友「私の事は覚えてるかな? 今日は私達、短縮授業でね。普段は平日のこんな時間に外は歩けないのよ?」

「え? あ、はい、そうなんですか」

姉友「ふーん」 ジロジロ

「な、何ですか?」

姉友「別にぃ? あ、そうだ! こんな所で偶然会ったんだし、みんなでご飯でも食べようか? 君らの分は私達が奢ってあげるからさ」

「いいんですか?」

姉友「当たり前じゃない、私達は君らに比べたら大人だからね。……弟くんも構わないよね?」

(なんか、この人苦手だ)

「僕は、あの」

「別にいいだろ、晩飯まで時間もあるし。ほら、行こうぜ」

姉友「という事で決定! さあ、行きましょう?」

「はい!」

(今更僕一人帰るなんて、できないよね。……しょうがない、付いて行くか)

54 : 以下、\... - 2014/07/25 06:29:08.28 VxiV2xJj0 31/87

姉友「適当に頼んじゃっていいよ?」

「あたしチーズバーグ、300で」

姉友「あんたに言ってない」

「あとメロンソーダ、あ、フロートで」

姉友「だからあんたに言ってないって。というかカロリー考えなさい」

「だって食わなきゃ痩せちゃうだろ」

姉友「まあ、練習ハードだからね」

「私達はどれにする?」

「……あんまりお腹空いてないかな」

「じゃあデザート頼もっか?」

「うん」

姉友「注文決まった? じゃ、店員さん呼ぶねー」

55 : 以下、\... - 2014/07/25 06:32:58.39 VxiV2xJj0 32/87

「あー、食ったー」

姉友「あんたは少し遠慮とか慎みとか覚えなさいよ」

「ご馳走様でした」

姉友「あんた年下の女の子に完全に負けてるわよ」

「うるさいなー、どうしようとあたしの勝手だろ?」

(やっぱりなんだか落ち着かないな。……みんな食べ終わったんだしもう帰っていいかな)

「あの」

姉友「そういえばさー、弟くん」

「……何ですか?」

姉友「いやね、私と姉って親友みたいなもんだからさ、結構お互い色々話したりするんだよね」

「はあ、そうなんですか」

姉友「弟くんってさぁ、すんごいシスコンなんだって?」

「…………は?」

57 : 以下、\... - 2014/07/25 06:39:39.69 VxiV2xJj0 33/87

姉友「もう毎日姉のこと好き好き言ってるって聞いたけど?」

「ま、毎日なんて言ってないだろ!?」

「……本当、なの?」 

「い、言ってないよ! な、なんでそんな嘘言うんですか!?」

姉友「嘘? え、嘘なの? 私の聞いた話だと、弟くんって体臭フェチなんでしょ? しかもお姉ちゃんの汗の匂いが大好きな」

「な、なっ!? 何、何言ってるんですか!?」

姉友「そうなんだよねぇ?」

「いや……ふぇ、フェチとか……別に言ってな……」

「……弟、くん?」

「い、い、いい加減にしてよ! な、何なんですか!? 僕そんな、そんな事っ!」

姉友「言ったんだよね? だってさっきもお姉ちゃん大好きアピールしてたよね? 私、姉から話聞いてるから意味分かっちゃうんだよね」

(この人、何言ってるんだよ? 僕はただ姉さんを誉めて遊んでただけなのに!)

(何なんだよ、一体何なんだよ!?)

59 : 以下、\... - 2014/07/25 06:48:44.72 VxiV2xJj0 34/87

姉友「他にも色々聞いてるよ? 本当、弟くんって姉のことが大大大好きだよねぇ?」

「ぼ、僕は、僕は姉さんのこと、好きなんかじゃ!」

姉友「隠さなくていいよ。ねえ、姉のことが好きすぎて、わざわざ部活の見学にまで来るんだもんねぇ?」

「……か、帰る!」 ガタッ

姉友「ええ? もう帰っちゃうの? もっと姉の話しよ?」

「……っ」 タッタッタッ

姉友「あーあ、行っちゃった」

「あの。私も、帰ります」

姉友「あ、そう?」

「……負けませんから」 スタスタ

「あのさ」

姉友「ん、何?」

「結局、どういう事なの?」

姉友「んー、まあ、これでもう弟くんが変に絡んで来たりはしないはずよ?」

「あ、そう。……ふーん、へぇー」

61 : 以下、\... - 2014/07/25 06:55:31.46 VxiV2xJj0 35/87

(違う、違う、違う! 僕はシスコンなんかじゃない!)

(なんだよ、全然関係ない癖に! 僕はただ姉さんをからかってただけなのに!)

(僕は姉さんのことなんて全然好きじゃない! 好きじゃないのに!)

「おーい」 コンコン

「……何?」

「いや、お前なんかすげえ怒って出て行っただろ?」

「放っておいてよ」

「そうもいかないだろ。姉友はあたしの友達だし、お前はあたしの弟なんだから」

「……」

「あー……お前がなんで落ち込んでるのか分からないけどよ、元気出せよ」 ポンポン

(なんだよ、何も分かってない癖に)

「なぁ?」 ナデナデ

(僕がどういうつもりで姉さんのこと誉めてたかも知らない癖に……)

62 : 以下、\... - 2014/07/25 06:58:02.68 VxiV2xJj0 36/87

「うぐ……っ」

「う……う……っ」

「うぅぅ……っ」

(なんで僕が泣くんだよ……別に、僕は何も悪いことなんて……)

「ったく、しょうがねえな」 ギュッ

「おね……おね……えちゃ……っ」

「ほら、とっとと泣き止めよ」 ポンポン

「ごめ……なさい……っ」

「んー?」 ポンポン

(僕が謝る理由なんてない……ないもん……)

