男「えっと……なんで?」
女神「だから今説明したじゃないですか。私が人間の世界にいるあいだ、あなたのお家にお世話になります」
男「それは聞いたけど、なんで俺なんですか…」
女神「神界ロト6による厳正な抽選です」
男(これは当たりなのかハズレなのか…)
元スレ
女神「というわけでしばらくお世話になります」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1247347720/
男「というか!人になんの断りもなく今日から住ませろっておかしいでしょう!」
女神「そうでしょうか?人間の世界ではいつも行なわれていることと聞きますが」
男「次元が違います!2と3じゃあ絶対越えられない壁があるんです!そもそも理不尽でしょう?!」
女神「神は理不尽なものです」
男「言い切っちゃったよこの人…」
女神「まぁいいじゃないですか。事前の調査でも、親元離れてきままな学生生活」
女神「特に決まった異性もおらず、家に訪ねてくるような親しい友人もいない」
女神「ついでに最近は人恋しいのか夜中に一人で枕を…」
男「わーーーーわーーーわーーーーッ!!!」
男「なんでそんなことまで知ってんですか?!」
女神「神ですから」
男「そ、そもそも、いきなり神様です!とか言われても信用できませんよ」
女神「なるほど、一理ありますね」
男「本物なら何かすごいパワー的なものを見せてくださいよ」
女神「……う~ん困りました。私の力はそんなにすぐにお見せできるものではないのです」
男「へー、そんなこと言って本当は神様なんてデタラメなんでしょう?」
女神「な!?本当です!ただこんな所で見せられるようなものではないだけです!」
女神「それに神の奇跡以外にも色々できます!!」
男「ふーん?たとえばどんな?」
女神「………漬物を漬けるのが得意です!」
男「………」
男「なんか急に田舎から出てきたコスプレ女臭がしてきたんですけど」
女神「し、失礼な!」
男「やっぱりおかしいと思ったんだよ。神様が俺みたいな奴の家に来て住ませてくれなんて」
女神「むー…なんという物言いでしょう…わかりました、そこまで言うのなら証拠をお見せします」
男「証拠?」
女神「少しまってください……」
男(目をつぶった…?何か起きるのか…?)
女神「………」
男「………?」
にゅっ
「よんだかい?」
男「うわぁああぁああっ??!!」
女神「はい、先輩」
男(何もないところからまた女の人が…!!)
先女神「なに?早速問題を起こしたのかい?」
女神「この人が私を神だと信じてくれないのです」
男「お…な…なん…と…」
先女神「ふむ…それはまぁ、仕方ないといえば仕方ないけど…」
先女神「今ので信じてくれたんじゃないかな?ね?君」
男「あ…は…は、はい…」
女神「さすが先輩です!」
先女神「まぁ、こういうのはインパクトが大事だからね」
女神「なるほど、玄関からお邪魔するだけが全てではないのですね」
男「あ、あんたたち…本当に神様だったのか…?」
女神「だから何度も言ってるじゃないですか!」
先女神「そういうわけ。じゃあこの子の謹慎研修の下宿先、よろしく頼むよ」
女神「あ……」
男「……はい?」
男「謹慎…?研修…?」
女神「……」
先女神「そ、この子ったら漬物漬けるのにハマりすぎてノルマに支障だしちゃってね、それで大目玉」
先女神「謹慎の意味も込めて、神の力もほとんど取り上げられて人間の世界で再研修…って」
男「じーーーーっ」
女神「………」
先女神「……もしかして言ってなかった?」
男「ひとっことも聞いてません」
女神「うう………」
先女神「あー…じゃ、じゃあ私はこれで…が、頑張りなよー!」
男「あ…消えた」
女神「あ、あの……」
男「え?」
女神「さっき先輩が言ってた通りなんです…私、再研修でここに来て」
女神「ここでちゃんとできないと…神界に戻れないんです…」
男「……」
女神「だから…その…」
男「あーもーわかりましたよ!」
女神「男さん…」
男「俺も再試験とかそういうの、人に助けてもらったし」
男「まぁ要はホームステイみたいもんでしょ?なんとかなりますよ。俺も協力する」
女神「お……男さんっ!!」
だきっ
男「うぉっ?!」
女神「ありがとうございます!あなたにはきっと神の祝福がありますっ!」
男(でで、でかい胸があたっている…こ、これが神様の祝福…)
男「で、具体的にはどういうことをすればいいんですか」
女神「実は…私にもよくわからないのです」
男「なぬ?」
女神「研修を終える目標を見つけることも、研修の一部のようなのです」
男「なるほど…中々シビアな世界だな…」
女神「はい……あ!」
男「ど、どうしました!?」
女神「男さん…学校はよろしいのですか?」
男「え…?あ!そうだ!今日の講義は抜かせないんだった!!」
男「じゃあ俺行って来ます!鍵もってないんだから家から出ないでちゃんと留守番しててください!」
女神「はい。いってらっしゃい男さん」
男「んではっ!」
がちゃ たったった
管理人「あら、男さん。学校ですか?」
男「はいっ!いってきます!」
管理人「いってらっしゃ~い」
食堂
男(なんとか間に合って講義受けれたけど、危なかったなぁ)
男「おばちゃん。たぬきうどん」
男(でも、これからどうしようか…よく考えたらかなり大変な気がしてきた)
てくてく てくてく
男(しかし…あのおっぱいの感触…人生ではじめてじゃないか?あんなにでかいおっぱいに接近したのは)
がたっ がたっ
男(女神っていうくらいだからかなり美人だし…お、俺の理性…大丈夫か?)