「うぐ……う……ごめ……ごめん……なさい……っ」

64 : 以下、\... - 2014/07/25 07:03:49.29 VxiV2xJj0 37/87

「あークソ、お前のせいでシャツが涙でグシャグシャじゃねえかよ」 パタパタ

「ごめんなさい……」

「別にいいけどな。……あ~あ、それにしても姉友の言った通りだな」

「え……?」

「お前ってさぁ、本当にあたしのこと大好きなんだな」 ニヤニヤ

「は、はぁ!?」

「おねーちゃーん、おねーちゃーんってガチ泣きしてたじゃん」

「そ、そんな事言ってないよっ!」 カァァァ

「ほんと、シスコンの弟を持つと苦労するな~」

「ぼ、僕はシスコンじゃないっ!」

「はいはい、そんじゃあたしは着替えてくるけど、シスコンくんは一人で大丈夫か?」

「……っ」

「あっははははっ!」 スタスタ

65 : 以下、\... - 2014/07/25 07:04:38.54 VxiV2xJj0 38/87

「……」 スタスタ

「……」 ガチャッ

「……」 バタンッ

「……っ、はぁ……っ」

(なんだ、これ?)

(弟が泣いたり、弟が顔赤くしたり、それ見てただけなのに) 

(なんで、心臓がこんなに……) ドキドキ

「なんだ、これ?」

66 : 以下、\... - 2014/07/25 07:05:27.36 VxiV2xJj0 39/87

おわり

67 : 以下、\... - 2014/07/25 07:07:16.72 lxzCdL4i0 40/87

は?

69 : 以下、\... - 2014/07/25 07:07:57.44 kH9MpG0z0 41/87

おい













おい

70 : 以下、\... - 2014/07/25 07:08:11.01 VxiV2xJj0 42/87

だってもう弟くんが姉さん誉めないし

150 : 以下、\... - 2014/07/25 16:09:13.30 VxiV2xJj0 43/87

「私と付き合って」

151 : 以下、\... - 2014/07/25 16:09:40.34 VxiV2xJj0 44/87

(これ、どういう状況なの?)

(朝から女ちゃんの様子が変だったし、呼び出された時には昨日の事で色々言われるんだろうなって思ったけど)

(でも、それがどうしていきなり付き合うなんて話になってるの?)

「ごめん、意味が分かんないよ」

「そう、だよね。……うん、ごめんね、ちゃんと全部説明する」

156 : 以下、\... - 2014/07/25 16:14:07.32 VxiV2xJj0 45/87

「あのね、私なりに昨日のこと、考えてみたの」

「弟くんがお姉さんのことがあんなに好きだったなんて、正直、私すごくショックだった」

「でもね、なんとなくそういう事かなって思ってたの」

「だって最近、弟くんいつも考え事ばっかりしてたし、きっと好きな人がいるんだろうなって」

「それに、やっぱり前に見た時の二人、すごく仲良しに見えたから……」

「弟くんがシスコンだからって私、嫌いになったりしないよ? でも、そういうのは良くないと思うの!」

「うまく言えないけど、絶対にダメ! だからね、私と付き合って!」

「弟くんもお姉さん以外の女の子と付き合えば、きっとわかるよ! 姉弟でなんて間違ってるって!」

159 : 以下、\... - 2014/07/25 16:22:35.26 VxiV2xJj0 46/87

(そんな事、言われても)

(僕は元々シスコンじゃないし、あれは全部、姉さんの友達が勘違いで言った事なんだけど)

(……どう説明すればいいんだろう)

「僕は、シスコンじゃないよ」

「じゃあお姉さんのこと、嫌い?」

「……嫌いだよ」

「私の目を見て、もう一回言って」

「……」

「……」

「嫌い……だよ……」

「弟くん、その嫌いじゃ誰も信じてくれないよ?」

(そうだろうけど……多分もう、僕は前ほど姉さんのことが嫌いじゃない。でも、シスコンじゃない、と思う)

(そんな一言で説明できるような事じゃないし、他人に言っても絶対に伝わらないだろうし、言えないし)

「……」

(こんなのもう、黙るしかないじゃん)

163 : 以下、\... - 2014/07/25 16:34:02.17 VxiV2xJj0 47/87

(それで結局、放課後まで女ちゃんに付き合わされてるわけだけど)

「ねえ、まだこれ続けるの?」

「恋人同士なんだもの、こういう所でご飯食べるのが普通でしょ?」

「ねえ、女ちゃん。君、勘違いしてるよ。僕は本当にシスコンなんかじゃないんだよ」

「……」 チュウウウ ズズッ

「女ちゃんが勘違いするのも無理ないっていうか、あれは僕にも悪い所はあったけど、でも」

「私ね、弟くんのことずっと見て来たの」

「……何の話?」

「別に私、弟くんが言うみたいな優しい女の子じゃないし、人の良い所ばっかり探したりなんてできないよ」

「あの」

「だって私、弟くんのことだけしか考えてないもん」

「え?」

「弟くんが、好き。……絶対に私のこと、お姉さんより好きにしてみせるから、彼女にしてください」

166 : 以下、\... - 2014/07/25 16:43:21.45 VxiV2xJj0 48/87

(結局、返事できなかったな。でもさ、そんなの簡単に答えられないよ)

「ん」

(姉さん、もう帰って来てるのか。いつもは部活でもっと遅いのに)

「……」 スタスタ

(リビングにはいないし、部屋にいるのかな。僕はどうしよう。……なんか、自分の部屋にいると色々考えちゃいそう)

(晩御飯までテレビでも観てゴロゴロしようかな) ポチッ

(……好き、なんて言われたの、初めてだな)

(僕は女ちゃんのこと、どう思ってるんだろ? そりゃ、好きか嫌いかなら好きだけど、それって付き合うほどなの?)

(大体付き合うって何なの? 一緒にいるだけ? それって楽しいの?)

「……恋愛って、よくわかんないな」

「うぇ!?」 ガタンッ

「え? ね、姉さん? そんな所で何してるの?」

「な、何って、あたしはただ喉渇いたから飲み物取りに来ただけでっ! つ、つーかお前こそ何してるんだよ?」

「僕は、テレビ観てた、けど」

(今の、もしかして聞かれた? うわ、恥ずかしい!) カァァァァ

168 : 以下、\... - 2014/07/25 16:52:58.75 VxiV2xJj0 49/87

「ふーん。こんなの観て面白いか? あたしドラマとか全然観ねえからわかんねえな」

「別に、面白くはないけど」

「時間無駄にしてんな。お前さ、もっと何かしたら? 習い事くらいならさせてくれんだろ?」

「習い事って言われても」

「あたしは興味ないけど、サッカーとか野球とか、お前そういうの嫌いじゃないだろ?」

「するのはあんまり得意じゃないし、僕は観るだけでいいよ」

「つまんねえ奴だな」

(姉さんからすればそうなんだろうけど、僕には僕の過ごし方がある……なんて言っても、どうせ馬鹿にされるんだろうけど)

「……ま、シスコンのお前は家にいた方がお似合いか」 ポンポン

「し、シスコンじゃないっ!」

「じゃ、あれか? ……体臭フェチ?」

「な、何なんだよ、もう! 僕をからかうのがそんなに楽しいの!?」

「……じゃあさ、お前本当はどう思ってんの?」

171 : 以下、\... - 2014/07/25 17:05:06.34 VxiV2xJj0 50/87

「ほ、本当も嘘もないよ、僕は……!」

「あたしのことが、嫌い?」

(あれ、なんか)

「姉さん?」

「嫌いなのか?」

「ど、どうしたの? 姉さん、なんか変だよ」

「何がだ? あたしはただ、お前があたしのことをどう思ってるのか聞いてるだけだろ」

(それ、そんな真剣に聞く事じゃないよ。なんでそんな、部活の時に見た顔みたいな……)

「なあ、答えろよ」 ジッ

「き……嫌いじゃ、ないと思う」

「何だそれ? 嫌いじゃないじゃ何もわかんねえよ。もっとハッキリ言えよ」

「き、気持ちなんてハッキリ言えるものじゃないじゃん! そんな、形のある物じゃないんだから!」

173 : 以下、\... - 2014/07/25 17:17:00.87 VxiV2xJj0 51/87

「……ったく、なんだよ、逃げてんじゃねえよ」

「な、なんだよはこっちの台詞だよ! だ、大体姉さんはどうなんだよ、僕のことどう思ってるのかなんて言えるの? 言えないでしょ!?」

「言えるね」

「え?」

「あたしがお前のことどう思ってるのかなんて、簡単に言えるね」

「か、簡単にって」

「あたしはさ、お前のこと……」 スッ

(ね、姉さんの顔が近付いて、え、え……っ)

「バーカ」 ゴツッ

「い、いったぁ!?」

「何本気にしてんだよ、冗談に決まってんだろ? はっは、これだからシスコンくんは困るぜ」

「え? え、えぇ?」

「大体あたしが弟にキスなんてするかよ、おまけにファーストキスだぜ? 絶対にないね」

「ほんと、シスコンくんはからかうのが楽でいいね」

177 : 以下、\... - 2014/07/25 17:26:29.44 VxiV2xJj0 52/87

(冗談って、どこから? 全部最初から? そんなのって……)

「……酷すぎる」

「あん?」

「僕は、姉さんが本気で聞いてると思ったから答えたのに、からかってただけなんて……酷すぎる」

「はあ? これくらいでマジになんなよ。別に切れるようなことじゃねえだろ」

(確かにそうかもしれないけど、僕の方がよっぽど酷い事をしてたのかもしれないけど)

「僕は、姉さんのオモチャじゃない」 スタスタ

「これだからガキは」

(僕が子供だっていうのはその通りだけどさ、でもさ、それでも頭に来るものは頭に来るし)

(本気で答えた事を馬鹿にされたら、やっぱり許せないよ) スタスタ

179 : 以下、\... - 2014/07/25 17:35:55.01 VxiV2xJj0 53/87

「ったく、ちょっとからかったくらいでギャーギャ喚きやがって」

「シスコンならシスコンらしく姉貴のあたしの言うこと聞いてりゃいいんだってぇの」

「こっちは部活サボってまで休んでる所を、わざわざ相手にしてやったってぇのに」

「それをあたしが全部悪いみたいに言いやがって、何様のつもりだよ」

「あ~あ、ガキの相手なんてするもんじゃねえな」

「……おっかしいなぁ」

「あたしは悪くねえのに、なんで言えば言うほど、こんなに」

「胸の奥が気持ち悪くなるんだ?」

「ああ、やっぱりあれだな、風邪か。うん、風邪だな。寝てればすぐに良くなるよな」

「はは、昨日から具合が悪いと思ってたんだよな」

「……だから治まれっての」 ギュッ

183 : 以下、\... - 2014/07/25 17:45:27.23 VxiV2xJj0 54/87

「……」 ゴロッ

(まだ治まらないな、この嫌な感じ)

(つーか何なんだよ昨日から。どうなってんだよ?)

(弟のことが頭から離れねえし、食欲も全然しねえし、体は怠いし)

「弟に、会いたい」 ゴロッ

(って、すぐそこにいるだろ? 廊下に出て弟の部屋に行けばいいだけだろ? 何言ってんだよ)

(つーか会いたいとか、そんなこと今まで思ったこともねえって)

(あたしは何がどうしてこうなった? ……あれだ、弟が泣いた時、あれからなんか……なんかおかしいんだよ)

(弟の髪、手櫛したら気持ち良さそうだな、とか)

(弟のこと、抱き締めて寝たら寝心地良さそうだな、とか)

(昨日からそんな感じの、弟と何したいとか、弟に何したいとか、そんなことばっか考えてる)

「もしかしてあたしは」 

「……ブラコンになっちまったのか?」

185 : 以下、\... - 2014/07/25 17:49:09.71 VxiV2xJj0 55/87

「おい、弟」

「早く起きろよ、遅刻するぞ」

「おい」

「ん……」

「……」

「起きないなら、あたしの好きにしていいよな?」

「へへっ」

(なんか……髪が動いて……)

「思った通りだな、すげえ気持ち良い」

「ん……」 スゥ

「はあ……」

「んう……?」

「……まだ起きないのか?」

「なら、いいよな?」

(いいって……何が……?)