「何を考え込んでいるんですか」
男「うわぁああぁああっ??!!二回目ぇぇぇえっ?!」
男「って…女先輩じゃないですか!…いつからそこに?!」
女「あなたが一人で『ぐふふ…あの女今日もヒィヒィ鳴かせてやるぜ』と呟いている時からです」
男「言ってません」
女「ええ嘘です。たぬきうどんを注文していた時からです」
男「全然気づかなかった…」
女「ちゃんと二人分の足音があったでしょうに。このあふれ出る魅力匂にも無反応とは」
男「いや…なんかすみません…」
女「で、何か悩み事ですか?」
男「え?いや…えっと…」
男(うぬぬ、いくら親しい先輩でもこのことを相談するのは…)
女「あ、今めんどくさい人に捕まったと思ったでしょう」
男「は?いえ、そんなことないですよ」
女「いいえ、あなたのその野獣のような目が物語っています」
男「野獣って……」
女「ハッ…やめてください、想像の中とはいえ私を全裸にするのは!」
男「してません!なんですか全裸って!!」
女「あ、そうですね靴下は脱がしませんよね。さすが男くん」
男「なんの話にシフトしてんですか!?」
女「悪ふざけです。それで悩み事というのは?」
男「それがですね……はっ!?い、いや!悩みとかないです!」
男(あ、あぶねぇ…つい滑らすとこだった)
女「……ちっ」
男「ホントに何でもないですから!ははは・・・」
女「そう、ですか。それなら私はいいのですが…」
男「ははは!うどんうまい!これ最高!」
女「………」
女(まさか…とは思いますが…)
男「お、友」
友「ん、男。今帰りか」
男「おう、お前もか」
男(ん…そういえば)
男「なぁ、俺たち、一応友達だよな?」
友「それがどうした?」
男「や、今日ちょっと思ったんだけど、お前俺んち来た事ないよな、って」
友「行く用事がなかったからな。それをいったらお前もそうだろう」
男「それもそうか」
友「なんだ?俺に来て欲しいのか?ならこれからでも…」
男「い、いや、そうじゃない!というか来てもいいけど今は来るな!」
友「?」
管理人「あら、男さんお帰りなさい」
娘「あ、お兄ちゃんお帰りなさい!」
男「管理人さん、ただいまです」
娘「む~お兄ちゃん、私には?!」
男「あ、ごめんごめん、ただいま。娘ちゃん」
娘「はい。よろしい!お兄ちゃん!今日はうちでご飯食べない?」
男「え!いいんですか?」
管理人「ええ、この子も喜びますし」
男「やった!じゃあ…って…あー、せっかくですけど、今日は遠慮しておきます」
娘「え、ええ~~~~!!」
管理人「あら、今日は都合悪かったかしら」
男「ええ、そんな感じで…今度は必ずご馳走になります」
娘「むぅ~~~~~」
男「ごめんな、娘ちゃん。誘ってくれてありがとう」
娘「うん……」
管理人「残念だったね、男さんに娘のお料理食べてもらうつもりだったのに」
娘「……うん」
管理人「あ、じゃあこんなのはどうかしら」
男「ただいまー って何してんですか」
女神「おかえりなさい男さん。お料理をしています」
男「まぁ、そうでしょうけど」
女神「冷蔵庫の材料使わせてもらいました。私お料理けっこう自信あるんですよ」
男「それはいいんですけど、神様に家事させるってのは……」
女神「住まわせてもらうんですから当然ですよ。ふふふ」
男「はぁ…なんというか、ありがとうございます」
女神「あ!あとキッチンの下で漬物つけてもいいですか?」
男「あんたそれでこんなことになってんだろ」
男「もぐもぐ……んぉお!う、うまい!!」
女神「えへへ…どうもどうも」
男「まさかこれほどとは…管理人さんの料理に勝るとも劣らない…ッ!」
女神「さささ、どんどん召し上がってください」
男「はい!そいえば服変わってますね。普通の服になってる」
女神「ええ、あのままでは色々目立つと思ったので。力はなくてもこれくらいはできます」
男「便利だなー神様」
女神「えっへん」
男(……それにしても)
男(やはり何度みてもでかい…)
ぴんぽーん
女神「あら、お客さんでしょうか。はーい」
男(あれに今朝俺は…俺は…)
男「って待てーーーー!?」
がちゃ
女神「はい?」
女「男くんこんば、ん……!?」
女「…失礼ですが、ここは男くんの家では…」
女神「はい、男さんのお家です。男さーん、お客様ですよ」
男「あ、ああ、はい…」
女「男くん…?……ふーーん」
男「そのー…これはー」
女「上がらせてもらっていいですか?少し詳しく聞きたいので」
女神「あ、はい」
女「ありがとうございます」
男「ちょ、女神さんこっち!」
女神「?なんですか?」
こそこそ
男「あんたこの状況一体どんな説明するつもりですか?!」
女神「えっと…そのまま話す…じゃダメですかね?」
男「ほぼ確実に最初の俺と同じ反応しますよ、また先女神さん呼ぶんですか」
女神「うう…そこまで考えてませんでした…」
男「はぁ…ったく、俺がなんとかごまかすから、話あわせてください」
女神「わ、わかりました!」
女「男くん、何をこそこそ話してるんですか?」
男「えーーっと、この人はですね…ちょっとした親戚で、またイトコ…なんです」
女神「そうです股イトコなんです」
女「親戚の方なのですか」
男「はい。それで元々このへんに就職して寮生活してたんですけど…」
女神「はい。漁生活なんです」
男「それがこの不況で…クビになっちゃって」
女神「はい、クビに…ってちょっと待ってください!まだクビじゃないですよーー!!」
男「ちょ…ぬぁーもー!似たようなもんでしょうがッ!!」
女神「ちがいますー!クビじゃないんですーーーっ!」
女「えーと、とりあえず寮に住めなくなったとうことですか」
男「あ、は、はい。それで次の就職先と住居が決まるまで近くに住んでた俺のとこに居候するってことで…ね?」
女神「ぶー……そうです……」
女「そういうことでしたか…私はてっきり男くんが若い女の人を攫って己の黒い欲望をぶつけているのではと…」
男「そ、そんなわけないでしょう!」
女「その人の態度を見ても、そのようですね。……でもやはり腑には落ちません」
男「え?何か?」
女「いいえ、なんでもありませんよ?」
女「では、私はこれで失礼します」
女神「あ、おかえりですか?」
女「はい。元々断りもなくお邪魔したのですから、これ以上居座るわけにも」
男「そ、そうですか…」
男(なんとかごまかせたか…)
女(それにこれ以上…仲のよいところを見せられてはたまりません)
女「男くん」
男「は、はい?」
女「くれぐれも野獣になってはいけませんよ?」
男「なりませんって!」
ばたん
男「うまくいったか……」
女神「あの男さん?野獣になるってどういう意味ですか?」
男「え?!や、それは…その俺が、あの…女神さんを」
女神「…あ…なるほど~男さんはエッチなんですね」
男「いあやや!それは!男子というのはそういう可能性をいつも持っているという意味でして!」
女神「ふふふ…でも大丈夫ですよ。一応女神ですから、危険が迫ると奇跡の力が守ってくれます」
男「そ、そうなんですか…ちなみにどんな風に守ってくれるんですか?」
女神「もし男さんが野獣さんになっちゃったら…」
女神「ポロリと取れます」
男「なにが?!ねぇ何が?!」
男「んじゃ寝ますか。ってそうだ女神さんの布団…」
女神「あ、大丈夫ですよ。ちゃんと持参してますので…よいしょっと」
男「いつの間に押入れに…ちょ、ちょっと待ってください!」
女神「はい?」
男「なんで隣同士にくっつけるんですか!!」
女神「お布団で寝る時はこうするのが決まりではないのですか?」
男「そういう決まりはありません!い、一応アレですから、もう少し離しましょう…でないと…」
女神「ポロリ?」
男「いうなーーーーー!!」
男(はぁ…今日はなんかやたら疲れた…)
女神「あの…男さん」
男「はい?」
女神「あの…私の事受け入れてくれて、ありがとうございました…私、本当に嬉しかったです」
男「う……や、そんな」
女神「私、頑張りますね。自分のためにも、男さんのためにも、精一杯…」
男「はい…俺も応援します。おやすみなさい」
女神「…はい、男さん。おやすみなさい…」
男(か、かわいいな…女神さん…お、落ち着け俺、早まれば…)
男(…そういえば俺…これからどこで抜けばいいんだ…?)