189 : 以下、\... - 2014/07/25 17:55:21.57 VxiV2xJj0 56/87

「……」

(なんか……急に静かに……)

「ん……」 スッ

「あ」

「え?」

「……おはよ」

「な、何やってるの!?」

「ん? もう起きてんのかな―、と思ってさ。ほら、目開いてるかどうかって分かりづらいだろ?」

「ふ、普通に起こせばいいじゃん!」

(というか、今まで僕のこと起こしてくれたりした事ないじゃん!)

「な、何なの? 昨日のこと怒ってるの?」

「昨日のこと? ああ、んな事もあったっけ。あれはあたしが悪かったわ、ごめんな」

「あと、あたしもお前のこと……き、嫌いじゃないぜ」 スタスタ

(訳が分からない。……何が、とかじゃなくて、全部が)

191 : 以下、\... - 2014/07/25 18:02:12.49 VxiV2xJj0 57/87

「……」 ジーッ

「あの」

「ん?」

「観られてると、食べづらいん、だけど」

「お前さ、朝ご飯って何が良い?」

「え? ……別に、なんでもいいけど」

「なんか食べたい物とかねえの?」

「……ない。今日みたいにパンか、それかシリアルだし。姉さんもそうでしょ?」

「まあ」

「……」 モグモグ

「……」 ジーッ

(なんでこんなに見られてるんだろう。やっぱり怒ってるの?)

192 : 以下、\... - 2014/07/25 18:04:59.64 VxiV2xJj0 58/87

(なんだか怖いし、早めに学校に行こうかな)

「あ、弟!」

「な、何?」

「学校まで送ってくからちょっと待ってろ!」

「え、ええ!? い、いいよ! そんなのされたら恥ずかしいし!」

「最近変な奴多いんだからさ、一人で出掛けたら危ないだろ?」

(登校するだけで危ないような所だったらとっくに大変な事になってるって)

「いってきます!」 ガチャッ

「あ、おい!」

(変だ)

(姉さんが、変だ)

195 : 以下、\... - 2014/07/25 18:13:14.79 VxiV2xJj0 59/87

「はあ、はあ……」 タッタッタッ

(姉さんが追いかけてきそうだから走って来たけど、もうこの辺で大丈夫かな)

「おはよ、弟くん」

「うわ!? お、女ちゃん? どうしたの、こんな所で」

「弟くんが来るの、待ってたの。一緒に学校に行こうと思って」

「そ、それなら家まで来ればいいのに」

「えー、待ち合わせした方が楽しいでしょ? それに……弟くんの家に行ったら、お姉さんとも会わなきゃいけないから」

(少し前なら、姉さんが変になったって話も女ちゃんに相談してたんだろうけど……今はもう、無理だよね)

「……昨日の答え、急いでないから」

「え?」

「だから、今は仮で恋人。それくらいは……いいよね?」

「……それでいいの?」

「今はね。ほら、行こ?」 スタスタ

(結局、僕は何も決めてない。本当にこれでいいのかな) スタスタ

202 : 以下、\... - 2014/07/25 18:23:56.23 VxiV2xJj0 60/87

「んふふ」

姉友「昨日あれだけ具合悪そうだったのに、今日はずいぶん調子良さげね」

「まあな~。あたしさ、料理覚えようかと思うんだ」

姉友「あんたが? 絶対料理なんてしなさそうな女じゃない」

「心境の変化ってやつかな? やっぱさ、料理くらいできないと弟を喜ばせられないじゃん?」

姉友「……は?」

「今朝さ、料理しようと思って台所立ってみたわけよ。もう全然でさ、結局なんも作れなくてダメダメだったんだよ」

姉友「ちょ、ちょ、ちょっと待って? あんたどうしたの? なんか言ってる事が変よ?」

「ああ……あたしさ、実はブラコンになっちまってさ」

姉友「は、はぁ?」

「うちの弟ってめっちゃ可愛いじゃん? もうさぁ、弟のこと考えてるだけで幸せっていうか、ブラコンだって認めたらすんげえ充実しててさ」

姉友「ちょ、ちょっと落ち着こう。ね? あんた先走りすぎ、それ絶対まずい方向だから!」

「え、なんで? 姉弟なんだから仲良い方がいいじゃん?」

姉友「あんたじゃなけりゃ、あたしもこんな反対してないって……」

206 : 以下、\... - 2014/07/25 18:35:25.45 VxiV2xJj0 61/87

「もしかして姉友、あんた……あたしのこと好きなの?」

姉友「そりゃ友達としては好きだけどね、あんたの想像してるような意味じゃ絶対ないわ。仮に私がそういう趣味でも、あんただけはない」

「ならなんだよ? あたしがブラコンでお前に迷惑掛かるのかよ?」

姉友「……あんたさ、自分がどういう人間かもう少し自覚した方がいいよ」

「はぁ?」

姉友「基本的にブレーキ付いてないのよ、あんた。あのね、普通は自分がブラコンだなんてそんな簡単に認められないものなの」

「ブラコンなんだから仕方ねえじゃん」

姉友「そういう割り切りの良さが危ないっていう話なのよ。あー、もうやだ、本当やだ! あんた面倒臭い!」

「姉友が何言いたいのか、あたしにゃよく分かんねえなぁ」

姉友「あんたが口で言うだけで理解してくれる奴ならハッキリ言ってるわよ」

「ふーん、まあいいや。あ、あたし部活しばらく休むから。つーか辞めるかも」

姉友「……休部って事で話しとく」

「さんきゅー。へへっ、早く帰って弟に会いたいなぁ」 

姉友「はあ……」

209 : 以下、\... - 2014/07/25 18:44:22.94 VxiV2xJj0 62/87

弟今日も、だよね」

「もちろん! ふふっ、今日は一緒に散歩しよ? あんまりお金使っちゃうと遊べなくなっちゃうし」

「そうだね……」

「本当はね、今日は私の家で遊ぼうかと思ったんだけど、弟くん、まだそういうの嫌でしょ?」

「うん、まあ」

「だからね、弟くんがいいって思うまでは我慢するね」 ギュッ

(嬉しいんだけどさ、嬉しいんだけどなんか違う気がするんだよなぁ)

(だって元々、僕はシスコンじゃないし、そのシスコンを治すためにデートするって言われても……)

「あのさ、女ちゃん」

「んー?」

(……楽しそうにしてる女ちゃんを見ると、強く言えなくなっちゃうんだよなぁ)

「……なんでもない、行こっか」

「うん!」

211 : 以下、\... - 2014/07/25 18:50:27.25 VxiV2xJj0 63/87

「……」 イライラ

(遅い、遅すぎる。どんだけ寄り道してんだよ、あいつは)

(あたしの方が先に帰って来てる時点でおかしいだろ? 何してんだよ)

(学校まで迎えに行くか? いや、すれ違いになったら困るし。……ああもう、座ってると余計に苛々する!) ガタッ

214 : 以下、\... - 2014/07/25 18:56:55.86 VxiV2xJj0 64/87

「あの猫ちゃん、すごい可愛かったよね。縞模様で、鳴き声も欠伸してるみたいで」

「女ちゃんの家、猫飼ってるんだっけ?」

「ううん、うちは犬。うちの子、すっごく大きんだけど人懐こくて可愛いの! お腹撫でで上げるとすごい喜ぶから、今度撫でてあげてね!」

(女ちゃんの中では、もう僕が女ちゃんの家に行くのが決まってるんだ。……こういう強引な所、ちょっと苦手だなぁ)

「それに、お手も上手だし、待てもちゃんとできるし、私が枕にして寝てもじっとしてるし、本当にすごく良い子なんだよ? あとあと……」

「……弟」 ガシッ

「え?」

「帰るぞ」 グイッ

「ね、姉さん、どうしたの?」

(なんでこんな時間に姉さんが? ていうか、なんかすごい怒ってる? なんで?)

218 : 以下、\... - 2014/07/25 19:02:49.30 VxiV2xJj0 65/87

「ま、待ってください! 私達、今一緒に帰ってる所で、そんな風に無理やり連れて帰らなくてもいいじゃないですか!」

「……は? 今なんか言ったか?」 ギロッ

「い、言いました! 乱暴です! そんな風に引っ張られたら弟くんだって痛いです!」

「……」 チラッ

「ちょっと、痛い」

「……悪かったな」 パッ

「そ、それじゃあ弟くん、一緒に……」

「これでいいだろ?」 ギュッ

「え?」

「そ、そういう事じゃ! て、ていうか姉弟でそんな風に手を握るなんて、変です!」

「あ? 姉弟で仲良く手握って帰ってお前に迷惑掛かんのかよ? ……弟、帰るぞ」

「う、うん」

「……っ! 弟くんのバカっ!」

223 : 以下、\... - 2014/07/25 19:09:40.99 VxiV2xJj0 66/87

(女ちゃんには悪いと思ったけど、でも、姉さんは今まで見た事ないような怒り方をしてて……正直、怖い)

「弟」

「な、何?」

「もうあいつと会うな。つーか話すな、関わんな」

「な、なんで姉さんにそんなこと言われなくちゃなんないの?」

「……あたしはお前の姉貴だ」

(僕が誰と会うか、話すか、関わるかを決める理由がそれ?)

「だから何だよ? 僕は姉さんがいいって言った人としか話しちゃいけないわけ? 何それ」

「そうだよ。お前はあたしがいいって言った奴以外と……ああ、もういいわ。お前、あたし以外と話すな」

「ふざけないでよ!」

「ふざけてんのはどっちだよっ!!」

226 : 以下、\... - 2014/07/25 19:17:59.47 VxiV2xJj0 67/87

「なんでわかんねえんだよ! お前があいつと一緒にいるの見て、あたしがどういう気持ちだったかなんでわかんねえんだよっ!」

「あたしはお前が帰ってくんの待ってたんだぞ!? それなのに楽しそうにしゃべってよぉ!」

「苛々すんだよ! くだらないことに苛々してる自分に苛々するし、お前に苛々してる自分にも苛々するし、何より隣にいるあいつに苛々すんだよ!」

「なあ? なんでお前はこんなにあたしを苛々させんだよ? ああクソ、ふざけんなよ!」

「……」

「……帰るぞ」

(帰りたくない。……今の姉さんと、二人きりになりたくない)

「あの、僕」

「……」 ギュッ スタスタ

(僕の話、聞いてくれてもいいじゃん。なんでそんな風に一人で苛々して、一人で決めようとするの?)