女神「すー…すー」
娘「よっし!準備完了!」
管理人「ふふ…張り切ってるわね」
娘「うん!昨日はお兄ちゃんに食べてもらえなかったもん!今日はちゃんと食べてもらうんだ」
管理人「カレーは一晩おいた方が美味しいから、きっと男さんも気に入ってくれるわよ」
娘「えへへ…うん!じゃ、いってきまーす!」
男「ぬぅ…いつもより早く起きてしまった…やっぱり緊張してんだな、俺」
女神「すー…すー」
男「それに比べこの人は…自分の家みたいに…」
男(ね、寝顔もかわいいな…おっぱいが布団と身体に圧迫されてる様子も…ゴクリ)
男「いかん!煩悩はこの状況で命取りだ!主に息子の」
ぴんぽーん
男「ん?誰だ朝っぱらから…」
がちゃ
娘「おはようお兄ちゃん!朝ごはんまだでしょ?カレー持ってきたの!一緒に食べよ!」
男「うぉ、娘ちゃん?!」
娘「おじゃましまーす!」
男「あ、ちょ、ちょっとまって今は…!!」
女神「むにゃむにゃ…おとこさ~ん?どうしたんですか~」
娘「え………?」
女神「うにゅ…いいにおい~ くん、くん」
男「娘ちゃん。これは…」
女神「あら?またお客様ですか?男さんのお家は以外とお客様が多いんですね~」
娘「………」
ごとっ
男「あ……」
すたすたすた ばたん
女神「あ…これはなんのおかまいもできず…」
管理人「あら、おかえりなさい。早かったのね?」
娘「おっきな…メロンが、ふたつ…お兄ちゃんの…部屋に…」
管理人「え?男さん朝からメロンを食べてたの?」
娘「メロンを…食べる…?お兄ちゃんが…?」
娘「いーーーーやーーーーーーーっ!!」
男「とまぁそういうことでして」
管理人「まぁ、それは大変でしたのねぇ」
女神「はい…。あ、でもクビではないんですよ」
娘「………」
男「えっと…ごめんね娘ちゃん、なんか驚かせちゃったみたいで」
娘「……お兄ちゃんの変態」
男「がふっ!?」
管理人「こぉら!もう…」
男「ははは…」
女神「野獣の次は変態ですか…」
男「黙れ元凶」
娘「だ、だって不潔だよ!いくら親戚でも、同じ部屋に恋人同士でもないのに住むなんて!!」
管理人「やめなさい。男さん達にも事情があるのよ」
娘「で、でもでも!……こんなかわいい子がそばにいるのに、お兄ちゃんたら…」
男「いいんです管理人さん。娘ちゃんの言ってる事は間違ってませんから」
女神「お、男さん…」
男「でもね、やっぱり目の前で困ってるって人を放り出すっていうのは、ちょっと出来なかったんだ。ははは…」
娘「う……」
女神「男さん…」
管理人「……娘。何か言うことがあるんじゃないの?」
娘「う、ん……お兄ちゃん、ひどいこと言ってごめんなさい…」
男「い、いや俺はそんな気にしてないし…それに娘ちゃんは正しいことを言ったよ」
娘「それでも!…ごめんね、お兄ちゃん」
男「二日続けて大変な朝だったけど、なんとかなった…」
女「さくやは おたのしみ でしたね」
男「ぬぉっ!?」
女「おはようございます男くん。それともソレナンテ・エ・ローゲくんでしょうか」
男「誰ですかそれ」
女「自覚がないことが一番の罪であると誰かも言いましたよ」
男「?」
女「それであの…女神さんはいつまで男くんの家にいらっしゃるのですか?」
男「そうですね…えーっと、まぁ、もうしばらく、かな?」
女「………そうですか」
女神「おそう~じは~お部屋のせんたく~♪」
ぴんぽーん
女神「あ、はーい」
がちゃ
娘「………」
女神「あら、娘さん」
娘「これ、部屋の鍵です…」
女神「あ、はい。これはどうもありがとうございます」
娘「女神さん…」
女神「はい」
娘「わ、わたし…負けませんからっ!絶対に、負けませんから!」
たったった
女神「え?……鍵で何か勝負をするのかしら?」
女「男くん今帰りですか?」
男「女先輩。ええ、そうです」
女「よければこれから買い物に付き合ってもらえませんか?」
男「はい、いいですけど」
女「よかった。……それから私の事は女でいいですよ」
男「えっ?何でまた」
女「なんでもいいじゃないですか。ね、男くん。」
男「えーっと、じゃあ…女、さん…?」
女「はい、男くん。ではいきましょうか」
男「買い物って何を買うんですか?」
女「お鍋です。それもいいお鍋です」
男「鍋、ですか?」
女「ええ、まずはいい道具を揃えたいのです。女神さんのお料理は美味しいですか?」
男「え、ええ、正直かなり」
女「ね。ますます良い物を探さなければ」
男「はぁ」
女「いい物が見つかってよかったです」
男「なによりですね」
女「このお店のコーヒーも美味しいし。言うこと無しですね」
男「はい」
女「今回のデートは」
男「ぶふぅっ!!」
女「わっ!どうしたんですか男くん?」
男「す、すみまぜん…でも、女さんがいきなり…」
女「デート?」
男「……」こくり
女「だって…そうじゃないですか。今の私達を客観的に見れば、十中八九デート中ですよ」
男「ま、まぁそうかもしれませんけど…俺と女さん…で、とか」
女「………ありえませんか?」
男「う…い、いや…でも」
女「ふふ……冗談ですよ。本気で取りすぎです男くん」
男「うぇ?!な、なんだ…恥ずかしいなぁ、ちょっとマジになっちゃいましたよ」
女「ふふふ……私は、一向にかまわないんですけどね…」
男「もう結構な時間ですね、じゃあ今日はこのくらいで」
女「あ……男くん」
男「はい?」
女「もう少し…あと少し、付き合ってはもらえませんか?」
男「まだ寄る所あるんですか?」
女「いえ、そうではないのですが…」
男「?じゃあ、どうして…」
女(どうして…そう聞きたいのは私のほうです)
女(どうして…女の人が待っている家に、男くんを帰さなくてはいけないのでしょうか…)
女「いえ…やはり今日はこれで。付き合ってくれてありがとうございました」
男「あ、俺のほうこそ楽しかったっす。じゃ、また」
女「はい……また」
男「ただいまー…って女神さん?」
男「いない…?どこに…」
がちゃ
女神「あ、男さんお帰りなさい。先にお風呂いただきました」
男「…………」
女神「あ…えーっと少し向こう向いてもらっていいですか?すぐに着替えますので」
男「…イエス、マム…」
ごそごそ
女神「お待たせしましたー。男さんもお風呂どうぞ…って男さん?」
男「おちつけしずまれおちつけしずまれポロリだぞポロリだぞおちつけしずまれ……」
女神「そういえば娘さんが鍵をくれました」
男「あ、これで女神さんも外出できますね。明日お礼いっておかないと」
女神「男さん、娘さんのことどう思います?」
女神(昼間の態度…最初はわからなかったけど、娘さんはきっと男さんのことを…)
男「どうって…いい子ですよ?妹みたいでかわいいし」
女神「妹…ですか」
男「はい。なんだか懐いてくれてるみたいで、ちょっと照れくさいですけど…」
男「……」
女神「……?」
『好きだよ、男君』
『こら!廊下走るんじゃない!』
「どう…して…だよ?」
『……ごめんね』
男「ッぁ!?」
がばっ
男「はっ…は…っ…」
男(夢…こっちに来てから、見なくなってたのに…)
女神「むにゃ…おとこ…さん?」
男「!?…あ、起こしちゃいましたか…すみません」
女神「いえ…どうかしましたか…?」
男「いや…なんでもないんです…ほんとうに、なんでも…」
女神「男さん?」
男「寝ましょう。俺ちょっとトイレいってきます」
女神(男さん…?)