231 : 以下、\... - 2014/07/25 19:27:12.23 VxiV2xJj0 68/87

「……」 ガチャッ

(当たり前だけど、まだ父さんも母さんも帰って来てないよね)

(……このまま自分の部屋に行って、二人が帰って来るまで待ってようかな)

「弟……」 ダキッ

「え、ちょっ」

「はあ……すっげえ落ち着く……さっきはさ、怒鳴ったりして悪かったよ。本当にごめんな」

「ね、姉さん、放してよ」

「ダメだ。……はあ……もういいや、今日はこのままずっと過ごそうぜ」

「こ、このままって、姉さん何言ってるの!?」

「もういいじゃん、全部どうでもさ。あたし、お前だけいればいいや。他に欲しいもんとかないし」

「……僕は、物じゃない」 バシッ

「え? な、何だよそれ」

「……今の姉さんとは話したくない」 タッタッタッ

「……ざけんなよ!」 ドンッ

「あたしが何したって言うんだよ! 話したくないってなんだよ、クソ!」

236 : 以下、\... - 2014/07/25 19:52:44.16 VxiV2xJj0 69/87

「……」 グタッ

姉友「……」

「……」

姉友「私から聞かなきゃいけないわけ?」

「別に……話したい事なんて何もねえよ」

姉友「話さなきゃならない事があるんじゃないの?」

「……姉友には関係ねえよ」

姉友「私以外に聞いてくれる人、いるわけ?」

「いねえけどさ」

姉友「じゃあ話しなさいよ」

「……やだ、あたし悪くねえもん」

姉友「本当に悪くないと思ってるなら普通に話せるでしょう?」

「……」

姉友「ま、好きにすればいいんじゃない? あんたの問題なんだから、どうなろうとあんたの責任なんだし」

238 : 以下、\... - 2014/07/25 20:00:13.82 VxiV2xJj0 70/87

姉友「で、放課後になるまで引っ張った挙句、私にまで部活をサボらせる、と」

「だって……」

姉友「だってじゃないでしょ、だってじゃ。あんた何才よ?」

「本当に話もしてくれねえの、今朝も目も合わせずに学校行っちゃうしさ……」

姉友「詳しい話はカラオケに着いたら聞く。誰かに聞かれたらどうするのよ、私まであんたの同類扱いされちゃうじゃないの」

「うん……あ」

姉友「どうせ私の忠告の意味も理解せずに突っ走ったんでしょ? 予想付くわよ、あんたの行動くらい。どうしてあんたはそう……って、あれ?」

姉友「あいつ、どこに……って、あの馬鹿……ああ、もういいわ。好きにしてよ」

240 : 以下、\... - 2014/07/25 20:09:29.33 VxiV2xJj0 71/87

「……だから僕はさ、そうしたいと思うんだ」

「それが弟くんの気持ちなら、私……」

「おい」

「……お姉さん、何の用ですか?」

「何の用ですか? 何の用だと思いますか? お前もう弟に近付くなよ、なあ?」

「……弟くんの言う通りだね。この人、ダメだよ」

「は? お前さぁ、それ挑発してんの? 喧嘩売ってんのか? なあ?」 ガシッ

「……っ」

「いい加減にしろよ」 バシッ

「……っ、何すんだよ!?」

「大丈夫、女ちゃん?」

「う、うん。ありがと、弟くん」

「弟、お前そいつをかばうのかよ!」

「いい加減にしろって言ったの、聞こえなかったの?」 ジロッ

244 : 以下、\... - 2014/07/25 20:17:30.86 VxiV2xJj0 72/87

「な、なんだよその態度! お前はあたしの弟だろ!?」

「だから何? 弟だったら文句も言っちゃいけないの? 友達を傷付けられても黙ってればいいの?」

「は、はあ? んなこと言ってねえだろ!」

「言ってるよね? 女さんと話すな、女さんと関わるな、何の恨みがあるわけ? 僕は姉さんの所有物か何かなの?」

「あ、あたしはお前が大切だからそう言ってるんだぞ!?」

「大切なら何してもいいんだ? へえ、すごいね。どれだけ自分勝手な世界で生きてるの?」

「……さ、さっきから何なんだよ!? あたしが何したって言うんだよっ!」

「そんなこともわかんないの? 僕さ、怒ってるんだよ。姉さんの世界じゃ僕には感情もないの?」

「言ってねえだろ、そんなことっ!」

「言わなければ物扱いしたり、無理やり自分の言う事を聞かせてもいいと思ってるの? ……もういいよ、姉さん」

247 : 以下、\... - 2014/07/25 20:25:18.93 VxiV2xJj0 73/87

「お前……あたしを怒らせようとしてんのか? いい加減にしないと、いくらお前でもぶん殴るぞ」

「もう、いい。……何度も言わせないでよ。今の姉さんと話すことなんて、一つもない」

「あ、あるだろ!」

「ないよ。僕は、今の姉さんは大嫌いだ。……これ以上僕に姉さんを嫌いにさせないでよ」

「ちょ……ちょ、待って……待てって! 何が気に入らないんだよ!?」

「全部だよ。これ以上言わせないでよ」

「お、弟くん、それは言いすぎだよ!」

「これくらい言わないとわからないんだよ、姉さんは! 前からそうだよ、自分勝手で人の話も全然聞かないし!」

「や、やめ……っ」

「どれだけ人に迷惑掛けてるかとか、それで相手がどう思うのかとか、そういうの全然考えてないんだよ! だからそうやって……」

「もう、もうやめてよっ!」

252 : 以下、\... - 2014/07/25 20:35:54.13 VxiV2xJj0 74/87

「あ、あたしが……あたしが悪かったから……っ」

「全部あたしが悪いから、だからもうやめてよ……っ」

「許してよ……っ」

「悪い所、ちゃんと治すから……っ」

「き、嫌いとか……言わないでよぉ……っ」

「ひぅ……うぅ……う……っ」 ポタポタ

「……」

「あ、う……」

姉友「はいはい、終了。あんまりいじめないでよ、一応これで女の子なんだから」 スタスタ

「あ、あの」

姉友「言い訳とかその他諸々は後で聞くから。……姉、大丈夫?」

「う……うぅ……う……っ」 ポタポタ

姉友「ほら、泣かないの。大体あんたが悪いけど、泣いても何も解決しないぞ」 ポンポンッ

「う……ん……ん……っ」 ポタポタ

255 : 以下、\... - 2014/07/25 20:47:32.12 VxiV2xJj0 75/87

姉友「とりあえず、あんたその子に謝りなさい」

「……」

姉友「これ以上弟くんに嫌われたいの?」

「ご……ごめんなさい」 ペコリ

「はい、許します」

「いいの?」

「私がずっとお姉さんに怒ってたら、弟くん困っちゃうでしょ?」

姉友「ん、よくできた子だわ。あんたの100倍素敵」

「そ、そんな風に言わなくてもいいじゃん……」

姉友「あと弟くんも、さすがにあれは言い過ぎ。こいつが悪いのも分かるけど、君にあそこまで言われたら傷付くに決まってるでしょ」

「でも」

姉友「でもも何もない。この件に関しては、あたしは絶対にこいつの味方するよ。君さ、こいつがあんだけ泣いたの見た事ある?」

「……ないです」

姉友「なら分かるよね? こいつがどれだけ傷付いたか。実際に傷付けたって理解してても、それでも謝れないの?」

「ううん……ごめんなさい、姉さん。僕、言い過ぎたよ」

260 : 以下、\... - 2014/07/25 20:56:53.80 VxiV2xJj0 76/87

「……でも、本当に嫌いなんだろ、あたしのこと」

「それは」

姉友「今掘り返すんじゃないの、物事には順序ってもんがあるのよ」

「でも言ったじゃん、あたしのこと嫌いだって……」

姉友「あのさぁ、私この喧嘩にまったく関係ない立場なのよ? それをわざわざ仲裁してやってんだから少しは尊重しようとか思わない? 怒るよ?」

「……ごめん」

「お二人って仲良しなんですね」

姉友「腐れ縁って言った方が近いと思うけどね。会ったばっかりの頃は何度か本気で殺そうと思ったし」

「それは、ふふ、凄いですね」

姉友「まあ、関係ない話は置いといて、よ」

261 : 以下、\... - 2014/07/25 21:01:49.91 VxiV2xJj0 77/87

姉友「これで無事仲直り、とはいかないんだよね。そもそもの喧嘩の原因があるわけだからねぇ」

「私は、お姉さんが悪いと思います」

姉友「一応聞こうか?」

「弟くんから大体の話は聞きましたけど、あの、さっき弟くんが言った事、間違ってるって思いません」

「……なんでお前にそんなこと言われなきゃならないんだよ」

姉友「ちょっと黙ってろ。……うん、まあ私も間違ってないと思うし、こいつがどんだけ無神経かも分かってるけどね。一方的に責めるのは違うんじゃない?」

「それは、そうかもしれませんけど」

姉友「間違ってるにしろ正しいにしろ、お互いにお互いの言い分があるんだからさ、まずは話を聞こうよ」

「……はい」

265 : 以下、\... - 2014/07/25 21:10:07.96 VxiV2xJj0 78/87

姉友「まずは姉、あんたから。あんたの言い分、思った事をそのまま言いなさい」

「だから、弟とこいつが一緒にいるのが見えて、それで頭に来て、二度と近づかないように言ってやろうと思って」

「大体、前にも弟と一緒に歩いてたし、弟にも近づかないように言ったのに、当て付けみたいに仲良さそうにして。だからあたしは」

姉友「ああうん、もういいわ。弟くんの方も、姉に怒ってた理由があるんでしょ?」

「……姉さんは人の話、聞かないんです。一方的に人に命令するみたいに押し付けて、誰と会うななんて言われる筋合いないです」

「反省もしないし。自分の都合ばかりで。僕は、姉さんの物じゃないです。それに、僕だけじゃなく女ちゃんにまで。最低です」

姉友「言い過ぎ。また泣いたらどうすんの? さすがに私帰るよ?」

「……ごめんなさい」

姉友「それとさ、これだけ聞いたら姉が一方的に悪いみたいに聞こえるからハッキリさせておくけど、元の原因作ったのは弟くんでしょう?」

「それは、私も弟くんが悪いと思うよ」

「……ごめんなさい」

姉友「あれ、知ってるの?」

「さっき弟くんから聞いて、大体そういう事なのかなって。でも、多分弟くんはあんまり分かってないです」

姉友「んん? どういうこと?」

270 : 以下、\... - 2014/07/25 21:20:04.14 VxiV2xJj0 79/87

「なんていうか、弟くんって人の好きって気持ちに鈍いっていうか、自分の気持ちもあんまり分かってないような気もして」

姉友「ええと、つまり?」

「……お姉さんの気持ちとか、多分あんまり分かってなくて。ただ自分に言う事を聞かせようとしてる、としか」

姉友「それ、マジで言ってる?」

「原因が、あの、お姉さんに対してのアレだっていうのは薄々分かってるみたいですけど」

姉友「うわぁ、面倒臭ぇ!」

「……?」

「……?」

姉友「ええとね、弟くんさぁ、自分がどれだけ愛されてるか理解した方がいいよ」

「え?」

姉友「君のお姉ちゃんは君のことが好きすぎるせいで暴走してんのよ」

「えぇ!?」

「そ、そんなハッキリ言うなよぉ!」

姉友「あんたがハッキリ言わないから面倒臭い事になってんだろ、この馬鹿」

274 : 以下、\... - 2014/07/25 21:32:52.53 VxiV2xJj0 80/87

姉友「まあ、その原因作ったのが君だって話で……ああ、もう言っていいよね? 君が姉を誉めて遊んでたせいで、この子が変なスイッチ入っちゃったんだよ」

「え? あたし遊ばれてたの?」

姉友「めちゃくちゃね。そこだけは怒っていいよ」

「……ごめんなさい」

「いや、別にいいけど。……ちょっと腹は立つけど、別にあたし褒められてブラコンになったわけじゃないし」