女「どうですか男くん、女神さんとの生活は?理性は持ちそうですか?」
男「ええ、まぁなんとかなると思いますよ」
女「それはよかったです。ところで、お昼ご一緒しませんか」
男「はい、付き合います。何にしましょうか」
女「実は今日はお弁当を持ってきたのです」
男「女さんが弁当って、珍しいですね。あ、でも俺」
女「大丈夫です。ちゃんと男くんの分も用意しています。私は気がつく女なのです」
男「いいんですか?うわ、楽しみ!」
女「ええ、たんと召し上がってください」
女(胃袋を掴まれっぱなしでは分が悪いですからね)
女「どうですか?」
男「はい、うまいです!」
女「よかった…」
男(…どきっ…ってな、何を俺は)
女「それでは男くん、はい、あ~ん」
男「なんですかそれは」
女「手作り弁当を食べる男子はあ~んを受ける義務があるのですよ?」
男「初耳ですよ!」
女「男くんは以外に世間知らずで困ります。あ~ん」
男「ぐ、むむ…あ、あ~ んぐ」
女「ふふ…よろしいです」
男(は、恥ずかしい…)
友「見てるほうが恥ずかしいわ」
女「あら、友くん」
男「ぶふっ!と、友!」
友「これはこれはリア充領主ソレナンテ・エ・ローゲ伯ではありませんか」
男「だから誰なんだそれは」
女「友くんも食事ですか?」
友「ええ、しかしもう正直ごちそうさまという気分です」
男「ぐぅ…あぁ…」
女「真っ赤になってうずくなるなら、やらなければよかったのに…」
男「あんたが言いますか?!」
女「ふふふ、冗談です。食べてくれて嬉しかったですよ」
男「ぐ…む」
男「くそぅ…不覚をとった」
友「何が不覚だ、十人に聞けば十二人が羨ましいというぞ」
男「すごい打率だな…いや、そりゃ嫌なことじゃないさ…わかってるよ」
友「で?お前たちもう付き合ってるのか」
男「え?」
友「え?じゃない。お前と女先輩だよ」
男「い、いや!そんなわけないだろぅ!」
友「何?今日の様子を見て、てっきり俺はもう行くとこまで行ったものかと」
男「何も行ってない!」
友「……」
男「なんだその顔は」
友「いや……ただ、気の毒だな、と…」
女神「男さーーん」
男「あれ?女神さん?どうしたんですかこんなとこで」
女神「晩ご飯の買出しに行ってたんです。ほら」
男「うぉ、たくさん買いましたねー。ってあれ?俺お金渡しましたっけ?」
女神「心配には及びません。こっちにくる時に用意してもらったお金がありますので」
男「サポートは万全てわけですか。さすが神様」
女神「えっへん。じゃあ一緒に帰りましょうか」
男「はい」
娘「あ、お兄ちゃん!…と女神さん」
男「お、娘ちゃんどうしたの?」
娘「あ…えっと、ね…お兄ちゃんにお話が…ある…の」
男「俺に?うん、なに?」
娘「あ…で、でも…」
女神「!」ピコーン
女神「男さん、私先に帰ってご飯の準備してますね」
男「あ、はい。お願いします」
女神「はい!…頑張ってね」
娘「あ…」
たったった
娘(女神さん…)
男「で、話ってなにかな?」
娘「う、うん…私もうすぐ高校生になるでしょ…」
男「あーそっか、娘ちゃんもうそんなになるのか。」
娘「そ、そうだよ…私、もう大人だよ…」
男「はは、大人は早いんじゃないかなー。わかった、進学祝が欲しい、とかだな?」
娘「う、うん。そんな感じ…」
男「しょうがないなー、何が欲しいの?あんまり高いのはナシだぞ?」
娘「あ、あのね…わ、わた」
男「うん」
娘(い、いえない…緊張して、恥ずかしくて…いえないよ)
(女神「頑張ってね」)
娘(女神さん……っ!!)
娘「わ、わたしとっ!デートしてくださいっ!」
男「………へ?」
娘「…はぁ…はぁ……だ、ダメ…?」
男「いや…あの…ダメじゃ、ないけど…俺?」
娘「……」こくり
男「あー…その…う、うん。わかった」
娘「ホントっ!?」
男「うん。ホントだよ」
娘「や…や…」
娘「やったーーーーーーっ!!」
娘「じゃあね!じゃあね!今度の日曜日に!いい!?」
男「わかった、日曜だね」
娘「うん!うん!約束だよ!絶対だからね!えへへ!」
管理人「あら、娘と男さん?どうしたの玄関前で」
娘「お母さん!!あのね!あのね!!」
たったった
男「う~ん、と…まいったな…」
がちゃ
女神「おかえりなさい!どうでした?お話は」
男「う、うん…娘ちゃんとデートすることになりました」
女神「デートですか!う~ん、いいですね~!」
男「なんでそんなテンション上がってるんですか…」
女神「え?えへへ…こう、神の血が騒ぐといいますか…」
男「なんですかそれ…?いくらはしゃいでも連れて行きませんよ」
女神「わかってますよ。デート楽しんできてくださいね!」
女神「あ、娘さんをちゃんとエスコートしてあげなきゃダメですよ!」
男「はは…わかってますよ。俺だって、完全に初心者じゃないんですから」
女神「ふふふ…なら安心ですね」
男「………」
男「うまかったー!ごちそうさまでした」
女神「はい、お粗末様でした」
かちゃかちゃ
男(女神さん。神様か…こうして見てると普通の女の子と変わらない)
男(というより、かなり可愛いし、家事万能だし…まさかこれも神様の力?)
男(もし、女神さんが人間の女の子で、こんな形でなく、普通に出会っていたら…?)