「違うんですか?」

「だってうちの弟、超可愛いじゃん。泣き顔見た事ある? もうさ、すんげえよ。あー、もうこいつあたしが守ってやんなきゃダメだってなるから」

姉友「あ、そう。で、その結果がこれだって理解してる?」

「まあ、やりすぎた、かもしれないけどさ」

姉友「かもじゃねえよ、馬鹿野郎。やりすぎたからこうなってんだろ。現実逃避したきゃおうちで一人でやってろ」

「あ、あの、落ち着いてください!」

姉友「ん、ああごめん、ちょっと苛々して。……とにかくさ、あんたの気持ちを一方的に押し付けても弟くんもあんたも幸せになんないの。わかる?」

「……うん」

姉友「で、これからどうするの?」

281 : 以下、\... - 2014/07/25 21:42:28.02 VxiV2xJj0 81/87

「……弟!」

「う、うん」

「好きだ!」 ギュッ

「え、え?」

「あたしはお前が好きだ、好きで好きでおかしくなるくらいに好きだ、お前に嫌われたら生きていけないくらい好きだ!」

「わっ」 カァァァ

「あたしのお前が好きな気持ちはもうどうしようもないし好きなもんは好きなんだから止められないし気持ちを押し付けんなとか言われてもぶっちゃけ無理!」

姉友「おい」

「だから弟、あたしがお前を好きなくらいに、お前もあたしのことを好きになってくれ! そうすれば一方的な押し付けにはならないだろ!?」

「えと、ごめん無理」

「……そ、そこをなんとか!」

「姉さん」

「なんだ!?」

「……正直、重すぎ」

「うぐぁ……!」

286 : 以下、\... - 2014/07/25 21:48:37.18 VxiV2xJj0 82/87

姉友「ま、これで弟くんに振られてめでたしめでたし、と」

「や、やだぁ! やだぁ! 絶対やだぁ! あたし諦めないぃ!」

姉友「往生際が悪い。……ま、こいつは放っておいて、後は若い二人で仲睦まじくやってよ」

「あ、いえ、私もさっき振られました」

姉友「はい?」

「えと、僕まだそういう恋愛とかよく分かんないし、中途半端な気持ちで付き合いたくなかったから」

姉友「……贅沢な生き方してるね。あーあー、私も腐れ縁の尻拭いなんてしてないで、恋愛とかしたいわ」

「べ、別にあたしが弟を好きなのは自由だろ!? なあ!? なあ!?」

姉友「ん、まだ練習には間に合うかな。私達の青春は部活にしかないって事だわ。さあ、行くよ」 グイグイッ

「あー! あー! 弟ー! 弟ー! 弟ー! 弟ー!」 ズルズルッ

290 : 以下、\... - 2014/07/25 21:58:41.49 VxiV2xJj0 83/87

「行っちゃったね」

「うん」

「あのさ、聞いていいかな?」

「何?」

「お姉さんのこと、色々誤解があったでしょ? 一応、今はその誤解も解けたじゃない?」

「そうなる、のかな。なんかさ、姉さんのせいで色々馬鹿らしくなっちゃってさ。だって姉さん、本当に馬鹿なんだもん」

「そうだね、私もちょっと恥ずかしくなっちゃった。それで……今はお姉さんのこと、好き?」

「んー」

「相変わらず人の話は全然聞かないし、自分の気持ちばっかり押し付けるし、すごく迷惑な人だと思うけど」

「……好きかな」

「ふーん、シスコンさんなんだ」

「なのかな? あ、でも姉さんには秘密にしてね、絶対にまた調子に乗るから」

「了解。……それとね、私もまだ弟くんのこと好きだからね?」

「……っ」 カァァァァ

「あ、照れた! ふふ、本当だ、弟くんって……可愛いね」

294 : 以下、\... - 2014/07/25 22:09:14.17 VxiV2xJj0 84/87

「弟ー!」 ギュッ

「姉さん邪魔」

「もう疲れたー! 部活疲れたー!」 スリスリッ

「だから邪魔だってば」 グイグイッ

「もう部活辞めるー!」 フニフニッ

「部活辞めたら姉さん、ただのダメ人間じゃないの?」

「いいよもう、あたし弟さえいればいいし!」 スリスリッ

「……僕は、僕しかない姉さんなんて嫌いだし」

「あぐっ! な、なんでそんな酷いこと言うんだよ!」 ユサユサ

「姉さんに気を遣っても無駄だって分かっただけだよ」

「や、辞めなきゃいいんだろ! ったく、なんだよもう! お前なんて可愛くなかったらただの弟じゃねえかよ」 ポフッ

「……汗の匂いするね」

「へへっ、好きなんだろ?」

「別に、汗の匂いがすると思ったから言っただけだよ」

「照れてんじゃねえよ、ほらほら」 グリグリッ

301 : 以下、\... - 2014/07/25 22:26:43.86 VxiV2xJj0 85/87

(こんな風に無防備な姉さんを、僕がどんな目で見てるか分からないんだろうな)

「あのさ、姉さん」

「んー?」

「好きだよ」

「ま、マジで!?」 ガバッ

「冗談で」

「……お前なぁ」 ガシッ

「ご、ごめん! 悪い冗談だったって、謝るか、んっ!?」

「んっ、んぅ、ん……っ」 チュッ チュパッ

「んぅ、んんっ!?」 チュッ チュッ

「ぷは……ああ、悪いな。好きだなんて嬉しいこと言うから、つい勢いでキスしちまったよ。で、その後なんか言ってたっけ?」

「あ……うあ……っ」 プルプル

「で、どうだった? あたしのファーストキスは?」 ニヤニヤ

(僕は悟った。立場がどう変わっても、僕は姉さんにずっと負け続ける。これまでも、これからも)

「……姉さんなんて、嫌いだ」

302 : 以下、\... - 2014/07/25 22:27:24.29 VxiV2xJj0 86/87

おわり

寝るわ

305 : 以下、\... - 2014/07/25 22:28:55.44 iRYwEI8t0 87/87

まあ最後姉エンドだから許そう乙

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