女神「はい、男さんお茶です」
男「お、ありがとうございます」
男(…何考えてんだ俺…馬鹿だ…)
娘「おにいちゃーん!」
男「や!」
娘「はぁ…ごめんね待った?」
男「5分くらいかな?たいした時間じゃないよ」
娘「う、うん…あ、それと、どう…かな」
男「…?あ、うん。その…かわいいよ」
娘「!…えへへ…ありがと!じゃ、いこう!」
男「うん」
男「はい、苺クレープ」
娘「ありがとお兄ちゃん!」
娘「あむ……ん~~~おいしい~~~っ!」
男「ホントに美味しそうだなぁ」
娘「うん!あ…そだ。お、お兄ちゃんも…一口たべる…?」
男「え?いいの?じゃあ、お言葉に甘えて…あむ」
娘「!……どどどどう?おお、おいしい?」
男「んぐ…ん!うまい!」
娘「で!でしょでしょ!えへへ…」
娘(お兄ちゃんとわけっこしちゃった!わー!わー!)
娘「あ!このイルカさんかわいい~」
男「ん?おー確かに…娘ちゃんこういうの好きなんだ?」
娘「うん!イルカさん好きだよ!」
男「そっか。うし、ちょっと待ってて」
娘「え?え?お兄ちゃん?」
たったった
男「はい。プレゼント」
娘「お、お兄ちゃん…でも、いいの?」
男「お祝いがデートだけってのもなんだからね。受け取ってくれる?」
娘「うん…うん!お兄ちゃんありがとう!私イルカさん大事にするね!」
男「うん」
男「そろそろ、帰ろうか」
娘「うん。…あのねお兄ちゃん。手、繋いで帰っていい…?」
男「いいよ、はい」
娘「えへへ…」
ぎゅぅ
てくてく てくてく
男「じゃね。楽しかった、誘ってくれてありがと」
娘「うん!私も、一生の思い出にするね。ありがとうお兄ちゃん」
男「じゃ、またね」
娘「あ……っ…ま、まって!!」
男「え」
娘「あ、あのね…今日本当に楽しかった…お兄ちゃんと一緒にいれて」
娘「わ、私ね!ずっと言いたいことがあったの…お兄ちゃんに」
男「なに、かな」
娘「うん…私…お兄ちゃんが、お兄ちゃんのこと…」
男「……」
娘「お、お兄ちゃんのこと、す、す、好きですっ!」
男「っ……!?」
娘「ご、ごめんね…急、だよね、でもでも!女神さんみたいなきれいな人がお兄ちゃんの家に来て…」
娘「女神さんと仲良くしてるお兄ちゃん見てて、我慢、できなくなったの…」
男「娘ちゃん…」
娘「お兄ちゃんから見たら、私まだ子供かもしれないけど…すぐ、大人になるから…だから!」
男「ありがとう…」
娘「お兄ちゃん…」
男「気持ち、すごく嬉しいよ…でも驚いて、少し落ち着いて考えたいんだ…時間、もらえるかな?」
娘「う、うん」
男「ありがと。じゃあ、また明日ね…」
娘「ま、また明日ね、お兄ちゃん…」
男「ただいまーって!?」
女神「あ…男さーんいいところにー助けてくださいー」
男「ちょ、ど、どうしたんですか!?その格好!」
女神「テレビでヨガをやっていたので…試してみたら…頭と胸がひっかかって…う~ん」
男「ちょっと待ってください…ここを…こうか…」
女神「あっ…そこ…ふぁ…あ、ん」
男「あの…変な声出さないでください」
女神「で、でも足が…んぁ…あっ…あ」
男「はー…はー…疲れた」
女神「ふぅー助かりましたー。お?心なしか肩が軽くなった気がします!」
男「それはなにより…」
男「というかヨガって…女神さん、ちゃんと帰るための方法探してるんですか?」
女神「あ、当たり前です!私が神界に返り咲くのも遠くはないですよ!」
男「ほんとですか~?」
女神「本当です!もう!」
男(そっか、研修の目的を果たしたら女神さんは帰っちゃうんだよな…)
男「当たり前、じゃないか…」
女神「さ!男さん晩ご飯にしましょ」
男「はい、今日の献立はなんですか?」
女神「えへへ、今日はですね~」
女神「そういえば、今日のデートはどうでした?」
男「え?!ああ、はい。楽しかったです、娘ちゃんも楽しんでくれたみたいで」
女神「それはよかったですね~えへへ」
男「なんでそんな嬉しそうなんですか」
女神「え?えへへ、なんだっていいじゃないですか」
男「はぁ………」
女神「…?男さん、どうかされましたか?」
男「いや……あの…女神さん」
女神「はい?」
男「…いえ、なんでもないです」
女神「何か悩み事ですか?ふふふ、私は神ですよ?なんでもどーんと相談してください!」
男「………はい…」
男「神様にこんなこと聞くのって、おかしいっていうか失礼かもしれませんけど」
女神「はい?」
男「告白を…相手をできるだけ傷つけずに断る方法は、あるでしょうか…」
女神「…………」
男「あ、すみません…やっぱ失礼ですよね、ていうか馬鹿ですよね!ごめんなさい、忘れて…」
女神「娘さんですか」
男「え?!……はい、さっき、別れ際に言われました」
女神「そうですか…男さんは娘さんの気持ちを受け取れないのですね」
男「………はい」
女神「他に想いを寄せている方がいるのですか?」
男「いえ、いません」
女神「…なら、どうしてですか?年齢のことですか?」
男「違います。」
女神「……」
男「…すみません。これは俺の個人的な問題、ですよね…忘れてください」
女神「男さん、あなたは」
男「あの俺、風呂入ってきます」
女神「あ…」
がちゃん
女神「男さん…」
女神「すー…すー…」
男(俺何であんなこと女神さんに言ったんだろう)
男(全部自業自得なのに…女神さんに助けてもらいたかった…?)
男(それとも俺はやっぱり女神さんのことを…?)
男(馬鹿だ…もしそうでも、なんとかなるもんじゃないのに…)
男「………寝よう」
女神「……」
女神「男さーん、朝ですよー」
男「ん…女神さん、おはようございます」
女神「はい、おはようございます。今日も一日頑張りましょう!」
男「朝から元気いいですね」
女神「神ですから。今日はお弁当を作ってみたんです、はいどうぞ」
男「おおーありがとうございます」
女神「いえいえ、食事は元気の元ですから!」
たんたんたん
娘「あ」
男「あ」
娘「おおお、おはよう!おに、お兄ちゃん!」
男「うん、おはよう」
娘「あ、あの……じゃじゃ、じゃあいってきまーす!」
たったった
男「あ、いっちゃった………どうすれば、いいんだろうな」
女「男くん。今日もお昼ご一緒しませんか?」
男「あ、はい。いいですよ、今日は俺も弁当なんです」
女「え…男くんが作った…のでは」
男「あ、いえ。女神さんが作ってくれたんです」
女「そう…ですか…すみません、今日は用事があったのを思い出しました」
男「そうなんですか?」
女「はい、今まですっかり忘れていました…また今度ご一緒しましょう」
男「ええ、わかりました」
女「では…」
女(あの人の作ったお弁当を食べる男くんを見て、平静でいられる自信がありません…)
女「こっちは…夕飯にしましょうか」
女「男くん、これからデートにいきませんか?」
男「女さん?…いいですけど、デートって…えらくストレートに言いますね」
女「はい、後から言うと服にコーヒーをかけられそうになるので」
男「ぐ…あれは、すみませんでした」
女「冗談です。全然気にしてませんよ。とりあえず映画などどうですか?」
男「映画ですか」
女「!!そうですか、男くんは…私と映画…いや、なんですね…?」
男「い、いや!そんなことないです!」
女「では行きましょう。ふふふ」
男「え、あ、はい。」
男「恋愛映画とSF映画がやってるみたいですね」
女「男くんはどっちが観たいですか?」
男「そうですね、俺はSF…かな」
女「じゃあそっちにしましょう」
男「え?そんな簡単に決めていいんですか?女さんの観たい映画とか…」
女「いいのです。目的は手段を選びませんから。飲み物はどうしますか?」
男「俺は買います」
女「では私はそれを分けてもらいますね」
男「ええ!?…ってまた冗談ですね」
女「??」
男「冗談…ですよ、ね…?」
男「いやー以外に面白かったですね」
女「はい、特にあの野球選手がガッツポーズをしただけで5点入るシーンはすごかったです」
男「あれはすごかったですねー、俺も驚きました」
女「男くんはどこか行きたい所ありますか?」
男「俺ですか?…本屋とかいきたいですかね」
女「では行きましょう。さ、男くん」
ぎゅっ
男「!?あ、はい!」
男「うーん」
女「何の本を見ているんですか?」
男「これですか?」
女「エッチな本ですか?もしくはいやらしい漫画ですか?それとも卑猥な書物ですか?」
男「期待に応えられなくて残念です。さすがに女の子といる時にそんな物は見ませんよ」
女「いない時は見るんですね?ふふふ」
男「ぬ。黙秘します」
女「男くんはエッチですね」
男「しーりーまーせーん」
男「もうだいぶ暗くなってきましたね」
女「…男くん、少し歩きませんか?」
男「散歩ですか?いいですよ」
てくてく てくてく
女「……」
男「……」
女「男くん…一つ聞いてもいいですか」
男「はい」
女「男くんは私のことを…どう、思っていますか…?」
男「え…?」
男「お、女さん!ちょ、ちょっとまって」
女「わ、私は…、私は好きです…!男くんのとこ…以前から、好きでした」
男「っ……」
女「…女神さんが来る前から…好きでした…」
男「あの…」
女「こんな言い方は、卑怯…ですかね」
男「…そんなことは」
女「怖かったんです…今も怖い、男くんが女神さんに、取られてしまうのが…」
男「……女さん」
女「困らせてごめんなさい。でも、ずっと言えなかったことが言えて、よかったです…」
男「そんな」
女「今日はもうお別れしましょうか」
男「あ…はい…」
女「本当にありがとうございます。とても楽しかったです」
男「俺も…です」
女神「いっきがいーぜー♪とまれなーいっぜー♪」
がちゃ
女神「あ、男さん。おかえりなさい」
男「はい…ただいま」
女神「今日はマグロのお刺身にしたんですよ~」
男「はい…」
女神「……?男さん?どうかされたんですか?」
男「………」
女神「男さん。私で力になれることならなんでも言ってください」
男「…俺にはそんなことを言ってもらえる資格ないんです」
女神「男さん…?」
男「それなのに…女さんも…娘ちゃんも…なんで、こんな」
女神「女さん?あのこのお家に来られた方ですか?」
男「はい…」
女神「あの方も、男さんに想いを寄せていらっしゃるのですね」
男「…っ!なんで…」
女神「わかりますよ…それともう一つ、わかったことがあります」
男「もう一つ?」
女神「男さん…あなたは、人を、女性を好きになる気持ちを抑え込んでいます」
男「…っ!?あ…ぁ…」
女神「当たり、ですね」
男「なん、で…」
女神「わかりますよ。私は、恋を司る神なんですから」
男「え…」
女神「恋をする人たちにほんの少しの奇跡を贈る…それが私の本来の在り方です」
女神「だからわかります。男さん、あなたは心の奥底で人を好きにならないと、固く決めてしまっています」
男「すごいな神様って…なんでもお見通しだ」
女神「なぜ、ですか?」
男「女さんと娘ちゃんは、俺を好きって言ってくれました。でも、俺は二人が思ってるような人間じゃないんです」
男「俺は、人に嫌われたくなくて必死なんです…」
男「誰に対しても、その人が嫌がらないような受け答えをする…打算で塗り固めてるんです」
男「人にいい印象を持ってもらいたくて、自分は人を好きにならないって決めてるくせに…」
男「人には自分を嫌いになってもらいたくない…そんな奴なんです」
女神「嫌われたくない、と思うのは誰でも同じことじゃないですか。恥に思うことはありません」
男「そうですね。でもだから、本当の俺と、女さん達が好きになった俺はきっと違うんです」
男「その間違いを残したまま、もし、付き合ったりしたら今度は俺が欺く側になってしまう…」
女神「欺く…?」
男「………」
女神「男さん…!」
男「かっこ悪い話…なんですけどね」
男「俺、高校の時付き合ってた子がいたんです。はじめて女の子と付き合いました」
男「その子はとても優しくて、俺は大好きになりました。卒業した後の事とか色々考えたりして」
男「でも、その子には俺より先に付き合ってる男がいました…」
女神「………」
男「その人は、俺の担任の教師でした…生徒に人気の…俺も好きな先生だった」
男「要は、俺はカモフラージュだったんです…」
女神「……男さん」
男「彼女が退学するって時になってようやく本当の事を聞かされました」
男「先生と結婚するって…全然気づかなかった…本当に舞い上がって、馬鹿だった…」
女神「……」
男「それから、俺は人を好きになるのが怖くなりました。」
男「また、欺かれるんじゃないかって…疑心暗鬼に取り付かれて…」
男「好きにならない。でも、人に嫌われるのは怖いんです……」
男「どうしようもない身勝手…そして結局、女さんたちを欺こうとしている」
男「あの時俺は、自分だけは、人を欺きたくないって思ったたのに…」
男「どうしようもない…本当に、どうしようもない馬鹿…くっ…うぅ」
女神「男さん」
男「え…」
ぎゅぅ
男「あ…」
女神「男さんは忘れています…」
男「忘れ…?」
女神「そうやって自分の気持ちに苦しむ心。それも本当の男さんじゃないですか」
男「……」
女神「心のジレンマに苦しむ、その優しさも男さんの心です」
女神「それに、男さんを好きになった方々は本当に男さんの上辺だけを好きなったのでしょうか」
女神「男さんの優しさ。それに触れて想い寄せた人が…」
女神「本当に苦しんでいる男さんを見て、騙されたと思うでしょうか」
男「…ぅ…ぅ」
女神「私は知っています。人を想う気持ちは、苦しみも、欺瞞も乗り越えることを」
女神「私はそんな人たちを、ずっと見てきたから…」
男「う…ぅぁ…ぁぁ」
女神「いいんですよ、男さん。あなたは人に想われても。人を、好きになっても」
男「うぁ…あぁ…ぁぁぁ…」
女神「………辛かったですね。でも、もういいんですよ。泣いて、いいんです」
男「………」
女神「すっきりしました?」
男「何か今…空前絶後に恥ずかしいです」
女神「ふふ…目も顔も真っ赤です」
男「ぐぅ…し、死にたい…」
女神「ダメですよ。これからが大切なんですから」
男「はい…なんか、女神さんに話してずっと一人でグチグチしてたのがアホらしくなりました」
女神「なんといっても神ですから」
男「ははっ…すごいですね、さすが神様」
女神「えっへん」
男「じゃ、いってきます」
女神「はい、いってらっしゃい…男さん」
男「はい?」
女神「もう、大丈夫ですよね」
男「あ…はい…おかげさまで」
女神「よろしいです。じゃあ、いってらっしゃい」
男「いってきます」
ばたん
女神「……」
先女神「行ったかい」
女神「はい」
先女神「まずはおめでとう。と言うべきかな」
女神「やはり、そうだったのですね」
先女神「うん。彼にもう一度人を好きになる気持ちを思い出させること。それが今回の研修の目的」
女神「はい、男さんはもう大丈夫です。きっと素敵な恋をします」
先女神「君に太鼓判をもらえれば安心だね、じゃあ、帰ろうか」
女神「……」
女「あ」
男「あ」
女「お、おはようございます…男…くん」
男「おはようございます」
女「あの、き、昨日のことは…」
男「はい、すごく嬉しかったです。でも、すみません…」
女「え…」
男「俺、まだちゃんと自分の気持ちわかんなくて、というかやっとスタートに立ったっていうか」
女「…えっと」
男「でも、真剣に考えます、真剣に悩んで、答えを出しますから。もう少し待っていてください」
女「あ…は、はい…」ドキッ
男「ありがとうございます。女さん」
女「い、いえ…こちらこそ…」
「ばいばーいまた明日ー」
娘「また明日ねー」
とぼとぼ
娘(はぁ…あれからお兄ちゃんと話してない…やっぱり子供だから…相手にされないのかな…)
男「娘ちゃん」
娘「ふぇ?ええぇ?!お、お兄ちゃん!?」
男「ちょっと娘ちゃんと話がしたくてね、一緒に帰ろう?」
娘「あ、い、いいよ!」
てくてく てくてく
男「…話っていうのは、こないだの事だけど」
娘「う、うん…」
男「正直、俺は娘ちゃんと付き合うとかそういうこと考えたこともなかった」
娘「うん…」
娘(やっぱり…ダメ…なんだ…)
男「でも、ある人に言われて考えたんだ。好きになるってどういうことなのかって」
男「そしたら俺、何が好きってことなのか全然知らないってわかった」
娘「え…?」
男「俺も娘ちゃんのこと言えないくらい、子供だったんだ。ははは」
娘「お兄ちゃんが…?」
男「うん。だからこれから、自分が好きっていうのは何なのか、誰なのか探したい」
男「だから…ごめん。それまで返事は待ってもらえないかな…?」
娘「……それって、まだ私にもチャンスがあるってこと?」
男「う、うん?そう…なるのかな?」
娘「……ゃ」
男「娘ちゃん?」
娘「やったぁーーーーーーー!!」
男(結局は問題を先送りにしただけだけど…)
男(でも、数年ぶりに前に進めたような気がする…)
男(今度は本気で、真剣に二人に向き合っていこう…)
男(好きってこと、ちゃんと考えよう……それと…)
がちゃ
男「ただいまー」
男「ってあれいない…」
男「まさかまた風呂?もうその手は食わんぞ!」
男「…ってわけでもないのか」
男「買い物かな?」
男「ん、これ…」
男さんへ
男「手紙…女神さん、か…?」
男さんへ
急ですが、私は神界に帰ることになりました。
研修の目的を果たすことができたのです。
しかし、急なことでちゃんとした挨拶もできず、申し訳ありません
男さん、見ず知らずの私をこのお家においてくださって本当にありがとうございます
あの時、男さんが私を置いてくれるといった言葉。とても嬉しかったです
男さんは打算で出た言葉だと言うかも知れませんが、あの時私の心に届いた男さんの優しさは間違いようもなく本物でした。神が言うんですから本当です
短い間でしたが充実した、素晴らしい日々でした
あなたに感謝を、そしてこれからのあなたの人生に祝福を
女神
追伸
ぽたっ ぽたっ
男「あ……」
男「ぁ…くそっ…こんな、また…」
男「勝手にやってきて…勝手に帰りやがって…」
男「俺はまだ…ちゃんとお礼も言ってないんだぞ…」
男「最後までマイペースなのかよ…」
(女神「神は理不尽なものです」)
男「まったくだよ……」
男「……ありがとう…女神さん」
数週間後
友「おぅ、男。帰りか」
男「ん。友もか?そいえば単位は大丈夫なのかよ?」
友「心配されずとも順調だ……お前最近、なんか変わったな」
男「?変わった?」
友「ああ、何か、頭を抑えていたものが取っ払われたというか」
男「なんだよその例え」
友「よくわからんが違うってことだよ」
男「ふ~ん。そうかな?」
友「それと…たまに、急に落ち込んでいるようにも見える」
男「俺が?俺はいつも通りだぞ!ほれ!ほれ!」
友(そういう態度が不自然なんだ…)
女「………」
娘「あ、お兄ちゃんお帰り!」
男「ただいま」
娘「あのね!今日うちでご飯食べない?私もお手伝いするんだ!ね!」
男「うん。じゃあお邪魔させてもらうよ」
娘「よかった!じゃ、待ってるね!」
男「ありがとう」
たんたんたん
娘「………お」
女「男くん…」
娘「ひゃ?!だ、誰ですかあなた?!」
女「あら、これは失礼を。私は男くんの親しい友人(今はまだ)です」
娘「そ、そうなんですか…、それで、どうしてここに?」
女「最近男くんの様子が目に見えておかしいので、心配になって・・・」
娘「あ、やっぱりそうなんですか…私も、お兄ちゃん元気ないな、って…」
女「やはり、あの人…」
娘「女神さんが、いなくなってから…」
女「女神さんをご存知なんですか?」
娘「はい、とても美人で、いい人で…でも何も言わずに急にいなくなっちゃいました」
女「………男くんは、やはり…」
娘「……」
がちゃ
男「ただいまーっと」
男「誰もいないのにも慣れちゃったな…」
男「最初は誰もいないのが当たり前だったのに、おかしいな…」
男「今日は娘ちゃんのところでご馳走になるから、夕飯の準備はしなくていい」
男「……洗い物たまってんな…片付けちまうか」
がちゃがちゃ
男「…こういうのも、女神さんがやってくれてたんだな……なんか改めて感謝」
男「うっし!綺麗になった!ふふん、乗ってきたな~」
男「よ~し、ついでに普段使わないのも洗っちまうか」
男「確かこのキッチンの下に~」
男「……ん?なんだこりゃ?」
女「よし…」
たんたんたん
娘「ちょ、ちょっとどこいくんですか?」
女「男くんを元気付けて来ます。私では、力が及ばないかもしれませんが…」
娘「そ、そういうことなら私もいく!」
女「い、いえ。ここは大人の私に任せてください」
娘「大人とか子供とかないよ!私のほうがお兄ちゃんを元気にしてあげられる!」
女「な、何を根拠に?」
娘「だって私、お兄ちゃんのこと好きだもん!」
女「わ、私だって好きです!私のほうが好きです!」
娘「~~~~~~!」
女「~~~~~~!」
男「なんだこの馬鹿でかいの…壷?」
ぱかっ
男「ぬぁッ?!くさっ!!」
男「なんだこれ…漬物・・・?」
男「あ…まさかこれ…女神さんが…」
男「ったく、あの人…人んちで漬物作って置いてったのか…」
男「……でも、らしいよな…はは」
男「どれ……ていうかこれ何漬けだ?見たことないぞ…食えるのか?」
男「あぐ…ぼりっ・・・むぐ…むぐ…」
男「んぐ…ぐ…味は…まぁ、悪くないな」
男「ぼりっ…でも…匂いと…」
ぽろっ
男「匂いと…」
ぽろっ ぽろっ
男「んぐ…しょっぱい…のが…いけないな……しょぱい、や…」
男「……ホント…変なもんばっか、残していって…」
男「今度会ったら…絶対文句言ってやる…会ったら…」
「あーーーーーッ!!」
男「ッ??!!!」
「どうして開けちゃったんですかーー!」
男「!!?え!?あ、あ、め、めが…」
女神「ちゃんと手紙の追伸に、漬物は一年は開けちゃダメって書いてあったのに!読まなかったんですか!?」
男「めが、みさん……?」
女神「それともそんなにお腹が空いたんですか?もう、ちゃんとご飯買っておかないからー」
男「女神さん…」
女神「はい?」
男「女神さんっ!!」
だきっ
女神「ひゃ!きゃっ!」
男「本物だ!夢じゃない!本当の女神さんだっ!!」
女神「お、男さん?ちょ、ちょっと恥ずかしいです…どうしたんですか?」
男「どうしたもこうしたもない!急にいなくなって!そしたら急に帰ってきて!わけわかんないよ!!」
女神「あー…えへへ。それはですね」
ばたんっ
女「男くん!私が!わ、た、し、が!男くんを元気にしてあげます!」
娘「私がするの!私だよね!お兄ちゃん!」
女・娘「「え?」」
男「女さん?!娘ちゃん?!」
女神「あ、女さん、娘さん。お久しぶりです」
女・娘「「女神さんっ!!?」」
女神「はい」
女「か、帰ってこられたんですか?」
女神「ええ、まぁ。えへへ」
娘「今までどこ行ってたんですか!?心配、し……お兄ちゃん…?」
女「……男くん…いつまで女神さんに抱きついているのですか…?」
男「え?……あ、あぁっ!!ごごめんなさいっ!!」
女神「あ、いえー恥ずかしいけど、久しぶりだったので少し嬉しかったです」
女「ひさし…ぶり?!」
娘「…女神さん…どういうこと…?!」
男「ぁ、ちょ」
女神「??だから男さんと抱き合うのが久しぶり…」
女「……男…くん…?」
娘「…おにい…ちゃん…?」
女「ま、まぁ私は、男くんと手作りのお弁当をあ~んした仲ですから」
娘「私だって、一つのクレープ一緒に食べたり、イルカさんの置物プレゼントしてもらったもん」
男「えっと…」
女神「私の時は…ふふふ、男さんったら胸に顔をうずめてまるで赤ちゃんみたいに…」
女「?!胸に…うずめて…?!」
娘「!?赤ちゃん…みたいに!?」
男「違うぞ!あなたたちの想像しているのとは全然違いますからっ!!」
男「そ、そんなことより!どうしていきなり帰ってきたんですか?!」
女・娘「………」
女神「あ、はい。向こうに一度は帰れたんですけど、また、色々ありまして」
女神「今度は特別出張ということでまたこっちに来ちゃいました」
男「特別…出張?!」
女神「はい。またしばらくこっちに滞在することになります」
女「しばらくって、どのくらいなんですか?」
女神「うーーん、結構長いんじゃないでしょうか?」
娘「そんなアバウトなんだ…」
先女神「来たね、君が新人か」
新女神「は、はい!よろしくお願いします!」
先女神「うん。よろしく。先任が急に出張に出ちゃったからね、いきなりきてもらったけど」
先女神「長いこと帰ってきそうにないし、はじめは私がフォローするから、安心していいよ」
新女神「はは、はい!……あのところで、長く帰ってこないって…?」
先女神「うん。だいたい80年から90年くらいかも、とか言ってたかな、困ったもんだ」
新女神「どうして、そんなに長い出張に・・・?やっぱり、大変なお仕事が…!」
先女神「ミイラ取りがミイラになった、って感じかな…ははっ、ちょっと違うか」
新女神「??」
女神「それで…男さん、お願いがあるのですが」
男「は、はい」
女神「また、私をここに置いてはいただけませんか…?」
男「えっ!?えっと…俺は、その」
女「…私はそれがいいと思います。女神さんが行くあてのないことは以前の事でわかっていますし」
娘「私もいいと思うな。きっとお母さんも喜ぶと思う!」
男「女さん、娘ちゃん…」
女神「お二人とも…ありがとうございます…」
女「しかし、譲れないものは譲りませんけどね」
娘「私も、絶対負けないです!」
女神「………はい!」
女「あとは男くんだけですね」
娘「ね、お兄ちゃん」
女神「……」
男「うん…あの、女神さん」
女神「はい…」
男「こんなところで良かったら、その、気の済むまでずっと居て、ください…」
女神「男さん……ありがとうございます…!」
女「よかったですね」
娘「うんうん」
女神「お二人も…本当にありがとうございます……では、みなさん」
女神「またしばらくお世話になります」
おわり
488 : 以下、名... - 2009/07/15(水) 03:09:36.50 WT/EiywE0 111/112
というとこでおしまいです
保守してくれた人
書くの遅いのに付き合ってくれた人
みんなありがとー
497 : 以下、名... - 2009/07/15(水) 03:13:12.98 WT/EiywE0 112/112
あと俺は
ああっ女神さまっ
より
逮捕しちゃうぞ
の方が好きです